説明

コイルの巻込み具およびコイルの巻込み方法

【課題】支持線へのコイルの巻き込み能力が高く、コイルを自動的、且つ容易に外挿することができるコイルの巻き込み具およびそれを使用したコイルの巻き込み方法の提供。
【解決手段】伸縮性のコイルを使用したケーブルの架設方法において、予め電柱間に張設した支持線に前記コイルを外挿するために使用するコイルの巻込み具であって、コイルの内側全体に接触しつつコイルを回転前進させながら支持線に巻き込むためのローラー2と、このローラー2の片端部から平行に延設された主軸3aを介してローラー2を回転させるための駆動部4と、ローラー2の他端部から平行に延設された主軸3bを介して支持線にローラー2を吊着するための吊着部5とから構成されるコイルの巻き込み具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性のコイルを使用したケーブルの架設方法において、予め電柱間に張設した支持線にコイルを外挿するために使用するコイルの巻込み具およびこの巻込み具を使用したコイルの巻き込み方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電信または光通信用ケーブルを電柱間に架設する場合には、ケーブルに高い張力を与えことができないため、ケーブルのみ架設することができず、メッセンジャーワイヤーや各種抗張用ワイヤーなどの支持線を併用し、ケーブルハンガーを使用して、支持線にケーブルを懸架する架設方法が用いられてきた。
【0003】
しかし、この架設方法は、ケーブルハンガーを支持線に沿って一定間隔に取り付ける必要があるため、作業員が宙乗り機や高所作業車を使用して作業しなければならず、高所作業で危険であるばかりか、人や工具等の落下など安全面に問題があり、さらには、公道に宙乗り機や高所作業車を固定して作業を実施することもあるため、長時間にわたり公道を占有しなければならないなどの問題も抱えていた。
【0004】
この問題を解消した手段として、最近では、合成樹脂モノフィラメントからなるコイルや金属線と合成樹脂との複合材料からなるコイルを利用したケーブルの架設方法が脚光を浴びている。
【0005】
この架設方法は、コイルの伸縮性と軽量性を利用したものであり、予め電柱間に支持線を張設し、片方の電柱側において、支持線にコイルを外挿してコイルの電柱側端部を支持線に固定した後、コイルの内部にケーブルを挿入し、支持線に沿ってケーブル端部とコイルの非固定端部を一緒にもう片方の電柱側に引き伸ばし、コイルの非固定側端部を片方の電柱側支持線に固定することによってケーブルを架設する方法である。そして、この方法によれば、ケーブルハンガーの使用や宙乗り作業を省略することができ、ケーブルの架設作業を安全かつ効率的に遂行することができるのである。
【0006】
支持線にコイルを外挿する方法には、支持線をコイルの内側に貫通した後、支持線を電柱間に張設する方法のほか、上記のように、予め支持線を電柱間に張設した後、支持線にコイルを外挿する方法がある。
【0007】
特に、後者の方法は、ケーブルの新設作業のほか、掛け替え作業などに使用されるが、支持線にコイルを外挿する作業が極めて困難であり、しかもその作業に多くの時間が掛かることから、その改善が以前から望まれていた。
【0008】
これを改善する手段として、コイルを外側から支持するAローラーとコイルを内側から支持するBローラーとを一対の側枠で回転可能に両側から支持し、Aローラーを駆動部に連結するとともに、クランク軸を介してBローラーをAローラーに対して圧接離間自在となし、AローラーとBローラーによりコイルを挟持しつつAローラーを回転させることにより、コイルを支持線に外挿するコイルの巻き込み具(例えば、特許文献1参照)が既に知られている。
【0009】
このコイルの巻き込み具は、コイルを支持線に係止した後、コイルの片端をローラー間に挟み、ローラーの回転によってコイルを回転前進させ、支持線にコイルを外挿するものであり、コイルの外挿作業をより効率的に行うことができるものである。
【0010】
しかし、上述のコイルの巻き込み具は、その構造が複雑であるばかりか、長いコイルを支持線に外挿する際には、ローラー幅が小さく、コイル全体にローラーの回転力が伝達されないため、支持線にコイルを巻き込む能力が低いなどの問題があった。
【特許文献1】特開2002−345117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述の従来技術における問題点の解決を目的として検討した結果達成されたものである。
【0012】
すなわち、本発明の目的は、支持線にコイルを巻き込む能力が高く、支持線に対しコイルを自動的、且つ容易に外挿することができるコイルの巻き込み具、およびそれを使用したコイルの巻き込み方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明によれば、伸縮性のコイルを使用したケーブルの架設方法において、予め電柱間に張設した支持線に前記コイルを外挿するために使用するコイルの巻込み具であって、前記コイルの内側全体に接触しつつ前記コイルを回転前進させながら前記支持線に巻き込むためのローラーと、このローラーの片端部から平行に延設された主軸を介して前記ローラーを回転させるための駆動部と、前記ローラーの他端部から平行に延設された主軸を介して前記支持線に前記ローラーを吊着するための吊着部とから構成されることを特徴とするコイルの巻き込み具が提供される。
【0014】
