説明

コイル装置用ボビン

【課題】歪みの少ないコイル装置用ボビンを提供する。
【解決手段】ボビン部材20aは、平行に配置された2つの略筒状の胴部22と、各胴部22の一端同士を連結する枠状の連結部24を有している。連結部24には、直線コイル部の軸(Y軸)と垂直な平板状のフランジ部242が設けられている。コイルは、1対のボビン部材20aのフランジ部242によりY軸方向両側から挟みこまれて、保持される。連結部24の上部には、X軸方向に延びる補強部材30が埋め込まれている。補強部材30は、X軸(長さ方向の軸)回りにL字状に折り曲げられた板金部材であり、Y軸及びZ軸回りの曲げに対して高い剛性を有している。胴部22の内部にはコアの直線コア部が収容される。また、各胴部22は、コイルの2つの直線コイル部内にそれぞれ差し込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂から形成されたコイル装置用ボビンに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車の駆動システム等で使用される大容量のコイル装置(例えばリアクトル)の多くには、例えば特許文献1に記載されているようなボビンが使用されている。コイル装置用のボビンは、コアとコイルとの間に介在して、両者を電気的に絶縁する部材であり、一般に樹脂の射出成形によって製造される。また、ボビンは、コアや放熱ケースに対してコイルを位置決めする機能も有している。
【0003】
大容量のコイル装置では、一般にコイルと放熱ケースとの隙間には、コイルの熱を効率的に放熱ケースへ伝達させるために充填剤が充填される。充填剤で隙間を確実に充填するためには、充填剤の流動に必要な最小隙間以上の大きさの隙間を確保する必要がある。一方で、充填剤の層が厚くなると、放熱特性が低下し、コイルやコアの温度が上昇するため、コイル装置の電磁特性が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−98209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、樹脂の射出成形により形成されたボビンには、射出成形時の内側の金型と外側の金型との温度差等により、反り等の比較的に大きな歪みが生じる。従って、従来のボビン型コイル装置は、このようなボビンの歪みのため、放熱ケースに対するコイルの位置決め精度が低く、すなわち、放熱ケースとコイルとの隙間のバラツキが大きかった。隙間の設定値は、隙間を狭くする方向の最大誤差が生じたときでも充填剤の流動に必要な最小隙間が確保されるように、最小隙間にバラツキ分のマージンを乗せた値に設定される。従来のボビン型コイル装置では、ボビンの寸法精度が低いため、隙間の設定値に加えるマージンを大きく取る必要があり、隙間の設定値が大きなものとなっていた。そのため、コイルから放熱ケースへの熱の伝達速度が低く、コイルに熱が蓄積して温度が上昇するため、コイル装置の電磁的性能が低くなるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態によれば、コアとコイルとを絶縁する、樹脂から形成されたコイル装置用ボビンであって、互いに筒軸を平行にして並べられた、コイル内に差し込まれる、複数の筒状の胴部と、複数の胴部の一端を連結する連結部とを備え、連結部には該連結部の連結方向における略全長に亘って延びる、連結部の歪みによる複数の胴部間の配置の誤差を防止する補強部材が埋め込まれている、コイル装置用ボビンが提供される。
【0007】
この構成によれば、補強部材を備えることにより、成形後の樹脂の収縮等により連結部に反り等の歪みが生じることが防止される。これにより、コイル装置組み立て後の胴部の位置精度が向上し、その結果としてコイルの位置精度も向上する。
【0008】
コイル装置用ボビンが、射出成形によって形成され、補強部材がインサート成形により連結部に埋め込まれた構成としてもよい。
【0009】
この構成により、補強部材の取り付け作業が不要になり、少ない作業量で補強部材を組み込むことができる。また、ボビンの構造材である樹脂が補強部材と密着するため、強度も向上する。
【0010】
