説明

コイル搬送台車及びコイルの搬送方法

【課題】コイルを、連続処理ラインの入側の巻き解きリールに挿入することが可能なコイル搬送台車及びコイルの搬送方法を提供する。
【解決手段】コイルを載荷するコイルスキッド21を備えてレール上を走行自在とされるコイル搬送台車において、前記コイル搬送台車2には、コイルスキッド21を昇降させる自在に支持するコイルスキッド昇降支持機構と、前記コイルスキッドの前記コイル搬送台車2の走行方向に向かって左右両側にそれぞれ基端側が回動可能に設けられると共に先端側が相互に接近又は離反移動可能に対向するように設けられたコイル変形矯正用アーム31と、前記対向するコイル変形矯正用アーム31によりコイルに付加する矯正荷重を制御するための矯正荷重制御手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーズに巻き取られたコイル、特に、ルーズの度合いが大きな高温仕上焼鈍された方向性電磁鋼板のコイルを平坦化焼鈍設備の入側の巻き解きリールに挿入するコイル搬送台車及びコイルの搬送方法に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
方向性電磁鋼板の高温仕上焼鈍は、焼鈍分離材を表面に塗布された後、コイルの向きを穴竪に変更し、高温で焼鈍が行われる。高温焼鈍後、コイルの向きを再び、穴横に変更し、次工程である平坦化焼鈍設備で処理されるが、コイルは非常にルーズな状態で巻かれた状態になっており、コイルの向きを穴横に変更した時からコイルの形状(穴径及び外径)は変形(潰れ)を余儀なくされる。
そのため、平坦化焼鈍設備の入側のコイル巻き解きリールに挿入するコイル搬送台車の上では、コイルは変形を生じた状態となり、コイルの穴の形状も大きく変形し、コイル巻き解きリールの軸の外径とコイルの穴との間の間隙がなくなり、コイルをコイル巻き解きリールの軸に挿入することが容易でなく、また、自動で挿入することが極めて困難であった。この作業を行うには、手動で、冶具を用いて、コイルの形状を矯正したり、何回も作業をやり直したりせざるをえなかった。そのため、人手を多く要し、入側のコイルハンドリングに多大な時間を要し、ハンドリング時間の制約から平滑化焼鈍設備での鋼板の処理速度を速くすることができなく、小規模設備にならざるを得なく、コスト高が問題となっていた。
【0003】
なお、下記(1)又は(2)のような技術がある。
(1)コイル搬送台車の進行方向に向かって、進行方向の前後端部に昇降自在のコイル転倒防止用のストッパーを設ける技術は知られている(例えば、特許文献1参照)
(2)コイル置き台の傾きを、水平となす角度を45°〜55°とし、コイル自重を支える箇所を2つの傾斜部のみとし、この範囲に制御することにより、コイルの潰れによる変形を矯正する技術も知られている(例えば、特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平06−39214 号
【特許文献2】特開2006−281306号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記(1)の技術の場合は、コイル搬送台車にコイル搬送台車の進行方向に向かって、進行方向の前後端部に昇降自在のコイル転倒防止用ストッパーをつけたものであり、コイルの形状を変形矯正する機能は有せず、コイルの変形矯正にはなんら有効ではない。
また、前記(2)の技術の場合は、コイル自重を支える箇所を2つの傾斜部のみとされており、コイル搬送台車に適用することは構造上困難であり、コイルの大きさ(外径)の変化に対する技術ではない。
以上のように、ルーズコイルに対する形状の変形抑制に対応したコイル搬送台車には、問題が内在するが、決定的な対策が施されないままの状態であり、結果として、コイル外径の異なるコイルの搬送装置による平坦化焼鈍設備へのコイル搬入(コイル巻き解きリールへの挿入)は出来ず、一般的には、コイルを外側から吊り布で吊り上げ、コイルの穴の両端からコーンを挿入して固定するコーンタイプのコイル巻き解きリールにしか使われることはなかった。
そのため、コイル搬入を自動化することが出来ず、コスト増を招くとともに、安全の確保も不十分であった。
