説明

コッターピン着脱工具

【課題】コッターピン及び割ピンの抜き挿し作業をワンタッチで行える使い勝手の良いコッターピン着脱工具を提供する。
【解決手段】コッターピン把持部11を第1ベース部12の先端から突出する方向に弾発付勢して摺動可能に設け、割ピン保持部材31を第2ベース部14の先端から突出する方向に弾発付勢して摺動可能に設け、第1ベース部と第2ベース部を平行に保持する。コッターピン把持部は、コッターピンの頭部が進入可能な断面の溝25を有する溝部材24と、溝部材の開口にコッターピンの脚部が進入可能な幅の隙間を有する一対の爪26とを有する。割ピン保持部材は、先端部に割ピンの頭部環が進入する凹所を有し、凹所の上方に割ピン係合突起を反時計方向に回動可能に弾発付勢されたレバー35に取り付ける。割ピン保持部材が後退した位置で保持ブロックが係止段部40の前縁から外れ、割ピン係合突起が引き下げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐張碍子などの碍子の両端にそれぞれ碍子引留金具と電線引留金具を連結するコッターピン、及びコッターピンの抜け止め用の割ピンを抜き挿しするコッターピン着脱工具に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧電線等の配電設備では、電柱から張り出して設けられた腕金にストラップと称される碍子引留金具を取り付け、その碍子引留金具の連結穴に耐張碍子と称される碍子の一端に設けられた碍子金具の連結穴を重ね合わせ、重ね合わせた連結穴にコッターピンを挿し込んで連結している。また、碍子に電線を引き留める引留クランプと称される電線引留金具を連結する場合も同様に、碍子の他端に設けられた碍子金具の連結穴と、電線引留金具の連結穴とを重ね合わせてコッターピンを挿し込んで連結している。また、連結穴に挿し込まれたコッターピンは、コッターピンの先端部に設けられた挿通穴に割ピンを挿し込んで抜け止めしている。
【0003】
ところで、碍子は経年劣化や破損等により交換しなければならないが、通常は、活線状態で碍子を交換するために絶縁操作具と称される工具が用いられる。絶縁操作具は、一般に、絶縁棒の先端にヤットコ等の挟み工具の一方の把手を取り付け、挟み工具の他方の把手を他の絶縁棒の先端に取り付けたものである。例えば、特許文献1には、碍子の交換作業をやり易くするために、碍子を掴むための絶縁操作具、割ピンを抜き挿しするための絶縁操作具、コッターピンを抜き挿しするための絶縁操作具が提案されている。具体的には、割ピンを挿し込むための絶縁操作具として、ゴムなどの軟らかい平板状の部材の一端に割ピンの頭部環を装着する割ピン保持孔を形成した割ピン取付具が提案されている。これによれば、割ピン取付具の基部を絶縁操作具の先端の挟み工具で挟むことにより、割ピンを安定して把持できるから、割ピンの挿し込みを容易に行うことができ、かつ割ピンはゴムなどの軟らかい部材で形成された割ピン保持孔に装着されているだけであるから、絶縁操作具を引くだけで割ピン取付具から割ピンを外すことができる。また、割ピンを抜き取るときの絶縁操作具は、鋼線の先端を鉤状に形成し、鋼線の基部を輪状に形成した割ピン取外具が提案されている。これによれば、割ピン取外具の基部を絶縁操作具の先端の挟み工具で挟み、コッターピンに挿し込まれている割ピンの頭部環に鉤状の先端を引掛けて引くことにより、割ピンを容易に抜き取ることができる。さらに、コッターピンの取り付け及び取り外し作業を容易にするために、コッターピンの頭部に平板状の把持部を形成することが提案されている。これによれば、コッターピン頭部の平板状の把持部を絶縁操作具の先端の挟み工具で挟むことにより、コッターピンを安定して把持できるから、コッターピンの取り付け及び取り外し作業が容易になる。
【0004】
しかし、特許文献1の技術によれば、碍子の交換作業を行う際に、作業内容ごとに、碍子を掴むため絶縁操作具、割ピンを抜き挿しするための絶縁操作具、コッターピンを抜き挿しするための絶縁操作具など、複数種類の絶縁操作具を同時に用いることになる。そのため、それぞれの絶縁操作具を把持した複数の作業員によって連携して作業することが要求される。特に、狭い高所作業用のバケット内で、長い絶縁操作具を連携して操作しなければならないから、作業がやり難いという問題が残る。
【0005】
このような問題を解決するため、特許文献2には、割ピンを抜き挿しするための割ピン取外部及び割ピン取付部と、コッターピンを抜き挿しするためのコッターピン抜き挿し部をまとめて一体化したコッターピン着脱工具が提案されている。また、絶縁棒の先端にコッターピン着脱工具を着脱可能に、かつコッターピン着脱工具の向きを可変できるように取り付けることが提案されている。これによれば、異なる複数の絶縁操作具を用いることなく、1つの絶縁棒に取り付けたコッターピン着脱工具で割ピンの抜き取りとコッターピンの抜き取りを行え、かつ、コッターピンの挿入と割ピンの挿入を行えることから、作業効率を向上させることができる。つまり、1つの絶縁棒の先端に取り付けたコッターピン着脱工具で、割ピンの抜き挿し及びコッターピンの抜き挿しできる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008―141890号公報
