説明

コタツ用部品のセット

【課題】個人でも組立てができるコタツ部品セットを提供する。
【解決手段】面状ヒーター1と金属板12とからなる側面ヒーター部材と、面状
ヒーター2と蓄熱体3とからなる底面ヒーター部材と、前記各面状ヒーターへの
通電を制御する制御装置6を1つの収納箱40の中に収納したコタツ用部品のセ
ットであって、前記面状ヒーター1、2は熱可塑性合成樹脂製面状ヒーター5を
使用し、配線の接続にはコネクタを使用し、組立てた状態で既設の堀りコタツの
凹部内に収容できるようにしたコタツセット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電熱加熱式のコタツ用部材で構成され、従来の堀りコタツの脚入用
凹部(炉箱ともいう)内に簡単に設置することができ、しかも低温でありながら
足湯の温浴に類似した加熱効果を持つコタツとすることができ、コタツ用部材の
移送や組立て作業が個人でも簡単にできるコタツセットに関する。
【背景技術】
【0002】
木炭を燃料とする堀りコタツは古くから使用されてきたが、現在は木炭の確保
と保存が困難な上に、老人や子供では発熱量の調節が面倒であり、更に燃焼排ガ
スが発生する上に火傷や火災の危険性があるなど安全性に大きな問題があること
から、このコタツは次第に敬遠されるようになり、現在では使用されないで放置
されて脚入用凹部を蓋で閉止して通常の部屋としている場合が多い。
【0003】
木炭に代わる熱源として発熱灯を使用した堀りコタツがあるが、これは点灯や
消灯や発熱状態の調節が容易である上に清潔かつ安全である。また、ニクロム線
を使用した電熱式のものもあるが、脚部や下半身を、局部的に、しかも高温で加
熱することから、暖を取った人が堀りコタツから出ると急に寒気を感じるなどの
暖房と非暖房の状態間に大きな格差を生じた。
【0004】
炭火を使用する堀りコタツは、日本人には家庭的で和やかな雰囲気を感じるも
のであり、温泉地の旅館や寒冷地の別荘あるいは高級料亭など、落ちついた雰囲
気を楽しむ場所の家屋の冬季の暖房手段として人気がある。確かにこの堀りコタ
ツは、旅館のように女中さんなど火元の世話をする人手がある場合には効果的に
使用できるが、通常は前記のように火元の世話人がいないので、炭火に代わって
熱源に電熱式のものを使用せざるを得ないことが多い。
【0005】
ところで、ニクロム線を使用した電熱式の堀りコタツは、熱量が大きく、即時
に加熱できる特性を持っているが、消費電力が大きく、大型のものは2400W
、小型のものでも800W程度の電力を消費しており、従って、これを温度調節
しながら使用してもそれに要する電気料金はかなり高額にならざるを得ない。こ
のようでことから、最近では一般家庭においては電熱式の堀りコタツの使用は敬
遠され、そのコタツの凹部に蓋をするなどして放置されていることが多い。
【0006】
従来の電気加熱式堀りコタツについては下記のように各種のものが提案されて
いる。
【0007】
A.堀りコタツの底部にシーズヒーターとその周囲に蓄熱プレートを配置した
ものを使用して深夜電力料金時間帯の安価な電力により蓄熱して昼間時に放熱さ
せる蓄熱型の堀りコタツが特許文献1に記載されている(蓄熱・対流伝熱型堀り
コタツ)。
【0008】
B.炉箱の底面と内側面の略全面に加熱部を設け、更に炉箱の上方に配置され
る座卓の天板部の下面に至るまで加熱部を設けて加熱能力を高くした全面加熱型
の堀りコタツが特許文献2に記載されている(全面加熱型堀りコタツ)。
【0009】
C.部屋の床面より一段下方に、堀りコタツとその周囲にめぐらせた腰掛け部
を形成し、更に、この腰掛け部の背当部に発熱体を配置した背当部加熱型の堀り
コタツが特許文献3に記載されている(腰部伝熱加熱型堀りコタツ)。
【0010】
D.堀りコタツ本体の内底面に底用面状ヒーターを設けると共に内側面にも側
用面状ヒーターを設け、この側用面状ヒーターの温度を底用面状ヒーターの温度
より高温に設定するようにした堀りコタツが特許文献4に記載されている(脚部
高温加熱型堀りコタツ)。
【特許文献1】特開平6−265160号公報
【特許文献2】特開平9−79580号公報
【特許文献4】特開平9−229378号公報
