説明

ケーブルベアー巻取装置

【課題】エアホース、電機ケーブル等を収容した屈曲自在な保護材であるケーブルベアーの巻取装置にあって、ケーブルベアー内に配された電気ケーブル、エアホース等に捩れの防止用のスリップリングを用いることなく、ケーブル等を外部に導出することができるケーブルベアー巻取装置を提供する。
【解決手段】電気ケーブル、エアホース22等を収納したケーブルベアー20の先端を可動装置に取付け、基端を巻き取り用の固定ドラム30に取付けている。この固定ドラム30に対しこの固定ドラム30の中心に公転する遊星ローラ38が配されている。この遊星ローラ38によりケーブルベアー20を引っ掛けて巻き戻す巻き取り装置29を設ける。この巻き取り装置29に遊星ローラ38を巻き戻し方向に公転させるゼンマイ装置を設けたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電機ケーブル、エアホース等を収納した屈曲自在の保護材であるケーブルベアーの巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物品を移動させる目的のため、物品を吸着して移動させる、いわゆるバキューム装置が採用されている。バキューム装置は、複数の負圧を用いた吸着部が取付部材の下面に吊持された吊持部を備え、この吊持部が上下方向に滑車装置により昇降される構成となっている。
【0003】
吊持部には、それぞれの吸着部に、負圧を供給するエアホースが接続されていたり、電力供給用の電気ケーブルや、センサー用のケーブルが接続され、それらを束ねて、いわゆるケーブルベアー内に通されていた。このケーブルベアーは、その一端が前述した吊持部に、他端が巻き取り装置に接続されていて、ケーブルベアーは、吊持部の昇降に応じて巻き取り装置に巻き取られ、又は巻き取り装置より排出されていた。
【0004】
巻き取り装置にあって、エアホースや電線ケーブルは、回転体に巻き取られることで収容されるが、その回転体が回転することから、回転体から引き出されたエアホース、電線ケーブルが捩れることが起こり、問題であったが、スリップリングを用いることで、その解消に当ってきた。例えば、特許文献1に示すような構成が採用されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−191241
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献1では、エアホース6に接続の中空軸11の出側に中空軸11出側端を収容するエアチャンバ16を持っており、このエアチャンバ16の外壁にエア接続口17が設けられ、これにより、中空軸11は回転するが、エアチャンバ16に伝えず、圧縮空気はエアチャンバ16を介してエア接続口17に至り、各圧空動機に送給されている。即ち、ホースリール4の回転力は遮断され、捩れの発生を防いでいた。
【0007】
また電気ケーブル7は、中空軸11を通り、その中空軸11の端にスリップリング15を内蔵させ、このスリップリング15を介して出側の電気ケーブル7Aに伝えている。即ち、ホースリール4の回転力は遮断され、捩れの発生を防いでいた。
【0008】
しかしながら、特許文献1に示すように、エアホースにあってはエアチャンバを備え、また電気ケーブルにあってはスリップリングを設けなければならず、構造の複雑化ばかりでなく、コスト高となる問題点を有していた。
【0009】
そこで、この発明は、エアホース、電気ケーブル等収容した屈曲自在な保護材であるケーブルベアーの巻取装置にあって、ケーブルベアー内に配された電気ケーブル、エアホース等にスリップリングを用いることなく、ケーブル等を外部へ導出することができるケーブルベアー巻取装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るケーブルベアー巻取装置は、電気ケーブル、エアホース等を収納した屈曲自在の保護材であるケーブルベアーの先端を可動装置に取付け、基端を巻き取り用の固定ドラムに取付けると共に、前記固定ドラムを中心に公転する遊星ローラを配し、この遊星ローラにて前記ケーブルベアーを引っ掛けて前記固定ドラム上に巻き戻す巻き取り装置を設け、この巻き取り装置に前記遊星ローラを巻き戻し方向に公転させる巻戻し用テンションが負荷されたゼンマイ装置を設けたことにある(請求項1)。
