説明

ケーブル捜索装置

【課題】本発明の目的は、多数存在するケーブルの中から必要とするケーブルを容易に探し出すケーブル捜索装置を提供することにある。
【解決手段】識別信号を発生させる発信器と、前記発信器の信号を断続するスイッチと、前記スイッチを動作させるためのクロック発信器と、前記断続した信号を、捜索対象の電線又はケーブルに流す電力増幅器と、前記電力増幅器からの信号を捜索対象の前記電線又はケーブルに接続するケーブルとを備えた識別信号発生装置を備えると共に、捜索対象の前記電線又はケーブルを流れる信号を検出するクランプと、前記クランプから入力された識別信号の周波数に同期して発振出力するフィルタ回路により、前記識別信号の周波数以外の信号を減衰させる子機ユニットを備えることを特徴とする。
【効果】本発明によれば、多数存在するケーブルの中から必要とするケーブルを容易に探し出すケーブル捜索装置を提供することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はケーブル捜索装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の原子力発電所は、運転開始から数十年経過しており、設備の更新およびシステム更新等と同時に、中央制御室から現場機器間及び現場盤から機器間のケーブルも更新している。しかし、ケーブルの発点・着点はケーブルのタグを見て判別するが、その布設途中である電線路(ケーブルトレイ,ダクト)を識別するためには、発点側或いは着点側からケーブルを追いかけていくという地道な作業を強いられ非常に非効率的であった。そして、結局撤去されないまま新しい電路を作っており、コスト高となっていた。また、ケーブルを切断して撤去する場合、ケーブルを誤って切断する可能性もあったため、確実に当該ケーブルを捜索できる技術が必要であった。
【0003】
特許文献1には、特定周波数(例えば40Hz)の信号をケーブルに印加し、クランパによってケーブル1本1本を判別する発明を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−211057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の発明では、原子力発電所のように、数百本あるケーブルの中から目的のケーブルを探す場合、非効率的であり現実的ではなかった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、多数存在するケーブルの中から必要とするケーブルを容易に探し出すケーブル捜索装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、識別信号を発生させる発信器と、前記発信器の信号を断続するスイッチと、前記スイッチを動作させるためのクロック発信器と、前記断続した信号を、捜索対象の電線又はケーブルに流す電力増幅器と、前記電力増幅器からの信号を捜索対象の前記電線又はケーブルに接続するケーブルとを備えた識別信号発生装置を備えると共に、捜索対象の前記電線又はケーブルを流れる信号を検出するクランプと、前記クランプから入力された識別信号の周波数に同期して発振出力するフィルタ回路により、前記識別信号の周波数以外の信号を減衰させる子機ユニットを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、多数存在するケーブルの中から必要とするケーブルを容易に探し出すケーブル捜索装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】識別信号発生装置(親機)の内部系統図及びケーブル概略図を示す。
【図2】汎用クランプメータと子機ユニットの概略図を示す。
【図3】子機ユニットを用いた判定基準を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の実施例は、制御盤から現場機器に布設されたケーブルトレイ上のケーブル(又は電線)から、捜索対象ケーブルを効率よく捜索するための装置に関する。
【実施例1】
【0011】
(構成の説明)
以下、図面を用いて本実施例を説明する。図1は、識別信号発生装置(親機)の内部系統図及びケーブル概略図を示す。
【0012】
識別信号発生装置(親機)1は、正弦波発信器11,クロック部12,電力増幅器15,信号FB部14を主に備える。この識別信号発生装置(親機)1は、中操側に設けられた装置である。正弦波発振器11は、識別信号22を発生させる。発信周波数は、捜索環境の商用周波数である50Hzおよび60Hz及びそれらの高調波成分(基本周波数のn倍,1/n倍)と干渉しない低周波82Hzとする。スイッチ13は、正弦波発振器11で発生した識別信号22を、断続した識別信号23へ変換する。クロック部12は、断続したパルスをスイッチ13に供給し、スイッチ13をON−OFFする。この断続したパルスは、概ね、スイッチ13を3秒ONした後、1秒OFFする波形(以下、3S ON−1S OFFと表記する)となる。可変抵抗器21は、測定判別し易い50〜300mAの範囲で電流を設定する。スイッチ13により断続したパルス(識別信号23)は、電力増幅器15へ入力される。パルス(識別信号23)は断続しているため、連続的なパルス信号に比べて判別し易い。