説明

ケーブルマーキング装置及びケーブルマーキング方法

【課題】ケーブルに対して識別情報をマーキングでき、可搬性に優れ、作業が簡便で、マーキングされた識別情報が消失しにくく、従来のような刻印盤を用いる必要がなく、安全な温度での作業を可能とするケーブルマーキング装置及びその方法を提供すること。
【解決手段】ケーブルマーキング装置であって、ケーブルを載置保持するケーブル載置保持手段12と、ケーブルの識別情報が印刷され、巻回されているマーキングシート18が保持されるシート保持手段14と、シート保持手段14から供給されたマーキングシート18を回収するシート回収手段16と、サーマルヘッド20を備え、これをマーキングシート18を介在させた状態で、ケーブルに押圧させることで、識別情報をケーブル表面に熱転写させる熱転写手段22と、熱転写手段22に連動することで、シート回収手段16を回転させ、マーキングシート18を巻き取り回収させるシート回収制御機構26を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル表面に識別情報等をマーキングするための装置及びそのマーキング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、敷設するケーブルの識別を容易にするために、様々な手段が採られている。例えば、ケーブルの両端(ロードセンター盤の開閉器の2次側と負荷先の分電盤の主管開閉器部の1次側など)にシールや名札等を取り付けるといった手法が採られている。
【0003】
しかし、この技術では、ケーブルの本数が多くなると使用用途の判別が出来ないため、仮に敷設するケーブルに一定間隔で名札等を取り付けようとすると、その作業が極めて煩雑になり、また、ケーブルを何本も敷設すると、ケーブル同士が擦れることにより、名札等が剥がれ落ちてしまうという問題が生じていた。
【0004】
そこで、この問題を解決するために、インクジェット方式による印刷装置を用いて、ケーブル表面にケーブルの識別情報を印字するという技術が用いられている。例えば、特許文献1に開示されているケーブル布設情報印字装置は、ケーブル導入部、印字部、速度検出部及びケーブル送り部が架台のプラットフォーム上にシリーズに配設されており、さらにケーブル送り部を構成するボール延線機により、ケーブルがプリンタヘッド上を走行移動するようになっている。
【0005】
続いて、このケーブルの走行速度が速度検出部のエンコーダで検出され、パソコンがエンコーダの出力に基づいて、ケーブルの走行距離を演算処理し、所定の走行距離毎にインクジェットプリンタに布設情報及び印字指令を出力する構成になっている。その結果、布設情報が、プリンタヘッドを介してケーブルの表面に所定ピッチで印字されるようになっている。そして、この技術によると、現場にて布設情報のリストに基づいて、ケーブル毎に布設情報を簡易に印字できるとされている。
【0006】
また、その他、レーザー方式による印刷装置を用いて、ケーブル表面にケーブルの識別情報を印字するという技術も用いられている。例えば、特許文献2に開示されているケーブル布設方法およびケーブル番号印字装置は、ケーブルをドラムから引き出して布設する過程に、ケーブル長さを計測する装置と、ケーブル番号を印字する装置を設置し、布設ケーブル毎に予め計画されたケーブル番号を計算機に記憶させておき、ドラムから引き出すケーブルの所定長さ毎にレーザー方式でケーブル番号を印字するもので、ケーブルの黒色と識別の容易な発色剤を塗布する手段を持たせている。
【0007】
この技術によると、布設ケーブルのうち、どの部分を見てもケーブルを特定することができ、年数を経たプラントのケーブル保守作業に際し、ケーブル調査費や人件費、また、ケーブル番号カードの貼付作業や、ケーブル番号札を紐で取り付けるといったような作業が省略できるようになり、さらに、作業中にケーブルの一定の長さを見れば、ケーブル番号を認識することができるようになるので、作業性が向上するという効果が生じ、また、ケーブル番号が、レーザーにより印字されるので、作業中に消えることもなく、切断後も連続して作業することが可能となるとされている。
【0008】
