説明

ケーブル引込み開口部用プレート、ケーブル引込み用開口部の密閉構造、及び密閉方法

【課題】高い防塵効果を得ることができ、ケーブルの増設に際しても、新たな部材や加工を不要にすることができるケーブル引込み用開口部の密閉構造を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するためのケーブル引込み用開口部の密閉構造は、開口部52を覆うためのベースプレート40と、ベースプレート40と対を成すカバープレート20と、ベースプレート40とカバープレート20との間に配置され、押圧を付与する押圧部材の形状に倣うように撓む可撓性を有する防塵材30とを備え、ベースプレート40とカバープレート20にはそれぞれ対応する位置に、引込み対象とするケーブル径よりも大径としたケーブル挿通孔42,22を設け、防塵材30にはケーブル挿通孔42,22に対応した位置に、ケーブル挿通用の切れ込み32を設けたケーブル引込み開口部用プレート10を、開口部52に備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル引込み用に設けられた開口部を覆うプレート、当該プレートを開口部に備えた密閉構造、及びプレートを用いて開口部の密閉を行う方法に係り、特に挿通ケーブルの増設等を行う場合に好適なケーブル引込み開口部用プレート、ケーブル引込み用開口部の密閉構造、及び密閉方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、制御盤等に対してケーブルを引込んだり、制御盤等からケーブルを引出したりする場合、制御盤に対してケーブルを引出すための開口部を形成し、この開口部にケーブルを挿通させた後、ケーブルと開口部との隙間を非硬化性の耐熱シール材(以下、ダム材と称す)によって封止するといった処理が採られていた。
【0003】
しかし、こうした従来の工法では、挿通ケーブルを増設する場合、封止のために用いたダム材を剥がし、新たなケーブルを挿通させるための開口面積を得るために盤上取合板や開口部を広げるといった加工が必要となり、大きな労力がかかる。また、ダム材は、経年的な使用により硬化が進むため、ダム材を剥がす際に剥がし難くなったり、硬化の進行により隙間が生じたりする可能性があり、隙間が生じた場合には防塵効果が失われるといった事態も生じ得ることが知られている。
【0004】
このような実情を鑑み、制御盤等に対するケーブルの引込み等に関して、特許文献1や特許文献2に開示されているような技術が提案されている。
特許文献1に開示されている技術は、開口部を挿通するケーブル径よりも若干小さな径を有するパッキング部材を、鋼板等で形成したカバー部材で覆うというものであり、パッキング部材に関しては、クロロプレンスポンジ(ゴムスポンジ)としている。このような構成とすることによれば、挿通ケーブルを増設する場合であっても、ダム材を剥がすといった作業が不要となり、作業性が向上することとなる。
【0005】
また、特許文献2に開示されている技術は、開口部の周囲に筒状の固着部を設け、この固着部に筒状の防塵袋を被せ、ケーブルを挿通させた後前記防塵袋を締め込むことで、ケーブルと筒状の防塵袋との間の隙間を無くすといったものである。このような技術では、開口部に複数のケーブル(ケーブル束)を挿通させる場合には、防塵袋を閉め込んだ後、ケーブル間の隙間を埋めるための充填材が用いられる。なお、特許文献2に開示されている防塵袋は、難燃不燃性の繊維に、難燃性ゴムをコーティングし、これを筒状としたものである。
【特許文献1】特開平8−265939号公報
【特許文献2】特開2000−41321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1や特許文献2に開示されているような技術によれば、高い防塵効果を得ることができ、ケーブルの増設に際しても労力を少なくすることが可能であると考えられる。しかし、特許文献1に開示の技術では、パッキング部材に予め筒状の孔を設けておく必要があるため、ケーブル増設の際には新たなパッキング部材やカバー部材を用意する必要があるといった問題が残る。
【0007】
また、特許文献2に開示されている技術は、ケーブルを複数挿通させる際には依然としてダム材等の充填材が必要となると共に、開口部の周囲に筒状の固着部を形成する必要があり、作業性の改善の余地が残る。
【0008】
