説明

コピー牽制印刷物

【課題】本物と偽物(複写物)を区別して認識でき、高度な技術と設備等によるコスト高とはならず、本物の牽制潜像部が肉眼では視認しにくく、かつ製造にコストが嵩まないコピー牽制印刷物の提供にある。
【解決手段】所定の幅WとピッチPの万線パターンでなる非潜像部20と、該非潜像部20の任意の領域に形成される牽制潜像部とで構成されるコピー牽制印刷物1において、前記牽制潜像部10は、万線パターンの1組2本分に掛かる複数個のルーン文字でいうS字状のパターン10aが複数列で構成され、前記非潜像部20と15〜25%の同一の濃度になるように設定されている複写機による偽造防止印刷物1としたもので、前記万線パターン及びルーン文字のS字状等の要素の刷色が、彩度の低い濁色系の深緑色系で、さらに彩度の低い濁色系とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機による偽造防止印刷物に関するものであり、特に、カラーコピー機による偽造を不可能にする又は牽制するニーズがある印刷物、例えば株券等有価証券類、証明書類、カード類等々に適用されるコピー牽制印刷物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機、特にカラーコピー機の精度向上にしたがって、その普及が著しく、それを利用して株券、債券、商品券等有価証券類や各種証明書類の複写による偽造を容易にしている。
【0003】
上記の複写による偽造を防止する手段として、有価証券類等そのものを複写困難なものとするか、あるいは複写が困難なものを、本物であることの証明として有価証券類等に貼り付ける方法がある。
【0004】
前者の複写を困難にする方法としては、例えば、複写機等の光学機器では解像不可能な細かい文字やパターンの印刷物としたり、あるいは金属光沢インキや蛍光インキで印刷する方法が知られている。
【0005】
しかしこれらの方法では、本物を知らない使用者が本物と偽物を区別して認識することが困難である恐れがあり、偽物を使用し続けるといった問題点があった。
【0006】
また、後者の複写や複製が困難なものを貼り付ける方法としては、例えば、その代表例として、ホログラムを利用する(ホログラム箔を転写する)方法が知られている。
【0007】
しかしながら、このホログラムは、複写での偽造は困難で偽造防止効果は高いが、ホログラムの作製には、高度な技術と高価な設備等によりコストが嵩むという難点があるものであった。
【0008】
そこで使用者が本物と偽物の区別とその認識を容易にし、コストの面からも優位な複写防止方法の一つに、複写機で複写した場合、文字、パターン等が浮かび上がる印刷物があり、例えば、図7(a)に示すように、文字、パターン等でなる牽制潜像部(30)とその背景となる非潜像部(40)が、網点面積率が同じで、網点サイズ(線数)が異なるようにした複写防止印刷物(4)がある。
【0009】
これは、本物の複写防止印刷物(4)における網点面積率が同じであれば、見た目では網点サイズの小さい(網点密度が大)牽制潜像部(30)と網点サイズの大きい(網点密度が小)非潜像部(40)は区別がつかず、これを複写すると、図7(b)に示すように、トーナーを用いる電子複写機の複写による網点等の細る傾向(解像性が劣ること)を利用し、網点サイズの小さい牽制潜像部(30)が背景となる非潜像部(40)より網点面積%も小さくなり薄くなって浮かび上がって見える複写物(4a)となるものである。この牽制潜像部(30)のパターンが、「にせもの」あるいは「VOID」、「COPY」とすることにより、明確に偽物であるとの認識が可能となり、より偽造防止効果を発揮する方法である。
【0010】
しかしながら、このような網点サイズの差による複写防止方法による複写防止印刷物(4)では、目が慣れてくると牽制潜像部(30)が視認し易くなるという問題点があり、さらにこの牽制潜像部(30)は、ある程度の大きさの面積を必要とするため、その面積
を大きくすると、より一層視認し易くなり、これら技術を知っている者は偽造することも可能となるるという問題点があった。
【0011】
