コネクタ
【課題】本発明は、一対の端子同士の電気的な接続を確実にすると共に、端子の挿入力が低減されたコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ12は、屈曲部30において屈曲された折り返し形状をなす弾性部材28と、屈曲部30の内部に配された第1端子10及び第2端子12と、弾性部材28のうち屈曲部30と反対側に位置する一対の端部31,31のうち少なくとも一方の端部31に対して屈曲部30が狭まる方向の力を加える押圧部材34と、を備える。屈曲部30の内面によって第1端子10及び第2端子12が互いに押し付けられことにより、第1端子10と第2端子12の電気的が接続が確実になされる。
【解決手段】コネクタ12は、屈曲部30において屈曲された折り返し形状をなす弾性部材28と、屈曲部30の内部に配された第1端子10及び第2端子12と、弾性部材28のうち屈曲部30と反対側に位置する一対の端部31,31のうち少なくとも一方の端部31に対して屈曲部30が狭まる方向の力を加える押圧部材34と、を備える。屈曲部30の内面によって第1端子10及び第2端子12が互いに押し付けられことにより、第1端子10と第2端子12の電気的が接続が確実になされる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の雄端子を電気的に接続する構成として、特許文献1に記載のものが知られている。このものは中継端子であって、一対の雄端子を相対面する方向から接続できる一対の雌端子が屈曲バネ部を介して連結されている。
【0003】
雌端子は弾性接触片が収容された筒部を有する。雄端子が筒部内に挿入されると、雄端子は、筒部と弾性接触片との間に入り込む。すると、雄端子は、筒部の内壁と弾性接触片との間を拡開させつつ、弾性接触片を弾性変形させながら弾性接触片と摺接する。この弾性接触片の弾発力により、雄端子は、筒部の内壁と弾性接触片との間に挟み付けられる。これにより、雄端子と雌端子とが電気的に接続される。
【0004】
一対の雄端子と、一対の雌端子とがそれぞれ接続されると、一対の雄端子が中継端子を介して電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−50435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の構成において、雄端子と雌端子との電気的な接続を確実にするためには、例えば、雄端子に対する弾性接触片の接圧を大きくすることが考えられる。これにより、筒部の内壁に対して雄端子を強く押圧することができるから、雄端子と雌端子との電気的な接続を確実にすることが期待された。
【0007】
しかしながら上記の構成によると、雄端子が弾性接触片を弾性変形させる際に、雄端子と弾性接触片との間の摩擦抵抗も大きくなってしまう。すると、雄端子を筒部内に挿入する際の挿入力が大きくなるため、雄端子と雌端子の接続作業の効率が低下することが懸念される。
【0008】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、一対の端子同士の電気的な接続を確実にすると共に、端子の挿入力が低減されたコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、コネクタであって、屈曲部において屈曲された折り返し形状をなす弾性部材と、前記屈曲部の内部に配された一対の端子と、前記弾性部材のうち前記屈曲部と反対側に位置する一対の端部のうち少なくとも一方の端部に対して前記屈曲部が狭まる方向の力を加える押圧部材と、を備える。
【0010】
本発明によれば、以下のようにして一対の端子を電気的に接続できる。すなわち、まず、屈曲部の内部に一対の端子を挿入する。この状態では、屈曲部は押圧部によって押圧されていないので、端子を屈曲部の内部に配する際に、大きな挿入力は必要とされない。
【0011】
続いて、弾性部材のうち屈曲部と反対側に位置する端部に対して、屈曲部が狭まる方向の力を加える。すると、弾性部材は屈曲部を支点として屈曲部が狭まる方向に弾性変形する。これにより、屈曲部の内部に配された一対の端子は、屈曲部の内面によって押圧される。このとき、弾性部材の端部が力点とされ、屈曲部が支点とされ、屈曲部のうち端子と接触する部分が作用点とされる、てこが形成される。このてこにより、弾性部材の端部に加えられた力よりも大きな力が、作用点である屈曲部の内面から端子に加えられる。これにより、一対の端子が屈曲部の内面によって互いに押し付けられるので、一対の端子同士の電気的な接続を確実にすることができる。
【0012】
このように本発明によれば、まず、一対の端子を屈曲部内に配する際の挿入力を低減させることができる。また、てこの作用により、弾性部材の端部に対して押圧部材を介して比較的に小さな力を加えることで、一対の端子同士の電気的な接続を確実にすることができる。
【0013】
本発明の実施態様としては以下の態様が好ましい。
前記押圧部材はリング状をなしており、前記弾性部材が前記弾性部材の一対の端部に外嵌された状態において前記押圧部材の内面が前記弾性部材の一対の端部の外面を外方から押圧することが好ましい。
【0014】
上記の態様によれば、リング状をなす押圧部材を弾性部材の一対の端部に外嵌すると、リングの内面が弾性部材の一対の端部の外面を外方から押圧することにより、屈曲部が狭まる方向に押圧される。このように、本態様によれば、リング状をなす押圧部材を弾性部材の一対の端部に外嵌するという簡易な手法により、一対の端子同士を電気的に接続することができる。
【0015】
前記端子及び前記弾性部材はハウジング内に収容されており、前記ハウジングには、前記押圧部材を保持するホルダが、前記押圧部材が前記弾性部材の一対の端部の少なくとも一方を押圧する押圧位置と、前記押圧部材が前記弾性部材の一対の端部の少なくとも一方から離間する離間位置と、の間を移動可能に収容されていることが好ましい。
【0016】
上記の態様によれば、ホルダを、離間位置から押圧位置に移動させるという簡易な手法により押圧部材によって弾性部材の一対の端部の少なくとも一方を押圧することができる。これにより、一対の端子を電気的に接続することができる。
【0017】
前記ハウジングと前記ホルダとの間に、前記ホルダを前記離間位置から前記押圧位置に移動させる倍力装置を備えることが好ましい。
【0018】
上記の態様によれば、倍力装置によってホルダを押圧位置に移動させることができるので、ホルダを離間位置から押圧位置に移動させるために必要とされる力を小さくすることができる。
【0019】
前記倍力装置は、前記ハウジング及び前記ホルダの一方に回転可能に保持されたボルトと、前記ハウジング及び前記ホルダの他方に回転不能に保持されると共に前記ボルトに螺合されるナットと、を備えることが好ましい。
【0020】
上記の態様によれば、ホルダを押圧位置に移動させるためには、ボルトをナットに締め込めばよい。これにより、ホルダを離間位置から押圧位置に移動させるための力を更に小さくすることができる。このように本態様によれば、ボルトとナットという簡易な構成によってホルダを離間位置から押圧位置に移動させることができる。
【0021】
前記弾性部材は金属製の板ばねからなることが好ましい。
【0022】
上記の態様によれば、弾性部材の強度が向上するので、端子に対して比較的に大きな押圧力を加えることができる。これにより、一対の端子同士の電気的な接続を確実なものとすることができる。
【0023】
前記弾性部材の端部のうち前記押圧部材と対向する部分、及び前記押圧部材のうち前記弾性部材の端部と対向する部分の一方には、他方に向かって突出する凸部が形成されていることが好ましい。
【0024】
上記の態様によれば、弾性部材の一対の端部の少なくとも一方を押圧部材が押圧すると、押圧部材に凸部が形成されている場合には、この凸部によって弾性部材が確実に押圧される。また、弾性部材に凸部が形成されている場合には、この凸部は押圧部材によって確実に押圧されるので、やはり弾性部材は確実に押圧される。このように弾性部材が確実に押圧されるので、一対の端子同士の電気的な接続を確実なものとすることができる。
【0025】
前記屈曲部の内面には、内方に突出する端子押圧凸部が形成されていることが好ましい。
【0026】
上記の態様によれば、一対の端子は端子押圧凸部に押圧されることにより、互いに強く押圧される。これにより、一対の端子同士の電気的な接続を確実なものとすることができる。
【0027】
コネクタは、前記一対の端子を複数組備え、前記弾性部材を複数備え、複数の押圧部材を備えることが好ましい。
【0028】
複数組の端子を備えた多極コネクタにおいては、端子の挿入力を低減させることは特に有効である。上記の態様によれば、多極コネクタにおいて、端子の挿入力を低減させることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、コネクタにおいて、一対の端子同士の電気的な接続を確実にすると共に、端子の挿入力を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係るコネクタを示す一部切欠正面図
【図2】ケースを示す斜視図
【図3】第1端子及び端子台を示す正面図
【図4】第2端子を示す斜視図
【図5】コネクタがケースに載置された状態を示す平面図
【図6】コネクタを示す正面図
【図7】ホルダが離間位置に配された状態を示す断面図
【図8】ホルダが離間位置に配された状態を示す一部拡大断面図
【図9】ホルダが押圧位置に配された状態を示す一部拡大断面図
【図10】離間位置における第1端子、第2端子、弾性部材、及び押圧部材を示す斜視図
