説明

コイル保持構造

【課題】耐振性に優れたコイル保持構造を提供する。
【解決手段】本発明に係るコイル保持構造1は、実装基板3と、実装基板3上に固定された台座部10および台座部10上に設けられたコイル本体部11を有するコイル2と、実装基板3およびコイル2を収容するケース4とを備え、ケース4は、実装基板3を固定する基板固定手段6と、コイル本体部11を覆う蓋部7とを有し、コイル3は、コイル本体部11からケース4の蓋部7に向かって延びた支持部12をさらに有し、支持部12の先端部と蓋部7とが、保持手段5によって固定されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電気機器内に比較的大型のコイルを保持するためのコイル保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種電気機器ではノイズ除去等のためにコイルが使用されている。コイルは、種々の特性、形状のものが存在しているが、例えば、除去すべきノイズがコモンモードノイズであり、かつ実装面積を極力小さくしたい場合は、縦型のチョークコイルが使用されることが多い(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
図4に示すように、従来の縦型のチョークコイル(以下、単に「コイル」という)20は、ネジ、ボルト、接着剤等の固定手段によって実装基板3に堅固に固定される台座部21と、台座部21上に設けられたコイル本体部22と、仕切り板26とを有する。コイル本体部22は、ドーナツ状フェライトコアおよびそのカバーからなるコア25と、コア25に巻き付けられた一対の巻線23、24とを有する。また、仕切り板26は、台座部21からコア25の中空部を貫いて延びる板状の部材であり、巻線23と巻線24とを隔離する。
【0004】
同図に示すように、巻線23、24はそれぞれ巻き始め端23a、24aを有し、巻き始め端23a、24aは、実装基板3に設けられたスルーホールに挿入され、半田付け等により実装基板3の回路に電気的に接続される。また、巻線23、24はそれぞれ不図示の巻き終り端も有する。各巻き終り端も、実装基板3に設けられたスルーホールに挿入され、半田付け等により実装基板3の回路に電気的に接続される。
【0005】
実装基板3およびコイル20は、不図示のケース(電気機器の外装ケース)に収容される。また、実装基板3は、ネジ、ボルト、半田等の固定手段によってケースの内部に堅固に固定される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“チョークコイル”、三菱電機メテックス(株)、インターネット、<http://www.metecs.co.jp/jp/products/seihin/coil/coil002.pdf>、p.1、2010年10月25日現在
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、自動車等に搭載される電気機器は、据え置き型の電気機器に比べて、高い耐振性が求められている。したがって、かかる電気機器でコイル20を使用する場合は、当然ながら、コイル20自身およびコイル20の保持構造にも高い耐振性が求められる。
【0008】
しかしながら、自動車等の電気機器で使用されるコイル20は一般に大型で、コア25および巻線23、24からなるコイル本体部22はかなりの重量を有している。このため、強い振動が繰り返し加えられると、従来のコイル20は、コイル本体部22の付け根部分(コイル本体部22と台座部21の境界部分)において破断するおそれがあった。また、同様の理由から、従来のコイル20は、巻線23、24と実装基板3との接続部分に負担がかかり、当該部分が変形するおそれがあった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、耐振性に優れたコイル保持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係るコイル保持構造は、実装基板上に固定された台座部および該台座部上に設けられたコイル本体部を有するコイルの保持構造であって、コイルは、コイル本体部上部に設けられ、実装基板から離間する方向に向かって延びた支持部をさらに有し、支持部を保持する保持手段を備えることを特徴とする。
【0011】
この構成では、コイルの台座部が実装基板に固定されるとともに、コイルの支持部先端が保持手段によって保持されている。すなわち、コイルは、その下部に位置する台座部と上部に位置する支持部先端の2箇所において保持、固定されている。したがって、この構成によれば、共振周波数を上げて、実装基板に実装されたコイルの耐振性を高めることができる。
【0012】
ここで、上記コイル保持構造は、開口部を有し、コイルおよび実装基板を収容するケースと、実装基板をケースに固定する基板固定手段と、開口部を封口する蓋部とをさらに備え、保持手段は、支持部の先端部を蓋部に対して保持するよう構成することが好ましい。
【0013】
また、上記コイル保持構造における保持手段は、(1)蓋部と支持部の先端部との間に介在させた接着剤としてもよいし、(2)先端部および蓋部のいずれか一方に設けられた凸部と、他方に設けられた凹部とを有し、凸部と凹部とが嵌合することで支持部が蓋部に保持されるように構成してもよい。
