説明

ケーブル絶縁体の平滑仕上げ面の補修方法

【課題】熱収縮チューブの内面転写によるケーブル絶縁体の平滑仕上げ面に凹凸部が発見された場合に、その凹凸部を、凹凸部のない平滑仕上げ面と同等の平滑面に補修することができる補修方法を提供する。
【解決手段】電力ケーブルの絶縁体1を露出させた後、その外周に内面平滑な熱収縮チューブ3を被せて加熱収縮させ、そのチューブ内面の平滑面を絶縁体表面に転写することにより絶縁体表面を平滑に仕上げ、熱収縮チューブ3を軸線方向に切り裂いて剥ぎ取った後に、絶縁体1の平滑仕上げ面に凹凸部5が発見された場合に、剥ぎ取られた熱収縮チューブ3を凹凸部5を含む領域に被せ、凹凸部5の上の熱収縮チューブ3を加熱しながら擦ることにより、再び熱収縮チューブ内面の平滑面を凹凸部に転写し、平滑仕上げ面の凹凸部を平滑にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック絶縁電力ケーブル(CVケーブル等)の接続等の際に、ケーブル絶縁体の表面を平滑に仕上げた後に、平滑仕上げ面に凹凸部が発見された場合の補修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CVケーブル等を接続する場合には、電気的弱点をなくすため、ケーブル絶縁体の表面を平滑に仕上げる必要がある。従来、ケーブル絶縁体表面の平滑仕上げは次のように行われている(特許文献1)。
1)ケーブル外部半導電層をガラス片等で除去してケーブル絶縁体を露出させた後、(場合によってはサンドペーパーで平滑にした上で)その外周にシリコーン等の熱収縮チューブを被せる。
2)その後、熱収縮チューブを熱風吹き付け器で加熱して収縮させ、ケーブル絶縁体に密着させる。
3)その後、さらに加熱することによりケーブル絶縁体の表面を軟化させ、熱収縮チューブの平滑な内面をケーブル絶縁体表面に転写し、ケーブル絶縁体表面を平滑にする。このときの加熱方法としては、熱収縮チューブの上に押さえテープを巻いて、その上にヒーターをつけて、所定の温度と時間をかけて加熱する方法と、熱収縮チューブの収縮作業の後も熱風吹き付け器による加熱を続け、熱収縮チューブの外周面を保護手袋を装着した手などで擦って界面の空気を両端側に追い出しながら加熱する方法とがある。
【0003】
その後、熱収縮チューブを剥ぎ取って、ケーブル絶縁体表面を検査し、もし平滑仕上げ面に凹凸部が発見された場合は、新たに熱収縮チューブを被せて上記2)、3)の作業をやり直すことも考えられるが、通常は内面転写に用いた熱収縮チューブは剥ぎ取らずに次工程作業時のケーブル絶縁体保護材として利用するため、そのままの状態にしておく。一般的には、次工程は導体接続であるので、熱収縮チューブは導体接続後に剥ぎ取ることになる。
【0004】
熱収縮チューブを剥ぎ取った後に、ケーブル絶縁体表面の検査を行う。この検査でケーブル絶縁体表面に凹凸部が発見される場合がある。凹凸部はケーブル絶縁体と熱収縮チューブの界面に異物が入っていた場合などに発生する。しかしこの段階では、既に導体接続が行われていて、ケーブル絶縁体に熱収縮チューブを被せることができないので、熱収縮チューブの内面転写による表面平滑化を行うことができない。
【0005】
このため従来は、検査によりケーブル絶縁体表面に凹凸部が発見された場合には、凹凸部をサンドペーパーで研磨したり、ガラス片で削ったりして補修を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−262127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、熱収縮チューブ剥ぎ取り後にケーブル絶縁体表面に凹凸部が発見された場合に、その凹凸部をサンドペーパーやガラス片を用いて補修しても、補修した部分は、熱収縮チューブの内面転写による平滑仕上げ面よりも、どうしても表面粗さが粗くなってしまい、この部分が電気的弱点となりやすい。
【0008】