なお、本発明においては、
前記ローラーの表面に滑り防止部材が施されていること
がさらに好ましい条件として挙げられ、この条件を満たすことでさらに優れた効果を取得することができる。
【0015】
また、本発明のコイルの巻き込み方法は、上記コイルの巻き込み具を使用して、予め電柱間に張設した支持線に伸縮性のコイルを外挿するに際し、前記コイルの内側に前記巻き込み具のローラーを貫通し、このローラーの他端部から延設された主軸を介して、吊着部により前記支持線に前記ローラーを吊着した後、前記コイルの片端の一部を前記支持線と前記ローラーに巻き込み、前記コイルの内側全体に前記ローラーを接触させた状態で、前記駆動部を作動させ、前記ローラーの片端部から平行に延設された主軸を介して前記ローラーを回転させることにより、巻き込まれていない残りのコイルを回転前進させながら前記支持線に巻き込むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、支持線へのコイルの巻き込み能力が高く、支持線に対しコイルを自動的、且つ容易に外挿することができるため、コイルの外挿作業を効率良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明のコイルの巻き込み具およびそれを使用したコイルの巻き込み方法を図に従って説明する。
【0018】
図1は本発明のコイルの巻込み具の一例を示す斜視図であり、1はコイルの巻き込み具、2はローラー、3a,3bは主軸、4は駆動部、5は吊着部をそれぞれ示している。
【0019】
また、図2は、図1のコイルの巻き込み具1の分解図であり、2はローラー、3a,3bは主軸、4は駆動部、5は吊着部、6は滑り止め部材、7はスペーサーリング、8はベアリングをそれぞれ示している。
【0020】
さらに、図3の(A)〜(C)は、図1のコイルの巻き込み具1を使用して支持線にコイルを外挿する工程の一例を段階的に示した説明図であり、1はコイルの巻き込み具、2はローラー、4は駆動部、5は吊着部、9は支持線、10はコイルをそれぞれ示している。
【0021】
図1に示した本発明のコイルの巻き込み具1は、コイル10の内側全体に接触しつつこのコイル10を回転前進させながら支持線9に巻き込むためのローラー2と、このローラー2の片端部から平行に延設された主軸3aを介してローラー2を回転させるための駆動部4と、ローラー2の他端部から平行に延設された主軸3bを介して支持線9にローラー2を吊着するための吊着部5とから構成されている。
【0022】
なお、本発明のコイルの巻き込み具1を構成する各部材は、上記の主要構造を成していれば特に限定はされないが、図1および図2に示した実施例においては、筒状のローラー2の両端に主軸3a,3bを固定し、駆動部4側の主軸3aを軸心穴付きのスペーサーリング7を介しての回転可能となしてこれをローラー2に伝えるようにすると共に、吊着部5側の主軸3bをベアリング8を介し非回転として、吊着部5が回転しないよう回転開放状態に保つように構成している。そして、片端部側の主軸3aに駆動部4、さらに他端部側の主軸3bに吊着部5を溶接固定することでその構造を成している。
【0023】
また、吊着部5は、繰り返しコイルの外挿作業を行うことができるような形状となっており、その形状として、例えば図1および図2に示すようなフック状のものが挙げられる。図2において、5aは支持線に吊着するフック部、5bは主軸3bに固定する基部、5cは主軸3bを挿入する穴部である。
【0024】
ここで、例えばベアリング8を省略し、吊着部5の穴部5cの直径を主軸3bの直径よりも大きくすると共に、主軸3bの端部にストッパー(図示なし)を設けることによって、他端部側の主軸3bをも回転可能に構成することもできる。
【0025】
なお、吊着部5の大きさは、コイル10の内側にローラー2を入れ、吊着部5を使用して支持線9に吊着した際に、支持線9とコイル10が接触せず、これらの間に少し空間があることが回転し易くなるとの理由から好ましい。
【0026】
そして、図1および図2に示した本発明のコイルの巻き込み具1は、図3の(A)〜(C)に示すような方法で使用される。
【0027】
すなわち、まず図3の(A)に示すように、コイル10の内側にコイルの巻き込み具1のローラー2を貫通し、貫通したローラー2の他端部から延設された主軸3bを介して、吊着部5により支持線9にローラー2を吊着する。
【0028】
次に、図3の(B)に示すように、作業員の手動により、予めコイル10の片端の一部(片端から2〜5周分)を、支持線9とローラー2に巻き込んだ状態にする。
【0029】
そして、図3(C)に示すように、ローラー2を既に巻き込んだコイル10の内側と、まだ巻き込まれていないコイル10の内側とを接触させた状態にして駆動部4を作動させて、ローラー2を回転させることにより、巻き込まれていない残りのコイル10を回転前進させながら支持線9に巻き込んでいく。
【0030】
このように、本発明のコイルの巻き込み具1は、複雑な構造を必要としないばかりか、ローラー2がコイル10の内側全体に接触しながらコイル10に回転を与えるため、支持線9へのコイル10の巻き込み能力が高く、効率よく外挿することができるのである。
【0031】
なお、本発明のコイルの巻き込み具1においては、図2に示すように、ローラー2の表面に滑り止め部材6を貼着することにより、支持線9へのコイル10の巻き込み能力が向上し、コイル10の外挿作業がさらに向上する。
【0032】