【0014】
また、上記コイル保持構造における支持部は、耐振性を高めるために、台座部からコイル本体部を貫いて延びた補強板であることが好ましい。
【0015】
また、上記コイル保持構造におけるコイル本体部は、補強板によって2つの領域に分けられたコアと、コアの2つの領域のそれぞれに巻き付けられた2本の巻線とを有し、2本の巻線の各々は、コアに巻き付けられた巻き付け部と、該巻き付け部と実装基板に接続された接続端部との間で空中でループを描くように加工された遠回り部とが形成されていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、遠回り部が2本の巻線と実装基板の接続部分にかかる負担を軽減する緩衝材として機能するので、当該部分が変形するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、耐振性に優れたコイル保持構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るコイル保持構造の一例を示す部分断面図である。
【図2】本発明により保持されるコイルであって、(A)は斜視図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
【図3】本発明における保持手段の変形例を示す図である。
【図4】従来のコイル実装状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るコイル保持構造の好ましい実施形態について説明する。
【0020】
まず、図1を参照して、本発明に係るコイル保持構造の全体構成について説明する。コイル保持構造1は、例えば、自動車用電気機器にコイル2を保持するためのもので、同図に示すように、実装基板3と、実装基板3上に固定されたコイル2と、実装基板3およびコイル2を収容するケース4とを備えている。ケース4は、コイル2が実装された実装基板を収容可能な高さを備え、上面に開口部を有する。開口部は蓋部7によって封口されている。
【0021】
コイル2は縦型のチョークコイルであり、ネジ、ボルト、接着剤等の固定手段によって実装基板3に堅固に固定された台座部10と、台座部10上に設けられたコイル本体部11と、エポキシ系の接着剤5によってケース4の蓋部7に先端部が保持、固定された補強板12とを有する。接着剤5は、蓋部7と補強板12の先端部(上端部)との間に介在してコイル2を蓋部7に保持、固定させる。接着剤5は、本発明の「保持手段」に相当する。また、補強板12は、本発明の「支持部」に相当する。
【0022】
実装基板3には、コイル2の他、当該電気機器を構成する各種部品が実装されている。また、ケース4は、収容した実装基板3およびコイル2等の部品を保護する役割を果たす。ケース4の材質としては、例えば、加工性、堅牢性、耐久性に優れたPPS(Polyphenylene sulfide)やPBT(polybutylene terephthalate)がある。実装基板3およびケース4は、ネジ、ボルト、半田等の基板固定手段6によって堅固に固定されている。
【0023】
次に図2を参照して、コイル2のより詳細な構成について説明する。
【0024】
コイル本体部11は、ドーナツ状フェライトコアおよびそのカバーからなるコア15と、コア15に巻き付けられた一対の巻線13、14とを有する。同図に示すように、コイル本体部11は、後述する補強板12によって2つの領域11a、11bに分けられ、領域11a側のコア15には巻線13が、領域11b側のコア15には巻線14がそれぞれ巻き付けられている。コア15の奥行き寸法はD15である(図2(C)参照)。
【0025】
補強板12は、台座部10からコア15の中空部を貫いて真上に(実装基板3から離間する方向に)延びた板状の部材であり、コイル本体部11よりも上方に突出した先端部を有している。補強板12の奥行き寸法はD12で、これはコア15の奥行き寸法D15よりも大きい(図2(C)参照)。奥行き寸法D12をD15よりも大きくすることで、コア15が奥行き方向に揺れて、コア15の付け根部分が破断するのを抑制することができる。
【0026】
台座部10、補強板12およびコア15のカバーは、いずれもPPSまたはPBTからなる。コイル2の耐振性を高めるという観点から、台座部10、補強板12およびコア15のカバーは、例えば、PPSを射出成形することにより一体的に形成することが好ましい。
【0027】
巻線13、14はそれぞれ巻き始め端13a、14aを有し、巻き始め端13a、14aは、実装基板3に設けられたスルーホールに挿入され、半田付け等により実装基板3の回路に電気的に接続される。また、巻線13、14は巻き終り端13b、14b(不図示)も有する。巻き終り端13b、14bも、実装基板3に設けられたスルーホールに挿入され、半田付け等により実装基板3の回路に電気的に接続される。
【0028】
