説明

ケーブルラック用接続金具

【課題】角U字ボルトとL金具とを組み合わせた接続金具を使用してケーブルラックを連結する場合においても、電気的導通を図ることができるケーブルラック用接続金具を提供する。
【解決手段】ケーブルラックの親桁P1側面を囲むように固定する角U字ボルト10を設ける。該角U字ボルト10に連結され他のケーブルラックの親桁端部を接続するL金具20を設ける。角U字ボルト10の圧着面にケーブルラックPの塗装皮膜を破断せしめる突起形状の破断突部13を形成する。該破断突部13を介して親桁P1と角U字ボルト10との相互を導電状態にする。該角U字ボルト10にL金具20を導電状態で連結する。このL金具20と他のケーブルラックとを角根ボルト及びフランジナットにて導電状態に連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルラックの側面に他のケーブルラックを接続する際に使用するケーブルラック用接続金具に係り、特に電気的導通を図ることができるケーブルラック用接続金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、配線用に用いられるケーブルラックは種々の形状、構造のものが提案されている。その多くは、敷設現場の環境変化に対処できるように、耐候性、防錆性、耐塩性、耐湿性、耐薬品性等が考慮されている。そのため、たとえばメラミン焼付塗装や防錆力の優れたエポキシ樹脂系塗装など特殊な表面処理が施されている。ところが、これらの特殊な表面処理膜は導電性がないので、これらの表面処理を施したケーブルラックを接続すると、これらのケーブルラック相互間に導電性がない状態になる。すると、ケーブルラック内に収納したケーブルに漏洩電流が生じたとき、導電性がないケーブルラックでは、この漏洩電流を回避することはできない。そこで、ケーブルラック相互にアースボンド線を連結することで、電気的導通を図っていた。ところが、このアースボンド線の連結作業には、多くの手間を要するものであった。
【0003】
当出願人は、かかる問題点を解決するために特許文献1に記載のケーブルラックの継ぎ方法を提案し、アースボンド線を使用せず、ケーブルラックを連結するだけで電気的に導通する連結方法を確立している。すなわち、この特許文献1の連結手段は、導電性の継ぎボルトとして、ケーブルラックのボルト挿通孔に強制嵌入してボルト挿通孔を拡開する角根ボルトを使用する。一方、この角根ボルトにねじ止めする導電性のナットとして、圧接する表面処理膜を周囲に押しやるスクリュー形状の破断突部を形成したフランジナットを使用し、これらの角根ボルトとフランジナットとによる締結手段にて、ケーブルラック相互を導電状態とする連結手段である。
【0004】
また当出願人は、特許文献2に記載のケーブルラックの継ぎ構造も提案している。この構造は、ケーブルラック相互の電気的導通を確保するケーブルラックの継ぎ方法を更に改良したもので、ボルト挿通孔を拡開して十分な電気的導通を図ると共に、ボルトとナットを緊締する際に生じる供回りを防止して連結作業の作業能率を確保し、高所での連結作業を安全にすることができる構造になっている。
【0005】
これら従来の電気的導通手段は、いずれもケーブルラックを長手方向に連結する際に極めて有効な手段であり、現在では多くのケーブルラックの連結工事に採用されている。
【0006】
更に当出願人は、特許文献3に記載のケーブルラックの接続金具を提案している(図10参照)。この際、使用される接続金具は、ケーブルラックの側面外周を囲む角U字ボルト100と、該角U字ボルト100に連結され、他のケーブルラックの端部を接続する平面略L字状を成したL金具200とを組み合わせたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平4−4808号公報
【特許文献2】特許第4235976号公報
【特許文献3】特公平4−13928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1や特許文献2に記載の継ぎ構造等により、ケーブルラックを長手方向に連結する際の電気的導通は確実に行われている。ところが、特許文献3(図10)に示すごとく、ケーブルラックの親桁側面に他のケーブルラックを連結する場合の電気的導通手段については、これまで確立されていなかった。
【0009】
すなわち、ケーブルラックPの親桁P1側面に、他のケーブルラックPを連結する接続金具は、角U字ボルト100とL金具200とを組み合わせた接続金具が使用されている。このL金具200には、他のケーブルラックPの端部を連結するボルト挿通孔210が開穿されている。そのため、このL金具200については、従来のケーブルラックとの電気的導通を図る角根ボルトやフランジナット40を使用し、L金具200とケーブルラックPとの電気的導通を図ることは可能である。
【0010】
ところが、角U字ボルト100は、ケーブルラックPの親桁P1側面を囲んで連結する構造であるから、連結したケーブルラックPに従来の角根ボルト50や、フランジナット40を使用して導通状態にすることができなかった。そのため、角U字ボルト100とL金具200とを組み合わせた接続金具を使用してケーブルラックPを連結する場合には、各ケーブルラックPにアースボンド線300を連結することで電気的導通を図っている。そのため、このアースボンド線300の連結作業に多くの手間を要するものであった。
【0011】
そこで、本発明は上述の課題を解消すべく創出されたもので、角U字ボルトとL金具とを組み合わせた接続金具を使用してケーブルラックを連結する場合においても、アースボンド線を用いずに電気的導通を図ることができるケーブルラック用接続金具の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、ケーブルラックPの親桁P1側面を囲むように固定する角U字ボルト10と、該角U字ボルト10に連結され他のケーブルラックPの親桁P1端部を接続するL金具20とで構成されたケーブルラック用接続金具において、親桁P1に固定する際の角U字ボルト10の圧着面に、ケーブルラックPの塗装皮膜を破断して皮膜下面の金属素地に接触せしめる突起形状の破断突部13を形成し、該破断突部13を介して親桁P1と角U字ボルト10との相互を導電状態にすると共に、該角U字ボルト10に導電状態で連結したL金具20と、他のケーブルラックPの親桁P1端部とを導電状態に連結することにある。
【0013】
第2の手段において、前記角U字ボルト10は、前記親桁P1における上下の屈曲端部P2に圧着せしめる連結部12と、該連結部12の上下に屈曲形成したボルト部11とで構成され、前記破断突部13は、連結部12の親桁P1に圧着する上下の圧着部分のいずれか一方又は両方に形成されている。
【0014】
第3の手段において、前記角U字ボルト10は、前記L金具20に開穿されたボルト挿通孔23に挿通してセレイト付きのフランジナット40でL金具20に導電状態に連結するように構成されている。
【0015】
第4の手段の前記L金具20は、前記親桁P1の外側面に当接し前記角U字ボルト10をネジ止めする重合片21と、該重合片21から屈曲形成され、前記他のケーブルラックPの端部に連結された上下自在継ぎ金具30に導電状態に連結する連結片22とが対象形状に形成され、
これら重合片21及び連結片22に、前記角U字ボルト10を挿通せしめるボルト挿通孔23及び前記角根ボルト50にて拡開せしめるように形成された角根ボルト挿通孔24を配置したことにある。
【0016】
第5の手段の前記L金具20は、前記重合片21と前記連結片22との各上端部から補助連結片26が延長され、該補助連結片26に前記角根ボルト50にて拡開せしめるように形成された角根ボルト挿通孔24又は長孔25のいずれか一方又は両方が形成されたことを課題解消のための手段とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1によると、角U字ボルト10を親桁P1に固定する際の角U字ボルト10の圧着がわに、ケーブルラックPの塗装皮膜を破断して皮膜下面の金属素地に接触せしめる破断突部13を形成したことにより、角U字ボルトとL金具とを組み合わせた接続金具を使用してケーブルラックの側面と端部とを連結する場合に、ケーブルラックを連結するだけで電気的導通を図ることができるようになった。
【0018】
請求項2のごとく、破断突部13は、親桁P1の屈曲端部に圧着せしめる角U字ボルト10の連結部12に形成されているので、屈曲端部P2を被覆している表面処理膜を破断し易い構成になっている。その結果、角U字ボルト10を屈曲端部P2側に締付けることで、確実に電気的導通を図ることができる。
【0019】
請求項3によると、L金具20のボルト挿通孔23に角U字ボルト10を通し、この角U字ボルト10にフランジナット40を連結することで、角U字ボルト10とL金具20とを簡単に導電状態にすることができる。
【0020】
請求項4及び請求項5に記載のL金具20によると、ケーブルラックPの端部に連結された上下自在継ぎ金具30を、該L金具20に導電状態に連結することができるので、この結果、角U字ボルト10を介して連結したケーブルラックPとL金具20を介して連結したケーブルラックPとを、アースボンド線なしで電気的導通を図ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の破断突部と屈曲端部との圧着状態を示す側面図である。
【図3】本発明の破断突部の実施例を示し、(イ)は側面図、(ロ)及び(ハ)は断面図である。
【図4】本発明の他の破断突部の実施例を示す要部斜視図である。
【図5】本発明の他の破断突部の実施例を示す要部斜視図である。
【図6】本発明の他の破断突部の実施例を示し、(イ)は要部斜視図、(ロ)は断面図である。
【図7】本発明の他の破断突部の実施例を示す要部斜視図である。
【図8】本発明のL金具の実施例を示す斜視図である。
【図9】本発明のL金具と角根ボルトとの連結状態を示し、(イ)は角根ボルト挿通孔を示す断面図、(ロ)は長孔を示す正面図である。
【図10】従来の連結状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明によると、U字ボルトとL金具とを組み合わせた接続金具を使用してケーブルラックを連結する場合においても、アースボンド線を用いずに電気的導通を図ることができるなどといった当初の目的を達成した。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の実施例を説明する。本発明接続金具は、ケーブルラックPの親桁P1側面に他のケーブルラックPの端部を接続する接続金具で、角U字ボルト10とL金具20とで構成されている(図1参照)。
【0024】
角U字ボルト10は、ケーブルラックPの親桁P1側面を囲むように側面略コ字状に構成されたボルト部材である(図2参照)。この角U字ボルト10は、前記親桁P1における上下の屈曲端部P2に圧着せしめる連結部12と、該連結部12の上下を屈曲して設けたボルト部11とで構成されている。
【0025】
この角U字ボルト10には、角U字ボルト10を親桁P1に固定する際の圧着面に、ケーブルラックPの塗装皮膜を破断して皮膜下面の金属素地に接触せしめる突起形状の破断突部13を形成している(図3〜図7参照)。そして、該破断突部13を介して親桁P1と角U字ボルト10との相互を導電状態に連結するものである。図示例では親桁P1の屈曲端部P2に圧着する連結部12の側面に破断突部13を形成することで、この屈曲端部P2の塗装皮膜を破断するように構成している(図2参照)。
【0026】
図3(イ)に示す破断突部13は、連結部12の圧着部分からボルト部11の屈曲部分にかけて設けられている。図示の破断突部13は、同図(ロ)のように連結部12やボルト部11の側面を潰して突起状の破断突部13を形成したものや、同図(ハ)のごとく、この突起状の破断突部13の先端に凹みを設けて二条の突起を形成したものである。
【0027】
図4に示す破断突部13は、連結部12の圧着部分にローレット加工で形成したものである。図示例では、連結部12の周側面にローレット加工の破断突部13を形成しているが、図8の角U字ボルト10に示すごとく、連結部12からボルト部11にいたる屈曲部分にまでローレット加工の破断突部13を形成することも可能である。
【0028】
更に、図5に示す破断突部13は、連結部12の周側面にスプライン加工で形成したものである。図示例では、連結部12の長手方向に沿った多数の筋状の破断突部13が形成されている。
【0029】
また、図6、図7に示す如く、破断突部13を連結部12の内がわ側面のみに形成することも可能である。これらの破断突部13は、連結部12の内がわ側面に平坦面を形成し、該平坦面に筋状の破断突部13を形成したものである。図6の破断突部13は、連結部12の長手方向に沿った筋状を成している(同図(ロ)参照)。また、図7の破断突部13は、連結部12の長手方向に対して直交する筋状を成すものである。
【0030】
L金具20は、前記親桁P1の外側面に当接し前記角U字ボルト10をネジ止めする重合片21と、該重合片21から屈曲形成され、前記他のケーブルラックPの端部に連結された上下自在継ぎ金具30に導電状態に連結する連結片22とで構成されている(図8参照)。これら重合片21と連結片22とは、使用の位置によってそれぞれの役割を交代するように対象形状に形成されたものである。
【0031】
重合片21は、親桁P1の外側面に当接して角U字ボルト10にてネジ止めする(図2参照)。この際、重合片21に開穿された上下一対のボルト挿通孔23に角U字ボルト10を挿通してフランジナット40で導電状態に連結する。また、重合片21に塗装などが施されずに導通性の良好な場合は、通常のナットで角U字ボルト10を連結することも可能である。
【0032】
連結片22は、他のケーブルラックPの親桁P1端部を、角根ボルト50やフランジナット40で連結する部材である(図1参照)。図示例では、連結片22に上下自在継ぎ金具60を連結している。この上下自在継ぎ金具60は、他のケーブルラックPの親桁P1端部に角根ボルト50やフランジナット40を使用して導電状態で連結する金具である。
