説明

ケーブル引出し方向可変接栓

【課題】ケーブル引出し方向を任意に調整でき、配線する場所の状態等に合わせて円滑に配線できるケーブル引出し方向可変接栓を提供する。
【解決手段】第1接栓体30と第2接栓体40を互いに回転可能に結合して接栓100を構成する。第1接栓体30は本体ケース31の先端部に例えばナット形コネクタ32を備え、第2接栓体40は本体ケース41の先端部に例えばネジ形コネクタ42を備えている。上記第1接栓体30の本体ケース31及び第2接栓体40の本体ケース41は、接合面を45度の角度で傾斜させて形成し、接合面の中心軸A、Bを回転軸として360度回転できるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル引出し方向を調整する機能を備えたケーブル引出し方向可変接栓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家屋の壁面等に設けられたテレビ端子から複数の電子機器(テレビ受信機、ビデオ録画装置など)にテレビ信号を分配、延長する場合、前記テレビ端子からテレビ信号をケーブルで延長しその先端に接続された分配器によりテレビ信号を分配することが行われている。前記の分配器の出力端子と前記電子機器の入力端子との間の高周波ケーブルの接続では、通常ケーブルの端部に接栓を設けて前記端子間を接続する(当該目的の分配器として、例えば特許文献1及び2を参照。)。上記接栓としては、端子に対して高周波ケーブルを直線状(180°)に接続するストレート形や、端子に対して高周波ケーブルを90度の角度で接続するL形の接栓が使用される(例えば特許文献3を参照。)。
【0003】
図9(a)、(b)は、従来における分配器と接栓の接続形態を示す斜視図である。
【0004】
図9(a)において、10は分配器で、取付プレート11の前面に複数例えば2つのテレビ信号の分配出力端子12、13が設けられている。また、取付プレート11の側部の入力端子には高周波ケーブル14がその先端に装着された接栓を介して接続される。上記高周波ケーブル14のもう一方の端部に装着された接栓は、図示しないが家屋の壁面等に設けられたテレビ端子に接続される。
【0005】
そして、上記分配器の分配出力端子12、13には、テレビ受信機等の電子機器からの高周波ケーブル24に装着された接栓、例えばねじ込み式のストレート形接栓21、差し込み式のストレート形接栓22、差し込み式のL形(90度)接栓23等が接続される。またそれぞれ高周波ケーブル24のもう一方の端部にも上記と同様に接栓が装着され、テレビ受信機等の電子機器の入力端子に接続される。
【0006】
図9(b)は、図9(a)に示した一方の分配出力端子12に差し込み式のストレート形接栓22を装着し、他方の分配出力端子13に差し込み式のL形接栓23を装着した状態を示している。
【0007】
また、高周波ケーブル間を中継接続する中継接栓においても、ストレート形やL形の接栓形態が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】意匠登録第1183047号公報
【特許文献2】意匠登録第1183048号公報
【特許文献3】実用新案登録第3062286号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来は、上記のような分配器10に電子機器からの高周波ケーブル24を接続する場合、予めストレート形接栓やL形接栓など複数種の接栓を用意し、配線環境、すなわち配線する場所やケーブルの引き回し方向に合わせて接栓21〜23の形状を選択して分配器10に接続している。このような対応をとらない場合、ケーブル24の引き回しの自由度が少なくなる共に、ケーブル24を極端に折り曲げた際にはケーブル内部で芯線が断線する恐れが生じる。
【0010】
本発明は上記の課題を解決するためのもので、屋内、屋外を問わずに接栓方向を任意に設定でき、配線する場所の状態等に合わせて円滑に配線できる高周波ケーブル用の終端部接栓及び中継接栓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る接栓は、第1接栓体と、前記第1接栓体の接合面に回転可能に設けられる第2接栓体とを具備し、前記第1接栓体の接合面及び第2接栓体の接合面をそれぞれ中心軸に対して略45度傾けて形成し、前記第1接栓体に対して前記第2接栓体を回転することでケーブル引出し方向を調整できるように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1接栓体の軸に対して略45度傾けた軸を持つ第2接栓体を回転可能に設けることにより、高周波の電気特性を安定に保ちつつ接栓方向を容易に調整することができ、また第1接栓体及び第2接栓体を防水構造とすることにより、屋内、屋外を問わずに使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例1に係る接栓の構成例を示す側面図である。