そこで本発明では、高い防塵効果を得ることができ、ケーブルの増設に際しても、新たな部材や加工を不要に、あるいは少なくすることができ、ケーブル布設の作業性を向上させることのできるケーブル引込み開口部用プレート、ケーブル引込み用開口部の密閉構造、及び密閉方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係るケーブル引込み開口部用プレートは、ケーブル引込み用に設けられた開口部を覆うためのベースプレートと、前記ベースプレートと対を成すカバープレートと、前記ベースプレートと前記カバープレートとの間に配置され、押圧を付与する押圧部材の形状に倣うように撓む可撓性を有する防塵材とを備え、前記ベースプレートと前記カバープレートにはそれぞれ対応する位置に、引込み対象とするケーブル径よりも大径としたケーブル挿通孔を少なくとも1つ設け、前記防塵材には前記ケーブル挿通孔に対応した位置に、ケーブル挿通用の切れ込みを設けたことを特徴とする。
【0010】
また上記目的を達成するための本発明に係るケーブル引込み用開口部の密閉構造は、上記特徴を有するケーブル引込み開口部用プレートをケーブル引込み用に設けられた開口部に固定したことを特徴とする。
【0011】
また、上記のような特徴を有するケーブル引込み用開口部の密閉構造は、前記開口部と前記ベースプレートとの間に、前記開口部の開口面積に合わせた開口面積を有する一方の開口端と、前記開口部の開口面積よりも大きな開口面積を有する他方の開口端とを備えるダクトを配置し、前記一方の開口端を前記開口部に、前記他方の開口端に前記ベースプレートをそれぞれ固定するようにしても良い。このような構成とすることによれば、開口部に挿通させるケーブル数が増えた場合であっても、上記プレートを用いた密閉構造とすることができ、同様な効果を得ることが可能となる。
【0012】
また、上記のような特徴を有するケーブル引込み用開口部の密閉構造では、前記開口部は配管端部に現れる開口部とし、前記ベースプレートを前記配管の端部に固定するようにしても良い。このような構成とした場合であっても、配管に挿通させるケーブルの防塵処理として同様な効果を得ることができる。
【0013】
さらに、上記目的を達成するための本発明に係るケーブル引込み用開口部の密閉方法は、挿通対象物に対してケーブルを引込むための開口部を形成する工程と、前記開口部よりも留代分だけ大きく形成し、ケーブル単体を挿通させるケーブル挿通孔を少なくとも1つ形成したベースプレートを前記開口部に配置する工程と、前記ベースプレートの大きさに合わせて形成された可撓性を有する防塵材における前記ケーブル挿通孔に対応する位置に、ケーブル挿通用の切れ込みを入れる工程と、前記ベースプレートに対応する大きさ形状を有するカバープレートにより、前記防塵材を挟み込むことで前記防塵材の形状保持と固定を図る工程とを有することを特徴とする。
【0014】
また、上記のような特徴を有するケーブル引込み用開口部の密閉方法において、前記防塵材に設ける切れ込みは、前記ベースプレートと前記カバープレートにより当該防塵材を挟み込んだ後、ケーブルを挿通させる前に入れるようにしても良い。このようにすることで、防塵材の防塵効果を高めることができる。また、ケーブルの挿通に際しては、少ない労力で挿通を可能とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
上記のような特徴を有するケーブル引込み開口部用プレート、ケーブル引込み用開口部の密閉構造、及び密閉方法によれば、高い防塵効果を得ることができる。また、ケーブルの増設に際しても、新たな部材や加工を不要、あるいは少なくすることができ、ケーブル増設時の作業性を向上させることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明のケーブル引込み開口部用プレート、ケーブル引込み用開口部の密閉構造、及びケーブル引込み用開口部の密閉方法に係る実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
まず、本発明のケーブル引込み開口部用プレート(以下、単にプレートと称す)及びケーブル引込み用開口部の密閉構造(以下、単に密閉構造と称す)に係る第1の実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。なお、図1(A)はプレートを開口部に固定した密閉構造を示す平面図であり、図1(B)は同図(A)におけるA−A断面を示す図であり、図1(C)は、密閉構造を示す分解斜視図である。また、図2は、本発明に係るプレートの構成部材を示す分解図である。また、図3(A)〜(E)は、本発明に係るプレートの構成部材である防塵材の製造工程を示す図である。さらに、図4は、ケーブルを布設した密閉構造の様子を示す図である。なお、以下の実施形態においては、本発明の密閉構造に係る実施形態を説明する上で、ケーブルを挿通させる開口部を設ける対象を、電気回路等における制御盤を例に挙げることとする。
