説明

ケーブル接続アダプタ

【課題】 充電部を露出させない接続部形式に対する端末構造の電力ケーブルとの接続が容易に行えるケーブル接続アダプタを提供すること
【解決手段】 エポキシ樹脂等によりモールドした導体棒10の両端に接続用のスタッド11,11を設けて連結プラグ1とし、これは略T字形状の端末ハウジング2の受座部22へ嵌め合わせる。受座部22は連結プラグ1を他端側スタッド11が露出する状態に受ける。移動用ケーブル4tの端部へ装着した端末ハウジング2を支持台3の一方へ組み付ける。既設の電力ケーブル4a端部に装着してある端末ハウジング2は支持台3の他方へ組み付けし、2つの端末ハウジング2,2間に連結プラグ1を介在させて向き合わせに連結させる。支持台3は表裏両面が8角形状となる柱状の枠体30とし、枠体30からアーム31を延長させて設けてその先端部位で電力ケーブル4をクランプする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設の電力ケーブルの接続先を移動用電力設備の側へ組み替えるためのケーブル接続アダプタに関するもので、より具体的には、固体絶縁開閉装置などにおいて、電力ケーブルの接続部が充電部を露出させない構造を採る端末部との接続構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
電力の受電,配電を行う電力設備の一つに、固体絶縁開閉装置が知られている。固体絶縁開閉装置は、例えば特許文献1などに見られるように、絶縁性の高いエポキシ樹脂等によりモールドして充電部を絶縁し、絶縁部の表面は接地層で覆う構成を採り、信頼性,安全性が高く得られるメリットがあって好まれている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−345115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そうした固体絶縁開閉装置を備えた電力設備では、例えば装置内の母線で事故が発生した場合など、当該電力系統での事故の際に、事故部位は系統から切り離す必要があり、それ以外の配電系統などは移動用電力設備の側へ接続を切り替えて復旧させたいという要求がある。
【0005】
これには、既設の電力ケーブルの接続先を移動用電力設備の側へ組み替えることになるが、移動用電力設備では移動用ケーブルは気中接続の端末構造を採り、固体絶縁開閉装置では電力ケーブルの接続部は充電部を露出させない端末構造を採ることから、そのままでは移動用ケーブルと接続を組み替えることができないという問題がある。
【0006】
すなわち、図6に示すように、固体絶縁開閉装置60の筐体61の所定位置に接続端子部分62は、樹脂モールド63により充電部64の周囲が覆われた構造を採っている。そして、この接続端子部分62に、既設の電力ケーブルの端部に設けられた既設ケーブル端末ハウジング2′を連結している。既設ケーブル端末ハウジング2′も、周囲が覆われた絶縁構造となっており、連結部分での高い絶縁性が保たれている。
【0007】
一方、移動用ケーブルの端末は、例えば本発明の使用状態の一例を示す図5に示されるように、樹脂モールドなどされておらずその先端が露出しており、気中接続の端末構造を採っている。このように、接続部分の構造が異なるため、既設ケーブル端末ハウジングを固体絶縁開閉装置から離脱させ、移動用電力設備に接続するといった接続先の組み替えが簡単に行なえないのである。
【0008】
この発明は上記した課題を解決するもので、その目的は、充電部を露出させない接続部形式に対する端末構造の電力ケーブルとの接続が容易に行えるケーブル接続アダプタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、本発明に係るケーブル接続アダプタは、樹脂モールドした導体棒の両端に接続用のスタッドを有する連結プラグと,前記連結プラグを他端側スタッドが露出する状態に受ける受座部および受座側スタッドとの連結部とを有して電力ケーブルの端部へ装着させる移動用ケーブル端末ハウジングと,前記移動用ケーブル端末ハウジングとその形状および寸法を同一とした既設ケーブル端末ハウジングと,前記2つの端末ハウジングを支持する1組の支持台とを備え,前記2つの端末ハウジングを前記連結プラグを介在させて連結させる構成にする。
