説明

ケーブル巻回具

【課題】敷設作業において8の字状に巻回されたケーブルを一旦他の場所に移し替えることなく効率良く引き出すことができ、また、ケーブルを8の字状に巻回した巻回束を大きな力を必要とすることなく簡単かつ楽に横に移動させて取り出すことができるケーブル巻回具を提供する。
【解決手段】巻回具本体2と、ケーブル31が巻回される2つの巻回部21とを有し、ケーブル31を前記2つの巻回部21の中間部で交差させて巻き付けることで8の字状に巻回するものであって、巻回部21は、巻回具本体2に立設されてケーブル巻回時にケーブル31が掛け止めされる複数の掛止部22で構成するとともに、各掛止部22は、巻回されたケーブル31の内方に横倒可能に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルの敷設においてケーブルを8の字状に巻回し、仮置きあるいは一時保管するために使用されるケーブル巻回具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、長尺のケーブルを地下埋設管路や地上ピット等に敷設する際にケーブルに捩れがあるとケーブルが蛇行したりするので、その捩れを防止するために、ケーブルを8の字状に巻回することが行なわれている。ケーブルを8の字状に巻回するための巻回具として、実開平2−99869号公報に記載されたものが知られている。
【0003】
前記公報に記載の巻回具は、図10に示すように、ケーブル31の交差部を挟んで立設された一対の支柱42に平面V字状の支持アーム43を多段に対向突設させた交差部ガイド44と、ケーブル31の円弧部に沿って配置される円弧プレート45からなる円弧ガイド46とで構成されている。この巻回具41により、ケーブル31は上方に同じ大きさの8の字を描いて積み上げられ、これを仮置きすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平2−99869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記公報に記載の巻回具41は、多段の支持アーム43を有する交差部ガイド44やケーブル31の円弧径を規制する円弧プレート45が設けられているため、ケーブル31を巻回した後、敷設範囲の後半部を繰り出す際に、巻回具41からケーブル31を引き出すには、ケーブル31を一旦巻回具41から他の場所である巻回具41横の空きスペース等に移動させ移し替えてから行なわなければならない。このため、巻回具41からのケーブル31の繰出作業は大変面倒なものとなっていた。
【0006】
また、この巻回具41を使用してケーブル31を8の字状に巻回した巻回束32を順次作成していって多数の巻回束32を仮置きし一時保管する作業を行なう場合は、ケーブル31を巻回具41に巻回した後、その巻回束32を巻回具41の側方に移動させて取り出し、その後、次の巻回束32の作成に移行して、同様に、巻回束32を作成し、これを巻回具41から取り出すという作業を繰り返すが、その作業において、従来の巻回具41は、巻回した巻回束32を巻回具41から取り出すには、円弧プレート45を乗り越えさせるように持ち上げて行なわなければならなかった。そのため、作業が大変面倒であり、特に、大径のケーブル31の場合では、重量が大きい分、多大な持上げ力、労力が必要で重労働となり、更に困難な作業を強いられていた。
【0007】
そこで、本発明は、敷設作業において8の字状に巻回されたケーブルを一旦他の場所に移し替えることなく効率良く引き出すことができ、また、ケーブルを8の字状に巻回した巻回束を大きな力を必要とすることなく簡単かつ楽に横に移動させて取り出すことができるケーブル巻回具の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1のケーブル巻回具は、巻回具本体と、ケーブルが巻回される2つの巻回部とを有し、前記ケーブルを前記2つの巻回部の中間部で交差させて巻き付けることで8の字状に巻回するために使用されるものであって、前記巻回部は、前記巻回具本体に立設されてケーブル巻回時に該ケーブルが係止される複数の係止部で構成され、前記係止部は、巻回された前記ケーブルの内方または外方に横倒可能に形成されたものである。