【図2】同実施例1において、第1接栓体と第2接栓体の軸を一直線上に保持したときの状態を示す断面図である。
【図3】(a)は同実施例1に係る接栓の構成を示す分解斜視図、(b)は接栓を組み立てた状態を示す斜視図である。
【図4】同実施例1に係る接栓において、第1接栓体と第2接栓体の相互回転における結合状態の詳細を第2接栓体を断面化して示した斜視図である。
【図5】同実施例1に係る接栓において、第1接栓体を固定した状態で第2接栓体を回転した場合の例を示す斜視図である。
【図6】同実施例1において、接栓を分配器に接続した場合の接続形態例を示す斜視図である。
【図7】本発明を適用した中継接栓の一例を示す斜視図である。
【図8】本発明を適用した中継接栓の他の一例を示す斜視図である。
【図9】従来における分配器と高周波ケーブル用の接栓の接続形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明を接栓100に実施した場合の構成例を示し、(a)は第1接栓体と第2接栓体の軸を一直線上に保持したときの状態を示す側面図、同図(b)は第1接栓体の軸と第2接栓体の軸の角度を90度とした場合の状態を示す側面図である。
【0016】
本発明の実施例1に係る接栓100は、第1接栓体30のA軸に対し第2接栓体40のB軸を45度傾けた状態で回転可能に結合し、接栓方向を任意に調整できるように構成したものである。
【0017】
第1接栓体30は本体ケース31の先端部に例えばナット形コネクタ32を備え、第2接栓体40は本体ケース41の先端部に例えばネジ形コネクタ42を備えている。上記第1接栓体30の本体ケース31及び第2接栓体40の本体ケース41は、接合面を45度の角度で傾斜させて形成しており、接合面の中心軸A、Bを回転軸として360度回転できるように構成している。
【0018】
以下、上記接栓100の詳細を図2及び図3(a)、(b)を参照して説明する。図2は第1接栓体30と第2接栓体40の軸を直線の状態としたときの断面図、図3(a)は接栓100の構成を示す分解斜視図、同図(b)は接栓100を組み立てた状態を示す斜視図である。
【0019】
第1接栓体30の本体ケース31は、略円筒状に形成され、一方の端部に第2接栓体40と接合する接合面311が設けられる。この接合面311は、中心軸に対して45度の角度で傾斜して形成され、その中心部に円筒状の結合用突部312が設けられる。この結合用突部312は、接合面311に対して垂直となるように突出して設けられ、その先端外周に係合片313を備えている。この係合片313は、円板の両側を切欠した略小判形の形状となっている。また、接合面311には、結合用突部312の外周に位置するように略楕円形の溝314が一定の深さに形成され、第2接栓体40と接合する際に溝314に防水パッキン33が位置するようにしている。上記溝314の深さは、例えば防水パッキン33の厚さの1/2程度に設定される。
【0020】
また、上記本体ケース31は、他方の端部が開口しており、この開口部の内側にネジ溝(図示せず)が形成され、このネジ溝にナット形コネクタ32が螺着される。
【0021】
上記ナット形コネクタ32は、略円筒状に形成されたナット保持体321の先端部にOリング322を介してナット323が装着され、上記Oリング322により防水構造となっている。
【0022】
上記ナット保持体321は、ナット装着端とは反対側の端部外周にネジ部324が形成され、防水パッキン34を介在して本体ケース31に螺着される。上記ナット保持体321は、中央部外周がリング状に突出して形成され、その外周部位に180°の間隔で、すなわち対称となる2つの位置にスパナ掛け325が設けられる。
【0023】
また、本体ケース31及びナット保持体321の内側には、中心ピン保持構体35a、35bが装着される。中心ピン保持構体35a、35bは対をなしており、絶縁体により本体ケース31及びナット保持体321の内側形状に合わせて形成され、内側中心軸に沿って形成した溝351により中心ピン36を保持する。上記溝351は、中心ピン36の形状に合わせて形成される。また、中心ピン保持構体35a、35bは、本体ケース31の接合面311側に位置する端部352が結合用突部312内に挿入されるように所定の角度で突出して形成される。
【0024】
上記中心ピン保持構体35a、35bには、相対向する面に複数の結合突起(図示せず)及び結合穴353が対応して設けられ、結合突起を結合穴353に圧入することによって一体に結合される。
