コイル装置、および、電源モジュール
【課題】磁性体ブロックの面積によらずに所望のコイル半径を実現でき、モジュールサイズの大型化を抑制できるコイル装置、およびそのコイル装置を電源回路に備える電源モジュールの提供を図る。
【解決手段】コイル装置L5は積層基板52とターン構成線材4A,4Bとを備える。積層基板52は回路パターン55A〜55Cを備える。回路パターン55Bはターン構成パターンであり、コイルの1ターンを部分的に構成する。ターン構成線材4A,4Bは磁性体ブロック33に設けられ、回路パターン55Bに接続されてコイルの1ターンを部分的に構成する。磁性体ブロック33はコイルの磁路となる。
【解決手段】コイル装置L5は積層基板52とターン構成線材4A,4Bとを備える。積層基板52は回路パターン55A〜55Cを備える。回路パターン55Bはターン構成パターンであり、コイルの1ターンを部分的に構成する。ターン構成線材4A,4Bは磁性体ブロック33に設けられ、回路パターン55Bに接続されてコイルの1ターンを部分的に構成する。磁性体ブロック33はコイルの磁路となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コイルを回路基板に実装したコイル装置、および、そのコイル装置を電圧平滑回路に備える電源モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
DCDCコンバータなどで大電流出力を得るには、電圧平滑回路などにインダクタンス値の大きなチョークコイルを利用する必要がある。チョークコイルのインダクタンス値はコイル巻数やコイル半径に比例するため、インダクタンス値の大きなコイルでは、コイル巻数やコイル半径が大きいことが要件となる。一般にチョークコイルを実装する基板には許容面積があり、その制約を満足するためにはコイル巻数を増大する必要が有るため、チョークコイルの高背化は避けられない。
【0003】
また、チョークコイルは、コイル電極の断面積が大きいほどコイル電極による直流抵抗が小さくなって銅損を減らすことができる。また、チョークコイルの磁性体ブロックが厚ければ良好な直流重畳特性が得られる。これらの特性を実現するには、汎用品のチョークコイルでは断面積の大きいコイル電極と大型の磁性体コアとを利用する必要が有り、このような特性を利用するチョークコイルでも、高背化は避けられない。
【0004】
そこで、回路モジュールの薄型化を進展させるため、回路基板に設けた孔にチョークコイルの磁性体コアをはめ込む構成が採用されることがある(例えば特許文献1参照。)。
【0005】
図1は従来のコイル装置の構成例を説明する図である。図1(A)は、埋め込み式のチョークコイルLを基板に実装した構成を示す断面図である。図1(B)は、埋め込み式のチョークコイルLを基板に実装した構成を示す平面図である。
【0006】
このコイル装置101では、基板102に埋め込み孔103が設けられている。そして、埋め込み孔103にチョークコイルLが埋め込まれている。チョークコイルLは磁性体ブロック内に螺旋状にコイル電極となる線材を埋設した構成である。この構成では、基板102の厚み分だけ、コイル装置101の高さを抑制できる。
【特許文献1】特開2005−312159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記構成では、基板の厚み分の低背化を進展できるが、さらなる低背化は困難である。
【0008】
そこで本発明は、基板面積の制約を満足したままモジュールの低背化を進展できるコイル装置、およびそのコイル装置を電源回路に備える電源モジュールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のコイル装置は基板とターン構成パターンと磁性体ブロックとターン構成部とを備える。基板は複数の回路パターンを備える。ターン構成パターンは、複数の回路パターンとは別に基板に形成され、コイルの1ターンを部分的に構成する。磁性体ブロックはコイルの磁路を形成する。ターン構成部は磁性体ブロックに付設されるとともに、コイルの1ターンの残り部分に設けられて複数の回路パターンとターン構成パターンとのうちいずれか2つのパターンの間を接続する。
【0010】
この構成では、基板に設けるターン構成パターンと磁性体ブロックに設けるターン構成部とを接続してコイルのターンを構成するので、コイル半径が磁性体ブロックのサイズによらずに設定できる。したがって、同一面積の磁性体ブロックの内部に同一のインダクタンス値でコイルを収める構造に比べ、コイル巻数を抑制でき、磁性体ブロックの低背化を進展できる。
【0011】
少なくとも1つの回路パターンは、ターン構成部に導通する接続部の部分除去によりターン構成部との接続の解除が可能な構成である、または、前記接続部を部分除去した構成であると好適である。
【0012】
一般に、インダクタンス値を異ならせたモデルを提供するには、コイルやコイルを実装する回路パターンの再設計が必要になり、各モデルの製造ライン毎に異種の基板やコイルを容易する必要が有る。本構成では、基板の回路パターンのターン構成部との接続部をトリミングなどにより部分除去して、回路パターンとターン構成部との接続構成を変更でき、単一の設計のプリント基板から容易にインダクタンス値の異なる複数のモデルを製造でき、製品展開の自由度が高まる。
【0013】
磁性体ブロックは、コイルのコイル軸に垂直な基板主面に対する基板側面に対面して配置されると好適である。これにより、基板主面に垂直な方向でのコイル装置のサイズを抑制できる。
【0014】
磁性体ブロックは、基板側面に対面する側面対面部と、基板主面に設けたターン構成パターンに対面する主面対面部と、を備えると好適である。これにより、コイルからの漏れ磁束を抑制できる。
【0015】
磁性体ブロックは、複数のターン構成部を内装し、各ターン構成部は、基板主面に対して平行に配列されると好適である。これにより、コイル装置の基板主面に平行な面積は増大するが、低背化を進展できる。
【0016】
ターン構成部は、基板主面に垂直な方向の寸法が小さい扁平な形状であると好適である。これにより、コイル装置の基板主面に平行な面積は増大するが、低背化を進展できる。