その他、一般的な技術として、種々の媒体表面にホットスタンプ装置を用いて、識別情報を印字(マーキング)するという方法が採られていることが知られている。つまり、予めホットスタンプ装置にセットしておいた文字等(識別情報)の刻印盤(金属製やゴム製)からなるスタンプ手段を、ホットスタンプテープ(PETフィルムの上に印刷用のフィルム層を積層させたもの)を介在させた状態で、媒体表面に押圧し、当該媒体表面に識別情報を印字(マーキング)するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−99706号公報
【特許文献2】特開2000−69639公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の技術は、確かに、作業性の向上や、印字された識別情報の劣化に強いとされてはいるが、それぞれ欠点があることが分かっている。即ち、インクジェット方式の印刷装置によると、ケーブル表面に印字された識別情報が硬化するまでにかなりの時間を要してしまうため、その硬化前にケーブル同士が擦れてしまうと、ケーブル表面の識別情報が、消失してしまうという可能性が極めて高いということである。
【0011】
また、レーザー方式の印刷装置によると、レーザーの出力制御を必要とするため、その設定を間違えると、ケーブルの表面のみならず、ケーブルの芯線まで焼いてしまう可能性が高く、さらに、ケーブルの太さが異なる場合や、ケーブルのセッティングが悪いと、レーザーがケーブルの芯に達してしまうおそれがある。そして、インクジェット方式及びレーザー方式の印刷装置は、その機械構成の複雑さゆえに、印刷装置自体のサイズが、極めて大きくなってしまい、可搬性に欠けるという、現場作業における決定的な欠陥があることが分かっている。
【0012】
また、従来からあるホットスタンプ装置を用いてケーブル表面に識別情報を印字しようとした場合は、通常、刻印盤とケーブル表面とが点接触となってしまい、印字する識別情報が欠けてしまうという問題が生じる。また、識別情報の欠落を防止するためには、刻印盤をケーブル表面に強く押圧させなくてはならないため、ケーブル自体を損傷させてしまうという問題もある。
【0013】
ここで、これら識別情報の欠落問題を解決するためには、刻印盤をケーブル表面の曲面に沿った形状にしなければならず、さらに、曲面形状が異なる複数ケーブルについて印字する場合は、それぞれの形状に沿った刻印盤を予め用意していなければならず、また、必要な文字等に該当する刻印盤をその都度交換しなくてはならないため、煩雑を極めることは容易に想像でき、そして、製造や作業コストも極めて高くなることが明白である。
【0014】
また、一般的にホットスタンプ装置は、その刻印盤を加熱するための温度を非常に高く設定しなければならず(刻印盤を高温(通常200℃程度)にしなければ、媒体への印字性能が悪くなってしまう。)、例えば現場で印字作業をする場合、作業員に危険が伴ってしまうという欠点が挙げられている(つまり、現場での作業に不向きということである。)。
【0015】
本発明は、上記従来の印刷装置及び印刷方法の欠点を改良したもので、熱転写による識別情報のマーキングをケーブルのドラムからの延線作業中に一定間隔毎に行え、可搬性に極めて優れると同時に、作業が簡便となるケーブルマーキング装置であり、さらにケーブルの識別情報(使用目的等の情報)が短時間で判別でき、また、ケーブルを廃棄する際に誤って切断することが無くなる技術を提供すること、そして、ケーブル表面にマーキングされた識別情報が消失しにくくなるケーブルマーキング装置を提供することにある。またさらに、従来のホットスタンプ装置のような刻印盤を用いる必要がないため、格段に安全な温度でのマーキングや識別情報等の欠落を防止することを可能とし、そして、作業に要するコストを大幅に抑えることができる装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明は、以下の技術的手段を講じている。
