説明

ケーブルドラム

【課題】移動台車等を使用する必要がないにもかかわらず、移動時の方向転換を円滑に行うことができ、かつ、移動時におけるケーブルの破損を防止することができるケーブルドラムを提供すること。
【解決手段】電線50を保持及び移送するためのケーブルドラム10は、電線50が巻回される略円柱状の本体12と、本体12の両端にそれぞれ配置される2つのフランジ14A,14Bとを有する。2つのフランジ14A,14Bは、本体12に対して互いに独立して回転可能に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルドラムに関する。
【背景技術】
【0002】
図10に示すように、従来、ケーブル150を保持して移動するために、ケーブルドラム100が使用されている。図11に示すように、ケーブルドラム100は、軸部100aとフランジ部100b,100bとで構成されている。軸部100aとフランジ部100b、100bとは、一体に構成されている。ケーブルドラム100は木製であり、軸部100aとフランジ部100b,100bには挿通孔100cが形成されている。
【0003】
図10に示すように、ケーブルドラム100が地面又は床から持ち上げられた状態で、挿通孔100cにシャフト102が挿通され、支持装置104によって支持される。この状態で、巻線及び延線が行われる。
ケーブルドラム100は例えば、フランジ部100b,100bの直径が約2メートル(m)、軸部100aの長さが約1メートル(m)の外形形状を有し、ケーブルを保持した状態の重量が約1トン(ton)である。
ケーブルドラム100は巻線された状態で倉庫に保管され、ケーブル150を使用するときに倉庫から搬出され、作業現場へ輸送される。
ところが、ケーブルドラム100は、上述のように大きな外形形状をしており、また、重量も大きいので、移動時の取り扱いが困難である。
【0004】
これに対して、特許文献1には、ケーブルドラムを載置して移動させるための移動台車が開示されている(特許文献1の図2等参照)。移動台車にケーブルドラムを載置した状態で、移動させることができる。
【0005】
また、特許文献2でも、車輪が配設されたケーブルドラム支持装置が開示されている(特許文献2の図2等参照)。ケーブルドラム支持装置にケーブルドラムを載置した状態で、移動させることができる。
以下、移動台車及びケーブルドラム支持装置を総称して、「移動台車等」と呼ぶ。
【特許文献1】特開平5−213526号公報
【特許文献2】特開平8−73120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ケーブルドラム100自体の形状が大きいから、移動台車等の形状は必然的にケーブルドラム100よりも大きくなる。
【0007】
このため、十分なスペースがない工場等において、移動台車等の保管場所の確保が問題になる。特に、多数のケーブルドラム100を同時に使用する必要がある場合には、移動台車等を多数保管する必要があり、ますます保管場所の確保が困難になる。
【0008】
このため、図12に示すように、移動台車等を使用せずに、作業者がケーブルドラム100の軸部100aを押して移動させる作業が行われる場合がある。
【0009】
ところが、ケーブルドラム100の外形形状及び重量が大きい場合には、移動時におけるケーブルドラム100の方向転換が困難である。このため、図13に示すように、例えば、工場200の出口200bの方向へ移動するために何度も方向転換する必要があり、作業効率が悪い。
【0010】
また、ケーブル150はケーブルドラム100と一緒に回転するから、図12に示すように、ケーブル150の端部150aが跳ね上がっている場合には、移動時に端部150aが床に接触し、毀損する場合があるという問題がある。
【0011】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、移動台車等を使用する必要がないにもかかわらず、移動時の方向転換を円滑に行うことができ、かつ、移動時におけるケーブルの破損を防止することができるケーブルドラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
具体的には、本発明は以下のものを提供する。
(1) 電線が巻回される略円柱状の本体と、前記本体の両端にそれぞれ配置される円盤状の2つのフランジと、を有するケーブルドラムであって、2つの前記フランジは、前記本体に対して互いに独立して回転可能に配置されていることを特徴とするケーブルドラムである。