また、使用者が本物と偽物の区別とその認識を容易にする他の複写防止方法に、背景となる非潜像部と文字等でなる牽制潜像部の両者が万線によって形成され、その万線が水平・垂直(VH)の関係で構成されていて、かつ牽制潜像部は非潜像部と異なる二本の分割線(スプリット)で表現されているもので、VHスプリット万線方式と言われている印刷物がある。
【0012】
このVHスプリット万線方式と言われている印刷物を複写機(カラーコピー機)で複写すると、背景となる非潜像部が、実物(被複写物)の刷色(濁色系)とは異なる黒(墨)色で表現され、文字等隠し模様となる牽制潜像部は、実物の刷色に近い色で再現されるようになるものであり、よって複写(カラーコピー)による偽物であるか本物であるかの判別が比較的容易な印刷物がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0013】
また、非潜像部と牽制潜像部のいずれかに直線か曲線を、他方には適当なマイクロ文字を配するが、マイクロ文字が前記直線か曲線のうち必ず1本の延長線上に並んでおり、隠し模様としての作用がやや劣る欠点があるものがある(例えば、特許文献2参照。)。
【0014】
以下に、上記先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開2003−237211号公報
【特許文献2】米国特許第4891666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記前者のVHスプリット万線方式と言われている印刷物の従来技術においては、背景となる非潜像部と文字等でなる牽制潜像部を形成する万線が交差する関係にあり、そのため背景を形成する非潜像部と文字等でなる隠し模様となる牽制潜像部との境界が目立ち易くなるので、その交差部の際を(原版等で)修正処理する必要があり(細部の修正は極困難)、さらに牽制潜像部を四角の集合体で表現しているため、曲線部を階段状にして表現しなければならないという原版作製に煩雑(困難)さとコストが嵩むという問題点があった。
【0016】
また、後者のVHスプリット万線方式と言われている印刷物の技術においては、上記のように、隠し模様の作用(原本では発見困難でコピー品では発見されない)に問題があった。
【0017】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するものであり、その課題とするところは、本物を知らない使用者でも本物と偽物(複写物)を容易に区別して認識することができ、またホログラムを貼りつける方法のように高度な技術と設備等によるコストが嵩むという問題がなく、さらに本物の隠し模様となる牽制潜像部が肉眼では視認しにくく、かつその製造(原版作製)に煩雑(困難)さがなく、それに纏わるコストが嵩まない複写機、特にカラーコピー機による複写による偽造を不可能にする偽造防止印刷物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に於いて上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、基材に、所定の幅とピッチの万線パターンでなる非潜像部と、該非潜像部を形成する万線パターンの任意
の領域に部分的に形成されて、且つその部分は該万線パターンではない隠し模様となる牽制潜像部と、を備えたコピー牽制印刷物において、前記牽制潜像部は、非潜像部を形成する万線パターンの1組2本分に掛かるルーン文字でいうS字状、その逆S字状、アルファベットでいうZ字状、N字状、逆Z字状、または逆N字状の類のパターンが要素であって、該要素を成す線のうち隣り同志の線が成す角度が90°以上であり、複数個の該要素が並べられて構成され、前記非潜像部と同一又はほぼ同一の光学濃度になるように設けてあることを特徴とするコピー牽制印刷物としたものである。
【0019】
上記でいうルーン文字とは、古代文字の一種で、ギリシャ文字から変形発達したものをいう。
【0020】
また、請求項2の発明では、前記非潜像部を形成する万線パターンおよび牽制潜像部を形成するパターンの刷色が、深緑色系、赤色系、青色系もしくは紫色系の何れかであることを特徴とする請求項1記載のコピー牽制印刷物としたものである。