即ち、請求項1記載の発明は、ケーブルを載置保持するケーブル載置保持手段と、前記ケーブルに応じたケーブル識別情報が予め印刷され、巻回されているマーキングシートが保持されるシート保持手段と、前記シート保持手段と所定の間隔をもって対向配置され、前記シート保持手段から供給された前記マーキングシートを巻き取り回収するシート回収手段と、所定の温度に加熱可能なサーマルヘッドを備え、初期位置から移動させることにより、前記サーマルヘッドを前記シート保持手段から前記シート回収手段へ至る前記マーキングシートを介在させた状態で、前記ケーブル載置保持手段に載置保持されている前記ケーブルに対して押圧させることで、前記マーキングシートに予め印刷されている前記ケーブル属性情報を前記ケーブルの表面に熱転写させる熱転写手段と、前記熱転写手段に設けられ、当該熱転写手段に連動して駆動することにより、前記シート回収手段を回転させ、当該シート回収手段に、前記マーキングシートを巻き取り回収させるよう制御するシート回収制御機構とを有することを特徴とするケーブルマーキング装置である。
【0017】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載のケーブルマーキング装置であって、前記ケーブル載置保持手段は、ケーブル受け台を有し、前記ケーブル受け台は、前記ケーブルの表面形状に対応した断面三角形状溝を呈しており、前記サーマルヘッドは、前記ケーブルの表面形状に対応した断面円弧形状を呈していることを特徴としている。そして、請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のケーブルマーキング装置であって、前記ケーブル載置保持手段を載置固定する基台を有し、前記基台には、前記ケーブル受け台の長手方向両側に所定の間隙をもった位置に前記ケーブルを保持固定するケーブル載置補助具が設けられていることを特徴としている。
【0018】
さらに、請求項4記載の発明は、請求項1から3いずれか1項記載のケーブルマーキング装置であって、前記サーマルヘッドの、前記ケーブルを押圧する面には、熱伝導性シリコンゴムが設けられていることを特徴としている。そして、請求項5記載の発明は、請求項1から4いずれか1項記載のケーブルマーキング装置であって、前記熱転写手段を前記初期位置へと付勢する付勢手段を有し、前記付勢手段は、付勢ばねからなることを特徴としている。
【0019】
また、請求項6記載の発明は、ケーブル表面に当該ケーブルの識別情報をマーキングするケーブルマーキング方法であって、予め前記ケーブルの識別情報が印刷され、巻回されているマーキングシートをシート保持手段に保持させる工程と、前記シート保持手段と所定の間隔をもった位置で、前記シート保持手段に保持させたマーキングシートをシート回収手段に巻回させる工程と、前記ケーブルをケーブル受け台に載置させる工程と、サーマルヘッドを備えた熱転写手段を初期位置から移動させることにより、前記サーマルヘッドを前記マーキングシートのうち、前記シート保持手段から前記シート回収手段に至る部分を介在させた状態で、前記ケーブルに押圧させ、前記サーマルヘッドに加えられている熱をもって、前記マーキングシートに予め印刷されているケーブルの識別情報を前記ケーブルの表面に熱転写させる工程と、前記熱転写手段を前記初期位置へと移動させる工程と、前記熱転写手段に連動して駆動させることにより、前記シート回収手段を回転させ、当該シート回収手段に前記マーキングシートを所定の長さ巻取回収させる工程とを含むことを特徴とするケーブルマーキング方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明のケーブルマーキング装置によると、予めケーブルの識別情報を印刷したマーキングシートを用いて、ケーブル表面にマーキングすることができるため、従来のホットスタンプ装置やマーキング方法のように刻印盤を用いる必要がなくなり、その結果、マーキングに要する温度を低く設定することが可能となる(従来は、200℃程度必要であるところを本発明の技術によると130℃〜140℃、好ましくは135℃の温度で足りることが分かっている。)。また、この範囲の温度によって熱転写を行うので、熱転写した識別情報が瞬時に硬化し、擦れに強いマーキングが可能となる。
【0021】
そして、予めケーブルの識別情報を印刷したマーキングシートを用いことができるため、従来の刻印盤を用いるホットスタンプ装置に比べ、文字や情報、色彩、漫画等々、様々なマーキングに容易に対応することが可能となり(特に、従来のホットスタンプ装置では、ホットスタンプ箔が1つの色でしかないので、種々の色を混在させてマーキングすることは困難であり、さらに、漫画等の絵図をマーキングすることも困難である。)、コストも大幅に抑えることが可能となる。
