説明

ケーブル束、ケーブル束形成装置及び形成方法

【課題】 捻れに弱い光ファイバーケーブル等のケーブル束であって、捻れのほとんどない状態又は完全に解消した状態でケーブルを送出することのできるケーブル束を提供することである。
【解決手段】 ケーブルが巻き付けられて成るケーブル束であって、巻き付けられているケーブルが軸方向に引き出されるようになっているケーブル束において、ケーブルを引き出す際にケーブルが巻き付けられていることに起因して生じるケーブルの捻れである巻付捻れを打ち消すように、上記巻付捻れの向きとは反対の向きに、ケーブルが捻りながら巻き付けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバーケーブル等が巻き付けられているケーブル束であって、巻き付けられているケーブルが軸方向に引き出されるようになっているケーブル束と、当該ケーブル束を形成するためのケーブル束形成装置及び形成方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海等の水中で作業を行う潜水機(いわゆる海中作業ロボット)が知られている。以下、U-ROV(細径ケーブル式無人潜水機)と呼ばれている潜水機について考察する。図6(a)は、海上に浮かぶ制御艇500と、U-ROVと呼ばれている潜水機501とを示す図である。制御艇500の船内に設ける制御装置500aと、潜水機501とは、制御信号のやりとりを行う信号線である光ファイバーケーブル502により接続されている。
【0003】
図6(b)は、潜水機501の尾部に内蔵されている光ファイバーケーブル502の送出部503を示す図である。送出部503には、光ファイバーケーブル502を巻き付けて成るケーブル束504が収納されている。
【0004】
ケーブル束504は、光ファイバーケーブル502を、光ファイバーケーブルを巻き付けるためのスプーラに巻き付けた後に、当該スプーラを取り外したものである。上記スプーラとは、ケーブル巻付用の芯棒であって、リールとも呼ばれているものである。光ファイバーケーブル502は、荷造り用の紐の束のように、ケーブル束504の内側から、軸方向に、引き出すことにより使用される。
【0005】
例えば、以下に示す特許文献1には、光ファイバーケーブルを巻き付けた状態のスプーラを使用する「光ファイバ接続部の収納構造および収納方法」が開示されている。
【特許文献1】特開2000−66036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ケーブル束504の軸方向、又は、特許文献1記載の光ファイバーケーブルを巻き付けた状態のスプーラの軸方向からケーブルを引き出す場合、ケーブルが捻れながら送出される。ケーブルは、捻れると、水中で絡んだり、潜水機501に、該潜水機501の姿勢に影響を与えるような不都合な力を作用することがある。
【0007】
以下、ケーブル束504の場合について、より詳しく説明する。図7(a)は、ケーブル束504の軸方向であって、内側又は外側から、光ファイバーケーブル502を引き出した場合に、ケーブルが巻き付けられていることに起因して生じる矢印F方向の捻れである巻付捻れにより、当該光ファイバーケーブル502が絡むことにより生じる、いわゆるキンクと呼ばれる状態を示す図である。このキンクと呼ばれる状態にある場合に、更に、光ファイバーケーブル502の両端を引っ張るような力がかけられると、図7(b)に示すようにキンクと呼ばれる状態の部分が小さくなり、捻れや曲げに弱い光ファイバーは、光ファイバーケーブル502の内部で折れてしまうおそれがある。更に光ファイバーケーブル502の両端を引っ張るような無理な力がかけられると、光ファイバーケーブル502は、図7(c)に示すように、2本の光ファイバーケーブル502a、502bに断線するおそれもある。
【0008】