【0033】
そして、これら重合片21及び連結片22に、角U字ボルト10を挿通せしめる上下一対のボルト挿通孔23が配置されており、重合片21として使用する際に、L金具20を連結できるようにしている(図8参照)。更に、角根ボルト50にて拡開せしめるように形成された角根ボルト挿通孔24を配置することで、連結片22として使用する際に、他のケーブルラックPを連結できるようにしている。
【0034】
更に、これらの重合片21と連結片22との各上端部には、補助連結片26が延長形成されている。この補助連結片26は、L金具20をより多様な場面で使用可能にするもので、この補助連結片26にも上下自在継ぎ金具60等を連結することができる。図8に示す補助連結片26は、角根ボルト50にて拡開せしめるように形成された角根ボルト挿通孔24が複数配置されている。また、この角根ボルト挿通孔24に代えて長孔25を設けることも可能である(図1参照)。
【0035】
図9は、補助連結片26に設ける角根ボルト挿通孔24及び長孔25を示している。同図(イ)は、角根ボルト50を挿通する角根ボルト挿通孔24を示し、同図(ロ)は、長孔25を示している。いずれも角根ボルト50をネジ止めすると、角根ボルト50の角根部分が食い込むサイズに形成している。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の実施例において、角U字ボルト10やL金具20の形状や構成、あるいは本発明を使用して連結するケーブルラックPの組合せは図示例に限定されるものではない。また、角根ボルト50やフランジナット40の使用箇所も任意に変更できるものである。
【符号の説明】
【0037】
P ケーブルラック
P1 親桁
P2 屈曲端部
10 角U字ボルト
11 ボルト部
12 連結部
13 破断突部
20 L金具
21 重合片
22 連結片
23 ボルト挿通孔
24 角根ボルト挿通孔
25 長孔
26 補助連結片
30 上下自在継ぎ金具
40 フランジナット
50 角根ボルト
60 上下自在継ぎ金具
100 角U字ボルト
200 L金具
210 ボルト挿通孔
300 アースボンド線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルラックの親桁側面を囲むように固定する角U字ボルトと、該角U字ボルトに連結され他のケーブルラックの親桁端部を接続するL金具とで構成されたケーブルラック用接続金具において、親桁に固定する際の角U字ボルトの圧着面に、ケーブルラックの塗装皮膜を破断して皮膜下面の金属素地に接触せしめる突起形状の破断突部を形成し、該破断突部を介して親桁と角U字ボルトとの相互を導電状態にすると共に、該角U字ボルトに導電状態で連結したL金具と、他のケーブルラックの親桁端部とを導電状態に連結することを特徴とするケーブルラック用接続金具。
【請求項2】
前記角U字ボルトは、前記親桁における上下の屈曲端部に圧着せしめる連結部と、該連結部の上下に屈曲形成したボルト部とで構成され、前記破断突部は、連結部の親桁に圧着する上下の圧着部分のいずれか一方又は両方に形成された請求項1記載のケーブルラック用接続金具。
【請求項3】
前記角U字ボルトは、前記L金具に開穿された上下一対のボルト挿通孔に挿通してフランジナットでL金具に導電状態に連結するように構成された請求項1又は2記載のケーブルラック用接続金具。
【請求項4】
前記L金具は、前記親桁の外側面に当接し前記角U字ボルトをネジ止めする重合片と、該重合片から屈曲形成され、前記他のケーブルラックの端部に連結された上下自在継ぎ金具に導電状態に連結する連結片とが対象形状に形成され、これら重合片及び連結片に、前記角根ボルトにて拡開せしめるように形成された角根ボルト挿通孔又は長孔のいずれか一方又は両方が配置された請求項1記載のケーブルラック用接続金具。
【請求項5】
前記L金具は、前記重合片と前記連結片との各上端部から補助連結片が延長され、該補助連結片に前記角根ボルトにて拡開せしめるように形成された角根ボルト挿通孔又は長孔のいずれか一方又は両方が形成された請求項1又は4記載のケーブルラック用接続金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−165575(P2012−165575A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24567(P2011−24567)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000136686)株式会社ブレスト工業研究所 (74)
【Fターム(参考)】