説明

ケーブルグリップ

【課題】 電力供給用、通信用等のケーブルを敷設する際において、該ケーブルを把持するケーブルグリップであって、該ケーブルに対する取付作業が容易で、且つケーブルに取り付けたときの引っ掛かりの惧れのないケーブルグリップを提供する。
【解決手段】 ケーブルCに長手方向中央から巻き付けられる帯状のグリップ本体部2と、このグリップ本体部2の長手方向両端側に設けられたリング部3とからなり、前記グリップ本体部2の長手方向中央側部分に、グリップ本体部2の長手方向両側部分よりも幅狭な幅狭部6を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルを把持するケーブルグリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力供給用、通信用等のケーブルを敷設する際において、該ケーブルを引っ張って軸方向移動させたり、該ケーブルを引っ張りながら横移動させたりする場合、ケーブルをケーブルグリップで把持し(ケーブルにケーブルグリップを取付け)、このケーブルグリップにフック等を介してワイヤーを連結し、このワイヤーをウインチ等の引っ張り手段によって引っ張るようにしている。
【0003】
前記ケーブルグリップとして、ケーブルの中間部分(中途部分)を把持可能なケーブルグリップが特許文献1に記載されたものがある。
この特許文献1には、リング部と、このリング部に長手方向の一端側が取り付けられた多数本の細長い帯とからなるケーブルグリップと、多数本の細長い帯を重ね合わせて、その中央部を折り曲げてリング部を形成したケーブルグリップとが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−365754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記ケーブルグリップは、多数本の帯をリング部側からケーブルに螺旋状に交錯して巻き付けていき、その後、巻き付けた帯がほどけないように、各帯の遊端側の端部を止めるという手順で行われ、この従来のケーブルグリップにあっては、ケーブルに対する取付作業が面倒で大変であるという問題がある。
そこで、本発明は、前記問題点に鑑み、ケーブルに対する取付作業が容易なケーブルグリップを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記技術的課題を解決するために本発明が講じた技術的手段は、ケーブルに長手方向中央から巻き付けられる帯状のグリップ本体部と、このグリップ本体部の長手方向両端側に設けられたリング部とからなり、前記グリップ本体部の長手方向中央側部分に、グリップ本体部の長手方向両側部分よりも幅狭な幅狭部が形成されていることを特徴とする。
また、グリップ本体部は一本の帯素材から形成され、この帯素材の長手方向中央側部分を二つ折りにして該二つ折り部分を相互に固着することにより幅狭部が形成されているのがよい。
【0007】
また、グリップ本体部の長手方向中央部に目印部材が設けられているのがよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のケーブルグリップによれば、一本の帯状グリップ本体部を長手方向中央部からケーブルに巻き付けるだけであるので、ケーブルに対する取付作業が容易である。
また、前記グリップ本体部は、幅が広ければ広いほどケーブルとの間の摩擦抵抗が大きくなるので、ケーブルを把持するのに有利であるが、そうすると、一本の帯状のグリップ本体部を長手方向中央部からケーブルに巻き付けるようにしたケーブルグリップにあっては、ケーブルに巻き付けられたグリップ本体部の長手方向中央部(巻き始め部分)がケーブルの外周面からケーブルの径方向外方に大きく突出してしまい(図5(b)参照)、該突出部分が何かの障害物に引っ掛かる惧れがある。
【0009】
また、これを防止するために、グリップ本体部の幅を狭くすると、強度不足や、ケーブルに対する摩擦抵抗不足となる。
これに対し、本発明では、グリップ本体部の長手方向中央側部分に、グリップ本体部の長手方向両側部分よりも幅狭な幅狭部を形成したことにより、ケーブルに巻き付けられたグリップ本体部の長手方向中央部がケーブルの外周面からケーブルの径方向外方へ突出する突出量は小さく(図5(a)参照)、該グリップ本体部の巻き始め部分が何かの障害物に引っ掛かる惧れがない(又は少ない)。また、グリップ本体部の長手方向両側部分は、幅広であるので、ケーブルを確実に把持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ケーブルグリップの斜視図である。