【0022】
また、本発明のケーブルマーキング装置によると、従来のインクジェット方式やレーザー方式に比べ、マーキング性能を格段に良くすることができる(マーキングした識別情報の劣化や消失が極めて少ない。)。さらに、インクジェット方式やレーザー方式に比べ、その装置を小さくすることができるため、可搬性に優れ、現場でのマーキング作業を極めて容易なものにすることが可能となる。
【0023】
またさらに、本発明のケーブルマーキング装置によると、熱転写を行うサーマルヘッドがケーブル表面の形状に対応した断面円弧形状に形成されているため、従来のホットスタンプ装置に用いられている刻印盤では非常に困難であった曲面へのマーキングを容易なものとすることができるようになっている(刻印盤では、ケーブル表面(曲面)に対して点接触となってしまうため、マーキングする文字が欠落する可能性が高く、また、その欠落を防止しようとすると、ケーブルに過度な押圧力をかけざるを得ず、その結果、ケーブル損傷につながってしまう。)。
【0024】
そして、サーマルヘッドの、ケーブルを押圧する面に熱伝導性シリコンゴムを設けているため、ケーブルへの密着性が向上するとともに、ケーブルの損傷を防止することができる。また、ケーブルを載置するケーブル受け台が、ケーブル表面の形状に対応した断面三角形状溝となっているため、マーキング時のケーブルのずれを防止することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るケーブルマーキング装置の実施形態を示した図で、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は斜視図である。
【図2】本発明に係るケーブルマーキング装置の実施形態を示したもので、ケーブル表面にマーキングする作業の流れを示したもので、(a)はケーブル押圧前、(b)はケーブル押圧時、(c)はケーブル押圧後を表している。
【図3】本発明に係るケーブルマーキング装置の実施形態のうち、サーマルヘッド部分を示した図で、(a)は側面図、(b)は底面図、(c)は斜視図を表している。
【図4】本発明に係るケーブルマーキング装置の実施形態のうち、ケーブル載置保持手段を示した図で、(a)はケーブル受け台の側面図、(b)はケーブル受け台の平面図、(c)はアルミフレーム上に取り付けられた状態のケーブル載置保持手段の斜視図を表している。
【図5】本発明に係るケーブルマーキング装置の実施形態を示したもので、ケーブル表面に識別情報をマーキングする操作前の状態を示した図である。
【図6】本発明に係るケーブルマーキング装置の実施形態を示したもので、ケーブルへのマーキング作業の状態を簡略的に示した図で、(a)は斜視図、(b)は正面図を表している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係るケーブルマーキング装置の実施形態を示した図で、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は斜視図を表している。また、10はケーブルマーキング装置、12はケーブル載置保持手段、13はケーブル受け台、14はシート保持手段、16はシート回収手段、18はマーキングシート、20はサーマルヘッド、22は熱転写手段、24はアーム、26はシート回収制御機構、28はケーブル載置補助台、30は留め金、32は手押し操作用ハンドル、34はアルミフレーム、38は付勢手段、Kはケーブルを示している。
【0027】
本実施例におけるケーブルマーキング装置10は、図1に示すように、まず、アルミフレーム34(基台)と、アルミフレーム34上に固定されているケーブル載置保持手段12が設けられており、さらに、ケーブル載置保持手段12には、ケーブル受け台13が設けられている。また、アルミフレーム34上には、留め金30(例えば、材質をSUS304とする)を具備するケーブル載置補助台28(例えば、材質をポリアセタールとする)が設けられている(ケーブル載置補助具)。ケーブル受け台13は、ネジなどにより、ケーブル載置保持手段12に取り付けられているため、取り外しが自在となっており、ケーブルに合わせた形状のケーブル受け台13を用いることが可能となっている。
