説明

コイル装置

【課題】 プリント基板のうち表面実装型トランス装置が実装される部分に無駄なスペースができにくいようにすることを目的とする。
【解決手段】 第2のコア40は略正方形の枠形状であり、直交する四つの枠辺部41〜44を有する。端子部材60は、各枠辺部41〜44に設けてある。端子部材60の底板部61よりなる端子パッド接続用端子部120は、正方形130の各辺131上に位置している。これにより、プリント基板上の端子パッドからの配線パターンはX1−X2方向或いはY1−Y2方向に延在して形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル装置に係り、特にプリント基板上に表面実装されて使用されるトランス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図11は従来の表面実装型(SMD;surface mounted device)トランス装置1を示す。表面実装型トランス装置1は、3つのコイルが巻かれているドラムコア2が、6つの端子部材3が固定してあるリング状のリングコア4内に組み込んである構成である。6つの端子部材3は、図10(B)に二点鎖線で示すように、円4に沿って放射状に配置してある。
【0003】
プリント基板10のうちトランス装置1が実装される部分は、図10(B)に示すように、配線パターン11の端に、端子パッド11が上記6つの端子部材3に対応した配置で並んでいる構成である。X1−X2はプリント基板10の横方向、Y1−Y2はプリント基板10の縦方向である。
【0004】
トランス装置1は各端子部材3を対応する端子パッド11と半田付けされて表面実装される。
【特許文献1】特開2003−224026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記トランス装置1は他の電子部品と共にプリント基板10上に実装されてプリント基板ユニットを形成し、このプリント基板ユニットが最終的には電子機器内に組み込まれる。電子機器の小型化に伴なってプリント基板ユニットの小型化が求められている。
【0006】
プリント基板10のうちトランス装置1が実装される部分についてみると、端子パッド11の並びが放射状であるため、配線パターン12のうち一部の配線パターンは斜めに延在して引き回されている。各配線パターン12はX1−X2或いはY1−Y2方向に延びているメインの配線パターンにつながっている。配線パターン12が斜めに延在して引き回されることによって、メインの配線パターンに到るまでの部分に余分なスペースが必要となってしまい、プリント基板ユニットの小型化を図る上では好ましくなかった。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題を解決したコイル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、コイルを有するドラム状の第1のコアと、
該第1のコアと組合わされ、該第1のコアおよび該コイルを囲む第2のコアと、
該第2のコアに設けてある表面実装用の端子部材とよりなり、
上記第1のコアと第2のコアとが磁気回路を構成し、且つ該コイルを形成するワイヤの端が上記端子部材に接続してある構成のコイル装置において、
上記第2のコア(40)は、4つの枠辺部(41〜44)を有する四角枠形であり、
且つ、上記端子部材(60)は、該第2のコアの各枠辺部に固定してあり、
上記端子部材のうちプリント基板上の端子パッドと接続される端子パッド接続用端子部(120)が実質上正方形(130)の辺(131)上に位置して配置してある構成としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プリント基板のうちトランス装置が実装される部分についてみると、端子パッドは正方形の各辺の途中の位置に配置してあり、端子パッドから延びている配線パターンの方向はX及びY方向であり、斜めの方向に延在する配線パターンは無く、無駄なスペースが形成されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に本発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0011】
図1(A),(B)、図2、図3(A)乃至(C)、図4は本発明の実施例1になる表面実装型(SMD)トランス装置20を示す。図1(A)はトランス装置20を上面側から見て、同図(B)はトランス装置20を下面側から見て示す斜視図、図2はトランス装置20を分解して示す斜視図、図3(A)乃至(C)はトランス装置20の平面図、正面図、底面図、図4は図3(A)中、IV-IV線に沿う断面図である。X1−X2、Y1−Y2は平面上互いに直交する方向、Z1−Z2は高さ方向である。
【0012】
トランス装置20は、第1のコア21と、この第1のコア21に巻かれている4つのコイル31〜34と、第2のコア40と、8つの端子部材60(60−1〜60−8)とを有する。
【0013】
[第1のコア21]
図2及び図5(A),(B)に示すように、第1のコア21は、フェライト製であり、Z1側の上側鍔部22と、Z2側の下側鍔部23と、両者の間の円柱形状の軸部24とを有する。上側鍔部22及び下側鍔部23は共に円板形状であり、直径d1、d2を有する。直径d1、d2は、d1>d2の関係にある。
【0014】
[コイル31〜34]
