説明

ゲームプログラム、及びゲームシステム

【課題】ノンプレイヤキャラクタの移動を自然に見せつつ、ゲームの仮想空間において移動開始位置から目標位置までの距離が大きくなっても、その間の経路探索に係る処理負荷の増大を抑制することができる、ゲームプログラムを提供する。
【解決手段】
ゲームプログラムは、ゲーム装置を、敵NPCの移動開始位置と目標位置とから探索領域において敵NPCの経由候補点の配置を決定する探索領域設定部45、決定した経由候補点に基づき、移動開始位置から目標位置までの経路を選択する経路探索部44、および選択された経路にしたがって、敵NPCを移動させるキャラクタ動作制御部42、として機能させる。探索領域設定部45は、探索領域の所定領域に配される経由候補点の間隔よりも、外周領域に配される経由候補点の間隔の方が大きくなるように、保持する第1探索経路情報および第2探索経路情報を用いて経由候補点の配置を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノンプレイヤキャラクの移動開始位置から目標位置までの経路探索を行うゲームプログラム、及びゲームシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のゲームでは、プレイヤが操作するプレイヤキャラクタ(これ以降、PCと称する)が存在する仮想空間において、このPCが行動できる範囲を、障害物または透明な壁などで制限していた。また、遠景は舞台の書き割りのように描かれた絵により表現し、PCはその遠景に描かれた空間には移動することができなかった。このため、プレイヤは、ゲーム体験上、閉塞感を抱くことがあった。
【0003】
しかしながら近年では、ゲーム装置の有するハードウェアの性能向上やプログラム技術の進歩に伴い、より広く設計された仮想空間の世界を、PCがシームレスに移動可能なゲームも提供されるようになってきている。このように設計された仮想空間は一般に「オープンワールド」と称される。
【0004】
オープンワールドを採用したゲームでは、プレイヤからの移動操作に応じて、仮想空間を形成する地形データなどを随時読み込んで表示している。また、PCが移動可能な仮想空間は、従来のオープンワールドではないゲームにて1回のロードデータにより表現し得る仮想空間よりも格段に広くなっている。そして、この広い仮想空間を、マップの切り替えやデータロードに伴う画面の静止や暗転を行うことなくシームレスに表現している。このため、オープンワールドに設計された仮想空間全体のデータ量は、従来のオープンワールドではないゲームにてロードされる仮想空間のデータ量よりも、格段に大きくなる。そこで、オープンワールドの仮想空間については、PCの移動に伴ってその周辺領域に関してのみ地形データをロードし、この周辺領域に関してのみ、仮想カメラによって撮影された仮想空間の二次元画像を表示させるなどして、データの処理量を低減する工夫をしている。
【0005】
ところで、オープンワールドのゲームでは、PCの周辺領域以外であっても、すなわち仮想カメラによる撮影範囲外であってPCが直接関与していない仮想空間においても、プレイヤが操作しないノンプレイヤキャラクタ(これ以降、NPCと称する)を自立して行動させることができる。例えば、PCの周辺領域以外の仮想空間に存在するNPCがPCを目指して移動するようにゲームを設計することができる。
【0006】
このようにNPCがPCを目指して移動する場合、これらNPC及びPCが含まれる探索領域を設定し、目標位置(PCの位置)までの経路探索を行い、この探索結果にしたがってNPCは移動することとなる。このように経路探索を行って移動開始位置から目標位置までNPCを移動させる技術としては、例えば、特許文献1および特許文献2などが挙げられる。
【0007】
すなわち、特許文献1では、NPCの移動をより自然に見せるためにメッシュデータなどの経由地点(経由候補位置)に関する情報を用いて、所定のアルゴリズムにより経路を探索し、決定することができるプログラムが開示されている。また、特許文献2には、予め記憶されているルートの中から、現在位置および目的位置に応じて最短ルートを選択することができるゲーム装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−68872号公報
【特許文献2】特許第3520069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
通常、ゲームの仮想空間において経路探索を行う場合、移動開始位置から目標位置までの距離が遠くなればなるほど探索に係る処理負荷が増大する。特に、上述したオープンワールドのゲームでは、NPCが移動可能な仮想空間が広く、移動開始位置から目標位置までの距離が大きくなり得るため、探索に係るコンピュータの処理負荷の増大は顕著となり、ゲームを製作するにあたり大きな問題となる。これは、上述した特許文献1,2に記載の発明においても同様であり、仮想空間において移動開始位置から目標位置までの距離が大きくなるにつれ、経路の探索に係る処理負荷が増大するという問題が生じる。また、プレイヤがゲーム画面上で見てNPCの動きに不自然さを感じないようにするためには、NPCが経由可能な経由候補位置に関して細かく設定する必要があるが、設定される経由候補位置の増大は経路探索に係る処理負荷をますます増大させてしまう。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ノンプレイヤキャラクタの移動を自然に見せつつ、ゲームの仮想空間において移動開始位置から目標位置までの距離が大きくなっても、その間の経路探索に係る処理負荷の増大を抑制することができる、ゲームプログラム、及びコンピュータ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るゲームプログラムは、上記した課題を解決するために、コンピュータを、仮想のゲーム空間内において、ゲームプレイヤが操作しないノンプレイヤキャラクタの移動開始位置と該ノンプレイヤキャラクタの移動の目標位置とから、探索領域においてノンプレイヤキャラクタが経由可能な経由候補位置の配置を決定する決定手段、前記決定手段によって配置を決定した経由候補位置に基づき、前記移動開始位置から前記目標位置までの経路を選択する経路選択手段、および前記経路選択手段によって選択された経路にしたがって、前記ノンプレイヤキャラクタを前記目標位置に移動させるキャラクタ制御手段、として機能させるためのゲームプログラムであって、前記決定手段は、記憶部から前記仮想ゲーム空間に対応した複数の経由候補位置の情報である探索経路情報を読み出し、この探索経路情報に基づいて、前記探索領域の所定範囲に配される経由候補位置の間隔よりも、前記所定範囲外に配される経由候補位置の間隔の方が大きくなるように、前記探索領域の経由候補位置の配置を決定する。
【0012】