【0009】
ここで、ケーブルは8の字状に巻回すると、ケーブルに発生する捩れを相殺して捩れの発生を抑えることができ、ケーブルが敷設路途中において蛇行するのを防止できる。
【0010】
上記構成により、係止部で構成された巻回部はケーブルの巻回路を案内するガイドともなり、ケーブルは係止部に係止され、係止部に沿って8の字状に巻回される。ケーブル巻回後は、係止部を、巻回されたケーブルの内方または外方に横倒することにより、巻回具に載置された状態でケーブルを順次繰り出して敷設路に敷設することができる。また、係止部を横倒することにより、巻回されたケーブルの巻回束を横にずらして移動させ、巻回具から取り出すことができる。ここで、係止部への係止には、ケーブルが外部側から係止部に掛け止めされる、外部側から係止される場合と、ケーブルが内部側から外部側に向けて拡張し係止部に当接して規制される、内部側から係止される場合とがある。
【0011】
請求項2のケーブル巻回具は、請求項1の係止部が、ケーブルが掛け止めされ、巻回されたケーブルの内方に横倒可能な掛止部からなる。
【0012】
請求項3のケーブル巻回具は、巻回具本体が、複数の棒状体によって2つの十字を連設した形状に形成されてなり、前記各棒状体は、前記十字の中心部を軸として該十字の中心線に沿う方向に回動可能に設けられている。即ち、巻回具は、十字の中心部を軸として複数の棒状体を回動して傘のようにすぼめたり開いたりすることができるようになっている。ここで、十字の中心線とは、十字の交差点を垂直方向に貫通する線をいう。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明は、ケーブルを8の字状に巻回した後、係止部を、巻回されたケーブルの内方または外方に横倒することにより、ケーブルは持ち上げたりすることなく巻回具に載置された状態で順次繰り出すことができるので、敷設長の長いケーブルを、敷設路の前半部と後半部とに分け、敷設路の中間地点で8の字状に巻回し仮置きしてから後半部を敷設する作業を行なったりする際に、巻回具からケーブルを引出す作業を一旦他の場所に移し替えることなく効率良く行なうことができ、作業性が向上する。
【0014】
また、係止部を横倒することにより、巻回されたケーブルを持ち上げることなく巻回束を横にずらすことができるので、多数の巻回束を仮置きし一時保管する作業を行なったりする際に、ケーブルが大径の重量のある場合であっても、巻回したケーブルの巻回束を大きな力を必要とすることなく簡単かつ楽に巻回具の側方に移動させて取り出すことができる。
【0015】
請求項2の発明は、ケーブルが掛止部に掛け止めされ、掛止部と当接した状態で巻回されるから、ケーブルを作業性良く確実に一定形状の8の字状に巻回し、積み重ねることができる。
【0016】
請求項3の発明は、複数の棒状体をコンパクトに折り畳むことができるので、使用後の巻回具の運搬が楽になるとともに、保管スペースを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態のケーブル巻回具を示す斜視図である。
【図2】図1の巻回具を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【図3】図1の巻回部を示す要部斜視図である。
【図4】図1の巻回具本体の十字の中心部を示し、(a)は回動許容空間を回動規制板で閉塞した状態を示す斜視図、(b)は分解斜視図である。
【図5】図4の中心部を示す断面図であり、(a)は回動許容空間を回動規制板で閉塞した状態、(b)は回動規制板を浮き上がらせた状態を示す。
【図6】図1の棒状体を十字の中心部を軸に回動させる状態を示す説明図である。
【図7】図1の巻回部を示し、(a)は立設途中の状態を示す正面図、(b)は立設後の状態を示す正面図、(c)は立設途中の状態を示す斜視図である。