【0021】
また、請求項3の発明では、前記牽制潜像部と非潜像部の濃度が、15〜25%の範囲を満たしていることを特徴とする請求項1乃至2のいずれか1項記載のコピー牽制印刷物としたものである。
【0022】
また、請求項4の発明では、前記非潜像部を形成する万線パターンの線幅が、0.06〜0.1mmの範囲を満たしていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のコピー牽制印刷物としたものである。
【0023】
また、請求項5の発明では、前記牽制潜像部を形成する領域が、少なくとも7個のルーン文字でいうS字状、その逆S字状、アルファベットでいうZ字状、N字状、逆Z字状、または逆N字状の類のいずれかのパターンが要素であって、該要素を成す線のうち隣同志の線が成す角度が90°以上である要素と、万線パターンの3組6本分に掛かる3列のルーン文字でいうS字状、その逆S字状、アルファベットでいうZ字状、N字状、逆Z字状、または逆N字状の類のいずれかのパターンが要素であって、該要素を成す線のうち隣り同志の線が成す角度が90°以上である要素とからなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のコピー牽制印刷物としたものである。
【0024】
また、請求項6の発明では、前記非潜像部を形成する万線パターンおよび牽制潜像部を形成するパターン上に、砂目状の白抜きパターンもしくは文字、数字、記号および柄の連続パターンが施されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のコピー牽制印刷物としたものである。
【0025】
さらにまた、請求項7の発明では、前記非潜像部と牽制潜像部とで、前記パターンを入替えてあることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のコピー牽制印刷物としたものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明は以上の構成であるから、下記に示す如き効果がある。
【0027】
即ち、上記請求項1に係る発明によれば、基材に、所定の幅とピッチの万線パターンでなる非潜像部と、該非潜像部を形成する万線パターンの任意の領域に部分的に形成されて、且つその部分は該万線パターンではない隠し模様となる牽制潜像部と、を備えたコピー牽制印刷物において、前記牽制潜像部は、非潜像部を形成する万線パターンの1組2本分に掛かるルーン文字でいうS字状、その逆S字状、アルファベットでいうZ字状、N字状、逆Z字状、または逆N字状の類のパターンが要素であって、該要素を成す線のうち隣り
同志の線が成す角度が90°以上であり、複数個の該要素が並べられて構成されているので、従来のVHスプリット万線方式のような、交差部の画線の際処理や曲線部が階段状にならない等で原版作製のコストが低減され、複写、特にカラーコピーをすると非潜像部を形成する万線パターンが黒(墨)色で表現され、牽制潜像部を形成する複数個のルーン文字でいうS字状、その逆S字状、あるいはアルファベットでいうでいうZ字状、N字状、逆Z字状、または逆N字状の要素であって、これら要素を成す線成す線のうち隣り同志の線が成す角度が90°以上である要素は複写前の刷色に近い色で再現されて浮き上って視認されるようになるので、本物と複写物とが容易に認識されるコピー牽制印刷物とすることができる。
【0028】
また、隠し模様となる牽制潜像部が、背景となる非潜像部と同一又はほぼ同一の光学濃度になるように設けてあることによって、肉眼では牽制潜像部の存在の視認が困難なコピー牽制印刷物とすることができる。
【0029】