補強部材が、連結方向から見てL字に折り曲げられた板金部材である構成としてもよい。
【0011】
この構成により、安価で、尚且つ高い剛性の補強部材が得られる。
【0012】
補強部材が、ボビンをコイル装置のベースに取り付けるための取付部を有する構成としてもよい。
【0013】
このように、補強部材と固定部とを一体形成することにより、固定部の取り付け強度が向上すると共に、固定部の取り付け位置精度も向上する。
【0014】
複数の胴部の一端同士及び他端同士をそれぞれ連結する一対の連結部を備え、連結部は、胴部の外周面と垂直に設けられた、コイルを挟み込むフランジ部をそれぞれ有し、複数の胴部の筒軸方向中途において2分割されており、補強部材の一部がフランジ部内に埋め込まれている構成としてもよい。
【0015】
この構成により、コイルから比較的に大きな重量を受けるフランジ部の強度を向上させることができる。
【0016】
また、本発明の実施形態によれば、コアとコイルとを絶縁する、樹脂から形成されたコイル装置用ボビンであって、互いに離間し筒軸を挟んで対向する2対の板状の壁部を備えた、コイル内に収容される略筒状の胴部と、胴部の2対の壁部を連結する連結部とを備え、連結部は略矩形の開口を有し、胴部の2対の壁部は、筒軸方向の一端において、開口の縁部にそれぞれ接続されている、コイル装置用ボビンが提供される。
【0017】
この構成によれば、胴部を構成する壁部が、互いに離間して形成されており、コイル内に収容される胴部の四隅(コイルの内周面がコアの外周面に最も接近する箇所)に壁部が形成されない。そのため、より小さなサイズのコイルを使用することが可能になる。
【0018】
壁部の隣接する2つ同士を連結する連結片を更に備える構成であってもよい。
【0019】
この構成によれば、ボビンの加工時に生じる胴部の反り等の歪みを防止することができる。また、胴部の強度が向上する。
【0020】
連結片が、筒軸方向の他端において、壁部の隣接する2つ同士を連結するように構成されてもよい。
【0021】
この構成によれば、壁部の他端の剛性が向上する。また、この構成によれば、連結片の設計の自由度が高まる。
【0022】
連結片は、胴部の内周面よりも内側に突出して形成され、コアが胴部内に一端からに差し込まれたときに胴部の他端からコアが抜け落ちるのを阻止する構成としてもよい。
【0023】
この構成によれば、ボビン内でコアを組み立てる作業が容易になる。
【0024】
連結片の筒軸方向の厚さが、コアに形成されるギャップの厚さの半分以下である構成としてもよい。
【0025】
この構成によれば、2つのボビンを組み合わせてボビンセットとして使用する場合に、連結片同士が重なり合うことでコアのギャップ厚が拡がってしまうことが防止される。
【0026】
連結片は、胴部の他端を略塞ぐ構成としてもよい。
【0027】
この構成によれば、連結片はギャップ部材として機能する。このように連結片とギャップ部材を複合させることで、部品点数が削減され、コイル装置の組み立て性が向上する。
【0028】
本発明の実施形態によれば、それぞれ上記のコイル装置用ボビンである第1及び第2のボビンを組み合わせたボビンセットにおいて、第1及び第2のボビンの連結片が、第1及び第2のボビンを胴部の他端同士で突き合わせたときの筒軸方向の投影が互いに重ならないように形成されたボビンセットが提供される。
【0029】
この構成によれば、連結片の厚さをコアのギャップ厚以下まで厚くすることができ、胴部の剛性が向上する。
【0030】
第1及び第2のボビンを胴部の他端同士で突き合わせたとき、第1のボビンの連結片と、該連結片で連結された壁部の隣接する2つとで囲まれた空間に、第2のボビンの連結片が収容されるように構成されてもよい。
【0031】