【特許文献2】特開平11−98631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2に記載のコッターピン着脱工具では、割ピンの抜き取りとコッターピンの抜き取りを同時に行うことはできない。つまり、割ピンを抜き取るときは、コッターピン着脱工具の先端部に位置する割ピン取外具の位置及び向きを割ピンの頭部環に合わせて割ピンを抜き取る。次いで、コッターピンを抜き取るときは、コッターピン着脱工具の中間部に位置されたコッターピン抜き挿し部の位置及び向きをコッターピンの頭部に合わせてコッターピンを引き抜くことになる。このように、特許文献2に記載のコッターピン着脱工具によれば、割ピン引き抜き作業とコッターピン引き抜き作業ごとに絶縁操作棒を操作して、コッターピン着脱工具の位置及び向きを変更しなければならない。同様に、コッターピンの挿入と割ピンの挿入を行う作業についても、それらの作業ごとに絶縁操作棒を操作して、コッターピン着脱工具の位置及び向きを変更しなければならない。したがって、割ピンを抜き取った後にコッターピンを引き抜く一連の作業、あるいはコッターピンを挿し込んだ後に割ピンを挿入する一連の作業の中で、コッターピン着脱工具の位置及び向きを変更する段取り替えが必要となるから、使い勝手が悪いという問題がある。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、活線作業によるコッターピン及び割ピンの抜き挿し作業において、段取り替えを不要とし、使い勝手の良いコッターピン着脱工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、碍子の両端の碍子金具に穿設された連結穴と、碍子引留金具又は電線引留金具に穿設された連結穴とに挿入されて、前記碍子金具と前記碍子引留金具又は前記電線引留金具とをそれぞれ連結するコッターピンと、該コッターピンの抜け止め用の割ピンとを抜き挿しするコッターピン着脱工具であり、以下に述べる構成を備えることを特徴とする。
【0010】
ここで、コッターピンは、円柱状の脚部と、脚部の一端に形成された大径の頭部と、この頭部の外周を割ピンの挿通穴に平行な軸対称2面で除去して形成された一対の平坦面と、脚部の軸に直交し、かつ平坦面に平行に挿入可能に形成された割ピンの挿通穴とを有するものとする。また、割ピンは、頭部環と頭部環に連なり、割ピンの挿通穴に挿入される一対の割ピン脚部とを有し、一方の割ピン脚部に抜け止め用の曲折された凸部が形成されてなるものとする。
【0011】
本発明のコッターピン着脱工具は、前記コッターピンを把持するコッターピン把持部と、前記割ピンを把持する割ピン把持部と、前記コッターピン把持部を摺動自由に支持する長手方向を有する第1ベース部と、前記割ピン把持部を支持する長手方向を有する第2ベース部と、前記第1ベース部と前記第2ベース部の長手方向を平行に支持する共通ベース部と、前記共通ベース部に形成され絶縁棒の先端が連結される連結部とを備えて構成される。
【0012】
ここで、前記コッターピン把持部は、前記第1ベース部の長手方向に摺動自由に支持された基部を有し該基部の摺動方向の先端から基端側に向けて前記コッターピンの頭部が進入可能な断面を有する溝が形成された溝部材と、該溝部材の溝開口を覆って設けられ前記コッターピンの脚部が進入可能な幅の隙間を有する平板状の爪部材と、前記溝部材を摺動方向の先端側に付勢する第1ばね部材とを有してなり、前記溝部材の溝は、コッターピン頭部の上面に対応する底面と前記コッターピン頭部の外周を割ピンの挿通穴に平行な軸対称2面で除去した一対の平坦面に対応する壁面を有して形成されているものとする。
【0013】
また、前記割ピン把持部は、前記第2ベース部の長手方向に摺動自由に支持された平板部材の摺動方向の先端部の前記第1ベース部の反対面に形成され、前記割ピンの頭部環が進入可能で環面が接する底面を有する凹所が形成されてなる割ピン保持部材と、前記割ピン保持部材を摺動方向の先端側に突出させる第2ばね部材と、前記割ピン保持部材の凹所に進入された前記割ピンの頭部環に挿入可能な割ピン係合突起と、前記割ピン係合突起を前記凹所に進退可能に前記第2ベース部に支持する係合突起駆動部材と、前記割ピン係合突起を前記割ピン保持部材の凹所に進出させる方向に前記係合突起駆動部材を付勢する第3ばね部材と、前記割ピン保持部材が前記第2ばね部材により突出された位置で前記割ピン係合突起の進出を規制し、前記割ピン保持部材が前記第2ばね部材に抗して後退した位置で前記割ピン係合突起の進出規制を解除するように前記割ピン保持部材に支持された係止部材とを備えてなることを特徴とする。
【0014】
さらに、前記第1ベース部と前記第2ベース部は、前記コッターピン把持部に把持された状態の前記コッターピンの前記割ピンの挿通穴の位置に前記割ピン保持部材の凹所を合わせて前記共通ベース部に支持されてなることを特徴とする。
【0015】
このように構成される本発明のコッターピン着脱工具は、共通ベース部に形成された連結部に、絶縁棒の先端を連結して用いる。ところで、コッターピンの引き抜き作業と、コッターピンの挿し込み作業とで操作手順が異なる。まず、碍子の交換作業の手順に沿って、コッターピンの引き抜き作業について説明する。最初に、本発明のコッターピン着脱工具をコッターピンの引き抜き作業時の初期状態にセットする。すなわち、係合突起駆動部材を絶縁棒等で操作して、割ピン係合突起を割ピン保持部材の凹所に進出させる方向に付勢している第3ばね部材を圧縮する。これにより、割ピン係合突起が凹所から退出されると同時に、割ピン保持部材が第2ばね部材の付勢力によって第2ベース部から突出される。割ピン保持部材の突出により係止部材が係合突起駆動部材に係止し、割ピン係合突起の進出が規制される。これにより、割ピン係合突起が割ピン保持部材の凹所から引き上げられた位置で保持される。この状態が、コッターピン引き抜き作業の初期状態である。
【0016】
初期状態にセットしたら、絶縁棒を把持してコッターピン把持部の溝部材にコッターピンの頭部を進入させるように、コッターピン頭部下面と碍子金具等の連結穴の面との隙間に爪部材の先端位置を合わせ、爪部材の隙間にコッターピン脚部を進入させる。このとき、コッターピンに挿入されている割ピンの頭部環側からコッターピン頭部が溝部材に進入するように、かつ、絶縁棒を操作して、コッターピン頭部の一対の平坦面と溝部材の溝の壁面とが平行になるように溝部材の向きを合わせる。
【0017】