【0017】
本発明の電源モジュールは、上述のコイル装置を電圧平滑回路に備えてもよい。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、基板に設けるターン構成パターンと磁性体ブロックに設けるターン構成部とを接続してコイルのターンを構成するので、磁性体ブロックの面積によらずに所望のコイル半径を実現できる。したがって、磁性体ブロックを低背化しても任意のインダクタンス値を設定でき、モジュールサイズの大型化を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
《第1の実施形態》
以下に、本発明の第1の実施形態に係るコイル装置を備える電源モジュールの構成を説明する。
【0020】
図2は本実施形態に係る電源モジュール1の概略の回路図である。電源モジュール1は、DC−DCコンバータ回路を構成していて、入力端子INからの直流入力の電圧を変換して出力端子OUTから直流出力を得る。そのため、電源モジュール1は、FETによるハーフブリッジ回路と、ハーフブリッジ回路を制御するDCDCコンバータ制御ICと、ハーフブリッジ回路の出力を平滑するチョークコイルであるコイル装置L1および平滑コンデンサCとを備える。コイル装置L1は、平滑コンデンサCとともに電圧平滑回路を構成し、FETのソースと出力端子OUTとの間に接続されている。このFETのソースには、DCDCコンバータ制御ICのソース電圧制御端子も接続されている。
【0021】
図3は、電源モジュール1の平面図であり、DCDCコンバータ制御ICのソース電圧制御端子とコイル装置L1と平滑コンデンサCとの概略の接続構造を主に示している。
【0022】
電源モジュール1は積層基板2と磁性体ブロック3とターン構成線材4A,4Bとを備える。積層基板2は、その主面に複数の回路パターン5A〜5Eと表面実装型のディスクリート素子であるDC−DCコンバータ制御ICと表面実装型の平滑コンデンサCとを備える。また、内層に回路パターン6を備える。
【0023】
回路パターン5Aは、DC−DCコンバータ制御ICのソース電圧制御端子と、ターン構成線材4Aの第一端との間を接続する。回路パターン5Bは、ターン構成線材4Aの第二端と、ターン構成線材4Bの第一端との間を接続する。回路パターン5Cは、ターン構成線材4Bの第二端を接続する。回路パターン5Dは、平滑コンデンサCの第一端子を接続する。回路パターン5Eは、平滑コンデンサCの第二端子を接続する。積層基板2の内層に設けた回路パターン6は、回路パターン5Cと回路パターン5Dとの間を、スルーホールを介して接続する。
【0024】
ここで、回路パターン5Bは本発明のターン構成パターンを構成していて、コイル装置L1の1ターンを部分的に構成する。ターン構成線材4A,4Bはその一部が磁性体ブロック3に内装されている。ターン構成線材4Aは回路パターン5Bと回路パターン5Aとの間に接続されて本発明のターン構成部を構成している。ターン構成線材4Bは回路パターン5Bと回路パターン5Cとの間に接続されて本発明のターン構成部を構成している。
【0025】
これにより、コイル装置L1は回路パターン5Bとターン構成線材4A,4Bとによる約1.5ターンの巻線を有し、基板主面に対して垂直なコイル軸を有するチョークコイルとして構成される。このチョークコイルのコイル半径は磁性体ブロック3のサイズよりも大きく、任意のインダクタンス値を設定するコイル巻数を抑制できるため、磁性体ブロック3の低背化を進展できる。
【0026】
図4は、コイル装置L1の概略の側面断面図である。
【0027】
磁性体ブロック3は、積層基板2の基板主面に対して垂直な基板側面に対面するように配置していて、コイル装置L1の磁路を構成する。この磁性体ブロック3は、コの字型形状のブロックとI字形状のブロックとにより矩形管状に形成していて、管内にターン構成線材4A,4Bと充填剤7とを内装している。なお、充填剤7は必須の構成ではなく、省いても良い。このような磁性体ブロック3により、磁性体ブロック3と積層基板2との重なりの分だけ電源モジュールの低背化を実現している。
【0028】
また、ターン構成線材4A,4Bは基板側面に対して垂直な方向に配列している。このため、磁性体ブロック3を低背に維持したまま、磁性体ブロック3を厚く構成することが容易になり、直流重畳特性を改善できる。また、ターン構成線材4A,4Bは基板主面に対して垂直な方向の寸法を小さくして扁平に構成している。このため、ターン構成線材4A,4Bを内装する磁性体ブロック3を低背に維持したまま、ターン構成線材4A,4Bの断面積を大きく構成でき、ターン構成線材4A,4Bの直流抵抗を抑制して銅損を抑え、DCDCコンバータ回路の効率を改善できる。
【0029】
なお、以上の構成の電源モジュールを出力電圧12Vとなるように実際に製作すると、コイル装置L1のインダクタンス値10.5μHで、その外形寸法が約40×50×3mm、DCDCコンバータ電力伝送効率91%であった。一方、図1に示す従来構成で電源モジュールを実際に製作した場合、出力電圧12Vでは、コイル装置のインダクタンス値10.0μHで、外形寸法は約40×40×6mmで、伝送効率90%、であった。これにより本実施形態の構成では、従来構成よりも面積は大きくなるがより低背化でき、DCDCコンバータの電力伝送効率も改善可能になることが確認できた。
【0030】
《第2の実施形態》
以下に、本発明の第2の実施形態に係るコイル装置の構成を説明する。本実施形態のコイル装置L2は、第1の実施形態のコイル装置L1と主に磁性体ブロックの形状が相違する。ここで、コイル装置L1と同様な構成には同じ記号を付して説明を省く。
【0031】
図5は、コイル装置L2の概略の側面断面図である。コイル装置L2は磁性体ブロック23を備える。磁性体ブロック23は、積層基板2の基板側面に対面するように配置していて、管内にターン構成線材24A,24Bと充填剤27とを内装している。ターン構成線材24A,24Bは基板主面に対して垂直な方向に配列している。この構成では、電源モジュールの低背化を実現しながら、磁性体ブロック23の基板主面に平行な面積を低減している。なお、この構成では、ターン構成パターンを積層基板2の複数層に設ける場合に、ターン構成パターンとターン構成線材24A,24Bとの接続構造を簡易にでき好適である。
