説明

コイル部品

【課題】確実に延面距離を確保することができるコイル部品の提供。
【解決手段】導線が巻回されて巻回部が形成される巻胴部21と、巻胴部21の軸方向一端に設けられた端子台30とを有し、巻胴部21と端子台30とから導線が巻回される巻回空間が画成されたボビン20を備え、端子台30には、端子台の外周から巻胴部21側に向かって導線の巻回方向と交差するように延出し巻回空間内外を貫通するスリット30aが形成されると共に、端子台30の軸方向において反巻回空間側に配置されたピン端子35が設けられ、導線はスリット30aを貫通して巻回空間から導出されピン端子35に接続され、スリット30aには、導線が挿通される第一通路31aが規定されると共に、第一通路31aに挿通された導線がスリット30aの延出方向への移動を規制する規制部31aを有するコイル部品1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から導線が巻回されて巻回部が形成された巻胴部と端子台とから構成されるボビンを備えたコイル部品が公知になっている。このコイル部品では、例えば特許文献1に示されるように、端子台に縦方向(実装面と直交する方向)に延設される溝が形成されており、巻回部から導線の一端および他端が溝を通って端子に導かれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−148147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のコイル部品を小型化した場合、上述の一端および他端と、巻回部等の他の導電部分との間の沿面距離を確保する問題が発生する。特に小型化、かつ高性能化(高電圧化)した場合には、沿面距離を確実に確保する必要がある。よって本発明は、確実に沿面距離を確保することができるコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明は、導線が巻回されて巻回部が形成される巻胴部と、巻胴部の軸方向一端に設けられ軸方向と交差する方向に拡がる端子台とを有し、巻胴部と端子台とから導線が巻回される巻回空間が画成されたボビンを備え、端子台には、端子台の外周から巻胴部側に向かって導線の巻回方向と交差するように延出し巻回空間内外を貫通するスリットが形成されると共に、端子台の軸方向において反巻回空間側に配置されたピン端子が設けられ、導線はスリットを貫通して巻回空間から導出されピン端子に接続され、スリットには、導線が挿通される第一通路が規定されると共に、第一通路に挿通された導線がスリットの延出方向への移動を規制する規制部を有するコイル部品を提供する。
【0006】
このような構成によると、導線が規制部でスリットの延出方向への移動が規制されるので、導線がスリットの延出方向へずれることが抑制される。よって導線が第一通路からずれることはなく、予め第一通路を適正な沿面距離が稼げる位置に配置することにより、確実な沿面距離を取ることができる。
【0007】
上記構成のコイル部品において、端子台において第一通路とピン端子との間には、第一通路と連通して軸方向と交差する方向に延設され反巻回空間側に位置する第二通路と、第二通路と連通して軸方向及び第二通路の延設方向と交差し反巻回空間側に位置する第三通路とが形成され、導線は、第一通路、第二通路、第三通路を経てピン端子に接続されることが好ましい。
【0008】
このような構成によると、導線が巻回部からピン端子まで引き回される経路において、沿面距離を稼ぐことができる。
【0009】
また端子台は、第三通路近傍位置に配置され軸方向と交差する方向に突出する突起部を有し、突起部には、軸方向において、第三通路とピン端子との間に位置する掛止面が規定され、導線は第三通路から導出され掛止面に掛けられてピン端子に接続されていることが好ましい。
【0010】
このような構成によると、導線が巻回部からピン端子まで引き回される経路において、更に沿面距離を稼ぐことができる。
【0011】
また規制部は、スリット内面に延出方向と交差するように形成された溝から提供され、溝内に第一通路が規定されていることが好ましい。
【0012】
このような構成によると、より確実に導線がスリットの延出方向へずれることを抑制することができる。
【0013】
