説明

コップ蓋成形用金型とそれを利用して作製するコップ蓋の製造方法

【課題】使い捨て式コップ蓋を快速で有効に射出成形でき、コップ内にある飲み物の漏れ出しを有効に防止できるコップ蓋成形用金型とそれを利用して作製するコップ蓋の製造方法を提供する。
【解決手段】環状突起11と、環状体12と、第1のエア通路13と、を備え、環状体12は環状突起の周縁に設けられ、環状突起11と環状体12との間に隙間14が形成され、第1のエア通路13は隙間14と外部空間とを連通するオス金型1と、環状溝16を備えるメス金型2と、を含み、オス金型1とメス金型2とを型合せると、環状突起11と環状体12とが環状溝16内に位置し、オス金型1とメス金型2との間には、予定形状を有するキャビティ3と、キャビティ3と外部空間とを連通する第2のエア通路4と、が形成され、キャビティ3は、隙間14と連通し、環状体12の環状突起11から遠ざかった一側から環状溝16に延びる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形金型に係り、特にコップ蓋成形用金型とそれを利用して作製するコップ蓋の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コーヒーショップ及び飲料店の販売する飲料は、その場で入れられる飲料がメインであり、飲料の充填及び飲用を便利にするために、使い捨て式の樹脂コップや紙コップがテイクアウトの消費者に提供される。冷たい飲み物の場合には、コップの開口がフィルムにより封止され、飲料の漏れ出しを防止できる。しかし、熱い飲み物の場合には、コップの開口を封止するフィルムは、熱膨張により粘着箇所が溶けられて、飲料が漏れ出し、そしてストロークにより熱い飲み物を吸い上げて飲用するときに、飲み物が熱いため、消費者が火傷されることがある。このため、熱い飲み物が充填されたコップの開口は、コップ蓋により封止することが一般的である。
【0003】
従来のコップ蓋は、その周縁にある環状係り片によりコップの開口に係止される。しかし、環状係り片による係止力が不足であるため、外力によりコップ蓋が変形してコップの開口から離脱して、飲み物が溢れ出しやすい。そして、コップ蓋とコップの密着性が良くないため、コップを移動しているときには、飲み物がコップ蓋とコップとの間から漏れ出しやすい。上記の問題を解決するために、本願の出願人は特許文献1の「コップ蓋」を提案した。このようなコップ蓋は、コップの開口の外縁に対応する環状外係り片と、コップの開口の内縁に対応する環状内挟み片と、を有し、蓋本体の端縁に係止用環状溝が形成されることにより、前記係止用環状溝により、コップ蓋は、コップの開口に緊密に密着することができ、コップの開口から容易に離脱することができず、コップ内にある飲み物の漏れ出しを有効に防止できる。
【0004】
しかしながら、上記のコップ蓋は射出成形金型により作製される。射出成形金型の排気穴は、キャビティの端縁の外周に設けられ、前記キャビティ及び外部空間と連通する。前記キャビティに樹脂を注入しているときには、前記キャビティ内にあるエアが前記排気穴から排出される。前記キャビティの前記環状内挟み片を成形する部分は、前記排気穴と直接に連通しないため、この部分にあるエアは前記排気穴から容易に排出できない。これにより、前記キャビティの前記環状内挟み片を成形する部分に樹脂を充満することができず、このようなコップ蓋の良率が理想的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】台湾特許第M384844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の主な目的は、使い捨て式コップ蓋を快速で有効に射出成形でき、成形されたコップ蓋がコップの開口に緊密に密着する係止用環状溝を保有できるコップ蓋成形用金型とそれを利用して作製するコップ蓋の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコップ蓋成形用金型によると、環状突起と、環状体と、第1のエア通路と、を備え、環状体は環状突起の周縁に設けられ、環状突起と環状体との間に隙間が形成され、第1のエア通路は隙間と外部空間とを連通するオス金型と、環状溝を備えるメス金型と、を含み、
