説明

ココアドリンク

【課題】 最終消費者へ流通するための容器に封入されたココアドリンクのレトルト臭やムレ臭を低減することにある。
【解決手段】 最終消費者へ流通するための容器に殺菌状態で封入されたココアドリンクにおいて、マルトシルトレハロースを0.11〜1.12質量%含有する。本発明においては、マルトシルトレハロースを0.11〜1.12質量%含有するココアドリンクとすることで、ココアドリンクのレトルト臭やムレ臭を低減しつつ、マルトシルトレハロースの呈味によってココア風味を損なうことがない。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最終消費者へ流通するための容器に封入されたココアドリンクであって、マルトシルトレハロースを含有するココアドリンクに関する。
【背景技術】
【0002】
ココアドリンクは、カカオ豆から調製されるカカオマスや、そのカカオマスからココアバターの一部を除いたココアパウダーを、砂糖等の甘味料、乳原料、香料等とともに水に溶解して調整した飲料であり、飲料缶等の容器に封入して販売されている。ココアドリンクは、消費者がココア粉末等を水に溶かす手間をかけることなく、そのまま飲用することができるので、その利便性により、消費者に広く受け入れられている。
【0003】
通常のココアドリンクは0.5質量%以上のココアパウダーを含む。このココアパウダーは醗酵させたカカオ豆を原料とするものであるため残存菌の問題があり、食品衛生上、ココアドリンクを安定した品質を保って市場に流通させるためには、一般的な缶コーヒーに適した殺菌処理(通常F値30〜40)よりも厳しい条件での殺菌処理(通常F値60〜70)が必要とされる。
【0004】
また、ココアドリンクは寒い季節等には温めて飲んだ方がおいしいので、店頭にてホットベンダーに入れられて加温状態で販売されることが多い。その場合、製造後のココアドリンクは、例えば10〜20日の間、60℃以上の温度に保たれることとなる。
【0005】
このような流通事情の下、最終消費者へ流通するための容器に殺菌状態で封入されたココアドリンクにおいては、ココアドリンクが容器内面に接触した状態で上記条件にさらされることによって発生する臭いによって、製造後のココアドリンクの風味や呈味が劣化してしまうという問題があった。
【0006】
また、ココアドリンクは、時間を経るとともに、ココアに特有の、すえ臭いような、汗くさいような不快な臭い(以下「ムレ臭」とする)を呈するようになる。そして、その臭いは、上記の殺菌処理や加温販売することによって、より気にかかる臭いとなるという問題があった。
【0007】
このため、ココアドリンクの業者が高品質のココアドリンクを製造したとしても、その風味や呈味は消費者に届けられるまでに劣化してしまう。
【0008】
したがって、その製造時の風味をそのまま消費者に届けるために、例えば、ホットベンダーに入れて加温状態で販売されたとしても、ココアドリンクのココア風味や呈味の劣化を抑えることができる技術の提供が望まれていた。
【0009】
このような問題に関連して、下記特許文献1には、糖類の少なくとも一部としてトレハロースを用いた缶コーヒーの製造法が記載され、加熱殺菌後、pHが変化せず、低甘味で、風味がよく、コーヒー豆のえぐみが残らず、すっきりとした後味の缶コーヒーが得られることが記載されている。
【0010】
また、下記特許文献2にも、甘味料の一部としてトレハロースを用いることを特徴とする甘味料含有コーヒー飲料の製造方法が開示されている。
【0011】
更に、下記特許文献3には、超臨界二酸化炭素抽出法により脱脂された脱脂ココアパウダーと、トレハロースとを含有することを特徴とするココア組成物が開示されている。
【0012】
更にまた、下記特許文献4には、グルコース重合度3以上から選ばれる末端にトレハロース構造を有する非還元性糖質(例えばα−グルコシルトレハロース、α−マルトシルトレハロース、α−マルトトリオシルトレハロース、α−マルトテトラオシルトレハロース又はα−マルトペンタオシルトレハロースから選ばれる1種又は2種以上)、あるいはこれらから製造されたトレハロースが、各種食品の甘味付に、呈味改良に、また、品質改良などに有利に利用できることが記載されており、数多く挙げられた上記食品の1つとしてココアが例示されている。
【特許文献1】特開平8−298932号公報
【特許文献2】特開2000−262216号公報
【特許文献3】特開平11−346656号公報
【特許文献4】特開2004−210795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記特許文献1、2に記載された技術は、トレハロースをコーヒー飲料の呈味改善のために用いる技術を開示したものであって、ココアドリンクのココア風味の劣化を抑えることについては何ら記載されていない。