本発明の目的は、熱収縮チューブの内面転写によるケーブル絶縁体の平滑仕上げ面に凹凸部が発見された場合に、その凹凸部を、凹凸部のない平滑仕上げ面と同等の平滑面に補修することができる補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため本発明は、プラスチック絶縁電力ケーブルの絶縁体を露出させた後、その外周に内面平滑な熱収縮チューブを被せて加熱収縮させ、そのチューブ内面の平滑面を絶縁体表面に転写することにより絶縁体表面を平滑に仕上げ、熱収縮チューブを軸線方向に切り裂いて剥ぎ取った後に、絶縁体の平滑仕上げ面に凹凸部が発見された場合に、剥ぎ取られた熱収縮チューブを凹凸部を含む領域に被せ、凹凸部の上の熱収縮チューブを加熱しながら保護手袋を装着した手などで擦ることにより、再び熱収縮チューブ内面の平滑面を凹凸部に転写し、平滑仕上げ面の凹凸部を平滑にすることを特徴とするものである。
【0010】
また本発明は、プラスチック絶縁電力ケーブルの絶縁体を露出させた後、その外周に内面平滑な熱収縮チューブを被せて加熱収縮させ、そのチューブ内面の平滑面を絶縁体表面に転写することにより絶縁体表面を平滑に仕上げ、熱収縮チューブを軸線方向に切り裂いて剥ぎ取った後に、絶縁体の平滑仕上げ面に凹凸部が発見された場合に、前記凹凸部を含む領域に熱収縮チューブの内面と同等である表面平滑なフッ素樹脂テープを巻き付け、凹凸部の上のフッ素樹脂テープを加熱しながら保護手袋を装着した手などで擦ることにより、フッ素樹脂テープ内面の平滑面を凹凸部に転写し、平滑仕上げ面の凹凸部を平滑にすることを特徴とするものであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、ケーブル絶縁体上に熱収縮させて内面を転写した後、軸線方向に切り裂いて剥ぎ取った熱収縮チューブを凹凸部の補修に用いる。剥ぎ取った熱収縮チューブは、ケーブル絶縁体の外周面とほぼ同じ曲面形状を保っているので、これを再びケーブル絶縁体に被せると、その内面をケーブル絶縁体の表面によく密接させることができる。このため、熱収縮チューブを外側から加熱して擦れば、ケーブル絶縁体が軟化して、凹凸部に熱収縮チューブの平滑な内面を転写することができ、凹凸部を、凹凸部のない平滑仕上げ面と同等の平滑面に補修することができる。
【0012】
また、剥ぎ取った熱収縮チューブの代わりに、フッ素樹脂テープを巻き付けて、加熱しながら擦ることによっても、フッ素樹脂テープの平滑面をケーブル絶縁体の凹凸部に転写することができるので、凹凸部を凹凸部のない平滑仕上げ面と同等の平滑面に補修することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(A)〜(F)は本発明の一実施例を示す正面図。
【図2】図1(E)のX−X線断面図。
【図3】本発明の他の実施例を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0014】
<実施例1> 図1及び図2は本発明の一実施例を示す。まず図1(A)に示すように、電力ケーブルの端部の遮蔽体や外部半導電層(図示ぜず)を除去してケーブル絶縁体1を露出させ、さらにケーブル絶縁体1の端部を除去してケーブル導体2を露出させる。
【0015】
次に同図(B)に示すように、露出したケーブル絶縁体1の外周に内面平滑な熱収縮チューブ3を被せて加熱収縮させ、そのチューブ3の内面の平滑面を絶縁体表面に転写することにより絶縁体表面を平滑に仕上げる。
【0016】
次に同図(C)に示すように、ケーブル導体2を導体接続管4で相手方ケーブル導体(図示せず)又は導体引出棒(終端接続箱の場合)(図示せず)と圧縮接続する。この段階では、熱収縮チューブ3はケーブル絶縁体1の平滑仕上げ面を保護するため、剥ぎ取らずにそのままの状態にしておく。
【0017】
熱収縮チューブ3は導体1を接続した後に周方向の1箇所を軸線方向に切り裂いて剥ぎ取る。すると同図(D)に示すようにケーブル絶縁体1が露出するので、この段階で平滑仕上げ面を検査する。検査により凹凸部が発見されなければ次工程に移るが、検査によりケーブル絶縁体1の平滑仕上げ面に凹凸部5が発見された場合は凹凸部5を補修して平滑にする必要がある。しかしこの時点では、既にケーブル導体2が相手方導体と接続されているので、ケーブル絶縁体1上に新たな熱収縮チューブを被せて熱収縮させることはできない。
