説明

コネクタ装置

本発明は、第1の流体容器と第2の流体容器とを直接又は間接的に接続するためのコネクタ装置に関する。コネクタ装置は、第1の接続手段及び第2の接続手段と、穿刺可能な隔壁部材と、穿刺部材と、流体移送流路と、圧力正規化流路とを含む。圧力正規化流路は、第2の流体容器内部で上昇する圧力を正規化するように構成される。第1の方向及び第2の方向に流体を流通させる弁構成が圧力正規化流路に配置される。弁構成は少なくとも第1の方向にクラッキング圧力を示す。本発明は、隔壁フィルタを目詰まりさせる危険を低減するコネクタ装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の流体容器と第2の流体容器とを接続するコネクタ装置に関する。コネクタ装置は、2つの異なる方向に流体を流通させる改良された弁構成を有する。
【背景技術】
【0002】
容器、例えば小瓶から注射針によって液状物質を移し替える場合、又は乾燥した物質を溶解するために物質に液体を添加する場合、更には例えば患者の血管に注射するか又は注入瓶などに注入するなどの所期の使用目的のために物質を移し替える場合、液状物質を小瓶から吸引するための注射針がエアロゾルや液滴が周囲に放出することや、注射針を扱っている人が物質で汚染されてしまうことは避けられない。特に物質が細胞毒性薬剤、放射性ラベル物質又はアレルギー誘発物質から形成されている場合、可能であれば輸液バッグを介して小瓶から患者への物質の搬送が適切な条件下で実行されること及び搬送中に注射針によって起こる空気汚染が回避されることは安全上の理由から重要である。
【0003】
上記の目的に使用されるコネクタ装置の一例は、ボトルコネクタ及び薬剤ボトルを備える改良された流体移送構体を開示する米国特許出願公開第2003070726号に開示される。ボトルコネクタは、注射器を固定結合可能なネック要素と、ボトルコネクタを薬剤ボトルに接続するための第2の接続手段とを備える。コネクタは、ボトルの密閉蓋に貫入するための中空針を有する。中空針の内部が流体移送流路となる。ボトルコネクタは、可撓性容器を含む圧力補償手段と、中空針内部にあり、流体移送流路を介して流体を搬送させるためにボトルから可撓性容器に向かって又は逆に可撓性容器からボトルに向かって気体を搬送する気体流路とを更に備える。気体流路は、液体が前記可撓性容器内に流入して可撓性容器を損傷することを防止するためのフィルタを含む。
【0004】
上記のコネクタにはいくつかの欠点がある。1つの欠点はフィルタが目詰まりすることである。フィルタが目詰まりすると、可撓性容器の機能が十分に働かなくなり、ボトル内の圧力は装置の取り扱いを困難にするレベルまで瞬時に上昇又は低下するおそれがある。前述のように、細胞毒性薬剤、放射性ラベル物質又はアレルギー誘発物質を扱う場合、ボトル内の圧力の上昇又は低下は理論上漏れの危険性を増すので、そのような圧力上昇又は圧力低下は危険であるといえる。従って、この分野において更なる改良が行われる必要がある。
【0005】
別のコネクタとして小瓶アダプタが米国特許出願公開第2007/0106244A1号明細書に開示される。小瓶アダプタは、ハウジング、伸縮性チャンバ及び流体が伸縮性チャンバに侵入するのを防止するためのフィルタを有する。一方向流体流れを可能にするために、フィルタに近接して逆止弁が配置される。しかし、このコネクタは取り扱いに関して融通性に優れているとはいえず、フィルタの障害、すなわち目詰まりを防止できる手段をまったく提供しない。本引例の更なる教示は、逆止弁は可能な限り低いクラッキング圧力を有するのが好ましいということである。
【発明の概要】
【0006】
