説明

ケーブル・コード用マーカ

【課題】光配線盤等の光ファイバケーブル・コード等の定期点検作業などにおいて、光ファイバケーブル・コード等に、簡単に取り付け取り外しができ、しかも光ファイバケーブル・コード等を傷つけることにないマーカを提供すること。
【解決手段】ケーブル・コード用マーカは、軟質樹脂板状体であって、当該板状体の中央部付近に形成された孔と、当該板状体の一端側側面から前記孔に至る切れ目と、当該板状体の他端側に形成された、前記一端側の前記切れ目を開口させるための把持部と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブル、光ファイバコードあるいは電気ケーブル、電気コード等のケーブル・コードに取り付けるマーカに関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路のETCシステム等を構築している伝送設備等の光配線盤や電気配線盤には、多数の光ファイバケーブル・コード、電気ケーブル・コードが密集して接続されている。これらの配線盤に接続されている光ファイバケーブル・コード等は、当該設備における保守点検等のために、定期的あるいは臨時に、配線盤に対して、ケーブル・コードの抜き挿し作業が行われる。
このようなケーブル・コードの抜き挿し作業において、抜いたケーブル・コードを挿し込む際、元と異なった位置に戻すと、重大な障害や故障が起きることがある。そこで、予め、抜いたケーブル・コードが元の正しい位置に戻せるように、抜き挿し作業を行うケーブル・コードに、例えば、紐付き線名札を取り付けたり、色が異なるビニールテープを巻き付けて識別したり、ビニールテープなどに手書きで線名を示す文字や記号を付けている。そして、その後、ケーブル・コードを配線盤から抜き取って、例えば光ファイバケーブルの場合は伝送ロスの測定や装置機器の測定を行い、正常の範囲の値であることを確認した後、予め取り付けた仮線名札等を確認して、元の位置に挿入し、その後、当該仮線名札等を取り外して、点検作業を終了する。(特許文献1、2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−126619号公報
【特許文献2】特開2006−27190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらのケーブル・コードを識別するための各種のマーカが開発され、市販されている。しかしながら、市販されているマーカは、定期点検等の作業時の仮線識別に用いることを目的とするものではなく、恒久的に取り付けることを目的としている。そのために、一時的にケーブル等に仮付けし、作業終了後に取り外すものには適さないものである。
例えば、光ファイバケーブル・コードに紐付き札を取り付ける場合は、紐で締め付ける際に強く締め付けるとケーブル・コードが破断してしまうことがあるので、札の取り付けの際に、破断に対して細心の注意を払う必要があり、作業の効率が低下する場合がある。
また、恒久的な取り付けを行うための固い樹脂製あるは金属製のマーカは、一時的な取り付け取り外しの作業用としては固すぎるために、ケーブル等に傷を付けたり取り外しの際に誤ってケーブルを破断することのないように細心の注意を払う必要がある。更に、ケーブルに堅固に取り付ける必要があることから、作業性が悪く、作業効率は低い。
また、ビニールテープを用いたマーカの場合は、テープの粘着性のために、テープ片の両端部同士が接着したり、他のケーブルに付着したりして作業効率が低下することがある。
更に、光ファイバケーブル・コードは細いために、予め識別のために名札やビニールテープに記号や名称を手書きで記入し、光ファイバケーブル・コードに取り付ける場合があるが、誤記入、勘違い等の人的な誤りを招く可能性がある。
本発明は、光配線盤等の光ファイバケーブル・コード、電気ケーブル・コード等(以下、本明細書等において、単に「ケーブル・コード」と記載する場合がある。)の定期点検作業などにおいて、光ファイバケーブル・コード等に簡単に、ワンタッチで取り付け取り外しができ、しかも光ファイバケーブル・コード等を傷つけたり、破断させたりすることのないマーカを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのケーブル・コード用マーカは、軟質樹脂板状体であって、当該板状体の中央部付近に形成された孔と、当該板状体の一端側側面から前記孔に至る切れ目と、当該板状体の他端側に形成された、前記一端側の前記切れ目を開口させるための把持部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のケーブル・コード用マーカによれば、ケーブル・コードへの取り付け・取り外しが容易で、ワンタッチで行うことができ、また、軟質樹脂製であるから、ケーブル・コードを傷つけたり、破断させたりすることはない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のマーカを示す図である。