次いで、コッターピン着脱工具を割ピン保持部材の先端がコッターピンの脚部の近くに達するまで前進させる間に、コッターピン把持部は第1ばね部材に抗って第1ベース部側に後退する。そして、割ピン保持部材の先端に設けられた凹所に割ピンの頭部環が進入し、割ピン保持部材の先端がコッターピンの脚部に当接すると、あるいは、割ピンの頭部環が凹所の奥壁に当接すると、割ピン保持部材は第2ばね部材に抗って第2ベース部側に後退する。これにより、係合突起駆動部材の進出方向の動きを規制していた係止部材の規制が解除され、第3ばね部材によって係合突起駆動部材が割ピン係合突起を割ピン保持部材の凹所に進出させ、割ピン係合突起を割ピンの頭部環に挿入する。その結果、割ピンの頭部環は割ピン係合突起が割ピン保持部材の凹所の底面に押し当てられる力で、割ピン保持部材に把持されるから、絶縁棒を操作してコッターピン着脱工具を後退させると、割ピンが挿通穴から引き抜かれる。この割ピンの引き抜き過程で、コッターピン把持部は第1ばね部材によって第1ベース部から突出される。
【0018】
割ピンが挿通穴から引き抜かれた位置では、コッターピンはコッターピン把持部の爪部材に把持されているから、絶縁棒を操作して、コッターピン着脱工具をコッターピンを引き抜く方向に移動させる。これにより、コッターピンは、頭部が爪部材と溝部材とで把持された状態で、碍子金具等の連結穴から引き抜かれる。なお、連結穴からコッターピンにせん断方向の力が作用して引き抜き難い場合は、別の絶縁操作具を用いて碍子を把持し、碍子金具の位置及び向きを調節して連結穴から引き抜くようにする。
【0019】
このように、本発明のコッターピン着脱工具によれば、絶縁棒の先端に連結されたコッターピン着脱工具を前進及び後退させるという単純な操作で割ピンを引き抜くことができる。また、割ピンを引き抜いた状態で、コッターピンを引き抜く方向にコッターピン着脱工具を移動させることにより、コッターピンを引き抜くことができる。つまり、本発明のコッターピン着脱工具によれば、ワンタッチでコッターピンと割ピンを引き抜くことができるから、活線作業によるコッターピン及び割ピンの引き抜き作業の段取り替えが不要となり、使い勝手の良いコッターピン着脱工具を提供することができる。
【0020】
次に、新しい碍子に交換する際に、碍子金具等の連結穴にコッターピンを挿入して連結する作業について説明する。最初に、本発明のコッターピン着脱工具をコッターピンの挿し込み作業時の初期状態にセットする。まず、係合突起駆動部材を手等で操作して第3ばね部材を圧縮し、割ピン係合突起を割ピン保持部材の凹所から退出させる。これにより、割ピン保持部材に支持された係止部材が係合突起駆動部材の進出を規制する位置に突出し、割ピン係合突起が退出位置に保持される。次いで、挿入する割ピンの頭部環を凹所に設置して第2ばね部材を圧縮して割ピン保持部材を第2ベース部方向に後退させる。これにより、割ピン保持部材に支持された係止部材が係合突起駆動部材の進出を規制する位置から外れ、割ピン係合突起が割ピン保持部材の凹所に向かって進出する。そして、割ピン係合突起が割ピンの頭部環に挿入されて、割ピンが割ピン保持部材に把持される。この状態で、コッターピンの頭部をコッターピン把持部の溝部材の溝に進入させ、さらに爪部材の隙間にコッターピンの脚部を進入させる。このとき、コッターピン頭部の一対の平坦面と溝部材の溝の壁面とが平行になるように挿入する。これにより、コッターピン着脱工具のコッターピン把持部にコッターピンが把持され、かつ、割ピン把持部に割ピンが把持され、コッターピンの挿し込み作業時の初期状態になる。
【0021】
次に、コッターピンの挿し込み作業の初期状態にセットされたコッターピン着脱工具を用いて、碍子金具と電線引留金具の連結穴にコッターピンを挿し込む手順を説明する。まず、碍子金具と電線引留金具の連結穴を重ね合わせる。このとき、必要であれば、電線を腕金に絶縁部材を介して吊り上げて、電線引留金具の連結穴の位置を調節するとともに、碍子を絶縁操作具で把持して碍子金具の連結穴の位置を調節して、それらの連結穴を重ね合わせる。次に、初期状態にセットされたコッターピン着脱工具に連結された絶縁棒を操作して、コッターピン把持部に把持されたコッターピンを重ね合わせた連結穴に挿入する。そして、コッターピン着脱工具を前進させると、コッターピン把持部が第1ばね部材を圧縮して後退し、第2ベース部に支持されている割ピン保持部材が相対的に進出し、割ピン保持部材に把持されている割ピンの脚部が割ピン挿通穴に挿入される。割ピン挿通穴に割ピンが十分に挿し込まれたら、係合突起駆動部材を付勢している第3ばね部材を他の絶縁操作棒等を用いて圧縮して、割ピン係合突起を割ピンの頭部環から退出させる。これにより、割ピン保持部材が第2ばね部材により前進し、割ピン保持部材に支持されている係止部材が係合突起駆動部材の進出を規制する位置に保持されて、コッターピンの挿し込み作業が終了する。そして、コッターピン着脱工具を後退させることにより、コッターピンからコッターピン把持部を抜き取ることができる。
【0022】
なお、第3ばね部材を他の絶縁操作棒で圧縮することに代えて、次のように構成することができる。つまり、本発明のコッターピン着脱工具の連結部に連結する絶縁棒に代えて、ヤットコ等の挟み工具の2つの把手にそれぞれ絶縁棒を連結し、挟み工具を構成する一対の挟み部の一方をコッターピン着脱工具の連結部に連結して固定し、絶縁棒を介して他方の挟み部を操作して、係合突起駆動部材を介して第3ばね部材を圧縮する絶縁操作具を形成することができる。
【0023】
このように、本発明のコッターピン着脱工具によれば、コッターピン把持部に把持されたコッターピンを碍子金具等の連結穴に挿し込む方向にコッターピン着脱工具を移動させて、コッターピンを連結穴に挿し込んだ後、コッターピン着脱工具を前進させることにより割ピンをコッターピンの割ピン挿通穴に挿し込むことができる。つまり、本発明のコッターピン着脱工具によれば、ワンタッチでコッターピンと割ピンを挿し込むことができるから、活線作業によるコッターピン及び割ピンの挿し込み作業の段取り替えが不要となり、使い勝手の良いコッターピン着脱工具を提供することができる。
【0024】