上記の欠点のうち少なくとも一部は、本発明に係るコネクタ装置によって解消される。更に詳細には、第1の流体容器とび第2の流体容器とが接続された後に流体流通を確立するコネクタ装置により欠点は解消される。前記コネクタ装置は、ハウジングを備え、このハウジングは、穿刺可能な隔壁部材を有し、前記第1の流体容器を接続するための第1の接続手段と、第2の流体容器に接続するための第2の接続手段と、を備える。前記コネクタ装置は、また、組み立て後に前記第1の流体容器と前記第2の流体容器との間の流体流通を可能にする流体移送流路とを備える。前記ハウジングは、流体移送中に第2の流体容器内部の圧力を正規化するように構成された少なくとも1つの圧力正規化流路を更に備える。前記少なくとも1つの圧力正規化流路は、出口開口、入口開口、隔壁フィルタ及び少なくとも1つの弁構成を有する。
【0007】
前記少なくとも1つの弁構成は第1の方向及び第2の方向に流体を流通させるように構成され、前記第1の方向は前記入口開口から前記出口開口に向かう方向であり、前記第2の方向は前記出口開口から前記入口開口に向かう方向である。更に、前記少なくとも1つの弁構成は前記第1の方向にクラッキング圧力を有する。
【0008】
本発明に係るコネクタ装置によれば、前記隔壁フィルタに関して目詰まり防止構成を有効に実現すると同時に2方向の流体連通を可能にする改良された弁構成を有するコネクタ装置が提供される。前記第1の逆止弁及びそのクラッキング圧力は、投薬中に例えば加振されたり、逆さに置くか又は横倒しにした場合、あるいは過剰な量の薬剤及び場合によっては空気が第2の流体容器に戻された場合に前記第2の流体容器から前記隔壁フィルタに流体が到達するのを部分的に阻止する圧力の上昇を前記圧力正規化流路内で発生させることができる。
【0009】
本発明に係る一実施形態において、前記少なくとも1つの弁構成は、前記第1の方向及び前記第2の方向への流体流れを可能にするための第1の逆止弁及び第2の逆止弁を備える。前記第1の逆止弁及び前記第2の逆止弁は逆方向に且つ/又は互いに実質的に平行に配置されるのが好ましい。しかし、前記第1の逆止弁及び前記第2の逆止弁の主な機能は、前記第1の方向及び前記第2の方向への流体流れを可能にすることである。前記第1の逆止弁及び前記第2の逆止弁を使用することにより、逆止弁ごと及び方向ごとにクラッキング圧力を用途に応じて設定可能である。この融通性を利用して、フィルタの目詰まりを防止すると同時に両方向への流体流れを実現可能である。
【0010】
例えば、本発明に係る一実施形態において、前記第1の逆止弁のクラッキング圧力は少なくとも0.04atm、好ましくは0.04〜0.5atmである。0.04atmのクラッキング圧力は、ユーザが前記第2の流体容器から薬剤を投与又は吸引している場合に目詰まり防止機能を実現するには十分であるが、ユーザの操作の妨げになるか又は操作を困難にするほどのクラッキング圧力が加えられることはない。クラッキング圧力が高すぎるとユーザは過剰な力を使わなければならないので、装置が手から滑り落ちるなどの別の事故が起こる可能性があることが判明している。
【0011】
前記隔壁フィルタは逆止弁構成の安全な側にあり、すなわち前記隔壁フィルタのその側には流体は存在せず、前記第2の逆止弁のクラッキング圧力が低いほど、ユーザが前記第2の流体容器から流体を吸引する操作が容易になるので、前記第2の逆止弁のクラッキング圧力は可能な限り低いと好都合である。前記第2の逆止弁は第2の方向に0.5atm未満、好ましくは0.25atm未満、更に好ましくは0.1atm未満、最も好ましくは0.02atm未満のクラッキング圧力を有する。オプションとして、0.02〜0.5atm、0.02〜0.25atm又は0.02〜0.1atmである。
【0012】
前記ハウジングは少なくとも第1の圧力正規化流路及び第2の圧力正規化流路を含むように構成されてもよい。その場合、前記第1の逆止弁は前記第1の圧力正規化流路に配置され且つ前記第2の逆止弁は前記第2の圧力正規化流路に配置される。本実施形態は製造上の理由から有利である。前記第1及び第2の圧力正規化流路は共通の入口開口及び出口開口を更に有してもよいが、そのような開口を有していなくてもよい。前記第1の圧力正規化流路及び第2の圧力正規化流路は共通の入口開口及び分別々の出口開口をオプションとして有してもよいが、逆に別々の入口開口及び共通の出口開口を有してもよい。