【図11】離間位置における第1端子、第2端子、弾性部材、及び押圧部材を示す側面図
【図12】離間位置において第1端子及び第2端子が屈曲部内に配された状態を示す平面図
【図13】押圧位置における第1端子、第2端子、弾性部材、及び押圧部材を示す斜視図
【図14】押圧位置における第1端子、第2端子、弾性部材、及び押圧部材を示す側面図
【図15】押圧位置における第1端子、第2端子、弾性部材、及び押圧部材を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0031】
<実施形態>
本発明の一実施形態を、図1ないし図11を参照しつつ説明する。本実施形態は、第1端子10と第2端子11とを接続するコネクタ12である。以下の説明においては、図1に上方を上方とし、下方を下方として説明する。また、図1における左方を左方とし、右方を右方として説明する。また、図7における下方を前方とし、上方を後方として説明する。
【0032】
(全体構成)
本実施形態に係るコネクタ12は、金属製のケース13内に収容された機器(図示せず)に接続された第1端子10と、上記の機器とは異なる電気部品(バスバー、ワイヤーハーネス等)に接続された第2端子11と、を接続する。ケース13は合成樹脂等、必要に応じて任意の材料で形成できる。ケース13の構成については、底壁及び側壁を除いて省略されている。
【0033】
図3に示すように、合成樹脂製の端子台14には複数(本実施形態では6つ)の第1端子10が保持されている。端子台14には上方に突出する2つの第1端子保持部15が形成されている。1つの第1端子保持部15には3つの第1端子10が上方に突出すると共に左右方向に並んで配されている。第1端子10は、ねじ止め、モールド成形、保持部に形成されたランスが第1端子10に形成された係合孔に係合する等、公知の手法により第1端子保持部15に保持されている。
【0034】
第1端子10は金属板材を所定の形状にプレス加工してなる。第1端子10は、銅、銅合金等、必要に応じて任意の金属板材を用いることができる。第1端子10の表面にはスズ、ニッケル等、必要に応じて任意の金属によってメッキされていてもよい。
【0035】
図2に示すように、ケース13の底壁には上記した第1端子保持部15が挿通される略長方形状をなす開口部16が、左右方向に2つ並んで形成されている。ケース13の底壁には、コネクタ12が取り付けられる取り付け孔17が2つ形成されている。また、ケース13の側壁には、後述するボルト18が挿通されるボルト挿通孔19が、側壁を貫通して形成されている。
【0036】
図4に示すように、第2端子11は金属板材を所定の形状にプレス加工してなる。第2端子11は、銅、銅合金等、必要に応じて任意の金属板材を用いることができる。第2端子11の表面にはスズ、ニッケル等、必要に応じて任意の金属によってメッキされていてもよい。
【0037】
第2端子11の上端部には、接続ボルト20が挿通される接続ボルト挿通孔21が形成された接続ボルト取り付け部22が設けられている。第2端子11は、接続ボルト取り付け部22から下方の部分において屈曲された後に、下方に延びて形成されている。
【0038】
図1に示すように、複数(本実施形態では6つ)の第2端子11は第2端子保持部23に保持されている。本実施形態においては、第2端子保持部23内には第2端子11に通電される電流を測定する電流センサ(図示せず)が収容されている。
【0039】
(コネクタ12)
図5に示すように、コネクタ12は合成樹脂製のハウジング24を有する。ハウジング24は略直方体形状をなしている。ハウジング24の左右両端部にはケース13にねじ止めするための取り付け部25が張り出して形成されている。コネクタ12は、取り付けボルト26を取り付け部25に貫通させてケース13の取り付け孔17に螺合させることにより、ケース13に取り付けられる。
【0040】
ハウジング24の上面には、第2端子11が貫通される第2端子貫通孔27が、左右方向に間隔を空けて複数(本実施形態では6つ)並んで形成されている。また、詳細には図示しないが、ハウジング24の下面には、第1端子10が貫通される第1端子貫通孔(図示せず)が左右方向に間隔を空けて複数(本実施形態では6つ)並んで形成されている。
【0041】
図7に示すように、ハウジング24には、複数(本実施形態では6つ)の弾性部材28が収容されている。ハウジング24の前面には合成樹脂製のカバー29が取り付けられており、このカバー29によって弾性部材28の前方への抜け止めがなされている。
【0042】
(弾性部材28)
弾性部材28は弾性変形可能な材料からなる。本実施形態に係る弾性部材28は金属板材を所定の形状のプレス加工してなる。弾性部材28は、ステンレス鋼、銅、銅合金等、必要に応じて任意の金属によって形成される。本実施形態に係る弾性部材28はステンレス鋼からなる。
【0043】
弾性部材28は細長い金属板材を屈曲部30において折り返し形状をなしている。弾性部材28は、屈曲部30を前側にし、屈曲部30と反対側に位置する一対の端部31,31が後ろ側にして、ハウジング24内に収容されている。
【0044】
左右方向における屈曲部30の内壁間の間隔は、左右方向における一対の端部31,31の間隔よりも広く形成されている。屈曲部30の内部は、第1端子10及び第2端子11が上下方向からそれぞれ挿通されるようになっている。第1端子10及び第2端子11は、板面を左右方向に向けた姿勢で、屈曲部30の内部に重ねられた状態で配されている。
【0045】
屈曲部30の内面には、内方に向かって突出する端子押圧凸部32が形成されている。端子押圧凸部32は、第2端子11の一対の端部31,31の少なくとも一方に対して屈曲部30が狭まる方向の力が加えられた時に、第1端子10又は第2端子11を左右方向の外方から押圧するようになっている。
【0046】
(ホルダ33)
ハウジング24の後端部には、弾性部材28の一対の端部31,31の少なくとも一方を、屈曲部30が狭まる方向に押圧する複数(本実施形態では6つ)の押圧部材34を保持する合成樹脂製のホルダ33が収容されている。押圧部材34は金属製であって、断面形状が長円形状をなすリング状をなしている。ホルダ33は左右方向に細長い形状をなしており、押圧部材34はホルダ33内に左右方向に間隔を空けて並んで収容されている。各押圧部材34は、前後方向に開口する姿勢でホルダ33内に保持されている。
【0047】
弾性部材28の一対の端部31,31には、左右方向の外側面に、左右方向の外方に突出する凸部35が形成されている。凸部35は左右方向から見て円形状をなしている。凸部35の外面は弧状をなす曲面にて形成されている。この凸部35は、押圧部材34が弾性部材28の一対の端部31,31に外嵌された状態で、押圧部材34の内面によって左右方向の外方から押圧されるようになっている。
【0048】
ホルダ33は、押圧部材34が弾性部材28の一対の端部31,31に外嵌される押圧位置と、押圧部材34が弾性部材28の一対の端部31,31から離間した離間位置と、の間で前後方向に移動可能になっている。
【0049】
ホルダ33の左右両端部には、前方に突出すると共に弾性変形可能な弾性片36が形成されている。弾性片36の前端には、左右方向の外方に突出する係止爪37が形成されている。
【0050】
ハウジング24の左右両側壁の内面には、ホルダ33の係止爪37と係合する係止凹部38が形成されている。ホルダ33の係止爪37が係止凹部38に係合すると、ホルダ33は離間位置に保持されるようになっている。また、ハウジング24の左右両側壁の内面には、係止凹部38よりも前方の位置に、前方に延びる段差部39が陥没して形成されている。ホルダ33の係止爪37が段差部39に位置すると、ホルダ33は離間位置から押圧位置に移動可能になるようになっている。
【0051】
(倍力装置40)
ハウジング24とホルダ33との間には、ホルダ33を離間位置から押圧位置に移動させる倍力装置40が設けられている。倍力装置40は、ハウジング24に回転可能に保持されたボルト18と、ホルダ33に回転不能に保持されると共にボルト18に螺合されるナット41と、を備える。
【0052】
ボルト18には、ボルト18の頭部寄りの位置に形成されると共にねじ山が形成されたねじ部42と、ねじ部42よりも先端寄りの位置に形成されたねじ部42よりも径小に形成された径小部43と、を備える。径小部43にはねじ山は形成されていない。
【0053】
ボルト18は、ケース13のボルト挿通孔19内に挿通されるようになっている。ボルト18の頭部とケース13の側壁との間には、ボルト18のねじ部42に外嵌されたワッシャ44が介在されている。
【0054】
ケース13の側壁とハウジング24との間には、ボルト18のねじ山に外嵌された金属製のCリング45Aが介在されている。
【0055】
ハウジング24には、ハウジング24を前後方向に貫通する金属製のカラー46が配されている。カラー46は筒状をなしており、カラー46の内部にはボルト18のねじ部42が挿通されるようになっている。カラー46の内径寸法は、ねじ部42の外径寸法(ねじ山の先端間の直径寸法)よりもやや大きく形成されている。
【0056】
ホルダ33内には、ナット収容部47が形成されており、このナット収容部47内に、ナット41が回転不能に収容されている。本実施形態においては、ナット41は四角形状をなした、いわゆる四角ナット41が用いられている。このナット41には、ボルト18のねじ部42又は径小部43が挿通されるようになっている。径小部43の外径寸法は、ナット41の内径寸法(ナット41のねじ山の先端間の直径寸法)よりも小さく設定されている。
【0057】