【0028】
また、アルミフレーム34に、手押し操作用ハンドル32を取り付けることによって、ケーブルマーキング装置10を容易に移動させることができるようになっている。なお、ケーブル載置補助台28は、ケーブル受け台13とほぼ同じ高さに設けることが好ましい。またさらに、マーキングシート18が保持されているシート保持手段14と、それに対向する位置(本実施例では、熱転写手段22を挟んで対向する位置)にシート回収手段16が設けられている。なお、シート回収手段16は、シート保持手段14から供給されるマーキングシート18を例えば、挟持し、巻き取り回収できるようになっている。
【0029】
そして、サーマルヘッド20が備えられた熱転写手段22が設けられており、アーム24を握り熱転写手段22を初期位置から下降させることによって、サーマルヘッド20をマーキングシート18を介在させた状態で、ケーブル受け台13に載置されるケーブルを押圧させるような構成となっている。また、熱転写手段22は、(b)に示すように、ケーブルマーキング装置10の内部に設けられている付勢手段38(図中、A部参照)により、初期位置へと付勢される構成となっている。
【0030】
さらに、熱転写手段22には、シート回収制御機構26が設けられており、このシート回収制御機構26は、熱転写手段22に連動して駆動し、シート回収手段16にマーキングシート18を巻き取り回収させるようになっている。なお、シート回収制御機構26は、モーターから構成されており、このモーターの制御によって、シート回収手段16が、マーキングシート18を巻き取り回収するようになっている。
【0031】
続いて、ケーブル表面に識別情報をマーキングする作業について図1及び図2を参照しながら説明する。まず、(a)に示すように、ケーブルKにマーキングするための識別情報が予め印刷され、巻回されたマーキングシート18が保持されているシート保持手段14をケーブルマーキング装置10にセットし、さらにシート回収手段16もケーブルマーキング装置10にセットする(シート保持手段14と対向する位置)。そして、マーキングシート18の一端をシート回収手段16に巻回させておく。なお、マーキングシート18は、PET材質のフィルムからなり、このフィルム表面にケーブルの識別情報を印刷しておく。
【0032】
続いて、識別情報をマーキングするケーブルKをケーブル受け台13の長手方向両側に所定の間隙をもって設けられた(ケーブル受け台13とほぼ同一の高さ)ケーブル載置補助台28(図1参照)に保持固定(留め金30を用いて固定)させるとともに、ケーブル受け台13に載置する。ケーブル受け台13は、ケーブル載置側がマーキング対象のケーブルKの形状に対応した断面形状溝(ケーブル方向に沿った断面三角形状溝)になっているものを用いることで、ケーブルKのずれを防止することが可能となっている。なお、ケーブル受け台13の断面形状溝は、三角形状溝に限らず、例えば、三角台形状溝などケーブルKのずれを防止できる形状ならばどのような形状でも良い。
【0033】
さらに、ケーブル載置補助台28のケーブル保持固定側をマーキング対象のケーブルKの形状に対応した断面形状(ケーブル方向に沿った断面円弧形状)になっているものを用いることで、ケーブルKのずれを防止することが可能となっている。また、留め金30によりケーブルをケーブル載置補助台28に固定することができるので、効果的にケーブルKの撓みなどを防止することができるようになっている。なお、ケーブル載置補助台28は、ケーブル受け台13とほぼ同じ高さに設けることが好ましい。
【0034】
続いて、(b)に示すように、熱転写手段22に設けられているアーム24を握り、ケーブルKに向けて熱転写手段22を初期位置から手動で下降させる。そうすると、熱転写手段22に設けられている所定の温度に加熱されたサーマルヘッド20が、シート保持手段14とシート回収手段16との間に位置するマーキングシート18を介在させた状態で、ケーブルKを押圧することになる。所定の時間押圧すると、ケーブルKの表面にマーキングシート18に予め印刷されていた識別情報が熱転写される。
【0035】