そこで、本発明の目的は、コイル径の異なるコイルの形状の変形を矯正し、平坦化焼鈍設備へのコイル搬入を自動で行えるコイル搬送台車、及びコイルの搬送方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下の通りである。
(1)コイルを載荷するコイルスキッドを備えてレール上を走行自在とされるコイル搬送台車において、前記コイル搬送台車には、
コイルスキッドを昇降自在に支持するコイルスキッド昇降支持機構と、
前記コイルスキッドの前記コイル搬送台車の走行方向に向かって左右両側にそれぞれ回動可能に設けられると共に先端側が相互に接近又は離反移動可能に対向するように設けられたコイル変形矯正用アームと、
前記対向するコイル変形矯正用アームによりコイルに付加する矯正荷重を制御するための矯正荷重制御手段を有することを特徴とするコイル搬送台車。
(2)前記コイル変形矯正用アームのコイルとの接触面の曲率半径をR、コイル外径の曲率半径をROとした場合のR/ROの値が少なくとも0.95とされていることを特徴とする前記(1)記載のコイル搬送台車。
(3)前記コイルが高温仕上焼鈍済み方向性電磁鋼板のコイルであることを特徴とする前記(1)または(2)に記載のコイル搬送台車。
(4)前記(1)から(3)のいずれか1項に記載のコイル搬送台車によりコイルの変形を矯正後搬送することを特徴とするコイルの搬送方法。
(5)コイルの板厚寸法と板幅寸法と材質とを一定とし、前記コイルの外径をパラメータとする変数として、前記コイル変形矯正用アームによりコイルに加える矯正荷重とコイルの穴の最小径の関係を求め、
コイルの穴の最小径がコイル巻き解きリールの外径より大きくなる矯正荷重を各パラメータにおける最適矯正荷重とし、
前記各パラメータにおける前記最適矯正荷重でコイルを矯正することを特徴とする前記(4)に記載のコイルの搬送方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コイル径の異なるコイルの変形を矯正し、コイル搬送台車で、平坦化焼鈍設備の入側のコイル巻き解きリールに円滑に挿入することができる。これにより、コイルの平滑化焼鈍設備の入側のコイル巻き解きリールへの挿入を短時間に、且つ、人手をかけることなくできるようになり、平滑化焼鈍設備の高速化・大型化を可能し、コスト低減が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明によるコイルのコイル変形矯正機能を有するコイル搬送台車とコイル変形の矯正方法の概要を示す図である。
【図2】本発明によるコイルのコイル変形矯正機能を有するコイル搬送台車とコイル変形の矯正方法の概要を示す図である。
【図3】本発明によるコイルのコイル変形矯正機能を有するコイル搬送台車とコイル変形の矯正方法の概要を示す図である。
【図4】本発明によるコイルのコイル変形矯正機能を有するコイル搬送台車による大小のコイル径の矯正方法の概要を示す図である。
【図5】本発明によるコイルのコイル変形矯正機能を有するコイル搬送台車による大小のコイル径の矯正方法の概要を示す図である。
【図6】本発明によるコイル搬送台車を使いコイル巻き解きリールへのコイルの挿入を示した図である。
【図7】図6の一部を拡大して示す一部縦断面図である。
【図8】コイルのコイル外径とコイル変形矯正用アームの押し付け圧の関係の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らは、ルーズな度合いが大きな方向性電磁鋼板の高温仕上げ済みのコイル1を穴横の状態で、コイル1の変形を矯正する方案を検討した。その結果、断面円弧の押圧面を有するコイル変形矯正用アーム31でコイル外周面を押圧して矯正することにより、コイル1の穴を真円に近づけることが可能なことを解明し、更に、コイル外径の異なるコイル1に対し、矯正するアームの形状及び押圧等をさまざま変更し、本発明に至った。
以下、図面に基づいて、本発明について詳細に説明する。
【0010】
図1〜図3に、本発明によるコイル1のコイル変形矯正機能を有するコイル搬送台車2の概要を示す。
【0011】
本発明のコイル搬送台車2は、大きく、以下の4つの機能を有している。
(1)コイル1を載荷する機能
(2)コイルスキッドを昇降自在に支持するコイルスキッド昇降支持機能
(3)コイル変形矯正機能
(4)コイル搬送台車を走行させる機能
