説明

コ−クス製造用石炭の嵩密度向上方法

【課題】コークス炉に装入される石炭の輸送ラインにおいて、輸送中の石炭に嵩密度向上剤を添加して石炭の嵩密度を向上させる方法において、嵩密度向上剤による嵩密度向上効果を有効に発揮させて効率的な処理を行う。
【解決手段】粒径3mm以下の粒分が75%以上となるように粉砕された石炭に対して嵩密度向上剤を添加する。粉砕前と粉砕後では石炭の表面積が大きく異なり、粉砕により石炭新生面が発生した表面積の大きい石炭に嵩密度向上剤を添加した方が、効率的に石炭表面へ嵩密度向上剤を混合して作用させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コ−クス製造用石炭の嵩密度向上方法に係り、特に、コークス炉に装入される石炭の輸送ラインにおいて、輸送中の石炭に嵩密度向上剤を添加して石炭の嵩密度を向上させる方法において、嵩密度向上剤による嵩密度向上効果を有効に発揮させて効率的な処理を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼業界の好況に伴う粗鋼生産量の増大につれ、高炉原料の一つであるコ−クスの需要も増加の一途を辿っており、石炭を乾留して製造するコ−クスの生産性向上が求められている。
【0003】
コークスの生産性向上の手段としては、コークス炉へ装入する石炭の嵩密度を向上させて、コークス炉への原料炭の装入量を増大させる方法が挙げられる。
【0004】
従来、コークス製造用石炭の嵩密度向上方法としては、以下のような方法が開発されているが、いずれも十分に満足し得る効果は得られていない。
【0005】
(1) 成型炭配合法:石炭を加圧成型したものを配合することにより、成型部分の嵩密度を向上させる方法。
この方法は、降雨時に石炭含水率が大きく上昇することによる嵩密度低下の問題がある。
【0006】
(2) 石炭調湿法又はDAPS法(微粉塊成炭配合法):石炭を乾燥させて、石炭の水分含有量を低下させることにより嵩密度を上げる方法。
これらの方法では、乾燥による水分量の低減にも限界があり、しかも、いずれの方法においても、降雨時には石炭含水率は上昇し、嵩密度は低下するという問題がある。
【0007】
(3) 重油等の鉱物油や廃油等のオイルを石炭に添加する方法。
この方法は、重油等の鉱物油や廃油等のオイルを石炭に添加し、石炭粒子間の滑りを促進することでコ−クス炉に装入する際の石炭の充填性(嵩密度)を向上させる方法であるが、高水分含有率の石炭に対しては十分な嵩密度向上効果が得られないという欠点がある。
【0008】
(4) 石炭に嵩密度向上剤として界面活性剤を添加する方法(例えば特許文献1)。
この方法であれば、高水分含有率の石炭に対しても嵩密度向上効果を得ることができるが、従来法では、添加した嵩密度向上剤量に見合う嵩密度向上効果が得られているとは言いがたい。
【0009】
なお、従来において、界面活性剤等の嵩密度向上剤は、粉砕機の上流側の輸送ラインにおいて、石炭に添加されている。
即ち、コ−クス製造用石炭をコークス炉に装入するための石炭の輸送ラインは、図1に示す如く、配合槽1からの配合石炭原料をベルトコンベアで粉砕機2に輸送し、この粉砕機2で粉砕した後、ベルトコンベアでコークス炉3に輸送されて装入される。また、図2に示す如く、粉砕機2からコークス炉3への輸送ラインに調湿炭設備4が設けられている場合もあるが、いずれの場合も、嵩密度向上剤は、図1,2のA点で示される粉砕機2の上流側のベルトコンベア上の石炭に対して添加されている。
【0010】
これは、粉砕機2において石炭が粉砕される際に、その上流側のベルトコンベア上の石炭に添加された嵩密度向上剤が、粉砕機2内で石炭に対して十分に均一に混合されるという混合効果をねらったものであり、特許文献1にも粉砕処理が行われる前の原料炭に対して添加する旨の記載がある。
なお、図1,2において、Tはベルトコンベアの乗継部を示し、白矢印は輸送方向を示す。
【特許文献1】特開2007-63420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の如く、石炭に嵩密度向上剤を添加することにより、高含水率の石炭に対しても嵩密度向上効果を得ることができるが、従来法では嵩密度向上剤による嵩密度向上効果が十分に発揮されているとは言えず、同じ嵩密度向上剤を用いた場合であっても、その嵩密度向上効果をより一層有効に発揮させて、より少ない嵩密度向上剤添加量でより高い嵩密度向上効果を得る方法が望まれる。