【0025】
上記中心ピン36は、中心ピン保持構体35a、35bの両端部から所定長さ突出して形成され、ナット形コネクタ32側に突出した先端部は該ナット形コネクタ32内の中心軸に沿って位置する。また、本体ケース31の接合面311側に位置する中心ピン36の先端部は、結合用突部312の中心軸に沿って位置するように折り曲げられ、かつ、結合用突部312の先端から所定長さ突出して設けられる。
【0026】
一方、第2接栓体40の本体ケース41は、本体ケース31と同じ直径の円筒状に形成され、一方の端部に第1接栓体30と接合する接合面411が設けられる。この接合面411の中央には、略楕円形状の結合穴412が設けられ、この結合穴412より、上記第1接栓体30の本体ケース31に設けられた結合用突部312及び係合片313が本体ケース41内に挿入される。
【0027】
また、上記本体ケース41は、他方の端部が開口しており、この開口部の内側にネジ溝(図示せず)が形成され、このネジ溝にネジ形コネクタ42が螺着される。
【0028】
上記ネジ形コネクタ42は、前後両端の外周にネジ部421、422が形成されており、後端側のネジ部422が本体ケース41に防水パッキン43を介在して螺着される。また、ネジ形コネクタ42は、中央部外周がリング状に突出して形成され、その外周部位に180°の間隔で、すなわち対称となる2つの位置にスパナ掛け423が設けられる。
【0029】
上記ネジ形コネクタ42及び本体ケース41の内側には、中心コンタクト保持構体44a、44bにより保持された中心コンタクト45が装着される。中心コンタクト保持構体44a、44bは、絶縁体によりネジ形コネクタ42及び本体ケース41の内側形状に合わせて形成され、中心コンタクト45を挟んで保持する。この場合、ネジ形コネクタ42の開口先端部に防水パッキン46を装着し、中心コンタクト45の先端を中心位置に保持すると共に防水機能を持たせている。
【0030】
また、中心コンタクト保持構体44a、44bの形状は、本体ケース41内に挿入される端部を接合面411の傾斜に合わせて斜めに形成すると共に、接合面411の結合穴412から挿入される第1接栓体30側の部材、すなわち本体ケース31の結合用突部312、係合片313、及び中心ピン36の先端部との関係を考慮したものになっている。
【0031】
上記中心コンタクト保持構体44a、44bには、相対向する面に複数の結合突起441及び結合穴442が対応して設けられ、結合突起441を結合穴442に圧入することによって一体に結合される。
【0032】
上記中心コンタクト45は、弾性を有する1対の金属板からなり、一方の端部はネジ形コネクタ42の開口端部の中心に位置して外部コネクタ(図示せず)の中心導体と電気的に接続される。また、中心コンタクト45の他方の端部は、本体ケース41の接合面411と平行となるように折り曲げられ、先端部が中心コンタクト保持構体44a、44bより突出して設けられる。上記中心コンタクト45の先端部は、1対の金属板が所定の間隔を保って対向配置されると共に、それぞれ半円状に形成されて中心ピン結合部451を構成しており、第1接栓体30と第2接栓体40とを結合した際に、本体ケース41の接合面411に設けた結合穴412から挿入される第1接栓体30の中心ピン36の先端を挟持して電気的に接続する。そして、第1接栓体30と第2接栓体40とを相対的に回転させた場合、第2接栓体40の中心コンタクト45は、中心ピン結合部451が第1接栓体30の中心ピン36に摺接した状態で回転し、中心ピン36と電気的な接続状態を保持する。
【0033】
上記の構成において、第1接栓体30及び第2接栓体40は、それぞれ別個に組み立てを行った後、防水パッキン33を介在させて結合する。この場合、第1接栓体30における本体ケース31の結合用突部312に設けた係合片313を第2接栓体40における本体ケース41の接合面411に設けた結合穴412の位置を合わせ、係合片313を結合穴412から本体ケース41内に挿入すると共に、結合用突部312から突き出ている中心ピン36の先端を中心コンタクト45の中心ピン結合部451に挟持させ、両者を電気的に接続する。
【0034】
この状態で、第1接栓体30に対して第2接栓体40を任意の方向に少し回転させると、本体ケース31の結合用突部312に設けた係合片313と本体ケース41の接合面411に設けた結合穴412の位置がずれ、係合片313の裏面が本体ケース41の接合面411の裏面に係合する。また、結合用突部312に設けた係合片313の裏面側に中心コンタクト保持構体44a、44bの先端の一部が位置し、係合片313を保持する。この結果、第1接栓体30と第2接栓体40とは、確実に結合した状態となり、相互に回転しても結合状態に保持される。