本発明のコッターピン着脱工具において、前記爪部材は、前記溝部材の溝の基端から先端に延在させて互いに隙間を空けて設けられた一対の爪を有し、該一対の爪は、前記溝の開口面内で開閉可能に前記溝部材に回動可能に支持され、かつ、隙間を閉じる方向に弾発付勢されてなり、前記一対の爪の隙間は、該一対の爪が閉じた状態で前記コッターピンの脚部の径に対応した拡幅部を有して形成され、該一対の爪の先端に向うにつれて拡幅して形成されてなるものとすることができる。これによれば、一対の爪に形成された拡幅部にコッターピンの脚部を挿入して位置させることにより、コッターピンを確実にコッターピン把持部に把持させることができるから、コッターピン着脱工具を自由に取りまわしても、コッターピンが爪部材から抜け落ちることがないので、作業の安全性を向上できる。また、この場合において、一対の爪の一方の爪を、他方の爪より長く形成することが好ましい。これによれば、爪部材の隙間にコッターピンを進入させる操作が容易になる。
【0025】
さらに、上記のいずれかのコッターピン着脱工具において、前記係合突起駆動部材は、前記第2ベース部に回動可能に支持されたレバーを有して形成され、前記割ピン係合突起は、前記レバーの一端に設けられ、前記第3ばね部材は、前記割ピン係合突起を前記凹所に向けて回動させるように前記レバーを回動方向に付勢するように設けて形成することができる。これによれば、前記第3ばね部材を圧縮して挿入した割ピンと割ピン係合突起との係合を解除する操作を、ヤットコ等の挟み工具の一の挟み部を操作して、レバーを回動方向の反対方向に回動させる絶縁操作具を、容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、活線作業によるコッターピン及び割ピンの抜き挿し作業において、段取り替えを不要とし、使い勝手の良いコッターピン着脱工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のコッターピン着脱工具の一実施形態の外観斜視図である。
【図2】図1の実施形態の正面図及び平面図である。
【図3】図1の実施形態の一部を破断して示した正面図である。
【図4】本発明のコッターピン着脱工具を使用する耐張碍子の装架例を示す図である。
【図5】耐張碍子に用いられるコッターピン及び割ピンの一例を示す図である。
【図6】図1の実施形態のコッターピン着脱工具の操作手順を説明する図である。
【図7】図1の実施形態のコッターピン着脱工具の操作手順を説明する図である。
【図8】図1の実施形態のコッターピン着脱工具に用いる絶縁操作具の一例の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明のコッターピン着脱工具を実施形態に基づいて説明する。本実施形態は、高圧の配電線に用いられる耐張碍子(以下、単に、碍子という。)の交換時に用いられるコッターピン着脱工具である。
【0029】
ここで、図4及び図5を参照して、本発明のコッターピン着脱工具が用いられる耐張碍子の装架例とコッターピンの一例について説明する。図4(a),(b)に示すように、高圧の配電線設備では、図示していない電柱から張り出して設けられた角筒状の腕金1に碍子引留金具2が取り付けられている。碍子引留金具2は、2枚の金属板2a,2bにより形成され、金属板2a,2bの上端はそれぞれ腕金1の側面にボルト及びナット1aにより取り付けられている。金属板2a,2bは、それぞれ折り曲げて下端を重ね合わされて碍子3に連結する連結部2cが形成されている。連結部2cには、図に表れていないが、コッターピン4が挿入される連結穴が穿設されている。
【0030】
一方、碍子3の両端には、碍子引留金具2又は電線引留金具5に連結するために、それぞれ碍子金具3a、3bが固定されている。碍子金具3a、3bの先端部には、それぞれ碍子引留金具2と電線引留金具5が連結される舌状片からなる連結部3c、3dが形成されている。連結部3c、3dには、図に明示されていないが、コッターピン4が挿入される連結穴がそれぞれ穿設されている。なお、図4の例では、碍子金具3aの連結部3cが2枚の舌状片で形成され、その2枚の舌状片の間に碍子引留金具2の連結部2cを挟んで連結するように構成しているが、この構成に限られるものではない。また、電線引留金具5は、周知の引留クランプであり、高圧電線6を張力調整可能に碍子3に引き留めるものである。電線引留金具5を碍子3に連結する連結部5aは、図4(b)に示すように2枚の舌状片からなり、その2枚の舌状片の間に碍子金具3bの連結部3dを挟んで連結するように構成している。連結部5aの2枚の舌状片には、図に明示されていないが、コッターピン4が挿入される連結穴がそれぞれ穿設されている。なお、碍子金具3bと電線引留金具5の連結部の構成は本実施形態に限られるものではない。また、電線引留金具5の構成は周知の引留クランプであるから、説明を省略する。さらに、図示例の碍子3の両端の碍子金具3a、3bは、連結穴の穴軸を互いに碍子軸の周りに90度の位相差を持たせて形成されているが、これに限られるものではない。
【0031】
コッターピン4は、図5(a)、(b)に示すように、円柱状の脚部4aと、脚部4aの一端に形成された大径の頭部4bと、脚部4aを貫通して割ピン挿通穴(以下、割ピン穴と称する。)4cが穿設されている。また、頭部4bの外周を割ピン穴4cに平行な軸対称2面で除去して形成された一対の平坦面4dが形成されている。割ピン7は、図5(c)に示すように、頭部環7aと、頭部環7aに連なり割ピン穴4cに挿入される一対の割ピン脚部7b,7cとを有し、一方の割ピン脚部7bを曲折して抜け止め用の凸部7dが形成されている。なお、図示例のコッターピン4の頭部4bの頂面は、球面状に形成されているが、本発明はこれに限られるものではなく、平坦に形成したものでもよい。また、一対の平坦面4dの間隔は、脚部4aの径と同じに形成されているが、本発明の一対の平坦面4dは、後述するように、コッターピン着脱工具に把持されるコッターピン4の向きを、割ピン7の抜き挿し方向に位置決めするものであるから、その機能を満たす限りにおいて、一対の平坦面4dの間隔を脚部4aの径よりも大きくすることができる。
(コッターピン着脱工具の概要)
【0032】