本発明は、ケーブル束、特に、捻れや曲げに弱い光ファイバー等を巻き付けたケーブル束であって、巻付捻れのほとんどない状態、又は、全く無い状態でケーブルを送出できるケーブル束と、当該ケーブル束を形成するためのケーブル束形成装置及び形成方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、ケーブルが巻き付けられて成るケーブル束であって、巻き付けられているケーブルが軸方向に引き出されるようになっているケーブル束において、ケーブルを引き出す際にケーブルが巻き付けられていることに起因して生じるケーブルの捻れである巻付捻れを、打ち消すように、上記巻付捻れの向きとは反対の向きに、ケーブルが捻りながら巻き付けられていることを特徴とするケーブル束である。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、更に、ケーブル束が解けないように、外周のケーブルを固定する固定手段を備えているものである。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、固定手段がケーブル束の外周を覆う被覆材であることである。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の発明において、固定手段がケーブル束の外周を固める固着材であることである。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の発明において、ケーブルが光ファイバーケーブルであることである。
【0014】
請求項6記載の発明は、ケーブルが巻き付けられて成るケーブル束であって、巻き付けられているケーブルが軸方向に引き出されるようになっているケーブル束、を形成するケーブル束形成装置において、ケーブルを巻き付けるためのスプーラであって、巻き付けられたケーブル束から取り外し可能なスプーラと、ケーブルを引き出す際にケーブルが巻き付けられていることに起因して生じるケーブルの捻れである巻付捻れ、を打ち消すように、上記巻付捻れの向きとは反対の向きに、ケーブルを捻りながら上記スプーラに巻き付ける巻付機構と、を備えていることを特徴とするケーブル束形成装置である。
【0015】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、上記巻付機構は、ケーブルを巻き付ける向きにスプーラを回転させる巻付部と、スプーラに、ケーブルを、上記捻れの向きとは反対の向きに捻りながら供給するケーブル供給部と、を有しているものである。
【0016】
請求項8記載の発明は、請求項6又は請求項7に記載の発明において、ケーブルが光ファイバーケーブルであるものである。
【0017】
請求項9記載の発明は、ケーブルが巻き付けられて成るケーブル束であって、巻き付けられているケーブルが軸方向に引き出されるようになっているケーブル束、を形成するケーブル束形成方法であって、ケーブルを引き出す際にケーブルが巻き付けられていることに起因して生じるケーブルの捻れである巻付捻れを、打ち消すように、上記巻付捻れの向きとは反対の向きに、ケーブルを捻りながら巻き付ける工程を有することを特徴とするケーブル束形成方法である。
【0018】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の発明において、ケーブルが光ファイバーケーブルであるものである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の発明によれば、ケーブルの巻付捻れを解消する向きに予めケーブルが捻られているので、ケーブルを軸方向に引き出した際に、巻付捻れはほとんど生じない。従って、ケーブルが途中で絡むことによってキンクと呼ばれる状態になることを、防止することができる。
【0020】
ところで、ケーブルは、上述のように捻りながら巻き付けられているので、この捻れを元に戻そうとする力の作用によって、巻き付けられた状態から解けようとする。しかるに請求項2記載の発明によれば、外周が固定手段により固定されているので、ケーブル束が解けることを防止することができる。
【0021】
請求項3記載の発明によれば、巻付のケーブル束は、ケーブル束の外周を被覆材で覆ってある。従って、ケーブル束の内側又は外側から、軸方向にケーブルを引き出してもケーブル束が解けることはない。
【0022】
請求項4記載の発明によれば、簡単な構成で固定手段を実現することができる。
【0023】