【0013】
(1)の発明によれば、2つのフランジは本体に対して回転可能であるから、作業者は、電線が巻かれた本体を回転させない状態で押し、フランジのみを車輪のように回転させて、ケーブルドラムを押して移動することができる。
そして、2つのフランジは、本体に対して互いに独立して回転可能であるから、互いに反対方向に回転することができる。このため、ケーブルドラムを押して移動する際に、方向転換が容易である。
さらに、電線の端部が跳ね上がっているような巻線状態であっても、電線の端部を上方に向けた状態になるように本体部を固定して、ケーブルドラムを移動させることができるから、移動時おいてケーブルの破損を防止することができる。
【0014】
(2) 前記本体に対して前記フランジを回転可能に配置するための軸受を有することを特徴とする請求項1に記載のケーブルドラムである。
【0015】
(2)の発明に係るケーブルドラムは、軸受を有するから、本体に対するフランジの回転を円滑にすることができる。
【0016】
(3) 前記本体から前記フランジが脱落することを防止するための脱落防止部材を有することを特徴とする(1)又は(2)のいずれかに記載のケーブルドラムである。
【0017】
(3)の発明によれば、フランジが本体から脱落することを防止することができる。
【0018】
(4) 前記本体には、前記電線が前記フランジに接触することを防止するための接触防止部材が配置されていることを特徴とする(1)又は(2)のいずれかに記載のケーブルドラムである。
【0019】
(4)の発明によれば、電線がフランジに接触することを防止することができるから、フランジの回転が電線との接触によって妨げられることがない。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、2つのフランジは、本体に対して互いに独立して回転可能であるから、互いに反対方向に回転することができる。
【0021】
このため、本発明によれば、移動台車等を使用する必要がないにもかかわらず、移動時の方向転換を円滑に行うことができ、かつ、移動時におけるケーブルの破損を防止することができる。
【0022】
さらに、2つのフランジを床等に固定した状態で、本体のみを回転して延線することができる。このため、延線作業の際に、重量が大きなケーブルドラムを持ち上げる必要がなく、ケーブルドラムを持ち上げるための支持装置は不要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態の一例について、添付した図面を参照しながら、具体的に説明する。
【0024】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態のケーブルドラム10を示す概略斜視図である。
図2は、電線(ケーブル)50が巻かれた状態のケーブルドラム10を示す概略斜視図である。
【0025】
なお、本実施形態以降の説明では、同じ部材の場合には同じ符号を付すとともに、すでに説明した部材の説明は省略する。
【0026】
図1及び図2に示すケーブルドラム10は、電線50を保持及び移動するための装置である。また、ケーブルドラム10は、巻線時、及び延線時にも使用される。
図1及び図2に示すように、ケーブルドラム10は、略円柱状の本体12を有する。本体12は木製であり、挿通孔12aが形成されている。本体12には、電線50が巻回される。
【0027】
また、ケーブルドラム10は、2つのフランジ14A及び14B(以下、2つのフランジ14A及び14Bを総称して「フランジ14A等」と呼ぶ)を有する。フランジ14A等は本体12の両端にそれぞれ配置される。フランジ14A等は木製であり、例えば、4センチメートル(cm)の厚さを有する円盤状に形成されている。
【0028】
フランジ14A等には、挿通孔14aが形成されている。挿通孔14aの中心軸は、上述の本体12の挿通孔12aと同一である。挿通孔12a及び挿通孔14aで形成される貫通孔を以下、「貫通孔16」(図3参照)と呼ぶ。
【0029】
2つのフランジ14A等は、本体12に対して互いに独立して回転可能に配置されている。このため、例えば、図1に示すように、本体12を回転させないで固定した状態で、フランジ14Aを矢印X1方向へ回転させ、フランジ14Bを矢印X2方向へ回転させることができる。矢印X1方向と矢印X2方向は互いに逆の方向である。