以下に、図1〜図3を参照して、本発明のコッターピン着脱工具の一実施形態を説明する。本実施形態のコッターピン着脱工具は、図4及び図5を参照して説明したように、碍子3の両端の碍子金具3a,3bに穿設された連結穴と、碍子引留金具2又は電線引留金具5に穿設された連結穴とに挿入されるコッターピン4及び割ピン7を抜き挿しする際に用いる工具である。図1の斜視図に示すように、コッターピン着脱工具10は、コッターピンを把持するコッターピン把持部11と、コッターピン把持部11を長手方向に沿って摺動自由に支持する第1ベース部12と、割ピンを把持する割ピン把持部13を支持する長手方向を有する第2ベース部14と、第1ベース部12と第2ベース部14の長手方向を平行にして支持する共通ベース部15と、共通ベース部15に形成され絶縁棒又は絶縁操作具の先端が連結される操作具連結部16とを備えて構成されている。操作具連結部16は、絶縁棒又は絶縁操作具の先端が挿入される連結孔16aと、絶縁棒と共通ベース部15とを固定するロックピン17とを有して形成される。ロックピン17は、ノブ17aを図において下側に引き、絶縁棒又は絶縁操作具の先端を操作具連結部16に挿入し、手を離してばね力により元の位置に戻すことにより、ピンが絶縁棒又は絶縁操作具の先端に設けられた係合穴に進入してコッターピン着脱工具10を固定するようになっている。
(コッターピン把持部11)
【0033】
第1ベース部12は、断面が矩形の筒状に形成されている。コッターピン把持部11は、第1ベース部12の長手方向を有する筒内に摺動自由に支持された基部21を有し、基部21は図3の部分破断図に示したように、第1ばね部材20により、摺動方向の先端側に付勢されている。基部21には、摺動方向に延在された溝状のガイド穴22が形成され、第1ベース部12の上下を貫通してガイド穴22に挿通するボルト23が設けられている。このボルト23とガイド穴22により基部21の摺動の前進端と後退端が規制されるようになっている。また、基部21の先端に摺動方向に延在させて溝部材24が設けられている。溝部材24の図において上面には、先端から基端側に向けて、コッターピン4の頭部4aが進入可能な断面を有する溝25が形成されている。溝25は、図5のコッターピンの頭部4bの上面に対応する底面と、頭部4bの外周を割ピン穴4cに平行な軸対称2面で除去した一対の平坦面4dに対応する壁面を有して形成されている。
【0034】
溝部材24の溝25の開口を覆ってコッターピンの脚部4aが進入可能な幅の隙間を有する平板状の爪部材26が設けられている。本実施形態では、爪部材26は、一対の爪26a,26bを有して形成されている。一対の爪26a,26bは、溝部材24の溝25の基端から先端に延在させて、互いに隙間を空けて設けられている。一対の爪26a,26bは、平板状の部材を用いて形成され、それぞれ溝部材24の底面から側面及び溝25の開口を覆うように、断面がコの字状に折り曲げて形成されている。また、一対の爪26a,26bは、溝25の開口面内で開閉可能に溝部材24にそれぞれピン27a,27bにより回動可能に支持され、一対の爪26a,26bの隙間を閉じる方向に、ばね部材28により弾発付勢されている。さらに、一対の爪26a,26bの隙間は、一対の爪26a,26bが閉じた状態で、コッターピンの脚部の径に対応した隙間の拡幅部29(29a、29b)を有して形成されている。また、本実施形態では、一対の爪26a,26bのうち、一方の爪の26aの長さが、他方の爪26bの長さよりも長く形成されている。さらに、一対の爪26a,26bが互いに対向する面により形成される隙間が先端に向うにつれて広がるように、各爪の幅が先細り状に形成されている。
【0035】
なお、本発明の平板状の爪部材26は、図示実施例に限られるものではなく、溝部材24の溝25の開口を覆ってコッターピンの脚部が進入可能な固定幅の隙間を有する平板状の爪部材26であってもよい。これによれば、コッターピンを拡幅部29のような特定の位置に保持する機能はないが、爪部材26の長さが十分あれば、爪部材26の先端(開口端)を下に向けて振り回さない限り、一旦保持したコッターピンが爪部材26から抜け落ちることはない。
(割ピン把持部13)
【0036】
一方、割ピン把持部13は、第2ベース部14の長手方向に摺動自由に支持された平板部材からなる割ピン保持部材31を有して形成されている。割ピン保持部材31には、図2(c)に示すように、摺動方向の先端部の第1ベース部12の反対面に、割ピン7の頭部環7aが進入可能で環面が接する底面を有する凹所31aが形成されている。また、割ピン保持部材31の凹所31aは、コッターピン把持部11に把持された状態のコッターピン4の割ピン穴4cの位置に合わせて、第1ベース部12と第2ベース部14の間隔が設定され、共通ベース部15に支持されている。
【0037】
割ピン保持部材31は、図3に示すように、第2ばね部材32によって摺動方向の先端側に突出させるように付勢されている。第2ベース部14の側面に設けられたピン33の回りに、回動可能に回動アーム34が支持されている。回動アーム34の先端に係合突起駆動部材であるレバー35が固定されている。レバー35は、割ピン保持部材31の先端位置から共通ベース部15のほぼ後端位置まで届く長さを有して形成されている。そして、レバー35は回動アーム34よりも後端側に位置された第3ばね部材36により図において反時計回りの回動力が付与されている。第3ばね部材36は、第2ベース部14にボルト37で固定されている。
【0038】
レバー35の先端部に、割ピン係合突起38が割ピン保持部材31に形成された凹所31aに臨ませて取り付けられている。割ピン係合突起38は円錐状に形成された先端部と円柱状に形成された基部を有して形成され、割ピン係合突起38の基部を保持する保持ブロック39を介して、レバー35の先端部に固定されている。そして、レバー35が第3ばね部材36の付勢力により反時計方向に回動されると、割ピン係合突起38の先端が割ピン保持部材31の凹所31aに向けて回動され、後述するように、凹所31aに位置される割ピン7の頭部環7aに進入して凹所31aの底面に当接して停止することにより、割ピン7を把持するようになっている。
【0039】