この構成によれば、ギャップ部材を配置するスペースを広く確保しつつ、胴部に高い剛性を与えることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の実施形態の構成により、歪みの少ないコイル装置用ボビンが提供される。このコイル装置用ボビンを使用することにより、放熱性能に優れ、その結果として電磁的性能に優れたボビン型コイル装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るリアクトルの斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るリアクトルの分解図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るボビン部材の斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るボビン部材の平面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るボビン部材の正面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る補強部材の斜視図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係るボビン部材の胴部の横断面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係るリアクトル本体の縦断面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態の変形例に係るボビン部材の正面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る一方のボビン部材の正面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る他方のボビン部材の正面図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る2つのボビン部材を組み合わせた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の第1の実施形態に係るリアクトル1の斜視図であり、図2はその分解図である。なお、以下の説明において、図1及び図2における左上側から右下側に向かう方向を奥行き方向(X軸正方向)、左下側から右上側に向かう方向を幅方向(Y軸正方向)、下側から上側に向かう方向を高さ方向(Z軸正方向)と定義する。
【0035】
図1及び図2に示すように、リアクトル1は、コイル10、ボビン20、コア40、放熱ケース50及び端子台60を備えている。コイル10、ボビン20及びコア40によりリアクトル本体が構成される。リアクトル本体は放熱ケース50内に収容され、ボルト72により放熱ケース50に固定される。
【0036】
コイル10は、平角エナメル線から形成された2つの直線コイル部12を平行に並べて、一端(Y軸負方向の端)同士を連結したものである。直線コイル部12は、平角エナメル線を一巻き当たり4箇所で直角に折り曲げて、矩形状に巻いたものである。後述するように、直線コイル部12にはボビン20の胴部22(図3)が差し込まれ、ボビン20を介して放熱ケース50に固定される。また、各直線コイル部12の他端からはリード部14がY軸正方向へ延び、各リード部14は端子台60のバスバー62に溶接される。端子台60は、ボルト74により放熱ケース50に取り付けられる。
【0037】
コア40は、Y軸方向に長い略O字状のリングコアが、Y軸に垂直な3平面により6つのコアブロック42、44に分割され、分割部にギャップが設けられた分割コア(ギャップコア)である。具体的には、コア40は、2つのC形コアブロック42、4つのI型コアブロック44及び6つのギャップ部材46、47から構成される。C形コアブロック42及びI型コアブロック44は、それぞれ略C字状及び略I字状(略直方体状)に形成された積層ケイ素鋼板磁心であり、ギャップ部材46、47は所定の厚さを有する非磁性体(例えば、アルミナ等の各種セラミックスや樹脂)の板材である。なお、各コアブロック42、44の種類は積層ケイ素鋼板磁心に限定されず、圧粉磁心やフェライト磁心であってもよい。
【0038】