【特許文献5】特許第3206352号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
(特許文献に記載された堀りコタツについて)
特許文献1には、堀りコタツの暖房装置の主体部を構成する蓄熱プレートに酸
化マグネシウムを内蔵させたものを4個集合させて蓄熱プレートの集合体を形成
し、その中央部に形成されている凹部にシーズヒータを内蔵させて発熱部を形成
している。そしてこの発熱部を断熱板を使用した箱体の内部に収容し、その底板
上に蓄熱プレートを支持し、その底板部の下面に配列された放熱フィンを介して
前記箱体の底部より加熱空気をコタツ内に放出・循環させてコタツ内を加熱する
ようにしている。
【0012】
このコタツは、固形の蓄熱プレートに顕熱として蓄熱させるもので、この蓄熱
プレートに充分な熱量を蓄熱するためには、大きな体積を持ったものを使用する
必要があり、大型で高価な装置となる欠点がある。また、コタツ内を加熱するの
に暖房装置の下方の放熱フィンを介してコタツ内の空気を加熱してコタツ内に循
環させて対流熱伝達する方法を採用しているので暖房効果が劣り、従って、夜間
電力を使用した場合でも蓄熱量が少なく、電気代がかなり割高とならざるを得な
い。
【0013】
特許文献2に記載された堀りコタツは、コタツの底面と周壁面と座卓の天板部
の下面の六面に加熱部を設けたものである。このコタツは、その内部を全体的に
対流伝熱や輻射伝熱により温めることができるので、たとえ掛け蒲団を用いなく
もと、炉箱内の温度の均一化を図ることができる可能性がある。しかし、この堀
りコタツは、座卓部分まで多数のヒーターを設ける必要があることから、電気関
係の装置が複雑化して設備費が高価となる上に、暖房経費がかなり高額となる欠
点がある。
【0014】
特許文献3に記載された堀りコタツは、床面より一段下に位置するコタツ本体
の周囲に腰掛け面と背もたれ面を形成し、この背もたれ面にも発熱体を設けたも
のである。しかし、この堀りコタツは大型の装置で設置面積が大幅に広くなり、
一般家屋には到底設置が困難である。
【0015】
更に、特許文献4に記載された堀りコタツは、本体の底面と周面に面状ヒータ
ーを配置したものであるが、実施例に見るとヒーター線を蛇行させて配置して面
状に発熱するように構成したものである。このヒーターは空気を加熱して対流を
発生させたコタツ本体内を加熱するもので、熱効率の改良を狙ったものであるが
、低温でありながら脚部を緩やかに、心地よく加熱し、この加熱を身体全体に行
き渡らせるような加熱方法や暖房効果を有していない。
【0016】
しかし、前記特許文献1〜4に記載された堀りコタツは大量に市販されている
コタツないし堀りコタツとは全く異なった別の構造のものであり、これを適用す
るためには新築家屋か特別に製作し、設置する必要がある。
【0017】
更に、熱源にニクロム線を使用したヒーターの場合は、前記のように800〜
2400Wもの大電力を消費し、その上に、一般に高温の輻射熱を放射するので
肌がヒリヒリとした感じで加熱され、例えは温浴のように柔らかく肌を温めるよ
うな効果は全くない。
【0018】
古い住宅には、木炭を使用する堀りコタツやニクロム線を使用して高温の熱線
を発生する堀りコタツが大量に設置されいるが、石油ストーブの普及なとの暖房
手段の多様性と共に放置されてきた。
【0019】
(低温加熱型の堀りコタツの要求)
従来の電熱加熱式の堀りコタツは、脚入用凹部の底部や側壁面や座卓の天板の
裏面までニクロム線を使用した電熱ヒーターを設けている。これらの電熱ヒータ
ーあるいは発熱灯を熱源は、一般に135℃〜150℃程度の高温の熱線を放射
するために、脚入凹部や座卓などの受熱面が常時高温に加熱されて場合によって
は木材部分が焼損したり、劣化したり、また、コタツ部材の塗装が劣化する欠点
がある。
【0020】
また、このような電熱ヒーターなどを使用したコタツ内部の温度は70℃〜9
0℃程度の高温であり、このコタツの中に脚部や膝部を入れて採暖すると、体温
よりかなり高温の加熱空気に接触すると共に輻射熱も受ける。その結果、短時間
にチリチリ・ヒリヒリとするような熱い感じを受けることが多く、幼児や老人に
はこの種の堀りコタツの使用の際は十分な注意が必要である。
【0021】
外気で冷えた体を高温のコタツ内で温める時、当初は高温の加熱空気などより