【図8】8の字状に巻回した巻回束を図1の巻回具から取り出す状態を示す平面図である。
【図9】図1の巻回具を折り畳んだ状態を示す正面図である。
【図10】従来の巻回具の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態のケーブル巻回具を図に基づいて説明する。
図1及び図2において、巻回具1は、巻回具本体2と、ケーブル31が巻回される2つの巻回部21とで構成されており、ケーブル31を前記2つの巻回部21の中間部で交差させて巻き付けることで8の字状に巻回するものである。巻回具本体2は、複数の棒状体3によって、図2(a)に示すように、全体が平面視で2つの十字を連設した形状に形成されている。そして、各棒状体3は、図6に示すように、前記十字の中心部7を軸として該十字の中心線18に沿う方向に回動可能に設けられている。一方、巻回部21は、ケーブル31が係止される複数の係止部からなり、図1等に示す本実施形態においては、前記係止部は、巻回具本体2に立設されてケーブル巻回時にケーブル31が掛け止めされる掛止部22で構成されている。更に、掛止部22は、巻回されたケーブル31の内方に横倒可能に形成されている。以下、各構成部材について更に説明する。
【0019】
まず、前記巻回具本体2は、その中央部即ち8の字形状の2本の直線が交わる交差部分におけるケーブル31を支持する1本の長尺棒状体3aと、8の字形状の円環部分においてケーブル31を支持する計6本の短尺棒状体3bとで構成されている。各棒状体3はアルミニウム材や鋼材等を使用した四角筒状体で形成されている。巻回具本体2は少なくとも8の字状に巻回されたケーブル31の巻回束32を載置し得る強度を備えている。
【0020】
各棒状体3は、断面が幅広の矩形枠状をなし、一端が巻回具本体2の十字の中心部7に取付けられている。図3及び図4において、巻回具本体2の十字の中心部7は、鋼板などの金属板からなり、上面が開口する四角箱状の基台8が設けられている。この基台8の4面の側壁9はいずれも外側から見た略右半分にコ字状に切欠された切欠開口9aが形成されており、この切欠開口9aは棒状体3の断面形状とほぼ合致する大きさ及び形状に形成されていて、棒状体3の一端をほぼ隙間なく挿入できるようになっている。各側壁9の外側から見た略左半分は、六角ボルト10が貫通する貫通孔9bが形成されており、この側壁9の略左半分は六角ボルト10を取着するためのフランジとして機能するとともに、棒状体3の一方の側壁4と面接触して棒状体3が側方に移動するのを規制するフランジとして機能する。また、棒状体3の端部の両側壁4には六角ボルト10が挿通される挿通孔4aが一対設けられている。
【0021】
基台8の底壁11において各棒状体3の端部の近辺には、それぞれ底壁11をコ字状に切欠して内部側に垂直に切り起こしたボルト取付フランジ12が立設されている。そして、各ボルト取付フランジ12の略中央には六角ボルト10のねじ部が挿通され螺着されるねじ孔12aが設けられている。なお、ボルト取付フランジ12は、基台8の側壁9の略左半分と同様に、六角ボルト10を取着するためのフランジとして機能するとともに、棒状体3の他方の側壁4と面接触して棒状体3が側方に移動するのを規制するフランジとして機能する。
【0022】
この構成により、各棒状体3は、六角ボルト10が基台8の側壁9の貫通孔9b及び棒状体3の側壁4の挿通孔4aに挿通された後、ボルト取付フランジ12のねじ孔12aに螺着されることにより、基台8に六角ボルト10を軸として回動可能に取付けられている。なお、棒状体3の先端の端面5と、これと対向する位置に立設された、隣接する棒状体3を取着するためのボルト取付フランジ12との間には隙間からなる回動許容空間13が形成されていて、棒状体3の先端の端面5が対向するボルト取付フランジ12や六角ボルト10のねじ部先端と干渉して前記回動が妨げられるのが回避されている。
【0023】
