説明

ケーブルコンパウンド除去工具

【課題】螺旋波付き金属管の溝内に残ったコンパウンドを同軸ケーブルを傷つけることなく容易に除去できるケーブルコンパウンド除去工具を提供する。
【解決手段】螺旋波付き金属管5にて外部導体が形成されると共に外部導体を覆うシースがコンパウンドで形成された同軸ケーブル2の端部からシースを剥き取るとき、螺旋波付き金属管5に付着して残るコンパウンドを除去するためのケーブルコンパウンド除去工具1において、同軸ケーブル2を挿入するための挿入穴3を有する工具本体4と、工具本体4に挿入穴3内に突出して設けられ螺旋波付き金属管5の外周の螺旋溝6に嵌合する除去刃7とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、螺旋波付き金属管にて外部導体が形成されると共に外部導体を覆うシースがコンパウンドで形成された同軸ケーブルの端部からシースを剥き取るとき、螺旋波付き金属管に付着して残るコンパウンドを除去するためのケーブルコンパウンド除去工具に関する。
【背景技術】
【0002】
図10に示すように、螺旋波付き金属管5にて外部導体が形成されると共に外部導体を覆うシース40がコンパウンドで形成された同軸ケーブル2にあっては、同軸ケーブル2の端部からシース40を剥き取るとき、螺旋波付き金属管5の螺旋溝6内にコンパウンドが付着して残りやすいという問題があった。
【0003】
このため、螺旋波付き金属管5の螺旋溝6内にコンパウンドが残った場合、螺旋溝6内にナイフ41を挿入してコンパウンドを除去したり、特許文献1記載の洗浄装置で螺旋溝6内を洗浄してコンパウンドを除去していた。
【0004】
【特許文献1】実開昭64−45413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、螺旋波付き金属管5には凹凸があり、コンパウンドの粘着性が高いことから、容易にはコンパウンドを除去できず、作業が困難であるという課題があった。また、ナイフ41を使用してコンパウンドを除去する場合、同軸ケーブル2に外傷を与える虞があるという課題もあった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、螺旋波付き金属管の螺旋溝内に残ったコンパウンドを同軸ケーブルを傷つけることなく容易に除去できるケーブルコンパウンド除去工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、螺旋波付き金属管にて外部導体が形成されると共に該外部導体を覆うシースがコンパウンドで形成された同軸ケーブルの端部から上記シースを剥き取るとき、上記螺旋波付き金属管に付着して残るコンパウンドを除去するためのケーブルコンパウンド除去工具において、上記同軸ケーブルを挿入するための挿入穴を有する工具本体と、該工具本体に上記挿入穴内に突出して設けられ上記螺旋波付き金属管の外周の螺旋溝に嵌合する除去刃とを備えたものである。
【0008】
上記工具本体に半径方向に延びて形成され上記除去刃を収容すると共に除去刃で除去されたコンパウンドを収容するための収容孔と、上記工具本体に回動自在に設けられ上記除去刃を上記挿入穴内から半径方向外方に退避可能に支持するレバーと、上記工具本体に形成され上記除去刃が上記挿入穴内に所定長さ突出したとき除去刃の移動を規制するように上記レバーの回動を規制するストッパ部と、上記工具本体に設けられると共に上記レバーに係脱可能に係合され上記除去刃を上記挿入穴内に突出させるように上記レバーを弾発付勢するスプリング付フックとを備えるとよい。
【0009】
また、上記工具本体には、電動ドリルに装着可能なアタッチメントが上記挿入穴の中心軸と同軸上に設けられるとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、螺旋波付き金属管の螺旋溝内に残ったコンパウンドを同軸ケーブルを傷つけることなく容易に除去できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の好適実施の形態を添付図面を用いて説明する。
【0012】