急速な受熱より快い暖かさを感ずるが、肌がある程度温まった時には必要以上の
加熱となり、電熱ヒーターに対面する肌が局部的に昇温されるために熱すぎて不
快感を感じることになる。
【0022】
例えば、コタツを囲んで長時間、会談や団欒するような場合を想定すると、従
来の電熱加熱のコタツの場合は脚部や膝部などが前記のような高温にさらされて
身体が必要以上に加熱される。この状態になると下半身が火照ってもはや会談が
できる状態ではなくなり、多くの場合、眠気を催してしまうことになる。
【0023】
そこで、電熱ヒーターの温度を例えば、45℃程度の低温に調節した場合は脚
部を温めるのに時間がかかり、実質的に温かさを感じられない。従って、実際に
このような温度で使用される場面は少なく、通常は前記のように高温と低温の間
をしばしば調整しなければならなかったのである。
【0024】
(低温加熱型の堀りコタツの試み)
本発明者は後述する如く熱可塑性合成樹脂製のPTC特性を持つ面状ヒーター
(低温発熱型)を製造販売している。そこでこれを堀りコタツへの適用の可能性
、特に、その温度が50℃以下ないし40℃程度の低温、更に好ましくは体温に
近いような低温における採暖の可能性と、その低温化に対応して使用電力量が従
来の堀りコタツより遥かに少なく、約半分程度以下のものを得る可能性について
着目し、このヒーターを使用した新型の堀りコタツを検討した。
【0025】
堀りコタツのモデル:内面寸法(縦・横)が1200×860mm、深さが4
00mmの脚入用凹部を持つ堀りコタツの箱型モデルを準備した(図1参照)。
【0026】
次に、図5に示すように脚入用凹部(炉箱)の底板部の上面に幅が235mm
、長さが1130mmの2枚の前記低温発熱型の底部面状ヒーター1、1aを敷
いた。そして幅が195mm、長さが1970mmの低温発熱型の側壁部面状ヒ
ーター2、2aを2枚準備し、それぞれを略中央部よりL形に曲げた状態で2面
の側壁面に沿わせて設けた。そしてこれらの面状ヒーター1、1a、2、2aを
水密性コネクタ8を利用して制御装置6との間を配線した。なお、図5において
は底部面状ヒーター1、1aの上面にシート状の蓄熱体3が積層されたものを示
している。
【0027】
これらの面状ヒーター1、1a、2、2aは、後述するようにポリオレフイン
などの熱可塑性樹脂を主体とし、これにカーボン微粉末を添加して成形したもの
である。このヒーターは熱可塑性樹脂自体を発熱させるものであるから、本質的
に高温加熱には適していない。なお、最初の実験例においては、底部面状ヒータ
ー2、2aの上面にシート状に成形した蓄熱体3を積層せずに実験した。
【0028】
(低温発熱型の面状ヒーターの特徴)
低温発熱型の面状ヒーター1、1a、2、2aとして本出願人が代表者である
ミサト株式会社が以前から製造・販売している商品名「プラヒート」を設計変更
して使用した。
【0029】
このヒーターは、熱可塑性樹脂を主原料とするもので、ポリエチレンやポリピ
ロピレンやナイロンなど主体とする熱可塑性樹脂に、カーボン微粉末を20%程
度添加してペレットを製造しておき、このペレットを押出成形機に供給してTダ
イより厚さが1mmのシート2枚を平行して同時に成形し、そのシート両側に電
極線を平行に配置しながら、軟化状態において押圧接着して連続的な帯状の面状
ヒーターを使用している。
【0030】
この低温発熱型の面状ヒーターHは、図7及び図8に示すようにヒーター素子
5の両側に電極線5aを配置したシート状(薄板状)のもので、これを耐熱性と
電気絶縁性の合成樹脂製カバー5b(高密度ポリエチレン)内に収容・密封し、
一端より2本の電極線5bを導出して構成されている。
【0031】
そしてこの面状ヒーターHは、図9に例示したように温度が上昇するにしたが
って抵抗値が上昇し、特に40℃から50℃を越えると急激に高くなり、しかも
温度状態と共に急速に電流を自動的に制限する、いわゆる「PTC効果」を持っ
ている。また、この面状ヒーターHのヒーター素子5は、ポリエチレンやポリプ
ロピレンなどの熱可塑性樹脂を原料としているので、従って高温発熱に適してお
らず、50℃〜40℃程度の温度で発熱させるのに適している。なお、図9に示
す曲線A,B,C,Dは、それぞれ30、40、50、60W/mの電気容量の