なお、サーマルヘッド20は、種々のケーブルの形状に対応できるように、ケーブル方向側が、ケーブル方向に沿うように断面円弧形状に形成されているため、ケーブルKのぶれを効果的に防止することができるようになっている。また、サーマルヘッド20のうち、ケーブルKを押圧する面に、図3に示すように熱伝導性シリコンゴム36を設けておくことにより、ケーブルKの損傷を防止することができ、さらに、ケーブルKへの密着性を向上させることが可能となる。
【0036】
ケーブルKへの熱転写を終えた後は、(c)に示すように、アーム24から手を離せば、熱転写手段22は、ケーブルマーキング装置10内部に設けられている付勢手段38(図1参照)により、初期位置へと自動的に戻るような仕組みになっている。なお、本実施例では、付勢手段38は、付勢ばねを用いているが、例えば、油圧ポンプなどを利用することもできる。
【0037】
続いて、熱転写手段22が、初期位置へと戻る際に、熱転写手段22に設けられているシート回収制御機構26(モーターによる巻き取り制御)により、シート保持手段14とシート回収手段16を回転駆動させ、シート回収手段16にマーキングシート18(マーキング済の部分)を巻き取り回収させるようになっている(続いてマーキングされる部分がシート保持手段14からシート回収手段16の間に引き出される。)。これら一連の工程を繰り返すことで、ケーブルKに的確且つ、高性能なマーキングを容易に施すことができる。
【0038】
次に、本発明に係るケーブルマーキング装置の実施形態のうち、サーマルヘッド部分について図面を参照しながら説明する。
図3は、本発明に係るケーブルマーキング装置の実施形態のうち、サーマルヘッド部分の詳細を示したもので、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は斜視図である。また、20はサーマルヘッド、36は熱伝導性シリコンゴムを示している。
【0039】
図に示すように、サーマルヘッド20は、種々ケーブルの形状に対応することが可能となるように、ケーブルに押圧させる面が、ケーブル方向に沿うように断面円弧形状に形成されている。そうすることで、ケーブル表面にマーキングをする際(押圧する際)に、ケーブルのずれを防止することができるのである。また、サーマルヘッド20のうち、ケーブルを押圧する面には、熱伝導性シリコンゴム36が貼付けられている。この熱伝導性シリコンゴム36を貼付けておくことで、ケーブル表面にマーキングをする際(押圧する際)に、ケーブルの損傷を防止することができ、さらに、ケーブルへの密着性が向上するため、高品質なマーキングを行うことができるようになるのである。
【0040】
続いて、本発明に係るケーブルマーキング装置の実施形態のうち、ケーブル載置保持手段について、図面を参照しながら説明する。
図4は、本発明に係るケーブルマーキング装置の実施形態のうち、ケーブル載置保持手段を示したもので、(a)はケーブル受け台の側面図、(b)はケーブル受け台の平面図、(c)はアルミフレームに取り付けられた状態のケーブル載置保持手段の斜視図である。また、12はケーブル載置保持手段、13はケーブル受け台、34はアルミフレーム、40はネジを表している。
【0041】
(c)に示すように、ケーブル載置保持手段12は、アルミフレーム34上に取り付けられることで固定されており、ケーブル受け台13は、ケーブル載置保持手段12上にネジ40により固定されている。なお、ケーブル受け台13は、取り外し自在に固定されているため、マーキング対象の各ケーブルの形状に対応した断面形状溝(ケーブル方向に沿って断面三角形状溝)が形成されたケーブル受け台に交換することが可能となっている。そうすることで、マーキング対象のケーブルのずれを防止することができる。なお、断面形状溝は、三角形状溝に限らず、例えば、三角台形状溝のようにケーブルのずれを防止できるものであれば、どのような形状でも良い。
【0042】
なお、ケーブル受け台13の長手方向両側に所定の間隙をもってケーブル載置補助具(アルミフレーム上、図示せず。)を設けておけば、ケーブル載置時のケーブルの撓みを防止することができる。
【0043】
次に、本発明に係るケーブルマーキング装置を用いて、ケーブル表面に識別情報をマーキングするための準備段階について説明する。図5は、本発明に係るケーブルマーキング装置の実施形態を示したもので、ケーブル表面に識別情報をマーキングする操作前の状態を示したものである。
【0044】
