説明

ゲル製造方法

【課題】インクジェット法などにより、液滴を吐出して、被着弾面に着弾させて、加熱処理または紫外線照射などの方法により、液滴を固化させてゲルを均一な大きさで精度良く形成する。
【解決手段】紫外線硬化性を有するインク2を必要かつ正確に微少な分量にして、正確な位置つまりポケット部11に液滴吐出させるので、微細で様々な形状のゲル1を精度良く形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクジェット法などにより、液滴を吐出して、被着弾面に着弾させて、加熱処理または紫外線照射などの方法により、液滴を固化させてゲルを製造する方法が一般的に用いられている。紫外線硬化型のインク液滴を、被着弾面として立体メディアの画像プリント面に着弾させ、紫外線を照射することにより、インク液滴を固化させる方法が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−327142号公報(5頁〜9頁、図1〜図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、被着弾面として立体メディアの画像プリント面に着弾させると、被着弾面の撥液性または親液性に依存して、液滴の形状または大きさが変わってしまうという課題がある。
たとえば、親液性を有していれば、着弾される液滴は、被着弾面に濡れ広がってしまう、または被着弾面に染み込んでしまい、形状を維持できなくなり、液滴を固化させてゲルを形成することができない。この一方で、撥液性を有していれば、着弾される液滴は、半円球形状または球体形状に近い形状になるが、複数の液滴どうしが一つに繋がってしまい、大きくなる。または、着弾される液滴は、複数の液滴に分割されてしまい、着弾される液滴に比べて、小さくなったりする。
このため、均一な大きさのゲルを精度良く形成することができない。また、円柱形状、角柱形状、円錐形状、あるいは角錐形状など様々な形状に固化させてゲルを形成することができないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものである。以下の形態または適用例により実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかるゲル製造方法は、紫外線硬化性を有するインクを基材に形成されたポケット部に液滴吐出する液滴吐出工程と、前記ポケット部に液滴吐出された前記インクに紫外線を照射して固化する固化工程と、固化された前記インクを前記ポケット部から取り外す取外し工程とを含むことを要旨とする。
【0007】
これによれば、紫外線硬化性を有するインクを必要かつ正確に微少な分量にして、正確な位置つまりポケット部に液滴吐出させるので、微細で様々な形状のゲルを精度良く形成することができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかるゲル製造方法において、前記基材は、透光性を有することが好ましい。
【0009】
これによれば、照射される紫外線が、固化される紫外線硬化性を有するインクに到達する前に、基材に到達する位置関係で、陰になる位置関係であったとしても、基材が透光性を有していれば、固化される紫外線硬化性を有するインクへの紫外線の照射バラツキを生じさせることなく、均質な形状のゲルを得ることができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかるゲル製造方法において、前記基材の前記ポケット部は、撥液性を有することが好ましい。
【0011】
これによれば、基材のポケット部が、撥液性を有することにより、基材のポケット部に、固化されたインクであるゲルが濡れ広がって大きな面積で接触させることがなく、ゲルが基材のポケット部に弾かれて小さい面積で接触させるので、基材のポケット部から、ゲルを取り外すことを容易にすることができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例にかかるゲル製造方法において、前記基材の熱膨張率と、固化された前記インクの熱膨張率とは、相違していることが好ましい。
【0013】
これによれば、ゲルを取り外すときに、基材を加熱または冷却することで、基材と、固化されたインクであるゲルとを、膨張または収縮させることで差違を発生させることにより、基材のポケット部とゲルとの接触を解除させるように作用し、基材のポケット部からゲルを取り外すことを容易にすることができる。
【0014】