上述のように本発明に係るゲームプログラムでは、コンピュータを前記決定手段、前記経路選択手段、前記キャラクタ制御手段として機能させることができるため、ノンプレイヤキャラクタを現在位置から目標位置まで適切な経路で移動させることができる。
【0013】
さらにまた、前記探索経路情報に基づき決定手段により決定される経由候補位置の配置では、所定範囲外の方が所定範囲内よりも各経由候補位置の間隔が大きくなる。このため、所定範囲外では、ノンプレイヤキャラクタを移動させる経路を選択する際(経路探索時)に考慮すべき経由候補位置の数(すなわち考慮すべき情報)が、所定範囲内よりも少なくなる。従って、同じスケールでの経路探索に係る処理量を低減することができる。逆に所定範囲内では、各経由公報位置の間隔を小さく、すなわち密にすることができ、ノンプレイヤキャラクタの移動経路をより細かく規定することができる。このため、例えば、自然な描画を要求される範囲を所定範囲と一致させれば、プレイヤは、ノンプレイキャラクタの動きに不自然さを感じることがない。
【0014】
ここで、移動開始位置から目標位置までの距離にかかわらず上記所定範囲をほぼ一定面積とすると、前記距離が大きくなればなるほど、探索領域においてこの所定範囲外の領域が占める割合が大きくなる。そして、この所定範囲外では経路探索時の演算処理量が所定範囲内よりも小さい。したがって、ノンプレイヤキャラクタの移動を自然に見せつつ、ゲームの仮想空間において移動開始位置から目標位置までの距離が大きくなっても、その間の経路探索に係る処理負荷の増大を抑制することができるという効果を奏する。
【0015】
さらには、上記所定範囲をノンプレイヤキャラクタの移動が画面において不自然に見えない範囲で、できるだけ小さく設定すればするほど探索処理に必要なデータ量を低減させることができるため、メモリに記憶させるデータ量を低減させることができる。
【0016】
また、前記所定範囲は、少なくとも仮想的なカメラにより写し出されたゲーム空間の範囲の一部を含んでいる。
【0017】
このため、仮想的なカメラにより写し出されるゲーム空間において、ノンプレイヤキャラクタの移動を所定範囲外よりも設置間隔が小さい経由候補位置により規定することができる。したがって、仮想的なカメラにより写し出された画像において、ノンプレイヤキャラクタが移動する経路をより細かく規定し、より自然な移動態様を表現できる。
【0018】
さらにまた、前記仮想的なカメラにより写し出されたゲーム空間の画像を描画する描画手段をさらに備え、前記ゲーム空間は、少なくとも前記描画手段により精細な画像が形成される第1範囲と、前記描画手段により該第1範囲の画像よりも相対的に粗い画像が形成される第2範囲とに分けられており、前記所定範囲は、前記ゲーム空間の前記第1範囲と一致してもよい。
【0019】
また、本発明に係るゲームプログラムは、前記探索経路情報は、第1探索経路情報と、該第1探索経路情報よりも経由候補位置の間隔が大きい第2探索経路情報とを含でおり、前記決定手段は、前記所定範囲については前記第1探索経路情報を用いて経由候補位置の配置を決定し、前記所定範囲外については前記第2探索経路情報を用いて経由候補位置の配置を決定してもよい。
【0020】
また、本発明に係るゲームシステムは、上記したゲームプログラムを記憶したプログラム記憶部、及び、該プログラム記憶部に記憶されたゲームプログラムを実行するコンピュータ、を備えることを特徴とする。
【0021】
したがって、本発明に係るゲームシステムは、ゲームの仮想空間において移動開始位置から目標位置までの距離が大きくなっても、その間の経路探索に係る処理負荷の増大を抑制することができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0022】
本発明は以上に説明したように構成され、ノンプレイヤキャラクタの移動を自然に見せつつ、ゲームの仮想空間において移動開始位置から目標位置までの距離が大きくなっても、その間の経路探索に係る処理負荷の増大を抑制することができるゲームプログラム及びゲームシステムを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係るゲーム装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
【図2】図1に示すゲーム装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【図3】本実施の形態に係るゲーム空間を周辺描画領域と外周描画領域とに区分けした一例を示す図である。
【図4】本実施の形態に係るゲーム空間の探索領域を所定領域と外周領域とに区分けした一例を示す図である。
【図5】図4に示すゲーム空間の探索領域において経由候補点を設定する一例を示す図である。
【図6】図1に示すゲーム装置における経路探索処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】図4に示すゲーム空間の探索領域において経由候補点を設定する一例を示す図である。
【図8】図4に示すゲーム空間の探索領域において経由候補点を設定する一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態に係るゲームプログラム及びコンピュータ装置について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
本実施の形態に係るゲーム装置(ゲームシステム)1は、ディスク型記録媒体30からゲームプログラム30a及びゲームデータ30bを読み出し、プレイヤにより入力された操作を処理して、その結果として出力を行うことでゲームを実行するものである。
【0026】
本実施形態では、ゲーム装置1により実行されるゲームとしてプレイヤキャラクタがプレイヤからの操作指示に応じて、舞台となるゲーム空間60の世界を自由に動き回り、アイテムを探索したり、ミッションを攻略したりできる、オープンワールドのゲームを例に挙げて説明するものとする。
【0027】
(ゲーム装置)
まず、本実施の形態に係るゲーム装置1について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るゲーム装置(コンピュータ装置)1の要部構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、ゲーム装置1は、その動作を制御するCPU2を備え、このCPU2にはバス3を介してディスクドライブ4、メモリカードスロット5、HDD6、ROM7、及びRAM8が接続されている。
【0028】
ディスクドライブ4には、DVD−ROM等のディスク型記録媒体30が装填される。そしてこのディスク型記録媒体30には、ゲームプログラム30a、及びゲームデータ30bが記憶される。このゲームデータ30bには、ゲームに登場するキャラクタ等を含むゲーム空間60を形成するのに必要な画像データ32と、地形データ33が含まれる。なお、地形データ33はゲーム空間60内を表示するための地形に係る情報(例えば、ゲーム空間中におけるどの領域が舗装道路、砂地、沼地、水辺等であるかを示す情報、障害物等のオブジェクトの配置を示す情報、ゲーム空間中に設定されている座標情報など)と、詳細は後述するが経路探索処理における探索領域69の設定に係る情報とを含む。