【0032】
《第3の実施形態》
以下に、本発明の第3の実施形態に係るコイル装置を備える電源モジュールの構成を説明する。本実施形態の電源モジュール31は、第1の実施形態の電源モジュール1と主に磁性体ブロックの形状が相違する。ここで、電源モジュール1と同様な構成には同じ記号を付して説明を省く。
【0033】
図6は、電源モジュール31の概略の平面図であり、図7は電源モジュール31に備えるコイル装置L3の概略の側面断面図である。
【0034】
電源モジュール31は磁性体ブロック33を備える。磁性体ブロック33は、基板側面に対面する側面対面部33Aと、基板主面に対面する主面対面部33Bと、基板底面に対面する底面対面部33Cとを備えるコの字形状に形成している。この磁性体ブロック33はその内隅部に断面円形のターン構成線材34A,34Bを配置した状態で、内隅部に積層基板2がはめ込まれる。主面対面部33Bは、基板主面に設けるターン構成パターンである回路パターン5Bを覆うように設け、底面対面部33Cは、主面対面部33Bと同サイズで設けている。この構成では、磁性体ブロック33と積層基板2との重なりの分だけ電源モジュールの低背化を実現しながら、コイル装置L3での漏れ磁束を抑制できる。
【0035】
《第4の実施形態》
以下に、本発明の第4の実施形態に係るコイル装置の構成を説明する。
本実施形態のコイル装置L4は、積層基板の回路パターンをトリミングなどにより部分除去してチョークコイルとして機能させる構成である。
【0036】
図8はトリミング前の積層基板42の概略の斜視図である。なお、この状態で磁性体ブロックおよびパターン構成線材を実装してもチョークコイルとしては機能しないが、図中に点線で示す位置のいくつかをトリミングするとともに、磁性体ブロックおよびパターン構成線材を実装することにより、巻線構造を選択してチョークコイルとしての機能を発現させることができる。なお、磁性体ブロックおよびパターン構成線材を実装した後で回路パターンをトリミングするようにしてもよく、回路パターンをトリミングした後で磁性体ブロックおよびパターン構成線材を実装するようにしてもよい。
【0037】
図9は、コイル装置L4をトリミングした構成例の要部斜視図である。コイル装置L4は積層基板42と磁性体ブロック43とターン構成線材44A,44Bとを備える。積層基板42は、その主面に複数の回路パターン45A〜45Cを備え、内層に回路パターン46を備える。
【0038】
磁性体ブロック43はコイル装置L4の磁路を構成するものであり、積層基板42の基板主面に表面実装されている。ターン構成線材44A,44Bは、磁性体ブロック43に内装されている。
【0039】
回路パターン45Aは、DC−DCコンバータ制御ICのソース電圧制御端子と、ターン構成線材44Aの第一端との間を接続するものであり、パッチ電極47Aと線路部47Bと接続解除部47C,47Dとを備える。パッチ電極47Aは、ターン構成線材44Aの第一端が載置されてハンダ付けされる。線路部47Bは、パッチ電極47Aとの接続部から延設される。接続解除部47C,47Dは、後述する回路パターン45Bとの接続を解除するために、回路パターン45Bとの接続部の電極をトリミングした後に残る電極である。
【0040】
回路パターン45Bは、ターン構成線材44Aの第二端とターン構成線材44Bの第一端との間を接続するものであり、パッチ電極48Aとパッチ電極48Bと線路部48Cと接続解除部48D,48E,48Fとを備える。パッチ電極48Aは、ターン構成線材44Aの第二端が載置されてハンダ付けされる。パッチ電極48Bは、ターン構成線材44Bの第一端が載置されてハンダ付けされる。線路部48Cは、パッチ電極48Aとの接続部からパッチ電極48Bとの接続部まで延設される。接続解除部48Dは、後述する回路パターン45Cとの接続を解除するために、回路パターン45Cとの接続部の電極をトリミングした後に残る電極である。接続解除部48E,48Fは、回路パターン45Aとの接続を解除するために、回路パターン45Aとの接続部の電極をトリミングした後に残る電極である。
【0041】
回路パターン45Cは、平滑コンデンサCへの接続を中継する内層の回路パターン46にスルーホールを介して接続されるとともに、ターン構成線材44Bの第二端に接続されるものであって、パッチ電極49Aと接続解除部49Bとを備える。パッチ電極49Aは、ターン構成線材44Bの第二端が載置されてハンダ付けされる。接続解除部49Bは、回路パターン45Bとの接続を解除するために、回路パターン45Bとの接続部の電極をトリミングした後に残る電極である。
【0042】
ここで、回路パターン45Bは本発明のターン構成パターンを構成していて、コイル装置L4の1ターンを部分的に構成する。ターン構成線材44A,44Bはその一部が磁性体ブロック43に内装されている。ターン構成線材44Aは回路パターン45Bと回路パターン45Aとの間に接続されて本発明のターン構成部を構成している。ターン構成線材44Bは回路パターン45Bと回路パターン45Cとの間に接続されて本発明のターン構成部を構成している。
【0043】
これにより、コイル装置L4は回路パターン45Bとターン構成線材44A,44Bとにより約1.5ターンの巻線を有し、基板主面に対して垂直なコイル軸を有するチョークコイルとして構成される。このチョークコイルのコイル半径は、磁性体ブロック43のサイズよりも大きく、磁性体ブロックのサイズの制約無くトリミングにより任意のインダクタンス値を設定できる。
【0044】
なお、本構成例の他にも、接続解除部48D−49B間をトリミングせずに回路パターン45Bのパッチ電極48Aと線路部48Cとの接続部をトリミングするようにして、ターン構成線材44Aが直接、回路パターン45Cを介して平滑コンデンサCに接続されるように構成しても良い。また、接続解除部47D−48F間をトリミングせずに回路パターン45Aのパッチ電極47Aと線路部47Bとの接続部をトリミングして、ターン構成線材44Aを介さないコイルの接続構造としてもよい。本発明は、基板上の回路パターンのトリミングによって、コイルの接続構造を構成するものであれば、どのようなものも好適に実施できる。