【0035】
図4には、上記説明に係り、第1接栓体と第2接栓体の相互回転における結合状態の詳細が示されている。
【0036】
また、第1接栓体30側の中心ピン36の先端は、第2接栓体40の中心コンタクト45に設けた中心ピン結合部451に結合され、第1接栓体30に対して第2接栓体40を任意の方向に回転しても電気的接続状態に保持される。
【0037】
上記のように本体ケース31の接合面311及び本体ケース41の接合面411を略45度の角度で傾斜させて形成し、かつ、それぞれの接合面311、411の中心軸を回転軸として360度回転できるように構成することにより、接栓の形状をストレート形やL形等に変形して接栓方向に任意に調整することができる。
【0038】
図5は第1接栓体30を固定した状態で第2接栓体40を回転した場合の例を示したもので、(a)は第1接栓体30と第2接栓体40をストレート形としたときの状態、(b)は上記ストレート形から第2接栓体40を時計方向に90度回転させた状態、(c)は更に第2接栓体40を時計方向に90度回転させたときの状態を示している。
【0039】
図5に示したように第1接栓体30を固定した状態で第2接栓体40を回転した場合、第2接栓体40の回転角度を変えることにより、第2接栓体40の方向を任意に調整することができる。
【0040】
図6は本発明の実施例1に係る接栓100A、100Bを分配器10に接続した場合の接続形態例を示したものである。
【0041】
上記接栓100A、100Bは、それぞれナット形コネクタ32が分配出力端子12、13に螺着される。そして、図5では、一方の接栓100Aのネジ形コネクタに差し込み式ストレート形接栓111を接続し、他方の接栓100Bのネジ形コネクタにねじ込み式ストレート形接栓112を接続した場合を例として示している。
【0042】
また、図6では、一方の接栓100Aは他方の接栓100Bに当接しないように第1接栓体と第2接栓体とを略90度に近い角度に調整した場合、他方の接栓100Bは第1接栓体と第2接栓体とを90度に調整した場合を示している。
【0043】
上記実施例1に示したように第1接栓体30の軸に対し、45度傾けた軸を持つ第2接栓体40を回転可能に設けることにより、高周波の電気特性を安定に保ちつつ接栓方向を容易に調整することができ、また、防水構造とすることにより屋内、屋外を問わずに使用することができる。
【0044】
なお、上記実施例1では、第1接栓体30をナット形コネクタ32、第2接栓体40をネジ形コネクタ42とした場合について示したが、その他、図6に示すように第1接栓体30を差し込み式コネクタ32Aとしてもよい。
【0045】
また、本発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。
【符号の説明】
【0046】
30…第1接栓体、31…本体ケース、32…ナット形コネクタ、32A…差し込み式コネクタ、32B…ネジ形コネクタ、33、34…防水パッキン、35a、35b…中心ピン保持構体、36…中心ピン、40…第2接栓体、41…本体ケース、42…ネジ形コネクタ、43…防水パッキン、44a、44b…中心コンタクト保持構体、45…中心コンタクト、46…防水パッキン、100、100A、100B、110…接栓、111…差し込み式ストレート形接栓、112…ねじ込み式ストレート形接栓、311…接合面、312…結合用突部、313…係合片、314…溝、321…ナット保持体、322…Oリング、323…ナット、324…ネジ部、351…溝、352…中心ピン保持構体の端部、353…結合穴、411…接合面、412…結合穴、421、422…ネジ部、441…結合突起、442…結合穴、451…中心ピン結合部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1接栓体と、前記第1接栓体の接合面に回転可能に設けられる第2接栓体とを具備し、
前記第1接栓体の接合面及び第2接栓体の接合面をそれぞれ中心軸に対して略45度傾けて形成し、前記第1接栓体に対して前記第2接栓体を回転することでケーブル引出し方向を調整できるように構成したことを特徴とするケーブル引出し方向可変接栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−257696(P2010−257696A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105185(P2009−105185)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(504378814)八木アンテナ株式会社 (190)