【0011】
これにより、電気ケーブル、エアホース等を収納するケーブルベアーが巻き取り装置の固定ドラムに遊星ローラによって引っ掛けられながら、巻き取られる。即ち、固定ドラムは固定されたままで、遊星ローラの回転により回転ドラム上に巻き取られる。ケーブルベアーの基端は、固定ドラムに固着されたままで、固定ドラムを介して、電気ケーブル、エアホースは、そのまま外部へ導出される。
【0012】
遊星ローラは、巻き戻し装置となるゼンマイ装置から巻き戻し方向に回転力が加えられ、ケーブルベアーには、常に巻き戻しテンションが加えられている。したがって、可動装置の昇降により、荷重が減少するとケーブルベアーが回転ドラムに巻き取られ、又は荷重が増大するとケーブルベアーが回転ドラムから引き出される。
【0013】
この発明に係る他のケーブルベアー巻取装置は、電気ケーブル、エアホース等を収納した屈曲自在の保護材であるケーブルベアーの先端を可動装置に取付け、基端を巻き取り用の固定ドラムに取付けると共に、前記固定ドラムを中心に公転する遊星ローラを配し、この遊星ローラにて前記ケーブルベアーを引っ掛けて前記固定ドラム上に巻き戻す巻き取り装置を設け、この巻き取り装置に前記遊星ローラを巻き戻し方向に公転させる電動モータを設けたことにある(請求項2)。
【0014】
これにより、請求項1と同様な作用効果が得られると共に、遊星ローラは、巻き戻し装置となる電動モータの駆動力により公転されることになるが、可動装置の上昇時に電動モータを駆動させて遊星ローラを公転させ、ケーブルベアーを回転ドラムに巻取り、可動装置の下降時に電動モータをフリーにして遊星ローラを加わる負荷(荷重)により公転させ、回転ドラムより引き出せる。この電動モータは、ケーブルベアーに加わる負荷(荷重)により駆動することや、可動装置の昇降用のモータに連動して駆動することもできる。
【0015】
前記屈曲自在のケーブルベアーは、一端に一対の突起を、他端に一対の穴とを持つ四角形状の中空のピースを多数個を備え、それぞれの前記突起を前記穴に嵌合して連結構成されて成ることにある(請求項3)。これにより、保護材であるケーブルベアーは、多数の中空のピースを連結構成され、各ピースに設けられた突起とそれに嵌合の穴を支点として自在に屈曲される。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、請求項1及び2の発明にあって、遊星ローラが固定ドラムを中心に回転されることにより、ケーブルベアーが固定ドラムに巻き取られるように構成させることから、ケーブルベアーか固定ドラムに固定されていても、その内部を通った電気ケーブル、エアホース等を固定ドラムを介して、捩れることなく、外部へ導出することができる。
【0017】
請求項1にあっては、遊星ローラの回転がゼンマイ装置により、固定ドラムに巻き取られ又は引き出されることが、ゼンマイ装置への巻き戻し負荷量により決定されている。この装置によれば無電源であることも利点となっている。
【0018】
請求項2にあっては、遊星ローラの回転が電動モータにより、固定ドラムに巻き取られ又は引き出されることが、電動モータへの駆動電流の制御が確実且つ容易に行なわれる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、この発明のケーブルベアーの巻取装置がバキューム装置に用いられた正面図である。
【図2】この発明のケーブルベアーの巻取装置の正面図である。
【図3】同上の側面図である。
【図4】ケーブルベアーの拡大斜視図である。
【図5】ケーブルベアーにおいて、その巻き取り手段の他の実施例の側面図である。
【実施例1】
【0020】
図1において、この発明であるケーブルベアー巻取装置2が用いられているバキューム装置1が示されている。まずバキューム装置1の概略を説明した後に、ケーブルベアー巻取装置2を説明する。
【0021】
バキューム装置1は、固定部分3と、吊持部となる可動部分4とより構成され、固定部分3は、多数の四角形フレームより構成され、所望するように組立られている。可動部分4は、多数の吸着部6が多角形の取付部材7の周辺に吊持されて構成され、吸着部6の吸面6aか下方に向けられている。この吸着部6には、下記するエアホースにより負圧が供給され、吸面6aが図示しない部品に吸着することができる。