【図2】(a)はケーブルグリップの平面図、(b)はケーブルグリップの正面図である。
【図3】幅狭部端部側の斜視図である。
【図4】ケーブルに巻き付けたケーブルグリップの巻き始め部分を示す正面図である。
【図5】(a)は本発明のケーブルグリップをケーブルに巻き付けた状態の巻き始め部分の側面図、(b)は比較例に係るケーブルグリップをケーブルに巻き付けた状態の巻き始め部分の側面図である。
【図6】本発明のケーブルグリップをケーブルに巻き付けた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1、図2、図6において、1は、主として、ケーブルCを敷設等する際におけるケーブルCの中間引きに使用されるケーブルグリップである。
このケーブルグリップ1は、帯状のグリップ本体部2と、このグリップ本体部2の長手方向両端側にそれぞれ設けられたリング部3と、各リング部3に設けられた補強布4とを有する。
【0012】
本実施形態では、グリップ本体部2とリング部3とは、ポリエステルなどの高強度の繊維を材料とし柔軟性・屈曲性に優れた一本の帯素材(織物ベルト)から形成されている。
なお、リング部3は、グリップ本体部2と別体で形成して該グリップ本体部2の長手方向の端部に縫着等によって固着するようにしてもよい。
前記グリップ本体部2は、長手方向中央側部分の幅狭部6と、この幅狭部6よりも幅広に形成された長手方向両側部分の幅広部7とから主構成されている。前記幅狭部6の長さは幅広部7の長さよりも短く形成されている。
【0013】
前記幅狭部6の幅W1は幅広部7の幅W2の半分の幅に形成されている。
本実施形態では、幅狭部6は、図3に示すように、グリップ本体部2を構成する帯素材を幅方向に二つ折りにして、該二つ折りした部分を相互に縫着等によって固着することにより形成されている。
これによって、幅狭部6の強度確保が図られている。
【0014】
なお、グリップ本体部2の幅狭部6は、帯素材を幅方向に観音開き折りにして、該部分を互いに縫着することにより、幅広部7の半分の幅狭に形成することもできるが、このようにすると、曲げ剛性が強くなって、曲げにくくなってケーブルCに巻き付け難くなるという欠点があるが、本実施形態のものにあっては、幅狭部6の強度確保が図られると共に、屈曲性も確保することができる。
【0015】
幅狭部6から幅広部7に至る部分(図3のD部分)は、幅方向に折り返した部分の折り幅を徐々に狭くすることにより、幅狭部6から幅広部7にかけて幅が徐々に幅広となるように形成されている。
幅狭部6の長手方向中央部はグリップ本体部2の中央部であり、このグリップ本体部2の中央部には、目印部材8が縫着されて取り付けられている。
【0016】
前記リング部3は以下のようにして形成されている。
先ず、グリップ本体部2及びリング部3を構成する帯素材の長手方向の端部側を長手方向に折り返して、該帯素材の長手方向の端部側をグリップ本体部2の長手方向端部側に重ね合わせ、該重ね合わせた部分(図1、2のA部分)を相互に逢着することにより、リング状部分を形成する。
【0017】
次に、このように形成されたリング状部分を内側に巻き三つ折りして該三つ折り部分を相互に逢着することによりリング部3が形成されている。
なお、グリップ本体部2の長手方向中央部から一方のリング部3までの寸法と、グリップ本体部2の長手方向中央部から他方のリング部3までの寸法とは同じ寸法に形成されている。
【0018】
補強布4は、リング部3の、ケーブルグリップ1長手方向端部側に巻き付けられて縫着されている。
前記構成のケーブルグリップ1にあっては、図4、図5(a)、図6に示すように、グリップ本体部2をケーブルCに長手方向の中央から巻き付けていく。
すなわち、グリップ本体部2の長手方向中央を境としたグリップ本体部2の長手方向一方側と他方側とを、螺旋状に且つ互いに交差するようにケーブルCに巻き付ける。
【0019】
このとき、グリップ本体部2の長手方向中央部に目印部材8が設けられているので、グリップ本体部2の長手方向中央が明確となり(巻き始め部分が明確となり)、グリップ本体部2を巻き終えた後に、一対のリング部3のケーブルCの長手方向に関する位置が略同じ位置に一致する(一対のリング部3に位置ズレが略生じない)。