さらに、巻線13、14はそれぞれ遠回り部13c、14cを有する。遠回り部13cは、巻線13のコア15に巻き付けられている巻き付け部と巻き始め端13aおよび巻き終り端13bとの間に各1つ設けられている。また、遠回り部14cは、巻線14のコア15に巻き付けられている部分と巻き始め端14aおよび巻き終り端14b(不図示)との間に各1つ設けられている。遠回り部13c、14cは、巻き付け部と実装基板3に接続された接続端部(巻き始め端13a、14aおよび巻き終り端13b、14b)との間で空中でループを描くように加工され、コイル本体部11が揺れた際に、巻線13、14と実装基板3との接続部分に負担がかかるのを軽減する、いわば緩衝材としての役割を果たす。
【0029】
以上をまとめると、本発明に係るコイル保持構造1では、コイル2の台座部10が実装基板3に固定されるとともに、コイル2の補強板12先端がケース4の蓋部7に保持、固定されている。すなわち、コイル2は、その最下部に位置する台座部10と最上部に位置する補強板12先端の2箇所において保持、固定されている。したがって、この構成によれば、共振周波数を上げて、耐振性を高めることができる。
【0030】
また、本発明に係るコイル保持構造1によれば、巻線13、14がそれぞれ遠回り部13c、14cを有し、この遠回り部13c、14cが巻線13、14と実装基板3の接続部分にかかる負担を軽減する緩衝材として機能するので、当該部分が変形するのを防ぐことができる。
【0031】
以上、本発明に係るコイル保持構造の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
【0032】
例えば、保持手段5は接着剤に限定されず、補強板12の先端部および蓋部7のいずれか一方側に設けられた凸部と、他方に設けられた凹部とを有し、凸部と凹部とを嵌合させることで、補強板12を蓋部7に保持させてもよい。
【0033】
具体例として、図3(A)に示す保持手段5Aでは、補強板12自体の先端部(凸部)に係合可能な穴8A(凹部)が蓋部7に設けられている。また、図3(B)に示す保持手段5Bでは、蓋部7に設けられた突起(凸部)に係合可能な溝8B(凹部)が補強板12の先端部に設けられている。凸部と凹部の断面形状としては、図3(C)〜(D)に示すような、様々な変形例が考えられる。なお、補強板12の先端部自体が凸形状を有している場合は、先端部に凸部を設ける必要はない。すなわち、本発明では、「先端部に設けられた凸部」に先端部自身が含まれるものとする。
【0034】
この他、保持手段5として、板ばね等の弾性部材によりコイル2の支持部を実装基板3側に向けて押圧することで、支持部を保持させてもよい。この場合、板ばね等の弾性部材を蓋部7の裏面側に付設すればよい。
【0035】
また、遠回り部13c、14cは、実装基板3に向かう方向とは異なる方向に進む部分を含んでいればよく、図1、図2に示した形状に限定されない。
【符号の説明】
【0036】
1 コイル保持構造
2 コイル
3 実装基板
4 ケース
5 保持手段
6 基板固定手段
7 蓋部
10 台座部
11 コイル本体部
12 補強板(支持部)
13、14 巻線
13a、14a 巻き始め端
13b、14b 巻き終り端
13c、14c 遠回り部
15 コア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装基板上に固定された台座部および該台座部上に設けられたコイル本体部を有するコイルの保持構造であって、
前記コイルは、前記コイル本体部上部に設けられ、前記実装基板から離間する方向に向かって延びた支持部をさらに有し、
前記支持部を保持する保持手段を備えることを特徴とするコイル保持構造。
【請求項2】
開口部を有し、前記コイルおよび前記実装基板を収容するケースと、
前記実装基板を前記ケースに固定する基板固定手段と、
前記開口部を封口する蓋部と
をさらに備え、
前記保持手段は、前記支持部の先端部を前記蓋部に対して保持することを特徴とする請求項1に記載のコイル保持構造。
【請求項3】
前記保持手段として接着剤が前記蓋部と前記支持部の先端部との間に介在していることを特徴とする請求項2に記載のコイル保持構造。
【請求項4】
前記保持手段は、前記支持部の先端部および前記蓋部のいずれか一方に設けられた凸部と、他方に設けられた凹部とを有し、前記凸部と前記凹部とが嵌合することで前記支持部が前記蓋部に保持されることを特徴とする請求項2に記載のコイル保持構造。
【請求項5】
前記支持部は、前記台座部から前記コイル本体部を貫いて延びた補強板であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のコイル保持構造。
【請求項6】
前記コイル本体部は、前記補強板によって2つの領域に分けられたコアと、前記コアの前記2つの領域のそれぞれに巻き付けられた2本の巻線とを有し、
前記2本の巻線の各々は、前記コアに巻き付けられた巻き付け部と、該巻き付け部と前記実装基板に接続された接続端部との間で空中でループを描くように加工された遠回り部とが形成されていることを特徴とする請求項5に記載のコイル保持構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−94577(P2012−94577A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238272(P2010−238272)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】