請求項5記載の発明によれば、キンクによって断線しやすい光ファイバーを、断線のおそれなく使用することができる。
【0024】
請求項6記載の発明によれば、ケーブルの巻付捻れを打ち消す向きに、ケーブルが捻りながら巻き付けられているケーブル束、を得ることができる。
【0025】
請求項7記載の発明によれば、巻付機構を簡単な構成で実現することができる。しかも、巻付部によってスプーラを1回転させる毎に、ケーブル供給部によってケーブルを360度捻るようにすることにより、ケーブルの巻付捻りを完全に解消することができ、従って、キンクの発生を完全に防止することができる。
【0026】
請求項8記載の発明によれば、キンクよって断線されやすい光ファイバーを、断線のおそれなく使用することができる。
【0027】
請求項9記載の発明によれば、ケーブルの巻き付け捻れを打ち消す向きに、ケーブルが捻りながら巻き付けられているケーブル束を得ることができる。
【0028】
請求項10記載の発明によれば、キンクによって断線されやすい光ファイバーを、断線のおそれなく使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(1)ケーブル束の使用例の説明
以下、実施の形態にかかるケーブル束と、当該ケーブル束の形成装置及び形成方法との説明を行うが、当該説明の前に、ケーブル束の使用形態について簡単に説明する。
【0030】
図1は、実施の形態にかかるケーブル束を用いる潜水機100と、海上に浮かぶ制御艇1とを示す図である。潜水機100は、いわゆるU-ROVと呼ばれているものであり、当該潜水機100と、制御艇1の船内に設ける制御装置2とは、制御信号のやりとりを行う信号線である光ファイバーケーブル160により接続されている。
【0031】
図2(a)及び(b)は、潜水機100の内外の構成を簡単に示す図である。図2(a)は、潜水機100を測方より見た図であり、内部の機能ブロックを点線の枠で囲んで示している。図2(b)は、潜水機100を上側から見た図であり、内部の機能ブロックを点線で示してある。潜水機100は、外部に、海中を移動するための1対の推進機102,104と、海中を照射するための1対のライト101,103と、海中の様子を撮影するためのカメラ110とを備えている。潜水機100は、内部の耐圧防水処理の施された領域に、駆動制御部120と、バッテリ130と、光ファイバーケーブル160の送出部150とを備えている。
【0032】
駆動制御部120は、光ファイバーケーブル160を介して海上の制御艇1の制御装置2に接続されている。駆動制御部120は、制御装置2から送られてくる制御信号を処理して、推進機102,104と、ライト101,103と、カメラ110とのそれぞれの駆動制御を行う。
【0033】
光ファイバーケーブル160の送出部150は、後に詳しく説明するケーブル束155が収納されている。送出部150は、ケーブル送出口151と、ケーブル取入口152を備えている。ケーブル送出口151は、海中に光ファイバーケーブル160を送出するための送出口である。当該ケーブル送出口151は、潜水機100の内部に海水が浸水しないように耐圧防水処理が施されている。また、ケーブル取入口152は、送出部150から駆動制御部120に、光ファイバーケーブル160を取り入れるための取入口である。当該ケーブル取入口152は、送出部150から駆動制御部120に水が進入しないように耐圧防水処理が施されている。
【0034】
(2)ケーブル束の構成
図3は、送出部150に収納されているケーブル束155の状態を解りやすく示す図である。図2に示したケーブル送出口151は、本図では省略してある。ケーブル束155は、光ファイバーケーブル160を図示しないスプーラ(後に図5を参照しつつ説明する)に巻き付けた後、当該スプーラを取り外したものである。光ファイバーケーブル160は、いわゆる荷造り用の紐の束の使用形態と同様に、ケーブル束155の軸方向であって、内側から引き出すことにより使用される。
【0035】
図3に示すように、ケーブル束155の軸方向(図面上で右方向)であって、内側から、光ファイバーケーブル160を、当該光ファイバーケーブル160の先頭が回転しないように固定した状態で引き出す。この際、光ファイバーケーブル160が巻き付けられていることに起因して、矢印Aで示す向きの巻付捻れが生じる。