以下、順に説明する。
【0012】
(1)コイル1を載荷する機能:コイル1を直接載荷し、コイル下部の形状を維持するとともに、コイル1に疵をつけないように材質が非鉄材料(例えば、繊維強化硬質ゴム製材料、或いは非鉄製金属材料)から構成されたコイルスキッドパット22、そのコイルスキッドパット22の荷重を支持するコイルスキッド21から構成される。前記コイルスキッドパット22はコイルスキッド21の上部に取り付けられている。
なお、前記のコイルスキッド21は、台車コイル搬送台車フレーム11上に設けられていると共に走行方向と直角な方向に延長する溝を備え、その溝部分に後記のコイル変形矯正用アーム開閉シリンダー33を配置可能にしている。
【0013】
(2)コイルスキッドを昇降自在に支持するコイルスキッド昇降支持機能:コイル1を載荷した状態のコイルスキッド21を昇降させる液圧ジャッキ等からなる伸縮式の昇降シリンダー15、その昇降シリンダー15をコイル搬送台車フレーム11に取り付ける昇降シリンダートラニオン16及び昇降シリンダー取り付けブラケット17、コイルスキッド21の昇降が円滑(垂直)に行われるよう昇降シリンダー15の伸縮をガイドする昇降シリンダーガイドロッド18、その昇降シリンダーガイドロッド18をガイドすると共にコイル搬送台車フレーム11に取り付けるための昇降シリンダーガイドロッド案内用ブラケット19から主要部が構成される。
前記実施形態では、コイルスキッドを昇降自在に支持するコイルスキッド昇降支持機構は、昇降シリンダートラニオン16及び昇降シリンダー取り付けブラケット17を介してコイル搬送台車フレーム11に設置されコイルスキッドに連結された伸縮式の昇降シリンダー15と、昇降シリンダーガイドロッド18をガイドしコイル搬送台車フレーム11側に昇降シリンダーガイドロッド案内用ブラケット19とにより主要部が構成されている。
前記の昇降シリンダー15は、これに取り付けられた昇降シリンダートラニオン16を支持する昇降シリンダー取り付けブラケット17がコイル搬送台車フレーム11に固定されることで、コイル搬送台車フレーム11に取り付けられている。前記の昇降シリンダーガイドロッド案内用ブラケット19は昇降シリンダー取り付けブラケット17に固定されている。
【0014】
(3)コイル変形矯正機能:コイル1を載荷した状態のコイルスキッド21の両側のコイル搬送台車2の進行方向(走行方向)に対し垂直に位置し、コイル1の外周部の両側からコイル1にこれを抱き込むように荷重を付加し、コイル1の外径及び穴内径の変形を矯正するとともに、コイル1に疵をつけないように材質が非鉄材料から構成された断面弧状のコイル変形矯正用アームパッド32、そのコイル変形矯正用アームパッド32の荷重を支持するコイル変形矯正用アーム31、そのコイル変形矯正用アーム31に圧力を加えるコイル変形矯正用アーム開閉シリンダー33、コイル変形矯正用アーム31が円弧状に動くためのコイル変形矯正用アーム開閉シリンダー支点ピン34から構成される。
前記コイルスキッド21における前記コイル搬送台車の走行方向に向かって左右両側にそれぞれコイル変形矯正用アーム31の基端側が横軸からなる前記支点ピン34により回動可能に設けられると共に、各コイル変形矯正用アーム31の先端側が相互に接近又は離反移動可能に対向するように設けられている。
前記のコイル変形矯正用アーム開閉シリンダー33のシリンダー側及びピストン側がそれぞれ、間隔をおいて対向するコイル変形矯正用アーム31の中間部に同レベルに設けられた横軸を介して連結され、前記のコイル変形矯正用アーム開閉シリンダー33を伸長(又は短縮)することにより、対向する各コイル変形矯正用アーム31の先端側が離反(接近)する方向に動くようにされている。前記の各コイル変形矯正用アーム31は、その重心が前記支点ピン34の中心より、台車巾方向外側に位置するようにしておくと、各コイル変形矯正用アーム31の内側への傾倒を防止でき、また、各コイル変形矯正用アーム31の内側への傾倒を防止するために、各コイル変形矯正用アーム31を所定の角度範囲のみ回動可能にしてもよい。また、一方または両方のコイル変形矯正用アーム31の中間部と、コイル搬送台車フレーム11とを、横軸を介して図示省略の伸縮式シリンダにより連結して、各コイル変形矯正用アーム31を所定の角度回動可能にしてもよく、また、このような図示省略の伸縮式シリンダによる連結構造を、図示の形態のいずれか一方のコイル変形矯正用アーム31の動作に連動するように付加して、各コイル変形矯正用アーム31の傾倒を防止するようにするとよい。
