説明

ゲル化剤

【課題】アルコールなどの有機基剤に対し、優れたゲル化能を有するゲル化剤、及びそれを含むゲル状組成物の提供。
【解決手段】下記式(1)で表される質量平均分子量10万〜150万のセルロース誘導体を含むゲル化剤。


(式中、Rは、水素原子、ヒドロキシアルキル基、及び一般式(2)で表される置換基から選ばれる基を示し、Q、E1、E2は特定のアルカンジイル基を示し、Aはエーテル結合又はオキシカルボニル基を示し、aは0〜10、nは0〜20の数であり、式(2)の置換基の置換度は、式(1)の繰り返し単位1000個当たり50〜200である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル化剤及びそれを用いたゲル状組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水又は非極性媒体をゲル化するゲル化剤として、水溶性高分子化合物や12−ヒドロキシステアリン酸などの多数の物質が知られており、これらの物質をゲル化剤として含む化粧料が報告されている。〔例えば、特許文献1(N−アシルアミノ酸誘導体を配合した化粧料)、及び特許文献2(多糖類誘導体又はその塩を含有する化粧料)参照〕
一方、アルコールやポリオールなどの極性の高い有機媒体をゲル化可能なゲル化剤は少なく、ジベンジリデン−D−ソルビトール(DSB)や、ステアリン酸ナトリウムなどの金属石鹸などの僅かな物質に限られている。これは、ゲル化剤が有機媒体中に溶解することなくミクロ相に分離してネットワークを形成するという、ゲル化のメカニズムに由来しているためである。また、アルコールは、炭化水素などの極性の低い化合物や水などの非常に極性の高い化合物も溶解可能な特性を有しているため、このようなアルコールをゲル化することは本来困難だからである。
【0003】
しかし、アルコールをゲル化可能なDSBは、化学的安定性に劣り、分解して臭気を発生するという問題がある。また、金属石鹸を用いて増粘やゲル化を行なうためには比較的高濃度で使用する必要がある。このように、これらのゲル化剤を用いて調製したゲル状組成物を化粧料などに配合した場合、使用時に強いベタツキ感やざらつき感などの不快な感触を受けるという問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開昭51−19139号公報
【特許文献2】特開平9−110901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、アルコールなどの極性の高い有機基剤に対し、低濃度で優れたゲル化能を有するゲル化剤、及びそのゲル化剤を含むゲル状組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、特定の構造を有するセルロース誘導体が、極性の高い有機基剤に対し、低濃度で優れたゲル化剤として働くことを見出した。
すなわち、本発明は〔1〕及び〔2〕を提供する。
〔1〕下記一般式(1)で表される繰り返し単位からなる質量平均分子量10万〜150万のセルロース誘導体を含むゲル化剤。
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、Rは、水素原子、ヒドロキシアルキル基、及び一般式(2)で表される置換基から選ばれる基を示し、Qは、炭素数2〜4のアルカンジイル基を示し、aは、平均付加モル数を意味し0〜10の数である。R1はヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数16〜24のアルキル基を示し、Aはエーテル結合又はオキシカルボニル基を示し、E1は、ヒドロキシ基又はオキソ基が置換していてもよい炭素数1〜6のアルカンジイル基を示し、E2は、炭素数1〜6のアルカンジイル基を示し、nは平均付加モル数を意味し0〜20の数である。繰り返し単位内及び繰り返し単位間の複数のR、Q、R1、A、E1、E2、a及びnは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。ただし、一般式(2)で表される置換基の置換度は、一般式(1)で表される繰り返し単位1000個当たり50〜200である。)
〔2〕上記〔1〕のゲル化剤とアルコールとを含むゲル状組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明のゲル化剤は、化粧品分野や身体外用剤分野などで使われる極性の高い有機基剤を低濃度でゲル化することができ、使用時の感触を損ねることがないという優れた性能を有する。また、本発明のゲル化剤とアルコールを含む組成物は、優れたゲル状組成物として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<ゲル化剤>
本発明のゲル化剤は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位からなる質量平均分子量10万〜150万のセルロース誘導体を含んでいる。
【0011】
【化2】

【0012】
一般式(1)において、Rは、水素原子、ヒドロキシアルキル基、及び一般式(2)で表される置換基から選ばれる基を示す。
ヒドロキシアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数2〜4のアルキル基である。例えば、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基などが挙げられるが、入手の容易さの観点から、特に好ましくは2−ヒドロキシエチル基である。
Qは、炭素数2〜4のアルカンジイル基を示し、好ましくはエチレン基又はプロパン−1,2−ジイル基である。
aは、平均付加モル数を意味し0〜10の数であり、好ましくは0〜6の数であり、合成上の観点から、好ましくは3つのaの合計が1〜3である。
Rは、分散性の観点から、ヒドロキシアルキル基、及び一般式(2)で表される置換基が好ましい。
【0013】
一般式(2)において、R1は、ヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数16〜24のアルキル基である。R1は、ゲル化性能及び溶解性、分散性の観点から、好ましくは炭素数16〜24の直鎖アルキル基、より好ましくは炭素数16〜20の直鎖アルキル基である。
一般式(2)におけるAは、エーテル結合又はオキシカルボニル基(例えば、−OCO−又は−COO−)であり、化学的安定性の観点から、好ましくはエーテル基である。
【0014】
1は、ヒドロキシ基又はオキソ基が置換していてもよい炭素数1〜6のアルカンジイル基である。E1は、合成の容易さなどの観点から、好ましくはヒドロキシ基を有する炭素数2〜4のアルカンジイル基であり、特に好ましくは2−ヒドロキシプロパン−1,2−ジイル基である。
2は、炭素数1〜6のアルカンジイル基である。E2は、入手の容易さなどの観点から、好ましくは炭素数2〜4のアルカンジイル基であり、特に好ましくはエチレン基、又はプロパン−1,2−ジイル基である。
nは、平均付加モル数の意味し0〜20の数であり、ゲル化性能の観点から、好ましくは0〜10、より好ましくは0〜5、特に好ましくは0である。
一般式(1)における繰り返し単位内及び繰り返し単位間の複数のR、Q、R1、A、E1、E2、a及びnは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0015】
一般式(2)で表される置換基の置換度は、一般式(1)で表される繰り返し単位1000個当たり50〜200であり、製造コストの観点から、該繰り返し単位1000個当たり好ましくは50〜150であり、より好ましくは60〜120である。
なお、「置換度」とは、一般式(1)で表される繰り返し単位(構成単糖)1000個当たりの置換基の平均数を意味する。
この置換度は、Zeisel法(D.G.Anderson., Anal.Chem.,43,894(1971))により求めることができる。より具体的には、ヨウ化水素を用いて、エーテル結合の加水分解と、加水分解により生じる高級アルコール(R1OH)のヨウ素化を行い、得られたヨウ化アルキル(R1I)をガスクロマトグラフ法で定量することにより求めることができる。
【0016】
本発明のゲル化剤に含まれるセルロース誘導体は、質量平均分子量は、ゲル化性能の観点から、10万以上であり、好ましくは20万以上であり、溶解速度の観点から、150万以下であり、好ましくは100万以下である。なお、セルロース誘導体の質量平均分子量(Mw)はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。質量平均分子量(Mw)の測定法の詳細は実施例に記載する。
【0017】
また、本発明で用いられるセルロース誘導体は、一般式(1)で表される化合物のうち一般式(2)で表される置換基のない化合物に対し、下記一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン化剤を反応させることにより得ることができる。
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、E3は、炭素数3〜6のエポキシ化アルキル基、ヒドロキシ基が置換していてもよい炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のハロゲン化アルキル基、カルボキシ基、炭素数1〜6のカルボキシアルキル基、又はそれらの誘導体を示し、R1、A、E2、及びnは前記と同じである。)
一般式(3)において、E3で表される基のうち、炭素数3〜6のエポキシ化アルキル基としては、2,3−エポキシプロピル基、3,4−エポキシブチル基、4,5−エポキシペンチル基、5,6−エポキシヘキシル基が挙げられる。これらの中では、合成上の観点から、2,3−エポキシプロピル基が好ましい。
3のヒドロキシ基が置換していてもよい炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のハロゲン化アルキル基としては、炭素数2〜6の直鎖のハロゲン化アルキル基が好ましく、2−クロロエチル基、3−クロロプロピル基、4−クロロブチル基、5−クロロペンチル基、6−クロロヘキシル基、2−ブロモエチル基、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル基などが挙げられる。これらの中では、合成上の観点から、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル基が好ましい。