ものの特性を示している。
【0032】
(合成樹脂製面状ヒーターの安全性)
図7、8に示す面状ヒーター素子5は特殊な成形条件で製造されたもので、そ
の断面において表面にカーボンの微粉末層が薄く偏在して表面のみが導電層を薄
く形成し、厚みの中間部分は殆んど電流を流さない電気絶縁性を持っている。そ
して通電するとヒーター素子5の両側の電極5aの間のヒーター部分の幅方向に
電流が流れて発熱する。なお、このヒーター素子5は電流を流すヒーター部分に
穴を開けてもその他の部分の発熱効果には影響しない特性がある。
【0033】
このような状態において、例えば、この通電状態のヒーター部分に電線の一方
が接触させて積極的にショートさせた場合は、その電線が接触したヒーター部分
が小面積でスパークし、スパーク部分が瞬時に溶融してその電線の周囲に小さな
孔が発生する。この孔あき状態となると発熱層と電線との間の通電が自動的に遮
断される。つまり、この低温発熱型の面状ヒーターは、万一のショート事故にお
いても「自己電流遮断性」を持っているのである。
【0034】
(暖房効果実験)
第1の実験(コタツの突入電流と安定電流・安定時間)
図示しない堀りコタツの脚入用凹部内に嵌入できるような箱体に、図5に示す
低温発熱型のヒーター素子を使用した底部面状面状ヒーター1、1aとL型の側
壁部面状ヒーター2、2aを組立て、更に温度制御する制御装置6との間を水密
性型のコネクタ8(雄・雌の嵌合型で、嵌合により水密性を発揮する。配線との
結合は押圧で行うことができる)を利用して配線7した。
【0035】
そして前記制御装置6に接続されている電源用配線10に100Vの電圧を給
電して前記各面状ヒーター1、1a、2、2aに通電して堀りコタツ内の温度上
昇と「突入電流」と「安定電流」の変化の様子を測定した。
【0036】
室温が18℃の状態の突入電流は3.2Aであったが、5分後に2.9Aと低
下し、10後には2.8Aに低下し、更に20分後に2.6Aに低下し、それ以
降は安定した。そしてスイッチを投入してから20分後の堀りコタツの消費電力
量は260Wであった。
【0037】
一方、従来のこの程度の大きさの脚入用凹部を持つ堀りコタツの場合の消費電
力は、800〜2400W程度、あるいはそれ以上の大容量であることから比較
すると、前記合成樹脂を使用した低温発熱型の面状ヒーターを使用した堀りコタ
ツの消費電力は300W以下であり、如何に低いかが分かる。
【0038】
第2の実験(身体の加熱を感ずる場所の検討)
前記堀りコタツを使用し、男7人、女7人の14人が下記の実験を行い、この
堀リコタツの加熱方法を評価した。
【0039】
(実験a)側壁部面状ヒーター2、2aの通電を停止し、そして底部面状ヒー
ター1、1aのみを発熱させ、これに直接、足裏部を約20分間接触させた場合
の暖かさの程度を評価する。なお、前記底部面状ヒーター1、1aの温度は45
℃に制御されている。この場合のコタツ内の平均温度は35〜36℃であった(
足裏・直接・熱伝導加熱)。
【0040】
(実験b)前記底部面状ヒーター1、1aの上に、潜熱型蓄熱材充填したシー
ト状の蓄熱体3を積層し、前記ヒーター1、1aに通電して蓄熱体3を加熱・溶
融状態とし、この蓄熱体3の上に直接、足裏部を約20分間、接触させた場合の
暖かさを感じを評価する。この場合のコタツ内の平均温度は35〜36℃であっ
た。この蓄熱体3を構成している蓄熱材の溶融温度は31℃、凝固温度は28℃
であった(足裏・蓄熱材接触加熱)。
【0041】
(実験c)側壁部面状ヒーター2、2aと底部面状ヒーター1、1aの両方を
発熱させる。そして底部面状ヒーター1、1a上に足裏を接触させ、更に、踵(
くるぶし)部を側壁部面状ヒーター2、2aより20〜50cm程度離間した状
態に保持して約20分間その状態で暖かさの感じを評価する。この場合のコタツ
内の平均温度は35〜36℃であった(足裏直接熱伝導加熱と踵輻射加熱)。
【0042】
(実験d)側壁部面状ヒーター2、2aの表面にアルミ板12(図1参照)を
配置し、このアルミ板12を介してコタツ内に熱を輻射させると共に、底部面状
ヒーター1、1aにも通電して両方の面状ヒーター1、1a、2、2aを発熱さ
せながら、前記(実験c)と同様な姿勢で約20分間その状態で暖かさの感じを
評価する。