C形コアブロック42及びI型コアブロック44の両端には、平らなギャップ面が形成されている。各コアブロック42、44は、ギャップ面をY軸と直交する方向に向けて、Y軸方向に並べられている。2つのC形コアブロック42は、各ギャップ面がそれぞれ対向するように、間隔を空けて配置されている。また、2つのC形コアブロック42の間には、2対のI型コアブロック44が2列に配列されている。このようにして略O字形に配列された6つのコアブロック42、44は、ギャップ部材46、47を介して接着剤で貼り合わされている。Y軸方向に2列に並べられたI型コアブロック44は、コア40の2つの直線コア部45を構成する。2つの直線コア部45は、ボビン20の2つの胴部22(後述)を介して、コイル10の2つの直線コイル部12内にそれぞれ収容される。コア40も、ボビン20を介して放熱ケース50に固定される。
【0039】
放熱ケース50は、熱伝導性が良好で軽量な金属(例えばアルミニウム合金)から形成された略箱形の部材であり、リアクトル本体(コイル10、ボビン20及びコア40)を収容する。
【0040】
次に、本発明の第1の実施形態に係るボビン20の構成を説明する。ボビン20は、1対のボビン部材20aから構成される。図3、4及び5は、それぞれ一方のボビン部材20aの斜視図、平面図、及び先端側から見た正面図である。ボビン部材20aは、電気絶縁性及び耐熱性を有する樹脂(例えばポリフェニレンサルファイド(PPS))の射出成形により形成された部材である。また、ボビン部材20aには、インサート成形により、補強部材30が埋め込まれている。図6は補強部材30の斜視図である。
【0041】
ボビン部材20aは、平行に配置された2つの略筒状の胴部22と、各胴部22の一端同士を連結する枠状の連結部24を有している。連結部24には、直線コイル部12の軸(Y軸)と垂直な平板状のフランジ部242が設けられている。コイル10は、1対のボビン部材20aのフランジ部242によりY軸方向両側から挟みこまれて、保持される。
【0042】
胴部22の内部にはコア40の直線コア部45が収容される。また、各胴部22は、コイル10の2つの直線コイル部12内にそれぞれ差し込まれる。図7は胴部22の横断面図である。胴部22は、連結部24から垂直に突出した4つの平板状の壁部222と、隣接する2つの壁部222を連結する4つの連結片224を有している。
【0043】
胴部22の隣接する2つの壁部222は、互いに間隔を空けて配置されており、連結部24及び連結片224のみを介して連結されている。すなわち、図7に示されるように、胴部22の角部(横断面における四隅)には、樹脂の壁部が形成されておらず、開口部226が設けられている。
【0044】
従来のボビンは、開口部226を有さず、胴部の角部にも樹脂により壁部が形成されていた。従来のように、胴部の角部に壁部が形成されると、ボビン部材20aを射出成形する際の内側の金型と外側の金型との温度差等により、射出成形後に生じる角部の壁部の収縮量に内側と外側とで差が生じる。そのため、従来のボビンでは、壁部222に図7において矢印Cで示される方向の反りが発生していた。本発明の第1の実施形態に係るボビン部材20aでは、胴部22の角部に開口部226を設けることにより、従来のボビンで発生していた反り(矢印C)が防止され、胴部22を高い寸法精度で形成することが可能になっている。
【0045】
また、上述のように、連結部24の上部には、X軸方向に延びる補強部材30が埋め込まれている。補強部材30は、X軸(長さ方向の軸)回りにL字状に折り曲げられた板金部材であり、Y軸及びZ軸回りの曲げに対して高い剛性を有している。
【0046】
連結部24はY軸方向の寸法が薄いため、連結部24に補強部材30が埋め込まれていない従来のボビンでは、射出成形時の金型の温度差等により、連結部24に図4において矢印Bで示されるようなZ軸回りの反りが生じていた。本発明の第1の実施形態に係るボビン部材20aでは、連結部24に補強部材30が埋め込まれているため、このような反り(矢印B)が防止され、ボビン20を高い寸法精度で形成することが可能になっている。更に、連結部24の強度が向上し、優れた耐振動・耐衝撃性が得られる。
【0047】
また、連結部24の両端には、ボビン20を放熱ケース50にボルトで固定するための貫通穴を有する取り付け部34が設けられている。取り付け部34は、樹脂に埋め込まれずに外部に露出している。2つの取り付け部34と補強部材30とを複合して1部品にすることにより、部品点数の減少によりインサート成形の作業効率が向上すると共に、各部の相対的な位置精度及びボビン20の取り付け強度が向上する。また、2つの取り付け部34は同一平板上に形成されており、2つの取り付け部34の間には折り曲げ加工がなされていない。この構成により、2つの取り付け部34の相対的な位置精度を高くすることができる。