【0012】
従って、本発明は、コークス炉に装入される石炭の輸送ラインにおいて、輸送中の石炭に嵩密度向上剤を添加して石炭の嵩密度を向上させる方法において、嵩密度向上剤による嵩密度向上効果を有効に発揮させて効率的な処理を行う方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明(請求項1)のコ−クス製造用石炭の嵩密度向上方法は、コークス炉に装入される石炭の輸送ラインにおいて、輸送中の石炭に嵩密度向上剤を添加して石炭の嵩密度を向上させる方法において、粒径3mm以下の粒分が75%以上となるように粉砕された石炭に対して該嵩密度向上剤を添加することを特徴とする。
【0014】
請求項2のコ−クス製造用石炭の嵩密度向上方法は、請求項1において、該嵩密度向上剤を、粉砕された石炭の輸送ラインの2ヶ所に添加することを特徴とする。
【0015】
請求項3のコ−クス製造用石炭の嵩密度向上方法は、請求項1又は2において、該嵩密度向上剤は、有効成分濃度5〜15重量%の水溶液であることを特徴とする。
【0016】
請求項4のコ−クス製造用石炭の嵩密度向上方法は、請求項1ないし3のいずれか1項において、石炭を、配合槽および粉砕機を経てコークス炉に輸送する輸送ラインのうち、粉砕機の後段の輸送ラインにおいて、該嵩密度向上剤を添加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、粒径3mm以下の粒分(以下、この粒分を「−3mm粒分」と称す場合がある。)が75%以上となるように粉砕された石炭に対して嵩密度向上剤を添加することにより、嵩密度向上剤による嵩密度向上効果を有効に発揮させることができる。このため、粉砕前の石炭に嵩密度向上剤を添加する従来法に比べて、同じ嵩密度向上剤添加量において石炭の嵩密度を大幅に向上させることができ、結果として嵩密度向上剤使用量の低減で処理コストの低減と生産性の向上を図ることができる。
【0018】
本発明において、粉砕後の石炭に嵩密度向上剤を添加することにより、粉砕前の石炭に嵩密度向上剤を添加する場合に比べて優れた嵩密度向上効果が得られる理由は、次のように考えられる。
【0019】
即ち、粉砕前と粉砕後では石炭の表面積が大きく異なり、粉砕により石炭新生面が発生した表面積の大きい石炭に嵩密度向上剤を添加した方が、効率的に石炭表面へ嵩密度向上剤を混合して作用させることが可能となる。
【0020】
特に、粉砕後の石炭に対して2ヶ所で嵩密度向上剤を分割添加することにより、より一層優れた効果が得られるが、これは次の理由による。
【0021】
即ち、1ヶ所で嵩密度向上剤を添加する場合は、石炭面に対して一方向からの薬剤添加となり、石炭の一面に薬剤を作用させることになるが、2ヶ所に分割して添加した場合には、石炭表面に対して薬剤が直接散布される面積が増え、石炭全体に嵩密度向上効果を発揮させ易い。また、石炭表面の親水部分に付着している水が、1ヶ所めで嵩密度向上剤が添加されることにより親水部分および疎水部分に広がり、水を媒体として嵩密度向上剤が石炭に広がり易い状態となり、2ヶ所目の嵩密度向上剤添加で、更に広がった水を媒体として石炭全体へ嵩密度向上剤が拡散するため、高い嵩密度向上効果を発揮させることができると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に本発明のコ−クス製造用石炭の嵩密度向上方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
本発明のコ−クス製造用石炭の嵩密度向上方法は、−3mm粒分が75%以上となるように粉砕された石炭に対して嵩密度向上剤を添加するものであり、例えば、図1,2に示す実機石炭輸送ラインにおいて、例えば粉砕機2の下流側の輸送ラインのB点、或いはB点とC点又はD点とに嵩密度向上剤を添加することにより実施することができる。
【0024】
即ち、本発明では、粉砕機2で粉砕された石炭が、コークス炉3に装入される前に嵩密度向上剤を添加するが、嵩密度向上剤添加後にベルトコンベアの乗継部や、調湿炭設備4のように、添加された嵩密度向上剤と石炭とに混合作用が働く部分の上流側に嵩密度向上剤を添加することが好ましい。
【0025】