【0018】
本実施形態に係るプレート10は、制御盤50に設けられた開口部52を覆うベースプレート40と、ベースプレート40と対を成して設けられるカバープレート20、及びベースプレート40とカバープレート20との間に配置される防塵材30とを有する。
【0019】
前記ベースプレート40は、前記開口部52を覆う板であり、詳細を後述する防塵材30の撓みを防止し、形状維持を図る役割を担う。その材質としては、鉄(Fe)、ステンレス、銅(Cu)、アルミニウム(Al)等の金属や、耐熱性樹脂、合成ゴムなどを挙げることができる。ベースプレート40には、開口部52を挿通させるケーブル80単体の径よりも大径とした貫通孔(以下、ケーブル挿通孔42と称する)が設けられる。ケーブル挿通孔42は、少なくとも1つ以上で、引込み予定のケーブル80の数と同数設けておくと良く、望ましくは、引込み予定のケーブル80の数以上設けると良い。予め多くのケーブル挿通孔42を設けておくことで、ケーブル80増設時に要することとなる労力を軽減することが可能だからである。ベースプレート40の形状、大きさは特に限定するものでは無いが、概ね開口部52の形状に合わせ、少なくとも開口部52の開口面積よりも留代分だけ大きくなるように切り出し、あるいは形成すると良い。なお、ケーブル挿通孔42の形状に関しては、丸孔であるか矩形孔であるか、あるいはその他の多角形であるかは問わないが、挿通させるケーブル80の断面形状が円形であると考えると、その形状に合わせた円形が良く、矩形孔に比して加工性も良いと考えられる。なお、ベースプレート40における留代部分には、ベースプレート40等を制御盤に固定するための固定ボルト12を通す貫通孔44が設けられる。
【0020】
前記カバープレート20は、上述したベースプレート40と対を成すものであり、その構成は基本的に、ベースプレート40と同じである。すなわち、ベースプレート40と同じ大きさとし、それぞれ対応する位置にケーブル挿通孔22、貫通孔24を備えるようにすれば良い。このように、ベースプレート40とカバープレート20とを同じものとすることで、構成部材の在庫管理、生産性等を向上させることが可能となる。一方で、カバープレート20は、詳細を後述する防塵材30の浮き上がり等を防止する役割を担えば良く、その撓み防止までする必要性が低いため、ベースプレート40に比べてその強度が低いものであっても良い。よって、ベースプレート40に比べて安い材料で製造したり、ベースプレート40の厚みよりも薄くするといった相違を持たせた場合であっても、その機能に支障を来たすことは無い。
【0021】
前記防塵材30は、上述したベースプレート40とカバープレート20との間に挟み込まれ、ベースプレート40とカバープレート20に設けられたケーブル挿通孔42,22を挿通させたケーブル80に密着し、ケーブル80の周囲に生じる隙間を無くし、塵埃等が制御盤50の内部に混入することを防止する役割を担う。その材質に必要とされる要件としてはまず、ケーブル80の外皮を傷つけないために、弾力性を有するという点を挙げることができる。次に、挿通(入線)後のケーブル80に密着し、隙間を塞ぐことができる密封性を発揮することができるという点を挙げることができる。そして、制御盤50やケーブル80は熱を持つことがあるため、耐熱性、耐火性を有するという点を挙げることができる。つまり、耐熱性、耐火性を備え、押圧を付与する押圧部材(例えばケーブル80)の形状に倣うように撓む可撓性を有する材質であると良い。
【0022】
具体的材質の1つとして、発泡シリコーンを挙げることができ、さらに具体的には、ケムトロールCT−18(商品名:ニチアス(株))、シリコーン・フォームSE1900(商品名:東レ・ダウコーニング・シリコーン(株))、シリコーン・フォームSE1811(商品名:東レ・ダウコーニング・シリコーン(株))、ダンシールL(商品名:(株)古河テクノマテリアル)、ダンシールW(商品名:(株)古河テクノマテリアル)、シリコーン・フォームSEF−1900(商品名:(株)古河テクノマテリアル)、日立HFレジン(商品名:日立電線(株))、日立ハイシールキャスト(商品名:日立電線(株))、DFシール(商品名:三菱電線工業(株))、SFフォーム(商品名:住友電気工業(株))、SFレジン(商品名:住友電気工業(株))、フレームシリコーン(商品名:昭和電線ケーブルシステム(株))などを挙げることができる。
