説明

コネクタ

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、防水構造を備えたコネクタに関する。
【0002】
【従来の技術】従来のこの種のコネクタとしては、例えば図5,図6に示すようなものがある(実開平4−101382号公報参照)。
【0003】このコネクタはハウジング1内に、電線3を加締めた端子5を収容している。前記端子5はハウジング1の挿入口7から挿入されており、ハウジング1の内部に端子5を係止する端子係止部として可撓ランス9が設けられている。従って、端子5はこの可撓ランス9に係合することによって係止されている。前記ハウジング1の挿入口7端部における外面には固定係止部としてロック爪11が突設されている。かかるハウジング1の挿入口7においては弾性体、例えばゴムで成形されたシール体13によってシールが行なわれ、防水が図られている。このシール体13は電線3の端子5側において該電線3に嵌合密着し、先端側が前記端子5の電線加締め部15に前記電線3と共に加締め固定されている。又、シール体13の外周面は前記挿入口7の内周面に密着嵌合している。シール体3の内部にはその後端側から挿入部材17の補強部19が挿入され、シール体13の剛性が高められている。これによってシール体13の防水機能と挿入口7への挿入作業性の向上とを図っている。前記挿入部材17にはロック係合部21が設けられ、前記ロック爪11に係合している。従って、ロック係合部21のロック爪11に対する係合によってシール体13の確実な位置決めが行なわれ、防水機能をさらに高めている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のような構造であると、可撓ランス9の端子5に対する係合位置と、ロック爪11に対するロック係合部21の係合位置とが一義的に定まってしまう一方、挿入部材17は予めシール体13に組付けられ、かかるシール体13が図5のように電線加締め部15に電線3と共に加締め固定されるため、シール体13を電線加締め部15に加締める時にロック係合部21の位置決めを正確に行なわなければならず(特に回転方向)、シール体13の端子5への組付け作業が煩雑になる恐れがあった。
【0005】又、正確な位置決めを行なわずにシール体13が電線加締め部15に加締められると、ロック係合部21が端子5に対して回転方向に位置ずれしてしまい、端子5の装着が困難となる恐れがある。
【0006】そこで本発明は、シール体の装着作業を容易とし、確実な装着を可能とするコネクタの提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために請求項1の発明は、電線に加締められた端子と、挿入口7から挿入された端子5を収容すると共に、内部に前記挿入された端子5を係止する端子係止部9を有し、且つ外部に固定係止部49を有するハウジング1と、弾性体製のシール部25及び該シール部25よりも硬質の固定部27からなり、該シール部25の内面が前記電線3に相対回転可能に密着嵌合すると共に、外面が前記ハウジング1の挿入口7内への挿入で該挿入口7内の内面に密着嵌合し、且つ前記固定部27に前記固定係止部49に係止される固定係合部41を有したシール体23とを備え、前記ハウジング1とシール体23の固定部27との一方に、傾斜ガイド部43を設け、他方に、傾斜ガイド部43に対し相対的に摺動する摺接部51を設け、前記シール体23を前記挿入口7に装着する際、固定係合部41が固定係止部49に係合する位置へシール体23を回転するようにガイドすることを特徴とする。
【0008】そして、シール体は端子に加締められずに、予め電線に密着嵌合している。端子をハウジングの挿入口から挿入し、端子係止部に係止させる。次いで、シール体を押込め、傾斜ガイド部と摺接部とによるガイドにより固定係合部が固定係止部に係合する位置となる。従って、そのまま固定係止部に対し固定係合部を係合させ、シール体のロックを行なうことができる。
【0009】請求項2の発明は、請求項1記載のコネクタであって、前記傾斜ガイド部43を、前記固定部27に設け、前記摺接部51を前記ハウジング1に設けたことを特徴とする。
【0010】従って、請求項1の発明の作用に加え、固定部に設けた傾斜ガイド部と、ハウジングに設けた摺接部とによるガイドによって請求項1と同様な作用を行なうことができる。
【0011】請求項3の発明は、請求項2記載のコネクタであって、前記固定部27は、前記ハウジング1の挿入口7側外面に嵌合する筒部33を有すると共に該筒部33の先端側に前記固定係合部41を有し、且つ該筒部33に、その先端側から後端側へ傾斜するように前記傾斜ガイド部43を設け、前記固定係止部49を、前記ハウジング1の挿入口7側外面に設けると共に、該ハウジング1の挿入口7端側外面に前記摺接部51を設けたことを特徴とする。
【0012】従って、請求項2の発明の作用に加え、固定部の筒部がシール部の外側に位置することとなり、シール部を外力などから防護することができる。又、シール体を搬送する時に梱包状態でシール部相互の絡み合いなどが防止できる。