また、上記請求項2に係る発明によれば、非潜像部を形成する万線パターンおよび牽制潜像部を形成するパターンの刷色が、深緑色系、赤色系、もしくは紫色系とすることによって、複写、特にカラーコピーすると、背景となる非潜像部を形成する細い万線パターンでは、深緑色系、赤色系、青色系もしくは紫色系の刷色を構成する黄、マゼンタ、シアンが再現されにくく、墨色で表現されるようになり、これに対し、隠し模様となる牽制潜像部では、複数個が複数列配列されているルーン文字でいうS字状、その逆S字状、あるいはアルファベットでいうットでいうZ字状、N字状、逆Z字状、または逆N字状であって、これらの文字状を成す線のうち隣り同志の線が成す角度が90°以上であるパターンが1つの面として捉えられるので、複写前の刷色に近い色で再現されるようになる。
【0030】
よって、墨(黒)色系の背景となる非潜像部に深緑色系、赤色系、青色系もしくは紫色系の牽制潜像部が浮かび上がって視認されるようになり、本物と複写物とが容易に認識されるコピー牽制印刷物とすることができる。
【0031】
さらにまた、従来のVHスプリット万線方式に比べ、赤色系の牽制潜像部とすることもでき、デザイン性の自由度を向上させることもできる。
【0032】
また、上記請求項3に係る発明によれば、牽制潜像部と非潜像部の濃度を、15〜25%の範囲を満たすようにすることによって、複写(カラーコピー)するとより非潜像部を形成する細い万線パターンが複写前に比べより濃く再現され、牽制潜像部を形成する複数個が複数列配列されているルーン文字でいうS字状、その逆S字状、あるいはアルファベットでいうットでいうZ字状、N字状、逆Z字状、または逆N字状の要素であって、これら要素の成す線のうち隣り同志の線が成す角度が90°以上であるパターンが複写前の濃度に近く再現されるので、より浮き上がって視認されるようになる。また、両者の濃度を15〜25%の範囲、即ち比較的淡くすることによってこれら牽制潜像部と非潜像部の上に柄、文字(地紋)等の印刷を施してデザイン性の向上などにも寄与することができるようになる。
【0033】
上記牽制潜像部と非潜像部の濃度が15%に満たないと、全体に淡くなるので複写(カラーコピー)されても牽制潜像部と非潜像部とに差が少なくなり、逆に両者の濃度が25%を越えると複写後の牽制潜像部が背景の非潜像部に溶け込み、牽制潜像部が視認しにくくなり、さらに全体的に濃度が高くなるので、これら牽制潜像部と非潜像部の上に柄、文字(地紋)等の印刷を施してもそれらが目立たなくなり、デザイン的にも好ましくないものとなる。
【0034】
また、上記請求項4に係る発明によれば、非潜像部を形成する万線パターンの線幅が、
0.06〜0.1mmの範囲を満たしているようにすることによって、複写、特にカラーコピーをすると非潜像部を形成する万線パターンが黄、マゼンタ、シアンで再現されにくく黒(墨)色で再現されるようになり、牽制潜像部を形成する複数個のルーン文字でいうS字状、その逆S字状、あるいはアルファベットでいうでいうZ字状、N字状、逆Z字状、または逆N字状の要素であって、これら要素を成す線のうち隣り同志の線が成す角度が90°以上であるパターンは複写前の刷色に近い色で再現されてより浮き上って視認されやすいコピー牽制印刷物とすることができる。
【0035】
上記万線パターンの線幅が0.06mmに満たないと、印刷物の万線パターンに再現性がなくなり(再現が困難になり)、逆に0.1mmを越えると、複写された万線パターンが深緑色系、赤色系、青色系もしくは紫色系の黄、マゼンタ、シアンをも再現し、複写前の刷色に近い色となり、牽制潜像部と区別が付かなくなるので好ましくない。
【0036】
また、上記請求項5に係る発明によれば、牽制潜像部を形成する領域を、少なくとも7個のルーン文字でいうS字状、その逆S字状、あるいはアルファベットでいうZ字状、N字状、逆Z字状、または逆N字状の要素であって、これら要素を成す線のうち隣り同志の線が成す角度が90°以上であるパターンと、万線パターンの3組6本分に掛かる3列のZ字状、N字状、逆Z字状、または逆N字状であって、これらの文字状を成す線のうち隣り同志の線が成す角度が90°以上であるパターンとからなるようにすることによって、複写、特にカラーコピー後の牽制潜像部がより浮かび上がって視認し易くなるコピー牽制印刷物とすることができる。
【0037】