ボルト18の径小部43のうち、ナット41を貫通してナット41の後方に突出する部分には、コイルばね48が外嵌されている。コイルばね48の後端は、径小部43の後端部に外嵌されたCリング45Bに、前方から当接している。また、コイルばね48の前端は、ナット41に後方から当接している。このコイルばね48によって、ナット41は前方に付勢されるようになっている。
【0058】
(接続構造)
続いて、第1端子10、第2端子11、及び弾性部材28の接続構造について、詳細に説明する。図10及び図11には、第1端子10、第2端子11、弾性部材28、及び押圧部材34のみを拡大して示す。第1端子10は弾性部材28の屈曲部30内に、下方(図10及び図11における矢線Aで示す方向)から挿入される。また、第2端子11は弾性部材28の屈曲部30内に上方(図10及び図11における矢線Bで示す方向)から挿入される。
【0059】
また、押圧部材34は、図10及び図11の矢線Cで示すように、弾性部材28の一対の端部31,31に対して、外嵌可能であり、且つ、離脱可能になっている。
【0060】
図12に、弾性部材28の屈曲部30内に第1端子10及び第2端子11が挿入された状態を示す。第1端子10と第2端子11は、互いに重ねられた状態で、弾性部材28の屈曲部30内に挿入されて配されている。屈曲部30の前後方向(図12における上下方向)の長さ寸法は、第1端子10及び第2端子11の前後方向の幅寸法と同じか、やや大きく設定されている。屈曲部30内に形成された端子押圧凸部32の先端の間隔は、第1端子10と第2端子11とが重ねられた状態の左右方向(図12における左右方向)の厚さ寸法と同じか、やや広く設定されている。屈曲部30内に形成された端子押圧凸部32の先端は、第1端子10又は第2端子11の外面に当接していてもよく、また、離間していてもよい。
【0061】
次に、図13ないし図15に、弾性部材28の一対の端部31,31にリング状をなす押圧部材34が外嵌された状態を示す。図13及び図14に示すように、リング状をなす押圧部材34は、弾性部材28の一対の端部31,31に外嵌されて、凸部35の外面を内方に押圧している。
【0062】
図15に示すように、押圧部材34が弾性部材28の一対の端部31,31に外嵌されることにより、弾性部材28の一対の端部31,31は、互いの間隔が狭まる方向(図15における左右方向内方)に押圧される。すると、屈曲部30も内方に狭まるように変形する。これにより、屈曲部30の内面に形成された端子押圧凸部32は、第1端子10及び第2端子11の外面を押圧する。これにより、第1端子10と第2端子11は互いに押し付け合わされるようになっている。この結果、第1端子10と第2端子11との間に接触圧が加えられるので、第1端子10と第2端子11とが電気的に確実に接続されるようになっている。
【0063】
(組み付け工程)
続いて、本実施形態に係るコネクタ12の組み付け工程の一例について説明する。なお、コネクタ12の組み付け工程は以下の記載に限定されない。まず、コネクタ12を上方からケース13の底壁に載置する。続いて、取り付け部25に取り付けボルト26を貫通させて、この取り付けボルト26をケース13の取り付け孔17に螺合する。これによりコネクタ12がケース13に取り付けられる。このとき、ホルダ33は離間位置に保持しておく。
【0064】
続いて、ボルト18の軸部にワッシャ44を外嵌し、ケース13の側壁に形成されたボルト挿通孔19内に前方から挿通する。図7に示すように、ホルダ33が離間位置に保持されている状態では、ナット41内には、ボルト18の径小部43が挿通されるようになっており、ボルト18とナット41とが螺合しないようになっている。このとき、ケース13の側壁と、ハウジング24との間の位置において、Cリング45Aをボルト18のねじ部42に外嵌する。
【0065】
続いて、ボルト18の径小部43のうち、ナット41の後方から突出した部分にコイルばね48を外嵌させ、コイルばね48の後方の位置に、Cリング45Bを径小部43に外嵌させる。
【0066】
次に、第2端子11が挿通された第2端子保持部23を、第2端子11がハウジング24の上面から形成された第2端子11挿通孔内に挿通されるようにして、コネクタ12の上方から組み付ける。
【0067】
次に、第1端子10が保持された端子台14の第1端子保持部15の上方から、コネクタ12が取り付けられたケース13を組み付ける。このとき、ケース13の開口部16内に第1端子保持部15が下方から挿通されるようにする。これにより、第1端子10、コネクタ12、及び第2端子11が組み付けられる。
【0068】
(接続動作)
続いて、コネクタ12の接続動作について説明する。図7及び図8には、ハウジング24内においてホルダ33が離間位置に保持されている状態を示す。この状態においては、ホルダ33の弾性片36に形成された係止爪37は、ハウジング24の側壁に形成された係止凹部38内に位置している。係止爪37と係止凹部38とが係合することにより、ホルダ33が後方に移動することが規制されるようになっている。
【0069】
屈曲部30の内部には、第1端子10と第2端子11とが、その板面を左右方向に向けると共に互いに重ねられた姿勢で挿入されている。この状態では、屈曲部30の内部に形成された端子押圧凸部32の先端は、第1端子10又は第2端子11の外面に当接していてもよく、また、離間していてもよい。
【0070】
弾性部材28の一対の端部31,31と、押圧部材34とは前後方向について離間している。このため、弾性部材28には応力が加えられていない状態となっている。
【0071】
ホルダ33が離間位置に保持された状態から、ボルト18を締め込んでゆくと、ボルト18のねじ部42がナット41内に螺合する。すると、ボルト18とナット41との螺合により、ナット41が前方に移動する。すると、ナット41が収容されたホルダ33も前方に移動する。このとき、ホルダ33の弾性片36に形成された係止爪37は、係止凹部38を乗り越えて弾性変形する。更にボルト18を締め込むと、ホルダ33が前進し、係止爪37が段差部39内に移動し、弾性片36が復帰変形する。
【0072】
更にボルト18を締め込むで、ホルダ33を押圧位置にまで移動させると、ホルダ33に保持された押圧部材34が弾性部材28の一対の端部31,31に外嵌される。このとき、カラー46の後端部がナット41の前面に前方から当接することにより、ホルダ33が前止まりされる。
【0073】
押圧位置においては、押圧部材34の内面は、弾性部材28の一対の端部31,31に形成された凸部35を押圧する。これにより、弾性部材28は、てこの作用により、第1端子10及び第2端子11を押圧する。詳細に説明すると、弾性部材28は、屈曲部30が支点となり、凸部35が力点となり、端子押圧凸部32が作用点となる、てこを形成している。この結果、凸部35に加えられた力よりも大きな力によって、第1端子10及び第2端子11を押圧することができるようになっている。これにより、第1端子10と第2端子11との電気的な接続が確実になされる。
【0074】
(離間動作)
ホルダ33を再び離間位置に移動させる場合には、ボルト18を緩める。すると、ボルト18のねじ部42と螺合するナット41が後方に移動する。このナット41が収容されたホルダ33も後方に移動する。ホルダ33の弾性片36に形成された係止爪37は、ハウジング24の側壁に乗り上がり、弾性片36が弾性変形する。更にボルト18を緩めると、係止爪37が係止凹部38内に移動して弾性片36が復帰変形し、ホルダ33が後方へ移動することが、係止爪37と係止凹部38との係合により規制される(図8参照)。これによりホルダ33は離間位置に保持される。
【0075】
ホルダ33が離間位置に保持された状態では、コイルばね48によってナット41は前方に付勢されているので、ナット41の前端部はボルト18のねじ部42に螺合しやすくなっている。このため、ボルト18を再度締め込んで、ホルダ33を押圧位置に移動させることが容易になっている。
【0076】
(作用、効果)
続いて、本実施形態の作用、効果について説明する。本実施形態によれば、以下のようにして第1端子10と、第2端子11とを電気的に接続できる。すなわち、まず、屈曲部30の内部に第1端子10及び第2端子11を挿入する。この状態では、屈曲部30は押圧部によって押圧されていないので、第1端子10及び第2端子11を屈曲部30の内部に配する際に、大きな挿入力は必要とされない。
【0077】
続いて、弾性部材28のうち屈曲部30と反対側に位置する端部31に対して、屈曲部30が狭まる方向の力を加える。すると、弾性部材28は屈曲部30を支点として屈曲部30が狭まる方向に弾性変形する。これにより、屈曲部30の内部に配された第1端子10及び第2は、屈曲部30の内面によって押圧される。このとき、弾性部材28の端部31が力点とされ、屈曲部30が支点とされ、屈曲部30のうち第1端子10及び第2端子11と接触する部分が作用点とされる、てこが形成される。このてこにより、弾性部材28の端部31に加えられた力よりも大きな力が、作用点である屈曲部30の内面から第1端子10及び第2端子11に加えられる。これにより、第1端子10及び第2端子11が屈曲部30の内面によって互いに押し付けられるので、第1端子10及び第2端子11間の電気的な接続を確実にすることができる。
【0078】
このように本発明によれば、まず、第1端子10及び第2端子11を屈曲部30内に配する際の挿入力を低減させることができる。また、てこの作用により、弾性部材28の端部31に対して押圧部材34を介して比較的に小さな力を加えることで、第1端子10及び第2端子11間の電気的な接続を確実にすることができる。