【0043】
この場合のコタツ内の平均温度は35〜36℃であった。前記アルミ板12(
金属板)は放熱板、均熱板、更に表面の光沢により熱反射鏡の役目もした(足裏
直接熱伝導加熱と踵輻射加熱)。
【0044】
(実験e)赤外線サーモグラフィーを利用した観察
前記実験a〜dによる脚部を加熱した場合の赤外線サーモグラフィーによる温
度分布状態を観察した。また、比較のために従来の高温発熱型の堀りコタツを使
用して脚部を加熱し前記と同様に赤外線サーモグラフィーによる観察を行なった
(参考実験)。
【0045】
その結果、実験aは足裏の温度上昇が早いが、脚部まで加熱されるのには約2
0分以上の時間を必要とした。実験bは実験aに比較して脚部までの加熱に時間
がかかった。
【0046】
実験cは、低温加熱でありながら、脚部の温度上昇がかなり早かった。更に実
験dにおいては脚部の温度上昇が早い上に、下半身への温度の上昇の伝達の早い
ことを確認できた。これは脚部の低温加熱、特に輻射エネルギーを使用した脚部
の加熱により体温の上昇がかなり早いことも確認できた。
【0047】
また、従来の高温発熱型の堀りコタツの場合は、足部全体と脚部の表面の温度
上昇が顕著であったが、コタツ内の温度がかなり高温であることから、脚部をコ
タツから出したり入れたり、あるいはコタツ内で移動するなどの動作が必要であ
り、長時間の使用には問題があった。
(実験の考察)
前記第1の消費電力の実験結果より、低温発熱型の面状ヒーターを使用した堀
りコタツの場合は、従来の電気容量の大きな高温加熱型の堀りコタツに比較して
消費電力が極端に低下することが確認された。これはPTC効果を持つ熱可塑性
樹脂を主原料として製造された極低温加熱の効果であることが理由である。
【0048】
前記第2の人体コタツ暖房実験より、(実験a)の足裏・直接・熱伝導加熱で
は、あまり暖かさを感じないか、あるいは受熱が不十分であると感じた人が多か
った。
【0049】
また、(実験b)の足裏・蓄熱体に接触した加熱では、(実験a)の場合と同
様に、あまり暖かさを感じない人か多かった。これらの実験より足裏部だけの低
温加熱では、コタツの暖房として不十分であることが評価された。
【0050】
次に、(実験c)の足裏に直接熱伝導する加熱に、更に踵を輻射熱による加熱
が付加された複合加熱の場合は、コタツ内の平均温度が35〜36℃で体温以下
の温度(低温加熱)であるにもかかわらず、10分〜15分程度の時間の経過で
発汗と、従来のコタツでは経験したこともない快適な暖房効果を感ずることがで
きた(踵・遠赤外線加熱効果)。
【0051】
更に、(実験d)の側壁部面状ヒーター2、2aと、表面に光沢のあるアルミ
板12を使用した反射板とを併用した場合のコタツ暖房効果によると、10分〜
15分程度の時間で発汗が認められた。
【0052】
更に、(実験c)の場合に比較して従来のコタツでは「未経験の、かつ快適な
コタツ暖房効果」を感ずることができた。前記のようにコタツ内の温度が35〜
36℃程度の低温にもかかわらず、脚部全体が「ボヮ〜ツ」と温かくなり、これ
が下半身から体全体に伝達して快適な温もりを感ずることができた。
【0053】
そして本発明にかかるこの低温発熱型の面状ヒーターを使用したコタツの場合
は、従来のコタツと比較して極く低温の暖房であるにもかかわらず、コタツより
出た時においても「脚部の火照り」が30分間程度も継続し、更に、脚部が軽く
なったような感じがした(踝・遠赤外線加熱効果、温浴効果)。
(低温加熱型の堀りコタツの問題点)
前記各種の実験より、本発明者が製造販売している合成樹脂製面状ヒーターを
熱源とする低温加熱型の堀りコタツは、人体に対して血流を増大させ、足部ない
し下半身の局部暖房にも関わらず、体全体に温もりを感じ、しかもその加熱効果
が長く持続することか確認できた。
【0054】
しかし、この発明を実施する工程において別の問題が発生した。
つまり、堀りコタツを使用してきた日本の家庭は多数あり、現在はそのコタツ
の脚入用凹部は板などで閉止され、最早その存在すら分からない状態となってい
ることもある。
【0055】
そこでコタツを設置する技術者を各地に派遣して作業を行なったが、このコタ
ツ部材は価格が安価なものであり、更に作業も極めて単純であり、電気の専門家