【0030】
なお、電線50を巻線した状態の直径は、フランジ14A等の直径未満の直径となるように巻線される。
【0031】
また、本実施形態では、電線50の端部50aがフランジ14A等の外に出ているような巻線状態である。このような状態を、「跳ね上がった状態」とも呼ぶ。正確には、「端部50aがフランジ14A等の外に出ているような巻線状態」とは、フランジ14A等を底面とする円柱状の仮想領域の外部に、端部50aが出ている状態を意味する。
【0032】
図3は、ケーブルドラム10の概略側面図等である。図3(a)は、図1のケーブルドラム10を矢印Y1方向から見た概略側面図である。図3(b)は、図1のケーブルドラム10のA−A線概略断面図である。
【0033】
図3(b)に示すように、本体12は、曲面を構成する円柱側面部12bと、円柱底面部12cから構成されており、内部は中空になっている。円柱側面部12bと円柱底面部12cは、ねじ22Aによって固定されている。
図3(b)に示すように、本体12の円柱底面部12cには軸受18がねじ22Bによって固定されている。
軸受18は、本体12に対してフランジ14A等を回転可能に配置するための構成である。
【0034】
図3(a)及び図3(b)に示すように、本体12には脱落防止部材20がねじ22Bによって固定されている。ねじ22Bは、軸受18と脱落防止部材20の双方を本体12に固定するために使用されている。
脱落防止部材20は、フランジ14A等が、ケーブルドラム10から脱落することを防止するための構成である。
【0035】
円柱底面部12cと脱落防止部材20との距離は、フランジ14A等の中心近傍部の厚さd1よりも、わずかに長くなっている。このため、フランジ14A等の中心近傍部は、円柱底面部12cと脱落防止部材20との間に摺動可能な状態で挟まれている。
【0036】
図4は、軸受18の説明図である。図4(a)は、軸受18の概略斜視図である。図4(b)は、軸受18を図4(a)の矢印Y3方向から見た概略側面図である。
図4(a)及び(b)に示すように、軸受18には、挿通孔18a及びねじ孔18bが形成されている。
挿通孔18aの中心軸は、本体12の挿通孔12aと同一である。すなわち、挿通孔18aは、貫通孔16(図3参照)の一部である。
ねじ孔18bは、ねじ22Bをねじ入れるための孔であり、その内部には雌ねじが形成されている。この内部の雌ねじが、ねじ22Bに形成された雄ねじと螺合する。
軸受18の側面部18cに、フランジ14A等が接触する。軸受18はすべり軸受であり、摺動性の高い木材で形成されている。
【0037】
以上がケーブルドラム10の構成である。
以下、ケーブルドラム10の使用例について説明する。
【0038】
図5、図6、図7及び図8は、ケーブルドラム10の使用例の説明図である。
図5に示すように、作業者Zは、本体12を回転させずに固定した状態で押し、矢印Y4方向にケーブルドラム10を直進させることができる。このとき、フランジ14Aとフランジ14Bは、双方とも、矢印X2方向へ回転する。
【0039】
このとき、電線50の端部50aがフランジ14A等の外に出ているとしても、端部50aが上方になるように本体12を固定した状態で、本体12を押すことができるから、電線50を毀損することを防止することができる。
【0040】
また、図6に示すように、作業者Zは、本体12を回転させずに固定した状態で押し、矢印Y5方向にケーブルドラム10を方向転換させることができる。このとき、フランジ14Aは矢印X1方向へ回転し、フランジ14Bは矢印X2方向へ回転する。すなわち、フランジ14Aとフランジ14Bは、互いに逆方向へ回転する。
【0041】
フランジ14Aとフランジ14Bが互いに逆方向へ回転するから、ケーブルドラム10は方向転換が容易である。このため、図7に示すように、ケーブルドラム10は、矢印Y4方向へ直進した状態から、矢印Y5方向への方向転換中の状態を経て、工場60の出口60aへ向かう矢印Y6の方向へ、円滑に方向転換することができる。これにより、作業効率が向上する。
【0042】
図8は、ケーブルドラム10の延線時の状態を示す概略図である。
図8に示すように、延線時には、ケーブルドラム10のフランジ14A等は、例えば、三角形の外形形状を有するフランジ止め70によって地面Gに固定される。この状態で、電柱80を経て、その先の方に電線50を敷設する。
【0043】