【0045】
《第5の実施形態》
以下に、本発明の第5の実施形態に係るコイル装置の構成を説明する。
【0046】
本実施形態のコイル装置L5は、第3の実施形態のコイル装置L3と略同様な構成であるが、積層基板の回路パターンをトリミングなど部分除去して構成する。ここで、コイル装置L3と同様な構成には同じ符号を付し説明を省く。
【0047】
図10はトリミング前の積層基板52の要部の平面図である。なお、この状態で磁性体ブロックおよびパターン構成線材を実装してもチョークコイルとしては機能しないが、図中に点線で示す位置のいくつかをトリミングするとともに、磁性体ブロックおよびパターン構成線材を実装することにより、巻線構造を選択してチョークコイルとしての機能を発現させることができる。なお、磁性体ブロックおよびパターン構成線材を実装した後で回路パターンをトリミングするようにしてもよく、回路パターンをトリミングした後で磁性体ブロックおよびパターン構成線材を実装するようにしてもよい。
【0048】
図11はコイル装置L5をトリミングした構成例の要部平面図である。コイル装置L5は積層基板52を備える。積層基板52は、その主面に複数の回路パターン55A〜55Cを備える。
【0049】
回路パターン55Aは接続解除部57を備える。接続解除部57は、後述する回路パターン55Bとの接続を解除するために、回路パターン55Bとの接続部の電極をトリミングした後に残る電極である。
【0050】
回路パターン55Bは接続解除部58A,58Bを備える。接続解除部58Aは、後述する回路パターン55Cとの接続を解除するために、回路パターン55Cとの接続部の電極をトリミングした後に残る電極である。接続解除部58Bは、回路パターン55Aとの接続を解除するために、回路パターン55Aとの接続部の電極をトリミングした後に残る電極である。
【0051】
回路パターン55Cは接続解除部59を備える。接続解除部59は、回路パターン55Bとの接続を解除するために、回路パターン55Bとの接続部の電極をトリミングした後に残る電極である。
【0052】
これにより、コイル装置L5は回路パターン55Bとターン構成線材4A,4Bとにより約1.5ターンの巻線を有し、基板主面に対して垂直なコイル軸を有するチョークコイルとして構成される。
【0053】
以上の各実施形態で示したように本発明は実施できるが、本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、本発明の範囲には特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】従来のコイル装置の構成例を説明する図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る電源モジュールの概略の回路図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る電源モジュールの概略の平面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るコイル装置周辺の要部を拡大表示した斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るコイル装置周辺の要部を拡大表示した側面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る電源モジュールの概略の平面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係るコイル装置周辺の要部を拡大表示した斜視図である。
【図8】本発明の第4の実施形態に係るコイル装置周辺のトリミング前の回路パターンを拡大表示した斜視図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係るコイル装置周辺の要部を拡大表示した斜視図である。
【図10】本発明の第5の実施形態に係るコイル装置周辺のトリミング前の回路パターンを拡大表示した斜視図である。
【図11】本発明の第5の実施形態に係る電源モジュールの概略の平面図である。
【符号の説明】
【0055】
1,31…電源モジュール
2,42,52…積層基板
3,23,33,43…磁性体ブロック
4A,4B,24A,24B,34A,34B,44A,44B…ターン構成線材
7,27…充填剤
5A〜5E,645A〜45C,46,55A〜55C,…回路パターン
C…平滑コンデンサ
L1〜L5…コイル装置
【技術分野】
【0001】
この発明は、コイルを回路基板に実装したコイル装置、および、そのコイル装置を電圧平滑回路に備える電源モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
DCDCコンバータなどで大電流出力を得るには、電圧平滑回路などにインダクタンス値の大きなチョークコイルを利用する必要がある。チョークコイルのインダクタンス値はコイル巻数やコイル半径に比例するため、インダクタンス値の大きなコイルでは、コイル巻数やコイル半径が大きいことが要件となる。一般にチョークコイルを実装する基板には許容面積があり、その制約を満足するためにはコイル巻数を増大する必要が有るため、チョークコイルの高背化は避けられない。
【0003】
また、チョークコイルは、コイル電極の断面積が大きいほどコイル電極による直流抵抗が小さくなって銅損を減らすことができる。また、チョークコイルの磁性体ブロックが厚ければ良好な直流重畳特性が得られる。これらの特性を実現するには、汎用品のチョークコイルでは断面積の大きいコイル電極と大型の磁性体コアとを利用する必要が有り、このような特性を利用するチョークコイルでも、高背化は避けられない。
【0004】
そこで、回路モジュールの薄型化を進展させるため、回路基板に設けた孔にチョークコイルの磁性体コアをはめ込む構成が採用されることがある(例えば特許文献1参照。)。
【0005】