また巻回部は、導線が巻胴部外周に積層して巻回されて形成され、導線は、巻胴部への巻き初め位置から延出される一端と、巻胴部への巻き終わり位置から延出される他端とを有し、ピン端子は、一端が接続される一のピン端子と、他端が接続される他のピン端子とを有し、スリットは一のスリットと他のスリットとを有し、第一通路は、一のスリットに形成され一端が挿通される一の第一通路と、他のスリットに形成され他端が挿通される他の第二通路とを有し、巻胴部の軸心から一の第一通路までの距離は、巻胴部の軸心から導線の層の一端が延出される位置までの距離と等しく、巻胴部の軸心から他の第一通路とまでの距離は、巻胴部の軸心から導線の層の他端が延出される位置までの距離と等しくなるように構成されていることが好ましい。
【0014】
このような構成によると、巻回部から延出されるすべての導線の位置を正確に規定することができるため、すべての導線の沿面距離を正確に規定することができる。
【0015】
また第二通路は、軸方向において、第三通路よりも巻回空間側に位置していることが好ましく、第三通路は、軸方向において、突起部よりも巻回空間側に位置していることが好ましい。
【0016】
また掛止面は、軸方向において、ピン端子の導線が接続される箇所よりも巻回空間側に位置していることが好ましい。
【0017】
これらのような構成によると、第一通路から第二通路、第三通路、及び突起部へと行くに従い、巻回空間側から反巻回空間側へと導線を配置することができる。よって導線を巻回部からピン端子へと配線する際に、スムーズに配線することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のコイル部品によれば、確実に沿面距離を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係るコイル部品の斜視図。
【図2】本発明の実施の形態に係るコイル部品のボビンの底面図。
【図3】本発明の実施の形態に係るコイル部品のボビンおよび導線の正面図。
【図4】本発明の実施の形態に係るコイル部品のボビンおよび導線の側面図。
【図5】本発明の実施の形態に係るコイル部品のボビンおよび導線の背面図。
【図6】本発明の実施の形態に係るコイル部品のボビンおよび導線の底面図。
【図7】本発明の実施の形態に係るコイル部品の巻回部の状態を示す断面概略図。
【図8】本発明の実施の形態に係るコイル部品のボビンにおける第一通路近傍位置の拡大部分底面図。
【図9】本発明の実施の形態に係るコイル部品の変形例に係るボビンにおける第一通路近傍位置の拡大部分底面図。
【図10】従来例に係るコイル部品のボビンにおける第一通路近傍位置の拡大部分底面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の第一の実施の形態に係るコイル部品について、図1から図7に基づき説明する。図1に示されるコイル部品1は、コイルである後述の巻回部50の軸方向が実装面に略直交するいわゆる縦型のトランスであり、コア10と、ボビン20と、巻回部50とから主に構成されている。以下の説明においては、実装面と直交する方向をZ軸方向として定義し実装面からコイル部品1に向かう方向を上方としてZ軸方向上側(他面側)、下側(一面側)を定義する。また、後述の第一端子台30(図2)から第二端子台40に向かう方向をZ軸方向と直交するY軸方向と定義し、Z軸方向、Y軸方向のそれぞれに直交する方向をX軸方向と定義する。尚、X軸方向、Y軸方向においては、図中のX軸方向、Y軸方向を示す矢印において、矢印の原点側を一端側、矢印の先端側を他端側として説明する。
【0021】
コア10は、上下に二分割されそれぞれ略E字形状の略同一形状を成す第一コア10A及び第二コア10Bから構成されている。第一コア10Aはボビン20に形成された後述の下溝22a(図4)内に挿入され、E字形状の中央が後述の貫通孔21a(図2)内に挿入されている。第二コア10Bはボビン20に形成された後述の上溝23a(図4)内に挿入され、E字形状の中央部分が後述の貫通孔21a(図2)内に挿入されており、第一コア10AのE字形状の先端と第二コア10BのE字形状の先端とが当接している。この第一コア10Aと第二コア10Bとが当接することにより、巻回部50周りに閉磁路が形成される。
【0022】
ボビン20は絶縁樹脂製であり、図3及び図4に示されるように巻胴部21と下鍔部22と上鍔部23とから主に構成されている。図2に示されるように巻胴部21は、Z軸と平行な中心軸(軸心)Gを有する円筒状に構成されており、内部に貫通孔21aが形成され、外周に巻回部50が形成されている。