【0029】
メモリカードスロット5には、カード型記録媒体31が装填されるようになっており、ゲーム本編の途中経過等のプレイ状況を示すセーブデータを、CPU2からの指示に応じて記録することができる。
【0030】
HDD6は、ゲーム装置1が内蔵する大容量記録媒体であって、ディスク型記録媒体30から読み込んだゲームプログラム30a及びゲームデータ30b、ゲームの進行経過を記録したセーブデータ等を記録しておくことができる。
【0031】
ROM7は、マスクROM又はPROMなどの半導体メモリであり、ゲーム装置1を起動する起動プログラムや、ディスク型記録媒体30が装填されたときの動作を制御するプログラムなどを記録する。
【0032】
RAM8は、DRAM又はSRAMなどから成り、CPU2が実行するべきゲームプログラム30a、及びその実行の際に必要になるゲームデータ30bなどを、ゲームのプレイ状況に応じてディスク型記録媒体30又はHDD6から読み込んで一時的に記録する。例えば、本ゲームのディスク型記録媒体30がディスクドライブ4に装填されると、CPU2は、ゲームプログラム30a及びゲームデータ30bをRAM8に読み込み、本ゲームのタイトルが表記されたタイトル画面またはメニュー画面などの表示を行うように制御する。そして、このメニュー画面などの表示に基づきプレイヤがコントローラ18を操作してゲームの開始を指示すると、CPU2が該指示に応じてゲームプログラム30a、ゲームデータ30bを実行しゲームが開始する。
【0033】
さらにまた、CPU2にはバス3を介してグラフィック処理部11、オーディオ合成部14、無線通信制御部17、及びネットワークインタフェース19が接続されている。
【0034】
グラフィック処理部11は、CPU2の指示に従って各場面に応じたゲーム空間60や該ゲーム空間60でのキャラクタ等の動作などを含むゲーム画像を描画する。グラフィック処理部11にはビデオ変換部12を介して外部のモニタ13が接続されており、グラフィック処理部11は、描画したゲーム画像の画像データ(ゲーム画像データ)をビデオ変換部12に出力する。
【0035】
ビデオ変換部12は、グラフィック処理部11からゲーム画像データを受け取ると、このゲーム画像データをモニタ13に表示可能な動画形式に変換する。
【0036】
オーディオ合成部14は、CPU2の指示に従ってデジタルのゲーム音声を再生及び合成する。また、オーディオ合成部14にはオーディオ変換部15を介してスピーカ16が接続されている。従って、オーディオ合成部14にて再生及び合成されたゲーム音声は、オーディオ変換部15にてアナログ形式にデコードされ、更にスピーカ16から外部へ出力される。
【0037】
無線通信制御部17は、例えば、2.4GHz帯の無線通信モジュールを有しており、該無線通信モジュールによりゲーム装置1とそれに付属するコントローラ18との間で無線による接続を確立する。そして、接続を確立すると、無線通信制御部17は、ゲーム装置1とコントローラ18との間でデータの送受信を行う。プレイヤは、コントローラ18に設けられたボタン等の操作子(図示せず)を操作することにより、ゲーム装置1へ信号を入力する。そして、この入力された信号によりモニタ13に表示されるプレイヤキャラクタの動作を制御する。
【0038】
ネットワークインタフェース19は、インターネットやLANなどの通信ネットワーク20に対してゲーム装置1を接続し、他のゲーム装置1との間でクライアント・サーバ方式又はピア・ツー・ピア方式による通信を行う。そして、ゲーム装置1を、通信ネットワーク20を介して他のゲーム装置1と接続し、互いにデータを送受信することにより、同一のゲーム空間60内で同期して各プレイヤキャラクタを動作させることができ、複数人が共同してゲームを進行させるマルチプレイが可能になる。
【0039】
(ゲーム装置の機能的な構成)
次に、ゲーム装置1に係る機能的な構成について図2を参照して説明する。図2は、図1に示すゲーム装置1の機能的な構成の一例を示すブロック図である。なお、図2では、以下で行う説明上必要な、RAM8に読み込んだゲームプログラム30aを実行することでCPU2により実現できる機能と、該機能に直接かかわるハードウェア要素(グラフィック処理部11、無線通信制御部17)についてのみ記載しており、他の構成要素は省略している。
【0040】
図2に示すように、ゲーム装置1は、機能的な構成として、仮想ゲーム空間生成部41、キャラクタ動作制御部(キャラクタ制御手段)42、ゲーム進行制御部43、経路探索部(経路選択手段)44、および探索領域設定部(決定手段)45を備える。なお、このような各機能は、上述したように、CPU2がディスク型記録媒体30からゲームプログラム30aをRAM8に読み出し、実行することで実現できる。
【0041】
仮想ゲーム空間生成部41は、グラフィック処理部11を制御して、プレイヤキャラクタが行動するゲーム空間60を描画するためのゲーム画像データを、適宜、ゲームデータ30bの画像データ32および地形データ33を用いて生成する。なお、仮想ゲーム空間生成部41によるゲーム空間50の描画処理に関する詳細は後述する。
【0042】
キャラクタ動作制御部42は、プレイヤによるコントローラ18からの入力信号に応じて、又はゲームの進行状況に応じて、ゲーム空間60におけるキャラクタ等の動作に関する制御情報を生成する。例えば、本実施形態のゲームでは、敵ノンプレイヤキャラクタ(敵NPC)51がPC50に向かって移動するように設定されている(図4参照)。そこで、キャラクタ動作制御部42は、PC50のゲーム空間60における位置に応じて、敵NPC51がPC50に向かって移動するための制御情報を生成する。なお、敵NPC51がPC50に向かって移動する際の移動経路の決定は、後述する経路探索部44および探索領域設定部45による経路探索処理結果に基づき行う。
【0043】
キャラクタ動作制御部42は制御情報を生成すると、この制御情報をグラフィック処理部11に出力する。グラフィック処理部11は、キャラクタ動作制御部42から受け取った制御情報と、仮想ゲーム空間生成部41からの指示とに応じてゲーム画像データに基づく描画を行う。なお、キャラクタ動作制御部42は、無線通信制御部17を介して、コントローラ18からの入力信号を受け取り、また、後述するゲーム進行制御部43からゲームの進行状況に関する情報を受け取る。
【0044】
ゲーム進行制御部43は、ゲームデータ30bの地形データ33およびゲームプログラム30aを参照してPC50等のキャラクタのゲーム空間60における位置を記録する。さらにまた、ゲーム進行制御部43は、PC50の行動およびゲーム空間60における位置等に応じて、新たなキャラクタの出現タイミング、およびその種類を決定し、イベント、またはミッション等の発生タイミング、およびその種類を決定する。さらにまた、ゲーム進行制御部43は、ゲームの進行状況を管理し、プレイヤからのゲーム中断指示を、無線通信制御部17を通じて受信すると、現時点までのゲームの経過情報をセーブデータとしてHDD6またはカード型記録媒体31に記憶する。