【0048】
また、ボビン部材20aの胴部22の壁部222には、外側面及び内側面に、それぞれY軸方向に延びるリブ222a及び222bが形成されている。リブ222a及び222bは、それぞれコイル10の直線コイル部12の内周面及びコア40の直線コア部45の外側面と当接して、それぞれ直線コイル部12及び直線コア部45を支持する。このように、壁部222の外側面及び内側面の全体ではなく、リブ222a及び222bのみで直線コイル部12及び直線コア部45と当接する構成により、安定した支持が可能になると共に、ボビン部材20aの成形に必要な樹脂量が削減され、軽量化、省資源化が達成される。なお、各壁部222の内側面には2つのリブ222bが形成されているのに対して、外側面にはリブ222aが1つのみ形成されている。胴部22内に収容される直線コア部45は、外側面の平面度が高いため、Z軸方向又はX軸方向の両端付近の2箇所で支持したときに安定した支持が得られる。これに対して、胴部22が収容される直線コイル部12は、平角エナメル線の曲げ加工により形成されるために内側面の平面度が低く、外側に凸の反りを有しているため、Z軸方向又はX軸方向の中央部の1箇所で支持したときに安定な支持が得られる。
【0049】
また、一般に分割コアを使用するボビン型コイル装置では、分割コアの組み立て工程において、ボビンが組み立て型として使用される。具体的には、先ず、一対の直線コイル部に両端から1対のボビン部材の胴部を差し込み、ボビンを組み立てる。次に、筒状のボビン胴部の中心軸(筒軸)を上下方向に向けて、一方のC型コアブロックの両端をボビンの2つの胴部内に下側から差し込む。次に、ギャップ面に接着剤を塗布したギャップ部材とI型コアブロックとを交互にボビンの胴部内に上側から落とし込んで積み重ねる。最後に、他方のC型コアブロックの両端をボビンの胴部内に上側から差し込み、更に上下のC型コアブロック間に接着圧を加えて保持することで、コアが組み立てられる。このような従来の分割コアの組み立て方法は、コアの分割数が多い場合には、コアを構成する多数の部材(コアブロック及びギャップ部材)を一度に組み立てる必要があるため、組み立て作業が難しいという問題があった。
【0050】
本発明の第1の実施形態に係るボビン20においては、上述のように、各ボビン部材20aの胴部22の先端(連結部24と反対側の端)には、4つの連結片224が四隅に形成されている。図8(a)にコイル10、ボビン20及びコア40から構成されるリアクトル本体1aの縦断面図を示す。図8(b)は、図8(a)における領域A(連結片224近傍)の拡大図ある。連結片224は、胴部22の内周面よりも内側に突出しているため、I型コアブロック44をボビン部材20aの連結部24側から胴部22内の奥まで差し込んでも、I型コアブロック44は連結片224に引っ掛かり、胴部22の先端から抜け落ちることがない。そのため、ボビン20を組み立てる前に、各ボビン部材20a内でコア40を部分的に組み立てて接着固定することができるため、コア40の組み立て作業を容易に行うことができる。
【0051】
連結片224は、Y軸方向から見て略L字状に形成された板状部分である。図1に示されるように、胴部22先端の四隅に配置された連結片224の内側の縁は、略矩形板状のギャップ部材47の外周の角部と略同じ形状を有しており、ギャップ部材47が4つの連結片224により囲まれた空間に略隙間なく収容されるようになっている。
【0052】
また、図8(b)に示されるように、ギャップ部材47が両側のI型コアブロック44と密着して確実に接着されるよう、2つのボビン部材20aの連結片224の厚さdの和は、ギャップ部材47の厚さdよりも小さく設定されている。
【0053】