また、割ピン保持部材31には、レバー35の回動を規制する係止部材である係止段部40がレバー35の下面に向けて突出して形成されている。係止段部40は、レバー35の先端の割ピン係合突起38が割ピン保持部材31の凹所31aに進入した状態のときは、図2(a)に示すように、保持ブロック39の位置よりも第2ベース部14側に位置されている。また、割ピン保持部材31を進出方向に付勢する第2ばね部材32は圧縮された状態になっており、割ピン保持部材31が第2ベース部14側に後退した位置に保持されている。
【0040】
また、レバー35を第3ばね部材36の付勢力に抗って時計方向に回動し、保持ブロック39の下面が係止段部40の上面よりも上方に回動されると係止段部40の係止が外れ、第2ばね部材32の付勢力により割ピン保持部材31が第2ベース部14から突出される。これにより、図2(b)に示すように、保持ブロック39の底面が係止段部40の上面に当接し、レバー35の進出方向の回動が規制され、これにより先端の割ピン係合突起38は割ピン保持部材31の凹所31aから退出した位置で保持される。
【0041】
つまり、係止段部40は、割ピン保持部材31が第2ばね部材32により進出された位置で割ピン係合突起38の進出を規制し(図2(b))、割ピン保持部材31が第2ばね部材32に抗して後退した位置で、割ピン係合突起38の進出規制を解除するように(図2(a))、割ピン保持部材31に支持されている。なお、図1において、コッターピン把持部11の爪部材26の拡幅部29の位置と、割ピン把持部13の割ピン保持部31の先端との摺動方向の離間寸法は、コッターピン4が爪部材26に把持されている状態で、コッターピン着脱工具10を移動して割ピン7を引き抜くことができる長さ以上に設定されている。
(コッターピン着脱工具の操作手順)
【0042】
ここで、上述した本実施形態のコッターピン着脱工具の操作手順を、図6〜図8を参照して説明する。なお、図6及び図7では、図の理解を容易にするために、碍子金具3aの連結部3cの2枚の舌状片に挟まれる碍子引留金具2の連結部2cの記載を省略して示している。碍子3を交換する場合、まず碍子3の碍子金具3bと電線引留金具5とを連結しているコッターピン4を引き抜き、次いで碍子3の碍子金具3aと碍子引留金具2とを連結しているコッターピン4を引き抜くことにより、旧い碍子3を取り外す。また、新しい碍子3を取り付けるときは、碍子3の碍子金具3aと碍子引留金具2とを連結するコッターピン4を挿し込み、次いで碍子3の碍子金具3bと電線引留金具5とを連結するコッターピン4を挿し込んで、碍子3の交換作業を終了する。なお、コッターピン4を引き抜く作業とコッターピン4を挿し込む作業は、碍子引留金具2と電線引留金具5とで操作手順がほぼ同じである。そこで、碍子金具3aと碍子引留金具2とを連結するコッターピン4の着脱を例にして、コッターピン4を引き抜く作業と、コッターピン4を挿し込む作業とに分けて、以下に説明する。
(コッターピンの引き抜き作業)
【0043】
まず、共通ベース部15に形成された操作具連結部16に絶縁操作具の先端を挿入して、コッターピン着脱工具10を固定する。ここで、絶縁操作具の一例を図8に示す。図示のように、絶縁操作具50は、挟み工具であるヤットコ51の一対の把手52の一方の把手52aに太い絶縁棒を用いてなる主操作棒61を固定し、ヤットコ51の他方の把手52bにピン62を介して細い絶縁棒を用いてなる補助操作棒63を取り付け、補助操作棒63の他端はリンク操作機構64を介して主操作棒61に固定される。リンク操作機構64は、主操作棒61に固定された固定部材64aに回動可能にレバー64bを設け、レバー64bの回動に連動して回動するアーム64cの先端に、補助操作棒63の他端がピン64dを介して連結されている。このように構成されることから、本実施形態の絶縁操作具50によれば、レバー64bを時計方向又は反時計方向に回動することにより、ヤットコ51の一対の挟み部53の一方の挟み部53bを開閉操作できるようになっている。このように構成された絶縁操作具50のヤットコ51の他方の挟み部53aの先端を、図6(a)に示すように、コッターピン着脱工具10の操作具連結部16の穴16aに挿入して、ロックピン17を操作して絶縁操作具50にコッターピン着脱工具10を固定して用いる。
【0044】
まず、碍子の交換作業の手順に沿って、コッターピン引き抜き作業について説明する。最初に、本実施形態のコッターピン着脱工具10を、図6(a)に示すように、コッターピン引き抜き作業時の初期状態にセットする。例えば、コッターピン着脱工具10が、図2(a)に示すように、割ピン係合突起38を割ピン保持部材31側に引き下げられた状態で保管されている場合、絶縁操作具50のレバー64bを操作して、図6(a)の矢印70に示すように、ヤットコ51の把手52bを引いて挟み部53bを矢印71方向に回動させる。これにより、レバー35が第3ばね部材36を圧縮する方向(時計方向)に回動され、図6(a)に示すように、保持ブロック39の下面が係止段部40の上面よりも上方に回動される。これにより、係止段部40の係止が外れて第2ばね部材32の付勢力により割ピン保持部材31が第2ベース部14から突出される。そして、保持ブロック39が係止段部40の上面に当接すると、割ピン係合突起38が引き上げられた状態に保持される。この状態が、コッターピン引き抜き作業時の初期状態である。
【0045】
図6(a)の状態にセットしたコッターピン着脱工具10が連結された絶縁操作棒50を操作して、コッターピン把持部11の溝部材24にコッターピン4の頭部4bを進入させる。このとき、割ピン7の頭部環7a側から頭部4bが溝部材24に進入するように、かつ、頭部4bの一対の平坦面4dと溝部材24の溝25の壁面とが平行になるように,コッターピン着脱工具10の向きを合わせる。そして、頭部4bの下面と、碍子金具3aの連結部3cの面との間に形成される隙間に、爪部材26の一対の爪26a,26bが進入するように、また、一対の爪26a,26bの隙間にコッターピンの脚部4aが進入するように操作する。
【0046】
図6(a)から(b)の過程において、コッターピンの頭部4bが一対の爪26a,26bの隙間に進入すると、一対の爪26a,26bがばね部材28に抗して開き、さらにコッターピン着脱工具10を前進させると、コッターピンの脚部4aが一対の爪26a,26bにより形成される拡幅部29に達する。これにより、ばね部材28の弾性力により一対の爪26a,26bが閉じ、一対の爪26a,26bと溝部材24が協働してコッターピン4の頭部4bが、拡幅部29の位置に把持される。
