説明

ケーブルの製造装置及び製造方法

【課題】ジョイントパンクの発生を防ぐことが可能なケーブルの製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】ケーブル1を製造するための製造装置における押出機は、クロスヘッド4と、ケーブル1にジョイントパンク防止部5を形成するためのエアー封入手段6とを備えて構成されている。ケーブル1を構成する線材2のジョイント部7の位置には、ジョイントパンク防止部5が形成されている。このジョイントパンク防止部5は、ジョイント部7の部分がクロスヘッド4を通過する際にジョイント部7とシース3との間にエアーを封入することによって形成されている。ジョイントパンク防止部5は、ジョイント部7の位置におけるシース3を膨らませて形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジョイント部を有する線材とこの線材を被覆するシースとを備えてなるケーブルの製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブルの製造に関して簡単に説明する。先ず、サプライドラムから線材が押出機に供給される。次に、押出機においては、供給された線材の外側にシースを被着させる工程が行われる。押出機からはケーブルの状態で送り出しが行われ、この送り出されたケーブルは冷却水槽においてシースの部分が冷却される。冷却されたケーブルは引取機を介して巻取りドラムに巻き取られる(例えば下記特許文献1参照)。
【0003】
線材は連続して押出機に供給される。これは製造効率を高めるためである。すなわち、サプライドラム間において線材の端末と先端とを予め結線(ジョイント)しておき、この状態で押出機に線材を供給するようにすれば線材の供給の中断がなくなることから、押出機でのシースの被着が連続的に行えるようになり、結果、製造効率を高めることができるようになる。
【特許文献1】特開2002−42578号公報 (第3頁、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ケーブルの製造過程において、線材の端末と先端とを結線して形成されたジョイント部が押出機のクロスヘッドを通過すると、ジョイント部形状の凹凸によってシースが破損(ジョイントパンク)してしまうという不具合がある。この破損した状態でケーブルを冷却水槽に入れてしまうとシースの内側に水分が浸入してしまうことから、ジョイントパンクした部分を手で持ち上げながら冷却水槽を通過(例えば約20m)させるという面倒な作業が行われている。
【0005】
尚、ジョイントパンクした部分を手で持ち上げながら冷却水槽を通過させる作業を行っているものの、微量の水分の浸入まで防ぐことができない場合があり、一つのジョイントパンクによって約2mのケーブルのロスが発生してしまうこともある。この他、手で持ち上げながら作業を行うのでは安全性が懸念されることになる。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、ジョイントパンクの発生を防ぐことが可能なケーブルの製造装置及び製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明のケーブルの製造装置は、結線して形成されたジョイント部を有する線材を押出機のクロスヘッドに挿通しつつ前記線材の外側にシースを被着させることによりなるケーブルの製造装置において、前記ジョイント部の部分が前記クロスヘッドを通過する際に作動して前記ジョイント部と前記シースとの間にエアーを封入し前記ジョイント部の位置における前記シースを膨らませてジョイントパンク防止部を形成するエアー封入手段を前記押出機に設けることを特徴としている。
【0008】
請求項2記載の本発明のケーブルの製造装置は、請求項1に記載のケーブルの製造装置において、前記エアー封入手段は前記ジョイント部と前記シースとの間に前記エアーを供給するエアー供給部を複数有し、該複数のエアー供給部を前記線材の周方向に配置することを特徴としている。
【0009】
記課題を解決するためになされた請求項3記載の本発明のケーブルの製造方法は、結線して形成されたジョイント部を有する線材を押出機のクロスヘッドに挿通しつつ前記線材の外側にシースを被着させるとともに、前記ジョイント部の部分が前記クロスヘッドを通過する際に前記ジョイント部と前記シースとの間にエアーを封入し前記ジョイント部の位置における前記シースを膨らませてジョイントパンク防止部を形成する工程を含むことを特徴としている。
【0010】