【0079】
また、本実施形態においては、押圧部材34はリング状をなしており、弾性部材28が弾性部材28の一対の端部31,31に外嵌された状態において押圧部材34の内面が弾性部材28の一対の端部31,31の外面を外方から押圧する。これにより、リング状をなす押圧部材34を弾性部材28の一対の端部31,31に外嵌すると、リングの内面が弾性部材28の一対の端部31,31の外面を外方から押圧することにより、屈曲部30が狭まる方向に押圧される。このように、本実施形態によれば、リング状をなす押圧部材34を弾性部材28の一対の端部31,31に外嵌するという簡易な手法により、第1端子10及び第2端子11間を電気的に接続することができる。
【0080】
また、本実施形態においては、端子及び弾性部材28はハウジング24内に収容されており、ハウジング24には押圧部材34を保持するホルダ33が、押圧部材34が弾性部材28の一対の端部31,31の少なくとも一方を押圧する押圧位置と、押圧部材34が弾性部材28の一対の端部31,31の少なくとも一方から離間する離間位置と、の間を移動可能に収容されている。これにより、ホルダ33を、離間位置から押圧位置に移動させるという簡易な手法により押圧部材34によって弾性部材28の一対の端部31,31の少なくとも一方を押圧することができる。これにより、第1端子10と第2端子11とを電気的に接続することができる。
【0081】
更に、本実施形態によれば、ハウジング24とホルダ33との間には、ホルダ33を離間位置から押圧位置に移動させる倍力装置40が設けられている。この倍力装置40によってホルダ33を押圧位置に移動させることができるので、ホルダ33を離間位置から押圧位置に移動させるために必要とされる力を小さくすることができる。
【0082】
その上、本実施形態によれば、この倍力装置40は、ハウジング24及びホルダ33の一方に回転可能に保持されたボルト18と、ハウジング24及びホルダ33の他方に回転不能に保持されると共にボルト18に螺合されるナット41と、を備える。これにより、ホルダ33を押圧位置に移動させるためには、ボルト18をナット41に締め込めばよい。これにより、ホルダ33を離間位置から押圧位置に移動させるための力を更に小さくすることができる。このように本実施形態によれば、ボルト18とナット41という簡易な構成によってホルダ33を離間位置から押圧位置に移動させることができる。
【0083】
また、本実施形態によれば、弾性部材28は金属製の板ばねからなる。これにより弾性部材28の強度が向上するので、端子に対して比較的に大きな押圧力を加えることができる。これにより、一対の端子同士の電気的な接続を確実なものとすることができる。
【0084】
また、本実施形態によれば、弾性部材28の端部31のうち押圧部材34と対向する部分、及び押圧部材34のうち弾性部材28の端部31と対向する部分の一方には、他方に向かって突出する凸部35が形成されている。これにより、弾性部材28の一対の端部31,31の少なくとも一方を押圧部材34が押圧すると、押圧部材34に凸部35が形成されている場合には、この凸部35によって弾性部材28が確実に押圧される。また、弾性部材28に凸部35が形成されている場合には、この凸部35は押圧部材34によって確実に押圧されるので、やはり弾性部材28は確実に押圧される。このように弾性部材28が確実に押圧されるので、第1端子10及び第2端子11間の電気的な接続を確実なものとすることができる。
【0085】
更に、本実施形態によれば、屈曲部30の内面には、内方に突出する端子押圧凸部32が形成されている。これにより、第1端子10及び第2端子11は端子押圧凸部32に押圧されることにより、互いに強く押圧される。これにより、第1端子10及び第2端子11間の電気的な接続を確実なものとすることができる。
【0086】
また、本実施形態に係るコネクタ12は、6組の第1端子10及び第2端子11と、6つの弾性部材28と、6つの押圧部材34と、を備える。このように本明細書に記載された技術を、いわゆる多極コネクタ12に適用することができる。複数組の端子を備えた多極コネクタ12においては、端子の挿入力を低減させることは特に有効である。本実施形態によれば、多極コネクタ12において、端子の挿入力を低減させることができる。
【0087】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)本実施形態においては、弾性部材28は金属製としたが、これに限られず、弾性部材28は合成樹脂、セラミック等必要に応じて任意の材料を用いることができる。
(2)本実施形態においては、押圧部材34は断面形状が長円形状をなすリング状としたが、これに限られず、断面形状が長方形状をなすリング状としてもよく、また、断面形状がU字状をなす形状としてもよく、必要に応じて任意の形状とすることができる。
(3)本実施形態においては、6つの第1端子10と、6つの第2端子11とが電気的に接続される構成としたが、これに限られず、1つの第1端子10と、1つの第2端子11とが電気的に接続される構成(いわゆる単極コネクタ12)としてもよく、また、2つ以上の複数の第1端子10と、第1端子10と同数の第2端子11とが電気的に接続される構成(いわゆる多極コネクタ12)としてもよい。
(4)本実施形態においては、倍力装置40として、ボルト18と、このボルト18に螺合されるナット41と、を用いる構成としたが、これに限られず、レバーと、このレバーに形成されたカム溝に嵌合するカムと、を用いてもよく、必要に応じて任意の構成を用いることができる。
(5)本実施形態においては、弾性部材28の一対の端部31,31の外面に、リングに向かって突出する凸部35を形成する構成としたが、これに限られず、リングの内面に、弾性部材28の一対の端部31,31に向かって突出する凸部35を形成する構成としてもよい。
(6)本実施形態においては、リングはホルダ33に保持される構成としたが、ホルダ33は省略してもよい。
(7)本実施形態においては、ナット41は四角ナット41を用い、ホルダ33に形成されたナット41収容孔内に回転不能に収容される構成としたが、これに限られず、六角ナット41、袋ナット41等、必要に応じて任意の形状のナット41を用いることができる。また、ナット41は、ホルダ33にモールド成形される構成としてもよい。要するに、ナット41がホルダ33に回転不能に保持されていればよい。
(8)本実施形態においては、ボルト18がハウジング24に回転可能に保持されると共に、ナット41がホルダ33に回転不能に保持される構成としたが、これに限られず、ボルト18がホルダ33に回転可能に保持されると共に、ナット41がハウジング24に回転不能に保持される構成としてもよい。
(9)本実施形態においては、押圧部材34は弾性部材28の一対の端部31,31の双方を、屈曲部30が狭まる方向に押圧する構成としたが、これに限られず、弾性部材28の一対の端部31,31の一方を固定しておき、他方を押圧部材34によって屈曲部30が狭まる方向に押圧する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0088】
10…第1端子
11…第2端子
12…コネクタ
18…ボルト(倍力装置40)
24…ハウジング
28…弾性部材
30…屈曲部
32…端子押圧凸部
33…ホルダ
34…押圧部材
35…凸部
41…ナット(倍力装置40)
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の雄端子を電気的に接続する構成として、特許文献1に記載のものが知られている。このものは中継端子であって、一対の雄端子を相対面する方向から接続できる一対の雌端子が屈曲バネ部を介して連結されている。
【0003】
雌端子は弾性接触片が収容された筒部を有する。雄端子が筒部内に挿入されると、雄端子は、筒部と弾性接触片との間に入り込む。すると、雄端子は、筒部の内壁と弾性接触片との間を拡開させつつ、弾性接触片を弾性変形させながら弾性接触片と摺接する。この弾性接触片の弾発力により、雄端子は、筒部の内壁と弾性接触片との間に挟み付けられる。これにより、雄端子と雌端子とが電気的に接続される。
【0004】
一対の雄端子と、一対の雌端子とがそれぞれ接続されると、一対の雄端子が中継端子を介して電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−50435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の構成において、雄端子と雌端子との電気的な接続を確実にするためには、例えば、雄端子に対する弾性接触片の接圧を大きくすることが考えられる。これにより、筒部の内壁に対して雄端子を強く押圧することができるから、雄端子と雌端子との電気的な接続を確実にすることが期待された。
【0007】
しかしながら上記の構成によると、雄端子が弾性接触片を弾性変形させる際に、雄端子と弾性接触片との間の摩擦抵抗も大きくなってしまう。すると、雄端子を筒部内に挿入する際の挿入力が大きくなるため、雄端子と雌端子の接続作業の効率が低下することが懸念される。
【0008】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、一対の端子同士の電気的な接続を確実にすると共に、端子の挿入力が低減されたコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、コネクタであって、屈曲部において屈曲された折り返し形状をなす弾性部材と、前記屈曲部の内部に配された一対の端子と、前記弾性部材のうち前記屈曲部と反対側に位置する一対の端部のうち少なくとも一方の端部に対して前記屈曲部が狭まる方向の力を加える押圧部材と、を備える。