オス金型とメス金型とを型合せると、環状突起と環状体とが環状溝内に位置し、オス金型とメス金型との間には、予定形状を有するキャビティと、キャビティと外部空間とを連通する第2のエア通路と、が形成され、キャビティは、隙間と連通し、環状体の環状突起から遠ざかった一側から環状溝に延びることを特徴とする。
【0008】
本発明のコップ蓋成形用金型によると、メス金型とオス金型とのうちの一つに樹脂注入穴が設けられ、樹脂注入穴はキャビティと外部空間とを連通し、メス金型とオス金型とのうちの残りには、樹脂注入穴に対応する穴が設けられることを特徴とする。
【0009】
本発明のコップ蓋成形用金型によると、環状体の環状突起から遠ざかった一側には、キャビティと連通する環状溝が形成されることを特徴とする。
【0010】
本発明のコップ蓋成形用金型によると、環状体の環状突起から遠ざかった一側には、キャビティと連通する環状溝が形成されることを特徴とする。
【0011】
本発明のコップ蓋成形用金型によると、キャビティと隙間との幅は0.3mmから0.5mm範囲であることを特徴とする。
【0012】
本発明のコップ蓋成形用金型によると、第1のエア通路の幅はほぼ0.1mmであることを特徴とする。
【0013】
本発明のコップ蓋成形用金型によると、第1のエア通路の幅はほぼ0.1mmであることを特徴とする。
【0014】
本発明のコップ蓋の製造方法によると、請求項1から請求項4の何れかに記載のコップ蓋成形用金型を用意して、金型を型合せて、樹脂が隙間とキャビティとを充満するように、キャビティに樹脂を注入して、隙間とキャビティとにあるエアが第1のエア通路と第2のエア通路とを経由して外部空間に排出され、樹脂が冷却した後、型開けて成形品を型抜くことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のコップ蓋成形用金型とそれを利用して作製するコップ蓋の製造方法によれば、使い捨て式コップ蓋を快速で有効に射出成形でき、成形されたコップ蓋はコップの開口に緊密に密着する係止用環状溝を保有でき、コップ内にある飲み物の漏れ出しを有効に防止できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の金型を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の金型を示す縦断面図である。
【図3】図2の一部を示す拡大図である。
【図4】本発明の金型により射出成形されたコップ蓋を示す斜視図である。
【図5】本発明の金型により射出成形されたコップ蓋を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0018】
まず、図1乃至図3を参照する。本発明の一実施例のコップ蓋成形用金型は、オス金型1と、メス金型2と、を含む。オス金型1は、環状突起11と、環状体12と、第1のエア通路13と、を備える。環状体12は環状突起11の周縁に設けられる。環状突起11と環状体12との間に隙間14が形成される。第1のエア通路13は隙間14と外部空間とを連通する。メス金型2は環状溝21を備える。オス金型1とメス金型2とを型合せると、環状突起11と環状体12とが環状溝21内に位置し、オス金型1とメス金型2との間には、予定形状を有するキャビティ3と、キャビティ3と外部空間とを連通する第2のエア通路4と、が形成される。キャビティ3は、隙間14と連通し、環状体12の環状突起11から遠ざかった一側から環状溝21に延びる。
【0019】