図1(a)、図1(b)及び図8に示すように、ケーブルコンパウンド除去工具1は、同軸ケーブル2を挿入するための挿入穴3を有する工具本体4と、工具本体4に挿入穴3内に突出して設けられ同軸ケーブル2の螺旋波付き金属管5の外周の螺旋溝6に嵌合する除去刃7とを備えて構成されている。
【0013】
図1(a)、図1(b)及び図2に示すように、工具本体4は、樹脂からなり、挿入穴3を中心とする筒状に形成されている。工具本体4は、一端側にコンパウンドを除去するためのコンパウンド除去部8を有すると共に他端側に工具本体4を回転させるためのハンドル部9を有する。コンパウンド除去部8は、コンパウンド除去部8とハンドル部9の間の中間部10より大径に形成されている。コンパウンド除去部8には、除去刃7を収容すると共に除去刃7で除去されたコンパウンドを収容するための収容孔11が形成されている。
【0014】
図1(b)及び図3に示すように、収容孔11は、コンパウンド除去部8の挿入穴3から半径方向外方に延びると共に先端を開口して形成されている。収容孔11に臨むコンパウンド除去部8の外周部には、除去刃7を挿入穴3内から半径方向外方に退避可能に支持するためのレバー12が回動自在に設けられている。具体的には、レバー12は、収容孔11の開口の周方向の両側に掛け渡して設けられると共に、一端をコンパウンド除去部8に回動自在に設けられている。レバー12の先端側には、収容孔11内のコンパウンドを逃がすための逃がし孔13が形成されている。また、レバー12の先端には、後述するスプリング付フック14に係脱可能に係合される固定フック15が設けられている。
【0015】
図5に示すように、収容孔11の開口縁には、レバー12を着座させてレバー12の回動を規制するためのストッパ部16が形成されている。ストッパ部16は、レバー12の回動を規制することで、除去刃7が挿入穴3内に所定長さを越えて突出するのを規制するようになっている。また、コンパウンド除去部8の外周面には、除去刃7を挿入穴3内に突き出させるようにレバー12を弾発付勢するスプリング付フック14が設けられている。
【0016】
図3及び図4に示すようにスプリング付フック14は、コンパウンド除去部8の外周面に取り付けられた取付座17と、取付座17に第一支軸18を介して回動自在に設けられ第一支軸18の径方向外方に延びる操作レバー19と、操作レバー19に第二支軸20を介して回動自在に、かつ、操作レバー19の延長方向にスライド可能に設けられレバー12の固定フック15に係脱可能に係合される可動フック21と、操作レバー19に設けられ可動フック21を操作レバー19の先端側(回動端側)に弾発付勢するためのスプリング22とを備えて構成されている。具体的には、スプリング22はコイルバネからなり、一端を操作レバー19に係止されると共に他端を第二支軸20に係止されている。スプリング22は、伸長方向に弾発付勢するようになっており、第二支軸20を介して可動フック21を弾発付勢するようになっている。操作レバー19には、第二支軸20の両端を操作レバー19の延長方向にスライド可能に支持するための長孔23が形成されている。
【0017】
図1(a)及び図3に示すように、除去刃7はレバー12の基端側に回動方向に延びて設けられており、先端に螺旋波付き金属管5の螺旋溝6に嵌合される刃先24を有する。また、除去刃7は樹脂にて形成されており、螺旋波付き金属管5に当接しても螺旋波付き金属管5を傷つけないようになっている。
【0018】
次に本実施の形態の作用を述べる。
【0019】
図5に示すように、同軸ケーブル2の螺旋波付き金属管5の螺旋溝6内に残ったコンパウンドを除去する場合、ケーブルコンパウンド除去工具1のスプリング付フック14を固定フック15から離脱させ、除去刃7を挿入穴3から退避させるようにレバー12を回動させる。
【0020】
この後、挿入穴3に螺旋波付き金属管5をコンパウンド除去部8側から挿入し、螺旋波付き金属管5の基端部を収容孔11に位置させる。収容孔11は開口されているため、挿入穴3内の螺旋波付き金属管5を目視確認でき、容易に位置合わせできる。
【0021】