【0022】
この可動部分4は、さらに反吸着部6側に設けられた吊りフック9を持つ滑車10、ワイヤー11と、昇降用モータ12とより成る昇降装置13により、吊持されながら、上下方向にその位置が変位される。
【0023】
また、可動部分4は、吊りフック9が引っ掛る吊り板14の下方に吸着部6の周方向の回転を与えて変角する変角用スクリューモータ15が設けられている。これにより、吸着部6の周方向の角度が変えられる。
【0024】
ワイヤー11は、その先端が固定部分3の上方取付部16に取付けられ、他端が前記滑車10に引っ掛けられながら、昇降用モータ12の巻取部12aに接続されている。したがって、昇降用モータ12の右方向回転により巻き取られて可動部分4は上方へ動くし、昇降用モータ12の左方向回転によるワイヤー11が巻取部12aより引き出されると、可動部分4が下方へ動かされる。図1の状態は、可動部分4が最も上方へ位置している例である。
【0025】
18はテレスコピックパイプで、直径の異なる多数の筒状体とより成るもので、可動部分4が下方へ伸びに応じて、連結されながら、細長いパイプ状をなすもので、滑車10aワイヤー11及び下記するケーブルベアー20と包み込み保護する作用を司っている。テレスコピックパイプ18の構成は公知であるので、細かい構造の説明は省略する。
【0026】
図1の右側部分にケーブルベアー巻取装置2が図示され、これと合せて図2乃至図4を加えて、このケーブルベアーの巻取り装置を説明する。ケーブルベアー20は、図4に示されるように、電気ケーブル21、エアホース22等を内部に通して保護するためのもので、四角形の中空部28を持つピースが多数連結構成されて成っている。
【0027】
このケーブルベアー20の具体例は、樹脂で作られ、全体が四角形で中空部24を持ち、その長手方向両端に、連結するための一対の連結片25a、25aと25b、25bが形成されると共に、一対の連結片25a、25aに一対の突起26a、26aが外方へ向けて突設され、また一対の連結片25b、25bに一対の穴27a、27aが形成されている。したがって、突起26a、26aが穴27a、27aに嵌合されて連結され、それを中心に回動でき、屈曲自在となっている。
【0028】
上記のような、ケーブルベアー20は、図1に示すように、その先端が前記可動部分4の取付部材7に連結されている。そして、その基端部20bが巻き取り装置29の固定ドラム30に連結されるが、固定ドラム30に至る中程で、前記昇降用モータ12と同位置に設けられたガイド31に引っ掛けられている。なお、ケーブルベアー20内に通された電気ケーブル21、エアホース22は、基端部20bから出て固定ドラム30内に挿入されている。
【0029】
巻き取り装置29は、中心に固定ドラム30を有しているが、この固定ドラム30は固定板32に固着されて不動のものである。固定板32は図3にあっては左側にあって、ベース33に立設されている。それに対し、固定ドラム30の右側には、回転板35が前記固定板32により支えられる固定軸36に回転自在に設けられている。
【0030】
遊星ローラ38は、前記固定ドラム30から所定距離を離れた位置で、前記回転板35上に軸39を支点として回転可能に設けられている。したがって、遊星ローラ38は、固定ドラム30の中心と同一で、回転板35の回転により、固定ドラム30に対し公転される。
図1、図2にあって、遊星ローラ38が右方向回転すれば、ケーブルベアー20は固定ドラムに巻き付けられる。そして左方向回転すれば、ケーブルベアー20は引き出される。
【0031】
この遊星ローラ38は、巻き戻し装置となる下記するゼンマイ装置42から常にケーブルベアー20を固定ドラム30に巻き戻す方向即ち右回転方向に、巻き戻しテンションがかけられている。前記昇降装置13により前記可動部分4が上昇されれば、負荷の減少から遊星ローラ38が右方向回転し、ケーブルベアー20は引き込まれ、固定ドラム30に巻き戻される。また可動部分4が下降すれば、負荷が増大しゼンマイ装置42の出力を上回り、遊星ローラ38が左方向回転し、ケーブルベアー20は固定ドラム30から引き出される。
【0032】