【0023】
下鍔部22は、図4に示されるようにZ軸と直交する平板状に構成されており、この平板の上面で巻胴部21の上端側に接続されている。下鍔部22には、Y軸方向一端側及び他端側にそれぞれ位置する第一端子台30と第二端子台40とが規定されており、第一端子台30と第二端子台40との間には、第一コア10Aが挿入される幅広の溝である下溝22aがX軸方向に延びるように形成されている。
【0024】
上鍔部23は、Z軸と直交する平板状に構成されており、この平板の下面で巻胴部21の上端側に接続されている。上鍔部23の上面には、下溝22aと平行にX軸方向に延び第二コア10Bが挿入される幅広の溝である上溝23aが形成されている。上述の貫通孔21aは下溝22a内及び上溝23a内に開口している。上鍔部23と、下鍔部22との間であって巻胴部21の周囲には、後述の巻回部50が配置される巻回空間が規定されている。
【0025】
第一端子台30及び第二端子台40は、コイル部品1を図示せぬ実装面上に載置する際に実装面と当接する箇所として機能している。また第一端子台30の上面および第二端子台40の上面は、それぞれ下鍔部22の上面と一致しており、上述の巻回空間を画成する壁の一部に成っている。
【0026】
第一端子台30は、図4に示されるように、第一端子台第一リブ31と、第一端子台第二リブ32と、第一端子台ピン保持部33とから主に構成されている。第一端子台第一リブ31は、図3に示されるように、X−Y平面と平行かつX軸方向に延びて下鍔部22の一部を成しており、巻胴部21と共に上述の巻回空間を画成している。図2に示されるように、第一端子台第一リブ31には、第一端子台30の外周となるY軸方向一端側の端部からY軸方向他端側(巻胴部21側)に向けて延出され、X軸方向一端側から他端側に向かって並列し、巻回空間内外を連通する第一スリット30a、第一スリット30bが形成されている。第一スリット30aのY軸方向他端位置には、X軸方向一端側に向けて穿設された溝が形成されており、この溝内に第一通路31aが規定されている。第一スリット30bのY軸方向他端位置には、X軸方向他端側に向けて穿設された溝が形成されており、この溝内に第一通路31bが規定されている。第一スリット30a、第一スリット30bは、図6に示されるように、これら第一通路31a、31bの軸心Gからの半径方向距離R2、R3が、R2<R3となるように形成されている。
【0027】
第一端子台第二リブ32は、図2に示されるようにX軸方向に延びると共にX軸方向の中央部分が折れ曲がって巻胴部21と重なるように構成されており、下溝22a(図4)を画成している。図3に示されるように第一端子台第二リブ32において、X軸方向他端側及び一端側には、下側へ向けて突出する凸部30A、30Bが設けられている。
【0028】
また第一端子台第二リブ32は、図2に示されるように第一端子台ピン保持部33(図4)と協働して、溝状の第二通路32a、第二通路32bを画成している。第二通路32a、第二通路32bは第一端子台第二リブ32に沿ってそれぞれX軸方向一端側、X軸方向他端側に延出されており、それぞれ第一通路31a、第一通路31bと連通している。また第二通路32a、第二通路32bの底面は、第一端子台第一リブ31の反巻回空間側の下面から構成されている。第一端子台ピン保持部33は、図4に示されるように第一端子台第二リブ32のY軸方向一端側に配置されており、図2に示されるように、第一端子台第二リブ32と協働して第二通路32aを画成する第一ピン基部33Aと、第一端子台第二リブ32と協働して第二通路32bを画成する第一ピン基部33Bとから構成されている。第一ピン基部33Aと第一ピン基部33Bとは、X軸方向の一端側から他端側に向けて並列しており、それぞれ第二通路32aの底面及び第二通路32bの底面(第一端子台第一リブ31の下面)よりZ軸方向下側に突出している。図2に示されるように第一ピン基部33Aの一端側側縁と第一ピン基部33Bの他端側側縁とは、それぞれY軸方向に延びる第三通路33a、第三通路33bを規定している。第三通路33a、33bは、Y軸方向他端側でそれぞれ第二通路32a、第二通路32bに連通すると共に、第一端子台ピン保持部33のY軸方向一端側端面まで延びており、第二通路32a、第二通路32bと同様に、底面が第一端子台第一リブ31の反巻回空間側の下面から構成されている。
【0029】