上記牽制潜像部を構成する領域が7個のルーン文字でいうS字状、その逆S字状、あるいはアルファベットでいうZ字状、N字状、逆Z字状、または逆N字状の要素であって、これら要素を成す線のうち隣り同志の線が成す角度が90°以上であるパターンと3列のルーン文字でいうS字状、その逆S字状、あるいはアルファベットでいうZ字状、N字状、逆Z字状、または逆N字状の要素であって、これら要素成す線のうち隣り同志の線が成す角度が90°以上であるパターンに満たないと、牽制潜像部が小さ過ぎて複写されても視認しにくくなり、本物か複写物かの判別がつかなくなるので好ましくないコピー牽制印刷物となる。
【0038】
また、上記請求項6に係る発明によれば、背景となる非潜像部を形成する万線パターンおよび隠し模様となる牽制潜像部を形成するパターン群上に、砂目状の白抜きパターンもしくは文字、数字、記号および柄の連続パターンが設けられていることによって、複写前の非潜像部と牽制潜像部とが肉眼ではより視認しにくくしたコピー牽制印刷物とすることができる。
【0039】
さらにまた、上記請求項7に係る発明によれば、非潜像部と牽制潜像部とで、前記パターンを入替えてあることによって、デザイン的にも自由度を向上させ、偽造防止を求める用途をもさらに広げることのできるコピー牽制印刷物を提供できる効果がある。
【0040】
従って本発明は、複写、特にカラーコピーによる偽造を防止する印刷物として、株券等各種有価証券類、証明書、カード等の如き偽造を防止を求める用途において、優れた実用上の効果(特にコピーによる偽造防止や牽制)を発揮するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0042】
図1は、本発明のコピー牽制印刷物(1)とその拡大平面図であり、図2および図7は、本発明のコピー牽制印刷物(1)の他の事例の平面図である。また、図3および図4は
、本発明のコピー牽制印刷物を構成する牽制潜像部(10)の事例の拡大図であり、図5および図6は、本発明のコピー牽制印刷物の複写物(2)の一事例を表らわす平面図である。
【0043】
本発明は、例えば、図1(a)の平面図に示すように、背景となる非潜像部(20)と、その非潜像部(20)の任意の領域に、隠し模様(例えば「COPY」)となる牽制潜像部(10)とで構成されているコピー牽制印刷物(1)である。
【0044】
上記請求項1に係る発明では、例えば、図1(a)の平面図に示すように、基材(50)の表面に、背景となる非潜像部(20)と、その一領域に隠し模様(図面では「COPY」という文字があるが、説明上視認可能なようにしてある)である牽制潜像部(10)とで構成されているコピー牽制印刷物(1)で、この図1(a)の拡大図として、図1(b)の平面図に示すように、その非潜像部(20)は、所定の幅(W)とピッチ(P)でなる万線パターンで形成され、その非潜像部(20)の一領域にある牽制潜像部(10)は、非潜像部(20)を形成する万線パターンの1組2本分に掛かるように複数個のルーン文字でいうS字状のパターンが複数列の配設で形成されているコピー牽制印刷物(1)とするものである。
【0045】
上記牽制潜像部(10)を形成するパターンとして、例えば、図3(a)の拡大平面図に示すように、複数個のルーンS字状パターン(10a)とする他に、例えば、図3(b)に示すように、ルーン文字でいう逆S字状パターン(10b)とすることもできる。さらには、図示しないが、複数個のアルファベットでいうZ字状パターンまたは逆Z字状パターン、あるいはアルファベットでいうN字状、その逆N字状とすることができる。
【0046】
上記のように、牽制潜像部(10)を形成するパターンの要素は、アルファベットでいうZ字状、N字状、逆Z字状、逆N字状、あるいはルーン文字でいうS字状、その逆S字状とし、例えば図4に示すように、ルーン文字でいうS字状パターン(10a)をその成す線のうち隣り同志の線が成す角度(α)を90°以上であるパターンとすることが好ましく、より好ましくは曲線を含まず直線のみで構成されていることによって、牽制潜像部を隠す効果が優れるようにすることができる。
【0047】
このように、隣り同志の線が成す角度(α)を90°以上であることによって、要素の形状は、伸びたような形状を呈する。この伸びのおおよその方向が万線パターンの線の方向とおおよそ交差する方向(好ましくはおおよそ直交する方向)に要素を配置するようにするものである。