従って、粉砕機2の下流側の1ヶ所で嵩密度向上剤を添加する場合には、乗継部Tや調湿炭設備4の上流側で添加することが好ましく、図1,2に示すように、粉砕機2の出口部分のB点や調湿炭設備4の入口部分のC点のベルトコンベア上の石炭に嵩密度向上剤を添加することが好ましい。
【0026】
また、粉砕機2の下流側の2ヶ所で嵩密度向上剤を添加する場合には、上記と同様の理由から、図1に示す如く、粉砕機2の出口部分のB点のベルトコンベア上の石炭に嵩密度向上剤を添加し(1ヶ所目の嵩密度向上剤添加点:以下「No.1添加点」と記載する場合がある。)、更に、次の乗継部Tやいくつかの乗継部Tを超えたC点又はD点で嵩密度向上剤を添加する(2ヶ所目の嵩密度向上剤点:以下「No.2添加点」と記載する場合がある。)ことが好ましい。
【0027】
また、図2に示す如く、調湿炭設備4を有する輸送ラインにおいて、粉砕機2の出口部分のB点のベルトコンベア上の石炭に嵩密度向上剤を添加し(No.1添加点)、更に、調湿炭設備4の入口側のC点又は出口側のD点で嵩密度向上剤を添加することが好ましい(No.2添加点)。
【0028】
このように、混合作用の大きい調湿炭設備4の上流側で嵩密度向上剤を添加することにより、調湿炭設備4内で石炭と嵩密度向上剤とを均一に混合して高い嵩密度向上効果を得ることができる。
【0029】
なお、嵩密度向上剤は、調湿炭設備4の上流側のC点と、下流側のD点のベルトコンベア上の石炭に添加しても良く、この場合であっても、調湿炭設備4の下流側で添加された嵩密度向上剤は、その後段の乗継部Tにおいて、石炭と十分に混合され得る。
【0030】
なお、本発明においては、粉砕機2の下流側の3ヶ所において嵩密度向上剤を添加しても良いが、過度に薬注点を増やすことは作業上好ましくなく、2ヶ所での薬注で十分な効果が得られることから、嵩密度向上剤は粉砕機2の下流側の1ヶ所又は2ヶ所に添加することが好ましい。
【0031】
また、粉砕機2の下流側と粉砕機2の上流側とで嵩密度向上剤を添加することも考えられるが、後述の実施例6〜9に示されるように、粉砕機2の上流側での薬注は従来法と同様、嵩密度向上効果が低いため、粉砕機2の下流側のみで嵩密度向上剤を添加することが好ましい。
【0032】
本発明において、嵩密度向上剤を添加する石炭の粉砕の程度は、−3mm粒分が75%以上であれば良い。この−3mm粒分が75%未満では、粉砕後の石炭に嵩密度向上剤を添加することによる本発明の効果を十分に得ることができない。ただし、嵩密度向上剤を添加する石炭の−3mm粒分が過度に高いと、その粉砕石炭自体の嵩密度が小さくなることにより、嵩密度向上剤による嵩密度向上効果が大きくても、十分に嵩密度を上げることができない場合がある。従って、嵩密度向上剤を添加する石炭の−3mm粒分は特に75%以上で85%以下であることが好ましい。なお、この石炭は、−3mm粒分がこの範囲であれば、その他の粒分の粒径に特に制限はないが、一般にコ−クス製造用石炭として提供される原料炭を−3mm粒分が75〜85%となるように粉砕機で粉砕して得られた石炭は、その他の粒分はほぼ粒径5mm以下におさまるものである。
【0033】
なお、この石炭の水分含有率については特に制限はないが、7〜15重量%程度であることが好ましい。
【0034】
本発明において、石炭に添加する嵩密度向上剤としては特に制限はないが、界面活性剤が好ましく、例えば、ジアルキルスルホコハク酸(アルキル基の炭素数は8〜16が好適である。)又はその塩(例えば、ナトリウム塩、アンモニウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレン(POE)付加重合物又はその塩等のノニオン系界面活性剤などを用いることができる。
【0035】
これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0036】
このような嵩密度向上剤の添加量(2ヶ所で添加する場合はその合計の添加量)は、石炭に対する有効成分量として、0.003〜0.1重量%、特に0.02〜0.05重量%とすることが好ましい。この添加量が少な過ぎると十分な嵩密度向上効果を得ることができず、多過ぎても嵩密度向上効果は頭打ちとなり徒に薬注量が増加して好ましくない。
【0037】
また、嵩密度向上剤を2ヶ所で添加する場合、各々の嵩密度向上剤添加量については特に制限はなく、その後段の調湿炭設備の有無や乗継部の数によっても異なるが、通常の場合、1ヶ所目(No.1添加点)における嵩密度向上剤添加量と2ヶ所目(No.2添加点)における嵩密度向上剤添加量との比が、No.1添加点:No.2添加点=3:1〜1:3(重量比)となるように添加することが好ましい。