具体的には、環状溝21の形状が環状突起11と環状体12との形状に対応する。これにより、オス金型1とメス金型2とを型合せると、図2に示すように、コップ蓋を成形できるキャビティ3が形成される。オス金型1とメス金型2とを型合せると、キャビティ3と隙間14との幅は0.3mmから0.5mm範囲である。これにより、キャビティ3と隙間14とに樹脂を注入して冷却した後、コップ蓋の厚さは0.3mmから0.4mm範囲である。このように、射出成形の過程中に適量の樹脂を使用することで、適当な構造強度を有するコップ蓋を成形でき、このようなコップ蓋により、異なる肉厚を有するコップの開口を密封できる。また、第1のエア通路13の幅は0.1mmであることが好ましい。このように、樹脂5は、隙間14を充満した後、第1のエア通路13に流入することができず、冷却したコップ蓋にバリを生ずることを防止できる。
【0020】
本実施例では、メス金型2に樹脂注入穴22が設けられる。樹脂注入穴22はキャビティ3と外部空間とを連通する。オス金型1には、樹脂注入穴22に対応する穴15が設けられる。樹脂注入穴22はキャビティ3の中央に位置することが好ましい。このように、樹脂5を注入するときには、樹脂5が四周に流入して、キャビティ3と隙間14とを均一で快速に充満できる。一方、キャビティ3に近接する樹脂は、樹脂加熱装置から遠く離れ、樹脂加熱装置から離れる時間が長いため、温度がより低く、冷却して凝固しやすく、液相状態にある樹脂の前進を塞ぎ、ひいては樹脂はキャビティ3と隙間14とを充満することができない。樹脂注入穴22に対応する位置に穴15を設けることにより、樹脂注入穴22に樹脂5を注入しているときには、樹脂注入穴22のキャビティ3に近接する樹脂が穴15に注入して、樹脂注入穴22のキャビティ3から離れる樹脂がキャビティ3に流入できる。このため、先にキャビティ3に注入され、より低温である樹脂は、穴15に流入して、その後方にある液相状態である樹脂の前進を塞ぐ確率を減少できる。もちろん、オス金型1に樹脂注入穴22を設けて、メス金型2に穴15を設けてもよい。
【0021】
図1乃至図3を参照する。上記のコップ蓋成形用金型により、下記のステップでコップの開口を密封することができる。すなわち、本発明のコップ蓋成形用金型を用意して、オス金型とメス金型とを型合せて、樹脂5が隙間14とキャビティ3とを充満するように、キャビティ3に樹脂を注入して、隙間14とキャビティ3とにあるエアが第1のエア通路13と第2のエア通路4とを経由して外部空間に排出され、樹脂5が冷却した後、型開けて成形品を型抜く。このように、コップ蓋を快速に作製することができる。更に、オス金型とメス金型とを型合せるときに、第2のエア通路4は、従来の金型と同じように、キャビティ3の端縁の外周に設けられ、これにより、キャビティ3に流入する樹脂5は、キャビティ3にあるエアを第2のエア通路4に押出して排出する。なお、隙間14がキャビティ3と連通するため、このとき、樹脂5は、隙間14に流入して、隙間14にあるエアを第1のエア通路13に押出して排出する。このように、樹脂5はキャビティ3と隙間14とを快速に充満できる。
【0022】
図4及び図5を参照する。図4は本発明の金型により射出成形されたコップ蓋6を示す斜視図であり、図5は本発明の金型により射出成形されたコップ蓋6を示す縦断面図である。コップ蓋6の形状は、キャビティ3と隙間14との形状に対応する。コップ蓋6は蓋本体61を含む。蓋本体61の端縁には、環状外係り片62と、環状外係り片62に対応する環状内挟み片63と、が形成される。これにより、蓋本体61の端縁には、開口が下方に向いている係止用環状溝64が形成される。蓋本体61によりコップの開口を被ると、係止用環状溝64によりコップの開口を強固に密封することができる。具体的には、環状体12と環状突起11との間にある隙間14は環状内挟み片63を成形する空間であり、環状外係り片62は、キャビティ3の環状体12の環状突起11から遠ざかった一側から窪み21に延びる空間を樹脂で充満して成形されるものである。換言すると、環状体12の外輪郭は、コップ蓋6の係止用環状溝64の内輪郭に対応する。本実施例では、環状体12には、更に、環状溝16が形成される。環状溝16は、環状体12の環状突起11から遠ざかった一側に位置し、キャビティ3と連通する。具体的には、環状溝16は、図1に示すように、環状体12の外側の全長を囲む。これにより、窪み21と環状体21との間に成形される環状外係り片62には、更に、リブ65が成形される。リブ65は、係止用環状溝64内に位置するコップの開口に押付けるため、コップの開口が係止用環状溝64から容易に離脱できない。
