説明

コネクタの接続端子

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、コネクタの接続端子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、相互に嵌め合い可能なコネクタ内には一方の側には雄側端子が、また他方の側にはこの雄側端子を受け入れる雌側端子が組み込まれている。これらはコネクタのハウジング内に露出して配されており、コネクタ相互を嵌合させたときに一定の接触圧でもって嵌め合い状態となるようにしてあるのが通常である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、コネクタ相互を嵌め合わせる前の状態では、上記したように各端子は露出状態にあるため、コネクタ内に侵入したほこり等が端子に付着することがある。また、長期的には端子が酸化して接触面に酸化被膜が形成されるといったこともある。こうした場合には、接触抵抗が増加してコネクタの機能が低下してしまうことが懸念される。
【0004】本発明は上記した問題点に鑑みて開発工夫されたものであり、その目的とするところは良好な接触状態が得られる接続端子を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために請求項1に係る発明は、雌雄のコネクタ内に組み込まれて相互に嵌め合わせ可能な接続端子であって、両接続端子のうちの少なくとも一方の側の接続端子は保持孔内に軸方向への変位可能にかつスプリングによって押し出し方向に付勢された状態で挿入されるとともに、接続端子の外周面および保持孔の孔壁の一方には軸方向に延びる螺旋路が形成され、他方にはこの螺旋路に係合して前記両接続端子の嵌合操作に伴って当該側の接続端子を角変位させる案内手段が設けられていることを特徴とするものである。
【0006】また、請求項2に係る発明は雌雄のコネクタ内に組み込まれて相互に嵌め合わせ可能な接続端子であって、両接続端子のうちの少なくとも一方の側の接続端子は保持孔内に軸方向への変位可能に挿入されかつこの接続端子には同端子を押し出し方向に付勢するスプリングが巻着され、また前記保持孔の孔壁には前記スプリングの素線に係合して前記両接続端子の嵌合操作に伴って当該側の接続端子を角変位させる螺旋突条が形成されていることを特徴とするものである。
【0007】
【作用】請求項1の発明において、両コネクタの嵌合に伴って接続端子相互が嵌め込まれると、一方の接続端子は押し込み方向の力を受ける。このとき、接続端子は案内手段と螺旋路との係合によって角変位されるため、端子相互はローリングしながら接触されるため、ここでワイピング効果が得られ、付着した酸化被膜あるいはほこり等が除去される。
【0008】また、請求項2の発明においては接続端子同士の嵌合がなされるときには、スプリングを圧縮しながらその素線が螺旋突条に案内されてローリングするため、同様にしてほこり等の除去がなされ、同時にスプリングによって一定の接圧が得られる。
【0009】
【発明の効果】本発明の効果は次のようである。請求項1の発明によれば、接続端子表面に酸化被膜あるいはほこり等が付着したとしても、コネクタの嵌合操作時に接続端子相互がローリングしてこれらが除去されるため、良好な接続状況が実現される。また、請求項2の発明によれば、端子相互の接圧を得るためのスプリングの螺旋素線を利用して端子のローリングを行わせるようにしたため、請求項1の発明の効果に加えて構成の簡素化を併せて図ることができる効果も得られる。
【0010】
【実施例】以下、本発明を具体化した実施例を図面にしたがって詳細に説明する。図1は電気自動車の充電用コネクタを示すものであり、車両側コネクタ1と充電器側コネクタ2とから構成されている。まず、充電器側コネクタ2について説明すると、この側のコネクタ2は嵌合操作を容易にするためにガンタイプの本体3を有し、その先端側には円筒状のコネクタハウジング4が配されている。そして、その内部には充電用端子5および充電状況の検知等の信号線用の各雌端子6が設けられ、それぞれケーブル7に接続されて外部に引き出されている。各端子5、6はハウジング4内の対応する内筒8〜8にそれぞれ固嵌され、またそれぞれの先端部は棒状に形成されかつ先端面には所定深さの摺り鉢状の凹部9が形成されて車両側コネクタ1の対応する端子と突き当てによって電気的な接続がなされるようにしてある。
【0011】また、本体3の後部にはグリップ10が配され、その上部には握り操作可能なレバー11が、支持ピン12を中心として回動可能に装着されている。また、図には示されないが、支持ピン12にはトーションばねが巻着されてレバー11を戻し方向(開き方向)に付勢している。さらに、レバー11の下端には引掛けリング14が取り付けられ、グリップ10への引掛けによってレバーを握った状態に保持することができるようにしている。