【0010】
本発明によれば、以下のようにして一対の端子を電気的に接続できる。すなわち、まず、屈曲部の内部に一対の端子を挿入する。この状態では、屈曲部は押圧部によって押圧されていないので、端子を屈曲部の内部に配する際に、大きな挿入力は必要とされない。
【0011】
続いて、弾性部材のうち屈曲部と反対側に位置する端部に対して、屈曲部が狭まる方向の力を加える。すると、弾性部材は屈曲部を支点として屈曲部が狭まる方向に弾性変形する。これにより、屈曲部の内部に配された一対の端子は、屈曲部の内面によって押圧される。このとき、弾性部材の端部が力点とされ、屈曲部が支点とされ、屈曲部のうち端子と接触する部分が作用点とされる、てこが形成される。このてこにより、弾性部材の端部に加えられた力よりも大きな力が、作用点である屈曲部の内面から端子に加えられる。これにより、一対の端子が屈曲部の内面によって互いに押し付けられるので、一対の端子同士の電気的な接続を確実にすることができる。
【0012】
このように本発明によれば、まず、一対の端子を屈曲部内に配する際の挿入力を低減させることができる。また、てこの作用により、弾性部材の端部に対して押圧部材を介して比較的に小さな力を加えることで、一対の端子同士の電気的な接続を確実にすることができる。
【0013】
本発明の実施態様としては以下の態様が好ましい。
前記押圧部材はリング状をなしており、前記弾性部材が前記弾性部材の一対の端部に外嵌された状態において前記押圧部材の内面が前記弾性部材の一対の端部の外面を外方から押圧することが好ましい。
【0014】
上記の態様によれば、リング状をなす押圧部材を弾性部材の一対の端部に外嵌すると、リングの内面が弾性部材の一対の端部の外面を外方から押圧することにより、屈曲部が狭まる方向に押圧される。このように、本態様によれば、リング状をなす押圧部材を弾性部材の一対の端部に外嵌するという簡易な手法により、一対の端子同士を電気的に接続することができる。
【0015】
前記端子及び前記弾性部材はハウジング内に収容されており、前記ハウジングには、前記押圧部材を保持するホルダが、前記押圧部材が前記弾性部材の一対の端部の少なくとも一方を押圧する押圧位置と、前記押圧部材が前記弾性部材の一対の端部の少なくとも一方から離間する離間位置と、の間を移動可能に収容されていることが好ましい。
【0016】
上記の態様によれば、ホルダを、離間位置から押圧位置に移動させるという簡易な手法により押圧部材によって弾性部材の一対の端部の少なくとも一方を押圧することができる。これにより、一対の端子を電気的に接続することができる。
【0017】
前記ハウジングと前記ホルダとの間に、前記ホルダを前記離間位置から前記押圧位置に移動させる倍力装置を備えることが好ましい。
【0018】
上記の態様によれば、倍力装置によってホルダを押圧位置に移動させることができるので、ホルダを離間位置から押圧位置に移動させるために必要とされる力を小さくすることができる。
【0019】
前記倍力装置は、前記ハウジング及び前記ホルダの一方に回転可能に保持されたボルトと、前記ハウジング及び前記ホルダの他方に回転不能に保持されると共に前記ボルトに螺合されるナットと、を備えることが好ましい。
【0020】
上記の態様によれば、ホルダを押圧位置に移動させるためには、ボルトをナットに締め込めばよい。これにより、ホルダを離間位置から押圧位置に移動させるための力を更に小さくすることができる。このように本態様によれば、ボルトとナットという簡易な構成によってホルダを離間位置から押圧位置に移動させることができる。
【0021】
前記弾性部材は金属製の板ばねからなることが好ましい。
【0022】
上記の態様によれば、弾性部材の強度が向上するので、端子に対して比較的に大きな押圧力を加えることができる。これにより、一対の端子同士の電気的な接続を確実なものとすることができる。
【0023】
前記弾性部材の端部のうち前記押圧部材と対向する部分、及び前記押圧部材のうち前記弾性部材の端部と対向する部分の一方には、他方に向かって突出する凸部が形成されていることが好ましい。
【0024】
上記の態様によれば、弾性部材の一対の端部の少なくとも一方を押圧部材が押圧すると、押圧部材に凸部が形成されている場合には、この凸部によって弾性部材が確実に押圧される。また、弾性部材に凸部が形成されている場合には、この凸部は押圧部材によって確実に押圧されるので、やはり弾性部材は確実に押圧される。このように弾性部材が確実に押圧されるので、一対の端子同士の電気的な接続を確実なものとすることができる。
【0025】
前記屈曲部の内面には、内方に突出する端子押圧凸部が形成されていることが好ましい。
【0026】
上記の態様によれば、一対の端子は端子押圧凸部に押圧されることにより、互いに強く押圧される。これにより、一対の端子同士の電気的な接続を確実なものとすることができる。
【0027】
コネクタは、前記一対の端子を複数組備え、前記弾性部材を複数備え、複数の押圧部材を備えることが好ましい。
【0028】
複数組の端子を備えた多極コネクタにおいては、端子の挿入力を低減させることは特に有効である。上記の態様によれば、多極コネクタにおいて、端子の挿入力を低減させることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、コネクタにおいて、一対の端子同士の電気的な接続を確実にすると共に、端子の挿入力を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係るコネクタを示す一部切欠正面図
【図2】ケースを示す斜視図
【図3】第1端子及び端子台を示す正面図
【図4】第2端子を示す斜視図
【図5】コネクタがケースに載置された状態を示す平面図
【図6】コネクタを示す正面図
【図7】ホルダが離間位置に配された状態を示す断面図
【図8】ホルダが離間位置に配された状態を示す一部拡大断面図
【図9】ホルダが押圧位置に配された状態を示す一部拡大断面図
【図10】離間位置における第1端子、第2端子、弾性部材、及び押圧部材を示す斜視図
【図11】離間位置における第1端子、第2端子、弾性部材、及び押圧部材を示す側面図
【図12】離間位置において第1端子及び第2端子が屈曲部内に配された状態を示す平面図
【図13】押圧位置における第1端子、第2端子、弾性部材、及び押圧部材を示す斜視図
【図14】押圧位置における第1端子、第2端子、弾性部材、及び押圧部材を示す側面図
【図15】押圧位置における第1端子、第2端子、弾性部材、及び押圧部材を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0031】
<実施形態>
本発明の一実施形態を、図1ないし図11を参照しつつ説明する。本実施形態は、第1端子10と第2端子11とを接続するコネクタ12である。以下の説明においては、図1に上方を上方とし、下方を下方として説明する。また、図1における左方を左方とし、右方を右方として説明する。また、図7における下方を前方とし、上方を後方として説明する。
【0032】
(全体構成)
本実施形態に係るコネクタ12は、金属製のケース13内に収容された機器(図示せず)に接続された第1端子10と、上記の機器とは異なる電気部品(バスバー、ワイヤーハーネス等)に接続された第2端子11と、を接続する。ケース13は合成樹脂等、必要に応じて任意の材料で形成できる。ケース13の構成については、底壁及び側壁を除いて省略されている。
【0033】
図3に示すように、合成樹脂製の端子台14には複数(本実施形態では6つ)の第1端子10が保持されている。端子台14には上方に突出する2つの第1端子保持部15が形成されている。1つの第1端子保持部15には3つの第1端子10が上方に突出すると共に左右方向に並んで配されている。第1端子10は、ねじ止め、モールド成形、保持部に形成されたランスが第1端子10に形成された係合孔に係合する等、公知の手法により第1端子保持部15に保持されている。
【0034】
第1端子10は金属板材を所定の形状にプレス加工してなる。第1端子10は、銅、銅合金等、必要に応じて任意の金属板材を用いることができる。第1端子10の表面にはスズ、ニッケル等、必要に応じて任意の金属によってメッキされていてもよい。
【0035】
図2に示すように、ケース13の底壁には上記した第1端子保持部15が挿通される略長方形状をなす開口部16が、左右方向に2つ並んで形成されている。ケース13の底壁には、コネクタ12が取り付けられる取り付け孔17が2つ形成されている。また、ケース13の側壁には、後述するボルト18が挿通されるボルト挿通孔19が、側壁を貫通して形成されている。
【0036】
図4に示すように、第2端子11は金属板材を所定の形状にプレス加工してなる。第2端子11は、銅、銅合金等、必要に応じて任意の金属板材を用いることができる。第2端子11の表面にはスズ、ニッケル等、必要に応じて任意の金属によってメッキされていてもよい。
【0037】
第2端子11の上端部には、接続ボルト20が挿通される接続ボルト挿通孔21が形成された接続ボルト取り付け部22が設けられている。第2端子11は、接続ボルト取り付け部22から下方の部分において屈曲された後に、下方に延びて形成されている。
【0038】
図1に示すように、複数(本実施形態では6つ)の第2端子11は第2端子保持部23に保持されている。本実施形態においては、第2端子保持部23内には第2端子11に通電される電流を測定する電流センサ(図示せず)が収容されている。
【0039】
(コネクタ12)