【0010】
使用する樹脂は、例えばエポキシ樹脂が良い。連結プラグは、既設ケーブル端末ハウジングに連結するものであるため、例えば、平常状態において係る既設ケーブル端末ハウジングを取り付ける既設の電力設備機器における既設ケーブル端末ハウジング用の接続端子部分と同様の構成を採るのがよい。
【0011】
かかる構成にすることにより本発明では、既設の電力ケーブル端部の既設ケーブル端末ハウジングと、移動用ケーブル端部の移動用ケーブル端末ハウジングとは、連結プラグが介在することで簡単に接続できる。しかも、これら連結した両端末ハウジングは支持台に収まっているため、連結部位を保護することができ、電力ケーブル等に何らかの外力が加わった際に、連結部位に過度の力が加わらず、当該連結が外れることが防止される。
【0012】
また、支持台は一方面が多角形状となる柱状の枠体としたり、8角形状となる柱状の枠体とする構成にできる。このように、連結した両端末ハウジングは、互いに連結する一方面を多角形状や8角形状の支持台で支持すると、互いの連結の角度を適宜に設定できる。8角形状の場合には、ケーブルの引き出し角度が45度刻みで変えられるので、設置場所の環境に柔軟に対応できる。すなわち、既設ケーブルと移動用ケーブルを互いにどのような方向で布設するかは、その場の状況によって異なる。そこで、本発明のように支持台を多角形状、特に8角形状とすることで、布設状態に合わせた形で接続できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るケーブル接続アダプタでは、既設の電力ケーブルの端部の既設ケーブル端末ハウジングと、移動用ケーブルの端部の移動用ケーブル端末ハウジングとは、連結プラグが介在することで接続し、相互の連結が容易に行える。両端末ハウジングは、充電部を露出させない接続部形式に対する端末構造そのものなので、固体絶縁開閉装置において事故の際は、既設の電力ケーブルの接続先を移動用電力設備の側へ容易に替えることができ、復旧を迅速に行える。
【0014】
すなわち、平常状態では、既設の電力ケーブルの端部の既設ケーブル端末ハウジングは、例えば電力設備である固体絶縁開閉装置に接続され、その固体絶縁開閉装置から電力供給を受けるが、その固体絶縁開閉装置の内部の系統に故障等を生じて電力供給を受けられなくなった場合には、既設ケーブル端末ハウジングを固定絶縁開閉装置から取り外し、本発明の連結プラグを介して移動用ケーブル端末ハウジングと連結することで、既設の電力ケーブルは移動用電力設備から電力供給を受けることができるようになる。このように、電力供給源を簡単に組み替えることができる。
【0015】
更に、これら連結した両端末ハウジングは支持台に収まるので、連結部位を保護することができ、何らかの外力が加わった際に連結が外れることを防止できる。この場合、連結した両端末ハウジングは、8角形状等の支持台で支持するので、互いの連結の角度を適宜に設定できる。既設の電力ケーブル,移動用ケーブルの互いの取り回しは、現場の状況で決まることから、8角形状の支持台によれば適切に対応することができ、作業性を良好に向上でき、連結部分にむりな外力が作用することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1,図2は本発明の好適な一実施の形態を示している。本実施形態において、ケーブル接続アダプタは、棒状の連結プラグ1と、電力ケーブル4の端部へ装着させる移動用ケーブル端末ハウジング2,既設ケーブル端末ハウジング2′を支持する2つ1組の支持台3,3とを備えて、既設の電力ケーブル4aの接続先を移動用電力設備の側へ切り替える接続を行う構成になっている。
【0017】
連結プラグ1は、導体棒10の両端に接続用のスタッド11,11を設け、その導体棒10をエポキシ樹脂等により樹脂モールドしてあり、モールド部分12,12がそれぞれの端末ハウジング2,2′の受座部22へ嵌め合うようになっている。