【図2】図1のマーカをケーブル・コードに取り付ける手順を示す図である。
【図3】図1のマーカを、光ファイバケーブル配線盤のケーブルの点検作業に適用した例を示す図である。
【図4】本発明のマーカの他の実施例を示す図である。
【図5】図4のマーカを、メタルケーブル配線盤のケーブルの点検作業に適用した例を示す図である。
【図6】図4又は図1に示す実施例の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のマーカについて、図面を参照しながら、詳細に説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は、本発明の実施例1を示すものである。
【0010】
図1において、(a)は本発明のマーカの平面図、(b)及び(c)はそれぞれ、左側面図、右側面図である。
【0011】
本発明のマーカ1は、軟質樹脂板状体2の中央部付近に孔3が形成され、板状体2の一端側2aの側面(図1(a)の左側側面)から、中央部付近の孔3に至る切れ目4が形成されている。また、板状体2の他端側2bには、把持部5である一対の突出部6、7が形成されている。
【0012】
軟質樹脂としては、例えば、発泡プラスチック、ゴム等が用いることができる。光ファイバケーブル・コードあるいは、金属ケーブル・コードに本マーカを用いる場合は、特に、ポリエチレンフォームが適している。ポリエチレンフォームは柔軟性があり、軽く、弾力性が高く、更に滑らかな表面とすることができる。後述するように、把持部を指で挟み付けることにより、適度の弾性力でもって切れ目が開口して、ケーブル、コードに簡単にかつ確実に取り付けることができる。また、取り付けた後は、高い弾性力のために、マーカがケーブル・コードから外れにくい。更に、表面が滑らかなので、マーカを取り付けるケーブル・コードのみならず、他のケーブル・コネクタも傷つけることはなく、更に、ビニールテープのように、他のケーブル・コード等に粘り付くこともない。
【0013】
通常、高速道路のETCシステム等を構築している伝送設備等の光配線盤や電気配線盤には、多数の光ファイバケーブル・コード、電気ケーブル・コードが密集して接続されているから、それらのケーブル・コードを識別するために、樹脂は着色するのが好ましい。着色する色の種類は、適宜定めることができるが、通常の作業の場合、例えば、白色、茶色、黒色、青色、赤色の5色程度で十分対応可能である。その他、紫色、緑色などを適宜加えても良い。但し、色の種類を多くしすぎると、類似の色が増えて色の区別が付きにくくなることから、色の種類は、作業者に色の違いが明確に区別できる程度の数とするのが好ましい。
本マーカの大きさは、用いるケーブル・コードの径の大きさ、作業環境等により、適宜決めることができる。例えば、最大長さ18mm、最大高さ15mm、厚さ7mm程度とすると、取り扱い易く、強度的な問題を生じることはなく、また、嵩張らないので、狭い場所のケーブル・コードに容易に取り付け取り外しができ、作業性が良い。
このように、比較的小さいサイズでかつ発泡プラスチック製なので軽く、紐付き線名札のように、他のケーブル・コードに絡まることもない。
板状体2の中央部付近には、ケーブル・コードを保持するための孔3が形成されている。孔3は、本マーカ1をケーブル・コードに取り付ける際にケーブル・コードを当該孔3の中に保持するためのものである。孔3の大きさは、本マーカ1を取り付けるケーブル・コードの太さに応じて、決定しうるものであるが、取り付けるケーブル・コードの外径よりも若干小さい内径とすることにより、マーカをケーブル・コードに取り付けると、孔3は弾性変形し、弾性力でマーカ1をケーブル・コードにしっかりと固定することができる。例えば、ETC等の設備の光配線盤に用いられている光ファイバケーブルの場合、ケーブル径が1.0〜1.7mmの場合は、マーカの孔の径は約0.7mmとする。このような構成とすることにより、作業中に光ファイバケーブル・コード等が揺れても、マーカ1が外れることはない。