でなくても設置できる程度のものであることから、コタツ改造の売り上げは利益
がでる程度のものではなかった。
【0056】
前記堀りコタツの加熱手段である面状ヒーターは、本発明においては前記のよ
うに合成樹脂製でショートや過熱による火災を発生しない特性を持ち、しかも、
その取付け作業はネジ止めなどの簡単なものである利点がある。そこで、この低
温発熱型の面状ヒーターの特性を活かし、使用者が家電製品と同様に設置して使
用できる点に着目した。

(堀りコタツキット)
本発明者は、堀りコタツの各部材をコタツの組立キットとして纏め、更にこの
キットを構成する部材を一つの収納箱内に収納する。そして素人でも理解でき、
組立てができるる程度に図面入りで解説した組立方法の説明書を添付し、簡単に
素人でも、既存の堀りコタツの跡を利用して従来の堀りコタツと別の足湯効果を
発揮できる堀りコタツキットを提供することを目的とするものである。
【0057】
本発明に係る堀りコタツキットは、収納箱の中に収納して全国に販売・配達で
き、素人でも簡単に堀りコタツの跡の凹部内に固定ないし箱体として装填し、更
に各種の家電製品のように簡単に配線できるコタツセットを提供することを目的
とするものである。
【0058】
また、本発明に係るコタツセットは、動産として売買可能に構成しており、従
って個人でも設置できることからリース製品としても取扱うことができるもので
あり、このリースを対象とする製品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0059】
本発明に係る堀りコタツセットは次にように構成されている。
1)面状ヒーターと金属板とからなる側面ヒーター部材と、面状ヒーターと蓄
熱体とからなる底面ヒーター部材と、前記各面状ヒーターへの通電を制御する制
御装置を1つの収納箱の中に収納したコタツ用部品のセットであって、
前記面状ヒーターは、両縁に電極線を配置した熱可塑性合成樹脂製面状ヒータ
ーであり、前記電極線と配線との間や配線と制御装置との間を連結する少なくと
も主要配線はコネクタで連結可能になっており、更に、前記面状ヒーターなどの
一連の部材は堀りコタツの脚入用凹部の内壁面と底面に配置できる寸法に形成さ
れており、前記収納箱に収容された一連の部材は、運搬・分解・組立てが可能に
なっているいることを特徴としている。
【0060】
2)前記熱可塑性樹脂製の面状ヒーターは、熱可塑性樹脂とカーボンの混合体
を押出成形され、PTC特性を有することを特徴としている。
【0061】
3)前記側面ヒーター部材を形成する金属板の面状ヒーターに対面する表面側
に、酸化アルミからなる第1セラミックス層と、この第1セラミックス層の上に
酸化チタンからなる第2セラミックス層が溶射により二重構造に形成されている
ことを特徴としている。
【0062】
4)前記側面ヒーター部材を形成する面状ヒーターは、脚入用凹部を形成する
2側壁面を覆うようにL型に曲げて配置できる寸法を有していることを特徴とし
ている。
【0063】
5)前記側面ヒーター部材と底面ヒーター部材を取付ける部材は、既設の堀り
コタツの脚入用凹部の内面に固定ないし支持されるか、あるいは別体の箱体の内
面に固定ないし支持されるように構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0064】
A)本発明に係るコタツセットは、収納箱内に堀りタコツを構成する部材を一
式収容し、これらの部材は素人でも簡単に組立てができるようになっているので
、購入者が組立てて使用することができる。
【0065】
B)このタタツキットは、一つの収納箱内に収納しているので、遠隔地でも送
付でき、購入者が簡単に組立てて使用することができる。
【0066】
C)また、本発明に係るコタツセットを構成する面状ヒーターは、特に、熱可
塑性合成樹脂を原料として製造しているので、万一、電気ショート事故が発生し
たとしても、自動的に電流を遮断でき、安全性は極めて高い。
【0067】
D)また、人体の温度に近い低温で加熱することによって踵部から脚部、そし
て下半身にかけて熱エネルギーを打込むように加熱できる。しかも、熱さをそれ
ほど感じることもないのに、受熱量がかなり大きく、従って、約20分以上本発
明に係るコタツを利用すると、かなり長い間、その暖房効果(体のホテリ、ポカ