図5に示すように、コネクタ12は合成樹脂製のハウジング24を有する。ハウジング24は略直方体形状をなしている。ハウジング24の左右両端部にはケース13にねじ止めするための取り付け部25が張り出して形成されている。コネクタ12は、取り付けボルト26を取り付け部25に貫通させてケース13の取り付け孔17に螺合させることにより、ケース13に取り付けられる。
【0040】
ハウジング24の上面には、第2端子11が貫通される第2端子貫通孔27が、左右方向に間隔を空けて複数(本実施形態では6つ)並んで形成されている。また、詳細には図示しないが、ハウジング24の下面には、第1端子10が貫通される第1端子貫通孔(図示せず)が左右方向に間隔を空けて複数(本実施形態では6つ)並んで形成されている。
【0041】
図7に示すように、ハウジング24には、複数(本実施形態では6つ)の弾性部材28が収容されている。ハウジング24の前面には合成樹脂製のカバー29が取り付けられており、このカバー29によって弾性部材28の前方への抜け止めがなされている。
【0042】
(弾性部材28)
弾性部材28は弾性変形可能な材料からなる。本実施形態に係る弾性部材28は金属板材を所定の形状のプレス加工してなる。弾性部材28は、ステンレス鋼、銅、銅合金等、必要に応じて任意の金属によって形成される。本実施形態に係る弾性部材28はステンレス鋼からなる。
【0043】
弾性部材28は細長い金属板材を屈曲部30において折り返し形状をなしている。弾性部材28は、屈曲部30を前側にし、屈曲部30と反対側に位置する一対の端部31,31が後ろ側にして、ハウジング24内に収容されている。
【0044】
左右方向における屈曲部30の内壁間の間隔は、左右方向における一対の端部31,31の間隔よりも広く形成されている。屈曲部30の内部は、第1端子10及び第2端子11が上下方向からそれぞれ挿通されるようになっている。第1端子10及び第2端子11は、板面を左右方向に向けた姿勢で、屈曲部30の内部に重ねられた状態で配されている。
【0045】
屈曲部30の内面には、内方に向かって突出する端子押圧凸部32が形成されている。端子押圧凸部32は、第2端子11の一対の端部31,31の少なくとも一方に対して屈曲部30が狭まる方向の力が加えられた時に、第1端子10又は第2端子11を左右方向の外方から押圧するようになっている。
【0046】
(ホルダ33)
ハウジング24の後端部には、弾性部材28の一対の端部31,31の少なくとも一方を、屈曲部30が狭まる方向に押圧する複数(本実施形態では6つ)の押圧部材34を保持する合成樹脂製のホルダ33が収容されている。押圧部材34は金属製であって、断面形状が長円形状をなすリング状をなしている。ホルダ33は左右方向に細長い形状をなしており、押圧部材34はホルダ33内に左右方向に間隔を空けて並んで収容されている。各押圧部材34は、前後方向に開口する姿勢でホルダ33内に保持されている。
【0047】
弾性部材28の一対の端部31,31には、左右方向の外側面に、左右方向の外方に突出する凸部35が形成されている。凸部35は左右方向から見て円形状をなしている。凸部35の外面は弧状をなす曲面にて形成されている。この凸部35は、押圧部材34が弾性部材28の一対の端部31,31に外嵌された状態で、押圧部材34の内面によって左右方向の外方から押圧されるようになっている。
【0048】
ホルダ33は、押圧部材34が弾性部材28の一対の端部31,31に外嵌される押圧位置と、押圧部材34が弾性部材28の一対の端部31,31から離間した離間位置と、の間で前後方向に移動可能になっている。
【0049】
ホルダ33の左右両端部には、前方に突出すると共に弾性変形可能な弾性片36が形成されている。弾性片36の前端には、左右方向の外方に突出する係止爪37が形成されている。
【0050】
ハウジング24の左右両側壁の内面には、ホルダ33の係止爪37と係合する係止凹部38が形成されている。ホルダ33の係止爪37が係止凹部38に係合すると、ホルダ33は離間位置に保持されるようになっている。また、ハウジング24の左右両側壁の内面には、係止凹部38よりも前方の位置に、前方に延びる段差部39が陥没して形成されている。ホルダ33の係止爪37が段差部39に位置すると、ホルダ33は離間位置から押圧位置に移動可能になるようになっている。
【0051】
(倍力装置40)
ハウジング24とホルダ33との間には、ホルダ33を離間位置から押圧位置に移動させる倍力装置40が設けられている。倍力装置40は、ハウジング24に回転可能に保持されたボルト18と、ホルダ33に回転不能に保持されると共にボルト18に螺合されるナット41と、を備える。
【0052】
ボルト18には、ボルト18の頭部寄りの位置に形成されると共にねじ山が形成されたねじ部42と、ねじ部42よりも先端寄りの位置に形成されたねじ部42よりも径小に形成された径小部43と、を備える。径小部43にはねじ山は形成されていない。
【0053】
ボルト18は、ケース13のボルト挿通孔19内に挿通されるようになっている。ボルト18の頭部とケース13の側壁との間には、ボルト18のねじ部42に外嵌されたワッシャ44が介在されている。
【0054】
ケース13の側壁とハウジング24との間には、ボルト18のねじ山に外嵌された金属製のCリング45Aが介在されている。
【0055】
ハウジング24には、ハウジング24を前後方向に貫通する金属製のカラー46が配されている。カラー46は筒状をなしており、カラー46の内部にはボルト18のねじ部42が挿通されるようになっている。カラー46の内径寸法は、ねじ部42の外径寸法(ねじ山の先端間の直径寸法)よりもやや大きく形成されている。
【0056】
ホルダ33内には、ナット収容部47が形成されており、このナット収容部47内に、ナット41が回転不能に収容されている。本実施形態においては、ナット41は四角形状をなした、いわゆる四角ナット41が用いられている。このナット41には、ボルト18のねじ部42又は径小部43が挿通されるようになっている。径小部43の外径寸法は、ナット41の内径寸法(ナット41のねじ山の先端間の直径寸法)よりも小さく設定されている。
【0057】
ボルト18の径小部43のうち、ナット41を貫通してナット41の後方に突出する部分には、コイルばね48が外嵌されている。コイルばね48の後端は、径小部43の後端部に外嵌されたCリング45Bに、前方から当接している。また、コイルばね48の前端は、ナット41に後方から当接している。このコイルばね48によって、ナット41は前方に付勢されるようになっている。
【0058】
(接続構造)
続いて、第1端子10、第2端子11、及び弾性部材28の接続構造について、詳細に説明する。図10及び図11には、第1端子10、第2端子11、弾性部材28、及び押圧部材34のみを拡大して示す。第1端子10は弾性部材28の屈曲部30内に、下方(図10及び図11における矢線Aで示す方向)から挿入される。また、第2端子11は弾性部材28の屈曲部30内に上方(図10及び図11における矢線Bで示す方向)から挿入される。
【0059】
また、押圧部材34は、図10及び図11の矢線Cで示すように、弾性部材28の一対の端部31,31に対して、外嵌可能であり、且つ、離脱可能になっている。
【0060】
図12に、弾性部材28の屈曲部30内に第1端子10及び第2端子11が挿入された状態を示す。第1端子10と第2端子11は、互いに重ねられた状態で、弾性部材28の屈曲部30内に挿入されて配されている。屈曲部30の前後方向(図12における上下方向)の長さ寸法は、第1端子10及び第2端子11の前後方向の幅寸法と同じか、やや大きく設定されている。屈曲部30内に形成された端子押圧凸部32の先端の間隔は、第1端子10と第2端子11とが重ねられた状態の左右方向(図12における左右方向)の厚さ寸法と同じか、やや広く設定されている。屈曲部30内に形成された端子押圧凸部32の先端は、第1端子10又は第2端子11の外面に当接していてもよく、また、離間していてもよい。
【0061】
次に、図13ないし図15に、弾性部材28の一対の端部31,31にリング状をなす押圧部材34が外嵌された状態を示す。図13及び図14に示すように、リング状をなす押圧部材34は、弾性部材28の一対の端部31,31に外嵌されて、凸部35の外面を内方に押圧している。
【0062】
図15に示すように、押圧部材34が弾性部材28の一対の端部31,31に外嵌されることにより、弾性部材28の一対の端部31,31は、互いの間隔が狭まる方向(図15における左右方向内方)に押圧される。すると、屈曲部30も内方に狭まるように変形する。これにより、屈曲部30の内面に形成された端子押圧凸部32は、第1端子10及び第2端子11の外面を押圧する。これにより、第1端子10と第2端子11は互いに押し付け合わされるようになっている。この結果、第1端子10と第2端子11との間に接触圧が加えられるので、第1端子10と第2端子11とが電気的に確実に接続されるようになっている。
【0063】
(組み付け工程)
続いて、本実施形態に係るコネクタ12の組み付け工程の一例について説明する。なお、コネクタ12の組み付け工程は以下の記載に限定されない。まず、コネクタ12を上方からケース13の底壁に載置する。続いて、取り付け部25に取り付けボルト26を貫通させて、この取り付けボルト26をケース13の取り付け孔17に螺合する。これによりコネクタ12がケース13に取り付けられる。このとき、ホルダ33は離間位置に保持しておく。
【0064】