[適用例5]上記適用例にかかるゲル製造方法において、前記基材は、弾性を有することを要旨とする。
【0015】
これによれば、ゲルは自重が超軽量なため、基材にわずかに接触することで吸着されてしまって、基材のポケット部からの取外しが困難であっても、基材が弾性を有していれば、基材を変形させて、基材のポケット部からゲルを取り外すことを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態のゲル製造方法により形成されるゲルを示す概略斜視図。
【図2】第1実施形態のゲル製造方法を示すフローチャート。
【図3】第1実施形態のゲル製造方法を示す概略工程図。
【図4】第1実施形態のゲル製造方法に用いる基材の概略平面図。
【図5】変形例1の取外し工程を示す概略工程図。
【図6】変形例2の取外し工程を示す概略工程図。
【図7】第2実施形態のゲル製造方法を示す概略工程図。
【図8】ゲルの様々な形状を示す概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について、図1から図4を参照して説明する。
【0018】
まず、本実施形態のゲル製造方法により形成されるゲルについて説明する。
図1(a)に示すように、ゲル1は、弾性を有した立方体形状をしている。図1(b)に示すように、ゲル1は、弾性を有した円柱形状をしている。図1(c)に示すように、ゲル1は、弾性を有した楕円柱形状をしている。
【0019】
次に、本実施形態のゲル製造方法について説明する。
図2に示すように、本実施形態のゲル製造方法は、液滴吐出工程(S101)と、固化工程(S102)と、取外し工程(S103)とを含む。図3は、それぞれの工程の概略を示している。
【0020】
図3(a)に示すように、液滴吐出工程(S101)を実施する。具体的には、吐出ノズル60から、基材10に形成されたポケット部11に向けて、インク2を液滴吐出する。
【0021】
図4(a)、(b)、および(c)は、図3で示したポケット部11が形成された基材10の平面図である。図4(a)であれば、図1(a)に示すように立方体形状のゲル1を形成する。図4(b)であれば、図1(b)に示すように円柱形状のゲル1を形成する。図4(c)であれば、図1(c)に示すように楕円柱形状のゲル1を形成する。
【0022】
インク2は、紫外線硬化性を有する。インク2は、有機物または無機物の微粒子を含有していても良い。
【0023】
基材10は、透光性を有し、たとえばガラス、アクリル樹脂などである。そして、基材10は、弾性を有し、フィルム状である。基材10の熱膨張率と、固化されたインク2、つまりゲル1の熱膨張率とは、相違する。
【0024】
基材10、とくに基材10のポケット部11は、撥液性を有するように処理されている。基材10のポケット部11は、フォトリソグラフィまたはレーザー加工などの方法により、精度良く形成されている。
【0025】
図3(b)に示すように、固化工程(S102)を実施する。具体的には、ポケット部11に液滴吐出されたインク2に、メタルハライドタイプまたはLED(Light Emitting Diode)タイプの紫外線照射装置を用いて紫外線を照射することで、インク2が固化されてゲル1になる。照射時間、紫外線の波長などは適宜決定することができる。
【0026】
図3(c)に示すように、取外し工程(S103)を実施する。具体的には、固化されたインク2であるゲル1をポケット部11から取り外す。たとえば、基材10のポケット部11を、下方に向けることにより、固化されたインク2であるゲル1を自然落下させる。または、吸引することにより、固化されたインク2であるゲル1をポケット部11から取り外す。あるいは、基材10に振動を加えることにより、固化されたインク2であるゲル1をポケット部11から取り外すとしてもよい。さらには、自然落下、吸引、または振動を、2つ以上組み合わせてもよい。
【0027】
そして、液滴吐出工程(S101)、固化工程(S102)、および取外し工程(S103)を同一装置内で構成し、ポケット部11が形成された基材10を、ベルトコンベアータイプ、または搬送ロボットなどにより、装置内を移動させる。
このようにして、図1に示す形状のゲル1を形成する。
【0028】
本実施形態によれば、紫外線硬化性を有するインク2を必要かつ正確に微少な分量にして、正確な位置つまりポケット部11に液滴吐出させるので、微細で様々な形状のゲル1を精度良く形成することができる。
【0029】