コイル変形矯正用アーム31の先端部は、断面弧状とされ、その部分に断面弧状のコイル変形矯正用アームパッド32が取り付けられている。
コイル変形矯正用アーム開閉シリンダー33に供給する流体を加圧する圧力は、可変式で自由な設定にすることが可能な構造となっている(図示を省略した)。
加圧方式としては、公知の油圧ポンプを利用した圧油を利用してもよく、油圧を可変にする方策として、比例電磁弁が使われることが多いが、油圧ポンプ、及び、比例電磁弁の方式に限定されるものではない。
前記の対向するコイル変形矯正用アーム31によりコイル1に付加する矯正荷重は、コイル変形矯正用アーム開閉シリンダー33の伸縮量を制御することによる矯正荷重制御手段により制御される。
また、コイル変形矯正用アームパッド32のコイル1の外周部との接触面の曲率半径Rは、コイル外径の曲率半径をRoとすると、R/Ro=0.95以上とする。R/Ro<0.95では、コイル変形矯正用アームパッド32がコイル外周部に局部接触し、疵をつけるからである。また、R/Roが1.3以上では、コイル外形に比べ、コイル変形矯正用アームがコイル通板方向に長くなりすぎ、機長が長くなりすぎ、実用的でないからである。したがって、0.95≦R/Roであり、0.95≦R/Ro>1.3とするのが望ましい。
【0015】
(4)コイル搬送台車を走行させる機能:コイル1を載荷された状態のコイルスキッド21は、昇降シリンダーを介してコイルカーフレーム11で荷重を受け、コイルカーフレーム11に取り付けられた車輪軸13を駆動し(非表示)、車輪12を軌条(レール9)上で駆動させる構造となっている。車輪軸13の駆動方式としては、一般的には、電動式であるが、油圧シリンダー方式でも、他方式でも、特に、限定されるものではない。
【0016】
コイル変形矯正用アーム31に付加する最適な荷重は、コイル1の板厚、板幅、材質、外径によって異なる。そのため、最適な荷重を予め求めることが必要である。コイル1の外径が大きくなると、コイルのつぶれ面に対する影響が、コイル自身の自重の増加に伴い大きくなる。
図8に、コイル1の板厚寸法、板幅寸法、材質を一定の元、コイルの外径をパラメータとする変数として変えて行った場合の変形矯正結果の試験例を示す。
【0017】
尚、試験に使用したコイル1は、板厚0.27mmの方向性電磁鋼板の高温仕上げ済みコイルであり、コイル内径(d2)は、610mm(真円換算)、板幅寸法は1270mm、外径(真円換算)は、1500〜2100mmであった。また、コイル変形矯正用アーム31の曲率半径は、1100mmであった。
【0018】
一般的に、平坦化焼鈍設備の入側のコイル巻き解きリール41は、拡縮機能を有しており、コイル1をコイル巻き解きリール41に挿入するときは、コイル巻き解きリール41をコイル内径より20mm〜40mm程度縮小し、コイル1を巻き解くときには、コイル巻き解きリール41をコイル内径より若干大きい程度に拡大する。この縮小から拡大のときの径の差は、大きくすると巻き解きリールの強度に影響する(リールの芯が細くなる)ので、20〜40mm程度が一般的である。
【0019】
この試験では、コイル巻き解きリール41の外径(D1)とコイル1の穴の最小径の差が20mmを許容限界とした。その時の挿入時のコイル巻き解きリール41の外径(D1)は590mmとなり、コイルの穴の直径方向の最短間が590mm以上を合格(●)、590mm未満を不合格とし、不合格のうち、コイル1の穴が横長のもの(矯正不足の場合で、図8では、形状矯正未達と記した)を▲で、コイル1の穴が縦長のもの(矯正過多の場合)を◆で、表示している。
この試験結果から、
(1)一定のコイル外径のコイル1に対しては、コイル変形矯正用アーム31の押し付け圧を増やしていくと、変形の潰れに対して矯正不足(穴は水平方向が長い楕円)の状態から、徐々に矯正され、コイル1の内周の形状は、真円状態に近づく。この時、コイル巻き解きリール41の外径(縮小の状態)とコイル1の穴の最小径の差は20mm以下となり、コイル1をコイル巻き解きリール41に挿入可能な状態となる。更に、コイル変形矯正用アーム31の押し付け圧を増やしていくと、形状の潰れに対して矯正過多(内周は、垂直方向が長い楕円)の状態になり、再び、コイル1をコイル巻き解きリール41に挿入することが困難となる。