10はケーブルマーキング装置(一部)、14はシート保持手段、16はシート回収手段、18はマーキングシート、20はサーマルヘッド、22は熱転写手段、36は熱伝導性シリコンゴムを表している。まず、ケーブルにマーキングする識別情報を予めマーキングシート18に印刷しておく。予め印刷することができるため、例えば、マーキング時に逐一刻印盤を交換しなければならないといった従来のホットスタンプ装置が陥っていた問題を克服することができるのである。
【0045】
また、マーキングシート18には、種々の情報を印刷することが可能であるので、例えば、色彩豊かな画像、或いは色彩豊かな文字、さらには、漫画等々、今までにはなかったケーブルマーキングの可能性を広げることができるようになっている。さらに、予め印刷されているものを熱転写する仕組みなので、従来のホットスタンプ装置(刻印盤を用いる装置)のように高い温度を用いる必要がなくなる。
【0046】
次に、図に示すように、識別情報が印刷され、巻回されているマーキングシート18を保持した状態で、シート保持手段14が、ケーブルマーキング装置10に設けられている。そして、シート保持手段14に保持されているマーキングシート18を巻回した状態で、シート回収手段16が、ケーブルマーキング装置10に設けられている。なお、シート保持手段14とシート回収手段16は、マーキング作業に適した間隔をもって対向配置されているが、マーキング作業に好適な位置関係で配置しても良い。
【0047】
続いて、熱転写手段22をケーブル方向に向けて初期位置から移動(下降)させることで、熱転写手段22に設けられているサーマルヘッド20をシート保持手段14からシート回収手段16に至るマーキングシート18に当接させ、さらに、そのままマーキングシート18を介在させた状態で、ケーブルに所定の時間押圧させる。そうすると、マーキングシート18に印刷されているケーブルの識別情報が、サーマルヘッド20に加えられている熱によって、ケーブル表面へと熱転写される仕組みとなっている。
【0048】
なお、サーマルヘッド20のケーブルを押圧させる面には、熱伝導性シリコンゴム36が貼付けられている。そのため、ケーブル表面にマーキングをする際(押圧する際)に、ケーブルの損傷を防止することができ、さらに、ケーブルへの密着性が向上するため、高品質なマーキングを行うことができるようになっている。
【0049】
こうして熱転写された識別情報は、マーキング品質としては、極めて優れたものとなるため、ケーブルの敷設後、長い期間経過したとしても、その劣化をかなり抑えることができることが分かっている。なお、サーマルヘッドを加熱する温度は、130℃から140℃の範囲、より好ましくは135℃に設定するので、現場作業での安全性がより向上することになる(なお、この範囲の温度に設定して熱転写を行うことにより熱転写した識別情報が瞬時に硬化し、擦れに強いマーキングが可能である。)。
【0050】
次に、図6を参照しながら、ケーブルへのマーキング作業について説明する。
図6は、本発明に係るケーブルマーキング装置の実施形態を示した図で、ケーブル表面にマーキングする状態を表している。なお、(a)は斜視図、(b)は正面図である。また、10はケーブルマーキング装置、12はケーブル載置保持手段、13はケーブル受け台、28はケーブル載置補助台、30は留め金、Kはケーブル、Dはケーブルドラムを表している。
【0051】
まず、マーキング対象となっているケーブルKが巻回されているケーブルドラムDからケーブルKを引き出し、ケーブルマーキング装置10にセットする(ケーブル載置補助台28に留め金30を用いて保持固定し、ケーブル載置保持手段12上に設けられているケーブル受け台13上にセットする。)。そして、上記説明のようにケーブルへのマーキング作業を行う。所定の位置へのマーキングが終了した後は、再びケーブルドラムDからケーブルKを引き出し、マーキング作業を続けることができるようになっている。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、予めケーブルの識別情報を印刷したマーキングシートを用いてマーキング作業を行えるため、様々な識別情報をマーキングする必要がある場合に極めて好適である。また、高温加熱を必要とせず、さらに装置自体が小型なものになるため、現場での作業を行う場合に極めて有用である。