そして、電力増幅器15は、識別信号23を汎用クランプメータで読み取れる信号に増幅する。電力増幅器15は、50〜300mArmsの範囲で、断続した識別信号電流を出力する。電力増幅器15は、電源電圧DC18Vと低く設定してあるため、万が一接続部が外れ端子部に人体が接触しても十分に安全な電圧である。そして、電力増幅器15は、保護抵抗兼捜索回路のループ抵抗を一定にする(10〜20Ω程度)保護抵抗兼可変抵抗25を介し、捜索ケーブルへ接続される。なお、信号電流送出端子26は、電力増幅器15によって増幅された識別信号23を捜索ケーブルへ供給するための端子である。プラグ18及び絶縁クリップ19を両端に備えたケーブル17−1は、捜索するケーブルの端部と識別信号発生装置1を接続するケーブルである。
【0013】
一方、信号電流回収端子27は、識別信号電流を回収するための接続端子である。この信号電流回収端子27は、ケーブル17−2によって、接地線又は接地端子42と連絡したワニ口プラグ19に接続されている。
【0014】
信号FB部14(小型トランス)は、信号電流回収端子27から回収した電流を電流/電圧変換する。そして、回収した電流を電力増幅器15及び位相反転回路24に供給し、入力側に帰還させ、閉ループの安定を図る。また、メータ16と表示ランプ31は、捜索電流を常時監視し、捜索中であることを表示する。そして、断線時、メータ16が表示0となるため、断線時の目安となる。
【0015】
次に、現場側の捜索ケーブル現場側端子43は、絶縁クリップ19を取り付けたケーブル20と接続されている。また、絶縁クリップ19は、現場側アース端子44と接続されている。以上の構成により、ケーブルとアース線を介した閉ループ28が構成される。
【0016】
そして、ケーブルを捜索する際、(1)発点(盤側)・着点(現場側)にて捜索対象ケーブルを確認し、(2)ケーブル17−1,17−2,20を用いて、電線とアース線を介した閉ループを構成し、(3)ループ抵抗(捜索対象ケーブルの抵抗+接地線の抵抗)をテスタで測定する。ここで、ループ抵抗が10Ω未満であれば、保護抵抗兼抵抗器25を調整し、10〜20Ω前後に調整する。
【0017】
図2は、汎用クランプメータと子機ユニットの概略図を示す。子機ユニット(共振ユニット)53は、前置増幅器(A),HPF(B),82Hz発振部(C),共振部(D),AC/DC変換部(E),表示部(F)を備える。また、汎用クランプメータ51は、子機ユニット53と接続されている。捜索に使用するクランプメータ51−1,51−2(複数使用可)は、ケーブルトレイ上に設置された複数本のケーブルを挟む。また、周波数カウンタ表示(DMM)52は、共振部(D)と接続されている。
【0018】
次に、子機ユニット2の働きを説明する。AC電圧出力ケーブル付(各電流レンジ/200mVac)汎用クランプメータ51は、複数本のケーブルを一括してクランプし、合成電流(商用周波数と82Hz)を検出する。前置増幅器(A)は、クランプメータの電流レンジ(1A,2A,5A,10A)に応じて、10倍〜100倍(10倍,20倍,50倍,100倍)まで構成電流を増幅する。HPF(B)は、信号周波数である82Hzの信号を通過させ、商用周波数である50Hz,60Hzの信号を減衰させる。その後、82Hz発振部(C)は、親機と同一の周波数にのみ同期して発振出力するフィルタ回路によって、さらに商用周波数を減衰させ信号周波数のみを通過させる。共振部(D)は、BNC端子55に接続されたDMM52により、周波数を表示させることが可能である。そして、AC/DC変換部(E)は、信号をAC/DC変換する。表示部(F)は電流値を表示する。可変抵抗器54は表示部(F)に接続されている。表示部(F)は、可変抵抗器54にて任意の電流値を表示することが可能である。そのため、予め設定電流に等しい値(前例なら200mAac相当)に可変抵抗器54を調整しておく。電線及びケーブル捜索時に、汎用クランプメータ51が一括クランプしたケーブルの中に捜索対象ケーブルが含まれていれば、表示部(F)は設定電流相当の表示をする。また、他のケーブル(50Hz,60Hz)やノイズであれば、HPF(B),82Hz発振部(C)が信号を減衰させるため、表示部(F)は設定電流とかけはなれた表示となり、捜索外ケーブルと判断できる。このように、DMMの入力部にはクランプメータからの微小識別信号を増幅しHPF通過後、親機の識別信号の周波数にのみ同期して出力する発振回路を通過するフィルタを有する。このフィルタは、急峻な単峰特性により、商用周波数である50Hz、および60Hzの信号を限りなく0に減衰させて測定ミスのリスクを低減させる。
【0019】
次に、ケーブル捜索方法を説明する。識別信号発生装置1の電源を入れ、可変抵抗器21を調整し、測定判別し易い50〜300mAの範囲で電流を設定する。子機ユニット53を接続したDMM52により、設定した電流値及び周波数(82Hz)を確認し、メモしておく。付属のメータも設定した電流値を分かり易い読値に合わせる。クランプメータ51及びDMM52が接続された子機ユニット53のセットを現場に持ち込み、数箇所でトレイ内のケーブルを数本ずつクランプし、当該捜索電流が流れているケーブルを探す。
【0020】