【0014】
上記特許文献3に記載された技術は、超臨界二酸化炭素抽出法により脱脂された脱脂ココアパウダーの粉っぽさやざらつきを緩和するために、トレハロースを添加するものであり、通常のココアドリンクの風味劣化を抑えることを目的としたものではない。
【0015】
上記特許文献4には、グルコース重合度3以上から選ばれる末端にトレハロース構造を有する非還元性糖質(α−グルコシルトレハロース、α−マルトシルトレハロース、α−マルトトリオシルトレハロース、α−マルトテトラオシルトレハロース又はα−マルトペンタオシルトレハロースから選ばれる1種又は2種以上)、あるいはこれらから製造されたトレハロースを、ココアに用いることが記載されているが、加熱殺菌状態で容器に封入されたココアドリンクの風味改善という具体的用途については開示されていない。
【0016】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、最終消費者へ流通するための容器に殺菌状態で封入されたココアドリンクのレトルト臭やムレ臭を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、鋭意研究した結果、ココアドリンクにマルトシルトレハロースを添加することにより、ココアドリンクのレトルト臭や、ココアドリンク特有のすえ臭いような、汗くさいような不快な臭い(以下「ムレ臭」とする)を顕著に軽減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、本発明のココアドリンクは、最終消費者へ流通するための容器に殺菌状態で封入されたココアドリンクにおいて、マルトシルトレハロースを0.11〜1.12質量%含有することを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、マルトシルトレハロースが上記ココアドリンクのレトルト臭やムレ臭を抑制して、ココアドリンクの風味や呈味の劣化を防ぐことができる。
【0020】
本発明のココアドリンクは、マルトシルトレハロースを0.11〜1.12質量%含有するものであるので、上記作用効果を発揮しつつ、マルトシルトレハロースの呈味によってココアドリンクの風味や呈味を損なうことがない。
【0021】
また、本発明においては、前記容器が缶又はガラス瓶であり、該缶又はガラス瓶に封入されてレトルト殺菌されたものである場合には、マルトシルトレハロースがレトルト臭を有効に抑制するので好ましい。
【0022】
更に、本発明は、50〜80℃の加温状態で販売されるものに適用されることが好ましく、それによって本発明の効果がより顕著に発揮される。
【0023】
本発明は、ココアパウダーを1〜7質量%含有するココアドリンクに好適に利用することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のココアドリンクによれば、その配合成分としてマルトシルトレハロースを含有するので、最終消費者へ流通するための容器に殺菌状態で封入されたココアドリンクに特有のレトルト臭やムレ臭を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明において、ココアドリンクとは、カカオ豆から調製されるカカオマスや、そのカカオマスからココアバターの一部を除いたココアパウダーを原料とする通常のココア飲料の全般を含み、例えば、カカオ豆由来成分の濃度の違いにより分類されるココア入り清涼飲料、ココア飲料、ココア、あるいは、乳飲料としても分類されるココア入り牛乳等も含む。ただし、本発明のココアドリンクは、ココアパウダーを1〜7質量%含有するものであることが好ましい。ココアパウダーの含有量が1質量%未満では、ココア本来の風味が得られず、7質量%を超えると、ねっとりした食感や口当たりになり、飲みにくくなる。
【0026】
なお、ココアパウダーは、蛋白質、糖質、食物繊維(水溶性難消化性多糖類、ヘミセルロース、セルロース、リグニン等)、リン脂質、無機質(リン、マグネシウム、カルシウム、鉄、亜鉛、銅、カリウム、ナトリウム等)、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンE(各種トコフェロール等)、ナイアシン、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、ポリフェノール類(タンニン、エピカテキン、カテキン、ケルセチン等)、無水カフェイン、テオブロミン、各種遊離脂肪酸類(パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等)などの豊富な栄養成分を含有している。
【0027】