次に、リアクトル1を組み立てる手順を説明する。先ず、連結部24を上に向けてボビン部材20aを保持し、I型コアブロック44を連結部24側から各胴部22内に挿入する。次に、I型コアブロック44の上面に接着剤を塗布し、その上にギャップ部材46を重ねる。次に、C形コアブロック42の両端面(ギャップ面)に接着剤を塗布して、C形コアブロック42の両端を連結部24からボビン部材20aの各胴部22内に差し込む。これにより、コア40の半分ずつが、各ボビン部材20a内で組み立てられる。次に、一方のボビン部材20aの各胴部22先端から露出したI型コアブロック44のギャップ面に接着剤を塗布し、その上にギャップ部材47を重ねる。このとき、ギャップ部材47はボビン部材20aの4つの連結片224により側方から挟み込まれ、ギャップ面と平行な方向(ZX平面内)で位置決めされる。次に、他方のボビン部材20aの各胴部22先端に露出したI型コアブロック44のギャップ面に接着剤を塗布して、ギャップ部材47の露出面に重ね合わせる。この状態で接着圧を加えながら接着剤を硬化させると、コア40全体が一体化し、リアクトル本体1aが形成される。このようにして組み立てられたリアクトル本体1aは、放熱ケース50内に収容され、ボビン20の取り付け部34により放熱ケース50にボルト74で固定される。次いで、端子台60が放熱ケース50に取り付けられて、コイル10のリード部14が端子台60のバスバー62に溶接される。最後に、放熱ケース50とリアクトル本体1aとの隙間が充填剤(例えばエポキシやシリコーン等の樹脂)で充填されて、リアクトル1が完成する。
【0054】
本実施形態では、リアクトル本体1aの固定構造として、リアクトル本体1aが取り付け金具(取り付け部34)によって放熱ケース50から浮いた状態で支持される所謂フローティング構造が採用されている。フローティング構造は、リアクトル本体1aが放熱ケース50に直接接触しないため、リアクトル本体1aで発生する振動や騒音が放熱ケース50に伝達され難いという利点を有する。一方、フローティング構造では、リアクトル本体1aで発生した熱が、リアクトル本体1aと放熱ケース50との隙間に充填される充填剤を介して外部に放出されるため、十分な放熱性能を得るためには、リアクトル本体1aと放熱ケース50との隙間を、充填剤の流動に必要な最小隙間に設定する必要がある。従来の樹脂製ボビンでは、成形時に生じる歪みにより加工精度が低いため、最小隙間を確保するために隙間の設定値に大きなマージンを設ける必要があり、フローティング構造の実現に必要な所定値以下の隙間を設定することが不可能であったが、上述した本発明の実施形態に係るボビン20では、開口部226及び/又は補強部材40を設けることにより、加工精度が向上し、フローティング構造に必要な所定値以下に隙間を設定することが可能になる。
【0055】
なお、上記の実施形態においては、直線コア部45を構成する2つのI型コアブロック44の間にギャップを形成するために、ギャップ部材47が用いられているが、ギャップ部材47を使用せずにエアギャップを設けてもよい。
【0056】
(変形例)
また、ギャップ部材をボビン部材と一体に樹脂で形成してもよい。図9は、連結片にギャップ部材の機能を与えた本発明の実施形態の変形例であるボビン部材120aの正面図である。ボビン部材120aの4つの壁部1222は、先端において略矩形平板状の連結片1224によって連結されている。連結片1224は、第1の実施形態における連結片224とギャップ部材47の機能を併せ持つ。また、変形例の連結片1224は第1の実施形態の連結片224よりも幅が広いために剛性が高く、また各壁部1222との接続面積も広いため、本変形例の胴部122の剛性は第1の実施形態よりも高くなっている。また、ギャップ部材と連結片とを複合することにより部品点数が削減され、部品コストが削減されると共に、組み立て作業がより効率化される。
【0057】
(第2実施形態)
上述した第1の実施形態では、ボビン20は、一対の同一形状のボビン部材20aから構成されており、一対のボビン部材20aを組み立てると、各ボビン部材20aの連結片224が胴部22の筒軸方向(Y軸方向)に重なり合う(図8(b)参照)。そのため、ギャップ部材47を両側のI型コアブロック44と密着させて正確なギャップ幅を設けるためには、各ボビン部材20aの連結片224の厚さdの和を、ギャップ部材47の厚さdよりも小さくする必要がある。以下に説明する第2の実施形態に係るボビン320は、ボビン部材を組み立てたときに各ボビン部材の連結片がY軸方向に重ならないように、連結片の形状が異なる2種類のボビン部材321、322から構成されている。なお、第2の実施形態は、ボビン部材321、322の連結片321c、322c(ストッパ部)及びギャップ部材347の形状及び配置を除いては、第1の実施形態と同様の構成を有している。以下の説明においては、第1の実施形態と共通する構成については、詳しい説明は省略する。