【0036】
ケーブル束155は、上記矢印A方向の巻付捻れを打ち消すように、上記矢印Aで示す向きと反対の向きに、光ファイバーケーブル160が捻りながら巻き付けられていることを特徴とする。上記捻る量は、ケーブル束155に巻き付けられている光ファイバーケーブル160を、ケーブル束155の内側に巻き付けられている1巻き分のケーブルを引き出した場合に、1回転程度、好ましい本実施形態の場合、ちょうど1回転(360度回転)するように捻る。従って、上記特徴を具備するケーブル束155を用いる場合、光ファイバーケーブル160は、巻付捻れのほとんどない状態、好ましい本実施形態では巻付捻れを完全に解消した状態で、束の内部から引き出すことができる。
【0037】
光ファイバーケーブル160を、巻付捻れのほとんどない状態、好ましい本実施形態では巻付捻れを完全に解消した状態で、ケーブル束155から引き出すことができるため、海中で、光ファイバーケーブル160が絡んで、いわゆるキンクの状態になることを防いで、ケーブル内で光ファイバーが折れたり、ケーブルが断線することを効果的に防止することができる。
【0038】
また、光ファイバーケーブル160の巻付捻れが原因で、潜水機100に、当該潜水機100の姿勢に影響を与えるような力が作用することも防止することができる。
【0039】
なお、上記巻付捻れを打ち消す方向(矢印Aとは逆の方向)に光ファイバーケーブル160を捻りながらスプーラに巻き付けた場合、光ファイバーケーブル160には、捻れを元に戻そうとする力が作用し、スプーラ201に巻き付けられた状態から解けようとする。
【0040】
そこで、ケーブル束155が解けないように、ケーブル束155の外周の光ファイバーケーブル160を固定する固定手段の一例として、被覆材であるフィルム156を使用し、当該フィルム156によりケーブル束155を覆う。この場合には、ケーブル束155の軸方向であって、内側から光ファイバーケーブル160を引き出すだけでなく、外側からも光ファイバーケーブル160を引き出すことができる。
【0041】
また、ケーブル束155が解けないように、ケーブル束155の外周の光ファイバーケーブル160を固定する固定手段として機能するものであれば、上記フィルム156の代わりに、ケーブル束155の外周の光ファイバーケーブル160を固める固着材である接着剤を用いてもよい。この場合、ケーブル束155の軸方向であって、内側からのみ、光ファイバーケーブル160を引き出すことができる。また、フィルム156を用いる場合に比べて、より簡単に固定手段を実現することができる。
【0042】
なお、上記巻付捻れを打ち消す向きは、ケーブル束155から光ファイバーケーブル160を引き出す方向により変化する。即ち、ケーブル束155の軸方向であって、外側から上記と同じ軸方向(図面上で右方向)に、光ファイバーケーブル160を引き出して使用する場合には、当該光ファイバーケーブル160に矢印Aで示す向きの巻付捻れが生じる。この場合、上記ケーブルの巻付捻れを打ち消す向きは、矢印Aとは逆の向きである。更には、ケーブル束155の上記とは逆の軸方向(図面上で左方向)に、内側又は外側から光ファイバーケーブル160を引き出す場合には、当該光ファイバーケーブル160に矢印Aとは逆の向きの巻付捻れが生じる。この場合、上記ケーブルの巻付捻れを打ち消す向きは矢印Aの向きである。
【0043】
(3)ケーブル束形成装置及び形成方法
(3-1)ケーブル束形成装置の説明
図4は、図3に示したケーブル束155を形成する装置(以下、ケーブル束形成装置という)200の構成を示す図である。ケーブル束形成装置200は、大きく分けて、スプーラ201と、当該スプーラ201以外の点線で囲んで示す巻付機構400とに分けられる。
【0044】
(3-1-1)スプーラの構成
スプーラ201は、光ファイバーケーブル160の巻き付けられたケーブル束155から取り外し可能な構成になっている。以下、当該スプーラ201の構成について、図5を参照しつつ、詳しく説明する。当該スプーラ201についての説明の後、再び図4を参照しつつ、巻付機構400の説明を行う。