フランジ14A等を地面Gに固定した状態で、本体12が矢印X3方向へ回転し、延線することができる。
【0044】
なお、ケーブルドラム10は、電線50以外を保持及び移動するために使用することができる。例えば、ケーブルドラム10は、光ファイバを保持及び移動するために使用することもできる。
【0045】
なお、本実施形態とは異なり、軸受18はすべり軸受ではなくて、金属性のボールベアリングであってもよい。ボールベアリングによって、フランジ14A等は、より円滑に回転することができる。
【0046】
なお、ケーブルドラム10は貫通孔16(図3参照)を有するから、必要に応じて、貫通孔16にシャフトを通して持ち上げることができる。
【0047】
[第2実施形態]
図9を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。
図9(a)は、第2実施形態のケーブルドラム10A示す概略斜視図である。
図9(b)は、図9(a)のケーブルドラム10を矢印Y2方向から見た概略図である。
【0048】
図9(a)及び図9(b)に示すように、第2実施形態のケーブルドラム10は、その本体12に円盤状の接触防止部材30が配置されている。
【0049】
このため、本体12に巻線された電線50が、フランジ14A等に接触することがない。すなわち、電線50が、フランジ14A等の円滑な回転を妨害することがない。
【0050】
本発明によれば、2つのフランジは本体に対して回転可能であるから、作業者は、電線50が巻かれた本体を回転させない状態で押し、フランジのみを車輪のように回転させて、ケーブルドラムを押して移動することができる。
【0051】
そして、2つのフランジは、本体に対して互いに独立して回転可能であるから、互いに反対方向に回転することができる。このため、ケーブルドラムを押して移動する際に、方向転換が容易である。
【0052】
さらに、電線の端部がフランジの外に出ているような巻線状態であっても、電線の端部を上方に向けた状態になるように本体部を固定して、ケーブルドラムを移動させることができるから、移動時おいてケーブルの破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】第1実施形態のケーブルドラムを示す概略斜視図である。
【図2】電線が巻かれた状態のケーブルドラムを示す概略斜視図である。
【図3】ケーブルドラムの概略側面図等である。
【図4】軸受の説明図である。
【図5】ケーブルドラムの使用例の説明図である。
【図6】ケーブルドラムの使用例の説明図である。
【図7】ケーブルドラムの使用例の説明図である。
【図8】ケーブルドラムの使用例の説明図である。
【図9】第2実施形態のケーブルドラムを示す概略斜視図である。
【図10】従来例の説明図である。
【図11】従来例の説明図である。
【図12】従来例の説明図である。
【図13】従来例の説明図である。
【符号の説明】
【0054】
10,10A・・・ケーブルドラム、12・・・本体、14A,14B・・・フランジ、16・・・貫通孔、18・・・軸受、20・・・脱落防止部材、22A,22B,22C,22D・・・ねじ、50・・・電線、30・・・接触防止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線が巻回される略円柱状の本体と、
前記本体の両端にそれぞれ配置される円盤状の2つのフランジと、
を有するケーブルドラムであって、
2つの前記フランジは、前記本体に対して互いに独立して回転可能に配置されていることを特徴とするケーブルドラム。
【請求項2】
前記本体に対して前記フランジを回転可能に配置するための軸受を有することを特徴とする請求項1に記載のケーブルドラム。
【請求項3】
前記本体から前記フランジが脱落することを防止するための脱落防止部材を有することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のケーブルドラム。
【請求項4】
前記本体には、前記電線が前記フランジに接触することを防止するための接触防止部材が配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のケーブルドラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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