通常、市販されるココアドリンクは、食品衛生上必要とされる殺菌処理が施されて、密封容器に封入されて最終消費者へ提供される。本発明は、そのように流通するココアドリンクであって、最終消費者へ流通するための容器に殺菌状態で封入されたココアドリンクにおいて、好ましく適用することができる。
【0028】
本発明において用いられるマルトシルトレハロースは、下記化学構造式に示されるように、2糖類のマルトースと2糖類のトレハロースがグルコシル結合により重合してなる4糖類の化合物であり、トレハロースと同様にグリコシド性ヒドロキシル基をもたない非還元性のオリゴ糖である。






【0029】
【化1】

【0030】
本発明において用いられるマルトシルトレハロースは、公知の各種の方法で製造することができ、例えば、特開平8−84586又は特開2004−210795に記載された方法などによって製造することができる。すなわち、澱粉の部分分解物として得ることができる4糖類のマルトテトラオースに非還元性糖質生成酵素を作用させて末端部にトレハロース構造を有するマルトシルトレハロースを生成させることができる。このようにして得られるマルトシルトレハロース含有組成物は、マルトシルトレハロース以外にも、原料として用いられる澱粉の部分分解物に含まれる持込の糖類等を由来とする、グルコース、マルトース、マルトトリオース、グルコシルトレハロース等や、反応しないで残るマルトテトラオースを含むものであるが、固形分換算で30質量%以上、好ましくは50質量%以上の純度でマルトシルトレハロースを含むものであれば、本発明において用いられるマルトシルトレハロースとして有効に用いることができる。また、その産物を部分的に又は高度に精製してマルトシルトレハロース濃度を高めたものを用いてもよい。
【0031】
マルトシルトレハロース含有シラップとしては、例えば、市販の「ハローデックス(登録商標)」(株式会社林原製)を用いることもできる。
【0032】
ココアドリンク中へのマルトシルトレハロースの添加量は、0.11〜1.12質量%であることが好ましく、0.37〜0.75質量%であることがより好ましい。ココアドリンク中へのマルトシルトレハロースの添加量が0.11質量%未満では、レトルト臭及びムレ臭の低減効果が乏しくなる。また、ココアドリンク中へのマルトシルトレハロースの添加量が1.12質量%を超えると、ココア本来の風味や香りが乏しくなってしまうだけでなく、香料の風味も弱くなってしまう。
【0033】
本発明のココアドリンクは、マルトシルトレハロースをココアドリンクの配合成分として用いる以外は、通常のココアドリンクの調製方法に従って得ることができる。
【0034】
本発明のココアドリンクの副原料としては、通常のココア飲料に使用されるもの、すなわち、甘味料、乳原料、安定剤、乳化剤、pH調整剤、香料、調味料等を、必要に応じて選択して用いることができる。例えば、甘味料として、グラニュー糖及び上白糖等の糖類並びに人工甘味料、乳原料として、市販の牛乳、練乳、加糖脱脂練乳、全粉乳、脱脂粉乳等、安定剤として、セルロース、キサンタンガム等の増粘剤等、乳化剤として、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等、pH調整剤として、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、リン酸等、調味料として、食塩等を、必要に応じて選択して用いることができる。
【0035】
本発明において、ココアドリンクを最終消費者へ流通するための容器に殺菌状態で封入するためには、通常用いられる製造技術に従って、缶又はガラス瓶入りココアドリンクとして製造したものをレトルト殺菌してもよく、また、殺菌処理したものを、缶、ガラス瓶、紙パック、ペットボトル等に無菌充填することもできる。
【0036】
上記殺菌処理の条件としては、食品衛生上、ココア飲料等に適用される条件と同様に、例えば、缶又はガラス瓶入りココアドリンクのレトルト殺菌であれば、123〜128℃で、20〜70分間レトルト殺菌するのが好ましく、殺菌処理したものを無菌充填する場合には、138〜145℃で、20秒〜2分間殺菌するのが好ましい。
【0037】
本発明において、ココアドリンクを殺菌状態で封入して最終消費者へ流通するための容器としては、上記レトルト殺菌処理を施す場合には、その処理に適するものであれば特に限定されるものではなく、スチール製の缶又はガラス瓶等を用いることができる。また、上記殺菌処理したものを無菌充填する場合には、無菌充填製造に適するものであれば特に限定されるものではなく、缶、ガラス瓶、紙パック、ペットボトル等を用いることができる。
【0038】
また、本発明は、例えばホットベンダーのように、50〜80℃の加温状態で販売されるココアドリンクに好適に使用される。このように加温販売される場合には、ココア特有のムレ臭が特に発生しやすく、本発明の効果がより顕著に発揮される。