【0058】
図10及び図11は、それぞれボビン部材321及びボビン部材322を胴部321a、322aの先端側(ギャップ部材347が配置される側)から見た正面図である。また、図12(a)は、ギャップ部材347を介してボビン部材321、322を重ねた状態をボビン部材321の基端側(連結部側)から見た図であり、図12(b)は、図12(a)におけるB−B断面図である。各胴部321a及び322aの先端の四隅には、各胴部321a、322aの隣り合う壁部を斜めに連結する長板状の連結片321c及び322cがそれぞれ形成されている。ボビン部材321の連結片321cは、ボビン部材322の連結片322cよりも長く、また連結片322cよりも胴部321aの中心軸(筒軸)寄りに配置されている。そのため、連結片321cと連結片321cが連結する胴部321aの2つの壁部とで囲まれた比較的に広い空間321Sが形成される。図12に示されるように、ボビン部材321とボビン部材322を重ね合わせると、空間321Sにはボビン部材322の連結片322cが収容されるようになっている。この構成により、連結片321c及び連結片322cの厚さをギャップ部材347の厚さ以下に形成すれば、ボビン部材321とボビン部材322とを重ね合わせた際に、連結片321cと連結片322cが互いに干渉することはない(すなわち、連結片321cと連結片322cのY軸方向の投影が重なることが無い)。従って、連結片321c及び連結片322cを十分に厚く形成することができるため、組み立て作業中に連結片321c及び322cが破損することが防止される。また、胴部321a、322aの剛性を向上させることができる。
【0059】
また、ギャップ部材347が配置される胴部321a、322aの先端には、四隅に連結片321c、322cが設けられているため、第1の実施形態のような長方形状のギャップ部材47を配置することができない。そこで、第2の実施形態では、連結片321c、322cと干渉しないように、長方形の四隅を斜め45°に切り落とした形状のギャップ部材先端が使用される。
【0060】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施の形態は、上記に説明したものに限定されず、特許請求の範囲の記載により表現された技術的思想の範囲内で任意に変更することができる。
【0061】
例えば、上記の実施形態では、連結片224がボビン部材20aの胴部22の先端部に設けられているが、連結片224を胴部22の長さ方向(Y方向)の中途に設けてもよい。また、上記の実施形態では、連結片224は樹脂から形成されているが、インサート成形により金属部材(例えば隣接する壁部を連絡するワイヤ)を埋め込むことで連結片を設けてもよい。また、胴部22には必ずしも連結片224を設けなくてもよい。
【0062】
また、上記の実施形態では、補強部材40がボルト固定用の取り付け部34を有しているが、例えばコア及び/又はコイルを放熱ケースに接触させる構造(メタルタッチ構造)では補強部材40に取り付け部34を設ける必要は無い。
【0063】
また、上記の実施形態では、リアクトル1は、ベース(底板)と4面の側壁を有する略箱形のケース50に固定されているが、例えば側壁を有しないベースにリアクトル1を固定してもよい。
【0064】
また、上記の実施形態のリアクトル1のコイル10は、2つの直線コイル部12を有しているが、直線コイル部の数はこれに限定されず、3つ以上の直線コイル部を有するコイル装置にも本発明を適用することができる。また、開口部226については、1つ以上の直線コイル部を有するコイル装置に適用することができる。
【0065】
また、上記の実施形態は、本発明をリアクトルに適用した例であるが、本発明はリアクトルに限定されず、他の種類のコイル装置(例えば変圧器)に適用することもできる。