図2及び図5(A)に示すように、軸部24の周囲であって上側鍔部22と下側鍔部23との間に、表面が絶縁してある4本のワイヤが巻かれており、4つのコイル31〜34が形成してある。コイル31〜34は、図5(A)に示すように、二つの一次コイル31,32と二つの二次コイル33,34とよりなる。図2に示すように、各ワイヤの端の部分35は第1のコア21より外側に延びている。
【0015】
[第2のコア40]
図2及び図6(A)乃至(F)に示すように、第2のコア40は、フェライト製であり、第1のコア21を囲む大きさの略正方形の枠形状であり、外周面は平面であり、直交する四つの枠辺部41〜44を有する。枠辺部43と枠辺部45との間には、トランス装置20の方向を示す面取り部45がある。第2のコア40の内側には、第1のコア21の下側鍔部23が丁度嵌合する大きさの空間49を有する。
【0016】
各枠辺部41〜44は、中央に、上側鍔部22を支持する上側鍔部支持段部46を有し、且つ、この上側鍔部支持段部46の両側に、端子部材固定部47,48が形成してある。端子部材固定部47,48は、一部が凹状となっている。端子部材が嵌合して位置を決められ、且つ横にずれないようにするためである。
【0017】
[端子部材60]
図7(A),(B)及び図8(A)乃至(F)に示すように、端子部材60は、リン青銅製であり幅がW1である帯状の板材のプレス成形部品であり、上記の端子部材固定部47,48を包み込む大きさ及び形状であり、取り付けられた状態で、プリント基板上の端子パッドに半田付けされる部分とワイヤが接続される部分とを形成する。
【0018】
端子部材60は、略U字形状であり、底板部61と、この底板部61の一端側に立ち上がっている外側立ち上がり板部62と、底板部61の他端側に立ち上がっている内側立ち上がり板部63とを有する。
【0019】
端子部材60が後述するように第2のコア40に取り付けられた状態で、底板部61が端子パッド接続用端子部120を構成する。
【0020】
外側立ち上がり板部62は、その途中に幅が狭くなっている幅がW2である幅狭部分64を有し、上端に、図7(A)に二点鎖線で示す部分65を開口66の個所で内側に折り返えして形成してある折り返えし重なり部67を有する。幅狭部分64はワイヤが巻回される場所である。折り返えし重なり部67は後述するようにレーザによって溶かされる部分であり、重ねて厚さをかせいで、溶かされる必要な容積を確保している。
【0021】
内側立ち上がり板部63は、先端に外側立ち上がり板部62とは反対側に折り曲げてある腕部70を有する。腕部70の幅はW2であり、上記の幅狭部分64の幅W2と等しい。内側立ち上がり板部63は、途中に、折り曲げ易くするための開口71が形成してある。72は折り曲げが予定される部分である。図9(B)に示すように開口71の個所で折り曲げられると、部分72が枠辺部41等の上面に対向し、腕部70が幅狭部分64の内側に対向して幅狭部分64と並んだ状態となる。幅狭部分64及び腕部70がワイヤ接続部分を構成する。
【0022】
トランス装置20は、以下の手順で組立てられる。
【0023】
(1)8つの端子部材60−1〜60−8を第2のコア40に取り付ける。
【0024】
先ず、図2に示すように、端子部材60−1〜60−8をZ2側から第2のコア40の枠辺部41〜44の端子部材固定部47,48にZ2側から嵌合させて図9(A)に示す状態とする。次いで、図9(B)に示すように、内側立ち上がり板部63の上端部を矢印80で示すように折り曲げる。これによって、端子部材60は、枠辺部41等を包み込む状態となって、第2のコア40の枠辺部41〜44に2つずつ取り付けられる。底板部61は枠辺部41の下面に位置して、端子パッド接続用端子部120を構成する。また、腕部70は幅狭部分64と並んだ状態となる。
【0025】
(2)コイル31〜34が形成してある第1のコア21を第2のコア40に取り付ける。
【0026】
ワイヤの端の部分35が外側に延びている第1のコア21を、第2のコア40に取り付ける。上側鍔部22が上側鍔部支持段部46に嵌合して位置決めされ接着される。下側鍔部23及びコイル31〜34は空間49内に収まった状態となる。ワイヤの端の部分35は、第2のコア40の上面側の凹部47等を通って第2のコア40の外側にまで延びている。
【0027】
図4に示すように、第1のコア21と第2のコア40とが磁気回路90を形成する。磁気回路90は、下側鍔部23と第2のコア40との間にギャップ91を有する。
【0028】
(3)ワイヤの端の部分35を端子部材60に巻回する。
【0029】
図9(C)に示すように、ワイヤの端の部分35を並んだ状態にある幅狭部分64と腕部70との周囲にまとめてからげる。即ち、ワイヤの端の部分35を、幅狭部分64に、腕部70と一緒に巻回する。100はワイヤが巻回されたワイヤ巻回部である。
【0030】
ここで、外側立ち上がり板部62のうちワイヤを巻回する部分は、第2のコア40の外周面の上側に位置しており、上側鍔部22よりも外側にあるので、ワイヤを巻回する作業は上側鍔部22によって妨害されずに行われる。
【0031】
また、幅狭部分64であるため、ワイヤを巻回する位置が特定される。
【0032】
(4)レーザ照射を行って、ワイヤ接続部110を形成する。
【0033】
図9(C)に示すように、レーザ111を折り返えし重なり部67に照射し、折り返えし重なり部67を溶かす。溶かされた金属が、重力で流れ落ちて、ワイヤ巻回部100に到り、ワイヤ巻回部100が幅狭部分64に溶着されると共に、腕部70が幅狭部分64に溶着される。これによって、信頼性の高いワイヤ接続部110が形成される。