更に、基台8の底壁11の中央にはボルト14が螺着、溶接等により垂直に立設されている。このボルト14には下方から順にコイルスプリング15、回動規制板16及び蝶ナット17が外挿されている。回動規制板16は、基台8の上面開口に形成された回動許容空間13に合致した大きさ、形状に形成されており、図4(a)及び図5(a)に示すように、回動許容空間13を隙間なく閉塞することができる。回動規制板16は、蝶ナット17の締付具合を調整し、少し締付けを緩めれば、コイルスプリング15の付勢力によって上方に押し上げられ、図5(b)の白抜き矢印で示すように、基台8の上面より上方に浮き上がる。
【0024】
この構成により、棒状体3は、基台8の底面に沿った姿勢から、十字の中心部7を軸として十字の中心線18つまり十字の交差点を垂直方向に貫通する線に沿う方向に回動させ、基台8の底面に対して立ち上がった姿勢とすることができるようになっている。即ち、巻回具1は、図5(b)の二点鎖線及び図6の白抜き矢印で示すように、十字の中心部7を軸として各棒状体3を90度の範囲で回動して傘のようにすぼめることができ、逆に、開いたりすることができるようになっている。なお、ここで、十字の中心部7を軸として回動させるとは、厳密には中心部7の基台8に取着されている六角ボルト10の軸線を軸として回動させることを意味する。
【0025】
一方、ケーブル31が巻回される2つの巻回部21は、それぞれ4個の係止部としての掛止部22で構成されており、各掛止部22は、図1及び図2に示すように、巻回具本体2の十字形状を形成する棒状体3の上面6に垂直に立設されている。この掛止部22はケーブル31の巻回時に外側にケーブル31が掛け止めされる。各掛止部22から十字の中心部7までの距離は全て同一に形成されている。更に、掛止部22は、巻回されたケーブル31の内方に横倒可能に棒状体3に取付けられている。具体的には、掛止部22は、図7に示すように、ケーブル31が掛止される掛止部本体23と、掛止部本体23を垂直の立設状態に保持固定する保持金具24とで構成されている。なお、長尺棒状体3aに立設された2個の掛止部22は、長尺棒状体3aへの立設位置によっては、図1に示すように、ケーブル31が掛止していないから、これら2個の掛止部22の設置を省くこともできる。但し、この長尺棒状体3aに立設された2個の掛止部22は、ケーブル31が一定の交差部で交差するよう導く案内部材として機能し得る。
【0026】
掛止部22を構成する掛止部本体23は、コ字状に屈曲形成してなる取付金具25に、金属棒を屈曲して細長U字状に形成したU字棒26がかしめ等により一体に接続固定されている。また、取付金具25には立設状態において掛止部本体23を横倒する方向に付勢するばね線27が取付けられているとともに、保持金具24の後述する係止突起30が係止される被係止突起28が形成されている。掛止部本体23は取付金具25に設けられた取付孔25aと棒状体3の両側壁4に設けられた貫通孔4bとに図7(c)に示す取付ピン29を挿通し、その挿通した先端部をかしめて取付けることにより、棒状体3に90度の範囲で回動可能に取着されている。保持金具24は、金属板をコ字状に屈曲して形成されてなり、コ字状の中間板部の端部に前記掛止部本体23の被係止突起28にばね線27の付勢力を介して弾性的に係止する係止突起30が形成されている。保持金具24は、掛止部本体23から十字形状の中心方向に所定距離離間して取付けられており、掛止部本体23と同様に、コ字状の両側板部に設けられた取付孔24aと棒状体3の両側壁4に設けられた貫通孔4bとに取付ピン29を挿通し、その挿通した先端部をかしめて取付けることにより、棒状体3に約90度の範囲で回動可能に取着されている。
【0027】
掛止部22は、図7(a)に示すように、掛止部本体23及び保持金具24を取付ピン29を軸に回動した後、立設状態となったら、図7(b)に示すように、ばね線27の付勢力に抗して保持金具24の係止突起30を掛止部本体23の被係止突起28に係止させることにより、一定の垂直の立設状態に保持固定することができる。
【0028】