【符号の説明】
【0053】
10 ケーブルマーキング装置
12 ケーブル載置保持手段
13 ケーブル受け台
14 シート保持手段
16 シート回収手段
18 マーキングシート
20 サーマルヘッド
22 熱転写手段
24 アーム
26 シート回収制御機構
28 ケーブル載置補助台
30 留め金
32 手押し操作用ハンドル
34 アルミフレーム
36 熱伝導性シリコンゴム
38 付勢手段
40 ネジ
K ケーブル
D ケーブルドラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルを載置保持するケーブル載置保持手段と、
前記ケーブルに応じたケーブル識別情報が予め印刷され、巻回されているマーキングシートを保持するシート保持手段と、
前記シート保持手段と所定の間隔をもって対向配置され、前記シート保持手段から供給された前記マーキングシートを巻き取り回収するシート回収手段と、
所定の温度に加熱可能なサーマルヘッドを備え、初期位置から移動させることにより、前記サーマルヘッドを前記シート保持手段から前記シート回収手段へ至る前記マーキングシートを介在させた状態で、前記ケーブル載置保持手段に載置保持されている前記ケーブルに対して押圧させることで、前記マーキングシートに予め印刷されている前記ケーブル属性情報を前記ケーブルの表面に熱転写させる熱転写手段と、
前記熱転写手段に設けられ、当該熱転写手段に連動して駆動することにより、前記シート回収手段を回転させ、当該シート回収手段に、前記マーキングシートを巻き取り回収させるよう制御するシート回収制御機構と、
を有することを特徴とするケーブルマーキング装置。
【請求項2】
前記ケーブル載置保持手段は、ケーブル受け台を有し、前記ケーブル受け台は、前記ケーブルの表面形状に対応した断面三角形状溝を呈しており、前記サーマルヘッドは、前記ケーブルの表面形状に対応した断面円弧形状を呈していることを特徴とする請求項1記載のケーブルマーキング装置。
【請求項3】
前記ケーブル載置保持手段を載置固定する基台を有し、前記基台には、前記ケーブル受け台の長手方向両側の所定の間隙をもった位置に前記ケーブルを保持固定するケーブル載置補助具が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載のケーブルマーキング装置。
【請求項4】
前記サーマルヘッドの前記ケーブルを押圧する面には、熱伝導性シリコンゴムが設けられていることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載のケーブルマーキング装置。
【請求項5】
前記熱転写手段を前記初期位置へと付勢する付勢手段を有し、前記付勢手段は、付勢ばねからなることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載のケーブルマーキング装置。
【請求項6】
ケーブル表面に当該ケーブルの識別情報をマーキングするケーブルマーキング方法であって、
予め前記ケーブルの識別情報が印刷され、巻回されているマーキングシートをシート保持手段に保持させる工程と、
前記シート保持手段と所定の間隔をもった位置で、前記シート保持手段に保持させたマーキングシートをシート回収手段に所定の長さ巻回させる工程と、
前記ケーブルをケーブル受け台に載置させる工程と、
サーマルヘッドを備えた熱転写手段を初期位置から移動させることにより、前記サーマルヘッドを前記マーキングシートのうち、前記シート保持手段から前記シート回収手段に至る部分を介在させた状態で、前記ケーブルに押圧させ、前記サーマルヘッドに加えられている熱をもって、前記マーキングシートに予め印刷されているケーブルの識別情報を前記ケーブルの表面に熱転写させる工程と、
前記熱転写手段を前記初期位置へと移動させる工程と、
前記熱転写手段に連動して駆動させることにより、前記シート回収手段を回転させ、当該シート回収手段に前記マーキングシートを所定の長さ巻取回収させる工程と、
を含むことを特徴とするケーブルマーキング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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