【0038】
前述の界面活性剤等の嵩密度向上剤は、水に希釈して水溶液として石炭に添加混合するが、石炭との混合性を十分に得る上で好ましく、この場合、有効成分の濃度として5〜15重量%、特に8〜12重量%の適度な濃度の水溶液として石炭に添加することが好ましい。この濃度が高過ぎると、希釈による石炭との混合性の向上効果が十分に得られず、低過ぎると水分が多くなることにより、コークス炉での乾留熱量増加や嵩密度向上効果の低下を引き起こす。
【実施例】
【0039】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0040】
なお、以下において、嵩密度向上試験に用いた石炭及び嵩密度向上剤は以下の通りである。
【0041】
[供試炭]
粒径分布として、粒径が3mmを超えるものを40%、粒径が1mmを超え3mm以下のものを35%、粒径が1mm以下のものを25%含み(−3mm粒分:60%)、水分含有率9重量%のコークス製造用石炭。
【0042】
[嵩密度向上剤]
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩
この嵩密度向上剤を石炭に添加するに当っては、以下のような濃度の水溶液よりなる薬剤a〜dを調製して用いた。
薬剤a:10重量%濃度の水溶液
薬剤b:30重量%濃度の水溶液
薬剤c:15重量%濃度の水溶液
薬剤d:7.5重量%濃度の水溶液
【0043】
また、石炭又は嵩密度向上剤添加後の石炭の嵩密度の測定方法は次の通りである。
[嵩密度測定方法]
円筒状の1Lメスシリンダー(ガラス製)の上端部から石炭500gを万遍なく均一に落下充填させた後、高さ1cmからメスシリンダーを1回自然落下させ、落下後の体積を測定し、その体積と重量(500g)から嵩密度を計算した。
嵩密度向上率は下記式により算出した。
【0044】
【数1】

【0045】
また、石炭に嵩密度向上剤を混合するためのミキサーとしては、実機におけるベルトコンベアー乗継部又は粉砕機内での混合を模擬するために、直径30cm、奥行き15cmのドラムミキサー(60rpm)を用いた。
【0046】
[実施例1〜3、比較例1,2:石炭の−3mm粒分の嵩密度向上効果に及ぼす影響を示す実施例と比較例]
供試炭を、ジューサーミキサーにより粉砕した石炭をふるい分けし、−3mm粒分が50%,70%,75%,80%,85%となるようにそれぞれ粒度調整した。
各々の−3mm粒分の石炭上に、薬剤aを石炭に対して有効成分の添加量として0.05重量%となるようにスポイトで添加し、ドラムミキサーで30秒撹拌した。
嵩密度向上剤添加前後の石炭の嵩密度と、嵩密度向上率を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
表1より、石炭の粒度が細かくなると石炭そのものの嵩密度が低下するが、−3mm粒分が75%以上に粉砕された石炭に嵩密度向上剤を適用すると、効率良く嵩密度が向上することが分かる。
【0049】
[実施例4〜5:図1のB点で嵩密度向上剤を添加する場合を模擬する実施例]
実機にて、粉砕機で粉砕した後の石炭に嵩密度向上剤を添加し、この嵩密度向上剤がベルトコンベアー乗継部で混合される状態を模擬するために、まず、供試炭をジューサーミキサーを用いて、−3mm粒分が80%となるように粉砕した。
この−3mm粒分80%の供試炭に、薬剤aを表2に示すB点添加量(石炭に対する有効成分添加量)となるようにスポイトで添加した後、ドラムミキサーで30秒混合した。
嵩密度向上剤添加前後の石炭の嵩密度と、嵩密度向上率を表2に示す。
【0050】
[実施例6〜9:図1のA点とB点で嵩密度向上剤を添加する場合を模擬する実施例]
実機にて、粉砕機で粉砕する前の石炭に嵩密度向上剤を添加し、その後粉砕機で粉砕する間にこの嵩密度向上剤が混合され、粉砕後に嵩密度向上剤を添加し、この嵩密度向上剤がベルトコンベアー乗継部で混合される状態を模擬するために、まず、供試炭に薬剤aを表2に示すA点添加量(石炭に対する有効成分添加量)となるようにスポイトで添加した後、ジューサーミキサーを用いて、−3mm粒分が80%となるように粉砕した。粉砕直後の石炭をドラムミキサーに入れ、薬剤aを表2に示すB点添加量(石炭に対する有効成分添加量)となるようにスポイトで添加した後、ドラムミキサーで30秒混合した。