このような特徴を有する本発明によれば、ジョイント部の位置におけるシースがエアーの封入によって膨らむようになる。シースが膨らむことによりジョイントパンク防止部が形成される。シースは、ジョイントパンク防止部の形成によってジョイント部形状の凹凸の影響を受けることなくクロスヘッドを通過する。従って、ジョイント部の部分が押出機のクロスヘッドを通過してもジョイントパンクが発生することはない。シースを膨らませることに関しては、線材の周囲から均等にジョイント部の部分へエアーを供給すれば、偏りのない膨らみとなるジョイントパンク防止部が形成される。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載された本発明によれば、ジョイントパンクの発生を防止することが可能なケーブルの製造装置を提供することができるという効果を奏する。また、請求項2に記載された本発明によれば、偏りのない膨らみとなるジョイントパンク防止部を形成することができるという効果を奏する。また、請求項3に記載された本発明によれば、ジョイントパンクの発生を防止することが可能なケーブルの製造方法を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら説明する。図1は本発明のケーブルの製造装置及び製造方法の一実施の形態を示す断面図である。また、図2(a)はジョイントパンク防止部を含むケーブルの外観図、図2(b)は(a)に対する比較例としてのケーブルの外観図、図3はエアー封入手段の概略構成図である。
【0013】
図1において、ケーブル1を製造するための製造装置の一構成となる押出機は、絶縁性を有するシース材料(樹脂ペレットなどの被覆材料)を貯留するためのホッパと、このホッパからシース材料が供給されるシリンダと、シリンダ内に設けられてホッパから供給されるシース材料を混練するスクリューと、スクリューを回転駆動させるスクリュー駆動部と、スクリューから押し出されてくる溶融した状態のシース材料を線材2の外側に被着させてシース3とするクロスヘッド4と、ケーブル1にジョイントパンク防止部5を形成するためのエアー封入手段6とを備えて構成されている。製造されるケーブル1は、CV、VVR…などである(ケーブル全般を対象とする)。
【0014】
ケーブル1は、線材2と、この線材2の外側に被着するシース3とを備えて構成されている。図1の場合、線材2の送り方向は左から右になっている。線材2はこの方向へ走行する途中でシース3が被着するようになっている(シース材料の流れに関しては従来と同じであるものとする)。線材2は、シース3の内側に存在する内線となるものであって、導体とこの導体の外側の絶縁体とを備えて構成されている。線材2は、線と線の各導体を結線することにより形成されるジョイント部7を有している。
【0015】
尚、上記の結線は、本線側の導体を多少間引くような状態でなされている。また、結線は、導体同士を捻るようにしてなされている。
【0016】
このような結線により形成されるジョイント部7には、ジョイント部7の強化及び形状を整えるための例えばPVCテープが巻き付けられている。引用符号8はPVCテープによるテープ巻きを示している。ジョイント部7の部分では、形状ができるだけ整えられるようになっているものの、図1に示すような凹凸が生じてしまっている。
【0017】
ジョイント部7の位置には、ジョイントパンク防止部5が形成されている。このジョイントパンク防止部5は、ジョイント部7の部分がクロスヘッド4を通過する際にジョイント部7とシース3との間にエアーを封入することによって形成されている。ジョイントパンク防止部5は、ジョイント部7の位置におけるシース3を膨らませて形成されている。
【0018】
ジョイント部7の位置において、ジョイント部7とシース3は密着が生じないようになっている(ジョイント部7の形状の凹凸を拾わなければよいものとする)。ジョイントパンク防止部5は、封入したエアーがクッションとなって破損(ジョイントパンク)を防止するという機能を有している。ケーブル1は、ジョイントパンク防止部5を有することにより、ジョイント部7がどの位置にあるかが一目で分かるようになっている。また、どの位置が引き落としになるかも一目で分かるようになっている。
【0019】
図2(a)において、ジョイントパンク防止部5は、この内部にエアーが封入されている。ジョイントパンク防止部5の前後は、シース3が線材2(図1参照)に対して密着した状態になっている。ジョイントパンク防止部5の形成される範囲は、引き落としの部分となっている。引き落としの部分は、ケーブル1の製造過程でエアーの供給とバキュームの強弱とによってこの距離が調整されている。エアーの供給とバキュームの強弱とによってシース3の外観も調整されるようになっている。