【0020】
また、E3の炭素数1〜6のカルボキシアルキル基としては、炭素数2〜5のカルボキシアルキル基が好ましく、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、カルボキシブチル基、カルボキシペンチル基などが挙げられる。
前記のエポキシ化アルキル基、ハロゲン化アルキル基、カルボキシ基、炭素数1〜6のカルボキシアルキル基の誘導体としては、それらのメチルエステル化物、エチルエステル化物、酸ハロゲン化物、トシル化物、メシル化物、無水物などが挙げられる。これらの中では、2,3−エポキシプロピル基、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル基が特に好ましい。
一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン化剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用でき、その使用量は、一般式(2)の置換基の所望する導入量によって適宜決定することができる。
【0021】
(反応条件)
前記の反応は、必要に応じてアルカリ存在下で行なうのが好ましく、かかるアルカリとしては、周期表第1族又は第2族元素の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩などが挙げられる。これらの中では水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
アルカリの使用量は、一般式(1)で表される繰り返し単位に対し、反応効率の観点から、好ましくは0.01〜0.5モル倍量、特に0.1〜0.2モル倍量の範囲が好ましい。
溶媒としては、炭素数1〜6の低級アルコールの使用が可能であり、反応収率の観点から、好ましくは炭素数2〜4の低級アルコール、特に好ましくはイソプロピルアルコールである。また、反応性を高める観点から、低級アルコールに対し、好ましくは0.1〜100重量%、特に好ましくは1〜50重量%の水を加えた混合溶媒を用いることができる。
反応温度は、反応効率の観点から、好ましくは0〜150℃、特に好ましくは30〜100℃である。
【0022】
反応終了後、酸を用いて中和することができる。酸としては、硫酸、塩酸などの無機酸のほか、酢酸、コハク酸などの有機酸を使用できる。
また、反応終了後、未反応の一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン化剤やアルカリ触媒、中和により生成した塩を除去する目的で精製することができる。また、精製を行わずにそのまま溶媒を留去することもできる。
精製法は目的に応じた方法で適宜行うことができ、例えば、反応溶媒、又はアセトン/水の混合溶媒を用い、攪拌及びろ過を2〜3回繰り返す操作は有効である。
上記一般式(1)で表されるセルロース誘導体の含有量は、ゲル化性能の観点から、ゲル化剤中に50〜100質量%、好ましくは70〜100質量%、特に好ましくは80〜100質量%である。
【0023】
<ゲル状組成物>
本発明のゲル状組成物は、本発明のゲル化剤とアルコールとを含むことを特徴とする。一般式(1)で表される繰り返し単位からなる質量平均分子量10万〜150万のセルロース誘導体は、アルコールに均一に分散させることにより増粘し、優れたゲル化能を発揮する。
アルコールは、一般式(1)で表されるセルロース誘導体を均一に分散できるものであれば特に制限はない。炭素数1〜6の低級一価又は多価アルコールから炭素数7〜18の高級一価又は多価アルコールまで、幅広いアルコールを用いることができ、それらのアルコールを効果的にゲル化することができる。水と分離するアルコールは、一般的な油ゲル化剤によってもゲル化可能であるため、本発明のゲル化剤は極性の高いアルコールに対して特に有効である。
本発明のゲル状組成物には、本発明のゲル化剤に含まれるセルロース誘導体の分散性を上げる目的で、水を添加することができる。
ゲル化剤の含有量は、目的とする粘度及びゲル強度の観点から適宜調整して決めることができるが、アルコール及び/又は水との混合物に対し、化粧料などに配合して使用した場合の使用感の観点から、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは1〜20質量%、更に好ましくは1〜10質量%、特に好ましくは1〜5質量%である。
アルコールの含有量は、分散性の観点から、ゲル状組成物中に好ましくは50〜99質量%、より好ましくは70〜99質量%、更に好ましくは75〜95質量%、特に好ましくは80〜90質量%である。
水の含有量は、分散性の観点から、アルコールに対し好ましくは0〜50質量%、より好ましくは0〜15質量%であり、またゲル状組成物中に好ましくは5〜20質量%、より好ましくは8〜15質量%である。