【0048】
また、上記請求項2に係る発明では、例えば、図1(a)に示すように、非潜像部(20)を形成する万線パターンおよび牽制潜像部(10)を形成するパターンの刷色が、深緑色系、赤色系、もしくは紫色系の何れかとすることによって、複写、特にカラーコピーすると、背景となる非潜像部を形成する細い万線パターンでは、深緑色系、赤色系、青色系もしくは紫色系のいずれかの刷色を構成する黄、マゼンタ、シアンが再現されにくく、その分を補足して墨色で表現されるようになり、一方隠し模様(COPY)となる牽制潜像部(10)では、複数個が複数列配列されている逆N字状のパターンが1つの面として捉えられるので、複写前の刷色に近い色で表現されるようになる。よって墨(黒)色系の背景となる非潜像部(20)に深緑色系の牽制潜像部(10)が「COPY」という文字となって浮かび上がり、本物を知らない使用者でも明確に複写物であることが認識されるようになる。
【0049】
上記非潜像部(20)を形成する万線パターンおよび牽制潜像部(10)を形成するパターンの刷色を、上記のようにし、さらに好ましくは、彩度の低いものか、濁色系のもの
、最も好ましくは彩度の低い濁色系のものとすることができる。
【0050】
このように、各パターンを彩度の低い濁色系とすることによって、この印刷物(1)をカラーコピーすると、例えば、図5の平面図に示すように、背景となる非潜像部(20)を形成する細い万線パターンは、濁色を構成する黄、マゼンタ、シアンがより再現されにくくなり、よってその分を補足するように墨色で表現されるようになり、一方隠し模様(COPY)となる牽制潜像部(10)では、複数個が複数列配列されているルーン文字でいうS字状のパターン(10a)が1つの面として捉えられるので、複写前の刷色に近い色で表現されるようになる。よって墨(黒)色系の背景となる非潜像部(20)に深緑色系の牽制潜像部(10)が「COPY」という文字となって浮かび上がり、本物を知らない使用者でも明確に複写物(2)であることが認識されるようになる。
【0051】
上記非潜像部(20)を形成する万線パターンおよび牽制潜像部(10)を形成するパターンの刷色として、深緑色系の他、従来のVHスプリット万線方式では不可能であった赤色系でも上記のような効果が現れ、デザイン性に幅を持たせることができる。
【0052】
また、上記請求項3に係る発明では、例えば、図1(a)に示すように、牽制潜像部(10)と非潜像部(20)の濃度が、ほぼ同一(説明上牽制潜像部(10)の「COPY」が濃くしてある)で、15〜25%の範囲を満たしているようにしたもので、さらに、上記請求項4に係る発明では、図3(a)に示すように、非潜像部を形成する万線パターン(20a)の線幅(W)が、0.06〜0.1mmの範囲を満たしているようにしたものである。
【0053】
上記牽制潜像部(10)と非潜像部(20)の適正濃度と非潜像部を形成する万線パターン(20a)の線幅(W)との関係を、具体的に説明すると、例えば、図3(a)に示すように、非潜像部(20)を形成する万線パターン(20a)の線幅(W)を0.08mm、ピッチ(P)を0.4mmとすると、その濃度は約20〜22%の範囲であり、牽制潜像部を形成する複数個のルーン文字でいうS字状パターン群(10a)の線幅を0.05mm、縦送りピッチ(TP)を0.8mm、横送りピッチ(YP)を0.275〜0.285mmとすると、その濃度は、約18〜19%の範囲であった。
【0054】
上記のように、背景となる非潜像部(20)の濃度を隠し模様となる牽制潜像部(10)の濃度より僅かに高く設定すると、複写後の複写物は、より濃度差と刷色の差が大きくなり、偽造防止効果が高いコピー牽制印刷物(1)とすることができる。
【0055】
また、上記請求項5に係る発明では、例えば、図3(a)の拡大図に示すように、牽制潜像部(10)を形成する領域が、少なくとも7個のS字状パターン(10a)と、万線パターン(20a)の3組6本分に掛かる逆N字状パターン(10a)の3列とからなるようにしたものである。
【0056】