【0013】請求項4の発明は、請求項3記載のコネクタであって、前記ハウジング1は、相互に連結部47により一体に連結され、それぞれ挿入口7を備えた多連の円筒状のキャビティ部45を有し、前記摺接部51は、前記連結部47によって構成したことを特徴とする。
【0014】従って、連結部が摺接部を兼ね、特別な摺接部を設ける必要がなくなる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明する。図1〜図3は本発明の第1実施形態のコネクタに係るもので、図1は全体の断面図、図2は要部斜視図、図3はハウジング側の要部斜視図である。尚、図5,図6R>6と対応する構成部分には同符号を付して説明し、重複した説明は省略する。
【0016】本発明の第1実施形態のシール体23は、ゴム等の弾性体製のシール部25と、シール部25よりも硬質の固定部27からなっている。
【0017】前記シール部25の内面は前記電線3に密着嵌合していると共に、外面はハウジング1の挿入口7内の内面に密着嵌合している。
【0018】前記固定部27は補強部29、連係部31、及び筒部33とからなっている。前記補強部29はシール部25を補強するもので、円筒状に形成され、挿入口7内に遊嵌する大きさを有している。補強部29には周方向に所定間隔で連結穴35が設けられ、この連結穴35に前記シール部25に設けられた連結突部37が嵌合連結されている。連結部37は前記挿入口7内面に密接している。
【0019】前記筒部33は図1,図2のようにシール部25の外側を覆うように形成され、例えば径方向に対向する2カ所に窓39を設けることによって、筒部33の先端側に固定係合部41を設けている。又、前記筒部33には傾斜ガイド部43が設けられている。傾斜ガイド部43は筒部33の先端側から後端側へ傾斜するように設けられている。即ち、一対の固定係合部41の両側から始まり、連係部31側に漸次傾斜する形状となっている。
【0020】前記ハウジング1は、図3のように多連、例えば3連の円筒状のキャビティ部45を有し、それぞれ挿入口7を備えている。キャビティ部45は相互間が平板状の連結部47で一体に連結されている。連結部47の端部47aは、前記傾斜ガイド部43に対し相対的に摺動する摺接部となっている。キャビティ部45の外部に設けられる固定係止部49は爪状にそれぞれ一対設けられ、図1のように前記固定係合部41を係止している。
【0021】そして、組付けの際には、まず図2のように電線3にシール体23を予め嵌合して取付けておく。この取付けは電線3に端子5を加締める前、或いは加締めた後のいずれでも良い。そして、図2のような端子5をハウジング1の挿入口7から挿入して収容し、可撓ランス9に係止させる。このとき、固定係合部41が固定係止部49に位置的に対応していれば、シール体23を押込めるとそのままシール部25が挿入口7の内面に嵌合密着し、筒部33の固定係合部41がハウジング1の固定係止部49に係合してロックが行なわれる。
【0022】又、端子5を挿入した時、固定係合部41が固定係止部49に対し位置的にずれたものであっても、シール体23の押込めによって、まず傾斜ガイド部43が連結部47の端部47aに当接し、そのまま押込めると傾斜ガイド部43が端部47aに対して摺動し、その傾斜によってシール体23は回転ガイドされ、端子5及び電線3に対し回転する。この回転によりシール体23を所定位置に押込めるだけで固定係合部41が固定係止部39に位置的に対応し、そのまま係合させることができる。
【0023】従って、シール体23を図2のように予め電線3に嵌合させる際には、固定係合部41と固定係止部49との相対的位置を考慮しなくてよいため、装着作業が容易となる。又、固定係合部41と固定係止部49とが位置的に対応しなくても、傾斜ガイド部43と連結部47の端部47aとによる相対的な摺動による回転ガイドによって装着を極めて容易に行なうことができる。さらに、シール体23を部品として搬送する場合に、筒部33がシール部25を包囲する形態となっているため、梱包状態などでのシール部25相互の絡み等を防止できる。又、外力によってシール部25が損傷することも防止することができる。さらに、この実施形態では摺接部を連結部47の端部47aによって構成したから、特別な摺接部を設ける必要がなく、構造が簡単である。
【0024】図4は、他の実施形態を示している。この実施形態では、挿入口7が一つの場合のハウジング1の要部を示したものである。このハウジング1では、キャビティ部45の外面両側に摺接部51を突設している。従って、この実施形態でも摺接部51によってシール体のガイドを行なうことができ、上記実施形態と同様な作用効果を奏することができる。
【0025】なお、傾斜ガイド部をハウジング1側に設け、摺接部をシール体側に設けることもできる。
【0026】