図1に示す孔3の板状体2中の左右方向の位置は、作業性などを考慮して、適宜定めることができるが、マーカ1の強度、把持部5と孔3との位置関係などから、板状体2の中央部付近が好ましい。一端側2a(図1(a)の左側)から他端側2b(右側)の間の、他端側2bにより近くに孔を設けると、孔3と他端側2bとの距離が小さくなり、後述する切れ目の開口が大きくなって、狭い場所での作業性が悪くなることもある。反対に、一端側2aにより近い位置に孔3を形成すると、切れ目4の長さが短くなるので、切れ目の開口を大きくすることができず、ケーブル、コードに取り付ける際、作業性が悪くなる場合がある。
板状体における孔3の上下方向の位置に関しては、本マーカの上下方向の形状は、切れ目4を延長させた仮想線に対して対称形であることから上下方向の中央部付近が好ましい。
切れ目4は、一端側2aと孔3とを結ぶ線が、板状体の上下の形状の対称な線と一致する線上に、一端側2aと孔3の間に形成されている。
ケーブル・コードを孔3に保持させるために、切れ目4を開口させる把持部5として、一対の突出部6、7が他端側2bに設けられている。一対の突出部6、7は、図1に示すように、それぞれ斜め上方及び斜め下方に、切れ目4の仮想延長線に対して対称形となるように、突出する形状(魚の尾ひれ状)とするのが好ましい。このように、魚の尾ひれ状とすることにより、2本の指で一対の突出部6、7を挟み付けるように軽く力を加えると、後述するように、一対の突出部6、7は弾性変形し、一端側2aの切れ目は孔3を端部として開口が形成される。突出部6、7の斜め上方及び斜め下方の突出の角度は適宜定めることができるが、例えば、両者の間の角度を約90度(切れ目4を他端側2bに延長させた仮想線に対して、それぞれ約45度)とすることができる。
マーカ1の外形(輪郭)は、全体を曲線及び円弧を組み合わせた曲面として全体として丸みを帯びたものであって、「角(かど)」が全く無いようにするのが好ましい。特に、一端側2aは、切れ目4を開口させてマーカ1でケーブル・コードを飲み込むようにして孔3側に進入させることから、ケーブル・コードがマーカの側面に引っかかることなく滑らかに進入するように、一端側2aを円弧状とするのが好ましい。
また、他端側および上端側、下端側の側面も全て、円弧及び曲線を組み合わせた曲面として、ケーブル・コードがマーカの全周側面においてで引っかかることがないようにするのが好ましい。
このように全周を円弧又は曲線の組み合わせとし、一端側2aの切れ目4を開口可能とし、他端側2bに魚の尾ひれ状の突出部6、7を形成することにより、図1に示すように、マーカの平面視において、全体の輪郭を「魚」の形に模させる形状とすることにより、マーカ自体に親近感を与えることができ、作業者にいわゆる「癒し」の雰囲気を感じさせることも期待できる。
軟質樹脂板状体には、また、識別用の番号あるいは識別用の記号8を付すことができる。
これは、多数の光ファイバケーブル・コードの対(例えば、10対以上)が接続されている配線盤のケーブル・コードの抜き挿し作業を行う場合に、マーカの着色数に限りがあることから、色の違いに加えて、識別番号又は識別記号でも区別できるようにすることで、マーカの色の種類を補うことができる。識別番号・識別記号は板状体2の任意の位置に設けることができるが、板状体2の一方の又は二つの表面上に設けると、確認が容易に行える。板状体の側面に設ける場合は、周囲の任意の側面に設けることができるが、一対の突出部の間の他端側側面に設けると、本マーカを指で把持する際に、当該識別番号・識別記号を確認することができるので、好ましい。
識別番号は、例えば、1、2、・・・、であり、識別記号は、例えば、A、B、・・・、等である。図1(c)は、識別番号「1」を付した例が示されている。
識別番号・識別記号は、本マーカの成形時に(例えば、凹部状に)形成されるようにするか、あるいは、成形後に、板状体の色とは異なる色のインキ、ペイント等で番号・記号を付しても良い。また、識別番号・記号が付けられたラベル、シール等を貼り付けても良い。
図2は本発明のマーカ1をケーブル・コードに取り付ける手順を示すものである。本マーカ1(図2(a))を指で把持部5の一対の突出部6、7を挟持して、軽く力9を加えることにより、一端側2aの切れ目4を開口させて(図2(b))、ケーブル・コード101をマーカの開口10内に取り込み、孔3に保持させて、指を離すことにより、マーカ1をケーブル・コード101に、簡単に、ワンタッチで、取り付けることができる(図2(c))。
作業終了後、マーカ1をケーブル・コード101から取り外す場合は、図2(c)の状態から、把持部5の一対の突出部6、7を指で挟持して、再び切れ目4を開口させ、孔3からケーブル・コード101を外すことにより(図2(b))、簡単に取り外すことができる。