【0018】
両端末ハウジング2,2は、筒状本体20の側面から連結部位21が突き出す略T字形状に形成し、連結部位21へ電力ケーブル4の端部を挿入させて装着し、筒状本体20の内部には、連結プラグ1を他端側スタッド11が露出する状態に受ける受座部22および受座側スタッド11との連結部23とを設けている。連結部23は、図3に示すように、電力ケーブル4の芯線と圧着により接続する導体材24を有し、この導体材24の孔部へスタッド11を嵌め込み、ナット25により締め付けることで連結を行う構成になっている。このように、移動用ケーブル端末ハウジング2は、その形状および寸法を既設の電力設備において電力ケーブル4aの端部へ装着してある既設ケーブル端末ハウジング2′と同一のものとする。
【0019】
支持台3は所定の枠体に形成してあり、図2に示すように、天地面が8角形状となる柱状の枠体30としてあって、この8角形状の一方面を接合面とし、筒状本体20の端面をこの一方面(接合面)に臨ませて連結部位21をクランプし、反対側にはアーム31を延長させて設け、アーム31の先端部位で電力ケーブル4をクランプするようになっている。2つの支持台3,3は互いの接合面となる一方面同士を接面させる際に位置をずらすことができ、その一方面の形状が8角形状であることから、電力ケーブル4の取り回し向きを45度毎に変更できるようになっている。なお、本実施形態では、支持台3の天地面の両方を8角形状とした枠体30としたが、接合する一方面のみが8角形状とし他方面は他の形状(多角形,円形その他)としてもよい。
【0020】
既設の電力ケーブル4aの接続先を移動用電力設備の側へ組み替える際は、既設ケーブル端末ハウジング2′は、移動用の電力ケーブル4tの端部に設けた移動用ケーブル端末ハウジング2へ装着するとともに、支持台3の一方へ組み付ける。相手側となる既設の電力ケーブル4aの端末ハウジング2は支持台3の他方へ組み付ける。そして、2つの端末ハウジング2,2′間に、連結プラグ1を介在させて一方面同士を向き合わせに連結させる。
【0021】
この組み替え連結作業には、準備として、移動用ケーブル端末ハウジング2の筒状本体20からキャップを取り外し、内部の受座部22,連結部23の清掃を行い、シリコングリスを塗布する。
【0022】
次に、移動用ケーブル端末ハウジング2を支持台3へ組み付ける。このとき移動用ケーブル端末ハウジング2は、受座部22が一方面に正対する所定姿勢に位置合わせを行い、適正な位置関係に組み付けを行う。
【0023】
連結プラグ1についても清掃を行い、モールド部分12,12にはシリコングリスを塗布する。そして、連結プラグ1を一方の端末ハウジング(たとえば、移動用ケーブル端末ハウジング2)へ挿入し、突き出た他端側スタッド11に対して、相手側他方の端末ハウジング(例えば、既設ケーブル端末ハウジング2′)を向き合わせて受座部23が正しく向き合うことを確認して嵌め合わせる。このとき、2つの支持台3,3は電力ケーブル4a,4tの取り回し向きが適正となるように互いを位置合わせし、これら支持台3,3を共締め固定して電力ケーブル4a,4tの取り回し向きをロックする。
【0024】
次に、筒状本体20の後側から、ナット25をスタッド11へねじ込み、導体材24との共締め固定を行い、電力ケーブル4a,4tとの電気的な接続を完了する。そして、当該後側にはキャップを組み付ける。
【0025】
このように、既設の電力ケーブル4aの端部の既設ケーブル端末ハウジング2′と、移動用ケーブル4tの端部の移動用ケーブル端末ハウジング2とは、連結プラグ1が介在することで接続し、相互の連結が容易に行える。このとき、移動用ケーブル端末ハウジング2は、形状および寸法を既設の電力設備において電力ケーブル4aの端部へ装着してある既設ケーブル端末ハウジング2′と同一としてあり、すなわち、充電部を露出させない接続部形式に対する端末構造そのものなので、図4に示すように、固体絶縁開閉装置5において事故の際は、既設の電力ケーブル4aの接続先を移動用電力設備6の側へ容易に組み替えることができ、復旧を迅速に行える。