図1は従来のコイル装置の構成例を説明する図である。図1(A)は、埋め込み式のチョークコイルLを基板に実装した構成を示す断面図である。図1(B)は、埋め込み式のチョークコイルLを基板に実装した構成を示す平面図である。
【0006】
このコイル装置101では、基板102に埋め込み孔103が設けられている。そして、埋め込み孔103にチョークコイルLが埋め込まれている。チョークコイルLは磁性体ブロック内に螺旋状にコイル電極となる線材を埋設した構成である。この構成では、基板102の厚み分だけ、コイル装置101の高さを抑制できる。
【特許文献1】特開2005−312159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記構成では、基板の厚み分の低背化を進展できるが、さらなる低背化は困難である。
【0008】
そこで本発明は、基板面積の制約を満足したままモジュールの低背化を進展できるコイル装置、およびそのコイル装置を電源回路に備える電源モジュールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のコイル装置は基板とターン構成パターンと磁性体ブロックとターン構成部とを備える。基板は複数の回路パターンを備える。ターン構成パターンは、複数の回路パターンとは別に基板に形成され、コイルの1ターンを部分的に構成する。磁性体ブロックはコイルの磁路を形成する。ターン構成部は磁性体ブロックに付設されるとともに、コイルの1ターンの残り部分に設けられて複数の回路パターンとターン構成パターンとのうちいずれか2つのパターンの間を接続する。
【0010】
この構成では、基板に設けるターン構成パターンと磁性体ブロックに設けるターン構成部とを接続してコイルのターンを構成するので、コイル半径が磁性体ブロックのサイズによらずに設定できる。したがって、同一面積の磁性体ブロックの内部に同一のインダクタンス値でコイルを収める構造に比べ、コイル巻数を抑制でき、磁性体ブロックの低背化を進展できる。
【0011】
少なくとも1つの回路パターンは、ターン構成部に導通する接続部の部分除去によりターン構成部との接続の解除が可能な構成である、または、前記接続部を部分除去した構成であると好適である。
【0012】
一般に、インダクタンス値を異ならせたモデルを提供するには、コイルやコイルを実装する回路パターンの再設計が必要になり、各モデルの製造ライン毎に異種の基板やコイルを容易する必要が有る。本構成では、基板の回路パターンのターン構成部との接続部をトリミングなどにより部分除去して、回路パターンとターン構成部との接続構成を変更でき、単一の設計のプリント基板から容易にインダクタンス値の異なる複数のモデルを製造でき、製品展開の自由度が高まる。
【0013】
磁性体ブロックは、コイルのコイル軸に垂直な基板主面に対する基板側面に対面して配置されると好適である。これにより、基板主面に垂直な方向でのコイル装置のサイズを抑制できる。
【0014】
磁性体ブロックは、基板側面に対面する側面対面部と、基板主面に設けたターン構成パターンに対面する主面対面部と、を備えると好適である。これにより、コイルからの漏れ磁束を抑制できる。
【0015】
磁性体ブロックは、複数のターン構成部を内装し、各ターン構成部は、基板主面に対して平行に配列されると好適である。これにより、コイル装置の基板主面に平行な面積は増大するが、低背化を進展できる。
【0016】
ターン構成部は、基板主面に垂直な方向の寸法が小さい扁平な形状であると好適である。これにより、コイル装置の基板主面に平行な面積は増大するが、低背化を進展できる。
【0017】
本発明の電源モジュールは、上述のコイル装置を電圧平滑回路に備えてもよい。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、基板に設けるターン構成パターンと磁性体ブロックに設けるターン構成部とを接続してコイルのターンを構成するので、磁性体ブロックの面積によらずに所望のコイル半径を実現できる。したがって、磁性体ブロックを低背化しても任意のインダクタンス値を設定でき、モジュールサイズの大型化を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
《第1の実施形態》
以下に、本発明の第1の実施形態に係るコイル装置を備える電源モジュールの構成を説明する。
【0020】
図2は本実施形態に係る電源モジュール1の概略の回路図である。電源モジュール1は、DC−DCコンバータ回路を構成していて、入力端子INからの直流入力の電圧を変換して出力端子OUTから直流出力を得る。そのため、電源モジュール1は、FETによるハーフブリッジ回路と、ハーフブリッジ回路を制御するDCDCコンバータ制御ICと、ハーフブリッジ回路の出力を平滑するチョークコイルであるコイル装置L1および平滑コンデンサCとを備える。コイル装置L1は、平滑コンデンサCとともに電圧平滑回路を構成し、FETのソースと出力端子OUTとの間に接続されている。このFETのソースには、DCDCコンバータ制御ICのソース電圧制御端子も接続されている。
【0021】
図3は、電源モジュール1の平面図であり、DCDCコンバータ制御ICのソース電圧制御端子とコイル装置L1と平滑コンデンサCとの概略の接続構造を主に示している。
【0022】
電源モジュール1は積層基板2と磁性体ブロック3とターン構成線材4A,4Bとを備える。積層基板2は、その主面に複数の回路パターン5A〜5Eと表面実装型のディスクリート素子であるDC−DCコンバータ制御ICと表面実装型の平滑コンデンサCとを備える。また、内層に回路パターン6を備える。
【0023】
回路パターン5Aは、DC−DCコンバータ制御ICのソース電圧制御端子と、ターン構成線材4Aの第一端との間を接続する。回路パターン5Bは、ターン構成線材4Aの第二端と、ターン構成線材4Bの第一端との間を接続する。回路パターン5Cは、ターン構成線材4Bの第二端を接続する。回路パターン5Dは、平滑コンデンサCの第一端子を接続する。回路パターン5Eは、平滑コンデンサCの第二端子を接続する。積層基板2の内層に設けた回路パターン6は、回路パターン5Cと回路パターン5Dとの間を、スルーホールを介して接続する。