続いて、ボルト18の軸部にワッシャ44を外嵌し、ケース13の側壁に形成されたボルト挿通孔19内に前方から挿通する。図7に示すように、ホルダ33が離間位置に保持されている状態では、ナット41内には、ボルト18の径小部43が挿通されるようになっており、ボルト18とナット41とが螺合しないようになっている。このとき、ケース13の側壁と、ハウジング24との間の位置において、Cリング45Aをボルト18のねじ部42に外嵌する。
【0065】
続いて、ボルト18の径小部43のうち、ナット41の後方から突出した部分にコイルばね48を外嵌させ、コイルばね48の後方の位置に、Cリング45Bを径小部43に外嵌させる。
【0066】
次に、第2端子11が挿通された第2端子保持部23を、第2端子11がハウジング24の上面から形成された第2端子11挿通孔内に挿通されるようにして、コネクタ12の上方から組み付ける。
【0067】
次に、第1端子10が保持された端子台14の第1端子保持部15の上方から、コネクタ12が取り付けられたケース13を組み付ける。このとき、ケース13の開口部16内に第1端子保持部15が下方から挿通されるようにする。これにより、第1端子10、コネクタ12、及び第2端子11が組み付けられる。
【0068】
(接続動作)
続いて、コネクタ12の接続動作について説明する。図7及び図8には、ハウジング24内においてホルダ33が離間位置に保持されている状態を示す。この状態においては、ホルダ33の弾性片36に形成された係止爪37は、ハウジング24の側壁に形成された係止凹部38内に位置している。係止爪37と係止凹部38とが係合することにより、ホルダ33が後方に移動することが規制されるようになっている。
【0069】
屈曲部30の内部には、第1端子10と第2端子11とが、その板面を左右方向に向けると共に互いに重ねられた姿勢で挿入されている。この状態では、屈曲部30の内部に形成された端子押圧凸部32の先端は、第1端子10又は第2端子11の外面に当接していてもよく、また、離間していてもよい。
【0070】
弾性部材28の一対の端部31,31と、押圧部材34とは前後方向について離間している。このため、弾性部材28には応力が加えられていない状態となっている。
【0071】
ホルダ33が離間位置に保持された状態から、ボルト18を締め込んでゆくと、ボルト18のねじ部42がナット41内に螺合する。すると、ボルト18とナット41との螺合により、ナット41が前方に移動する。すると、ナット41が収容されたホルダ33も前方に移動する。このとき、ホルダ33の弾性片36に形成された係止爪37は、係止凹部38を乗り越えて弾性変形する。更にボルト18を締め込むと、ホルダ33が前進し、係止爪37が段差部39内に移動し、弾性片36が復帰変形する。
【0072】
更にボルト18を締め込むで、ホルダ33を押圧位置にまで移動させると、ホルダ33に保持された押圧部材34が弾性部材28の一対の端部31,31に外嵌される。このとき、カラー46の後端部がナット41の前面に前方から当接することにより、ホルダ33が前止まりされる。
【0073】
押圧位置においては、押圧部材34の内面は、弾性部材28の一対の端部31,31に形成された凸部35を押圧する。これにより、弾性部材28は、てこの作用により、第1端子10及び第2端子11を押圧する。詳細に説明すると、弾性部材28は、屈曲部30が支点となり、凸部35が力点となり、端子押圧凸部32が作用点となる、てこを形成している。この結果、凸部35に加えられた力よりも大きな力によって、第1端子10及び第2端子11を押圧することができるようになっている。これにより、第1端子10と第2端子11との電気的な接続が確実になされる。
【0074】
(離間動作)
ホルダ33を再び離間位置に移動させる場合には、ボルト18を緩める。すると、ボルト18のねじ部42と螺合するナット41が後方に移動する。このナット41が収容されたホルダ33も後方に移動する。ホルダ33の弾性片36に形成された係止爪37は、ハウジング24の側壁に乗り上がり、弾性片36が弾性変形する。更にボルト18を緩めると、係止爪37が係止凹部38内に移動して弾性片36が復帰変形し、ホルダ33が後方へ移動することが、係止爪37と係止凹部38との係合により規制される(図8参照)。これによりホルダ33は離間位置に保持される。
【0075】
ホルダ33が離間位置に保持された状態では、コイルばね48によってナット41は前方に付勢されているので、ナット41の前端部はボルト18のねじ部42に螺合しやすくなっている。このため、ボルト18を再度締め込んで、ホルダ33を押圧位置に移動させることが容易になっている。
【0076】
(作用、効果)
続いて、本実施形態の作用、効果について説明する。本実施形態によれば、以下のようにして第1端子10と、第2端子11とを電気的に接続できる。すなわち、まず、屈曲部30の内部に第1端子10及び第2端子11を挿入する。この状態では、屈曲部30は押圧部によって押圧されていないので、第1端子10及び第2端子11を屈曲部30の内部に配する際に、大きな挿入力は必要とされない。
【0077】
続いて、弾性部材28のうち屈曲部30と反対側に位置する端部31に対して、屈曲部30が狭まる方向の力を加える。すると、弾性部材28は屈曲部30を支点として屈曲部30が狭まる方向に弾性変形する。これにより、屈曲部30の内部に配された第1端子10及び第2は、屈曲部30の内面によって押圧される。このとき、弾性部材28の端部31が力点とされ、屈曲部30が支点とされ、屈曲部30のうち第1端子10及び第2端子11と接触する部分が作用点とされる、てこが形成される。このてこにより、弾性部材28の端部31に加えられた力よりも大きな力が、作用点である屈曲部30の内面から第1端子10及び第2端子11に加えられる。これにより、第1端子10及び第2端子11が屈曲部30の内面によって互いに押し付けられるので、第1端子10及び第2端子11間の電気的な接続を確実にすることができる。
【0078】
このように本発明によれば、まず、第1端子10及び第2端子11を屈曲部30内に配する際の挿入力を低減させることができる。また、てこの作用により、弾性部材28の端部31に対して押圧部材34を介して比較的に小さな力を加えることで、第1端子10及び第2端子11間の電気的な接続を確実にすることができる。
【0079】
また、本実施形態においては、押圧部材34はリング状をなしており、弾性部材28が弾性部材28の一対の端部31,31に外嵌された状態において押圧部材34の内面が弾性部材28の一対の端部31,31の外面を外方から押圧する。これにより、リング状をなす押圧部材34を弾性部材28の一対の端部31,31に外嵌すると、リングの内面が弾性部材28の一対の端部31,31の外面を外方から押圧することにより、屈曲部30が狭まる方向に押圧される。このように、本実施形態によれば、リング状をなす押圧部材34を弾性部材28の一対の端部31,31に外嵌するという簡易な手法により、第1端子10及び第2端子11間を電気的に接続することができる。
【0080】
また、本実施形態においては、端子及び弾性部材28はハウジング24内に収容されており、ハウジング24には押圧部材34を保持するホルダ33が、押圧部材34が弾性部材28の一対の端部31,31の少なくとも一方を押圧する押圧位置と、押圧部材34が弾性部材28の一対の端部31,31の少なくとも一方から離間する離間位置と、の間を移動可能に収容されている。これにより、ホルダ33を、離間位置から押圧位置に移動させるという簡易な手法により押圧部材34によって弾性部材28の一対の端部31,31の少なくとも一方を押圧することができる。これにより、第1端子10と第2端子11とを電気的に接続することができる。
【0081】
更に、本実施形態によれば、ハウジング24とホルダ33との間には、ホルダ33を離間位置から押圧位置に移動させる倍力装置40が設けられている。この倍力装置40によってホルダ33を押圧位置に移動させることができるので、ホルダ33を離間位置から押圧位置に移動させるために必要とされる力を小さくすることができる。
【0082】
その上、本実施形態によれば、この倍力装置40は、ハウジング24及びホルダ33の一方に回転可能に保持されたボルト18と、ハウジング24及びホルダ33の他方に回転不能に保持されると共にボルト18に螺合されるナット41と、を備える。これにより、ホルダ33を押圧位置に移動させるためには、ボルト18をナット41に締め込めばよい。これにより、ホルダ33を離間位置から押圧位置に移動させるための力を更に小さくすることができる。このように本実施形態によれば、ボルト18とナット41という簡易な構成によってホルダ33を離間位置から押圧位置に移動させることができる。
【0083】
また、本実施形態によれば、弾性部材28は金属製の板ばねからなる。これにより弾性部材28の強度が向上するので、端子に対して比較的に大きな押圧力を加えることができる。これにより、一対の端子同士の電気的な接続を確実なものとすることができる。
【0084】
また、本実施形態によれば、弾性部材28の端部31のうち押圧部材34と対向する部分、及び押圧部材34のうち弾性部材28の端部31と対向する部分の一方には、他方に向かって突出する凸部35が形成されている。これにより、弾性部材28の一対の端部31,31の少なくとも一方を押圧部材34が押圧すると、押圧部材34に凸部35が形成されている場合には、この凸部35によって弾性部材28が確実に押圧される。また、弾性部材28に凸部35が形成されている場合には、この凸部35は押圧部材34によって確実に押圧されるので、やはり弾性部材28は確実に押圧される。このように弾性部材28が確実に押圧されるので、第1端子10及び第2端子11間の電気的な接続を確実なものとすることができる。
【0085】