このように、最小でも水平に7個で垂直に3列の逆N字状パターン(10a)とからなる牽制潜像部(10)とすることによって、この部分を複写、特にカラーコピーすると、例えば、図6(a)の実物大の平面図に示すように、牽制潜像部(10)が浮かび上がって視認できる最小限度の大きさとするものである。
【0057】
この牽制潜像部(10)を水平に10個で垂直に4列のルーン文字でいうS字状パターン群(10a)とすると、図6(b)の実物大の平面図に示すように、牽制潜像部(10)がさらに大きくなり浮かび上がって視認し易くなり、さらにこの牽制潜像部(10)を水平に13個で垂直に5列のルーン文字でいうS字状パターン群(10a)とすると、図6(c)の実物大の平面図に示すように、牽制潜像部(10)がさらに大きくなりより視
認し易くなる。
【0058】
上記牽制潜像部(10)の大きさが、水平に7個で垂直に3列のルーン文字でいうS字状パターン群(10a)に満たないと、カラーコピーされても小さ過ぎて視認しにくくなり、本物か複写物かの判別がつかなくなるので好ましくないものとなる。
【0059】
また、請求項6に係る発明では、例えば、図2(a)の平面図に示すように、背景となる非潜像部(20)を形成する万線パターンと隠し模様となる牽制潜像部(10)を形成するパターン上に、砂目状の白抜きパターン(22)が施されているコピー牽制印刷物(1)としたもので、この砂目状の白抜きパターン(22)によって、隠し模様となる牽制潜像部(10)の存在がより視認しにくくしたものである。
【0060】
因みに上記砂目状の白抜きパターン(22)が施されたコピー牽制印刷物(1)を複写すると、図2(b)の平面図に示すように、背景となる非潜像部(20)に、牽制潜像部(10)の「COPY」の文字が浮かび上がって見えるようになる砂目状の白抜きパターン(22)が施された複写物(2)となる。
【0061】
さらにまた、請求項6に係る発明では、例えば、図7(a)の平面図に示すように、背景となる非潜像部(20)を形成する万線パターンと隠し模様となる牽制潜像部(10)を形成する複数個で複数列のルーン文字でいうS字状のパターン上に、文字の連続パターン(24)が施されている複写機による偽造防止印刷物(1)としたもので、この文字の連続パターン(24)でなる地紋によって、隠し模様となる牽制潜像部(10)の存在がより視認しにくくしたものである。
【0062】
因みに上記文字の連続パターン(24)でなる地紋が施されたコピー牽制印刷物(1)を複写すると、図7(b)の平面図に示すように、背景となる非潜像部(20)に、牽制潜像部(10)の「COPY」の文字が浮かび上がって見えるようになる文字の連続パターン(24)でなる地紋が施された複写物(2)となる。
【0063】
また、上記請求項7では、例えば、図1に示す牽制潜像部(10)である「COPY」を万線パターンで形成し、また、万線パターンで形成されている背景部の非潜像部(20)をルーン文字でいうS字状のパターンでなるように、パターンをそれぞれ入れ替えたものとすることもできる。
【0064】
上記連続パターン(24)としては、文字の他に、数字、記号あるいは柄(絵等)とすることもでき、この連続パターン(24)によって、デザイン効果をも付加することができる。
【0065】
以上のように、本発明のコピー牽制印刷物は、株券、債券、商品券、ギフトカード等有価証券類、印鑑登録証等証明書類、カード、その他ゴミ処理券、等に利用することができ、優れた実用上の効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明のコピー牽制印刷物の一事例を説明するもので、(a)は、その平面図であり、(b)は、(a)の部分拡大図である。
【図2】本発明のコピー牽制印刷物の他の事例を説明するもので、(a)は、その平面図であり、(b)は、(a)の複写物の平面図である。
【図3】本発明のコピー牽制印刷物の部分拡大図で、(a)は、その牽制潜像部を形成するパターンの一事例を示すもので、(b)は、牽制潜像部を形成するパターンの他の事例を示すものである。
【図4】本発明のコピー牽制印刷物を構成する牽制潜像部を形成するパターンの一事例の拡大図である。
【図5】本発明のコピー牽制印刷物の複写物の一事例を表す平面図である。