【0045】
経路探索部44は、キャラクタ動作制御部42からの指示に応じて、ゲーム空間60内にある敵NPC51をPC50に向かって移動させるための移動経路を探索する。経路探索部44は、ゲーム進行制御部43から、PC50のゲーム空間60における現在位置を示す情報と、移動させる敵NPC51のゲーム空間60における現在位置を示す情報を受け取る。そして、この受け取ったそれぞれの現在位置を示す情報と、後述する探索領域設定部45から受信した探索領域情報とに基づき敵NPC51のPC50までの移動経路を求める。そして、経路探索部44は、求めた移動経路を探索処理結果としてキャラクタ動作制御部42に出力する。
【0046】
探索領域設定部45は、経路探索部44からの指示に応じて、ゲーム空間60の探索領域69中に経由候補位置を示すノードを配した探索領域情報を生成する。なお、この探索領域情報の生成に関する詳細な説明は後述する。
【0047】
(描画処理)
次に、図3を参照して、ゲーム装置1が備える仮想ゲーム空間生成部41によるゲーム画面の描画処理に関する概要を説明する。図3は、本実施の形態に係るゲーム空間60を周辺描画領域61と外周描画領域62とに区分けした一例を示す図である。
【0048】
本実施の形態に係るゲームでは、図3に示すように、ゲーム空間60全体をPC50の現在位置を含む周辺描画領域(第1範囲)61と、該周辺描画領域61の外周に位置する領域である外周描画領域(第2範囲)62とに分けている。
【0049】
本実施の形態において、この周辺描画領域61は、PC50の周囲の3次元空間や該3次元空間中に配されるオブジェクト等を精細に描画する領域である。一方、外周描画領域62は、周辺描画領域61外に配されるオブジェクト等やそのオブジェクト等が存在する3次元空間を粗く描画する領域である。
【0050】
そして、実際のゲーム実行画面では、PC50の視線方向に見た周辺描画領域61に含まれるオブジェクト、および該オブジェクトが存在する3次元空間を、精細に描画した2次元画像として表示する。一方、PC50の視線方向に見た外周描画領域62は、周辺描画領域61よりも粗く描画された2次元画像として表示する。
【0051】
すなわち、外周描画領域62にあるオブジェクト等はPC50(または、仮想カメラ)から見て周辺描画領域61にあるオブジェクト等よりも遠くにあるため、小さく描画される。このため、外周描画領域62にあるオブジェクト等を精細に描いた場合と粗く描いた場合とを比較しても、モニタ13を通じてプレイヤが視認できる情報量に大差がない。そこで、外周描画領域62にあるオブジェクト等については周辺描画領域61よりも粗く描画して描画に係るデータ量を削減するように設計されている。
【0052】
より具体的には、仮想ゲーム空間生成部41は、以下のようにして外周描画領域62におけるオブジェクト等の描画を行う。例えば、描画対象を3Dゲームに登場するキャラクタとした場合、該キャラクタは実在の人間のようにその内部に骨を仕込み、アクション時はこの骨を動かし、外皮頂点を変形させるように描画している。外周描画領域62にいるキャラクタについてはこの骨数を削減し、キャラクタの動きに対応する描画情報を低減させる。もしくは、つま先など体の一部であって遠方からは視認することが困難な部位などは描画しないように設定されていてもよい。
【0053】
なお、本実施の形態に係るゲーム装置1では、仮想ゲーム空間生成部41がゲーム空間60を描画するために必要な画像データ32および地形データ33などを随時読み込み、上述した周辺描画領域61と外周描画領域62とにおいて異なる精細さで描画されたゲーム画像を表示する。
【0054】
ここで、この周辺描画領域61と外周描画領域62との境界は、ゲーム空間60におけるPC50の現在位置からの一定範囲となるように決められていてもよい。あるいは、PC50が位置する地形、PC50が存在するゲーム空間60を映し出す仮想カメラの立脚点または注視点等に応じてその境界が決められるように設定されていてもよい。
【0055】
例えば、地上と水中では当然、視界は異なるものとなるため、PC50がいる位置が水中の場合は、この周辺描画領域61の範囲を地上よりも小さくする。また、例えば、仮想カメラの立脚点が崖などの標高の高い位置にあり、地上にいる場合よりも遠方まで見渡すことができる場合は、周辺描画領域61の範囲を地上よりも大きくする。また、例えば、仮想カメラの注視点位置(焦点位置)に重要でかつ強調したい情報がある場合は、注視点がある近傍の描画を精細とするように、周辺描画領域61の一部を広げてもよい。
【0056】
周辺描画領域61と外周描画領域62との境界を、PC50が位置する地形、仮想カメラの立脚点または注視点等に応じて決めるように設定されている方が、PC50を取り巻く環境に応じて適切な精細度(または、解像度)で描画することができるため好適である。
【0057】
なお、上述した周辺描画領域61の範囲および外周描画領域62の範囲の決定は仮想ゲーム空間生成部41が行う。また、ゲームデータ30bには、予め、精細な描画用のゲーム画像データと粗い描画用のゲーム画像データが用意されている。そして、仮想ゲーム空間生成部41は、決定した周辺描画領域61の範囲、外周描画領域62の範囲に応じて、精細な描画用のゲーム画像データを利用するのか、あるいは粗い描画用のゲーム画像データを利用するのかを、グラフィック処理部11に指示する。
【0058】
上述のようにゲームデータ30bに精細な描画用の画像データ32と粗い描画用の画像データ32とが用意され、描画する範囲に応じてこれらを使い分ける構成であったがこれに限定されるものではない。例えば、ゲームデータ30bには精細な描画用の画像データ32のみが記録されており、この画像データ32から粗い描画用の画像データ32を仮想ゲーム空間生成部41が生成する構成であってもよい。
【0059】
また、本実施の形態に係るゲームでは、ゲーム空間60を周辺描画領域61と外周描画領域62との2つの領域に分ける構成であるが、分ける領域はこの2つの限定されるものではない。例えば、描画する精細さを複数段階に分け、それぞれの段階に応じた領域を設ける構成であってもよい。
【0060】
また、本実施形態では、外周描画領域62内に1つの周辺描画領域61が存在する例を示しているがこれに限定されない。例えば、周辺描画領域61は、外周描画領域62内に複数あってもよい。
【0061】
(経路探索処理)
次に、敵NPC51がPC50に向かって移動する場合における、敵NPC51の移動に係る経路探索処理について説明する。本実施の形態に係るゲームでは、ゲームの進行状態に応じて、キャラクタ動作制御部42がゲーム空間60に存在する敵NPC51それぞれについてのPC50までの移動を制御する。キャラクタ動作制御部42は、敵NPC51の移動を制御するにあたり、探索領域69におけるPC50までの移動経路を経路探索部44に求めるように指示する。この指示に応じて経路探索部44が、探索領域69における敵NPC51それぞれのPC50までの移動経路を求める。