図6及び図7に示すように、レバー12を回動させて除去刃7を挿入穴3内に挿入しながら同軸ケーブル2を軸方向に適宜微小移動させて除去刃7を螺旋波付き金属管5の螺旋溝6に嵌合させ、スプリング付フック14の可動フック21を固定フック15に掛け、操作レバー19を固定フック15とは反対側に回動させる。可動フック21は操作レバー19に対して相対的に操作レバー19の基端側にスライドされながらスプリング22を変形させ、スプリング22から復帰方向の力を受ける。これにより、レバー12はスプリング付フック14側に弾発付勢され、除去刃7が螺旋波付き金属管5に押圧される。同軸ケーブル2には種々の寸法のものがあるが、除去刃7はスプリング付フック14の弾発力によって螺旋波付き金属管5に押圧されるため、挿入穴3内に突出する除去刃7の長さ(突き出し寸法)を調整する必要はなく、コンパウンド除去作業に要する手間と時間を省くことができる。
【0022】
このようにして螺旋波付き金属管5にケーブルコンパウンド除去工具1が装着されたら、図8に示すように、ハンドル部9を回してケーブルコンパウンド除去工具1を同軸ケーブル2を中心として回転させ、ケーブルコンパウンド除去工具1を螺旋波付き金属管5から抜く方向に移動させる。除去刃7が螺旋波付き金属管5の螺旋溝6に沿って移動され、螺旋波付き金属管5の外周面に残るコンパウンドが除去刃7によって削ぎ落とされる。除去刃7は樹脂からなるため、螺旋波付き金属管5に外傷を与える虞がなく、高い品質で安全にコンパウンドを除去できる。また、螺旋波付き金属管5の中心軸が若干曲がっている場合であっても、スプリング付フック14の弾発力により除去刃7が螺旋波付き金属管5の形状に追従し、コンパウンドを円滑に除去することができる。
【0023】
螺旋波付き金属管5から削ぎ落とされたコンパウンドは、収容孔11が螺旋波付き金属管5の下方に移動されたとき収容孔11に落下して収容される。収容孔11に収容されたコンパウンドは、レバー12の逃がし孔13から適宜逃げるため、収容孔11内に詰まることはない。また、螺旋波付き金属管5の螺旋溝6に沿った除去刃7の移動が終わったとき、工具本体4は螺旋波付き金属管5から外れるため、例えば除去刃7を工具本体4に固定されるものとし、工具本体4を回転させながら挿入穴3に螺旋波付き金属管5を挿入してコンパウンドを除去するようにした場合のように螺旋波付き金属管5から工具本体4を取り外す必要はなく、作業時間を短縮できる。工具本体4が螺旋波付き金属管5から外れたら、スプリング付フック14をレバー12から外し、レバー12を回動させて除去刃7を露出させ、除去刃7に付着したコンパウンドを除去する。
【0024】
このように、同軸ケーブル2を挿入するための挿入穴3を有する工具本体4と、工具本体4に挿入穴3内に突出して設けられ螺旋波付き金属管5の外周の螺旋溝6に嵌合する除去刃7とを備えてケーブルコンパウンド除去工具1を構成したため、同軸ケーブル2に外傷を与えることなく安全にコンパウンド除去作業を行うことができる。
【0025】
また、ケーブルコンパウンド除去工具1が、工具本体4に半径方向に延びて形成され除去刃7を収容すると共に除去刃7で除去されたコンパウンドを収容するための収容孔11と、工具本体4に回動自在に設けられ除去刃7を挿入穴3内から半径方向外方に退避可能に支持するレバー12と、工具本体4に形成され除去刃7が挿入穴3内に所定長さ突出したとき除去刃7の移動を規制するようにレバー12の回動を規制するストッパ部16と、工具本体4に設けられると共にレバー12に係脱可能に係合され除去刃7を挿入穴3内に突出させるようにレバー12を弾発付勢するスプリング付フック14とを備えるものとしたため、同軸ケーブル2に寸法のバラツキがあっても除去刃7の突き出し寸法の調整をする必要がなく、作業時間を短縮できる。そして、例えば除去刃7が工具本体4に固定され場合のように挿入穴3に螺旋波付き金属管5を挿抜するときに工具本体4を回転させる必要が無く、挿入穴3に螺旋波付き金属管5を容易に挿抜でき、コンパウンド除去作業を効率よくできる。
【0026】
なお、工具本体4は筒状に形成され挿入穴3は軸方向に貫通されるものとしたが、これに限るものではなく、挿入穴3はコンパウンド除去部8側が開口していればハンドル部9側は閉じていてもよい。
【0027】
他の実施の形態について述べる。
【0028】
図9は、ケーブルコンパウンド除去工具1の変形例を示す。上述と同様の構成については説明を省き、同符号を付す。
【0029】