【0024】
アルコールなどをゲル化する場合は、対象となるアルコールなどに本発明のゲル化剤を添加し、室温にて攪拌することによりゲル化することができる。また、対象となるアルコール又はアルコールと水との混合物を還流させて分散を加速させ、その後室温に戻す方法によれば、短時間でゲル化させることができるため好ましい。
本発明のゲル状組成物には、目的に応じて化粧料、トイレタリー製品に通常使用される界面活性剤、分散剤、香料、染料、無機塩、pH調整剤を、適宜加えることができる。
本発明のゲル化剤及びそれを含有するゲル状組成物は、化粧料、皮膚外用剤、トイレタリー製品などに好適に使用することができる。
【実施例】
【0025】
以下の実施例において、「%」は特記しない限り「質量%」である。
なお、一般式(2)で表される置換基の置換度、及びセルロース誘導体の質量平均分子量(Mw)の測定方法は以下のとおりである。
(1)一般式(2)で表される置換基の置換度の測定
Zeisel法(D.G.Anderson., Anal.Chem.,43,894(1971))により求めた。
具体的には、セルロース誘導体100mgに対し、アジピン酸110mg、内部標準物質(炭化水素)適当量、55%ヨウ化水素酸3gを加え、密閉して150℃で1時間攪拌する。60℃まで冷却後、ヘキサン3gを加えて激しく攪拌し、30℃以下まで冷却後、ジエチルエーテル1gを加えて再び激しく攪拌する。有機層を採取し、これに炭酸水素ナトリウム(粉末状)を加えて激しく攪拌した後、溶液を採取してガスクロマトグラフ法によりヨウ化アルキルを定量した。
(2)セルロース誘導体の質量平均分子量(Mw)の測定
カラムとして東ソー株式会社製、HLC−8120GPCを用い、溶媒として、60mmol/Lのリン酸と50mmol/Lのリチウムブロマイドを含有するN,N−ジメチルホルムアミドを用いたGPC法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定し、ポリオキシエチレン(POE)換算質量平均分子量(Mw)として算出した。
【0026】
実施例1〜3
(セルロース誘導体Aの製造)
還流冷却管つき1L四つ口丸底フラスコに、ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業株式会社製「SE390」、質量平均分子量20万)100gを入れ、攪拌しながらイソプロピルアルコール(IPA)/水(質量比)=85/15の混合溶媒500gを添加し、スラリーを調製した。30分間窒素を流通し、系内の脱酸素を行なった後、ステアリルグリシジルエーテル52.9gを加え、更に48%水酸化ナトリウム水溶液6.1gを加えて攪拌した。窒素の流通を停止し、窒素雰囲気下で昇温し、浴温85℃で加熱還流下、9時間熟成を行った後、室温付近まで冷却した。
得られた溶液に酢酸4.5gを加えて中和した後、IPA500gを加えてフラスコから抜き出し、アセトン6Lを加えて糖鎖の凝集沈殿を行なった。ろ過して溶媒を除去した後、エタノール1L中で1夜攪拌して膨潤させた後、アセトン2Lを加えて糖鎖の凝集沈殿を行い、再びろ過により溶媒の除去を行なった。得られたケークを60℃、減圧(1.3kPa)下で乾燥して、岩状のセルロース誘導体A 92.6gを得た。得られたセルロース誘導体AのPOE換算質量平均分子量(Mw)は24万であり、ステアリルグリシジルエーテルの置換度は97.5であった。
【0027】
(ゲル状組成物の製造)
磁気攪拌子を入れた10mL(内径18mm)のガラス容器に、表1に示す割合になるようにセルロース誘導体A、IPA(0.9g)、水(0.1g)を入れ、ブロックヒーター上で攪拌しながら70℃まで昇温し、セルロース誘導体Aを均一分散させた。その後、水浴上で攪拌しながら25℃まで冷却し、ゲル状組成物とした。
(ゲル化能評価)
上記で得られたゲル状組成物を10秒間静置後、ガラス容器を転倒させ、次の基準でゲル化状態を評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
5:転倒しても10秒間以上変形せず、形状を維持し、十分にゲル化している。
4:転倒すると変形するが、増粘している。
3:転倒すると変形するし、増粘もしていない。
2:転倒すると直ぐに変形するし、10℃まで冷却しないとゲル化しない。
1:全くゲル化しない。
【0028】
実施例4〜6
(セルロース誘導体Bの製造)
実施例1において、ステアリルグリシジルエーテル52.9gの代わりに、下記式(4)で示される化合物126.2gを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行なった。
得られた溶液に酢酸4.5gを加えて中和した後、フラスコから取り出し、アセトン2Lを加えて糖鎖の凝集沈殿−ろ過による溶媒除去の操作を3回繰り返した。得られたケークを60℃、減圧(1.3kPa)下で乾燥して、淡黄色粉末状のセルロース誘導体B 117.9gを得た。得られたセルロース誘導体BのPOE換算質量平均分子量(Mw)は24万であり、下記式(4)で示されるグリシジルエーテルの置換度は75.7であった。
【0029】
【化4】

【0030】