そして、照射される紫外線が、固化される紫外線硬化性を有するインク2に到達する前に、基材10に到達する位置関係で、陰になる位置関係であったとしても、基材10が透光性を有していれば、固化される紫外線硬化性を有するインク2への紫外線の照射バラツキを生じさせることなく、均質な形状のゲル1を得ることができる。
【0030】
また、基材10のポケット部11が、撥液性を有することにより、基材10のポケット部11に、固化されたインク2であるゲル1が濡れ広がって大きな面積で接触させることがなく、ゲル1が基材10のポケット部11に弾かれて小さい面積で接触させるので、基材10のポケット部11から、ゲル1を取り外すことを容易にすることができる。
【0031】
以下、第1実施形態における取外し工程(S103)に関する変形例を記載する。液滴吐出工程(S101)および固化工程(S102)は、第1実施形態と同様に実施する。
変形例1および変形例2は、図5(a)および(b)に示すように、基材10のポケット部11の外形寸法nに比べて、ポケット部11の開口部寸法mが小さい場合の一例を示す。
【0032】
(変形例1)
液滴吐出工程(S101)および固化工程(S102)の後に、変形例1の取外し工程(S103)を実施する。具体的には、図5(c)に示すように、加熱装置50を用いて基材10を加熱する。たとえば、基材10の熱膨張率が、固化されたインク2であるゲル1の熱膨張率に比べて大きい場合、熱膨張率に相違があることにより、基材10を加熱することで、外形寸法nおよび開口部寸法mが、ゲル1の大きさに比べて大きくなり、図5(c)に示すように、外形寸法N(N>n)および開口部寸法M(M>m)となる。これにより、基材10と固化されたインク2であるゲル1とに、膨張の度合いの差違を発生させる。これにより、基材10のポケット部11とゲル1との接触を解除させるように作用する。
【0033】
このようにして、固化されたインク2であるゲル1をポケット部11から取り外して、球体形状のゲル1を得る。
【0034】
ここで、加熱装置50を用いて基材10を加熱するとしたが、これに限るものではなく、加熱装置50の代わりに、冷却装置を用いて基材10を冷却することで、基材10と固化されたインク2であるゲル1とに収縮の度合いの差違を発生させ、基材10のポケット部11とゲル1との接触を解除させるとしてもよい。これは、基材10の熱膨張率と、固化されたインク2、つまりゲル1の熱膨張率との大小関係により、適宜選択することができる。
【0035】
このように、ゲル1を取り外すときに、基材10を加熱または冷却することで、基材10と、固化されたインク2であるゲル1とを、膨張または収縮させることで差違を発生させることにより、基材10のポケット部11とゲル1との接触を解除させるように作用し、基材10のポケット部11からゲル1を取り外すことを容易にすることができる。
【0036】
(変形例2)
液滴吐出工程(S101)および固化工程(S102)の後に、変形例2の取外し工程(S103)を実施する。具体的には、図6に示すように、基材10を湾曲させることより、基材10のポケット部11の開口部寸法m(図5参照)を大きくさせ、開口部寸法M(M>m)に広げることで、ポケット部11を広げる。基材10のポケット部11とゲル1との接触を解除させる。
【0037】
このようにして、固化されたインク2であるゲル1をポケット部11から取り外して、球体形状のゲル1を得る。
【0038】
このように、ゲル1は自重が超軽量なため、基材10にわずかに接触することで吸着されてしまって、基材10のポケット部11からの取外しが困難であっても、基材10が弾性を有していれば、基材10を変形させて、基材10のポケット部11からゲル1を取り外すことを容易にすることができる。
【0039】
変形例1および変形例2によれば、基材10のポケット部11の外形寸法nに比べて、ポケット部11の開口部寸法mが小さい場合でも、ポケット部11からゲル1を取り外すことを、容易にさせることを可能とする。また、外形寸法nに比べて、開口部寸法mが大きいまたは等しい場合においても、ポケット部11からゲル1を取り外すことを、容易にさせることを可能とする。
【0040】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、図7、図2、および図1を参照して説明する。
第2実施形態のゲル製造方法は、図2に示した第1実施形態と同様であるが、基材10の形態および利用方法(流動方法)が相違する。このため、同様の構成については、同一の符号を付与し、構成の説明を省略する。
【0041】