第一ピン基部33A、第一ピン基部33Bの下端面位置であって第三通路33a、第三通路33b近傍位置には、それぞれピン端子を保持可能な保持孔が形成されており、図2に示されるように第一ピン基部33A、第1第一ピン基部33Bの保持孔には、それぞれ第一ピン端子35A、第一ピン端子35Bが設けられている。図3に示されるように、第一ピン端子35A、第一ピン端子35Bには、第一ピン基部33A、第一ピン基部33Bへの装着箇所近傍に、後述の二次導線53の両端がそれぞれ絡げられはんだ付けされる第一絡げ部35C、第一絡げ部35Dが規定されている。
【0030】
また図4に示されるように、第一端子台ピン保持部33のY軸方向一端側端面にはY軸方向一端側に向けて突出する第一端子台掛止部34が設けられている。第一端子台掛止部34は、図2に示されるように第一ピン基部33A、第1第一ピン基部33Bに第一端子台掛止部34A、第一端子台掛止部34Bとして設けられており、第一端子台掛止部34A、第一端子台掛止部34Bは、図3に示されるように第三通路33a、第三通路33bのY軸方向一端側端面に沿って配置されている。
【0031】
第一端子台掛止部34A、第一端子台掛止部34Bの上面にはそれぞれ掛止面34C、掛止面34Dが規定されている。掛止面34C、掛止面34DはZ軸方向と直交する同一平面上に位置しており、図3に示されるように、第三通路33a、第三通路33bを画成する第一端子台第一リブ31の下面よりZ軸方向で下側に位置している。よって第三通路33a、第三通路33bは、第一端子台掛止部34A、第一端子台掛止部34BよりZ軸方向上方に位置している。
【0032】
第二端子台40は、図4に示されるように、第二端子台第一リブ41と、第二端子台第二リブ42と、第二端子台ピン保持部43とから主に構成されている。第二端子台第一リブ41は、図5に示されるように、X−Y平面と平行かつX軸方向に延びて第一端子台第一リブ31と共に下鍔部22の一部を成しており、巻胴部21と共に上述の巻回空間を画成している。図2に示されるように、第二端子台第一リブ41には、第二端子台40の外周となるY軸方向他端側の端部からY軸方向一端側(巻胴部21側)に向けて延出され、X軸方向他端側から一端側に向かって並列し、巻回空間内外を貫通する第二スリット40a、40b、40cがそれぞれ形成されている。第二スリット40aのY軸方向一端位置には、第一通路41aが規定されている。第二スリット40bのY軸方向一端位置には、X軸方向他端側および一端側のそれぞれに向けて延設された溝が形成されており、この他端側および一端側の溝内にそれぞれ第一通路41b、第一通路41cが規定されている。第二スリット40cのY軸方向一端位置には、X軸方向一端側にむけて延設された溝が形成されており、この溝内に第一通路41dが規定されている。第二スリット40a、40b、40cは、図6に示されるように、第一通路41aの軸心Gからの半径方向距離R5、第一通路41b、41cの軸心Gからの半径方向距離R1、第一通路41dの軸心Gからの半径方向距離R4が、R1<R2<R3<R4<R5となるように形成されている。
【0033】
第二端子台第二リブ42は、図2に示されるように、X軸方向に延びると共にX軸方向の中央部分が折れ曲がって巻胴部21と重なるように構成されており、第一端子台第二リブ32と共に下溝22a(図4)を画成している。図5に示されるように第二端子台第二リブ42において、X軸方向他端側及び一端側には、下側へ向けて突出する凸部40A、40Bが設けられている。これら凸部40A、40Bは、凸部30A、30Bと協働してコイル部品1の図示せぬ実装面との当接箇所になる。
【0034】
また第二端子台第二リブ42は、図2に示されるように第二端子台ピン保持部43(図4)と協働して、溝状の第二通路42a〜42dを画成している。第二通路42a〜42dはそれぞれ第二端子台第二リブ42に沿うと共に、X軸方向他端側から一端側に略縦一列に並んで形成されている。第二通路42aは、第一通路41aと連通しており、第一通路41aと連通する箇所からX軸方向他端側に延出されている。第二通路42bは、第一通路41bと連通しており、第一通路41bと連通する箇所からX軸方向他端側に延出されている。第二通路42cは、第一通路41cと連通しており、第一通路41cと連通する箇所からX軸方向一端側に延出されている。第二通路42dは、第一通路41dと連通しており、第一通路41dと連通する箇所からX軸方向一端側に延出されている。また第二通路42a〜42dの底面は、第二端子台第一リブ41の反巻回空間側の下面から構成されている。