【0062】
(探索領域)
まず、ここで図5および図4を参照して本実施形態に係る探索領域69について説明する。図4は、本実施の形態に係るゲーム空間60の探索領域69を所定領域63と外周領域64とに区分けした一例を示す図である。また、図5は、図4に示すゲーム空間60の探索領域69において経由候補点65を設定する一例を示す図である。図5に示す例では、説明の便宜上、移動経路上の経由候補点65を黒丸により強調して表示している。
【0063】
探索領域69は、図4に示すように、PC50の現在地を基準に、PC50の周辺領域である所定領域(所定範囲)63と、該所定領域63外の領域である外周領域(所定範囲外)64とに区分けされる。本実施形態に係るゲームでは、所定領域63を上述した周辺描画領域61に一致させ、探索領域69をゲーム空間60の範囲に一致させている。但し、これに限定されるものではなく、必ずしもこれら両者が一致する必要はない。すなわち、探索領域69は、少なくとも敵NPC51が移動可能なゲーム空間60の範囲に対応していればよく、探索領域69が必ずしもゲーム空間60と一致する必要はない。例えば、敵NPC51がゲーム空間60における陸地の範囲でしか行動ができない場合、探索領域69は、ゲーム空間60における陸地の範囲に限定されてもよい。
【0064】
また、探索領域69では、図5に示すように、敵NPC51が移動する地面または床面などの面に、複数の三角形の格子で構成されるメッシュが設定されている。ただし、探索領域69では図5に示すように障害物領域66a、66bは避けてメッシュが設定される。また、例えば、三角形の格子の各辺の中央位置を、移動経路を設定する上での敵NPC51の経由候補点(ノード)65とする。
【0065】
探索領域69では所定領域63よりも外周領域64の方が、経由候補位置の配置を規定する各格子(メッシュの目)の大きさが大きくなるように設定される。つまり、ゲームデータ30bの地形データ33には、経路探索処理における探索領域69の設定に係る情報が含まれている。この探索領域69の設定に係る情報は、具体的には各メッシュの目の大きさがより小さい精細なメッシュについての情報(第1経由候補位置マップ情報)と、各メッシュの目の大きさがより大きい粗いメッシュについての情報(第2経由候補位置マップ情報)とを含んでいる。そこで、ゲーム装置1では、探索領域設定部45が、第1経由候補位置マップ情報を利用して、所定領域63に精細なメッシュの設定を行い、第2経由候補位置マップ情報を利用して、外周領域64に粗いメッシュの設定を行う。本実施形態では、第1経由候補位置マップ情報の範囲は、所定領域63であるのに対して第2経由候補位置マップ情報の範囲は、所定領域63および外周領域64を含む探索領域69全体となる。
【0066】
なお、本実施形態では、後述するように、第2経由候補位置マップ情報利用して所定領域63および外周領域64に粗いメッシュの設定を行っているが、実際は所定領域63内では粗いメッシュで求めた移動経路にしたがって敵NPC51の移動は行われない。したがって、第2経由候補位置マップ情報を利用して、外周領域64に粗いメッシュの設定を行うことと実質的に同一となる。
【0067】
このように、所定領域63と外周領域64とでは各格子の大きさが異なるメッシュが設定される。このため、同一距離を敵NPC51が進むとしても、外周領域64を進む場合の方が所定領域63を進む場合よりも、考慮すべき経由候補点65の数を大きく削減できる。
【0068】
(経路探索処理の処理フロー)
次に、図6を参照して敵NPC51がPC50へ向かう際の移動経路を決定する経路探索処理の処理フローについて説明する。この経路探索処理は、本実施形態では経路探索部44および探索領域設定部45によって実行される。図6は、図1に示すゲーム装置1における経路探索処理の一例を示すフローチャートである。なお、説明の便宜上、移動する敵NPC51は1体であるものとするが、実際のゲームでは移動する敵NPC51はこの1体に限定されるものではなく複数体であってもよい。図6に示す経路探索処理は、例えば毎フレーム実行される。例えば、60fpsのフレームレートで描画の更新が行なわれる場合では1/60秒ごとに経路探索処理を実行することとなる。
【0069】
まず、探索領域設定部45は、経路探索部44からの指示に応じて、探索領域69において求める移動経路の始点67と終点68とを設定する(ステップS11)。より具体的には、探索領域設定部45は、経路探索部44を介してゲーム進行制御部43からPC50および敵NPC51の現在位置に関する情報を受け取る。そして、この受け取った情報に基づき、移動させる敵NPC51の現在位置を始点(移動開始位置)67とし、PC50の位置を終点(目標位置)68として設定する。
【0070】
このように移動経路の始点67と終点68とを設定すると、探索領域設定部45は、探索領域69において、PC50の周辺領域である所定領域63と、この所定領域63外の領域である外周領域64とのそれぞれの範囲について決定する。そして、探索領域設定部45は、所定領域63の範囲に精細なメッシュを、第1経由候補位置マップ情報に基づき設定する。一方、所定領域63および外周領域64の範囲に粗いメッシュを、第2経由候補位置マップ情報に基づいて設定する(ステップS12)。
【0071】
探索領域設定部45は、所定領域63と外周領域64との両者の領域の範囲を決定すると、ゲームデータ30bにおける地形データ33を参照して、探索領域69のうち、障害物領域66a、66bの設定を行う(ステップS13)。この障害物領域66a、66bとは、障害物オブジェクトが配される領域であり敵NPC51が侵入することができない(移動不可の)領域である。図5に示す例では、この障害物領域66a、66bは塗りつぶされた領域として示される。
【0072】
そして、探索領域設定部45は、このように探索領域69に障害物領域66a、66b、および敵NPC51の移動における始点67および終点68を設定するとともに、所定領域63と外周領域64とに区分けした探索領域69の情報(探索領域情報)を経路探索部44に送信する。
【0073】
経路探索部44は、探索領域設定部45から受信した探索領域情報に基づき、敵NPC51の移動経路を求める。すなわち、図5に示す例では、2つの移動不可領域(障害物領域66a、66b)を避けて、近接する経由候補点65を伝いながら始点67から終点68までを最短距離で結ぶ移動経路を求める。本実施形態では、経路探索部44は、A*(エースター)アルゴリズムを利用して移動経路の算出を行う。
【0074】