図7に示すように、ポケット部11が形成された基材10を回転させる形態で利用する。基材10を矢印の方向(時計回り)に回転されることにより、ポケット部11を回転移動させる。ポケット部11が回転移動された位置A、B、およびCにおいて、液滴吐出工程(S101)と、固化工程(S102)と、取外し工程(S103)とを、順次実施する。このようにして、図1に示す形状のゲル1を形成する。
【0042】
本実施形態によれば、ベルトコンベアーまたは搬送ロボットを用いることなく、ポケット部11が形成された基材10を回転させる構成にすることで、上述の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
上述のゲル製造方法により形成されるゲルは、医薬品、化粧品、農薬、生体材料解析、さらには再生医療など幅広い分野で、好適に利用することができる。
【0044】
なお、上記課題の少なくとも一部を解決できる範囲での変形、改良などは前述の実施形態に含まれるものである。
【0045】
たとえば、照射される紫外線が、固化される紫外線硬化性を有するインク2に到達する前に、基材10に到達する位置関係で、陰になる位置関係でなければ、固化される紫外線硬化性を有するインク2への紫外線の照射バラツキを生じさせることなく、均質な形状のゲル1を得ることができるので、透光性を有していなくてもよい。
【0046】
上述の実施形態において、基材10のポケット部11は、撥液性を有するとして説明したが、これに限定されるものではなく、液滴吐出工程(S101)または固化工程(S102)において、基材10のポケット部11とゲル1とが接触する面積が小さくなるように作用すれば、基材10のポケット部11が、親液性を有していてもよい。
【0047】
上述の実施形態において、基材10は、固化されたインク2、つまりゲル1に比べ、熱膨張率が大きいとして説明したが、これに限定されるものではなく、液滴吐出工程(S101)または固化工程(S102)において、基材10のポケット部11とゲル1との接触を解除させるように作用すれば、基材10と、固化されたインク2であるゲル1との熱膨張率の大小関係は、いずれであってもよく、同一の熱膨張率であってもよい。
【0048】
上述の実施形態において、基材10は、弾性を有するとして説明したが、これに限定されるものではなく、ゲル1の自重が超軽量であっても、基材10のポケット部11からの取外しが容易であれば、基材10が弾性を有していなくてもよい。
【0049】
上述の実施形態により形成されるゲル1の形状は、図1に示した形状、および球体形状に限定されるものではなく、たとえば図8(a)に示すような三角柱、図8(b)に示すような角錐、図8(c)に示すような多面体のほか、円錐、星型、あるいは球体の表面に突起を有する形状など様々な形状のゲル1を形成することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…ゲル、2…インク、10…基材、11…ポケット部、50…加熱装置、60…吐出ノズル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線硬化性を有するインクを基材に形成されたポケット部に液滴吐出する液滴吐出工程と、
前記ポケット部に液滴吐出された前記インクに紫外線を照射して固化する固化工程と、
固化された前記インクを前記ポケット部から取り外す取外し工程とを含むことを特徴とするゲル製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のゲル製造方法において、
前記基材は、透光性を有することを特徴とするゲル製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のゲル製造方法において、
前記基材の前記ポケット部は、撥液性を有することを特徴とするゲル製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のゲル製造方法において、
前記基材の熱膨張率と、固化された前記インクの熱膨張率とは、相違していることを特徴とするゲル製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のゲル製造方法において、
前記基材は、弾性を有することを特徴とするゲル製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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