【0024】
ここで、回路パターン5Bは本発明のターン構成パターンを構成していて、コイル装置L1の1ターンを部分的に構成する。ターン構成線材4A,4Bはその一部が磁性体ブロック3に内装されている。ターン構成線材4Aは回路パターン5Bと回路パターン5Aとの間に接続されて本発明のターン構成部を構成している。ターン構成線材4Bは回路パターン5Bと回路パターン5Cとの間に接続されて本発明のターン構成部を構成している。
【0025】
これにより、コイル装置L1は回路パターン5Bとターン構成線材4A,4Bとによる約1.5ターンの巻線を有し、基板主面に対して垂直なコイル軸を有するチョークコイルとして構成される。このチョークコイルのコイル半径は磁性体ブロック3のサイズよりも大きく、任意のインダクタンス値を設定するコイル巻数を抑制できるため、磁性体ブロック3の低背化を進展できる。
【0026】
図4は、コイル装置L1の概略の側面断面図である。
【0027】
磁性体ブロック3は、積層基板2の基板主面に対して垂直な基板側面に対面するように配置していて、コイル装置L1の磁路を構成する。この磁性体ブロック3は、コの字型形状のブロックとI字形状のブロックとにより矩形管状に形成していて、管内にターン構成線材4A,4Bと充填剤7とを内装している。なお、充填剤7は必須の構成ではなく、省いても良い。このような磁性体ブロック3により、磁性体ブロック3と積層基板2との重なりの分だけ電源モジュールの低背化を実現している。
【0028】
また、ターン構成線材4A,4Bは基板側面に対して垂直な方向に配列している。このため、磁性体ブロック3を低背に維持したまま、磁性体ブロック3を厚く構成することが容易になり、直流重畳特性を改善できる。また、ターン構成線材4A,4Bは基板主面に対して垂直な方向の寸法を小さくして扁平に構成している。このため、ターン構成線材4A,4Bを内装する磁性体ブロック3を低背に維持したまま、ターン構成線材4A,4Bの断面積を大きく構成でき、ターン構成線材4A,4Bの直流抵抗を抑制して銅損を抑え、DCDCコンバータ回路の効率を改善できる。
【0029】
なお、以上の構成の電源モジュールを出力電圧12Vとなるように実際に製作すると、コイル装置L1のインダクタンス値10.5μHで、その外形寸法が約40×50×3mm、DCDCコンバータ電力伝送効率91%であった。一方、図1に示す従来構成で電源モジュールを実際に製作した場合、出力電圧12Vでは、コイル装置のインダクタンス値10.0μHで、外形寸法は約40×40×6mmで、伝送効率90%、であった。これにより本実施形態の構成では、従来構成よりも面積は大きくなるがより低背化でき、DCDCコンバータの電力伝送効率も改善可能になることが確認できた。
【0030】
《第2の実施形態》
以下に、本発明の第2の実施形態に係るコイル装置の構成を説明する。本実施形態のコイル装置L2は、第1の実施形態のコイル装置L1と主に磁性体ブロックの形状が相違する。ここで、コイル装置L1と同様な構成には同じ記号を付して説明を省く。
【0031】
図5は、コイル装置L2の概略の側面断面図である。コイル装置L2は磁性体ブロック23を備える。磁性体ブロック23は、積層基板2の基板側面に対面するように配置していて、管内にターン構成線材24A,24Bと充填剤27とを内装している。ターン構成線材24A,24Bは基板主面に対して垂直な方向に配列している。この構成では、電源モジュールの低背化を実現しながら、磁性体ブロック23の基板主面に平行な面積を低減している。なお、この構成では、ターン構成パターンを積層基板2の複数層に設ける場合に、ターン構成パターンとターン構成線材24A,24Bとの接続構造を簡易にでき好適である。
【0032】
《第3の実施形態》
以下に、本発明の第3の実施形態に係るコイル装置を備える電源モジュールの構成を説明する。本実施形態の電源モジュール31は、第1の実施形態の電源モジュール1と主に磁性体ブロックの形状が相違する。ここで、電源モジュール1と同様な構成には同じ記号を付して説明を省く。
【0033】
図6は、電源モジュール31の概略の平面図であり、図7は電源モジュール31に備えるコイル装置L3の概略の側面断面図である。
【0034】
電源モジュール31は磁性体ブロック33を備える。磁性体ブロック33は、基板側面に対面する側面対面部33Aと、基板主面に対面する主面対面部33Bと、基板底面に対面する底面対面部33Cとを備えるコの字形状に形成している。この磁性体ブロック33はその内隅部に断面円形のターン構成線材34A,34Bを配置した状態で、内隅部に積層基板2がはめ込まれる。主面対面部33Bは、基板主面に設けるターン構成パターンである回路パターン5Bを覆うように設け、底面対面部33Cは、主面対面部33Bと同サイズで設けている。この構成では、磁性体ブロック33と積層基板2との重なりの分だけ電源モジュールの低背化を実現しながら、コイル装置L3での漏れ磁束を抑制できる。
【0035】
《第4の実施形態》
以下に、本発明の第4の実施形態に係るコイル装置の構成を説明する。
本実施形態のコイル装置L4は、積層基板の回路パターンをトリミングなどにより部分除去してチョークコイルとして機能させる構成である。
【0036】
図8はトリミング前の積層基板42の概略の斜視図である。なお、この状態で磁性体ブロックおよびパターン構成線材を実装してもチョークコイルとしては機能しないが、図中に点線で示す位置のいくつかをトリミングするとともに、磁性体ブロックおよびパターン構成線材を実装することにより、巻線構造を選択してチョークコイルとしての機能を発現させることができる。なお、磁性体ブロックおよびパターン構成線材を実装した後で回路パターンをトリミングするようにしてもよく、回路パターンをトリミングした後で磁性体ブロックおよびパターン構成線材を実装するようにしてもよい。
【0037】
図9は、コイル装置L4をトリミングした構成例の要部斜視図である。コイル装置L4は積層基板42と磁性体ブロック43とターン構成線材44A,44Bとを備える。積層基板42は、その主面に複数の回路パターン45A〜45Cを備え、内層に回路パターン46を備える。