具体的には、経路探索部44は、始点67から終点68まで、まず粗いメッシュに配置された経由候補点65に基づき、A*アルゴリズムを利用して移動経路を選択する(ステップS14)。次に、経路探索部44は、選択した移動経路において、NPC51が現在、到達している位置に対応する経由候補点65、すなわち現在到達ノードと、次に移動する位置に対応する経由候補点65、すなわち次ノードとが共に所定領域63内にあるか否か判定する(ステップS15)。ここで、両ノードが所定領域63内にある場合(ステップS15において「YES」)、経路探索部44は、終点68までの移動経路を、精細なメッシュに配置された経由候補点65に基づき、A*アルゴリズムを利用して移動経路を再度、設定し、その設定した移動経路に決定する(ステップS16)。一方、ステップS15において「NO」の場合、すなわち、少なくとも現在到達ノードと次ノードとのいずれか一方が所定領域63内に存在しない場合、ステップS14で粗いメッシュを用いて選択した移動経路に決定する(ステップS17)。
【0075】
例えば、外周領域64にある始点67から所定領域63内にある終点68まで移動する場合、経路探索部44は、敵NPC51が外周領域64に存在する間は大きい格子が配された粗いメッシュの経由候補点65を使って大雑把な移動経路を求めておく。そして、敵NPC51が所定領域63内まで移動すると、小さい格子が配された精細なメッシュの経由候補点65を使って細かい移動経路を、再度求める。
【0076】
逆に、例えば、敵NPC51がPC50の近傍を始点とし、外周領域64の任意の点を終点として移動する場合、つまり、敵NPC51がPC50から離れていく動きをする場合は以下のように敵NPC51の移動経路を求める。すなわち、経路探索部44は、まず、現在位置から外周領域64の任意の点まで、まず大きい格子が配された粗いメッシュの経由候補点65を使って大雑把な移動経路を求めておく。そして、敵NPC51が所定領域63内に存在する間は移動経路を小さい格子が配された精細なメッシュの経由候補点65を使って求める。そして、敵NPC51の移動経路における次の経由候補点(次ノード)65が外周領域64に存在する位置まで該敵NPC51が移動すると、事前に粗いメッシュの経由候補点65を使って求めた移動経路を選択して、該移動経路にしたがって移動する。なお、ここでは、外周領域64から所定領域63に敵NPC51が移動する場合、あるいは、逆に所定領域63から外周領域64に移動する場合について説明した。しかしながら、移動経路の途中において、所定領域63を通過するように敵NPC51が移動するような場合であっても、敵NPC51の現在到達ノードを示す経由候補点65と次ノードを示す経由候補点65との位置関係から、所定領域63内では精細なメッシュの経由候補点65を使って移動経路を求めることができる。
【0077】
また、図5に示すように移動経路では所定領域63よりも外周領域64の方が経由候補点65の間隔が大きく、ゲーム空間60において同一距離で考慮すべき経由候補点65の数が所定領域63よりも少ない。このため、外周領域64では所定領域63よりも細かい移動経路の指定はできないため敵NPC51の動きは所定領域63内での動きよりも大雑把なものとなる。しかしながら、外周領域64の範囲は、外周描画領域62の範囲であり敵NPC51の動きが大雑把であってもゲーム画面を視認しているプレイヤ自身は不自然に感じることがないため、描画において問題とならない。
【0078】
一方、周辺描画領域61に対応する所定領域63では経由候補点65は、外周領域64よりも間隔が小さく、敵NPC51の細かい動きを指定することができる。したがって、周辺描画領域61の範囲では敵NPC51は自然な動き(移動態様)でPC50に接近してくるシーンを描画することができる。
【0079】
また、外周領域64では、所定領域63よりも同一距離の移動で考慮すべき経由候補点65の数を低減することができる。このため、所定領域63内の経由候補点65の間隔で全探索領域69を設定した場合よりも経路探索部44による経路探索に係る演算処理量を低減させることができる。
【0080】
なお、探索領域69では、敵NPC51が移動する面を複数の三角形形状の格子で構成し、三角形の各辺の中央位置を、移動経路を設定する上での敵NPC51の経由候補点(ノード)65とする構成であった。しかしながら、経由候補点65の位置は、例えば、三角形の中心点などを経由候補点65としてもよい。また、この経由候補点65は、敵NPC51が始点67から終点68に到達するために移動する必要のある一連の三角形の格子を表すパスであり、敵NPC51は実際には三角形の格子内であればどこに位置してもよい。すなわち、経路探索部44は、同一の格子内ではどの位置からでも他の位置に移動するための情報は予め保持している。例えば、経路探索部44は、経由候補点65から所定の範囲以内に敵NPC51が到達したとき、この経由候補点65に到達したとみなす。そして、この経由候補点65に到達したとみなされると、敵NPC51は移動経路における次の経由候補点65に向かって移動する。さらには、移動する空間が敵NPC51から見てどのように見えるかについての情報を保持していてもよい。このような情報を保持することで格子間の移動をより自然に振舞うようにすることができる。
【0081】
なお、本実施形態では、探索領域69には上述したように、敵NPC51が移動する面には複数の三角形の格子が設定される構成であった。そして、三角形の格子の各辺の中央位置を、移動経路を設定する上での敵NPC51の経由候補点(ノード)65としていた。しかしながら設定される格子の形状はこの三角形に限定されるものではなく、例えば、図7に示すように正方形とし、正方形の格子の各辺の中央位置または正方形における任意の位置を、移動経路を設定する上での敵NPC51の経由候補点(ノード)65としてもよい。この場合、所定領域63内で設定する正方形の格子と、所定領域63および外周領域64(探索領域69全体)で設定する正方形の格子とでは後者の方が、格子の面積が大きくなる。このように、より小さな正方形の格子が配されたメッシュと、より大きな正方形の格子が配されたメッシュとをそれぞれ設定する。そして、各格子の任意の位置に設定した経由候補点65に基づき、上述したようにA*アルゴリズムを利用して移動経路を求めるように構成されていてもよい。
【0082】
また、図8に示すように、第1経由候補位置マップ情報および第2経由候補位置マップ情報として、格子で構成されるメッシュを設定するのではなく探索領域69に直接、経由候補点65を配する構成であってもよい。この場合、所定領域63のみに配される経由候補点65と、該所定領域63および外周領域64、すなわち探索領域69全体に配される経由候補点65とでは、後者の方が経由候補点65間の間隔が大きくなるように各経由候補点(ノード)65が配されたマップが設定される。そして、これら設定された経由候補点65に基づき、例えば、ウエイポイントナビゲーションを用いて移動経路を選択する構成であってもよい。なお、図8では、所定領域63内のみに配される経由候補点65、あるいは探索領域69全体に配される経由候補点65それぞれにおいて、各経由候補点65間の間隔が等間隔となっているがこれに限定されるものではない。