【0045】
図5(a)は、スプーラ201と、当該スプーラ201を巻付機構400の巻付部205(図4を参照)に取り付けるための軸受け部材202,203との構成を示す。図5(b)は、スプーラ201の構成を示す。図5(a)に示すように、スプーラ201の両端には、スプーラ201を巻付部205に取り付けるための軸受け部材202,203が、取り付けられている。図5(b)に示すように、スプーラ201は、4つの部品201a,201b,201c,201dで構成される。軸受け部材202,203には、上記4つの部品201a,201b,201c,201dの各々のエッジ部分を挟持することにより、円筒形のスプーラ201を形成する環状の凹部202a,203aが設けられている。軸受け部材202,203の上記凹部202a,202bが設けられている反対の側には、巻付部205への取り付け部202b,203bが設けられている。取り付け部202bは、巻付機構400のモータ220(図4を参照)が有するスプーラ201の取り付け軸220aに嵌合する凹状の孔であって、当該回転軸220aの回転に伴い当該軸受け部材202が回転するように、かつ、着脱可能な状態で、嵌合する孔を有する。取り付け部203bは、巻付部205が有するスプーラ201の取り付け軸205a(図4を参照)に対して、軸受け部材203が回転可能であって、かつ、着脱可能な状態で嵌合する凹状の孔を有する。
【0046】
スプーラ201を構成する4つの部品の内の1つである部品201aには、光ファイバーケーブル160を固定するための取り付け部品204が設けられている。取り付け部品204は、両端部にねじ穴を備えた帯状の平板204aと、ねじ204bと、ねじ204b用のボルト204cとで構成される。光ファイバーケーブル160と部品201aの端部(図5(b)において部品201aの手前側)とを平板204aで束ね、当該平板204aの両端部に開けてあるねじ穴に、ねじ204bを通し、ねじ204bに取り付けたボルト204cを締めることにより、光ファイバーケーブル160を部品201aに固定することができる。
【0047】
(3-1-2)巻付機構の構成
図4を再び参照しながら、巻付機構400の構成について詳しく説明する。巻付機構400は、光ファイバーケーブル160の巻付捻れを打ち消すように、巻付捻れの向きと反対の向きに、光ファイバーケーブル160を捻りながらスプーラ201に巻き付ける機構である。当該巻付機構400は、大きく分けて、巻付部205と、台250と、ケーブル供給部300とで構成される。
【0048】
以下、各構成要素の説明を行う。巻付部205は、取り付けたスプーラ201を矢印Bの方向に一定の回転速度(単位は、回転数/分である。以下、回転速度について同じ)で回転させて、当該スプーラ201に、ケーブル供給部300から供給される光ファイバーケーブル160を巻き付ける。
【0049】
巻付部205は、スプーラ201の取り付け軸205aと、ローラ部210と、モータ220とで構成される。モータ220は、スプーラ201の取り付け軸220aを有する。ローラ部210は、3個の三角錐状のローラ210a,210b,210cで構成される。ローラ210aは、ローラ部210の上部に設けられ、ローラ210bは、ローラ部210の側部に設けられており、ローラ210cは、ローラ部210の側部であって、ローラ210bに向き合う状態で設けられている。ローラ部210は、3個のローラ210a,310b,310cの働きにより、スプーラ201に巻き付けた光ファイバーケーブル160がケーブル束155のエッジ部分で崩れないように、ケーブル束のエッジ部分を整える。即ち、ローラ部210は、スプーラ201に巻き付けたケーブルのエッジが、すぐ下に位置する既にケーブルを巻き付け終えた層のケーブルのエッジからはみ出さないように、ケーブル束のエッジを整える。スプーラ201は、巻付部205が有する取り付け軸205aと、モータ220が有する取り付け軸220aに、取り付け軸220aの回転に伴い軸回転可能な状態で、かつ、これらの取り付け軸205a,220aに対して着脱可能な状態で取り付けられる。なお、スプーラ201の着脱方法と、スプーラ201自体の構成とについては、後に説明する。モータ220は、巻付部205に取り付けられたスプーラ201を、矢印Bの方向に、一定の回転速度で回転させる。