【0023】
防塵材30の平面的な大きさ、形状としては、上述したベースプレート40やカバープレート20に合わせたものとすれば良い。防塵材30には、ベースプレート40とカバープレート20の間に配置した際にケーブル挿通孔42,22に対応することとなる位置に、表裏面を貫通する切れ込み32が設けられる。切れ込み32の形状は特に限定するものでは無いが、挿通させたケーブル80に対する防塵材30の密着性を向上させるために、少なくとも十字状の切れ込みとすることが望ましい。防塵材30に、このような切れ込みを設けた場合であっても、防塵材30の厚みを所定値以上とすることで、自重による撓み等の影響によって切れ込み32間に隙間等が生じる虞は無い。ここで、防塵材30の厚みとしては、10mm〜20mm程度とすれば良い。防塵材30には、ベースプレート40における留代に設けられた貫通孔44に対応する位置に、固定ボルト12を挿通させるための貫通孔34が設けられる。
【0024】
このような特性を有する防塵材30は、必要に応じて作業を行う現場で作成することも可能である。以下、防塵材30を作成する工程について、図3を参照して説明する。なお、図3に示す工程は、防塵材30の材質を発泡シリコーンとする場合における一例を示すものである。
【0025】
まず、防塵材30の外形形状を定める型枠70を用意する(図3(A))。型枠70には、留代に設ける貫通孔34を形成するための丸棒72が配置されている。なお、丸棒72の数は、留代に設けられる貫通孔34の数に対応させれば良く、特に限定されるものでは無い。
【0026】
次に、発泡シリコーンを構成するための液体を、上述した型枠70へ注ぎ込む。液体は、例えば2液混合型のものであり、例えば1液をシリコーンポリマー(ヂメチルポリシロキサン)、カーボンブラック、白金触媒を主成分とする液体とした場合に、他の1液はシリコーンポリマー、架橋剤(メチルハイドロヂェンシロキサン)を主成分とする液体とすれば良い。これらの液体を、それぞれ定められた割合で混合攪拌し、型枠70へ流し込むようにすれば良い(図3(B))。
【0027】
型枠70に流し込まれた液体は、発泡し、膨張、硬化する(図3(C))。硬化後は、スポンジ状断面を有するゴム状素材となるため、所定の位置に切れ込み32を形成し(図3(D))、型枠70から取り出すことで本実施形態で採用する防塵材30とすることができる(図3(E))。
【0028】
上記のような構成のプレート10は、図1(C)に示すように、制御盤50に形成された開口部52に対し、当該開口部52を覆うように積層され、固定ボルト12およびナット14によって固定される。このため、開口部52の周囲には、固定ボルト12を挿通させるための貫通孔54が形成される。ここで、開口部52の面積は、複数のケーブル80を挿通可能な大きさであれば良く、引出しを予定するケーブル束よりも広めに形成する。なお、固定ボルト12に替えて接着剤等によって固定するようにしても良いが、経年的な使用の信頼性を向上させるためには、ボルトを用いることが望ましい。
【0029】
上記のような構成を採るプレート10、及び密閉構造60では、ケーブル80の先端を防塵材の切れ込み部に押し当てることで、押圧を受けた防塵材が切れ込みに沿って撓み、ケーブル80の引込みを可能とする。ケーブル80の周囲には、撓んだ防塵材30が密着することとなるため、ケーブル80と防塵材30との間に不要な隙間が生じることが無い。また、本実施形態に係るプレート10を使用することによれば、図4に示すように、引込むケーブル80の径の大小に関わらず、防塵材30を良好に密着させることができる。また、ケーブル80を布設しない(ケーブル80の引込みを行わない)切れ込み32部分でも、防塵効果を発揮することができるため、ケーブル80を増設する際には、制御盤50の外観に何ら加工を施すことなくケーブル80の引込みを行うことが可能となり、ケーブル80を増設する際の作業性を向上させることができる。
【0030】