なお、ケーブルグリップ1は目印部材8が設けられている側とは反対側の面をケーブルCに接触させるようにして巻き付ける。
【0020】
グリップ本体部2を巻き付けた後、一対のリング部3を重ね合わせて両リング部3にワイヤーの一端側を直接又はフック等の連結具を介して連結し、該ワイヤーをウインチ等の引っ張り手段によって引っ張る。
すると、ケーブルグリップ1(のグリップ本体部2)は締まって、該ケーブルグリップ1によってケーブルCがしっかりと把持(把掴)され、ケーブルCを引っ張って軸方向移動させたり、該ケーブルCを引っ張りながら横移動させたりすることができる。
【0021】
本実施形態のケーブルグリップ1にあっては、一本の帯状グリップ本体部2を長手方向中央部からケーブルCに巻き付けるだけであるので、ケーブルCに対する取付作業が容易に行える。
また、前記グリップ本体部2は、幅が広ければ広いほどケーブルCとの間の摩擦抵抗が大きくなるので、ケーブルCを把持するのに有利であるが、そうすると、一本の帯状のグリップ本体部2を長手方向中央部からケーブルCに巻き付けるようにしたケーブルグリップ1にあっては、図5(b)に示すように、ケーブルCに巻き付けられたグリップ本体部2の長手方向中央部がケーブルCの外周面からケーブルCの径方向外方に大きく突出してしまい(グリップ本体部2の長手方向中央部のケーブルCの外周面からの突出量B1が大きく)、該突出部分10が何かの障害物に引っ掛かる惧れがある。
【0022】
また、これを防止するために、グリップ本体部2の幅を全体的に狭くすると、強度不足や、ケーブルCに対する摩擦抵抗不足となる。
これに対し、前記実施形態のケーブルグリップ1では、グリップ本体部2の長手方向中央側部分に、グリップ本体部2の長手方向両側部分よりも幅狭な幅狭部6を形成したことにより、図5(a)に示すように、ケーブルCに巻き付けられたグリップ本体部2の長手方向中央部がケーブルCの外周面からケーブルCの径方向外方への突出量B2は小さく、該グリップ本体部2の長手方向中央部が何かの障害物に引っ掛かる惧れがない(又は少ない)。また、グリップ本体部2の長手方向両側部分(幅広部7)は、幅広であるので、ケーブルCを確実に把持することができる。
【0023】
なお、図例では一本のケーブルCにケーブルグリップ1を取り付けた場合を図示しているが、束ねられた複数本のケーブルに対してケーブルグリップ1を取り付けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0024】
2 グリップ本体部
3 リング部
6 幅狭部
7 グリップ本体部の長手方向両側部分(幅広部)
8 目印部材
9 ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル(C)に長手方向中央から巻き付けられる帯状のグリップ本体部(2)と、このグリップ本体部(2)の長手方向両端側に設けられたリング部(3)とからなり、前記グリップ本体部(2)の長手方向中央側部分に、グリップ本体部(2)の長手方向両側部分(7)よりも幅狭な幅狭部(6)が形成されていることを特徴とするケーブルグリップ。
【請求項2】
グリップ本体部(2)は一本の帯素材から形成され、この帯素材の長手方向中央側部分を二つ折りにして該二つ折り部分を相互に固着することにより幅狭部(6)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のケーブルグリップ。
【請求項3】
グリップ本体部(2)の長手方向中央部に目印部材(8)が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のケーブルグリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−50199(P2012−50199A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188354(P2010−188354)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(390037534)オーエッチ工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】