【0050】
また、巻付部205は、底面にローラ206a,206bを備えている。巻付部205は、ローラ206a,206bにより、台250の上を、図面上、両矢印Cで示す向きに移動し得る構成になっている。
【0051】
台250の上には、アクチエータ230が設けられている。当該アクチエータ230は、巻付部205を台250の上で両矢印Cの向きに一定の移動速度(単位は、cm/secである。以下、移動速度に関して同じ)で繰り返し往復移動させる。巻付部205の移動速度は、スプーラ201に巻き付ける光ファイバーケーブル160が重なり合わないように、モータ220によるスプーラ201の回転速度との関係に基づいて設定する。
【0052】
ケーブル供給部300は、スプーラ301と、当該スプーラ301の軸受け台302と、回転軸303aを有するモータ303とで構成される。スプーラ301には、光ファイバーケーブル160が捻られることなく巻き付けられている。軸受け台302は、モータ303の回転軸303aに取り付けられている。光ファイバーケーブル160を、巻付捻れを打ち消す向き(矢印Eの方向)に捻りながらスプーラ201に巻き付けるため、モータ303は、回転軸303a、即ち、当該回転軸303aに取り付けられている軸受け台302を、ケーブル束形成装置200を上から見た状態で時計方向(矢印Dの方向)に一定の回転速度で回転させる。
【0053】
なお、光ファイバーケーブル160を、均一に捻りながらスプーラ201に巻き付けるため、ケーブル供給部300と、スプーラ201との距離は近い方が好ましい。また、軸受け台302の回転速度は、スプーラ201の回転速度(1回転数/分)と同じ、即ち、スプーラ201が1回転する間に、軸受け台302もちょうど1回転する回転速度に設定する。なお、使用する光ファイバーケーブル160の捻れに対する強度が低く、光ファイバーケーブル160内の光ファイバーがねじ切れてしまう(内部で断線してしまう)おそれがある場合には、巻付捻れを打ち消すことができる範囲内で、スプーラ201の回転速度に対して、軸受け台302の回転速度を遅くする(例えば、0.9回転数/分にする)ことにより対処すればよい。
【0054】
上記構成のケーブル束形成装置200を用いることにより、光ファイバーケーブル160を、巻付捻れの向きと反対の向きである矢印E方向に捻りながらスプーラ201に巻き付けることができる。
【0055】
(3-2)ケーブル束形成装置の変形例
上述したケーブル束形成装置200では、スプーラ201を回転させると共に、ケーブル供給部300から、光ファイバーケーブル160を捻りながら供給する構成を採用したが、本発明のケーブル束形成装置は、当該構成に限定されない。例えば、スプーラ201は回転させずに、ケーブル供給部300自体がスプーラ201の周りを回転しつつ、光ファイバーケーブル160を捻りながら供給する構成を採用することも考えられる。更には、光ファイバーケーブル160を捻らずに供給するだけのケーブル供給部を用意し、スプーラ201を、ケーブルを巻き付ける方向に回転させ、かつ、光ファイバーケーブル160を捻るように回転させるような構成、例えば、上記巻き付け部205自体を巻付捻れの向きと反対の向きに回転させるような構成を採用することも考えられる。
【0056】
(3-3)ケーブル束形成方法の説明
上述したケーブル束形成装置200を用いることにより、ケーブル束155を形成する工程の内、ケーブルの巻付捻れを打ち消すように、巻付捻れの向きとは反対の向きにケーブルを捻りながらスプーラ201に巻き付ける工程を、実行することができる。
【0057】
以下、光ファイバーケーブル160のスプーラ201への巻き付けが終了した後に、ケーブル束155を形成するために、更に実行する工程について説明する。
【0058】
まず、バンド等の仮止め手段により、光ファイバーケーブル160が勝手に解けないように、光ファイバーケーブル160をスプーラ201に固定する。この状態で、スプーラ201を、巻付部205から、2個の軸受け部材202,203と共に取り外す。
【0059】