嵩密度向上剤添加後の石炭の嵩密度と、嵩密度向上率を表2に示す。
【0051】
[比較例3:図1のA点で嵩密度向上剤を添加する場合を模擬する比較例]
実機にて、粉砕機で粉砕する前の石炭に嵩密度向上剤を添加し、その後粉砕機で粉砕する間に、この嵩密度向上剤が混合される状態を模擬するために、まず、供試炭に薬剤aを石炭に対して有効成分の添加量として0.05重量%となるようにスポイトで添加した後、ジューサーミキサーを用いて、−3mm粒分が80%となるように粉砕し、粉砕直後の石炭をドラムミキサーで30秒混合した。
嵩密度向上剤添加前後の石炭の嵩密度と、嵩密度向上率を表2に示す。
【0052】
なお、表2には実施例2の結果を併記した。
【0053】
【表2】

【0054】
表2より、粉砕後の石炭に嵩密度向上剤を添加した方が、少ない薬注量で高い嵩密度向上効果が得られることが分かる。
【0055】
[実施例10,11:図1のB点とC点で嵩密度向上剤を添加する場合を模擬する実施例]
実機にて、粉砕機で粉砕した後の石炭に2ヶ所で嵩密度向上剤を添加し、この嵩密度向上剤がそれぞれベルトコンベアー乗継部で混合される状態を模擬するために、まず、供試炭をジューサーミキサーを用いて、−3mm粒分が80%となるように粉砕し、その後石炭に薬剤aを表3に示すB点添加量(石炭に対する有効成分添加量)となるようにスポイトで添加した後、ドラムミキサーで15秒混合し、一旦撹拌を止め、その後再び薬剤aを表3に示すC点添加量(石炭に対する有効成分添加量)となるようにスポイトで添加した後、ドラムミキサーで15秒混合した。
嵩密度向上剤添加前後の石炭の嵩密度と、嵩密度向上率を表3に示す。
【0056】
なお、表3には、実施例2,4の結果を併記した。
【0057】
【表3】

【0058】
表3より、粉砕後に2ヶ所で嵩密度向上剤を分割添加することにより、より一層優れた嵩密度向上効果が得られることが分かる。
【0059】
[実施例12〜15:嵩密度向上剤の濃度の嵩密度向上効果に及ぼす影響を示す実施例]
実施例10において、嵩密度向上剤として表4に示す薬剤を表4に示す添加量で添加したこと以外は同様にして嵩密度向上処理を行い、結果を表4に示した。
【0060】
【表4】

【0061】
表4より、嵩密度向上剤の濃度には好適範囲があり、7.5、10、15重量%の際に嵩密度向上率が高く、特に10重量%で良好な向上率を示していることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】石炭輸送ラインの構成例を示す模式図である。
【図2】石炭輸送ラインの他の構成例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0063】
1 配合槽
2 粉砕機
3 コークス炉
4 調湿炭設備
T 乗継部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉に装入される石炭の輸送ラインにおいて、輸送中の石炭に嵩密度向上剤を添加して石炭の嵩密度を向上させる方法において、粒径3mm以下の粒分が75%以上となるように粉砕された石炭に対して該嵩密度向上剤を添加することを特徴とするコ−クス製造用石炭の嵩密度向上方法。
【請求項2】
請求項1において、該嵩密度向上剤を、粉砕された石炭の輸送ラインの2ヶ所に添加することを特徴とするコ−クス製造用石炭の嵩密度向上方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、該嵩密度向上剤は、有効成分濃度5〜15重量%の水溶液であることを特徴とするコ−クス製造用石炭の嵩密度向上方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、石炭を、配合槽および粉砕機を経てコークス炉に輸送する輸送ラインのうち、粉砕機の後段の輸送ラインにおいて、該嵩密度向上剤を添加することを特徴とするコ−クス製造用石炭の嵩密度向上方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−77368(P2010−77368A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250680(P2008−250680)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】