【0047】
さらに、コッターピン着脱工具10を前進させると、コッターピン把持部11が第1ベース部12側に後退し、図6(b)に示すように、割ピン保持部材31の先端がコッターピン4の脚部4aの近傍に達し、割ピン保持部材31の凹所31aに割ピン7の頭部環7aが進入する。そして、割ピン保持部材31の先端がコッターピン4の脚部4aに当接すると、あるいは、割ピン7の頭部環7aが凹所31aの奥壁に当接すると、割ピン保持部材31が第2ばね部材に抗って第2ベース部14側に後退する。これにより、図6(b)から同図(c)に示すように、レバー35の進出方向の動きを規制していた係止段部40が保持ブロック39から外れ、第3ばね部材36によってレバー35が反時計方向に回動され、割ピン係合突起38が割ピン保持部材31の凹所31aに進出して割ピンの頭部環7aに挿入される。その結果、割ピンの頭部環7aは割ピン係合突起38が割ピン保持部材31の凹所31aの底面に押し当てられる力で割ピン保持部材31に把持される。
【0048】
次に、図6(c)から図7(a)に示すように、コッターピン着脱工具10を図において右方向に後退させると、割ピン7が割ピン穴4cから引き抜かれる。この位置では、コッターピン把持部11の爪部材26にコッターピン4が把持されている。次いで、図7(b)に示すように、コッターピン着脱工具10をコッターピン4を引き抜く方向(図において下方)に移動させることにより、コッターピン4は頭部4aが爪部材26と溝部材24とで把持された状態で、碍子金具3aの連結穴から引き抜くことができる。なお、連結穴からコッターピン4にせん断方向の力が作用して引き抜き難い場合は、別の絶縁操作具を用いて碍子3を把持し、碍子金具3aの位置及び向きを調節して連結穴から引き抜くようにする。
【0049】
このように、本実施形態のコッターピン着脱工具10によれば、コッターピン把持部11にコッターピン4の頭部4aを把持させる操作と、割ピン把持部13に割ピン7の頭部環7aを把持させる操作は、コッターピン着脱工具10を前進及び後退させるという単純な操作である。また、割ピン7を引き抜いた状態で、コッターピン4を引き抜く方向にコッターピン着脱工具10を移動させることにより、コッターピンを引き抜くことができる。つまり、本実施形態のコッターピン着脱工具10によれば、ワンタッチでコッターピン4と割ピン7を引き抜くことができるから、活線作業によるコッターピン及び割ピンの引き抜き作業の段取り替えが不要となり、使い勝手の良いコッターピン着脱工具を提供することができる。
【0050】
次に、新しい碍子に交換して碍子金具等の連結穴にコッターピン4を挿入して連結する場合の作業について説明する。最初に、本実施形態のコッターピン着脱工具10をコッターピンの挿し込み作業時の初期状態にセットする。初期状態とは、レバー35を図6(a)の状態に第3ばね部材を圧縮し、割ピン係合突起38を割ピン保持部材31の凹所31aから退出させる。次いで、挿入する割ピンの頭部環7aを凹所31aに設置して第2ばね部材32を圧縮し、割ピン保持部材31を第2ベース部14方向に後退させる。これにより、割ピン保持部材31に支持された係止段部40が保持ブロック39から外れ、割ピン係合突起38が割ピン7の頭部環7aに挿入され,割ピン7が割ピン保持部材31に把持される。この状態で、挿し込むコッターピン4の頭部4bを、コッターピン把持部11の溝部材24の溝25に進入させるとともに,一対の爪26a,26bの隙間にコッターピン4の脚部4aを進入させる。このとき、コッターピン4の頭部4aの一対の平坦面4dと溝部材24の溝25の壁面とが平行になるように挿入する。これにより、図7(b)と同様、コッターピン着脱工具10のコッターピン4の挿し込み作業の初期状態になる。
【0051】
次に、コッターピンの挿し込み作業の初期状態にセットされたコッターピン着脱工具10を用いて、碍子金具3aと碍子引留金具2の連結穴にコッターピンを挿し込む手順を説明する。まず、碍子金具3aと碍子引留金具2の連結穴を重ね合わせる。次に、コッターピン着脱工具10に連結された絶縁操作具50を操作して、コッターピン把持部11に把持されたコッターピン4を、重ね合わせた連結穴に挿入すると、図7(a)と同様の状態になる。そして、コッターピン着脱工具10を前進させると、割ピン把持部31に把持されている割ピン脚部7b、7cが割ピン穴4cに挿入され、図6(c)と同様の状態になる。割ピン穴4cに割ピン7が十分に挿し込まれたら、絶縁操作具50の挟み部53bでレバー35を図6(a)の矢印71方向に回動させて、第3ばね部材36を圧縮する。これにより、割ピン係合突起38が割ピン保持部材31の凹所31aから退出して、割ピン係合突起38と割ピン7の頭部環7aとの係合が解かれるとともに、割ピン保持部材31が第2ばね部材32により進出され、保持ブロック39が係止段部40に係止して、図6(b)と同様の状態になる。そして、コッターピン把持部11を図6(a)の図において右方向(矢印70方向)に後退させると、コッターピン4がコッターピン把持部11から離脱して、コッターピンの挿し込み作業が終了する。なお、本実施形態では、第3ばね部材36を圧縮するために、レバー35を絶縁操作具50の挟み部53bで、図6(a)の矢印71方向に回動させるようにしたが、これに代えて、他の絶縁棒等を用いて、レバー35を図6(a)の矢印71方向に押し下げて回動させるようにすることができる。
【0052】
このように、本実施形態のコッターピン着脱工具10によれば、コッターピン把持部11に把持されたコッターピン4を碍子金具3a等の連結穴に挿し込む方向にコッターピン着脱工具10を移動させて、コッターピン4を連結穴に挿し込んだ後、コッターピン着脱工具10を前進させることにより割ピン7をコッターピン4の割ピン穴4cに挿し込むことができる。つまり、本実施形態のコッターピン着脱工具10によれば、ワンタッチでコッターピン4と割ピン7を挿し込むことができるから、活線作業によるコッターピン及び割ピンの挿し込み作業の段取り替えが不要となり、使い勝手の良いコッターピン着脱工具を提供することができる。