一方、掛止部22を横倒するときには、掛止部22の掛止部本体23を一旦ばね線27の付勢力に抗して90度より僅かに開く角度に回動させて保持金具24の係止突起30と掛止部本体23の被係止突起28との係止を解除する。そして、これにより、掛止部本体23と保持金具24とが離間し、それぞれが回動可能な状態になったら、まず、保持金具24を棒状体3の上面6に沿う方向に回動し、次いで、掛止部本体23を同様に回動して横倒する。
【0029】
次に、上記のように構成された巻回具1を使用した長尺のケーブル31を巻回する操作について説明する。
ケーブル31を8の字状に巻回するには、巻回具本体2を2つの十字状の部分が展開した状態に保持固定するとともに、全ての掛止部22を棒状体3の上面6に立設させた状態に保持固定する。このとき、巻回具本体2は十字の中心部7の蝶ナット17を締付けて回動規制板16を基台8の上面開口の回動許容空間13を閉塞する高さに位置させる。これにより、各棒状体3は、図5(a)に示すように、その端面5が回動規制板16の外縁端面16aと当接して六角ボルト10を軸に不用意に回動するのが阻止されるので、巻回具本体2は、ケーブル31の巻回作業中、上記のように十字状に展開した状態に確実に保持固定させておくことができる。
【0030】
そこで、この状態で、ケーブル31を各掛止部22の外側に回してこれに掛け止めし、交差部で交差させて8の字を描きながら下方から順次上方に積み上げていけば、ケーブル31は横崩れすることなく安定して8の字状に巻回され、巻回束32が形成される。
【0031】
次に、巻回したケーブル31を巻回具1から引き出す操作、及びケーブル31を8の字状に巻回した巻回束32を束ごと巻回具1から取り出す操作について説明する。
まず、ケーブル31を引き出すには、保持金具24の係止突起30と掛止部本体23の被係止突起28との係止を解除し、最初に、保持金具24を棒状体3の上面6に沿う方向に回動し、次いで、掛止部本体23を同様に回動して、掛止部22を巻回したケーブル31の内方に横倒する。このようにして全ての掛止部22を横倒したら、巻回具1は、ケーブル31の載置面全体が、掛止部22が起立していない平坦面となるので、ケーブル31は持ち上げることなくそのまま巻回具1から繰り出しつつ引き出す。以後は、ケーブル31を引き出しつつ順次敷設路に繰り出す。なお、このとき、ケーブル31は8の字状に巻回されているので、繰り出されたケーブル31に捩れが発生するのを防止でき、それにより、ケーブル31が敷設路途中において蛇行するのを防止することができる。
【0032】
次に、ケーブル31を巻回した巻回束32を束ごと巻回具1の側方に取り出すには、上記引出の場合と同様にして、保持金具24の係止突起30と掛止部本体23の被係止突起28との係止を解除し、掛止部22を巻回したケーブル31の内方に横倒する。それにより、ケーブル31の載置面全体が平坦面となるので、巻回束32を持ち上げることなくそのまま横にずらしながら巻回具1の側方に移動させる。
【0033】
この巻回具1は、例えば、次の作業において使用される。
即ち、ケーブル31を地下埋設管路や地上ピット等に敷設するに際し、敷設長が長いためにケーブルと管路との摩擦力による引張力が大きい場合に、その引張り抵抗を軽減すべく、最初にドラムからケーブル31を引き出して敷設範囲の中間地点までの前半部に敷設する。次いで、後半部に敷設されるケーブル31をドラムから引き出して8の字状に蓄積した状態に仮置きし、最後に仮置きした巻回束32からケーブル31を繰り出して中間地点から後半部に敷設する。この作業において、巻回具1は、巻回具1に8の字状に巻回して載置された状態で直ちにケーブル31を敷設路の後半部に繰り出すことができる。
【0034】
また、ケーブル31を8の字状に巻回した巻回束32を順次作成していって多数の巻回束32を仮置きし或いは一時保管する作業を行なうことがある。この作業において、巻回具1は、図8に示すように、ケーブル31の巻回束32を持ち上げることなくそのまま側方にずらして移動させ、巻回具1の側方に取り出すことができる。この後、巻回具1の側方に取り出された巻回束32は、中間の交差部で半折りして重ね、一つの環状の束とすれば、この束に腕を通すなどして他所に簡単に持ち運ぶことができる。また、これにより、巻回束32の設置スペース、保管スペースを小さくすることができる。