次に、ケーブル束155が解けるのを防ぐため、当該ケーブル束155の全体を、例えば、フィルム156(図3を参照)により覆う。ケーブル束155をフィルム156で覆った後、上記バンド等の仮止め手段による光ファイバーケーブル160をスプーラ201に固定した状態を解除し、スプーラ201から2個の軸受け部材202,203を取り外す。
【0060】
なお、上記バンド等の仮止め手段により光ファイバーケーブル160が解けないように仮止めした状態を維持できるのであれば、先に、スプーラ201から2個の軸受け部材202,203を取り外しても良い。
【0061】
ケーブル束155をフィルム156で覆う処理を行った後、ケーブル束155からスプーラ201を取り外す作業を以下の手順で行う。まず、スプーラ201を形成している部品201aを、筒の内側(図5(a)において下向き)に押し下げて、取り外す。これにより、4つの部品(201a,201b,201c,201d)相互間に働いていた力が解除され、ケーブル束155から部品201b,201c,201dを引き抜くことができるようになる。部品201aの長さはスプーラ201の直径よりも長くしてあり、ケーブル束155の中で部品201aが回転できないようになっている。光ファイバーケーブル160を使用するまでの間、当該光ファイバーケーブル160を部品201aに固定しておくことにより、光ファイバーケーブル160をスプーラ201に巻き付ける際に当該光ファイバーケーブル160に付した捻れ、即ち、巻付捻れを打ち消す向きの捻れが、当該光ファイバーケーブル160の使用前の段階で無くなってしまうことを防ぐことができる。
【0062】
実際の使用時には、上記手順により形成したケーブル束155を、図3に示した送出部150に収納した後、部品201aを潜水機100の外部にまで引き出し、部品201aと共に引き出されてくる光ファイバーケーブル160を制御艇1の制御装置に接続する。この後、取り付け部品204のねじ204bをゆるめて部品201aを光ファイバーケーブル160から取り外す。
【0063】
上記手順により形成される好ましい実施形態のケーブル束155では、図3に示すように、ケーブル束155の内側から、軸方向に、光ファイバーケーブル160を取り出しても、途中で光ファイバーケーブル160に巻付捻れが生じることを、完全に解消することができる。従って、海中で潜水機100の作業を行っている際に、光ファイバーケーブル160が絡み、いわゆるキンクの状態が生じることを防いで、光ファイバーケーブル160の内部で光ファイバーが折れたり、光ファイバーケーブル160が断線することを効果的に防止することができる。
【0064】
(4)ケーブル束の変形例
上述した実施の形態にかかるケーブル束155は、当該ケーブル束155の軸方向であって、内側から光ファイバーケーブル160を引き出して用いるものである。ケーブル束155の変形例としては、光ファイバーケーブル160を束の外側から引き出して使用するケーブル束が考えられる。また、光ファイバーケーブル160を束の軸方向であって、上記ケーブル束155の場合とは逆の向き(図3で左方向)に、束の内側又は外側から引き出して使用するケーブル束が考えられる。更には、光ファイバーケーブル160をスプーラ201に逆向き(図4に示す矢印Bと反対の方向)に巻き付けて成るケーブル束も考えられる。
【0065】
これらの変形例に係るケーブル束は、ケーブル束形成装置200のケーブル供給部300が有するモータ202と、モータ303との回転方向を適宜調節することにより、形成することができる。より詳しくは、これらの変形例に係るケーブル束は、光ファイバーケーブル160をスプーラ201に巻き付ける方向(図4に示す矢印B、又は、これと反対の方向)に、モータ202、即ち、モータ202の取り付け軸220aを回転させると共に、ケーブル束から光ファイバーケーブル160を引き出す際に生じる巻付捻れを打ち消すように、当該巻付捻れの向きと反対の向き(図4に示す矢印D、又は、これと反対の方向)に、光ファイバーケーブル160を捻る方向に、モータ303の回転軸303aを回転させることにより、形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施の形態にかかるケーブル束を使用する潜水機と、当該潜水機に光ファイバーケーブルを介して接続される海上の制御艇を示す図である。