【0013】
本発明に係る一実施形態において、前記少なくとも1つの弁構成は、少なくとも1つのスリットを有する膜を備える。そのような膜は前記第1の方向及び第2の方向の双方にクラッキング圧力を規定する。
【0014】
本発明に係る一実施形態において、前記少なくとも1つの圧力正規化流路の前記出口開口に前記少なくとも1つの圧力正規化流路と連通するように伸縮性ブラダが配置される。これにより、前記隔壁フィルタを通過した気体は周囲環境にさらされず、前記伸縮性ブラダにより規定されるボリュームの中に回収される。前記伸縮性ブラダは放物面形に形成された円盤と接続されるのが好ましい。
【0015】
本発明に係る一実施形態において、前記第1の逆止弁と前記圧力正規化流路の前記入口開口との間の圧力正規化流路の容積は相対的に小さいのが好ましい。例えば、容積は<1ml、好ましくは0.01ml〜0.9mlである。これにより、流体の一部が前記隔壁フィルタに到達することによってフィルタを目詰まりさせるような事態を有効に防止する圧力上昇を前記圧力正規化流路内で発生させることが可能になる。
【0016】
本発明は、第1の流体容器と第2の流体容器とを直接又は間接的に接続するためのコネクタ装置に関する。コネクタ装置は、第1の接続手段及び第2の接続手段と、穿刺可能な隔壁部材と、穿刺部材と、流体移送流路と、圧力正規化流路とを含む。圧力正規化流路は第2の流体容器内部で上昇する圧力を正規化するように構成される。第1の方向及び第2の方向に流体を流通させる弁構成が圧力正規化流路に配置される。弁構成は少なくとも第1の方向にクラッキング圧力を示す。本発明は、隔壁フィルタを目詰まりさせる危険を低減するコネクタ装置を提供する。
【0017】
本発明は、逆止弁構成、好ましくは第1の逆止弁及び第2の逆止弁によって隔壁フィルタに対する流体隔壁を構成するということができる。これは、逆止弁構成が流体に対して直接に障害物となるばかりでなく、間接的に流体移送流路における圧力上昇によって流体を妨げる一方で、気体は逆止弁構成を透過可能であると同時に逆止弁構成が気体及び流体を第1の方向及び第2の方向の両方向に流通させるということを意味する。
【0018】
上記の利点及び他の利点は、本発明に係る好適な実施形態の詳細な説明を読むことにより明らかになるだろう。
【0019】
前述のように、本発明は、接続される流体容器における圧力上昇を減少するために入口開口及び出口開口を有する圧力正規化流路のような流体流路を有する医療装置、好ましくはコネクタ装置の弁構成に更に関する。流体流路に接続された後、前記弁構成が第1の方向及び第2の方向に流体を流通させる構成となるように、前記弁構成は、互いに平行に配置された第1の逆止弁及び第2の逆止め弁を備える。この場合、前記第1の方向は前記入口開口から前記出口開口に向かう方向であり且つ前記第2の方向は前記出口開口から前記入口開口に向かう方向であり、少なくとも前記第1の逆止弁はクラッキング圧力を有する。前記第1の逆止弁及び前記第2の逆止弁は共にクラッキング圧力を有してもよい。前記弁構成は以下に図1〜図5を参照して更に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
添付の図面を参照して本発明を更に詳細に説明する。
【図1】図1は、本発明に係るコネクタ装置の一実施形態を示す横断面図である。
【図2】図2は、伸縮性ブラダが膨張状態にある、すなわち気体が充填された状態にある図1に示されるコネクタ装置を示す横断面図である。
【図3】図3は、図1及び図2に示される第1の逆止弁及び第2の逆止弁を備える弁構成を示す詳細図である。
【図4】図4は、本発明に係るコネクタ装置に接続される穿刺部材保護装置に接続され且つ2つの容器の間の流体連通を確立するために第2の流体容器に接続された第1の流体容器の各部品を示す図である。
【図5a】図5a及び図5bは、収縮状態及び膨張状態にある伸縮性ブラダをそれぞれ斜視図で示す図1〜図4に示されるコネクタ装置の図である。