【0023】
すなわち、本発明のコップ蓋成形用金型とそれを利用して作製するコップ蓋の製造方法によれば、キャビティに樹脂を注入しているときに、キャビティにあるエアが第1のエア通路と第2のエア通路とから排出され、樹脂がキャビティと隙間とを快速に充満でき、係止用環状溝64を有するコップ蓋6を快速で有効に射出成形できる。また、キャビティ3と隙間14とに樹脂を注入して成形された係止用環状溝64は、適当な厚さを有するため、異なる肉厚を有するコップの開口に対応でき、且つ一定の強度を有し、外力を受けても、コップ蓋6は変形してコップの開口から容易に離脱できない。そしてコップ蓋の成形の良率を増加する効果もある。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、コップ蓋に適用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1:オス金型
2:メス金型
3:キャビティ
4:第2のエア通路
5:樹脂
6:コップ蓋
11:環状突起
12:環状体
13:第1のエア通路
14:隙間
15:穴
16:環状溝
21:窪み
22:樹脂注入穴
61:蓋本体
62:環状外係り片
63:環状内挟み片
64:係止用環状溝
65:リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状突起と、環状体と、第1のエア通路と、を備え、前記環状体は前記環状突起の周縁に設けられ、前記環状突起と前記環状体との間に隙間が形成され、前記第1のエア通路は前記隙間と外部空間とを連通するオス金型と、
環状溝を備えるメス金型と、からなり、
前記オス金型と前記メス金型とを型合せると、前記環状突起と前記環状体とが前記環状溝内に位置し、前記オス金型と前記メス金型との間には、予定形状を有するキャビティと、前記キャビティと外部空間とを連通する第2のエア通路と、が形成され、前記キャビティは、前記隙間と連通し、前記環状体の前記環状突起から遠ざかった一側から前記環状溝に延びることを特徴とするコップ蓋成形用金型。
【請求項2】
前記メス金型と前記オス金型とのうちの一つに樹脂注入穴が設けられ、前記樹脂注入穴は前記キャビティと外部空間とを連通し、前記メス金型と前記オス金型とのうちの残りには、前記樹脂注入穴に対応する穴が設けられることを特徴とする、請求項1に記載のコップ蓋成形用金型。
【請求項3】
前記環状体の前記環状突起から遠ざかった一側には、前記キャビティと連通する環状溝が形成されることを特徴とする、請求項1に記載のコップ蓋成形用金型。
【請求項4】
前記環状体の前記環状突起から遠ざかった一側には、前記キャビティと連通する環状溝が形成されることを特徴とする、請求項2に記載のコップ蓋成形用金型。
【請求項5】
前記キャビティと前記隙間との幅は0.3mmから0.5mm範囲であることを特徴とする、請求項1から請求項4の何れか1項に記載のコップ蓋成形用金型。
【請求項6】
前記第1のエア通路の幅はほぼ0.1mmであることを特徴とする、請求項1から請求項4の何れか1項に記載のコップ蓋成形用金型。
【請求項7】
前記第1のエア通路の幅はほぼ0.1mmであることを特徴とする、請求項1に記載のコップ蓋成形用金型。
【請求項8】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載のコップ蓋成形用金型を用意して、前記金型を型合せて、樹脂が前記隙間と前記キャビティとを充満するように、前記キャビティに樹脂を注入して、前記隙間と前記キャビティとにあるエアが前記第1のエア通路と第2のエア通路とを経由して外部空間に排出され、樹脂が冷却した後、型開けて成形品を型抜くことを特徴とするコップ蓋の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate