ケーシングビット
【課題】 土木、建築等の分野で、鉄筋コンクリート杭の施工に使用されるケーシングビットであって、規格通りの外径を有するケーシングパイプを使用して、これよりも外径の大きい杭を形成することのできるケーシングビットを提供すること。
【解決手段】 ケーシングビットの外面が、ケーシングパイプの外周面よりも外側に張出しており、かつその外面は、ケーシングビットの切削方向先端部が最も外側に位置し、後側部分の外面が次第に内側に位置するような傾斜面として形成されているケーシングビット。
【解決手段】 ケーシングビットの外面が、ケーシングパイプの外周面よりも外側に張出しており、かつその外面は、ケーシングビットの切削方向先端部が最も外側に位置し、後側部分の外面が次第に内側に位置するような傾斜面として形成されているケーシングビット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木、建築等の分野で、地盤に埋設する鉄筋コンクリート杭の施工に使用されるケーシングビットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
土木工事における鉄筋コンクリート杭の施工法として、オールケーシング(全旋回)工法と呼ばれる工法が採用されている。この工法は、金属製のケーシングパイプ(ケーシングチューブ)の先端部に、その円周に沿って超硬チップ付きのカッタービット(ケーシングビット)を所定間隔で複数個取り付け、該ケーシングパイプを軸回りに回転させながら、カッタービットの刃先で地盤を掘削して、その内部に杭を形成する工法である。施工中は、定寸のケーシングパイプを継ぎ足しながら所定の深さまで掘削して行く。
【0003】
ケーシングパイプで所定深さまで掘削したら、内部の土砂を排出するとともに、ケーシングパイプを掘削した穴から抜き取り、その穴内の空間に鉄筋を配置して、その上からコンクリートを打設することによって鉄筋コンクリートの杭が形成される。
【0004】
この種のケーシングパイプとケーシングビットについては、例えば下記特許文献に開示されているようなものが知られている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−139632号公報
【特許文献2】特開2002−47648号公報
【特許文献3】特開2006−188873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来のケーシングパイプとしては、例えば外径が980,1180,1480,1980,2480,2980mm等の寸法(定寸)の市販の鋼管が使用されている。一方、土木工事等で要求される杭径は、例えば1000,1200,1500,2000,2500,3000mm等のものが多いので、このような場合は、ケーシングパイプの外径との間に、20mmのギャップがあることになる。このため、従来のケーシングパイプを用いて杭を施工すると、形成される杭径が、構造上要求される杭径よりも小さくなって、強度不足という重大な問題が生じるおそれがあった。
【0007】
従来のケーシングパイプを用いて、構造上必要とされる設計寸法通りの大きさの杭を得るためには、ケーシングパイプとして、外径が大きいものを使用する必要がある。しかしながら、市販されている鋼管の寸法は、別途規格により定められているので、所望の杭径と同等な外径のケーシングパイプを求めるのは、入手性の点で問題があり、コストも高いものとなる。このため、従来は、ケーシングビットの刃先をケーシングパイプの外周面よりも外側へ突出させることによって掘削される穴の径を拡大していた。
【0008】
カッタービットの刃先をケーシングパイプの外周面よりも外側に突出させて杭形成用の穴を掘削すると、その刃先によってケーシングパイプの外径よりも大径の穴が一応掘削されるが、掘削後には、土圧により掘削された穴壁が競りだして来たり、土砂が崩れたりするので、ビットの刃先で所望の径の穴を掘削したとしても、コンクリート打設の時点で、穴内径が小さくなり、形成される杭の外径が目的とする径よりも小さくなるという問題点があった。すなわち、掘削された穴内にコンクリートを注入すると、深い穴底の部分では、コンクリートの圧力が高いため、土圧に打ち勝って、予定通りの外径が得られるとしても、穴の比較的浅い部分では、コンクリートの圧力が低いため、土圧によって穴径が小さくなり、形成される杭の外径も小さくなって、杭の強度が低下するという問題が生じていた。
【0009】
そこで、本発明は、従来の規格通りの外径を有するケーシングパイプを使用して、これよりも外径の大きい杭を形成することのできるケーシングビットを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は次のような構成とした。すなわち、本発明に係るケーシングビットは、ケーシングパイプの先端部に取り付けられ、該ケーシングパイプの回転によって地盤を掘削するケーシングビットであって、掘削された穴壁に対向する外面が前記ケーシングパイプの外周面よりも外側に張出しており、かつその外面は、ケーシングビットの切削方向前側部分が最も外側に位置し、後側になるほど次第に内側に位置するような傾斜面として形成されていることを特徴としている。
【0011】
鋼製シャンク部の切削方向における先端側エッジ部に、該エッジ部に沿って補強用の超硬チップを固着しておけば、シャンク部の早期摩耗が防止され、長時間にわたって効果的な掘削を行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るケーシングビットは、刃先部がケーシングパイプの外周面よりも外側に突出しているので、当該刃先の突出量に相当する大径の穴が掘削される。また、掘削が終了したときは、ケーシングパイプを掘削時とは逆方向に回転させて、ビットの傾斜外面を掘削された穴壁に接して移動させることにより、当該傾斜外面で穴壁を外向きに押し付けることができ、穴壁表面を押し固めて、掘削された穴径を維持することができる。このため、注入されたコンクリートにより、目的とする外径の杭が得られるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。図1、図2は、ケーシングパイプを用いる掘削方法を模式的に表すもので、この掘削装置1に用いられるケーシングパイプ2は、その先端部、すなわち図1における最下部の底面に複数のケーシングビット3が所定間隔で取り付けられている。図3は、ケーシングビットの配置を表すもので、ケーシングパイプの外側を掘削する外刃Mとケーシングパイプの内側を掘削する内刃Nとが千鳥状に交互に配置されている。内刃Nの刃先はケーシングパイプの内周面よりも内側に突出しており、外刃Mの刃先はケーシングパイプの外周面よりも外側に突出している。なお、外刃Mには、ケーシングパイプの外側に大きく張り出すように取り付けられたものM1と、ケーシングパイプの肉厚中央部に取り付けられ、該ケーシングパイプから若干外側に突出するものM2の2種類がある。このケーシングパイプを、図示を省略した全旋回式掘削装置で強制回転させつつ下向きに押圧することにより、杭形成用の穴を掘削するのである。掘削中は、ケーシングパイプ内の土砂をハンマグラブH等で破砕し、外部に排出する。
【0014】
図4ないし図6は、本発明に係るケーシングビットを表すもので、このケーシングビット3は、二股状の脚11、12を備えた鋼製シャンク10の掘削方向における前側部分の先端部に、超硬チップからなる硬質刃体15がろう付けにより固着されている。シャンク10の二股部の上下中間部には、前後に通じるボルト挿通用の穴16が設けられている。穴16のうち、一方の脚11の穴はネジ穴であり、他方の脚12の穴は、すり鉢状の傾斜内面を有するバカ穴である。
【0015】
硬質刃体15の形状は、先端部が尖った多角形であり、この尖った先端部が刃先Pとなっている。上記一対の脚11、12のうち、刃先Pが位置する側の脚12は、他方の脚11よりも肉厚が大きく、その前縁部のコーナー部には、前記硬質刃体15の位置から脚部12の下端部付近まで細長い補強チップ17が固着されている。補強チップ17も、硬質刃体15と同様な超硬チップである。この補強チップ17が設けられているので、シャンク10の外面の早期摩耗が防止される。
【0016】
このケーシングビット3のシャンク10には、硬質刃体15の位置よりも後側(掘削時におけるビットの移動方向からみて後側)に、傾斜面20が形成されている。この傾斜面20は、掘削方向前側、すなわち、刃体15の固着されている側が最も外側に張り出し、それよりも後側が徐々に内側に引っ込むような、前後方向の傾斜面となっている。この傾斜面は、図4におけるケーシングビットの上下方向の全長にわたって形成されている。傾斜面20の傾斜角αは、2〜15度程度とするのが好ましく、3〜5度とするのがより好ましい。なお、図6では、ビット3の前部の外面は平面21として形成され、前後中間部前寄りの位置から後端部にかけて傾斜面20が形成されているが、図7に示すように、前端部から後端部まで、一つの傾斜面20として形成することもできる。
【0017】
このケーシングビット3は、図2に示すように、ケーシングパイプ1の端部に埋設されたホルダー5に取り付けられる。ホルダー5には、薄肉板状の嵌合部が設けられており、ケーシングビット3の二股状の脚部11、12の間にこの嵌合部を嵌合して、固定用のボルト6で固着する。ボルトの頭部には、一方の脚部12に設けられている穴のすり鉢状内面に適合する傾斜曲面が形成されていて、このボルトを締め付けることにより、ケーシングビット3をしっかりと固定することができるようになっている。
【0018】
図8、図9、図10は、従来のケーシングビットの形状を模式的に表すもので、従来のビットBは、刃先Pを含む先端側が最も外側に突出し、基部側は徐々に内側に位置するように、上下方向の傾斜面bがビットの外面に形成されている。ケーシングパイプ2に取り付けた状態では、底面図である図10に示すように、ケーシングビットの刃先部Pがケーシングパイプ外周面よりも外側に突出しているが、突出しているのは、ケーシングビットの先端部、すなわち図9における下端部だけで、基部側すなわち図の上側部分は次第に内側に引っ込んでいる。このため、上下方向の傾斜面は形成されているが、ケーシングビットの掘削方向における前後方向の傾斜面は形成されていない。
【0019】
しかしながら、この従来構造では、掘削された土砂Rが、図8に示すように、ビットBの刃先よりも上側に形成される傾斜面bと穴壁Wの間の隙間と、ケーシングパイプ2の外周面と穴壁Wとの間の隙間に充満することになる。このため、コンクリートを打設しても、折角掘削した大径分(オーバーカット分)まで充填されず、ケーシングパイプの外径と同程度の小径の杭しか得られないのである。
【0020】
図11ないし図14は、本発明のケーシングビットの構造を模式的に表すもので、このケーシングビット3は、硬質刃体15の設けられている先端部から基部側端部まで、上下方向の傾斜面は形成されていないが、掘削方向前側から後側にかけて前後方向の傾斜面20が形成されている。このため、底面図である図13では、上記従来のケーシングビットを表す図10と同じに現れるが、前後方向の傾斜面20がケーシングビットの上端部まで形成されている点で、従来のものと基本的に相違している。
【0021】
このケーシングビット3を外刃Mに用いて掘削を行う場合は、図13に示すように、ビットは矢印X方向に移動しつつ、ケーシングパイプの外周側の地盤を掘削する。この場合、外方に突出している刃先部で、効率よく掘削が行われる。
【0022】
所定深さの掘削が終了すると、ケーシングパイプ3を掘削時とは逆方向、すなわち図14における矢印Y方向に回転させつつ掘削された穴から引き上げる。この時、ビットの傾斜面20によって掘削された穴内壁面が外向きに押圧され、押し固められる。このため、土圧による穴壁の競り出しや、土の崩落が防止され、ビットの突出した刃先部で掘削された穴径が保たれるのであり、この穴に鉄筋を挿入し、コンクリートを打設することにより、所望の大径の鉄筋コンクリート杭が得られるのである。
【0023】
このケーシングビット3は、外面が前後方向の傾斜面として形成されているので、掘削時には、穴壁に接触する面積が少なく、摩擦力による抵抗が小さくてすみ、効率的に掘削が行われる。一方、掘削終了時に、ケーシングパイプを逆方向に回転させて、ビットを穴壁に沿って掘削時とは逆方向に移動させることにより、その外面の傾斜面の傾斜に応じて穴内壁を外向きに押し固めることができる。このため、コテで穴壁を成形するような効果が得られ、穴径が大きいままに保たれて、所望寸法の杭が得られるのである。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明に係るケーシングビットは、土木工事における全旋回工法による杭の形成等に効果的に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ケーシングパイプによる掘削工法を模式的に表す断面図である。
【図2】ケーシングビット取り付け部の拡大図である。
【図3】ケーシングパイプの底面図である。
【図4】本発明のケーシングビットの側面図である。
【図5】その正面図である。
【図6】その平面図である。
【図7】異なる実施形態における平面図である。
【図8】従来のケーシングビットによる掘削時の説明図である。
【図9】従来のケーシングビットを取り付けたケーシングパイプの要部の正面図である。
【図10】その底面図である。
【図11】本発明のケーシングビットの掘削時の説明図である。
【図12】ケーシングビットを取り付けたケーシングパイプの要部の正面図である。
【図13】その底面図である。
【図14】引き上げ時の説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1 掘削装置
2 ケーシングパイプ
3 ケーシングビット
10 シャンク
15 硬質刃体
17 補強用チップ
20 傾斜面
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木、建築等の分野で、地盤に埋設する鉄筋コンクリート杭の施工に使用されるケーシングビットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
土木工事における鉄筋コンクリート杭の施工法として、オールケーシング(全旋回)工法と呼ばれる工法が採用されている。この工法は、金属製のケーシングパイプ(ケーシングチューブ)の先端部に、その円周に沿って超硬チップ付きのカッタービット(ケーシングビット)を所定間隔で複数個取り付け、該ケーシングパイプを軸回りに回転させながら、カッタービットの刃先で地盤を掘削して、その内部に杭を形成する工法である。施工中は、定寸のケーシングパイプを継ぎ足しながら所定の深さまで掘削して行く。
【0003】
ケーシングパイプで所定深さまで掘削したら、内部の土砂を排出するとともに、ケーシングパイプを掘削した穴から抜き取り、その穴内の空間に鉄筋を配置して、その上からコンクリートを打設することによって鉄筋コンクリートの杭が形成される。
【0004】
この種のケーシングパイプとケーシングビットについては、例えば下記特許文献に開示されているようなものが知られている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−139632号公報
【特許文献2】特開2002−47648号公報
【特許文献3】特開2006−188873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来のケーシングパイプとしては、例えば外径が980,1180,1480,1980,2480,2980mm等の寸法(定寸)の市販の鋼管が使用されている。一方、土木工事等で要求される杭径は、例えば1000,1200,1500,2000,2500,3000mm等のものが多いので、このような場合は、ケーシングパイプの外径との間に、20mmのギャップがあることになる。このため、従来のケーシングパイプを用いて杭を施工すると、形成される杭径が、構造上要求される杭径よりも小さくなって、強度不足という重大な問題が生じるおそれがあった。
【0007】
従来のケーシングパイプを用いて、構造上必要とされる設計寸法通りの大きさの杭を得るためには、ケーシングパイプとして、外径が大きいものを使用する必要がある。しかしながら、市販されている鋼管の寸法は、別途規格により定められているので、所望の杭径と同等な外径のケーシングパイプを求めるのは、入手性の点で問題があり、コストも高いものとなる。このため、従来は、ケーシングビットの刃先をケーシングパイプの外周面よりも外側へ突出させることによって掘削される穴の径を拡大していた。
【0008】
カッタービットの刃先をケーシングパイプの外周面よりも外側に突出させて杭形成用の穴を掘削すると、その刃先によってケーシングパイプの外径よりも大径の穴が一応掘削されるが、掘削後には、土圧により掘削された穴壁が競りだして来たり、土砂が崩れたりするので、ビットの刃先で所望の径の穴を掘削したとしても、コンクリート打設の時点で、穴内径が小さくなり、形成される杭の外径が目的とする径よりも小さくなるという問題点があった。すなわち、掘削された穴内にコンクリートを注入すると、深い穴底の部分では、コンクリートの圧力が高いため、土圧に打ち勝って、予定通りの外径が得られるとしても、穴の比較的浅い部分では、コンクリートの圧力が低いため、土圧によって穴径が小さくなり、形成される杭の外径も小さくなって、杭の強度が低下するという問題が生じていた。
【0009】
そこで、本発明は、従来の規格通りの外径を有するケーシングパイプを使用して、これよりも外径の大きい杭を形成することのできるケーシングビットを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は次のような構成とした。すなわち、本発明に係るケーシングビットは、ケーシングパイプの先端部に取り付けられ、該ケーシングパイプの回転によって地盤を掘削するケーシングビットであって、掘削された穴壁に対向する外面が前記ケーシングパイプの外周面よりも外側に張出しており、かつその外面は、ケーシングビットの切削方向前側部分が最も外側に位置し、後側になるほど次第に内側に位置するような傾斜面として形成されていることを特徴としている。
【0011】
鋼製シャンク部の切削方向における先端側エッジ部に、該エッジ部に沿って補強用の超硬チップを固着しておけば、シャンク部の早期摩耗が防止され、長時間にわたって効果的な掘削を行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るケーシングビットは、刃先部がケーシングパイプの外周面よりも外側に突出しているので、当該刃先の突出量に相当する大径の穴が掘削される。また、掘削が終了したときは、ケーシングパイプを掘削時とは逆方向に回転させて、ビットの傾斜外面を掘削された穴壁に接して移動させることにより、当該傾斜外面で穴壁を外向きに押し付けることができ、穴壁表面を押し固めて、掘削された穴径を維持することができる。このため、注入されたコンクリートにより、目的とする外径の杭が得られるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。図1、図2は、ケーシングパイプを用いる掘削方法を模式的に表すもので、この掘削装置1に用いられるケーシングパイプ2は、その先端部、すなわち図1における最下部の底面に複数のケーシングビット3が所定間隔で取り付けられている。