【0012】一方、前記したコネクタハウジング4の外周部分はほぼ同軸で嵌め込まれたフロントカバー15によって覆われているが、このカバー15の左右両側部は長さ方向に沿って外方へ膨出されている。そして、両膨出部分とコネクタハウジング4との間の隙間には、車両側コネクタ1の外側面に一対配置された両突起16に係合して引き込み動作を行わせるための左右一対の引き込みプレート17が収納されている。両引き込みプレート17は先端側に窓部18が開口し、また後部側はフロントカバー15から後方へ突出した後、本体3の壁面に沿うようにして屈曲している。
【0013】また、両引き込みプレート17を前後進させるために、前記レバー11と両引き込みプレート17とは歯車機構を介して連係してある。すなわち、レバー11の支持ピン12には左右一対のセクターギヤ20が支持され、レバー11の握り動作と連動して揺動可能となっている。また、両セクターギヤ20は本体3に対して遊転自在に取り付けられた第1ギヤ21と噛み合い、また第1ギヤ21はこれに隣接する第2ギヤ22と噛み合っている。さらに、この第2ギヤ22には両引き込みプレート17の後端部に刻設されたラック歯23と噛み合っている。
【0014】なお、充電器側コネクタ2を車両側コネクタ1に所定深さまで嵌合したときに、充電器側コネクタ2が仮保持されるよう、ハウジング4の外周面の所定位置には周方向に沿ってリング溝24が刻設され、後述する車両側コネクタ1の保持リング25と係合可能である。また、この状態にまで充電器側コネクタ2が嵌め込まれるまでの間、両引き込みプレート17が車両側コネクタ1の両突起16と干渉しないよう、通常時は先端側がやや拡開してあるが、上記した仮保持位置においてレバー11が握り操作されて両引き込みプレート17が僅かに後退することに伴ってすぼみ動作して窓部18と突起16とが整合する設定となっている。このための構成については、詳しくは図示しないが、例えば常には両引き込みプレートはハウジングの外周面に当接しているが、後退動作が開始されると、ハウジングの外面に長さ方向に沿って形成された溝部内に落ち込んですぼみ動作が行われるようにする、等の構成が考えられる。
【0015】次に、車両側コネクタ1について説明すると、この側のコネクタハウジング26は充電器側コネクタのハウジング4に外嵌可能な円筒状に形成されており、その前方から所定深さ位置には前述した保持リング25が嵌着されている。この保持リング25の適当位置には撓み変形可能な爪片27が例えば対称位置に二箇所、それぞれ切り起こしによって形成されており、充電器側コネクタ2のリング溝24に弾性的に係合することで充電器側コネクタ2の仮保持が可能となっている。
【0016】また、充電器側コネクタ2には後方からフランジ縁39に突き当てられる位置まで端子ホルダー28が嵌め込まれており、この端子ホルダー28はさらに後方から嵌合された押さえ部材29によって抜け止めがされている。また、端子ホルダー28には充電器側コネクタ2の各端子5、6に対応して保持孔30が貫通し、これらに信号線用の雄端子31あるいは充電用の雄端子32がそれぞれ軸方向への変位が許容された状態で収納されている。さらに、端子ホルダー28の前面には各端子31、32に対応して外筒33が一体に突出している。これら各外筒33は対応する端子31、32の先端側が突入されるとともに、これらは両コネクタ1、2の嵌合時において充電器側コネクタ2の対応する各内筒8にそれぞれ外嵌可能に形成されている。各端子31、32のうち信号線用端子31については、保持孔30内に収められたスプリング34、35によって全体が押し出し方向に付勢されており、これによって充電器側コネクタ2の対応する端子5、6との間で一定の接圧が得られるようにしてある。
【0017】また、充電用端子32については中央部に鍔縁36が一体に張り出し形成され、鍔縁36より後部側には大径部37が形成されている。そして、スプリング35は大径部37に巻着されており、その一端は鍔縁36に対して固定されており、他端は自由端となって押さえ部材29の前面に当接されている。また、図3および図4に示すように、このスプリング35の後端側のばね座は通常より短めに形成されており、スプリング35が圧縮された時の全体の角変位を許容したものとなっている。一方、保持孔30の孔壁にはスプリング35の素線に対し所定の長さ範囲にわたって係合する螺旋突条38が形成されている。これによって、両コネクタ1、2の充電用端子5、32相互が電気的に接続される場合において、車両側コネクタ1の充電用端子32が後退することに伴いスプリング35と螺旋突条38との係合を通して充電用端子32が所定角度だけ、角変位することになる。
【0018】次に、上記のように構成された本例の作用効果を具体的に説明する。両コネクタ1、2を嵌合させる場合には、グリップ10を把持して充電器側コネクタ2を車両側コネクタ1に適合させて、そのまま押し込む。一定深さ位置まで押し込まれると、保持リング25の爪片27がリング溝24に弾性的に係合するため、充電器側コネクタ2がこの位置(半嵌合位置)で仮保持される。この状態において、レバー11を軽く握り操作すると、両引き込みプレート17はセクターギヤ20および第1、第2のギヤ21、22の噛み合いを通じて僅かに後退する。これによって、両引き込みプレート17の先端側がすぼんで両窓部18が車両側コネクタ1の両突起16に整合して係合する。さらに、レバー11を握り操作すると車両側コネクタ1に対する引き込みによって充電器側コネクタ2が、爪片27とリング溝24との係合を解除して前進する結果、両コネクタ1、2が完全嵌合状態になる。