滑り止め部材6の素材としては、ローラー2とコイル10との摩擦により、滑りにくい材料であれば特に限定はされないが、例えば、熱可塑性樹脂、金属粉布、およびゴムなどを使用することができ、中でもゴムなどは、軽量で滑りにくい材料であることから特に好ましく使用できる。
【0033】
また、ローラー2の外径は、通常、コイル10の内径よりも小さいものを使用するが、コイル10の内径から支持線9の外径を差し引いた外径であることが好ましい。
【0034】
さらにまた、ローラー2の長さについても、特に限定はされないが、例えば、伸張時に30〜50mになるコイル10に対しては、1.0〜1.5m長さのものがよく使用される。
【0035】
ローラー2の回転は手動回転で行ってもよいが、インパクトケンチのほか、電気ドリルや小型モーターなどの工具を駆動部4として使用することにより、一定の回転速度で効率良くコイル10を外挿することができ、また必要に応じて回転速度の調整も行うことができる。
【0036】
ここで、本発明のコイルの巻き込み方法で使用されるコイル10としては、例えば、金属線、合成樹脂線、またはこれらの複合線状体からなるものを使用することができ、中でも軽量で取り扱いが容易であるとのことから、合成樹脂製線または合成樹脂線と金属線との複合線状体からなるものが好ましく使用される。
【0037】
合成樹脂線としては、例えば、合成樹脂モノフィラメントからなるものが挙げられ、さらにその素材としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンなどの合成樹脂が挙げられ、特に限定はされない。
【0038】
また、コイル10は、合成樹脂線または合成樹脂線と金属線との複合線状体をコイル状に加工したものであり、例えば、合成樹脂線または合成樹脂線と金属線との複合線状体を緊張状態下で合成樹脂素材のガラス転移温度以上、且つ融点以下の温度に予熱した後、直ちに回転する賦形軸に巻き取り、急冷する方法により得られる。
【0039】
なお、合成樹脂線または合成樹脂線と金属線との複合線状体の直径としては、特に限定はされないが、主に0.2〜0.6mmのものを使用することができ、またコイルの巻き径についても、特に限定はされないが、主に20〜250mmのものを使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のコイルの巻き込み具およびそれを使用したコイルの巻き込み方法は、支持線へのコイルの巻き込み能力が高く、支持線に対しコイルを自動的、且つ容易に外挿することができる。したがって、本発明によれば、特に伸縮性のコイルを使用したケーブルの架設方法において、予め電柱間に張設した支持線にコイルを外挿する作業を、短時間で効率的に行うことができ、当業界に与える貢献度が極めて大きいといえる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明のコイル巻込み具の一例を示した斜視図である。
【図2】図1に示したコイル巻込み具の分解図である。
【図3】図1のコイルの巻き込み具1を使用して支持線にコイルを外挿する工程の一例を段階的に示した説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1 コイル巻き込み具
2 ローラー
3a、3b 主軸
4 駆動部
5 吊着部
5a フック部
5b 基部
5c 穴部
6 滑り止め部材
7 スペーサーリング
8 ベアリング
9 支持線
10 コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性のコイルを使用したケーブルの架設方法において、予め電柱間に張設した支持線に前記コイルを外挿するために使用するコイルの巻込み具であって、前記コイルの内側全体に接触しつつ前記コイルを回転前進させながら前記支持線に巻き込むためのローラーと、このローラーの片端部から平行に延設された主軸を介して前記ローラーを回転させるための駆動部と、前記ローラーの他端部から平行に延設された主軸を介して前記支持線に前記ローラーを吊着するための吊着部とから構成されることを特徴とするコイルの巻き込み具。
【請求項2】
前記ローラーの表面に滑り防止部材が施されていることを特徴とする請求項1に記載のコイルの巻込み具。
【請求項3】
請求項1または2に記載のコイルの巻き込み具を使用して、予め電柱間に張設した支持線に伸縮性のコイルを外挿するに際し、前記コイルの内側に前記巻き込み具のローラーを貫通し、このローラーの他端部から延設された主軸を介して、吊着部により前記支持線に前記ローラーを吊着した後、前記コイルの片端の一部を前記支持線と前記ローラーに巻き込み、前記コイルの内側全体に前記ローラーを接触させた状態で、前記駆動部を作動させ、前記ローラーの片端部から平行に延設された主軸を介して前記ローラーを回転させることにより、巻き込まれていない残りのコイルを回転前進させながら前記支持線に巻き込むことを特徴とするコイルの巻き込み方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−238545(P2006−238545A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−46671(P2005−46671)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000219288)東レ・モノフィラメント株式会社 (239)
【Fターム(参考)】