【0038】
磁性体ブロック43はコイル装置L4の磁路を構成するものであり、積層基板42の基板主面に表面実装されている。ターン構成線材44A,44Bは、磁性体ブロック43に内装されている。
【0039】
回路パターン45Aは、DC−DCコンバータ制御ICのソース電圧制御端子と、ターン構成線材44Aの第一端との間を接続するものであり、パッチ電極47Aと線路部47Bと接続解除部47C,47Dとを備える。パッチ電極47Aは、ターン構成線材44Aの第一端が載置されてハンダ付けされる。線路部47Bは、パッチ電極47Aとの接続部から延設される。接続解除部47C,47Dは、後述する回路パターン45Bとの接続を解除するために、回路パターン45Bとの接続部の電極をトリミングした後に残る電極である。
【0040】
回路パターン45Bは、ターン構成線材44Aの第二端とターン構成線材44Bの第一端との間を接続するものであり、パッチ電極48Aとパッチ電極48Bと線路部48Cと接続解除部48D,48E,48Fとを備える。パッチ電極48Aは、ターン構成線材44Aの第二端が載置されてハンダ付けされる。パッチ電極48Bは、ターン構成線材44Bの第一端が載置されてハンダ付けされる。線路部48Cは、パッチ電極48Aとの接続部からパッチ電極48Bとの接続部まで延設される。接続解除部48Dは、後述する回路パターン45Cとの接続を解除するために、回路パターン45Cとの接続部の電極をトリミングした後に残る電極である。接続解除部48E,48Fは、回路パターン45Aとの接続を解除するために、回路パターン45Aとの接続部の電極をトリミングした後に残る電極である。
【0041】
回路パターン45Cは、平滑コンデンサCへの接続を中継する内層の回路パターン46にスルーホールを介して接続されるとともに、ターン構成線材44Bの第二端に接続されるものであって、パッチ電極49Aと接続解除部49Bとを備える。パッチ電極49Aは、ターン構成線材44Bの第二端が載置されてハンダ付けされる。接続解除部49Bは、回路パターン45Bとの接続を解除するために、回路パターン45Bとの接続部の電極をトリミングした後に残る電極である。
【0042】
ここで、回路パターン45Bは本発明のターン構成パターンを構成していて、コイル装置L4の1ターンを部分的に構成する。ターン構成線材44A,44Bはその一部が磁性体ブロック43に内装されている。ターン構成線材44Aは回路パターン45Bと回路パターン45Aとの間に接続されて本発明のターン構成部を構成している。ターン構成線材44Bは回路パターン45Bと回路パターン45Cとの間に接続されて本発明のターン構成部を構成している。
【0043】
これにより、コイル装置L4は回路パターン45Bとターン構成線材44A,44Bとにより約1.5ターンの巻線を有し、基板主面に対して垂直なコイル軸を有するチョークコイルとして構成される。このチョークコイルのコイル半径は、磁性体ブロック43のサイズよりも大きく、磁性体ブロックのサイズの制約無くトリミングにより任意のインダクタンス値を設定できる。
【0044】
なお、本構成例の他にも、接続解除部48D−49B間をトリミングせずに回路パターン45Bのパッチ電極48Aと線路部48Cとの接続部をトリミングするようにして、ターン構成線材44Aが直接、回路パターン45Cを介して平滑コンデンサCに接続されるように構成しても良い。また、接続解除部47D−48F間をトリミングせずに回路パターン45Aのパッチ電極47Aと線路部47Bとの接続部をトリミングして、ターン構成線材44Aを介さないコイルの接続構造としてもよい。本発明は、基板上の回路パターンのトリミングによって、コイルの接続構造を構成するものであれば、どのようなものも好適に実施できる。
【0045】
《第5の実施形態》
以下に、本発明の第5の実施形態に係るコイル装置の構成を説明する。
【0046】
本実施形態のコイル装置L5は、第3の実施形態のコイル装置L3と略同様な構成であるが、積層基板の回路パターンをトリミングなど部分除去して構成する。ここで、コイル装置L3と同様な構成には同じ符号を付し説明を省く。
【0047】
図10はトリミング前の積層基板52の要部の平面図である。なお、この状態で磁性体ブロックおよびパターン構成線材を実装してもチョークコイルとしては機能しないが、図中に点線で示す位置のいくつかをトリミングするとともに、磁性体ブロックおよびパターン構成線材を実装することにより、巻線構造を選択してチョークコイルとしての機能を発現させることができる。なお、磁性体ブロックおよびパターン構成線材を実装した後で回路パターンをトリミングするようにしてもよく、回路パターンをトリミングした後で磁性体ブロックおよびパターン構成線材を実装するようにしてもよい。
【0048】
図11はコイル装置L5をトリミングした構成例の要部平面図である。コイル装置L5は積層基板52を備える。積層基板52は、その主面に複数の回路パターン55A〜55Cを備える。
【0049】
回路パターン55Aは接続解除部57を備える。接続解除部57は、後述する回路パターン55Bとの接続を解除するために、回路パターン55Bとの接続部の電極をトリミングした後に残る電極である。
【0050】
回路パターン55Bは接続解除部58A,58Bを備える。接続解除部58Aは、後述する回路パターン55Cとの接続を解除するために、回路パターン55Cとの接続部の電極をトリミングした後に残る電極である。接続解除部58Bは、回路パターン55Aとの接続を解除するために、回路パターン55Aとの接続部の電極をトリミングした後に残る電極である。
【0051】
回路パターン55Cは接続解除部59を備える。接続解除部59は、回路パターン55Bとの接続を解除するために、回路パターン55Bとの接続部の電極をトリミングした後に残る電極である。
【0052】
これにより、コイル装置L5は回路パターン55Bとターン構成線材4A,4Bとにより約1.5ターンの巻線を有し、基板主面に対して垂直なコイル軸を有するチョークコイルとして構成される。
【0053】