【0083】
例えば、探索領域69に壁等が配されており全方位を見渡すことができない環境に設定されている場合、どの経由候補点65も1以上のノードからみた視野に入るように配置される。このため、各経由候補点65間の間隔が必ずしも等間隔となるとは限らない。ただし、外周領域64における経由候補点65間の間隔の方が所定領域63における経由候補点65間の間隔よりも大きくなるという関係は維持される。図7および図8は、図4に示すゲーム空間60の探索領域69において経由候補点65を設定する一例を示す図である。
【0084】
さらにまた、上記ではゲームプログラム30aには、第1経由候補位置マップ情報と第2経由候補位置マップ情報とを含むものとして説明した。しかしながら、初めからゲームプログラム30aに、これら2種類のマップ情報が記録される構成に限定されない。例えば、ゲームプログラム30aには、第1経由候補位置マップ情報だけが含まれており、ゲーム装置1にてこの第1経由候補位置マップ情報から第2経由候補位置マップ情報を生成する構成であってもよい。例えば、第1経由候補位置マップ情報が三角形または四角形等の複数の格子を配したメッシュ情報である場合、格子を組み合わせてより大きな格子とし、該格子を配したメッシュ情報を第2経由候補位置マップ情報として生成することができる。例えば、第1経由候補位置マップ情報が複数の経由候補点65を配したマップ情報である場合、このマップ情報から経由候補点65を適当に間引いたマップ情報を第2経由候補位置マップ情報として生成することができる。
【0085】
あるいは、ゲームプログラム30aには、2種類の第2経由候補位置マップ情報を含んでおり、ゲーム装置1においてこの2種類の第2経由候補位置マップ情報を組み合わせて第1経由候補位置マップ情報を生成する構成としてもよい。このような構成の場合、生成した第1経由候補位置マップ情報と、2種類の第2経由候補位置マップ情報のうちの一方の情報とを用いて、本実施の形態に係る経路探索処理を実行することができる。
【0086】
また、本実施形態では精細なメッシュを設定する範囲を、所定領域63とし、粗いメッシュを設定する範囲を、所定領域63および外周領域64としているが、これに限定されるものではない。例えば、所定領域63には精細なメッシュが設定され、外周領域64には粗いメッシュが設定され、これら設定された2種類のメッシュを利用して経路探索を行なってもよい。
【0087】
なお、本実施形態のゲームでは、敵NPC51がPC50に接近する例を挙げて、敵NPC51のPC50までの経路探索処理について説明した。PC50に向かって移動するキャラクタは敵NPC51に限定されるものではなく、例えば、PCの仲間となりうるキャラクタなどのNPCであってもよい。
【0088】
また、上記では敵NPC51を1体として経路探索処理について説明したが、当然、敵NPC51は複数体であってもよい。また、敵NPC51が複数体ある場合において、全ての敵NPC51について上述したような経路探索処理を行なってもよいし、このうちのいくつかの敵NPC51だけ上述したような経路探索処理を行なってもよい。例えば、複数の敵NPC51それぞれについて、その能力等に応じてレベルが設定されているとき、レベルの低い敵NPC51については、第1経由候補位置マップ情報と第2経由候補位置マップ情報とを用いた上述した経路探索処理により移動経路を決定する。一方、レベルの高い敵NPC51については、第1経由候補位置マップ情報のみを用いた経路探索処理により移動経路を求めるように構成してもよい。また、敵NPC51の移動目標は、PC50に限定されるものではなくPC50の近傍、もしくは所定領域63の任意の位置であってもよい。
【0089】
あるいは、敵NPC51は、外周領域64の任意の位置に移動しており、その移動経路の途中が所定領域63に含まれる場合であってもよい。このように移動経路の途中が所定領域63に含まれる場合では、経路探索部44は、敵NPC51の現在位置から目標位置まで、まず大きい格子が配されたメッシュの経由候補点65により移動経路の算出を行う。そして、敵NPC51が所定領域63に入ると、経路探索部44は、小さい格子が配されたメッシュの経由候補点65により再度、算出する。つまり、敵NPC51が、PC50の現在位置に応じて移動する例を挙げて経路探索処理について説明したが、敵NPC51はPC50の動きとは無関係にゲーム空間60内を移動するものであってもよい。また、敵NPC51の動作態様によっては、敵NPC51がずっと所定領域63内に存在する場合もあるし、逆に外周領域64に存在する場合もある。
【0090】
例えばPC50が、味方のNPCを護衛する役割であり、敵NPC51が、PC50が護衛するNPCを目指して接近してくるとする。この場合、PC50と護衛対象のNPCとの位置関係によっては、敵NPC51の位置が所定領域63と外周領域64との間を刻々と変化する場合もありうる。このように、敵NPC51の位置が所定領域63と外周領域64との間を刻々と変化する場合であっても、本実施形態では、敵NPC51の移動経路を粗いメッシュを用いて決定するのか、精細なメッシュを用いて決定するのかリアルタイムに適宜対応することができる。
【0091】
また、本実施形態に係るゲームとして、オープンワールドのゲームを想定して敵NPC51のPC50までの経路探索処理について説明した。しかしながら、ゲーム空間60をマップの切り替えやデータロードに伴って画面の静止や暗転を行い表現するようなゲームであっても、本実施形態に係る経路探索処理を利用することができる。ただし、扱うデータ量が大きく、経路探索を行う範囲が広くなるオープンワールドのゲームの方が、本実施形態に係る「経路探索処理」によるメリットをより多く享受できる。
【0092】
なお、本実施形態に係る経路探索処理では、敵NPC51は、2次元平面(例えば地面)を移動してPC50に接近する例を挙げて説明したが、敵NPC51の移動は、3次元空間(例えば、空中または水中)であってもよい。この移動する場所に応じて、障害物領域66a、66bの設定は変化する。また、敵NPCの移動速度に応じて所定領域63、外周領域64に設定するメッシュの目(格子)の大きさを変更する構成であってもよい。なお、敵NPC51が3次元空間を移動する場合、第1経由候補位置マップ情報および第2経由候補位置マップ情報それぞれについて3次元空間に対応したメッシュが作成される。
【0093】
また、上記した「経路探索処理」では、探索領域設定部45は、探索領域69を所定領域63と外周領域64の2つの領域に分離する構成であったが、分離される領域はこの2つに限定されるものではない。さらに外周領域64を細かく分離し、所定領域63からの距離が遠くなればなるほどメッシュの目(格子)の大きさが大きくなるように設定してもよい。
【0094】