【0035】
第二端子台ピン保持部43は、図4に示されるように第二端子台第二リブ42のY軸方向他端側に配置されており、図2に示されるように、第二端子台第二リブ42と協働して第二通路42aを画成する第二ピン基部43Aと、第二端子台第二リブ42と協働して第二通路42bを画成する第二ピン基部43Bと、第二端子台第二リブ42と協働して第二通路42cを画成する第二ピン基部43Cと、第二端子台第二リブ42と協働して第二通路42dを画成する第二ピン基部43Dとから構成されている。第二ピン基部43A〜43Dとは、X軸方向の他端側から一他端側に向けて並列しており、それぞれ第二通路42a〜42dの底面(第二端子台第一リブ41の下面)よりZ軸方向下側に突出している。図2に示されるように第二ピン基部43Aの他端側側縁と、第二ピン基部43Bの他端側側縁と、第二ピン基部43Cの一端側側縁と、第二ピン基部43Dの一端側側縁とには、それぞれY軸方向に延びる第三通路43a〜43dが形成されている。第三通路43a〜43dは、Y軸方向一端側でそれぞれ第二通路42a〜42dに連通すると共に、Y軸方向他端側で第二端子台ピン保持部43のY軸方向他端側端面まで延びており、第二通路42a〜42dと同様に、底面が第二端子台第一リブ41の反巻回空間側の下面から構成されている。
【0036】
第二ピン基部43A〜43Dの下端面であって第三通路43a〜43d近傍位置には、それぞれピン端子を保持可能な保持孔が形成されており、図2に示されるように第二ピン基部43A〜43Dの保持孔には、それぞれ第二ピン端子45A〜45Dが設けられている。図5に示されるように、第二ピン端子45A、第二ピン端子45Dには、第二ピン基部43A、第二ピン基部43Dへの装着箇所近傍に、後述の二次導線54の両端がそれぞれ絡げられはんだ付けされる第一絡げ部45E、第一絡げ部45Hが規定されている。また第二ピン端子45B、第二ピン端子45Cには、第二ピン基部43B、第二ピン基部43Cへの装着箇所近傍に、後述の一次導線51の両端がそれぞれ絡げられはんだ付けされる第一絡げ部45F、第一絡げ部45Gが規定されている。
【0037】
また図4に示されるように、第二端子台ピン保持部43のY軸方向一端側端面にはY軸方向一端側に向けて突出する第二端子台掛止部44が設けられている。第二端子台掛止部44は、図2に示されるように第二ピン基部43A〜43Dにそれぞれ第二端子台掛止部44A〜44Dとして設けられており、第二端子台掛止部44A〜第二端子台掛止部44Dは、図5に示されるようにそれぞれ第三通路43a〜43dのY軸方向他端側端面に沿って配置されている。
【0038】
第二端子台掛止部44A〜44DのZ軸方向上面にはそれぞれ掛止面44E〜44Hが規定されている。掛止面44E〜44HはZ軸方向と直交する同一平面上に位置しており第三通路43a〜43dを画成する第二端子台第一リブ41の下面よりZ軸方向で下側に位置している。よって第三通路43a〜43dは、第二端子台掛止部44A〜44DよりZ軸方向上方に位置している。
【0039】
巻回部50は、図7に示されるように、一次導線51と、二次導線53及び二次導線54とが、それぞれ層を形成するように巻胴部21周りに巻回されて構成されている。また巻回部50のそれぞれの層間及び最外周には各々の導線の間を絶縁する絶縁テープ50Aが巻かれている。この一次導線51および二次導線53、54はいずれもエナメル等の絶縁体が被覆された細線を複数本縒り合わせ縒り線として構成された被覆導線である。
【0040】
一次導線51は、図7に示されるように、巻胴部21周りに、軸心Gから一次導線51の層の半径方向中心までの距離がR1になるように巻回されている。図6に示されるように、一次導線51の巻回部50(図1)から延出されている一端部51Aは、第一通路41cを貫通して、巻回空間から反巻回空間である下鍔部22下面側(第二端子台40下面側)に導かれ、第一通路41cから第二通路42c、第三通路43cを介して掛止面44G(図5)に掛けられた後に、第二ピン端子45Cの絡げ部45Gに絡げられてはんだ付けされている。同様に他端部51Bは、第一通路41bを貫通し、第二通路42b、第三通路43bを介して掛止面44F(図5)に掛けられた後に、第二ピン端子45Bの絡げ部45Fに絡げられてはんだ付けされている。
【0041】