以上の各実施形態で示したように本発明は実施できるが、本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、本発明の範囲には特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】従来のコイル装置の構成例を説明する図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る電源モジュールの概略の回路図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る電源モジュールの概略の平面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るコイル装置周辺の要部を拡大表示した斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るコイル装置周辺の要部を拡大表示した側面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る電源モジュールの概略の平面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係るコイル装置周辺の要部を拡大表示した斜視図である。
【図8】本発明の第4の実施形態に係るコイル装置周辺のトリミング前の回路パターンを拡大表示した斜視図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係るコイル装置周辺の要部を拡大表示した斜視図である。
【図10】本発明の第5の実施形態に係るコイル装置周辺のトリミング前の回路パターンを拡大表示した斜視図である。
【図11】本発明の第5の実施形態に係る電源モジュールの概略の平面図である。
【符号の説明】
【0055】
1,31…電源モジュール
2,42,52…積層基板
3,23,33,43…磁性体ブロック
4A,4B,24A,24B,34A,34B,44A,44B…ターン構成線材
7,27…充填剤
5A〜5E,645A〜45C,46,55A〜55C,…回路パターン
C…平滑コンデンサ
L1〜L5…コイル装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の回路パターンを備える基板と、
前記複数の回路パターンとは別に前記基板に形成され、コイルの1ターンを部分的に構成するターン構成パターンと、
前記コイルの磁路を形成する磁性体ブロックと、
前記磁性体ブロックに付設されるとともに、前記コイルの1ターンの残り部分に設けられて前記複数の回路パターンと前記ターン構成パターンとのうちのいずれか2つのパターンの間を接続するターン構成部と、
を備えるコイル装置。
【請求項2】
少なくとも1つの前記回路パターンは、前記ターン構成部に導通する接続部の部分除去により前記ターン構成部との接続の解除が可能な構成である、または、前記接続部を部分除去した構成である、請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
前記磁性体ブロックは、前記コイルのコイル軸に垂直な基板主面に対する基板側面に対面して配置される、請求項1または2に記載のコイル装置。
【請求項4】
前記磁性体ブロックは、前記基板側面に対面する側面対面部と、前記基板主面に設けた前記ターン構成パターンに対面する主面対面部と、を備える請求項3に記載のコイル装置。
【請求項5】
前記磁性体ブロックは、複数の前記ターン構成部を内装し、
各ターン構成部は、前記基板主面に対して平行に配列される、請求項1〜4のいずれかに記載のコイル装置。
【請求項6】
前記ターン構成部は、前記基板主面に垂直な方向の寸法が小さく扁平な形状である、請求項1〜5のいずれかに記載のコイル装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のコイル装置を電圧平滑回路に備える電源モジュール
【請求項1】
複数の回路パターンを備える基板と、
前記複数の回路パターンとは別に前記基板に形成され、コイルの1ターンを部分的に構成するターン構成パターンと、
前記コイルの磁路を形成する磁性体ブロックと、
前記磁性体ブロックに付設されるとともに、前記コイルの1ターンの残り部分に設けられて前記複数の回路パターンと前記ターン構成パターンとのうちのいずれか2つのパターンの間を接続するターン構成部と、
を備えるコイル装置。
【請求項2】
少なくとも1つの前記回路パターンは、前記ターン構成部に導通する接続部の部分除去により前記ターン構成部との接続の解除が可能な構成である、または、前記接続部を部分除去した構成である、請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
前記磁性体ブロックは、前記コイルのコイル軸に垂直な基板主面に対する基板側面に対面して配置される、請求項1または2に記載のコイル装置。
【請求項4】
前記磁性体ブロックは、前記基板側面に対面する側面対面部と、前記基板主面に設けた前記ターン構成パターンに対面する主面対面部と、を備える請求項3に記載のコイル装置。
【請求項5】
前記磁性体ブロックは、複数の前記ターン構成部を内装し、
各ターン構成部は、前記基板主面に対して平行に配列される、請求項1〜4のいずれかに記載のコイル装置。
【請求項6】
前記ターン構成部は、前記基板主面に垂直な方向の寸法が小さく扁平な形状である、請求項1〜5のいずれかに記載のコイル装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のコイル装置を電圧平滑回路に備える電源モジュール
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−114985(P2010−114985A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284611(P2008−284611)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
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