【0018】
そこで、この実施例では、検査によりケーブル絶縁体1の平滑仕上げ面に凹凸部5が発見され場合には、次のような補修作業を行う。なお、補修範囲は、熱収縮チューブをケーブル絶縁体上に被せるときに目視検査で見落とした異物程度なので、一般的には点在することはなく、その大きさは1mm以下である。
【0019】
まず、前段階で剥ぎ取った熱収縮チューブを適当な大きさ(長さ100mm程度)に切断し、同図(E)及び図2に示すように、切断した熱収縮チューブ3を凹凸部5を含む領域に被せて、熱収縮チューブ3の両端部を粘着テープ6等によりケーブル絶縁体1上に固定する。剥ぎ取った熱収縮チューブは、内周面の形がケーブル絶縁体の外周面の形に近く、一度収縮させてあるので、ケーブル絶縁体の外周面に容易に密接させることができ、作業性がよい。この状態で、凹凸部5の上の熱収縮チューブ3を加熱しながら擦ることにより、再び熱収縮チューブ3内面の平滑面を凹凸部5に転写する。
【0020】
その後、熱収縮チューブ3を剥ぎ取れば、図1(F)に示すように、凹凸部が、凹凸部のない平滑仕上げ面と同等の平滑面に補修された状態となる。
【0021】
<実施例2> 図3は本発明の他の実施例を示す。図3は図1(E)に相当する図である。この実施例においても、図1(A)から(D)までの工程は実施形態1と同じである。この実施例では、検査によりケーブル絶縁体1の平滑仕上げ面に凹凸部5が発見され場合に、その凹凸部5を含む領域に表面平滑なフッ素樹脂テープ(ポリテトラフルオロエチレンテープ)7を巻き付けて、凹凸部5の上のフッ素樹脂テープ7を加熱しながら擦ることにより、フッ素樹脂テープ7内面の平滑面を加熱により軟化した凹凸部5に転写し、平滑仕上げ面の凹凸部を平滑に補修する。フッ素樹脂テープ7を平滑面転写後に剥ぎ取ると、図1(F)と同様に凹凸部のない平滑仕上げ面を得ることができる。
【0022】
フッ素樹脂テープ7としてはテープの厚みによりケーブル絶縁体表面に段差ができないように0.1mm以下の厚みのものを使用することが好ましい。フッ素樹脂テープは剥離性がよく、加熱されて軟化したケーブル絶縁体に付着しないので、平滑面転写に適している。
【符号の説明】
【0023】
1:ケーブル絶縁体
2:ケーブル導体
3:熱収縮チューブ
4:導体接続管
5:凹凸部
6:粘着テープ
7:フッ素樹脂テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック絶縁電力ケーブルの絶縁体を露出させた後、その外周に内面平滑な熱収縮チューブを被せて加熱収縮させ、そのチューブ内面の平滑面を絶縁体表面に転写することにより絶縁体表面を平滑に仕上げ、熱収縮チューブを軸線方向に切り裂いて剥ぎ取った後に、絶縁体の平滑仕上げ面に凹凸部が発見された場合に、剥ぎ取られた熱収縮チューブを凹凸部を含む領域に被せ、凹凸部の上の熱収縮チューブを加熱しながら擦ることにより、再び熱収縮チューブ内面の平滑面を凹凸部に転写し、平滑仕上げ面の凹凸部を平滑にすることを特徴とするケーブル絶縁体の平滑仕上げ面の補修方法。
【請求項2】
プラスチック絶縁電力ケーブルの絶縁体を露出させた後、その外周に内面平滑な熱収縮チューブを被せて加熱収縮させ、そのチューブ内面の平滑面を絶縁体表面に転写することにより絶縁体表面を平滑に仕上げ、熱収縮チューブを軸線方向に切り裂いて剥ぎ取った後に、絶縁体の平滑仕上げ面に凹凸部が発見された場合に、前記凹凸部を含む領域に表面平滑なフッ素樹脂テープを巻き付け、凹凸部の上のフッ素樹脂テープを加熱しながら擦ることにより、フッ素樹脂テープ内面の平滑面を凹凸部に転写し、平滑仕上げ面の凹凸部を平滑にすることを特徴とするケーブル絶縁体の平滑仕上げ面の補修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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