図3は、子機ユニットを用いた判定基準を示す。(1)クランプしたケーブルを流れる電流は設定電流相当か?、(2)その電流は間欠(3S ON−1S OFF)動作か?、(3)DMMにおける周波数表示は82Hzか?、といった3基準が全てYESの場合、当該ケーブルは捜索対象と判断する。一方、3基準のうち1つでもNOTがあれば、当該ケーブルは捜索対象から除外する。例えば、(1)200mAac相当のケーブルをクランプ(YES)しても、(3)周波数が82Hzでない場合(NOT)、又は、(2)その電流が間欠(3S ON−1S OFF)動作してなかった(NOT)場合である。
【0021】
ここで、捜索電流を200±5mAに設定した場合を説明する。当該ケーブルと思われるケーブルを捜しあてたら、(1)電流の読値が設定電流の読値(200±5mA)と合っているか?、(2)その電流は3S ON−1S OFFの断続した電流か?、(3)周波数は82Hzか?、の3基準を判断する。
【0022】
また、子機のフィルタ性能によって、商用周波数およびノイズ等は出力されない。(通常の負荷は相バランスがとれていればクランプメータは0を指示する。ケーブルを一括クランプした場合でも0になるため当該ケーブルが含まれていればより判別が容易になる。)
なお、同一ループ内における電流はどの位置で測定しても一定であるという原則から、200mA以外のケーブルを捜索する必要は無い。
【0023】
このように、捜索対象の電線又はケーブルを流れる信号を検出するクランプと、クランプから入力された識別信号の周波数に同期して発振出力するフィルタ回路により、識別信号の周波数以外の信号を減衰させる子機ユニットを備えることにより、クランプが識別信号以外の信号周波数(たとえば、商用周波数である50Hzおよび60Hz、又はこれらの高調波および雑音等)を捉えたとしても、前記フィルタ回路が識別信号以外の信号周波数を排除する。そのため、識別信号を正確に検出可能である。また、識別信号以外の信号電流が接地線から他のシールド線等に分流し、そのケーブルをクランプした場合も、検出電流の大きさは最大でも供給電流の1/2以下である。そのため、本実施例は定量的な測定で判断するため、捜索対象ケーブルを誤って判断することを防ぐことが出来る。このように構造及び捜索電流の検出がシンプルであり、また操作も容易であることから費用対効果も大きくコストパフォーマンスに優れている。
【0024】
また、本実施例の発信器は、正弦波を発信する。捜索対象のケーブルと同一に布設されているケーブルには、微小信号の電線およびケーブルも布設されており、電線およびケーブル間のクロストーク(漏話)により電磁誘導されたひずみ波形や、ノイズの誘導障害により他の電線およびケーブルの出力を変化させシステムに悪影響を及ぼすものもある。そのため、ひずみの少ない正弦波が必要となる。特に信号電流がパルス状の波形は高調波成分が多く含まれている。また、高周波電流は正弦波でも誘導障害として顕著に現れ、原子力設備においては使用時期が制限される(又は使用不可)となる。したがって常時使用できる周波数帯域は商用周波数帯域に近い低周波に限定される。
【0025】
本発明は、前記した実施例に限定したものではなく、親機の識別用発振周波数を任意に変化させることにより捜索範囲をより拡大することも可能であり、子機側も親機の発振周波数に合わせて同調させることにより広範なエリアでの捜索が可能となる。ただし、親機の発振周波数も商用周波数に近い50Hz、又は、60Hz近辺では捜索時誤判断の要因になりえるため避ける。実質45Hz以下又は65Hz以上が推奨される。また根本的なシステム変更はせずとも種々応用も可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 識別信号発生装置(親機)
11 正弦波発信器
12 クロック部
13 スイッチ
14 信号FB部
15 電力増幅器
17 ケーブル
53 子機ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
識別信号を発生させる発信器と、前記発信器の信号を断続するスイッチと、前記スイッチを動作させるためのクロック部と、前記断続した信号を、捜索対象の電線又はケーブルに流す電力増幅器と、前記電力増幅器からの信号を捜索対象の前記電線又はケーブルに接続するケーブルとを備えた識別信号発生装置を備えると共に、
捜索対象の前記電線又はケーブルを流れる信号を検出するクランプと、
前記クランプから入力された識別信号の周波数に同期して発振出力するフィルタ回路により、前記識別信号の周波数以外の信号を減衰させる子機ユニットを備えることを特徴とするケーブル捜索装置。
【請求項2】
請求項1記載のケーブル捜索装置において、
前記発信器は、正弦波を発信することを特徴とするケーブル捜索装置。
【請求項3】
請求項1記載のケーブル捜索装置において、
捜索時の識別信号電流の値を任意に変更する可変抵抗器を備えることを特徴とするケーブル捜索装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−247839(P2011−247839A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123712(P2010−123712)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】