【0019】このとき、充電器側コネクタ2の各内筒8が対応する車両側コネクタ1の各外筒33に嵌合するため、対応する端子相互がスプリング34、35による所定の接圧をもって突き当てられた状態で電気的に接続される。
【0020】ところで、車両側コネクタ1における充電用端子32に対して充電器側コネクタ2の対応する端子5が突き当てられると、当該端子32はスプリング35に抗して押される。すると、スプリング35の素線と螺旋突条38との係合によりスプリング35は螺旋突条38に案内されてねじれ(螺退)ながら後退する。前述したように、スプリング35の一端は鍔縁36に固定されて両者は一体関係にあるため、車両側の充電用端子32はスプリング35の螺退方向と同方向に角変位する。つまり、充電器側コネクタ2の端子5との間でローリングしながら嵌め合わされるため、この間においてワイピング効果が得られる。したがって、仮に端子32の表面にごみが付着していたり、あるいは酸化被膜等が生じていたとしても嵌合動作を通じてこれらの除去がなされるため、特別な清掃作業を要することなく常に良好な接触状況が実現される。
【0021】そして、充電が完了すれば上記とは逆順にして充電器側コネクタ2が離間すると、信号線用の端子6はスプリング34によってそのまま原位置へ復帰し、充電用端子32はスプリング34がねじれ(螺進)を戻しつつ復帰するため、端子32も同期して戻り方向へ角変位する。
【0022】なお、本発明は種々の変更例が考えられる。例えば、本例においてはスプリングの螺旋を利用して端子を角変位させるようにしたが、これに代えて例えば端子側に螺旋溝を刻設し、保持孔の孔壁側にこれに係合する凸部を設ける形式であってもよい。また、角変位の案内のための手段としては特に全周に設ける必要はなく、部分的に形成したものであっても構わない。さらに、充電用の端子に限らず、信号線用の端子に適用することも可能であり、また充電器側コネクタの端子への利用も可能である。いずれにしても、本発明は電気自動車の充電用コネクタに限らず、広く一般のコネクタ端子に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】コネクタ全体を示す斜視図
【図2】両コネクタの要部の断面図
【図3】接続端子部分を拡大して示す断面図
【図4】端子の接続時を拡大して示す断面図
【符号の説明】
1…車両側コネクタ
2…充電器側コネクタ
5…充電用端子
30…保持孔
32…充電用端子
35…スプリング
38…螺旋突条

【特許請求の範囲】
【請求項1】 雌雄のコネクタ内に組み込まれて相互に嵌め合わせ可能な接続端子であって、両接続端子のうちの少なくとも一方の側の接続端子は保持孔内に軸方向への変位可能にかつスプリングによって押し出し方向に付勢された状態で挿入されるとともに、接続端子の外周面および保持孔の孔壁の一方には軸方向に延びる螺旋路が形成され、他方にはこの螺旋路に係合して前記両接続端子の嵌合操作に伴って当該側の接続端子を角変位させる案内手段が設けられていることを特徴とするコネクタの接続端子。
【請求項2】 雌雄のコネクタ内に組み込まれて相互に嵌め合わせ可能な接続端子であって、両接続端子のうちの少なくとも一方の側の接続端子は保持孔内に軸方向への変位可能に挿入されかつこの接続端子には同端子を押し出し方向に付勢するスプリングのその一端が接続端子に固定された状態で巻着され、また前記保持孔の孔壁には前記スプリングの素線に係合して前記両接続端子の嵌合操作に伴って当該側の接続端子を角変位させる螺旋突条が形成されていることを特徴とするコネクタの接続端子。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【特許番号】第2929900号
【登録日】平成11年(1999)5月21日
【発行日】平成11年(1999)8月3日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−175974
【出願日】平成5年(1993)6月22日
【公開番号】特開平7−14631
【公開日】平成7年(1995)1月17日
【審査請求日】平成9年(1997)2月12日
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【参考文献】
【文献】特開 平6−188044(JP,A)
【文献】特開 平6−236780(JP,A)
【文献】特開 平6−302356(JP,A)
【文献】特開 平6−302358(JP,A)
【文献】特開 平6−310208(JP,A)
【文献】特開 平6−310216(JP,A)
【文献】実開 平3−48881(JP,U)
【文献】実開 昭64−27866(JP,U)