図3は、光ファイバケーブル配線盤設備等の定期点検等において、複数本の光ファイバケーブルを同時に抜き取り、保守点検を行う際に、本マーカ1を用いた作業手順を示す模式図である。
図3(a)は、点検作業を行う前の、配線盤設備100の状況を示すもので、端子盤102の左右に10組の光ファイバケーブルが配置されている。ここでは、左側のケーブル101A、101B、・・・101Jはそれぞれ光ファイバケーブル・コード接続用部品(コネクタ等)103を介して端子盤102に接続されており、右側のケーブル101a、101b、・・・101jがそれぞれ光ファイバケーブル・コード接続用部品(コネクタ等)104により端子盤102から取り外しできるように、例えば、ソケットとプラグとで接続されている。点検作業は、図面右側の光ファイバケーブルを端子盤から抜き取り、点検作業終了後に、再び、元の位置に戻すことを想定している。
図3(b)で、まず、左右一組の光ファイバケーブル(101Aと101a、101Bと101b、・・・)に、同じ色で同じ識別番号が付けられたマーカ1をそれぞれのケーブルに取り付ける。図3の場合、光ファイバケーブルは全部で10組(対)あるので、全ての光ファイバケーブルの保守点検を行う場合において、5色のマーカ1が用意されている場合は、識別番号として、例えば「1」と「2」とをそれぞれに付したマーカを用意するのが好ましい。図3(b)の場合、例えば、上から順に、次のマーカをそれぞれ端子盤102左右のケーブルに取り付ける;「blue1」「red1」・・・「black1」「blue2」「red2」・・・「black2」。ここで「blue1」の「blue」は色の種類を示し、「1」は識別番号を示す。
図3(b)において、仮に、上から2つの光ファイバケーブルのみを点検する場合は、「blue1」「red1」のマーカを左右の光ファイバケーブルに取り付ければ良い。
このように、端子盤102で接続される一対のケーブルの双方に、同じ色でかつ同じ識別番号・記号を付されたマーカをワンタッチで取り付けた後、図3(c)に示すように、順次複数本のケーブルを抜き出して、点検を行う。点検を行った後、抜き取ったケーブルの取り付けた各マーカの色と識別番号・記号と、同じ色と識別番号・記号のマーカが取り付けられた固定側のケーブルと対応する位置を確認することにより、確実に元の接続位置に挿し戻すことができる。元の位置に戻ったことを確認後、ワンタッチで、マーカをケーブルから取り外すことができるので、接続の誤りを防ぐことができる。
また、図3(c)の場合において、予め、全ての一対のケーブルにマーカを取り付け、まず、右側の全てのケーブルを抜き取り、点検後、マーカの色と識別番号・記号を確認して、順次元の位置に戻すことができる。この場合、予め、端子盤のケーブルの組(対)の数に合った数のマーカのセット(組)を用意しておくことにより、抜き取り作業前に、全てのケーブルにマーカが取り付けてあることを、例えば、マーカを収納する容器にはマーカは全く残っていないことをチェックすることにより確認できる。点検作業後は、反対に、全てのマーカが容器の中に収納されていることをチェックすることにより、全てのケーブルの点検作業が終了したことを確認することができる。
本発明のマーカは、抜き取るケーブル・コードが、例えば、端から順番に行えない場合にも、効果を発揮する。即ち、図3の例に於いて、例えば、101bは抜き取らずに、101aと101cとを一緒に向き取る場合、あるいは、101a〜101cは抜き取らずに、101dと101eとを一緒に抜き取る場合などにおいても、点検後に元に戻す場合も、挿込誤りを確実に防ぐことができ、かつワンタッチで操作できるので、作業効率を高めることができる。
また、マーカ1の保管に関しては、例えば、針金やプラスチック線で円形又は矩形のループ(輪)を作り、当該ループを本発明のマーカの孔3を通して多数のマーカをループに係止させておくと、保管が便利になる。特に、作業中、マーカが係止されたループを紐で首から提げて所持する場合、マーカを一時的に容器にいれて保管するスペースを不要とすることができるので、狭い場所での作業効率を高めることができる。この場合、マーカ1の一対の突出部6、7が上を向くようにすると、二つの突出部6、7の間に設けた識別番号・記号8が上面になるので、作業中においても、ケーブル・コードに取り付けるマーカの色と識別番号・記号とが同時に認識でき、作業効率を高めることが可能となる。
【実施例2】
【0014】