ゼンマイ装置42は、前記固定軸36に外嵌の回転軸43の周りにゼンマイ44が設けられ、そのゼンマイの基端44aが回転軸43に連結され、先端44bがベース33から立設のゼンマイケース45に連結されている。なお、前記回転軸43は、その左側端が前記巻き取り装置29の回転板35に固着されているため、ゼンマイ装置42の出力は、回転板35に伝えられ、前記遊星ローラ38の回転方向制御が行なわれる。ゼンマイ装置42であるため、ケーブルベアー20が固定ドラム30から最も引き出された際が、その出力を最大とし、逆に巻き戻された時が、その出力を最小となる。
【実施例2】
【0033】
図5において、ケーブルベアー巻取装置2の巻き取り装置29の遊星ローラ38を回転させる方法を前記実施例1と異なって電動モータ48が用いられた例が示されている。前記図3と対比して見ると明らかなように、均等部分を備え、その部分に同一番号を付して説明を省略している。
【0034】
固定ドラム30は、固定板32に支えられる構成は、実施例1と同一であり、回転板35に遊星ローラ38が軸39を介して支えられる構成も実施例1と同一である。この回転板35は、固定ドラム30の中心に回転自在に設けられた回転軸50に固着され、この回転軸50から回転力が伝えられる。
【0035】
回転軸50は、前記固定板32とベース33に立設の支え柱51にて支えられ、その左端にスプロケット52が取付けられている。このスプロケット52にチェーン54を介して前記電動モータ48のスプロケット55に連結され、電動モータ48の回転力が回転軸50、回転板35を介して遊星ローラ38に伝えられる。これにより、遊星ローラ38は固定ドラム30の中心に公転される。即ち右方向回転にあっては、ケーブルベアー20を巻き取り、左方向回転にあっては、ケーブルベアー20が固定ドラム30から引き出される。なお、電動モータ48の回転は、前記した昇降用モータ12と連動して、可動部分4の上昇時には駆動させ、可動部分4の下降時には、フリーにしてケーブルベアー20からの下方への引き戻し力にて遊星ローラ38を左方向回転させて、ケーブルベアー20が引き出される。
【符号の説明】
【0036】
1 バキューム装置
2 ケーブルベアー巻取装置
3 固定部分
4 可動部分
6 吸着部
13 昇降装置
18 テレスコピックパイプ
20 ケーブルベアー
21 電気ケーブル
22 エアホース
24 中空ピース
26a 突起
27a 穴
29 巻き取り装置
30 固定ドラム
35 回転板
38 遊星ローラ
42 ゼンマイ装置
44 ゼンマイ
48 電動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気ケーブル、エアホース等を収納した屈曲自在の保護材であるケーブルベアーの先端を可動装置に取付け、基端を巻き取り用の固定ドラムに取付けると共に、前記固定ドラムを中心に公転する遊星ローラを配し、この遊星ローラにて前記ケーブルベアーを引っ掛けて前記固定ドラム上に巻き戻す巻き取り装置を設け、この巻き取り装置に前記遊星ローラを巻き戻し方向に公転させる巻戻し用テンションが負荷されたゼンマイ装置を設けたことを特徴とするケーブルベアー巻取装置。
【請求項2】
電気ケーブル、エアホース等を収納した屈曲自在の保護材であるケーブルベアーの先端を可動装置に取付け、基端を巻き取り用の固定ドラムに取付けると共に、前記固定ドラムを中心に公転する遊星ローラを配し、この遊星ローラにて前記ケーブルベアーを引っ掛けて前記固定ドラム上に巻き戻す巻き取り装置を設け、この巻き取り装置に前記遊星ローラを巻き戻し方向に公転させる電動モータを設けたことを特徴とするケーブルベアー巻取装置。
【請求項3】
前記屈曲自在のケーブルベアーは、一端に一対の突起を、他端に一対の穴とを持つ四角形状の中空のピースを多数個を備え、それぞれの前記突起を前記穴に嵌合して連結構成されて成ることを特徴とする請求項1又は2記載のケーブルベアー巻取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−56756(P2013−56756A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196719(P2011−196719)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(594085144)株式会社横浜エンジニアリング (1)
【Fターム(参考)】