【0035】
一方、使用した巻回具1は折り畳んで運搬あるいは保管することができる。即ち、図4(a)に示す状態において、蝶ナット17の締付けを緩め、コイルスプリング15の付勢力を利用して、図5(b)に示すように、回動規制板16を棒状体3の上面6より上方に浮き上がらせる。すると、回動規制板16により閉塞されていた回動許容空間13が開放状態となるので、棒状体3の端面5と回動規制板16の外縁端面16aとの当接が解除され、干渉しなくなって棒状体3は六角ボルト10を軸に回動可能となる。そこで、全ての棒状体3を中心部7を軸に十字の中心線18に沿う方向に回動すれば、棒状体3は傘のようにすぼめられ、巻回具1の中央の1本の長尺棒状体3aを基に、これに両側各3本の短尺棒状体3bが折り重ねられて、図9に示すような、各棒状体3が束ねられたコンパクトな状態に折り畳まれる。なお、棒状体3を折り畳んだ後は、必要に応じて、バンド等で全ての棒状体3の端部を一つに結束する。
【0036】
次に、本実施形態の巻回具1の作用を説明する。
巻回具1は、ケーブル31を8の字状に巻回した後、掛止部22を、巻回されたケーブル31の内方に横倒することにより、ケーブル31は持ち上げたりすることなく巻回具1に載置された状態でそのまま順次繰り出すことができるので、前述のような、長尺のケーブル31の後半部を8の字状に巻回し仮置きしてから後半部を敷設する作業を行なったりする際に、巻回具1から一旦ケーブル31を巻回具1の側方に移動させる必要がなく、ケーブル31を効率良く引出すことができ、作業性が向上する。
【0037】
また、掛止部22を横倒することにより、巻回されたケーブル31を持ち上げることなく巻回束32毎巻回具1の横にずらすことができるので、1つの巻回具1を使用して8の字状のケーブル31の巻回束32を多数形成して仮置きし一時保管する作業を行なったりする際に、譬え重量のある大径のケーブル31などの場合であっても、巻回したケーブル31の巻回束32を大きな力を必要とすることなくそのまま横にずらして簡単かつ楽に巻回具1の側方に取り出すことができる。
【0038】
更に、各掛止部22は巻回されるケーブル31の内方に配設されてケーブル31が掛け止めされ、ケーブル31は掛止部22と当接した状態で巻回されるから、ケーブル31を作業性良く確実に一定形状の8の字状に巻回し、積み重ねることができる。
【0039】
そして、巻回具本体2の各棒状体3は、十字の中心部7を軸として該十字の中心線18に沿う方向に回動可能に設けられているから、複数の棒状体3をコンパクトに折り畳むことができる。これにより、使用後の巻回具1の運搬を楽に行なうことができるとともに、その保管スペースを小さくすることができる。
【0040】
ところで、上記実施形態の巻回具1は、巻回具本体2が複数の棒状体3を使用して2つの十字を連設した形状に形成されているが、これに限られるものではなく、例えば、巻回具本体2を平板で形成し、この平板の上面の所定位置に複数の掛止部22を配置し、立設したものとすることもできる。
【0041】
また、巻回具本体2の棒状体3は、図示しないが、上面6の幅方向中間部分が長手方向に沿って開口し、内部に、上面6の開口から上部が僅かに突出する球体や小ローラが棒状体3の長手方向に沿って多数収容されたものに形成してもよい。この場合は、8の字状に巻回されたケーブル31の巻回束32を巻回具1の側方にずらして取り出すときに、移動のための力を更に小さくすることができる。
【0042】
更に、上記実施形態の巻回部21は、各掛止部22と十字の中心部7との間隔が全て同一に形成され、巻回部21においてケーブル31はほぼ真円の形状に巻回されるが、必ずしもこれに限られるものではなく、複数の棒状体3の間で、掛止部22と十字の中心部7との間隔を異ならせて例えば楕円形状等に巻回させることもできる。また、一対の巻回部21において、巻回径を互いに異ならせてもよい。
【0043】