【0039】
本発明において、「レトルト臭」とは、ココアドリンクがレトルト殺菌用の容器内で容器内面に接触した状態でレトルト殺菌処理のための条件にさらされることによって発生する、缶臭等であって、消費者に好まれない風味や呈味をココアドリンクに付する臭いを意味する。したがって、例えば、ホットベンダーに供される缶、ペットボトル等の容器内でココアドリンクが容器内面と接触した状態で長期間加温状態に曝されることによって発生する臭いをも含む。すなわち、一般に「レトルト臭」の用語は、レトルト殺菌(加圧加熱殺菌)処理をその用語の由来とするものであるが、レトルト殺菌処理によらない場合であって、その臭い発生のための条件と実質的に異ならない条件下において消費者に好まれない風味や呈味を内容物に付する臭いをも含む概念である。
【0040】
本発明において、「ムレ臭」とは、カカオ豆から調製されるカカオマスや、そのカカオマスからココアバターの一部を除いたココアパウダーを原料とするココアドリンクに特有の臭いであり、「すえ臭い」「汗臭い」「醗酵されたものの臭い」とも表現される独特の臭いである。
【0041】
その臭いの原因物質は明らかではないが、ココアドリンクの原料であるカカオ豆由来成分に含まれる何らかの成分に由来するものであって、製造後時間を経るとともに、その臭い成分の化学的変性がココアドリンクの風味や呈味の劣化をもたらすことが考えられる。
【0042】
本発明において、マルトシルトレハロースが上記レトルト臭やムレ臭を低減する具体的な機構は明らかとされないが、後述するように、類似化合物であるトレハロースには顕著な効果が認められないことから、マルトシルトレハロースに特有の作用によるものであることが推測される。
【実施例】
【0043】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0044】
<実施例1>
ココアパウダー(森永製菓株式会社製)20g、砂糖90g、全粉乳25g、5gのセルロース複合製剤(商品名「エンゼルDBE」:三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)、0.3gの乳化剤(商品名「P−1570」:三菱化学フーズ株式会社)を予め粉体で混合し、50℃のお湯700gに加えてホモミキサー(商品名「HV−M」:特殊機化工業株式会社)で10分間撹拌した。
【0045】
上記ホモミキサーで撹拌したものに、マルトシルトレハロースシラップ(商品名「ハローデックス(登録商標)」:株式会社林原製)を10g、生クリーム30gおよび牛乳100gを加えてさらに10分間撹拌した。なお、上記で用いたマルトシルトレハロースシラップは、その固形分が72%であり、固形分当り52%のマルトシルトレハロースを含むものである。
【0046】
その後、全量が1kgになるようにお湯にてメスアップを行い、70℃まで加熱し20Mpaの均質処理(ホモ処理)を行った。それを缶に詰めて、125℃、45分間のレトルト殺菌を行い、缶入りのココアドリンクを製造した。なお、このココアドリンクのマルトシルトレハロース含有量は0.37質量%であった。
【0047】
<比較例1>
マルトシルトレハロースシラップを配合せずに、その甘味が上記実施例1のココアドリンクと同程度となるようにココアドリンクを調製した。すなわち、砂糖のおよそ30%の甘味度を有するマルトシルトレハロースシラップの10g分の甘味を砂糖3gで補って上記実施例1と同様にして缶入りのココアドリンクを製造した。
【0048】
<試験例1>
上記実施例1のココアドリンクと、上記比較例1のココアドリンクとの風味や呈味の違いを調べるために、製造後3日間室温保存したものを専門パネル5名に試飲してもらい、それぞれの意見を述べてもらった。その結果、すべてのパネラーの一致した意見において、実施例のココアドリンクは比較例1のココアドリンクに比べて、レトルト殺菌処理によって生じるレトルト臭及びココア特有のムレ臭が低減していることが確認された。なお、レトルト臭は主に缶臭からなるものであった。
【0049】
また、製造後の風味や呈味の経時変化について調べるために、製造後60℃で保存したものを15日間にわたって経時的に試飲してもらい、それぞれの意見を述べてもらった。
【0050】
その結果、すべてのパネラーの一致した意見において、上記レトルト臭はレトルト処理直後から存在してその後徐々に低減していく傾向にあり、また、上記ムレ臭は保存時間とともに増大していく傾向にあることが確認された。
【0051】
そして、実施例1のココアドリンクでは、製造後のすべての時点において、それらのレトルト臭及び/又はムレ臭が、比較例1のココアドリンクに比べて低減していることが確認された。
【0052】
<実施例2>