また、本実施形態に係る経路探索処理では、図6に示すように、ステップS13において、障害物領域の設定を行なっていた。しかしながら、障害物オブジェクトが配される領域(図6の例では、障害物領域66a、66b)に関する情報が第1経由候補位置マップ情報および第2経由候補位置マップ情報それぞれに予め含まれていてもよい。このように、障害物オブジェクトが配される領域を第1経由候補位置マップ情報および第2経由候補位置マップ情報それぞれが含む場合、ステップS13の処理を省略することができる。なお、障害物オブジェクトが配される領域に関する情報が第1経由候補位置マップ情報および第2経由候補位置マップ情報それぞれに予め含まれている例としては以下のような場合が挙げられる。すなわち、例えば、図8に示すように、第1経由候補位置マップ情報および第2経由候補位置マップ情報として、探索領域69に直接、経由候補点65を配する場合である。この場合、この経由候補点65は、敵NPC51の移動可能な領域を考慮して配される。つまり、この場合、経由候補点65を配する際に、すでに敵NPC51が移動不可な障害物オブジェクトが配される領域についても考慮していることとなる。このため、この場合第1経由候補位置マップ情報および第2経由候補位置マップ情報には、すでに障害物オブジェクトが配される領域情報が含まれていることとなる。
【0095】
また、本実施形態では、図2に機能ブロックとして示す各部(仮想ゲーム空間生成部41、キャラクタ動作制御部42、ゲーム進行制御部43、経路探索部44、および探索領域設定部45)を、CPU2がディスク型記録媒体30からゲームプログラム30aをRAM8に読み出し、実行することで実現していた。
【0096】
しかしながら、ゲームプログラム30aの提供先はこのディスク型記録媒体30に限定されるものではない。例えば、ゲームプログラム30aは、カード型記録媒体31に記録され、このカード型記録媒体31からゲーム装置1に提供される構成であってもよい。
【0097】
あるいは、ゲームデータ30bをサーバ装置21が保持しており、サーバ装置21から通信ネットワーク20を通じてこのゲームデータ30bをゲーム装置1に提供する構成であってもよい。あるいは、ゲームプログラム30aは、HDD6等に予め記憶されていてもよい。
【0098】
また、本実施形態では、図2に機能ブロックとして示す各要素は、上述のようにCPU2によりソフトウェアにより実現されるものとして説明した。しかしながら、これら各要素を予めゲーム装置1が備える場合は、ハードウェアロジックによって構成してもよい。
【0099】
また、本実施例では据え置き型のゲーム装置について説明したが、携帯ゲーム装置、携帯電話機や、パーソナルコンピュータなどのコンピュータについても、本発明を好適に適用することができる。
【0100】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、ゲーム空間において移動開始位置から目標位置までの距離が大きくなるにつれ増大する探索に係る処理負荷を抑制することができるゲームプログラム及びコンピュータ装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0102】
1 ゲーム装置
2 CPU
4 ディスクドライブ
6 HDD
7 ROM
8 RAM
11 グラフィック処理部
12 ビデオ変換部
13 モニタ
17 無線通信制御部
18 コントローラ
19 ネットワークインタフェース
20 通信ネットワーク
21 サーバ装置
30 ディスク型記録媒体
30a ゲームプログラム
30b ゲームデータ
31 カード型記録媒体
32 画像データ
33 地形データ
41 仮想ゲーム空間生成部
42 キャラクタ動作制御部
43 ゲーム進行制御部
44 経路探索部
45 探索領域設定部
50 プレイヤキャラクタ(PC)
51 敵ノンプレイヤキャラクタ(敵NPC)
60 ゲーム空間
61 周辺描画領域
62 外周描画領域
63 所定領域
64 外周領域
66a 障害物領域
66b 障害物領域
67 始点
68 終点
69 探索領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを、
仮想のゲーム空間内において、ゲームプレイヤが操作しないノンプレイヤキャラクタの移動開始位置と該ノンプレイヤキャラクタの移動の目標位置とから、探索領域においてノンプレイヤキャラクタが経由可能な経由候補位置の配置を決定する決定手段、
前記決定手段によって配置を決定した経由候補位置に基づき、前記移動開始位置から前記目標位置までの経路を選択する経路選択手段、および
前記経路選択手段によって選択された経路にしたがって、前記ノンプレイヤキャラクタを前記目標位置に移動させるキャラクタ制御手段、として機能させるためのゲームプログラムであって、
前記決定手段は、記憶部から前記仮想ゲーム空間に対応した複数の経由候補位置の情報である探索経路情報を読み出し、この探索経路情報に基づいて、前記探索領域の所定範囲に配される経由候補位置の間隔よりも、前記所定範囲外に配される経由候補位置の間隔の方が大きくなるように、前記探索領域の経由候補位置の配置を決定する、ゲームプログラム。
【請求項2】
前記所定範囲は、少なくとも仮想的なカメラにより写し出されたゲーム空間の範囲の一部を含むことを特徴とする請求項1に記載のゲームプログラム。
【請求項3】
前記仮想的なカメラにより写し出されたゲーム空間の画像を描画する描画手段をさらに備え、
前記ゲーム空間は、少なくとも前記描画手段により精細な画像が形成される第1範囲と、前記描画手段により該第1範囲の画像よりも相対的に粗い画像が形成される第2範囲とに分けられており、
前記所定範囲は、前記ゲーム空間の前記第1範囲と一致することを特徴とする請求項2に記載のゲームプログラム。
【請求項4】
前記探索経路情報は、第1探索経路情報と、該第1探索経路情報よりも経由候補位置の間隔が大きい第2探索経路情報とを含んでおり、
前記決定手段は、前記所定範囲については前記第1探索経路情報を用いて経由候補位置の配置を決定し、前記所定範囲外については前記第2探索経路情報を用いて経由候補位置の配置を決定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のゲームプログラム。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載のゲームプログラムを記憶したプログラム記憶部、及び、該プログラム記憶部に記憶されたゲームプログラムを実行するコンピュータ、を備えることを特徴とするゲームシステム。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−213485(P2012−213485A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80309(P2011−80309)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000129149)株式会社カプコン (192)
【Fターム(参考)】