【0053】
本実施形態では、割ピン係合突起38を進退駆動する係合突起駆動部材として、回動アーム34により回動可能に形成されたレバー35の例を示した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、割ピン係合突起38を割ピン保持部材31の凹所31aに対して、直線的に進退させるように第2ベース部14に鉛直方向に昇降可能に係合突起駆動部材を形成し、係合突起駆動部材の先端部に保持ブロック39を介して割ピン係合突起38を取り付ける構成とすることができる。また、昇降可能な係合突起駆動部材を凹所31aに向けて押し下げるように、ばね部材を設ける。この場合においても、保持ブロック39と係止段部40との位置関係は、本実施形態と同様に構成すればよい。
【符号の説明】
【0054】
10 コッターピン着脱工具
11 コッターピン把持部
12 第1ベース部
13 割ピン把持部
14 第2ベース部
15 共通ベース部
16 操作具連結部
17 ロックピン
20 第1ばね部材
21 基部
22 ガイド穴
24 溝部材
25 溝
26 爪部材
27a,b ピン
28 ばね部材
29(29a、29b) 拡幅部
31 割ピン保持部材
32 第2ばね部材
33 ピン
34 回動アーム
35 レバー
36 第3ばね部材
38 割ピン係合突起
39 保持ブロック
40 係止段部
50 絶縁操作具
51 ヤットコ
52(52a、52b) 把手
53(53a,53b) 挟み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
碍子の両端の碍子金具に穿設された連結穴と、碍子引留金具又は電線引留金具に穿設された連結穴とに挿入されて、前記碍子金具と前記碍子引留金具又は前記電線引留金具とをそれぞれ連結するコッターピンと、該コッターピンの抜け止め用の割ピンとを抜き挿しするコッターピン着脱工具において、
前記コッターピンを把持するコッターピン把持部と、前記割ピンを把持する割ピン把持部と、前記コッターピン把持部を摺動自由に支持する長手方向を有する第1ベース部と、前記割ピン把持部を支持する長手方向を有する第2ベース部と、前記第1ベース部と前記第2ベース部の長手方向を平行に支持する共通ベース部と、前記共通ベース部に形成され絶縁棒が連結される連結部とを備え、
前記コッターピン把持部は、前記第1ベース部の長手方向に摺動自由に支持された基部を有し該基部の摺動方向の先端から基端側に向けて前記コッターピンの頭部が進入可能な断面を有する溝が形成された溝部材と、
該溝部材の溝開口を覆って設けられ前記コッターピンの脚部が進入可能な幅の隙間を有する平板状の爪部材と、
前記溝部材を摺動方向の先端側に付勢する第1ばね部材とを有してなり、
前記溝部材の溝は、コッターピン頭部の上面に対応する底面と前記コッターピン頭部の外周を割ピンの挿通穴に平行な軸対称2面で除去した一対の平坦面に対応する壁面を有して形成され、
前記割ピン把持部は、前記第2ベース部の長手方向に摺動自由に支持された平板部材の摺動方向の先端部の前記第1ベース部の反対面に形成され、前記割ピンの頭部環が進入可能で環面が接する底面を有する凹所が形成されてなる割ピン保持部材と、
前記割ピン保持部材を摺動方向の先端側に突出させる第2ばね部材と、
前記割ピン保持部材の凹所に進入された前記割ピンの頭部環に挿入可能な割ピン係合突起と、
前記割ピン係合突起を前記凹所に進退可能に前記第2ベース部に支持する係合突起駆動部材と、
前記割ピン係合突起を前記割ピン保持部材の凹所に進出させる方向に前記係合突起駆動部材を付勢する第3ばね部材と、
前記割ピン保持部材が前記第2ばね部材により突出された位置で前記割ピン係合突起の進出を規制し、前記割ピン保持部材が前記第2ばね部材に抗して後退した位置で前記割ピン係合突起の進出規制を解除するように前記割ピン保持部材に支持された係止部材とを備えてなり、
前記第1ベース部と前記第2ベース部は、前記コッターピン把持部に把持された状態の前記コッターピンの前記割ピンの挿通穴の位置に前記割ピン保持部材の凹所を合わせて前記共通ベース部に支持されてなることを特徴とするコッターピン着脱工具。
【請求項2】
請求項1に記載のコッターピン着脱工具において、
前記爪部材は、前記溝部材の溝の基端から先端に延在させて互いに隙間を空けて設けられた一対の爪を有し、
該一対の爪は、前記溝の開口面内で開閉可能に前記溝部材に回動可能に支持され、かつ、隙間を閉じる方向に弾発付勢されてなり、
前記一対の爪の隙間は、該一対の爪が閉じた状態で前記コッターピンの脚部の径に対応した拡幅部を有し、該一対の爪の先端に向うにつれて拡幅して形成されてなることを特徴とするコッターピン着脱工具。
【請求項3】
請求項2に記載のコッターピン着脱工具において、
前記一対の爪は、一方の爪が他方の爪より長く形成されてなることを特徴とするコッターピン着脱工具。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコッターピン着脱工具において、
前記係合突起駆動部材は、前記第2ベース部に回動可能に支持されたレバーを有して形成され、
前記割ピン係合突起は、前記レバーの一端に設けられ、
前記第3ばね部材は、前記割ピン係合突起を前記凹所に向けて回動させるように前記レバーを回動方向に付勢するように設けられていることを特徴とするコッターピン着脱工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−253882(P2012−253882A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123890(P2011−123890)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000222015)株式会社ユアテック (26)
【出願人】(591160268)北日本電線株式会社 (41)
【Fターム(参考)】