マルトシルトレハロースシラップを20g配合することとした以外は上記実施例1と同様にして、ココアドリンクを製造した。
【0053】
<比較例2>
マルトシルトレハロースシラップに換えてトレハロースを13.3g含有するココアドリンクを製造した。すなわち、上記実施例1の製造工程において、マルトシルトレハロースシラップを混合する代わりに、精製トレハロース粉末(株式会社林原製)13.3gを温水100mlに溶かしたものを用いて、最終水分含量が上記実施例2のマルトシルトレハロース含有ココアドリンクと同様になるようにしてココアドリンクを製造した。なお、トレハロースの甘味度は砂糖のおよそ45%であるため、トレハロース13.3gは、上記実施例2のココアドリンクに配合したマルトシルトレハロースシラップ20gと同程度に甘味を付与することができる量である。以下、このココアドリンクをトレハロース含有ココアドリンク1とする。
【0054】
<比較例3>
更に、甘味度ではなく固形分含量を揃えたものとして、上記実施例2のココアドリンクのマルトシルトレハロース含有量と、トレハロース含有量が同じになるようにしてトレハロース含有ココアドリンクを製造した。すなわち、精製トレハロース粉末(株式会社林原製)14.5gを温水100mlに溶かしたものを用いる以外は、上記トレハロース含有ココアドリンク1と同様にしてココアドリンクを製造した。以下、このココアドリンクをトレハロース含有ココアドリンク2とする。
【0055】
<試験例2>
前記化学式に示すように、マルトシルトレハロースはその末端部構造に2糖類のトレハロースを有する4糖類であるので、トレハロースによっても、上記試験例1で確認されたマルトシルトレハロースの作用効果と同様の作用効果が得られるのではないかと推測し、比較試験を行った。
【0056】
上記実施例2のココアドリンクと、トレハロース含有ココアドリンク1若しくは2との風味・呈味の違いを調べるために、試験例1と同様にして、専門パネル5名に、それぞれ製造直後のもの、及び、製造後3日間室温保存したものについて試飲してもらい、意見を述べてもらった。その結果、上記試験例1の結果と同様に、マルトシルトレハロース含有ココアドリンクにおいて、上記比較例1のココアドリンクに比べて、レトルト殺菌直後から生じるレトルト臭およびココア特有のムレ臭が低減していることが確認された。その一方で、すべてのパネラーの一致した意見において、トレハロース含有ココアドリンク1若しくは2においては、レトルト臭及び/又はムレ臭の低減は認められなかった。また、これらの結果は、製造直後及び製造後3日間室温保存したココアドリンクのいずれについても同様であった。
【0057】
これらの結果によれば、ココアドリンクの風味・呈味改善に関するマルトシルトレハロースの作用効果を、その末端部のトレハロース構造のみに帰することはできなかった。
【0058】
<試験例3>
マルトシルトレハロースの好ましい配合量を検討するために、種々の最終濃度となるようにココアドリンクを製造した。すなわち、下記表1に示す配合量のマルトシルトレハロースシラップを配合することとした以外は上記実施例1と同様にしてココアドリンクを製造して、試験例1と同様の官味試験をおこなった。










【0059】
【表1】

【0060】
その結果、すべてのパネラーの意見を総合して、上記表1に示すような結果を得た。すなわち、マルトシルトレハロースをココアドリンク中の最終濃度として0.11〜1.12質量%含有するようにすれば、マルトシルトレハロースによる上記風味・呈味改善効果を得ることができることが明らかとなった。また、最終濃度0.37〜0.75質量%付近に、マルトシルトレハロースによる上記風味・呈味改善効果をより効果的に得ることができる濃度域があることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最終消費者へ流通するための容器に殺菌状態で封入されたココアドリンクにおいて、マルトシルトレハロースを0.11〜1.12質量%含有することを特徴とするココアドリンク。
【請求項2】
前記容器が缶又はガラス瓶であり、該缶又はガラス瓶に封入されてレトルト殺菌されたものである請求項1記載のココアドリンク。
【請求項3】
50〜80℃の加温状態で販売されるものである請求項1又は2記載のココアドリンク。
【請求項4】
ココアパウダーを1〜7質量%含有する請求項1〜3のいずれかに記載のココアドリンク。

【公開番号】特開2007−49962(P2007−49962A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−238860(P2005−238860)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(000006116)森永製菓株式会社 (130)
【Fターム(参考)】