【発明の効果】請求項1の発明では、傾斜ガイド部と摺接部との相対的な摺動によってシール体を回転ガイドすることができるため、シール体を電線に予め嵌合させる際に、固定係合部と固定係止部との相対的な位置関係を考慮する必要がなく、装着作業が容易となる。また、端子を収容してシール体を挿入口に取付ける際には、固定係合部と固定係止部との位置が合っていない時でもシール体を回転させるようなガイドによって容易に位置合わせをし、組付けることができ、組付け作業を極めて容易に行なうことができる。
【0027】請求項2の発明では、固定部に設けた傾斜ガイド部と、ハウジングに設けた摺接部とによるガイドによって請求項1と同様の作用効果を奏することができる。
【0028】請求項3の発明では、請求項2の発明の効果に加え、筒部がシール部を覆うような形態となるため、シール体を部品として搬送するような際に、シール部相互が絡むようなことを防止することができる。又、外力によってシール部が損傷するようなことも防止することができる。
【0029】請求項4の発明では、請求項3の発明の効果に加え、摺接部を連結部によって構成することにより、特別な摺接部が必要ではなくなり、構造が簡単となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るコネクタの断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係り、電線にシール体を嵌合させた状態の斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係り、ハウジングの要部を示す斜視図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係り、ハウジングの要部を示す斜視図である。
【図5】従来例に係り、電線にシール体を取付けた状態の斜視図である。
【図6】従来例に係り、(a)は断面図、(b)は端面図である。
【符号の説明】
1 ハウジング
3 電線
5 端子
7 挿入口
9 可撓ランス(端子係止部)
23 シール体
25 シール部
27 固定部
33 筒部
41 固定係合部
43 傾斜ガイド部
45 キャビティ部
47 連結部(摺接部)
49 固定係止部
51 摺接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 電線に加締められた端子と、挿入口から挿入された端子を収容すると共に、内部に前記挿入された端子を係止する端子係止部を有し、且つ外部に固定係止部を有するハウジングと、弾性体製のシール部及び該シール部よりも硬質の固定部からなり、該シール部の内面が前記電線に相対回転可能に密着嵌合すると共に、外面が前記ハウジングの挿入口内への挿入で該挿入口内の内面に密着嵌合し、且つ前記固定部に前記固定係止部に係止される固定係合部を有したシール体とを備え、前記ハウジングとシール体の固定部との一方に、傾斜ガイド部を設け、他方に、傾斜ガイド部に対し相対的に摺動する摺接部を設け、前記シール体を前記挿入口に装着する際、固定係合部が固定係止部に係合する位置へシール体を回転するようにガイドすることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】 請求項1記載のコネクタであって、前記傾斜ガイド部を、前記固定部に設け、前記摺接部を前記ハウジング1に設けたことを特徴とするコネクタ。
【請求項3】 請求項2記載のコネクタであって、前記固定部は、前記ハウジングの挿入口側外面に嵌合する筒部を有すると共に該筒部の先端側に前記固定係合部を有し、且つ該筒部に、その先端側から後端側へ傾斜するように前記傾斜ガイド部を設け、前記固定係止部を、前記ハウジングの挿入口側外面に設けると共に、該ハウジングの挿入口端側外面に前記摺接部を設けたことを特徴とするコネクタ。
【請求項4】 請求項3記載のコネクタであって、前記ハウジングは、相互に連結部により一体に連結され、それぞれ挿入口を備えた多連の円筒状のキャビティ部を有し、前記摺接部は、前記連結部によって構成したことを特徴とするコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【特許番号】特許第3195222号(P3195222)
【登録日】平成13年6月1日(2001.6.1)
【発行日】平成13年8月6日(2001.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−41679
【出願日】平成8年2月28日(1996.2.28)
【公開番号】特開平9−237649
【公開日】平成9年9月9日(1997.9.9)
【審査請求日】平成11年2月19日(1999.2.19)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【参考文献】
【文献】特開 平5−6784(JP,A)
【文献】特開 平9−92385(JP,A)
【文献】特開 平9−147965(JP,A)
【文献】実開 昭59−36178(JP,U)
【文献】実開 平4−124775(JP,U)
【文献】実開 平4−101382(JP,U)