【0026】
これら連結した両端末ハウジング2,2′は支持台3,3に収まるので、連結部位を保護することができ、何らかの外力が加わった際に連結が外れることを防止できる。この場合、連結した両端末ハウジング2,2′は、8角形状の支持台3で支持するので、互いの連結の角度を適宜に設定できる。既設の電力ケーブル4a,移動用ケーブル4tの互いの取り回しは、現場の状況で決まることから、8角形状の支持台3によれば適切に対応することができる。その結果、作業性を良好に向上でき、連結部分にむりな外力が作用しないように防止できる。
【0027】
図5は、別の利用状態を示している。この例では、ケーブル7の一端に移動用ケーブル端末ハウジング2を接続し、ケーブル7の他端に金属プレート7′を接続する。この金属プレート7′は、外部に露出した状態とする。移動用電力設備6に接続された移動用ケーブル4tの先端にも外部に露出した状態の金属プレート4t′を接続する。そして、それら両金属プレート7′,4t′を気中端末接続函8を利用して接続するようにした。
【0028】
つまり、本発明の目的を達成する用途を実現するためには、図4等に示すように移動用電力設備6に接続された移動用ケーブル4tの端部に直接移動用ケーブル端末ハウジング2を設けても良いが、すでに移動用電力設備6に接続されている移動用ケーブル4tの先端は、気中接続用の構造、つまり、移動用ケーブル4tの先端は、金属プレート4t′が露出した状態となっているので、それに対応するためにかかる構造をとる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るケーブル接続アダプタの好適な一実施の形態を示す側面図である。
【図2】図1に示すケーブル接続アダプタの平面図である。
【図3】連結プラグを介在した端末ハウジングの連結状態を説明する側面図である。
【図4】本発明に係るケーブル接続アダプタの適用例を説明する構成図である。
【図5】本発明に係るケーブル接続アダプタの適用例を説明する構成図である。
【図6】従来の問題を説明するための図である。
【符号の説明】
【0030】
1 連結プラグ
10 導体棒
11 スタッド
12 モールド部分
2 移動用ケーブル端末ハウジング
2′ 既設ケーブル端末ハウジング
20 筒状本体
21 連結部位
22 受座部
23 連結部
24 導体材
25 ナット
3 支持台
30 枠体
31 アーム
4a 既設の電力ケーブル
4t 移動用ケーブル
5 固体絶縁開閉装置
6 移動用電力設備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂モールドした導体棒の両端に接続用のスタッドを有する連結プラグと,前記連結プラグを他端側スタッドが露出する状態に受ける受座部および受座側スタッドとの連結部とを有して電力ケーブルの端部へ装着させる移動用ケーブル端末ハウジングと,前記移動用ケーブル端末ハウジングとその形状および寸法を同一とした既設ケーブル端末ハウジングと,前記2つの端末ハウジングを支持する1組の支持台とを備え,前記2つの端末ハウジングを前記連結プラグを介在させて連結させることを特徴とするケーブル接続アダプタ。
【請求項2】
前記支持台は一方面が多角形状となる柱状の枠体とすることを特徴とする請求項1に記載のケーブル接続アダプタ。
【請求項3】
前記支持台は一方面が8角形状となる柱状の枠体とすることを特徴とする請求項1に記載のケーブル接続アダプタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−269882(P2008−269882A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−109309(P2007−109309)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(000002842)株式会社高岳製作所 (72)
【出願人】(000222037)東北電力株式会社 (228)
【Fターム(参考)】