二次導線53は、図7に示されるように、一次導線51上に巻回された絶縁テープ50A周りに、軸心Gから巻回開始位置までの距離がR2となり、軸心Gから巻回終了位置までの距離がR3になるように巻回されている。図6に示されるように二次導線53の巻回部50から延出されている一端部53Aは、第一通路31bを貫通して、巻回空間から反巻回空間である下鍔部22下面側(第一端子台30下面側)に導かれ、第一通路31bから第二通路32b、第三通路33bを介して掛止面34D(図3)に掛けられた後に、第一ピン端子35Bの絡げ部35Dに絡げられてはんだ付けされている。同様に他端部53Bは、第一通路31aを貫通し、第二通路32a、第三通路33aを介して掛止面34C(図3)に掛けられた後に、第一ピン端子35Aの絡げ部35Cに絡げられてはんだ付けされている。
【0042】
二次導線54は、図7に示されるように、二次導線53に巻回された絶縁テープ50A周りに、軸心Gから巻回開始位置までの距離がR4となり、軸心Gから巻回終了位置までの距離がR5になるように巻回されている。図6に示されるように二次導線54の巻回部50から延出されている一端部54Aは、第一通路41dを貫通して、巻回空間から反巻回空間である下鍔部22下面側(第二端子台40下面側)に導かれ、第一通路41dから第二通路42d、第三通路43dを介して掛止面44H(図5)に掛けられた後に、第二ピン端子45Dの絡げ部45Hに絡げられてはんだ付けされている。同様に他端部54Bは、第一通路41aを貫通し、第二通路42a、第三通路43aを介して掛止面44E(図5)に掛けられた後に、第二ピン端子45Aの絡げ部45Eに絡げられてはんだ付けされている。
【0043】
一次導線51と二次導線53及び二次導線54とのそれぞれの一端および他端が延出される箇所の軸心Gからの距離は、それぞれの一端および他端が挿通される第一通路31a、31b、41a〜41dの軸心Gからの距離と一致している。よって巻回部50から各々の導線の一端および他端を引き出して各々の第一通路に挿通する際に、各々の一端および他端を軸心G周りの半径方向と直交するZ軸方向に引き出すことができる。このように一端および他端を巻回部50から引き出すことにより、引き出された一端および他端が、巻回部50を形成する他の導線に近接することが抑制され、引き出された一端および他端から巻回部50までの沿面距離を確実に保つことができる。
【0044】
また図2に示されるように第一通路41a以外の、第一通路31a、31b、41b〜41dについては、いずれもスリットに形成された溝から提供されている。代表例として、図8に示されるように、第一通路31aでは、二次導線53の他端部53Bが挿通されている。第一通路31aを貫通した二次導線は、第一スリット30aの延出方向と交差する第二通路32aを通り、第一スリット30aと平行かつ第一スリット30aの開口側(Y軸方向一端側)に向けて引き回されるように第三通路33a内に配線されている。他端部53Bがこのように配線されることにより、第一通路31aを貫通している他端部53Bにも第一スリット30aの延出方向であって開口側に移動する力が加えられる。しかし、第一通路31aが規定された溝は、第一スリット30aの延出方向と交差するように形成されているため、この溝の内面が他端部53Bの移動を規制する規制部として作用し、他端部53Bが第一スリット30aの開口側に移動することが抑制される。この移動が抑制されることにより、巻回部50から引き出された他端部53Bが、巻回部50において二次導線53の外周に位置する二次導線54に近接することが抑制され、二次導線53の他端部53Bと巻回部50を構成している二次導線54との間の沿面距離を確実に保つことができる。
【0045】
また二次導線53は、一次導線51や二次導線54と同様に芯線が複数本ある縒り線で構成されているため、芯線が一本の導線に比べて第一通路31a内等への追従性が優れている。しかし追従性が優れると、例えば第一通路31aと第二通路32aとの境界になる角部分等で他端部53Bが潰れて第一スリット30aの延出方向に拡がるおそれがある。具体的には、従来例として、図10に示されるように第一通路が溝ではなくスリットの最深部に規定されている場合を想定する。この構成において、第一通路131aから第二通路132aに引き回された他端153Bは、スリット130aの内面に沿って広がり、一部は、二次導線153の外周に位置する二次導線154に近接する。これに対して本実施の形態では、図8に示されるように、第一通路31aが溝内に規定されており、この溝により第一スリット30aの延出方向への移動が規制されているため、図10の従来例ほど他端部53Bが潰れて拡がることはなく、故に二次導線154に近接することも抑制されて沿面距離を確保することができる。
【0046】
尚、第一通路41aが規定される第二スリット40aについては、溝を備えていないが、第一通路41aを貫通する二次導線54の他端部54Bは、巻回部50の最外層から引き出されているため、仮に第一通路41a内で第二スリット40aの延出方向であって開口側に移動したとしても、近接する導線等が存在しないため沿面距離を考慮する必要が無く、故にあえて溝を備えない構成を採っている。
【0047】
上述のように一次導線51および二次導線53、54は、Z軸方向と平行に延びる第一通路31a、31b、41a〜41dと、X軸方向に延びる第二通路32a、32b、42a〜42dと、Y軸方向に延びる第三通路33a、33b、43a〜43dとを経た後に更に第一端子台掛止部34、44に掛けられ、各々第一絡げ部35C、35Dおよび第二絡げ部45E〜45Hにてはんだ付けされる。はんだ付けは溶融したはんだが溜められた槽内に第一ピン端子35A、35B、第二ピン端子45A〜45Dを浸漬することにより行われるが、溶融したはんだは高温で流動性が優れるため、第一絡げ部35C、35Dおよび第二絡げ部45E〜45Hから巻回部50に向けて一次導線51および二次導線53、54の縒り線の隙間に毛細管現象で入り込む可能性がある。しかし、一次導線51および二次導線53、54が配される巻回部50から第一絡げ部35C、35Dおよび第二絡げ部45E〜45Hまでの間の通路を第一通路〜第三通路と長く取っているので、一次導線51および二次導線53、54の絡げ部にはんだが付着したとしても、巻回部50から一次導線51および二次導線53、54のはんだが付着した箇所までの沿面距離を確保することができ、絶縁不良の発生を抑制することができる。
【0048】
また上述のように、第一通路、第二通路、第三通路は、それぞれZ軸方向、X軸方向、Y軸方向と平行な方向に形成されている。よってコイル部品1がコンパクトであっても、第一通路〜第三通路の経路長を大きくすることができ、沿面距離を稼ぐことができる。
【0049】
本発明によるコイル部品は上述した実施の形態に限定されず特許請求の範囲に記載された範囲で種々の改良や変形が可能である。例えば上述の実施の形態において、第二通路と第三通路との底面をいずれも第一リブの下面として同一平面上に配置したが、これに限らず、第三通路の底面を第二通路の底面より下側に配置してもよい。このような構成によると、導線を第二通路から第三通路に引き回し、その後に掛止面に掛ける際に作業がし易くなり、生産性を高めることができる。
【0050】
また、本実施の形態では、スリット内に挿通された導線のスリット延出方向への移動を規制する規制部として、スリット延出方向と交差する方向に穿設された溝を提供し、この溝内に第一通路を規定しているが、これに限らず、図9に示されるように規制部として例えば第一スリット230a内周に第一スリット230aの延出方向と交差する突起231Aを設け、第一スリット230a内の突起231A近傍かつ突起231Aよりも最深部側に第一通路231aを規定してもよい。このような構成であれば、突起231Aにより第一通路231aの導線253Bがスリット延出方向へ移動することが規制され、本実施の形態における溝と同様に導線位置を正確に規定することができる。
【符号の説明】
【0051】
1・・コイル部品 10・・コア 10A・・第一コア 10B・・第二コア
20・・ボビン 21・・巻胴部 21a・・貫通孔 22・・下鍔部 22a・・下溝
23・・上鍔部 23a・・上溝 30・・第一端子台 30A、30B・・凸部
30a、30b・・第一スリット 31・・第一端子台第一リブ
31a、31b・・第一通路 32・・第一端子台第二リブ
32a、32b・・第二通路 33・・第一端子台ピン保持部
33A、33B・・第一ピン基部 33a、33b・・第三通路
34・・第一端子台掛止部 34A、34B・・第一端子台掛止部
34C、34D・・掛止面 35A、35B・・第一ピン端子
35C、35D・・絡げ部 40・・第二端子台 40A、40B・・凸部
40a、40b、40c・・第二スリット 41・・第二端子台第一リブ
41a、41b、41c、41d・・第一通路 42・・第二端子台第二リブ
42a、42b、42c、42d・・第二通路 43・・第二端子台ピン保持部
43A、43B、43C、43D・・第二ピン基部