次に、本発明のケーブル引込み用開口部の密閉構造に係る第2の実施形態について、図5を参照して説明する。本発明に係る密閉構造は、1本のケーブル80に対して1つのケーブル挿通孔22,42を使用するため、制御盤50の開口部52に挿通させるケーブル80の数が増えた場合には、開口部52と同じ有効面積(ケーブル80の引込みに使用することのできる部分の面積)を持つプレート10では、ケーブル80の数に対応しきれなくなってしまうことも想定し得る。本実施形態に係る密閉構造60aでは、このような状況においても、上記第1の実施形態で述べたようなプレート10を採用することができるようにした点を特徴としている。
【0031】
具体的には、プレート10と開口部52との間に、ダクト90を設けるようにしている。ダクト90は、両端の開口端92,94の開口面積を異ならせた異形ダクトであり、開口部52側に固定される開口端92の開口面積よりも、プレート10側、すなわちベースプレート40に固定される開口端94の開口面積を広くしている。
【0032】
このようなダクト90を備えることにより、ベースプレート40の有効面積を増やすことができ、開口部52を挿通させるケーブル80の数が多くなった場合であっても、発明に係るプレート10を採用してケーブル80の引込みを行うことが可能となる。その他の効果としては、上述した第1の実施形態に係る密閉構造60と同様である。
【0033】
なお、上記実施形態に係るプレート10ではいずれも、防塵材30については1層構造としている。しかしながら図6に示すように、防塵材の構造を2層構造とした場合であっても、本発明に係るプレート10aと認識することができる。
【0034】
ここで防塵材に形成する切れ込みは、1層目の防塵材30aと2層目の防塵材30bとで形成角度を変えるようにすると良い。図6に示す例では、十字に形成した切れ込み32a,32bを、1層目と2層目との間で、45度ずらすようにしている。このような構成とすることで、ケーブル80を布設しない状態における防塵効果を高めることが可能となるからである。
【0035】
また、上記実施形態においては、防塵材30(30a,30b)の材質として、もっぱらシリコーンを例に挙げて説明したが、実施形態に係る防塵材30は、同様な性質を有する素材であれば、シリコーン限定するものでは無い。例えばゴム板などであっても良く、この場合は、板厚の薄いものを積層させるようにすることで、挿通させるケーブルへの密着性を向上させることが可能となると考えられる。
【0036】
なお、上記実施形態では、開口部52の形状は矩形とすることを前提として説明をしたが、開口部52の形状はこれに限定するものでは無い。すなわち、開口部52を円形としたり、開口部形成部の形状、位置に合わせ、三角形、五角形、六角形等の多角形としても良い。そして、ベースプレート40は、種々の形状に形成した開口部52の形状に合わせた形状とし、留代分だけ開口部52よりも大きくすれば良い。開口部52やベースプレート40の形状、大きさ等の変化は、本発明を実施する上で殆ど影響が無いからである。
【0037】
また、防塵材30に形成する切れ込みについて実施形態では、ベースプレート40とカバープレート20によって挟み込む前に形成するように記載しているが、ベースプレート40とカバープレート20によって挟み込んだ後、ケーブル80を挿通させる前に形成するようにしても良い。切れ込み32の形成自体は、カッターナイフ等により容易に行うことができるため、ケーブル80増設時の負担としては極めて軽いもので済ませることができる。一方、切れ込み32の形成をケーブル80引込みの直前とすることによれば、防塵効果を高めることができる。
【0038】
上記実施形態では、密閉構造を構成する上で、開口部を設ける対象を制御盤として説明した。しかしながら開口部を設ける対象は制御盤に限らず、建築物の床や壁であっても良く、このような場合であっても同様な効果を奏することができる。また、開口部は自ら形成するものでなく、配管端部に現れる孔であっても良い。このような場合には、図7に示すように、プレートの外形、すなわちカバープレート、防塵材、ベースプレートを円形にすることで、配管に布設するケーブルの防塵処理にも適用させることが可能となる。なお、図7において、図7(A)は本発明に係るプレートの応用形態を示すものであり、図7(B)は同図(A)のプレートを配管のフランジ部に取り付けた様子を示す図である。
【0039】