(2)コイル内径(d2)は、610mm(真円換算)と一定として変えないで、コイル1の外径が大きくなるとともに、最適な荷重(矯正把持荷重)は大きくなることがわかる。
尚、上記のうち、目標とするコイル変形矯正用アーム31の押付圧の範囲では、押し付けられたコイル側に疵の発生は無かった。
また、コイル1の自重による変形(潰れ)は、コイルの材質(強度物性)、板厚、等の影響を受けることから、個々のコイルの形状の矯正に最適な変形矯正アーム押付圧(又は矯正荷重)は、コイル外径は勿論のこと、材質(強度物性)、板厚、コイル幅等を考慮して事前に試験して決められる。
表1に、コイル外径の曲率半径(RO)とコイル変形矯正用アームパット32のコイルとの接触面の曲率半径(R)の比(R/RO)とコイル外周部の疵の発生状況の調査例を示す。
コイル変形矯正用アームパット32のコイルとの接触面の曲率半径800〜1300mmで調査した。尚、試験に使用したコイルは、板厚0.23mmの方向性電磁鋼板の高温仕上げ済みコイルであり、コイル内径は、610mm(真円換算)、幅は1270mm、外径の曲率半径は、1050mmと800mmであった。
R/RO<0.95 となると、コイル外周部に疵が発生している。
【0020】
【表1】

【0021】
[実施例]
[実施例1]
板厚0.27mmの方向性電磁鋼板の高温仕上げ済みコイル1(コイル内径は、610mm(真円換算)、板幅は1255mm、外径(真円換算)は、2020mm)のコイルを、本発明のコイル搬送台車(図1〜図3、図4参照:コイル変形矯正用アーム31のアームパッド32の曲率半径は、1100mm)を使用して、平滑化焼鈍設備(図6)のコイル巻き解きリール41へ挿入した。
【0022】
コイル1を図1に示すように、コイル搬送台車のコイルスキッドパッド22にクレーン(図示省略)で載荷する。このとき、コイルの内周の形状は、水平方向が650mm、垂直方向が575mmの水平方向が長い楕円であった。この状態で、コイル変形矯正用アーム開閉シリンダー33に油圧の圧力を徐々に加え、コイル変形矯正用アーム31を、コイル変形矯正用アーム支点ピン34を中心に対向するコイル変形矯正用アーム31を閉じる方向に回動して接近させて、コイル変形矯正用アームパット32を介してコイル1の外周面に接触させた(図2参照)。更に、変形矯正開閉シリンダー33の油圧を圧力345KNまで作動させ、コイル変形矯正用アーム31によりコイル変形矯正用アームパット32を介してコイル1に荷重(矯正荷重)を付加して、コイルの形状を矯正し、コイルの内周の形状を、水平方向が599mm、垂直方向が631mmの概ね真円まで矯正した。
【0023】
このコイル変形矯正用アームパッド32を介してコイル1をコイル変形矯正用アーム31で矯正した状態で、コイル搬送台車の車輪12を駆動装置により駆動して軌条9上をコイル巻き解きリール41に向かって走行させて、コイル巻き解きリール(コイル巻き戻しリール)41の近傍に搬送する。その後、昇降シリンダー15を伸長してコイルスキッド21と共にコイル1を上昇させ、コイル1の内周の中心点の高さを、コイル巻き解きリール41の軸芯に一致させた。
一方、コイル巻き解きリール41の外径を縮小(外径570mm)し、走行駆動装置を駆動してコイル搬送台車2をコイル巻き解きリール41側に移動し、コイル1の穴にコイル巻き解きリール41を挿入した。
この後、コイル巻き解きリール41を拡大(外径610mmに)し、コイル変形矯正用アーム開閉シリンダー33の圧力を抜き(コイル変形矯正用アーム開閉シリンダー33を伸長して矯正荷重を開放し)、対向するコイル変形矯正用アーム31をコイル変形矯正用アーム支点ピン34を中心に開くように回動して、コイル変形矯正用アーム31を開放する。最後に、昇降シリンダー15を短縮してコイルスキッド21を下降させ、走行駆動装置によりコイル搬送台車2の車輪12を駆動して軌条9上を走行させ、コイル巻き解きリール41よりオフラインへコイル搬送台車2を搬送して、作業を完了した。
【0024】
尚、矯正後のコイル1は、平滑化焼鈍設備通板後、コイル変形矯正用アームパッド32等による疵発生等はなかった。