ポカとした感じ)を持続させることかできる。
【0068】
E)更に、本発明のコタツキットを構成する部材は、動産として個別に販売で
きる程度に整理されているので、リース物品として販売することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
次に、図面を参照して本発明に係るコタツセットの実施の形態を説明する。
図1は、本発明のコタツセットを利用して組立てた堀りコタツの脚入用凹部に
収容するための「発熱部30」を示す断面図であって、この例は、側板31と底
板32で箱体33を形成している。
【0070】
図6は、本発明に係るコタツキットの斜視図であって、収納箱40内には箱体
33を構成する板材(31、32)や断熱板などのの積層体41、面状ヒーター
(1、1a、2、2a)の積層体42、金属板(12)を重ねた積層体43、蓄
熱体(3)を重ねた積層体44が配置されている。
【0071】
また、制御装置6やクギやネジの小物類45、そして説明書類46と水密性コ
ネクタや配線などの配線部材47などで収容されている。
【0072】
前記のように収納箱40に収納されていた各部材を収納箱40より取出し、取
扱説明書によって図1のように箱体33を組立ている。次いで、底面に図示しな
い断熱板を敷き、その上に底部面状ヒーター1、1aを敷設し、更にシート状の
蓄熱体3を積層し、その上に足載板34を敷く。
【0073】
前記箱体33を構成する側板31には、図3に示すように内面の中間部にヒー
ターを収容する凹部kを形成したもの、図4に示すように平坦な面にヒーター2
、2aを両面テープを使用して貼り付けておき、そのヒーター2、2aの上に金
属板12を当てがってこれを木ネジなどの固定具で固定していく。
【0074】
なお、詳細を図示していないが、箱体33の内面にはフエルト状物の張付けた
り、模様を印刷した合成樹脂発泡板を貼り付けてヒーターの熱をその箱体33の
内側に引出すように配慮されている。
【0075】
金属板12は、ヒーター2、2aの表面を覆う固定部材であると共に、反射板
であり、熱を分散する均熱板として作用するものである。特に、効率的にヒータ
ー2、2aより発生した熱エネルギーを引出すために、その金属板12(通常は
アルミ板)の表面(前記ヒーターに対面する側)にセラミックス層C1 とC2 の
二層のセラミックス層を溶射して形成している。金属板12に直接設けるセラミ
ックス層C1 は酸化アルミが好ましく、このセラミックス層C1 上に積層するセ
ラミックス層C2 は酸化チタンが好ましい。
【0076】
このセラミックス層C1 、C2 の組合わせは、セラミックス層を所定の温度に
加熱した際の遠赤外線の最大波長が短いものを発熱体であるヒーター2(高温面
)側にセラミックス層C2 を、金属板12の表面(低温面)側に最大波長がそれ
より長いセラミックス層C1 を積層する。
【0077】
この二種類のセラミックス層C1 、C2 の積層順序とその理由の詳細な説明は
省略するが、これは発明者自身が行なった大量の熱伝導の実験に基づくものであ
り、前記二種類のセラミックス層に限られず、セラミックス層を所定温度に加熱
した際に発生する熱エネルギーの最大値に対応する波長の大小によって順序を決
定すると良い。
【0078】
なお、鍋の外表面に前記セラミックス層を単層で設けた場合と設けない場合と
、更に二層構造に設けた場合の水の蒸発実験を行うと、セラミックス層を所定の
順序(高温側に短波長、低温側に長波長)で二層に設けたものの蒸発速度は、約
20〜30%も増加することが確認されている。
【0079】
前記面状ヒーター1、1a、2、2aは前記ミサト株式会社が製造している商
品名「プラヒート」を基本構造として採用し、これを堀りコタツ用に特別に設計
した熱可塑性樹脂とカーボンとの混合体を押出成形したもので、低温発熱型であ
りながら遠赤外線の輻射効果の大きいものを使用している。この面状ヒーターは
一式でも300W程度あるいは以下の小電力のものである。
【0080】
そして蓄熱体3としては、例えば、特許第2929418号に記載されている
「水と無水硫酸ナトリウムと硫酸カルシウム2水塩と、ホウ酸ナトリウム10水
塩と、水ガラスと塩酸とを配合してなり、硫酸カルシウム2水塩の配合量が0.