【図2】(a)及び(b)は、潜水機の内外の構成を簡単に説明するための図である。
【図3】潜水機の尾部に内蔵される光ファイバーケーブルの送出部の構成を示す図である。
【図4】ケーブル束を形成するのに使用するケーブル束形成装置の構成を示す図である。
【図5】ケーブル束形成装置で使用する光ファイバーケーブルを巻き付けた後に外すことのできるスプーラの構成を示す図である。
【図6】従来の潜水機と、当該潜水機に光ファイバーケーブルを介して接続される海上の制御艇を示す図である。
【図7】(a)〜(c)は、引き出した光ファイバーケーブルが捻れて生じる、いわゆるキンクの状態、及び、当該状態より生じうる光ファイバーケーブルの状態を説明するための図である。
【符号の説明】
【0067】
1 制御艇、2 制御装置、100 潜水機、150 送出部、155 ケーブル束、156 フィルム、160 光ファイバーケーブル、200 ケーブル束形成装置、201 スプーラ、205 巻付部、220 モータ、230 アクチュエータ、250 台、300 ケーブル供給部、303 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルが巻き付けられて成るケーブル束であって、巻き付けられているケーブルが軸方向に引き出されるようになっているケーブル束において、
ケーブルを引き出す際にケーブルが巻き付けられていることに起因して生じるケーブルの捻れである巻付捻れを、打ち消すように、上記巻付捻れの向きとは反対の向きに、ケーブルが捻りながら巻き付けられていることを特徴とするケーブル束。
【請求項2】
更に、ケーブル束が解けないように、外周のケーブルを固定する固定手段を備えている請求項1記載のケーブル束。
【請求項3】
固定手段がケーブル束の外周を覆う被覆材である請求項2記載のケーブル束。
【請求項4】
固定手段がケーブル束の外周を固める固着材である請求項2記載のケーブル束。
【請求項5】
ケーブルが光ファイバーケーブルである請求項1乃至請求項4の何れかに記載のケーブル束。
【請求項6】
ケーブルが巻き付けられて成るケーブル束であって、巻き付けられているケーブルが軸方向に引き出されるようになっているケーブル束、を形成するケーブル束形成装置において、
ケーブルを巻き付けるためのスプーラであって、巻き付けられたケーブル束から取り外し可能なスプーラと、
ケーブルを引き出す際にケーブルが巻き付けられていることに起因して生じるケーブルの捻れである巻付捻れを、打ち消すように、上記巻付捻れの向きとは反対の向きに、ケーブルを捻りながら上記スプーラに巻き付ける巻付機構と、を備えていることを特徴とするケーブル束形成装置。
【請求項7】
上記巻付機構は、ケーブルを巻き付ける向きにスプーラを回転させる巻付部と、スプーラに、ケーブルを、上記反対の向きに捻りながら供給するケーブル供給部と、を有している請求項6記載のケーブル束形成装置。
【請求項8】
ケーブルが光ファイバーケーブルである請求項6又は請求項7に記載のケーブル束形成装置。
【請求項9】
ケーブルが巻き付けられて成るケーブル束であって、巻き付けられているケーブルが軸方向に引き出されるようになっているケーブル束、を形成するケーブル束形成方法であって、
ケーブルを引き出す際にケーブルが巻き付けられていることに起因して生じるケーブルの捻れである巻付捻れを、打ち消すように、上記巻付捻れの向きとは反対の向きに、ケーブルを捻りながら巻き付ける工程を有することを特徴とするケーブル束形成方法。
【請求項10】
ケーブルが光ファイバーケーブルである請求項9記載のケーブル束形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−27885(P2006−27885A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−213247(P2004−213247)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(390008338)広和株式会社 (21)
【Fターム(参考)】