また、図7に示す形態では、配管に設けられたフランジに対してプレートを固定するように記載した。しかし、本発明に係るプレートは、フランジを持たない配管(電線管)などに対しても利用可能であり、同様な効果を奏することができる。フランジを持たない配管に対してプレートを取り付ける場合の一例として、ベースプレートの外縁に、取り付け対象とする配管を包み込む方向に延設される側壁を設けるようにするということを挙げることができる。このような構成とすることで、ベースプレートは配管に対してキャップのように嵌合されることとなり、プレートは配管の開口部を密閉することが可能となるからである。なお、配管とプレートとの密閉性を向上させるために、ベースプレートに設けた側壁の内側に樹脂を設けたり、側壁の内側に雌ネジを形成し、プレートを配管端部に螺合させたりする場合であっても、本発明の一部とみなすことができる。また当然に、配管の端部にベースプレートを溶接するような形態を採っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】第1の実施形態に係るケーブル引込み開口部用プレート及びケーブル引込み用開口部の密閉構造を示す図である。
【図2】ケーブル引込み開口部用プレートの分解図である。
【図3】防塵材の製造工程を示す図である。
【図4】ケーブル引込み開口部用プレートにケーブルを挿通させた状態を示す図である。
【図5】第2の実施形態に係るケーブル引込み用開口部の密閉構造を示す図である。
【図6】防塵材を2層構造とした場合のケーブル引込み開口部用プレートの例を示す図である。
【図7】ケーブル引込み開口部用プレートの応用形態、および使用上の応用例を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
10………プレート(ケーブル引込み開口部用プレート)、12………固定ボルト、14………ナット、20………カバープレート、22………ケーブル挿通孔、24………貫通孔、30………防塵材、32………切れ込み、34………貫通孔、40………ベースプレート、42………ケーブル挿通孔、44………貫通孔、50………制御盤、52………開口部、54………貫通孔、60………密閉構造(ケーブル引込み用開口部の密閉構造)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル引込み用に設けられた開口部を覆うためのベースプレートと、
前記ベースプレートと対を成すカバープレートと、
前記ベースプレートと前記カバープレートとの間に配置され、押圧を付与する押圧部材の形状に倣うように撓む可撓性を有する防塵材とを備え、
前記ベースプレートと前記カバープレートにはそれぞれ対応する位置に、引込み対象とするケーブル径よりも大径としたケーブル挿通孔を少なくとも1つ設け、
前記防塵材には前記ケーブル挿通孔に対応した位置に、ケーブル挿通用の切れ込みを設けたことを特徴とするケーブル引込み開口部用プレート。
【請求項2】
請求項1に記載のケーブル引込み開口部用プレートをケーブル引込み用に設けられた開口部に固定したことを特徴とするケーブル引込み用開口部の密閉構造。
【請求項3】
前記開口部と前記ベースプレートとの間に、前記開口部の開口面積に合わせた開口面積を有する一方の開口端と、前記開口部の開口面積よりも大きな開口面積を有する他方の開口端とを備えるダクトを配置し、
前記一方の開口端を前記開口部に、前記他方の開口端に前記ベースプレートをそれぞれ固定したことを特徴とする請求項2に記載のケーブル引込み用開口部の密閉構造。
【請求項4】
前記開口部は配管端部に現れる開口部であり、前記ベースプレートを前記配管の端部に固定したことを特徴とする請求項2に記載のケーブル引込み用開口部の密閉構造。
【請求項5】
挿通対象物に対してケーブルを引込むための開口部を形成する工程と、
前記開口部よりも留代分だけ大きく形成し、ケーブル単体を挿通させるケーブル挿通孔を少なくとも1つ形成したベースプレートを前記開口部に配置する工程と、
前記ベースプレートの大きさに合わせて形成された可撓性を有する防塵材における前記ケーブル挿通孔に対応する位置に、ケーブル挿通用の切れ込みを入れる工程と、
前記ベースプレートに対応する大きさ形状を有するカバープレートにより、前記防塵材を挟み込むことで前記防塵材の形状保持と固定を図る工程とを有することを特徴とするケーブル引込み用開口部の密閉方法。
【請求項6】
前記防塵材に設ける切れ込みは、前記ベースプレートと前記カバープレートにより当該防塵材を挟み込んだ後、ケーブルを挿通させる前に入れることを特徴とする請求項5に記載のケーブル引込み用開口部の密閉方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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