更に、本実施形態によれば、屈曲部30の内面には、内方に突出する端子押圧凸部32が形成されている。これにより、第1端子10及び第2端子11は端子押圧凸部32に押圧されることにより、互いに強く押圧される。これにより、第1端子10及び第2端子11間の電気的な接続を確実なものとすることができる。
【0086】
また、本実施形態に係るコネクタ12は、6組の第1端子10及び第2端子11と、6つの弾性部材28と、6つの押圧部材34と、を備える。このように本明細書に記載された技術を、いわゆる多極コネクタ12に適用することができる。複数組の端子を備えた多極コネクタ12においては、端子の挿入力を低減させることは特に有効である。本実施形態によれば、多極コネクタ12において、端子の挿入力を低減させることができる。
【0087】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)本実施形態においては、弾性部材28は金属製としたが、これに限られず、弾性部材28は合成樹脂、セラミック等必要に応じて任意の材料を用いることができる。
(2)本実施形態においては、押圧部材34は断面形状が長円形状をなすリング状としたが、これに限られず、断面形状が長方形状をなすリング状としてもよく、また、断面形状がU字状をなす形状としてもよく、必要に応じて任意の形状とすることができる。
(3)本実施形態においては、6つの第1端子10と、6つの第2端子11とが電気的に接続される構成としたが、これに限られず、1つの第1端子10と、1つの第2端子11とが電気的に接続される構成(いわゆる単極コネクタ12)としてもよく、また、2つ以上の複数の第1端子10と、第1端子10と同数の第2端子11とが電気的に接続される構成(いわゆる多極コネクタ12)としてもよい。
(4)本実施形態においては、倍力装置40として、ボルト18と、このボルト18に螺合されるナット41と、を用いる構成としたが、これに限られず、レバーと、このレバーに形成されたカム溝に嵌合するカムと、を用いてもよく、必要に応じて任意の構成を用いることができる。
(5)本実施形態においては、弾性部材28の一対の端部31,31の外面に、リングに向かって突出する凸部35を形成する構成としたが、これに限られず、リングの内面に、弾性部材28の一対の端部31,31に向かって突出する凸部35を形成する構成としてもよい。
(6)本実施形態においては、リングはホルダ33に保持される構成としたが、ホルダ33は省略してもよい。
(7)本実施形態においては、ナット41は四角ナット41を用い、ホルダ33に形成されたナット41収容孔内に回転不能に収容される構成としたが、これに限られず、六角ナット41、袋ナット41等、必要に応じて任意の形状のナット41を用いることができる。また、ナット41は、ホルダ33にモールド成形される構成としてもよい。要するに、ナット41がホルダ33に回転不能に保持されていればよい。
(8)本実施形態においては、ボルト18がハウジング24に回転可能に保持されると共に、ナット41がホルダ33に回転不能に保持される構成としたが、これに限られず、ボルト18がホルダ33に回転可能に保持されると共に、ナット41がハウジング24に回転不能に保持される構成としてもよい。
(9)本実施形態においては、押圧部材34は弾性部材28の一対の端部31,31の双方を、屈曲部30が狭まる方向に押圧する構成としたが、これに限られず、弾性部材28の一対の端部31,31の一方を固定しておき、他方を押圧部材34によって屈曲部30が狭まる方向に押圧する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0088】
10…第1端子
11…第2端子
12…コネクタ
18…ボルト(倍力装置40)
24…ハウジング
28…弾性部材
30…屈曲部
32…端子押圧凸部
33…ホルダ
34…押圧部材
35…凸部
41…ナット(倍力装置40)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲部において屈曲された折り返し形状をなす弾性部材と、
前記屈曲部の内部に配された一対の端子と、
前記弾性部材のうち前記屈曲部と反対側に位置する一対の端部のうち少なくとも一方の端部に対して前記屈曲部が狭まる方向の力を加える押圧部材と、を備えたコネクタ。
【請求項2】
前記押圧部材はリング状をなしており、前記弾性部材が前記弾性部材の一対の端部に外嵌された状態において前記押圧部材の内面が前記弾性部材の一対の端部の外面を外方から押圧する請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記端子及び前記弾性部材はハウジング内に収容されており、前記ハウジングには、前記押圧部材を保持するホルダが、前記押圧部材が前記弾性部材の一対の端部の少なくとも一方を押圧する押圧位置と、前記押圧部材が前記弾性部材の一対の端部の少なくとも一方から離間する離間位置と、の間を移動可能に収容されている請求項1または請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記ハウジングと前記ホルダとの間に、前記ホルダを前記離間位置から前記押圧位置に移動させる倍力装置を備えた請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記倍力装置は、前記ハウジング及び前記ホルダの一方に回転可能に保持されたボルトと、前記ハウジング及び前記ホルダの他方に回転不能に保持されると共に前記ボルトに螺合されるナットと、を備える請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記弾性部材は金属製の板ばねからなる請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記弾性部材の端部のうち前記押圧部材と対向する部分、及び前記押圧部材のうち前記弾性部材の端部と対向する部分の一方には、他方に向かって突出する凸部が形成されている請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記屈曲部の内面には、内方に突出する端子押圧凸部が形成されている請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記一対の端子を複数組備え、前記弾性部材を複数備え、複数の押圧部材を備えた請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項1】
屈曲部において屈曲された折り返し形状をなす弾性部材と、
前記屈曲部の内部に配された一対の端子と、
前記弾性部材のうち前記屈曲部と反対側に位置する一対の端部のうち少なくとも一方の端部に対して前記屈曲部が狭まる方向の力を加える押圧部材と、を備えたコネクタ。
【請求項2】
前記押圧部材はリング状をなしており、前記弾性部材が前記弾性部材の一対の端部に外嵌された状態において前記押圧部材の内面が前記弾性部材の一対の端部の外面を外方から押圧する請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記端子及び前記弾性部材はハウジング内に収容されており、前記ハウジングには、前記押圧部材を保持するホルダが、前記押圧部材が前記弾性部材の一対の端部の少なくとも一方を押圧する押圧位置と、前記押圧部材が前記弾性部材の一対の端部の少なくとも一方から離間する離間位置と、の間を移動可能に収容されている請求項1または請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記ハウジングと前記ホルダとの間に、前記ホルダを前記離間位置から前記押圧位置に移動させる倍力装置を備えた請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記倍力装置は、前記ハウジング及び前記ホルダの一方に回転可能に保持されたボルトと、前記ハウジング及び前記ホルダの他方に回転不能に保持されると共に前記ボルトに螺合されるナットと、を備える請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記弾性部材は金属製の板ばねからなる請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記弾性部材の端部のうち前記押圧部材と対向する部分、及び前記押圧部材のうち前記弾性部材の端部と対向する部分の一方には、他方に向かって突出する凸部が形成されている請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記屈曲部の内面には、内方に突出する端子押圧凸部が形成されている請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記一対の端子を複数組備え、前記弾性部材を複数備え、複数の押圧部材を備えた請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載のコネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−209093(P2012−209093A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73041(P2011−73041)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
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