【図5b】図5a及び図5bは、収縮状態及び膨張状態にある伸縮性ブラダをそれぞれ斜視図で示す図1〜図4に示されるコネクタ装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る第1の容器と第2の容器との間の流体連通を確立するコネクタ装置10を横断面図により示す。コネクタ装置10はハウジング11を有し、ハウジング11の内部に第1の接続手段12及び第2の接続手段13が配置される。第1の接続手段12は実質的にネック要素14により形成され、ネック要素14には第1の案内溝15及び第2の案内溝16が配置される。コネクタ装置10への堅固な装着を実現するために、第1の案内溝15及び第2の案内溝16は、例えば図4に示されるように第1の流体容器に対して配置される穿刺部材保護装置の対応する案内突起を案内するように配置される。コネクタ装置10への装着後、流体連通を確立可能である。第1の接続手段12はハウジング11と一体に形成される。コネクタ装置10で使用可能な接続手段12の種類の1つは、穿刺部材保護装置及びそれに接続される適切な第1の流体容器を更に開示する米国特許出願公開第6,715,520B2号に開示される。
【0022】
第2の接続手段13は、第1の接続手段12に関してコネクタ装置10のハウジング11の実質的に反対側の端部に配置され且つ複数の係合フック要素20を備える。各フック要素20は、先端部22及び基部23を有する可撓性トング21を備える。図4に更に詳細に示されるように、基部は、第2の容器の対応するフランジと係合するように配置されたフック突起24を有する。適切なフック要素20及びフック要素20に対応するネック要素の形の結合構成の一例は、米国特許第6,715,520B2号公報に開示される。
【0023】
流体移送流路30は、実質的に第1の接続手段12と第2の接続手段13との間に延出する。流体移送流路30の目的は、例えばコネクタ装置10のハウジング11に針を貫通させ、それにより、コネクタ装置10を通して流体を搬送させることである。流体移送流路は、第1の端部31及び第2の端部32を含む長手方向を有する。第1の接続手段12に近接して流体移送流路30の第1の端部31に穿刺可能な隔壁部材40が配置される。漏れを最小限に抑えることにより、ユーザが有害な薬剤にさらされる危険を最小限に抑えるために、穿刺可能な隔壁部材40は流体移送中に穿刺部材と穿刺可能な隔壁部材40との間に液密且つ気密のシールを形成する。
【0024】
穿刺部材50はハウジング11から突出している。穿刺部材50は先端部51及び基部52を有する。本実施形態において、流体移送流路30は穿刺部材50の内側を通る。穿刺部材50の先端部51は穿刺可能な隔壁部材40に近接して配置され且つハウジング11の支持壁構造41により支持される。穿刺部材50は複数のフック要素20と実質的に平行な方向に延出し且つ図3に更に詳細に示されるように組み立て中に第2の流体容器に穴をあけるために使用される。流体移送流路30の第2の端部32は、わずかに長く延出する穿刺用尖端53を除いて実質的に穿刺部材50の先端部52に位置している。
【0025】
圧力正規化流路60は、穿刺部材50の先端部52から穿刺部材50の内側の流体移送流路30と実質的に平行に延出する。圧力正規化流路60は、実質的にハウジング11の支持壁構造41の場所で流体移送流路30に対して垂直な方向に向きを変える。圧力正規化流路60は、穿刺部材50の実質的に先端部52に配置された入口開口61及び出口開口62を有する。更に、出口開口62は、伸縮性ブラダ64を有する放物面形円盤63の実質的に中心に配置される。図1において、伸縮性ブラダ64は収縮状態にある。
【0026】
図2は、図1に示されるコネクタ装置10を示すが、伸縮性ブラダ64が膨張状態にある点が図1とは異なっている。図2を参照すると、図1及び図2からわかるように、圧力正規化流路60は、圧力正規化流路60の出口開口62を覆うように配置された隔壁フィルタ70を備える。隔壁フィルタ70は、伸縮性ブラダ64並びに放物面形円盤63及び伸縮性ブラダ64により規定されるボリュームに流体が到達するのを防止するために使用される。隔壁フィルタ70は、気体は通すが液体の透過は阻止する疎水性フィルタであるのが好ましい。隔壁フィルタ70のようなフィルタは既に知られているので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0027】
圧力正規化流路60の流体流れと交差するような位置に弁構成80が配置される。図1及び図2に示されるように、本発明に係る一実施形態において、弁構成80は圧力正規化流路60の出口開口62に近接して配置される。弁構成80の主な目的は、圧力正規化流路60の入口開口61から出口開口62に向かう方向に流れる流体に対して弁構成80にクラッキング圧力を加えることにより隔壁フィルタ70の目詰まりを防止することであるが、それとは逆の方向のクラッキング圧力は最小限に抑えられるのが好ましい。
【0028】
図3は、コネクタ装置10の一部を更に詳細に示す。特に、図3は、圧力正規化流路60の一部、圧力正規化流路60の出口開口62、支持壁構造41の一部、放物面形円盤63の一部、伸縮性ブラダ64の一部、隔壁フィルタ70及び弁構成80を示す。図示される実施形態において、本発明によれば、弁構成80は第1の逆止弁81及び第2の逆止弁82を備える。尚、弁構成80は、別個の構成要素として圧力正規化流路60の内側に隙間なく嵌合するように位置決めされる。この構成は製造上の理由により採用されるのであるが、弁構成80、第1の逆止弁81及び第2の逆止弁82がハウジング11の一体の部品であることも可能である。
【0029】
弁構成80は、長手方向中心線A及び横方向中心線Bを有する実質的に円筒形のハウジング83を備える。円筒形ハウジング83は第1の端部84及び第2の端部85並びに内面86及び外面87を有する。円筒形ハウジング83の外面87と圧力正規化流路60の内面65との間に液密且つ気密のシールを形成するために、円筒形ハウジング83の外面87は圧力正規化流路60の内面65に向かい合うように位置決めされる。円筒形ハウジング83の外面87にはわずかな傾斜面88が更に形成され、この傾斜面88は、少なくとも円筒形ハウジング83の第1の端部84が実質的に楔のような形状になるように円筒形ハウジング83の長手方向中心線Aに向かって傾斜している。圧力正規化流路60の内面65も、実質的に漏斗のような形状を呈し且つ円筒形ハウジング83の傾斜面88を受け入れるように円筒形ハウジング83の長手方向中心線Aに向かう方向に傾斜している。これらの傾斜面は、弁構成80を圧力正規化流路60に堅固に装着する上で有効である。円筒形ハウジング83は、円筒形ハウジング83の内面86から長手方向中心線Aに向かって延出する中央壁89を更に備える。第2の逆止弁82が第2の逆止弁82を通って入口開口61から出口開口62に向かう方向に流れる流体を阻止し、その一方で第1の逆止弁81が第1の逆止弁81を通って出口開口62から入口開口61に向かう方向に流れる流体を阻止するように、第1の逆止弁81及び第2の逆止弁82は互いに逆方向に中央壁89に装着される。
【0030】
円筒形ハウジング83の内面86を圧力正規化流路60の内側と整列させることにより、それらの間に滑らかな遷移を実現するように、圧力正規化流路60の内面65には円筒形ハウジング83を受け入れるための凹部66が更に形成されてもよい。
【0031】
第1の逆止弁81及び第2の逆止弁82は従来のどのような種類の逆止弁であってもよいが、いくつかの好適な弁の例を挙げる。例えば、第1の逆止弁81及び第2の逆止弁82は、流れを阻止するための可動部品である弁体が球であるボール逆止弁であってもよい。ボールを閉鎖状態に保持するのを助けるために、ボールにばねが装荷されてもよい。ボールにばねが装荷されない場合、ボールを弁座に向かって移動し且つシールを形成するために逆方向流れが必要とされる。ボールを弁座の中へ案内し且つ逆方向流れを停止した場合に確実なシールを形成するために、ボール逆止弁の主弁座の内面はほぼ円錐形にテーパされている。ボールの代わりに、ばねにより付勢されたポペットが必要に応じて使用されてもよい。
【0032】
第1の逆止弁81及び第2の逆止弁82は必要に応じてダイアフラム逆止弁であってもよい。そのような逆止弁は、常時締め切り弁を形成するように配置された可撓性ゴムダイアフラムを使用する。逆止弁を開放して流体を流すために、上流側で加えられる圧力は下流側の圧力よりある特定の量だけ大きくなければならず、これは圧力差として知られている。正圧が停止すると、ダイアフラムは撓み、自動的に当初の閉鎖位置に戻る。
【0033】
スウィング逆止弁がオプションとして使用されてもよい。スウィング逆止弁は、流れを阻止するための可動部品である弁体がヒンジ又はトラニオンに関して揺動することにより逆方向流れを阻止するために弁座に乗り上げるか又は順方向流れを可能にするために弁座から離間するかのいずれかであるバタフライ形逆止弁である。弁座開口の横断面は2つのポートの間で中心線に対して垂直であってもよいが、斜めであってもよい。ヒンジ留めゲートを有するクラッパー弁がオプションとして使用されてもよいが、その場合、ゲートを閉鎖させるための偏向ばねを有するのが好ましい。リフト逆止弁がオプションとして使用されてもよい。上記の逆止弁の組み合わせも可能であることは言うまでもない。
【0034】
第1の逆止弁81及び第2の逆止弁82の代わりに、少なくとも1つのスリットを有する膜が必要に応じて使用されてもよい。しかし、本実施形態は上記の例ほど好ましくはない。
【0035】
図4を参照して、本発明に係るコネクタ装置10の機能及び利点を更に詳細に説明する。図4は、図1〜図3に示されるコネクタ装置10を示す。図からわかるように、コネクタ装置10は、例えば注射器などの第1の流体容器1に接続可能である穿刺部材保護装置5に第1の接続手段11を介して組み付けられ且つ第2の接続手段12を介して第2の流体容器2と結合される。コネクタ装置10が第2の流体容器2と結合されることにより、穿刺部材50の先端部52、特に穿刺用尖端53は、第2の流体容器2の開口を覆うように配置された隔膜3を貫通する。フック突起24を有する可撓性トング21が第2の流体容器2の対応するフランジ4と係合するので、フック要素20はコネクタ装置10を固定接続する。組み立て後、ユーザは第2の容器2に流体を注入するか又はオプションとして流体を吸引することができる。
【0036】
穿刺部材保護装置5を使用して、第2の流体容器2に流体が注入されるにつれて、第2の流体容器2内部に超過圧が発生する。通常の状況では、圧力正規化流路60は、第2の流体容器2内部の圧力を伸縮性ブラダ64(図2には膨張状態のブラダが示される)に開放することにより第2の流体容器2内部の圧力を直接正規化する。本発明に係るコネクタ装置10を使用する場合、第1の逆止弁81は図示される実施形態では約0.04atmのクラッキング圧力を有する。第1の逆止弁81のクラッキング圧力が小さく且つ圧力正規化流路60の容積が本発明に係る本実施形態においては<1mlと相対的に小さいので、圧力正規化流路60の入口開口61と第1の逆止弁81との間に相対的に高い対向圧力が急速に発生される。相対的に高い対向圧力は、隔壁フィルタ70に到達する薬剤の量を効率よく減少させ、それにより隔壁フィルタ70の目詰まりの危険を著しく低減する。しかし、それと同時に、第1の逆止弁81のクラッキング圧力はユーザに不便を感じさせるほど低くはない。
【0037】
例えばユーザが第2の流体容器2から流体を吸引する場合などに伸縮性ブラダ64からの気体の抜き取りを可能な限り簡単に実行可能であるように、第2の逆止弁82は低いクラッキング圧力を有するのが好ましい。
【0038】
第1の逆止弁81及び第2の逆止弁82の使用により、各逆止弁81、82のクラッキング圧力を用途別に設定可能であるので、特定のコネクタ装置に使用される圧力正規化流路の大きさに関わらず、あらゆるコネクタ装置に適応可能な融通性に優れた弁構成80を提供できる。
【0039】
本発明に係る一実施形態において、圧力正規化流路は2つの個別の流路を含んでもよく、その場合、第1の逆止弁81は一方の流路に配置され且つ第2の逆止弁82は別の流路に配置される。2つの個別の流路は共通の入口開口及び出口開口を有してもよい。
【0040】
図5a及び図5bは、図1〜図4に示されるコネクタ装置を示す。図5aは膨張前の伸縮性ブラダ64を示し、図5bは、膨張後、すなわち気体を充填された後の伸縮性ブラダを示す。更に、図示されるように、第1の接続手段12及び第2の接続手段13はコネクタ装置10のハウジング11の一体の部品として形成される。フック要素20は、可撓性トング21と、流体移送流路30及び圧力正規化流路60の双方が通っている穿刺部材50とを有する。圧力正規化流路60は、伸縮性ブラダ64及び第2の接続手段13によってコネクタ装置10に接続された流体容器により規定されるボリュームと連通している。
【実施例】
【0041】
理論に制約されることなく、本発明の効果をどのように評価するかを示す非限定的実施例を以下に説明する。この非限定的実施例は図4に示されるような構体を使用する。
【0042】
第2の流体容器2は120mlの総容積(Vtot)を有するが、100mlの細胞毒性液体(Vl)のみが充填されている。
【0043】
第2の流体容器2から30mlが吸引されるべきであるが、実際には32mlの液体が吸引されるので、第2の流体容器2内部には52mlの気体が残留する。あるいは、注射器内に少々の気泡が吸引されるので、例えば0.5mlの空気が注射器内部にあり且つ第2の流体容器2内部に51.5mlが残る。
【0044】
圧力正規化流路60の容積はVpnc=1mlであると仮定する。従って、システム内部の気体の総体積は53mlである。吸引が開始されると、圧力正規化流路60の入口開口61の周囲の圧力(Ppnc opening)は次のようになる。
大気圧(Patm)+液柱からの圧力(Plc
この場合、液柱の高さは約50mmであると仮定する(第2の流体容器の直径が異なれば、液柱の高さも異なる)。従って、
atm+Plc=Ppnc opening
1atm+0,005atm=1,005atm
2mlの流体、すなわち液体及び/又は気体が第2の流体容器2の中へ引き戻された場合、
pnc opening=1,005・(53ml/51ml)=1,044atm
約0.05atmのクラッキング圧力を有する第1の逆止弁81を含む逆止弁構成80が配置されているので、第1の逆止弁81のクラッキング圧力には達しない。従って、加えられる圧力によって第1の逆止弁が開放されることはない。
【0045】
従って、圧力正規化流路60に浸入する流体の量は、
1-(1・1,005/1,044)=0,037ml
本実施例において、圧力正規化流路60に浸入する液体はわずか約0.04mlであるが、2mlもの液体が第2の流体容器に再注入されている。圧力正規化流路60に浸入する液体の量が少ないので、隔壁フィルタを目詰まりさせる危険は相当に低減される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の流体容器(1)と第2の流体容器(2)とを接続することにより流体連通を確立するコネクタ装置(10)であって、
ハウジング(11)を備え、
前記ハウジング(11)は、
穿刺可能な隔壁部材(40)を有し、前記第1の流体容器(1)を前記ハウジング(11)に接続するための第1の接続手段(12)と、
前記第2の流体容器(2)を接続するための第2の接続手段(13)と、を備え、
組み立て後に前記第1の流体容器(1)と前記第2の流体容器(2)との間の流体移送を可能とする流体移送流路(30)を備え、
前記ハウジング(11)は、前記流体移送中に前記第2の流体容器内の圧力を正規化するように構成された少なくとも1つの圧力正規化流路(60)を更に備え、
前記少なくとも1つの圧力正規化流路(60)は、出口開口(62)と、入口開口(61)と、隔壁フィルタ(70)と、少なくとも1つの弁構成(80)と、を有し、
前記少なくとも1つの弁構成(80)は、第1の方向及び第2の方向に流体を流通させるように構成され、
前記第1の方向は、前記入口開口(61)から前記出口開口(62)に向かう方向であり、
前記第2の方向は前記出口開口(62)から前記入口開口(61)に向かう方向であり、
前記少なくとも1つの弁構成(80)は、少なくとも前記第1の方向についてクラッキング圧力を有することとを特徴とするコネクタ装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの弁構成(80)は、互いに実質的に逆方向に配置された第1の逆止弁(81)及び第2の逆止弁(82)を備えることを特徴とする請求項1記載のコネクタ装置。
【請求項3】
前記第1の逆止弁(81)及び前記第2の逆止弁(82)は、互いに実質的に平行に配置されることを特徴とする請求項2記載のコネクタ装置。
【請求項4】
前記第1の逆止弁(81)の前記クラッキング圧力は、少なくとも0.04atmであることを特徴とする請求項2又は3記載のコネクタ装置。
【請求項5】
前記第1の逆止弁(81)の前記クラッキング圧力は、0.04〜0.5atmであることを特徴とする請求項4記載のコネクタ装置。
【請求項6】
前記第2の逆止弁(82)は、前記第2の方向についてクラッキング圧力を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のコネクタ装置。
【請求項7】
前記第2の逆止弁(82)の前記クラッキング圧力は、0.02〜0.5atmであることを特徴とする請求項6記載のコネクタ装置。
【請求項8】
前記ハウジング(11)は、第1及び第2の圧力正規化流路を備え、
前記第1の逆止弁(81)は、前記第1の圧力正規化流路に配置され、
前記第2の逆止弁(82)は、前記第2の圧力正規化流路に配置されることとを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のコネクタ装置。
【請求項9】
前記第1の圧力正規化流路及び前記第2の圧力正規化流路は共通の入口開口及び出口開口を有することを特徴とする請求項8記載のコネクタ装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの弁は、少なくとも1つのスリットを有する膜を備えることを特徴とする請求項1記載のコネクタ装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの圧力正規化流路(60)の前記出口開口(62)に前記少なくとも1つの圧力正規化流路(60)と連通するように伸縮性ブラダ(64)が配置されることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載のコネクタ装置。
【請求項12】
前記第1の逆止弁(81)と前記圧力正規化流路(60)の前記入口開口(61)との間の前記圧力正規化流路の容積は、1ml未満、好ましくは0.01ml〜0.9mlであることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載のコネクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【公表番号】特表2012−511940(P2012−511940A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539906(P2011−539906)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2008/067522
【国際公開番号】WO2010/069359
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(503032865)カルメル ファーマ アーベー (1)
【Fターム(参考)】