図3は、ケーシングビットの配置を表すもので、ケーシングパイプの外側を掘削する外刃Mとケーシングパイプの内側を掘削する内刃Nとが千鳥状に交互に配置されている。内刃Nの刃先はケーシングパイプの内周面よりも内側に突出しており、外刃Mの刃先はケーシングパイプの外周面よりも外側に突出している。なお、外刃Mには、ケーシングパイプの外側に大きく張り出すように取り付けられたものM1と、ケーシングパイプの肉厚中央部に取り付けられ、該ケーシングパイプから若干外側に突出するものM2の2種類がある。このケーシングパイプを、図示を省略した全旋回式掘削装置で強制回転させつつ下向きに押圧することにより、杭形成用の穴を掘削するのである。掘削中は、ケーシングパイプ内の土砂をハンマグラブH等で破砕し、外部に排出する。
【0014】
図4ないし図6は、本発明に係るケーシングビットを表すもので、このケーシングビット3は、二股状の脚11、12を備えた鋼製シャンク10の掘削方向における前側部分の先端部に、超硬チップからなる硬質刃体15がろう付けにより固着されている。シャンク10の二股部の上下中間部には、前後に通じるボルト挿通用の穴16が設けられている。穴16のうち、一方の脚11の穴はネジ穴であり、他方の脚12の穴は、すり鉢状の傾斜内面を有するバカ穴である。
【0015】
硬質刃体15の形状は、先端部が尖った多角形であり、この尖った先端部が刃先Pとなっている。上記一対の脚11、12のうち、刃先Pが位置する側の脚12は、他方の脚11よりも肉厚が大きく、その前縁部のコーナー部には、前記硬質刃体15の位置から脚部12の下端部付近まで細長い補強チップ17が固着されている。補強チップ17も、硬質刃体15と同様な超硬チップである。この補強チップ17が設けられているので、シャンク10の外面の早期摩耗が防止される。
【0016】
このケーシングビット3のシャンク10には、硬質刃体15の位置よりも後側(掘削時におけるビットの移動方向からみて後側)に、傾斜面20が形成されている。この傾斜面20は、掘削方向前側、すなわち、刃体15の固着されている側が最も外側に張り出し、それよりも後側が徐々に内側に引っ込むような、前後方向の傾斜面となっている。この傾斜面は、図4におけるケーシングビットの上下方向の全長にわたって形成されている。傾斜面20の傾斜角αは、2〜15度程度とするのが好ましく、3〜5度とするのがより好ましい。なお、図6では、ビット3の前部の外面は平面21として形成され、前後中間部前寄りの位置から後端部にかけて傾斜面20が形成されているが、図7に示すように、前端部から後端部まで、一つの傾斜面20として形成することもできる。
【0017】
このケーシングビット3は、図2に示すように、ケーシングパイプ1の端部に埋設されたホルダー5に取り付けられる。ホルダー5には、薄肉板状の嵌合部が設けられており、ケーシングビット3の二股状の脚部11、12の間にこの嵌合部を嵌合して、固定用のボルト6で固着する。ボルトの頭部には、一方の脚部12に設けられている穴のすり鉢状内面に適合する傾斜曲面が形成されていて、このボルトを締め付けることにより、ケーシングビット3をしっかりと固定することができるようになっている。
【0018】
図8、図9、図10は、従来のケーシングビットの形状を模式的に表すもので、従来のビットBは、刃先Pを含む先端側が最も外側に突出し、基部側は徐々に内側に位置するように、上下方向の傾斜面bがビットの外面に形成されている。ケーシングパイプ2に取り付けた状態では、底面図である図10に示すように、ケーシングビットの刃先部Pがケーシングパイプ外周面よりも外側に突出しているが、突出しているのは、ケーシングビットの先端部、すなわち図9における下端部だけで、基部側すなわち図の上側部分は次第に内側に引っ込んでいる。このため、上下方向の傾斜面は形成されているが、ケーシングビットの掘削方向における前後方向の傾斜面は形成されていない。
【0019】
しかしながら、この従来構造では、掘削された土砂Rが、図8に示すように、ビットBの刃先よりも上側に形成される傾斜面bと穴壁Wの間の隙間と、ケーシングパイプ2の外周面と穴壁Wとの間の隙間に充満することになる。このため、コンクリートを打設しても、折角掘削した大径分(オーバーカット分)まで充填されず、ケーシングパイプの外径と同程度の小径の杭しか得られないのである。
【0020】
図11ないし図14は、本発明のケーシングビットの構造を模式的に表すもので、このケーシングビット3は、硬質刃体15の設けられている先端部から基部側端部まで、上下方向の傾斜面は形成されていないが、掘削方向前側から後側にかけて前後方向の傾斜面20が形成されている。このため、底面図である図13では、上記従来のケーシングビットを表す図10と同じに現れるが、前後方向の傾斜面20がケーシングビットの上端部まで形成されている点で、従来のものと基本的に相違している。