【図6】本発明のコピー牽制印刷物の一事例を表す平面図であり、(a)は、牽制潜像部の最小サイズの場合の複写物であり、(b)は、牽制潜像部が10個と4列でなる場合の複写物であり、(c)は、牽制潜像部が13個と5列でなる場合の複写物である。
【図7】本発明のコピー牽制印刷物のさらに他の事例を説明するもので、(a)は、その平面図であり、(b)は、(a)の複写物の平面図である。
【図8】従来の複写防止印刷物の一事例を表す平面図であり、(a)は、本物であり、(b)は、(a)の複写物である。
【符号の説明】
【0067】
1‥‥コピー牽制印刷物
2‥‥コピー牽制印刷物の複写物
4‥‥網点サイズが異なる複写防止印刷物
4a‥‥複写防止印刷物の複写物
10‥‥牽制潜像部
10a‥‥ルーン文字のS字状パターン
10b‥‥ルーン文字の逆S字状パターン
20‥‥非潜像部
20a‥‥万線パターン
30‥‥網点サイズの小さい牽制潜像部
40‥‥網点サイズの大きい非潜像部
50‥‥基材
P‥‥万線パターンのピッチ
W‥‥万線パターンの線幅
TP‥‥S字状パターンの縦送りピッチ
YP‥‥S字状パターンの横送りピッチ
α‥‥文字状の成す隣同志の線の成す角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に、所定の幅とピッチの万線パターンでなる非潜像部と、該非潜像部を形成する万線パターンの任意の領域に部分的に形成されて、且つその部分は該万線パターンではない隠し模様となる牽制潜像部と、を備えたコピー牽制印刷物において、前記牽制潜像部は、非潜像部を形成する万線パターンの1組2本分に掛かるルーン文字でいうS字状、その逆S字状、アルファベットでいうZ字状、N字状、逆Z字状、または逆N字状の類のパターンが要素であって、該要素を成す線のうち隣り同志の線が成す角度が90°以上であり、複数個の該要素が並べられて構成され、前記非潜像部と同一又はほぼ同一の光学濃度になるように設けてあることを特徴とするコピー牽制印刷物。
【請求項2】
前記非潜像部を形成する万線パターンおよび牽制潜像部を形成するパターンの刷色が、深緑色系、赤色系、青色系もしくは紫色系の何れかであることを特徴とする請求項1記載のコピー牽制印刷物。
【請求項3】
前記牽制潜像部と非潜像部の濃度が、15〜25%の範囲を満たしていることを特徴とする請求項1乃至2のいずれか1項記載のコピー牽制印刷物。
【請求項4】
前記非潜像部を形成する万線パターンの線幅が、0.06〜0.1mmの範囲を満たしていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のコピー牽制印刷物。
【請求項5】
前記牽制潜像部を形成する領域が、少なくとも7個のルーン文字でいうS字状、その逆S字状、アルファベットでいうZ字状、N字状、逆Z字状、または逆N字状の類のいずれかのパターンが要素であって、該要素を成す線のうち隣同志の線が成す角度が90°以上である要素と、万線パターンの3組6本分に掛かる3列のルーン文字でいうS字状、その逆S字状、アルファベットでいうZ字状、N字状、逆Z字状、または逆N字状の類のいずれかのパターンが要素であって、該要素を成す線のうち隣り同志の線が成す角度が90°以上である要素とからなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のコピー牽制印刷物。
【請求項6】
前記非潜像部を形成する万線パターンおよび牽制潜像部を形成するパターン上に、砂目状の白抜きパターンもしくは文字、数字、記号および柄の連続パターンが施されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のコピー牽制印刷物。
【請求項7】
前記非潜像部と牽制潜像部とで、前記パターンを入替えてあることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のコピー牽制印刷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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