図9に示すように、ケーブルコンパウンド除去工具30は、上述のケーブルコンパウンド除去工具1に電動ドリル(図示せず)に装着可能なアタッチメント31を付加したものである。
【0030】
アタッチメント31は、工具本体4のハンドル部9側の端部に挿入穴3の中心軸32と同軸上となるように設けられている。アタッチメント31は、挿入穴3に挿入されて一体的に設けられた取付部33と、取付部33に挿入穴3の中心軸32と同軸となるように設けられ電動ドリルのチャック(図示せず)に把持されるロッド部34とからなる。
【0031】
同軸ケーブル2の螺旋波付き金属管5の螺旋溝6内に残ったコンパウンドを除去する場合、上述の実施の形態と同様に螺旋波付き金属管5にケーブルコンパウンド除去工具30を装着したのち、アタッチメント31のロッド部34を電動ドリルのチャックに把持させる。この後、ケーブルコンパウンド除去工具30が螺旋波付き金属管5から抜ける方向に電動ドリルを回転させる。ケーブルコンパウンド除去工具30を容易に、かつ、瞬時に回転させることができ、作業時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】(a)は本発明の好適実施の形態を示すケーブルコンパウンド除去工具の正面図であり、(b)は(a)の側面図である。
【図2】ケーブルコンパウンド除去工具の背面図である。
【図3】図1(b)のA−A線断面図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【図5】同軸ケーブルを挿入したケーブルコンパウンド除去工具の正面図である。
【図6】同軸ケーブルの螺旋波付き金属管の溝に除去刃を嵌合させたケーブルコンパウンド除去工具の正面図である。
【図7】図6の側面図である。
【図8】螺旋波付き金属管の溝に沿って回転させたケーブルコンパウンド除去工具の側面図である。
【図9】他の実施の形態を示すケーブルコンパウンド除去工具の側面図である。
【図10】螺旋波付き金属管の溝内に残ったコンパウンドをナイフで除去する状態の説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 コンパウンド除去工具
2 同軸ケーブル
3 挿入穴
4 工具本体
5 螺旋波付き金属管
6 螺旋溝
7 除去刃
11 収容孔
12 レバー
14 スプリング付フック
16 ストッパ部
31 アタッチメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋波付き金属管にて外部導体が形成されると共に該外部導体を覆うシースがコンパウンドで形成された同軸ケーブルの端部から上記シースを剥き取るとき、上記螺旋波付き金属管に付着して残るコンパウンドを除去するためのケーブルコンパウンド除去工具において、上記同軸ケーブルを挿入するための挿入穴を有する工具本体と、該工具本体に上記挿入穴内に突出して設けられ上記螺旋波付き金属管の外周の螺旋溝に嵌合する除去刃とを備えたことを特徴とするケーブルコンパウンド除去工具。
【請求項2】
上記工具本体に半径方向に延びて形成され上記除去刃を収容すると共に除去刃で除去されたコンパウンドを収容するための収容孔と、上記工具本体に回動自在に設けられ上記除去刃を上記挿入穴内から半径方向外方に退避可能に支持するレバーと、上記工具本体に形成され上記除去刃が上記挿入穴内に所定長さ突出したとき除去刃の移動を規制するように上記レバーの回動を規制するストッパ部と、上記工具本体に設けられると共に上記レバーに係脱可能に係合され上記除去刃を上記挿入穴内に突出させるように上記レバーを弾発付勢するスプリング付フックとを備えた請求項1記載のケーブルコンパウンド除去工具。
【請求項3】
上記工具本体には、電動ドリルに装着可能なアタッチメントが上記挿入穴の中心軸と同軸上に設けられた請求項1又は2記載のケーブルコンパウンド除去工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−148237(P2010−148237A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322659(P2008−322659)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】