加えて、上記実施形態の掛止部22は、棒状体3の一定位置に固定されているが、十字の中心部7までの距離を可変できるよう棒状体3の長手方向に移動可能に取付けてもよい。この場合は、掛止部22と十字の中心部7との間隔を変更することにより、ケーブル31の種類、外径、材質等に応じて巻回半径を最適な大きさに調整することができる。
【0044】
そして、掛止部22は、各巻回部21において4個ずつ立設されているが、その個数はこれに限られるものではなく、例えば、8の字の交差部に立設された掛止部22は省くこともできる。
【0045】
また、掛止部22は、U字棒26を上下にスライドできるようにしたり、上部に継ぎ足したりして高さを調整できるようにしてもよい。この場合は、ケーブル31の積み上げ高さに対応することができる。
【0046】
更に、掛止部22の掛止部本体23は、U字棒26により形成されているが、これに限られず、丸棒、丸パイプ等で形成してもよい。そして、掛止部22は、丸棒や丸パイプ等を棒状体3に差し込んで着脱自在な構造として立設してもよい。
加えて、上記実施形態の掛止部22は、掛止部本体23と保持金具24との2部材で構成し、掛止部本体23の被係止突起28と保持金具24の係止突起30とを係止させて保持固定しているが、この構造に限られるものでもない。
【0047】
そして、上記実施形態においては、巻回部21を構成する係止部は、ケーブル31の巻回時にケーブル31が掛け止めされる掛止部22からなり、各掛止部22は、巻回されたケーブル31の内方に横倒可能に形成されているが、本発明を実施する場合には、係止部を、ケーブル31が内部側から外部側に向けて係止するものであって、巻回されるケーブル31の外部側に立設され、かつ、巻回されるケーブル31の外方に横倒可能なものとすることも可能である。この場合、ケーブル31は、その巻回の曲げ抵抗による弾性復帰力によって外方に拡張しようとするのをこの係止部と当接することにより規制されて、8の字状に巻回される。この場合、この外部側に立設される係止部は、例えば、前記掛止部22と同様の構成で形成することができ、巻回されるケーブル31の外方に横倒させることができる。また、巻回部21は、配設位置により、巻回されるケーブル31の内方に横倒する掛止部22と前記外方に横倒する係止部とのいずれかが設けられ、両者が混在するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 巻回具
2 巻回具本体
3 棒状体
3a 長尺棒状体
3b 短尺棒状体
7 中心部
18 中心線
21 巻回部
22 掛止部
31 ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回具本体と、ケーブルが巻回される2つの巻回部とを有し、前記ケーブルを前記2つの巻回部の中間部で交差させて巻き付けることで8の字状に巻回するケーブル巻回具であって、
前記巻回部は、前記巻回具本体に立設されてケーブル巻回時に該ケーブルが係止される複数の係止部で構成され、
前記係止部は、巻回された前記ケーブルの内方または外方に横倒可能に形成されてなることを特徴とするケーブル巻回具。
【請求項2】
前記係止部は、前記ケーブルが掛け止めされ、巻回された前記ケーブルの内方に横倒可能な掛止部からなることを特徴とする請求項1に記載のケーブル巻回具。
【請求項3】
前記巻回具本体は、複数の棒状体によって2つの十字を連設した形状に形成されてなり、
前記各棒状体は、前記十字の中心部を軸として該十字の中心線に沿う方向に回動可能に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のケーブル巻回具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−265069(P2010−265069A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117092(P2009−117092)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】