セルロース誘導体Bを含むゲル状組成物の製造、及びゲル化能の評価を、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0031】
比較例1〜3
(セルロース誘導体Cの製造)
実施例1において、ステアリルグリシジルエーテル52.9gの代わりに、下記式(5)の化合物7.9gを用いて反応を行い、加熱還流後、室温付近まで冷却した以外は実施例1と同様に行った。
得られた溶液に酢酸4.5gを加えて中和した後フラスコから抜き出し、ろ過した後、IPA/水=85/15混合溶媒700gを加えて分散させ、ろ過により溶媒を除去する操作を3回繰り返し、更に溶媒をIPAに代えて2回繰り返した。得られたケークを60℃、減圧(1.3kPa)下で乾燥して、淡黄色粉末状のセルロース誘導体C 87.2gを得た。得られたセルロース誘導体CのPOE換算質量平均分子量(Mw)は24万であり、下記式(5)で示されるグリシジルエーテルの置換度は、9.1であった。
【0032】
【化5】

【0033】
セルロース誘導体Cを含むゲル状組成物の製造、及びゲル化能の評価を、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0034】
比較例4〜6
(セルロース誘導体Dの製造)
比較例1において、式(5)の化合物7.9gの代わりに、ステアリルグリシジルエーテル6.4gを用いた以外は、比較例1と同様の操作を行なった(収量92.0g)。得られたセルロース誘導体DのPOE換算質量平均分子量(Mw)は24万であり、ステアリルグリシジルエーテルの置換度は12.5であった。
セルロース誘導体Dを含むゲル状組成物の製造、及びゲル化能の評価を、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0035】
比較例7〜9
(セルロース誘導体Eの製造)
比較例3において、式(5)の化合物7.9gの代わりに、ラウリルグリシジルエーテル3.7gを用いた以外は、比較例3と同様に行なった(収量91.0g)。得られたセルロース誘導体DのPOE換算質量平均分子量(Mw)は24万であり、ラウリルグリシジルエーテルの置換度は11.6であった。
セルロース誘導体Eを含むゲル状組成物の製造、及びゲル化能の評価を、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0036】
比較例10〜12
磁気攪拌子を入れた10mL(内径18mm)のガラス容器に、表1に示す割合になるようにステアリン酸ナトリウム、IPA(0.9g)、水(0.1g)を入れ、ブロックヒーター上で攪拌しながら70℃まで昇温し、均一分散させた。その後、水浴上で攪拌しながら25℃まで冷却した。
ゲル化能の評価を、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
表1から明らかなように、実施例1〜6で示す本発明のゲル剤は、低濃度でもアルコールのゲル化が可能であり、高いゲル化能を示すことが分かる。このことから、本発明のゲル化剤及びそれを含有するゲル状組成物は、化粧料、皮膚外用剤、トイレタリー製品などに好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位からなる質量平均分子量10万〜150万のセルロース誘導体を含むゲル化剤。
【化1】

(式中、Rは、水素原子、ヒドロキシアルキル基、及び一般式(2)で表される置換基から選ばれる基を示し、Qは、炭素数2〜4のアルカンジイル基を示し、aは、平均付加モル数を意味し0〜10の数である。R1はヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数16〜24のアルキル基を示し、Aはエーテル結合又はオキシカルボニル基を示し、E1は、ヒドロキシ基又はオキソ基が置換していてもよい炭素数1〜6のアルカンジイル基を示し、E2は、炭素数1〜6のアルカンジイル基を示し、nは平均付加モル数を意味し0〜20の数である。繰り返し単位内及び繰り返し単位間の複数のR、Q、R1、A、E1、E2、a及びnは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。ただし、一般式(2)で表される置換基の置換度は、一般式(1)で表される繰り返し単位1000個当たり50〜200である。)
【請求項2】
一般式(1)で表されるセルロース誘導体の含有量が50〜100質量%である請求項1に記載のゲル化剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のゲル化剤とアルコールとを含むゲル状組成物。
【請求項4】
ゲル化剤を1〜50質量%、アルコールを50〜99質量%含有する請求項3に記載のゲル状組成物。

【公開番号】特開2008−260888(P2008−260888A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106113(P2007−106113)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】