【0020】
ジョイントパンク防止部5の形成のない図2(b)に示す従来のケーブルは、ジョイント部の部分にもシースが密着するようになっており、ジョイント部の形状の凹凸を拾って図示のような外観になっている。ここでは特に図示しないが、ジョイントパンクが発生している。
【0021】
図1及び図3において、エアー封入手段6は、ジョイント部7とシース3との間に向けてエアーを供給する部分としてのエアー供給部9を備えている。このエアー供給部9は、エアー供給装置10から伸びるホース11の端末に設けられている。エアー供給部9は、ノズル状に形成されている。エアー供給部9は、クロスヘッド4において線材2を案内する円筒部12に取り付け固定されている。エアー供給部9は、円周方向に等ピッチで四つ取り付けられている(数は一例である。線材2の周囲から均等にジョイント部7の部分へエアーを供給すれば、偏りのない膨らみとなるジョイントパンク防止部5が形成される)。
【0022】
エアー封入手段6は、エアー供給装置10を制御する制御機能を有する制御装置13を更に備えている(CPU等を含んで構成されている)。この他、エアー封入手段6は、特に図示しないが、エアー封入時間タイマーやエアー圧調整機やバキューム入・切電磁弁等も備えている。エアー封入手段6は、例えば運転ボタン一つを操作するだけで、ジョイント部7の部分がクロスヘッド4を通過する際に、ジョイント部7とシース3との間にエアーを封入してジョイントパンク防止部5を形成することができるように構成されている。
【0023】
本発明によれば、ジョイントパンク防止部5の形成によって、一ヶ月平均約220件〜240件発生していたジョイントパンクがゼロに抑えられたという結果が得られている。これにより、水分混入不良により発生していたロスがなくなるという効果が得られる。また、ジョイント部7の部分を手で持ち上げて冷却水槽を通過させるという面倒な作業を行う必要がないことから、作業性及び安全性が向上するという効果も得られる。
【0024】
その他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のケーブルの製造装置及び製造方法の一実施の形態を示す断面図である。
【図2】(a)はジョイントパンク防止部を含むケーブルの外観図、(b)は(a)に対する比較例としてのケーブルの外観図である。
【図3】エアー封入手段の概略構成図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ケーブル
2 線材
3 シース
4 クロスヘッド
5 ジョイントパンク防止部
6 エアー封入手段
7 ジョイント部
8 テープ巻き
9 エアー供給部
10 エアー供給装置
11 ホース
12 円筒部
13 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結線して形成されたジョイント部を有する線材を押出機のクロスヘッドに挿通しつつ前記線材の外側にシースを被着させることによりなるケーブルの製造装置において、
前記ジョイント部の部分が前記クロスヘッドを通過する際に作動して前記ジョイント部と前記シースとの間にエアーを封入し前記ジョイント部の位置における前記シースを膨らませてジョイントパンク防止部を形成するエアー封入手段を前記押出機に設ける
ことを特徴とするケーブルの製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載のケーブルの製造装置において、
前記エアー封入手段は前記ジョイント部と前記シースとの間に前記エアーを供給するエアー供給部を複数有し、該複数のエアー供給部を前記線材の周方向に配置する
ことを特徴とするケーブルの製造装置。
【請求項3】
結線して形成されたジョイント部を有する線材を押出機のクロスヘッドに挿通しつつ前記線材の外側にシースを被着させるとともに、前記ジョイント部の部分が前記クロスヘッドを通過する際に前記ジョイント部と前記シースとの間にエアーを封入し前記ジョイント部の位置における前記シースを膨らませてジョイントパンク防止部を形成する工程を含む
ことを特徴とするケーブルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−135307(P2008−135307A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321036(P2006−321036)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】