図4は、実施例2を示すものである。実施例1のマーカ1は、中央部付近に孔3が一つ形成されているが、実施例2のマーカ20は、軟質樹脂板状体21に第1の孔22と第2の孔23が形成されている。また、切れ目は一端側から第2の孔23を貫いて、第1の孔22に至るように形成されている。それ以外の軟質樹脂の種類、輪郭、形状、寸法、着色、識別番号・記号等に関して、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
この第2の孔23は第1の孔22よりも内径は大きくなっている。この実施例2のマーカは、例えばメタル(金属)ケーブル・コードの点検に用いることができるものである。通常、メタルケーブル・コードは2本線となっているので、この2本のメタル線の取り付ける場合は、二つの孔に2本のメタル線を、それぞれ保持させることができる。
【0015】
第1の孔22の内径は、例えば、メタルケーブル・コードの径が1.7〜3mmの場合、1.5mmとすることにより、孔径よりもケーブル・コード径が大きいことから、ケーブル・コードは、孔22に弾性的に保持されるので、マーカをメタルケーブル・コードに確実に保持させることができる。
なお、第2の孔23の内径は、操作性等の観点から、第1の孔22の内径よりも大きい方が好ましいが、第2の孔23の内径を第1の孔22の内径よりも小さくすることも可能である。更に、必要に応じて、他の孔を切れ目に沿って形成することも可能であることは、当業者ならば明らかなことである。
【0016】
なお、実施例2のマーカ20は、光ファイバケーブル・コードにも用いることができる。この場合、第2の孔23の内径を実施例1の孔3と同じ口径とすることにより、光ファイバケーブル・コードを第2の孔23に係合させて、図2に示すように、光ファイバケーブル・コードにマーカを取り付けることができる。即ち、この場合、実施例2のマーカは、メタルケーブル・コード用と、光ファイバケーブル・コード用とを兼用させることができる。
【0017】
図5は、実施例2のマーカ20をメタルケーブルの保守点検作業に用いる例を示すものである。下側のメタルケーブル・コード201A、201B、・・・、201Fは固定端子203に固定されている。上側のタルケーブル・コード201a、20b、・・・、201fは、ケーブル・コードが2本のネジ端子204により、端子盤202に着脱自在に取り付けられる構成となっている(図5(a))。
【0018】
図5(b)は、メタルケーブル・コード配線のうち、一番左のメタルケーブル・コード201aと左から3番目のメタルケーブル・コード201cの点検を行う場合を示す。一対のメタルケーブル201Aと201aには、それぞれ、マーカ「20blue1」が、また201Cと201cにはマーカ「20red1」が取り付けられている。図5(c)は点検のために、端子盤の上側のメタルケーブル・コードを取り外した状態を示している。このように、ケーブル・コードを飛び飛びに外す場合であっても、マーカ20はワンタッチでケーブル・コードに取り付けることができ、しかも、対応する固定側のケーブル・コードと同色で、同じ識別番号・記号が付いていることから、作業終了後は確実に、抜き取ったケーブル・コードを元の位置に戻ることができる。そして、元の位置に戻されたことを確認後は、ワンタッチでマーカを外すことができるので、作業効率を上げることができる。
勿論、図5の例においても、図3に示す例と同様に、全てのケーブル・コードに予め、マーカ20を取り付けて、上側の全てのケーブル・コードを端子盤202から外して、検査を行い、順次、固定側ケーブル・コードと対応する元の位置に、確実に取り付けることができる。
〔変形例〕
【0019】
図6は、実施例1又は実施例2の変形例を示すものである。
【0020】
図6(a)は、実施例2のマーカに第3の孔30を設けたものである。この第3の孔30は、特に本マーカ20の外形が魚に似ていることから、魚の「目」として付けたものである。このように「目」を付けることにより、本発明のマーカは、作業者に親近感あるいは「癒し」気分を与えることができ、作業効率の向上も期待できる。この「目」は、実施例1のマーカにも形成することができる。
【0021】
図6(b)は、変形例2を示すものである。
【0022】
変形例2は、変形例1において、切れ目31を直線ではなく、ギザギザ形としたものである。このように切れ目31をギザギザ形とすることにより、マーカをケーブル・コードに取り付けた際に、例えば、点検作業中に作業者がケーブル・コードあるいはマーカに触れて、ケーブル・コードが揺れた場合であっても、マーカがケーブル・コードから一層外れにくくすることができる。
【0023】