【0021】
このケーシングビット3を外刃Mに用いて掘削を行う場合は、図13に示すように、ビットは矢印X方向に移動しつつ、ケーシングパイプの外周側の地盤を掘削する。この場合、外方に突出している刃先部で、効率よく掘削が行われる。
【0022】
所定深さの掘削が終了すると、ケーシングパイプ3を掘削時とは逆方向、すなわち図14における矢印Y方向に回転させつつ掘削された穴から引き上げる。この時、ビットの傾斜面20によって掘削された穴内壁面が外向きに押圧され、押し固められる。このため、土圧による穴壁の競り出しや、土の崩落が防止され、ビットの突出した刃先部で掘削された穴径が保たれるのであり、この穴に鉄筋を挿入し、コンクリートを打設することにより、所望の大径の鉄筋コンクリート杭が得られるのである。
【0023】
このケーシングビット3は、外面が前後方向の傾斜面として形成されているので、掘削時には、穴壁に接触する面積が少なく、摩擦力による抵抗が小さくてすみ、効率的に掘削が行われる。一方、掘削終了時に、ケーシングパイプを逆方向に回転させて、ビットを穴壁に沿って掘削時とは逆方向に移動させることにより、その外面の傾斜面の傾斜に応じて穴内壁を外向きに押し固めることができる。このため、コテで穴壁を成形するような効果が得られ、穴径が大きいままに保たれて、所望寸法の杭が得られるのである。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明に係るケーシングビットは、土木工事における全旋回工法による杭の形成等に効果的に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ケーシングパイプによる掘削工法を模式的に表す断面図である。
【図2】ケーシングビット取り付け部の拡大図である。
【図3】ケーシングパイプの底面図である。
【図4】本発明のケーシングビットの側面図である。
【図5】その正面図である。
【図6】その平面図である。
【図7】異なる実施形態における平面図である。
【図8】従来のケーシングビットによる掘削時の説明図である。
【図9】従来のケーシングビットを取り付けたケーシングパイプの要部の正面図である。
【図10】その底面図である。
【図11】本発明のケーシングビットの掘削時の説明図である。
【図12】ケーシングビットを取り付けたケーシングパイプの要部の正面図である。
【図13】その底面図である。
【図14】引き上げ時の説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1 掘削装置
2 ケーシングパイプ
3 ケーシングビット
10 シャンク
15 硬質刃体
17 補強用チップ
20 傾斜面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングパイプの先端部に取り付けられ、該ケーシングパイプの回転によって地盤を掘削するケーシングビットであって、前記ケーシングビットは、掘削された穴壁に対向する外面が前記ケーシングパイプの外周面よりも外側に張出しており、かつその外面は、ケーシングビットの切削方向前側部分が最も外側に位置し、後側になるほど次第に内側に位置するような傾斜面として形成されていることを特徴とするケーシングビット。
【請求項2】
鋼製シャンク部の切削方向における先端側エッジ部に、該エッジ部に沿って補強用の超硬チップが固着されている請求項1に記載ケーシングビット。
【請求項1】
ケーシングパイプの先端部に取り付けられ、該ケーシングパイプの回転によって地盤を掘削するケーシングビットであって、前記ケーシングビットは、掘削された穴壁に対向する外面が前記ケーシングパイプの外周面よりも外側に張出しており、かつその外面は、ケーシングビットの切削方向前側部分が最も外側に位置し、後側になるほど次第に内側に位置するような傾斜面として形成されていることを特徴とするケーシングビット。
【請求項2】
鋼製シャンク部の切削方向における先端側エッジ部に、該エッジ部に沿って補強用の超硬チップが固着されている請求項1に記載ケーシングビット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−133599(P2008−133599A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318535(P2006−318535)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(506395172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(506395172)
【Fターム(参考)】
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