43a、43b、43c、43d・・第三通路 44・・第二端子台掛止部
44A、44B、44C、44D・・第二端子台掛止部
44E、44F、44G、44H・・掛止面
45A、45B、45C、45D・・第二ピン端子
45E、45F、45G、45H・・絡げ部
50・・巻回部 50A・・絶縁テープ 51・・一次導線 51A・・一端
51B・・他端 53・・二次導線 53A・・一端 53B・・他端
54・・二次導線 54A・・一端 54B・・他端


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導線が巻回されて巻回部が形成される巻胴部と、該巻胴部の軸方向一端に設けられ該軸方向と交差する方向に拡がる端子台とを有し、該巻胴部と該端子台とから導線が巻回される巻回空間が画成されたボビンを備え、
該端子台には、該端子台の外周から該巻胴部側に向かって該導線の巻回方向と交差するように延出し該巻回空間内外を貫通するスリットが形成されると共に、該端子台の該軸方向において反巻回空間側に配置されたピン端子が設けられ、
該導線は該スリットを貫通して該巻回空間から導出され該ピン端子に接続され、
該スリットには、該導線が挿通される第一通路が規定されると共に、該第一通路に挿通された該導線が該スリットの延出方向への移動を規制する規制部を有することを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
該端子台において該第一通路と該ピン端子との間には、該第一通路と連通して該軸方向と交差する方向に延設され該反巻回空間側に位置する第二通路と、該第二通路と連通して該軸方向及び該第二通路の延設方向と交差し該反巻回空間側に位置する第三通路とが形成され、
該導線は、該第一通路、該第二通路、該第三通路を経て該ピン端子に接続されることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
該端子台は、該第三通路近傍位置に配置され該軸方向と交差する方向に突出する突起部を有し、
該突起部には、該軸方向において、該第三通路と該ピン端子との間に位置する掛止面が規定され、
該導線は該第三通路から導出され該掛止面に掛けられて該ピン端子に接続されていることを特徴とする請求項2に記載のコイル部品。
【請求項4】
該規制部は、該スリット内面に該延出方向と交差するように形成された溝から提供され、該溝内に該第一通路が規定されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項5】
該巻回部は、該導線が該巻胴部外周に積層して巻回されて形成され、
該導線は、該巻胴部への巻き初め位置から延出される一端と、該巻胴部への巻き終わり位置から延出される他端とを有し、
該ピン端子は、該一端が接続される一のピン端子と、該他端が接続される他のピン端子とを有し、
該スリットは一のスリットと他のスリットとを有し、
該第一通路は、該一のスリットに形成され該一端が挿通される一の第一通路と、該他のスリットに形成され該他端が挿通される他の第二通路とを有し、
該巻胴部の軸心から該一の第一通路までの距離は、該巻胴部の軸心から該導線の層の該一端が延出される位置までの距離と等しく、該巻胴部の軸心から該他の第一通路とまでの距離は、該巻胴部の軸心から該導線の層の該他端が延出される位置までの距離と等しくなるように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一に記載のコイル部品。
【請求項6】
該第二通路は、該軸方向において、該第三通路よりも該巻回空間側に位置していることを特徴とする請求項2に記載のコイル部品。
【請求項7】
該第三通路は、該軸方向において、該突起部よりも該巻回空間側に位置していることを特徴とする請求項3に記載のコイル部品。
【請求項8】
該掛止面は、該軸方向において、該ピン端子の該導線が接続される箇所よりも該巻回空間側に位置していることを特徴とする請求項3に記載のコイル部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−222637(P2011−222637A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88285(P2010−88285)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】