【符号の説明】
【0066】
1 リアクトル
10 コイル
20 ボビン
30 補強部材
40 コア
50 放熱ケース
60 端子台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアとコイルとを絶縁する、樹脂から形成されたコイル装置用ボビンであって、
互いに筒軸を平行にして並べられた、前記コイル内に差し込まれる、複数の筒状の胴部と、
前記複数の胴部の一端を連結する連結部と
を備え、
前記連結部には、該連結部の連結方向における略全長に亘って延びる、該連結部の歪みによる前記複数の胴部間の配置の誤差を防止する補強部材が埋め込まれている、コイル装置用ボビン。
【請求項2】
前記コイル装置用ボビンが射出成形によって形成され、
前記補強部材がインサート成形により前記連結部に埋め込まれた、ことを特徴とする請求項1に記載のコイル装置用ボビン。
【請求項3】
前記補強部材が、連結方向から見てL字に折り曲げられた板金部材である、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコイル装置用ボビン。
【請求項4】
前記補強部材が、前記ボビンをコイル装置のベースに取り付けるための取付部を有する、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコイル装置用ボビン。
【請求項5】
前記複数の胴部の一端同士及び他端同士をそれぞれ連結する一対の連結部を備え、
前記一対の連結部は、前記胴部の外周面と垂直に設けられた、前記コイルを挟み込むフランジ部をそれぞれ有し、
前記複数の胴部の筒軸方向中途において2分割されており、
前記補強部材の一部が前記フランジ部内に埋め込まれている、ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のコイル装置用ボビン。
【請求項6】
コアとコイルとを絶縁する、樹脂から形成されたコイル装置用ボビンであって、
互いに離間し筒軸を挟んで対向する2対の板状の壁部を備えた、前記コイル内に収容される略筒状の胴部と、
前記胴部の2対の壁部を連結する連結部と
を備え、
前記連結部は略矩形の開口を有し、前記胴部の2対の壁部は、前記筒軸方向の一端において、該開口の縁部にそれぞれ接続されている、ことを特徴とするコイル装置用ボビン。
【請求項7】
前記壁部の隣接する2つ同士を連結する連結片を更に備える
、ことを特徴とする請求項6に記載のコイル装置用ボビン。
【請求項8】
前記連結片が、前記筒軸方向の他端において、前記壁部の隣接する2つ同士を連結する、ことを特徴とする請求項7に記載のコイル装置用ボビン。
【請求項9】
前記連結片は、前記胴部の内周面よりも内側に突出して形成され、前記コアが前記胴部内に一端からに差し込まれたときに該胴部の他端から該コアが抜け落ちるのを阻止する、ことを特徴とする請求項8に記載のコイル装置用ボビン。
【請求項10】
前記連結片の前記筒軸方向の厚さが、前記コアに形成されるギャップの厚さの半分以下である、ことを特徴とする請求項9に記載のコイル装置用ボビン。
【請求項11】
前記連結片は、前記胴部の他端を略塞ぐことを特徴とする、請求項9又は請求項10に記載のコイル装置用ボビン。
【請求項12】
それぞれ請求項8又は請求項9に記載のコイル装置用ボビンである第1及び第2のボビンを組み合わせたボビンセットにおいて、
前記第1及び第2のボビンの連結片が、該第1及び第2のボビンを前記胴部の他端同士で突き合わせたときの前記筒軸方向の投影が互いに重ならないように形成されている、ことを特徴とするボビンセット。
【請求項13】
前記第1及び第2のボビンを前記胴部の他端同士で突き合わせたとき、前記第1のボビンの連結片と、該連結片で連結された前記壁部の隣接する2つとで囲まれた空間に、前記第2のボビンの連結片が収容される、ことを特徴とする請求項12に記載のボビンセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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