1〜2.9重量%であり、硫酸の配合量が35%塩酸に換算して0.1〜10重
量%である蓄熱組成物」を使用することができる。
【0081】
本発明に係るコタツ用部品セットを構成する部材は、図6に示すように一式の
セットとして纏められており、このセットを購入者に送付すれば、購入者はそれ
を説明書に従って堀りコタツ用の凹部内に直接に取付けるか、あるいは図1に示
すように箱体33の内部に面状ヒーター1、1a、2、2aを所定の位置に取付
け、更に前記面状ヒーター1、1aの上に蓄熱体3を載せて構成した発熱部30
の状態にしたものを前記凹部内にスッポリと嵌入する。そして必要な配線を行え
ば、簡単に堀りコタツを完成することができる。
【0082】
しかも、この堀りコタツは、従来の高温加熱型のものと違って体温に近い低温
加熱型であり、その加熱によって「温浴効果」を与えることができ、安全性の高
い状態で操作することができる。
【0083】
本発明に係る堀りコタツは、老人や幼児でも、極めて安全に使用することがで
きるものである。
【0084】
既に設置されている堀りコタツの脚入用凹部の寸法は、各家庭毎に相違してい
ることが多い。そこで、本発明に係るコタツ用部品セットを前記凹部の寸方を聞
き、必要に応じて写真で状況を確認した上で箱体33を構成する板材などの寸法
を調節したものを送付することになる。また、説明書には図面を多く使用して購
入者はその図面を見れば組立て方法が容易に理解できるように配慮しておくこと
になる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明に係るコタツ用部品セットを組立た発熱図の断面図である。
【図2】面状ヒーターの表面に設ける金属板の拡大断面図である。
【図3】箱体を構成する板材の斜視図である。
【図4】箱体の内部に面状ヒーターと金属板を取付けた状態の斜視図である。
【図5】面状ヒーターの配線の説明図である。
【図6】本発明に係るコタツ用部品セットの斜視図である。
【図7】面状ヒーターの内部構造説明図である。
【図8】面状ヒーターの内部構造説明図である。
【図9】面状ヒーターの特性の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0086】
1、1a 底部面状ヒーター 2、2a 側壁部面状ヒーター
3 蓄熱体 H 面状ヒーター 5 ヒーター素子 5a 電極線
5b 合成樹脂製カバー 6 制御装置 7 配線
8 コネクタ 10 電源用配線
31、32 板材 33 箱体 40 収納箱
41 板材などの積層体 42 面状ヒーターの積層体
43 金属板の積層体 44 蓄熱体の積層体
45 クギやネジの小物類 46 説明書類 47 配線部材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
面状ヒーターと金属板とからなる側面ヒーター部材と、面状ヒーターと蓄熱体
とからなる底面ヒーター部材と、前記各面状ヒーターへの通電を制御する制御装
置を1つの収納箱の中に収納したコタツ用部品のセットであって、
前記面状ヒーターは、両縁に電極線を配置した熱可塑性合成樹脂製面状ヒータ
ーであり、前記電極線と配線との間や配線と制御装置との間を連結する少なくと
も主要配線はコネクタで連結可能になっており、更に、前記面状ヒーターなどの
一連の部材は堀りコタツの脚入用凹部の内壁面と底面に配置できる寸法に形成さ
れており、前記収納箱に収容された一連の部材は、運搬・分解・組立てが可能に
なっているいることを特徴とするコタツ用部品のセット。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂製の面状ヒーターは、熱可塑性樹脂とカーボンの混合体を押
出成形され、PTC特性を有することを特徴とする請求項1あるいは2記載のコ
タツ用部品のセット。
【請求項3】
前記側面ヒーター部材を形成する金属板の面状ヒーターに対面する表面側に、
酸化アルミからなる第1セラミックス層と、この第1セラミックス層の上に酸化
チタンからなる第2セラミックス層が溶射により二重構造に形成されていること
を特徴とする請求項1記載のコタツ用部品のセット。
【請求項4】
前記側面ヒーター部材を形成する面状ヒーターは、脚入用凹部を形成する2面
を覆うようにL型に曲げて配置できる寸法を有していることを特徴とする請求項
1記載のコタツ用部品のセット。
【請求項5】
前記側面ヒーター部材と底面ヒーター部材を取付ける部材は、既設の堀りコタ
ツの脚入用凹部の内面に固定ないし支持されるか、あるいは別体の箱体の内面に
固定ないし支持されるように構成されていることを特徴とする請求項1記載のコ
タツ用部品セット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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