【0034】
以上によって、図1、図2、図3、図4に示すトランス装置20が完成する。
【0035】
完成したトランス装置20は、第1のコア21と第2のコア40とが形成する磁気回路90内にコイル31〜34が組み込んであり、コイル31〜34のワイヤの端部がワイヤ接続部110によって端子部材60に接続してあり、第2のコア40の直交する四つの枠辺部41〜44に端子部材60が二つずつ設けてある構成である。
【0036】
端子パッド接続用端子部120は、図1(B)及び図10(A)に示すように、正方形130の各辺131の途中の位置に配置してあり、且つ、その中心線120aがX1−X2方向或いはY1−Y2方向に延在している向きである。
【0037】
よって、プリント基板10Aのうちトランス装置20が実装される部分についてみると、同じく図10(A)に示すように、端子パッド11Aは上記正方形130と同じである正方形130Aの各辺131Aの途中の位置に配置してあり、且つその長手方向がX1−X2方向或いはY1−Y2方向に延在している向きである。よって、端子パッド11Aから延びている配線パターン12AはX1−X2方向或いはY1−Y2方向に延在しており、斜めには延在していない。無駄な空きスペースは存在しなくなり、プリント基板10Aのサイズをその分小さくなっている。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施例1になる表面実装型トランス装置の斜視図である。
【図2】図1の表面実装型トランス装置の分解斜視図である。
【図3】図1の表面実装型トランス装置を示す図である。
【図4】図3(A)中、IV-IV線に沿う断面図である。
【図5】コイルが形成してある第1のコアを示す図である。
【図6】第2のコアを示す図である。
【図7】端子部材を示す斜視図である。
【図8】端子部材を示す図である。
【図9】端子部材を第2のコアに取り付ける手順及びワイヤ接続部が形成される過程を示す図である。
【図10】プリント基板のうち表面実装型トランス装置が実装される部分を本実施例のトランス装置の場合と従来のトランス装置の場合とを対比して示す図である。
【図11】従来の表面実装型トランス装置を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
10A プリント基板
11A 端子パッド
12A 配線パターン
20 表面実装型トランス装置
21 第1のコア
22 上側鍔部
23 下側鍔部
24 軸部
31〜34 コイル
40 第2のコア
41〜44 枠辺部
45 面取り部
46 上側鍔部支持段部
47,48 端子部材固定部
49 空間
60 端子部材
61 底板部
62 外側立ち上がり板部
63 内側立ち上がり板部
64 幅狭部分
67 折り返えし重なり部
70 腕部
72 折り曲げが予定される部分
100 ワイヤ巻回部
110 ワイヤ接続部
120 端子パッド接続用端子部
130 正方形
131 辺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルを有するドラム状の第1のコアと、
該第1のコアと組合わされ、該第1のコアおよび該コイルを囲む第2のコアと、
該第2のコアに設けてある表面実装用の端子部材とよりなり、
上記第1のコアと第2のコアとが磁気回路を構成し、且つ該コイルを形成するワイヤの端が上記端子部材に接続してある構成のコイル装置において、
上記第2のコアは、4つの枠辺部を有する四角枠形であり、
且つ、上記端子部材は、該第2のコアの各枠辺部に固定してあり、
上記端子部材のうちプリント基板上の端子パッドと接続される端子パッド接続用端子部が実質上正方形の辺上に位置して配置してある構成としたことを特徴とするコイル装置。
【請求項2】
請求項1のコイル装置において、
上記端子パッド接続用端子部は、その中心線が上記正方形の辺に直交する向きである構成としたことを特徴とするコイル装置。
【請求項3】
請求項1のコイル装置において、
上記表面実装用の端子部材は、底板部と、外側立ち上がり板部と、内側立ち上がり板部と、内側立ち上がり板部の先端の腕部とを有する略U字の形状であり、該内側立ち上がり板部が途中の位置で折り曲げられて、上記枠辺部を包み込んで、且つ、上記腕部が上記外側立ち上がり板部のうち上端に近い部分と対向しており、
上記ワイヤは、上記外側立ち上がり板部と上記腕部とのまわりに巻回してあり、
上記外側立ち上がり板部の上端の部分を溶解した部分によって、巻回してあるワイヤが該外側立ち上がり板部に溶着され、且つ、上記腕部が該外側立ち上がり板部に溶着されている構成としたことを特徴とするコイル装置。
【請求項4】
請求項3のコイル装置において、
上記外側立ち上がり板部のうち上端に近い部分は、他の部分に比べて幅の狭い部分であり、
上記ワイヤはこの他の部分に比べて幅の狭い部分に巻回してある構成としたことを特徴とするコイル装置。
【請求項5】
請求項3のコイル装置において、
上記表面実装用の端子部材は、その外側立ち上がり板部の先端部に、折り返されて重なっている部分を有する構成であり、
この重なっている部分がレーザ照射によって溶解された構成としたことを特徴とするコイル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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