以上、本発明のマーカに関し、主に高速道路のETCシステム等を構築している伝送設備等のケーブル・コード配線盤等に用いられている光ファイバケーブル・コードあるいは、メタルケーブル・コード(電気ケーブル・コード)の保守点検作業において、一時的に用いる場合を例にして、説明した。
本発明のマーカは、上述したケーブル・コード配線盤等に用いられている光ファイバケーブル・コードあるいは、メタルケーブル・コード(電気ケーブル・コード)の保守点検作業以外の場においても用いることができることは明らかである。
例えば、電力会社の送配電設備、鉄道会社の通信設備、通信事業者などの基地局などにおける保守点検作業に於いても用いることができる。更に、各種工場、建物内の配線設備における保守点検作業に用いることができることも明らかである。その場合、ケーブル・コードの径が、例えば10mmを越す大きい径の場合は、本発明のマーカの全体の大きさと孔の径を、当該大きい径のケーブル・コードに適合するように変更すればよいことは明らかである。
【0024】
また、上記の説明において、本発明のマーカは、例示として、配線設備の保守点検作業において、一時的に用いられる場合を示したが、本発明のマーカは、恒久的あるいは半恒久的に用いるマーカとしても用いることができることも明らかである。特に、例えば、点検を年数回行う必要がある場合、あるいは、点検後、マーカをそのままケーブル・コードに取り付けておいても、支障がない設備、場所では、次回の点検まで、そのままマーカを取り付けておくことができる。
【0025】
更に、本発明のマーカは、耐久性があることから、繰り返し用いることも可能である。
【符号の説明】
【0026】
1、20 :マーカ
2、21 :軟質樹脂板状体
3、22、23、30:孔
4、24、31 : 切れ目
6、7 :突出部
8 :識別番号・記号
100 :光ファイバケーブル・コード配線盤
101 :光ファイバケーブル・コード
102、202 :端子盤
103、104 :光ファイバケーブル・コード接続用部品(コネクタ等)
200 :メタルケーブル・コード配線盤
201 :メタルケーブル・コード
203 :固定端子
204 :ネジ端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質樹脂の板状体であって、
当該板状体の中央部付近に形成された孔と、
当該板状体の一端側側面から前記孔に至る切れ目と、
当該板状体の他端側に形成された、前記一端側の前記切れ目を開口させるための把持部と、
を有することを特徴とするケーブル・コード用マーカ。
【請求項2】
前記軟質樹脂は、発泡プラスチック又はゴムであることを特徴とする請求項1記載のケーブル・コード用マーカ。
【請求項3】
前記把持部は、一対の突出部から構成されることを特徴とする請求項1又は2記載のケーブル・コード用マーカ。
【請求項4】
前記板状体は、着色されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載のケーブル・コード用マーカ。
【請求項5】
前記一端側側面から前記孔に至る前記切れ目の途中に、前記孔よりも径が大きい第二の孔を形成したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載のケーブル・コード用マーカ。
【請求項6】
前記板状体の両面及び周囲側面の一又は複数の面に、識別用の番号又は記号を付したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載のケーブル・コード用マーカ。
【請求項7】
前記一端側は、円弧状又は曲線状に形成したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項記載のケーブル・コード用マーカ。
【請求項8】
前記板状体の全体の周囲を曲線又は円弧を組み合わせた滑らかな曲線で形成としたことを特徴とする請求項7記載のケーブル・コード用マーカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−105439(P2012−105439A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251137(P2010−251137)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(592128191)株式会社川口電機製作所 (18)
【出願人】(597165618)株式会社ネクスコ東日本エンジニアリング (18)
【Fターム(参考)】