【0025】
[実施例2]
板厚0.23mmの方向性電磁鋼板の高温仕上げ済みコイル1(コイル内径は、610mm(真円換算)、幅は1555mm、外径(真円換算)は、1560mm)のコイル1を本発明のコイル搬送台車2(図1〜図3、図4参照:コイル変形矯正用アーム31のアームパッド32の曲率半径は、1100mm)を使用して、平滑化焼鈍設備(図6)のコイル巻き解きリール41へ挿入した。
尚、コイル1の内周の形状は、水平方向が640mm、垂直方向が585mmの水平方向が長い楕円であった。コイル変形矯正用アーム開閉シリンダー33を圧力90KNまで作動させ、コイル変形矯正用アーム31によりコイル変形矯正用アームパット32を介してコイル1に荷重(矯正荷重)を付加して、コイル1の変形を矯正し、コイルの内周の形状を、水平方向が615mm、垂直方向が605mmの概ね真円まで矯正した。
この状態で、実施例1と同様にコイル搬送台車2及び昇降シリンダー15を動作させて、平滑化焼鈍設備(図6)のコイル巻き解きリール41へ挿入できた。
尚、矯正後のコイル1は、平滑化焼鈍設備通板後、コイル変形矯正用アームパッド32等による疵発生等はなかった。
【符号の説明】
【0026】
1 コイル
2 コイル搬送台車
4 土木基礎(コンクリート基礎)
9 軌条
11 コイル搬送台車フレーム
12 車輪
13 車軸
14 軸受け
15 昇降シリンダー
16 昇降シリンダートラニオン
17 昇降シリンダー取付けブラケット
18 昇降シリンダーガイドロッド
19 昇降シリンダーガイドロッド案内ブラケット
20 昇降シリンダーロッド
21 コイルスキッド
22 コイルスキッドパッド
31 コイル変形矯正用アーム
32 コイル変形矯正用アームパッド
33 コイル変形矯正用アーム開閉シリンダー
34 コイル変形矯正用アーム開閉シリンダー支点ピン
41 コイル巻き解きリール
42 コイル巻き解き装置本体
43 コイル巻き解き装置の駆動装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルを載荷するコイルスキッドを備えてレール上を走行自在とされるコイル搬送台車において、前記コイル搬送台車には、
コイルスキッドを昇降自在に支持するコイルスキッド昇降支持機構と、
前記コイルスキッドの前記コイル搬送台車の走行方向に向かって左右両側にそれぞれ基端側が回動可能に設けられると共に先端側が相互に接近又は離反移動可能に対向するように設けられたコイル変形矯正用アームと、
前記対向するコイル変形矯正用アームによりコイルに付加する矯正荷重を制御するための矯正荷重制御手段を有することを特徴とするコイル搬送台車。
【請求項2】
前記コイル変形矯正用アームのコイルとの接触面の曲率半径をR、コイル外径の曲率半径をROとした場合に、R/ROの値が少なくとも0.95とされていることを特徴とする請求項1記載のコイル搬送台車。
【請求項3】
前記コイルが高温仕上焼鈍済み方向性電磁鋼板のコイルであることを特徴とする請求項1または2に記載のコイル搬送台車。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のコイル搬送台車によりコイルの変形を矯正後搬送することを特徴とするコイルの搬送方法。
【請求項5】
コイルの板厚寸法と板幅寸法と材質とを一定とし、前記コイルの外径をパラメータとする変数として、前記コイル変形矯正用アームによりコイルに加える矯正荷重とコイルの穴の最小径の関係を求め、
コイルの穴の最小径がコイル巻き解きリールの外径より大きくなる矯正荷重を前記パラメータにおける最適矯正荷重とし、
前記パラメータにおける前記最適矯正荷重でコイルを矯正することを特徴とする請求項4に記載のコイルの搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−167705(P2011−167705A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31689(P2010−31689)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(596096799)ニッテツ八幡エンジニアリング株式会社 (10)
【Fターム(参考)】