説明

コピー防止用の不透明度の低いゾーンを備えたシート

本発明は、表/裏両面複製に対するセキュリティデータ要素として、透過光の下で観察可能な一つのイメージを形成するような、反射光の下で観察可能な表裏両面の各印刷体を受容するのに適したゾーンを含んでいる印刷可能なセキュリティ紙に関するものであって、該セキュリティ紙は、前記ゾーンが、紙の残りのベラム部分の不透明度より低い、平均的な全体の不透明度を有するメッシュスクリーンをかけたゾーンであり、前記メッシュスクリーンをかけたゾーンが、紙の残りのベラム部分の厚みと等しい、ほぼ一定した厚みを有するベラムミニゾーンと、ベラムミニゾーンに対して厚みが小さくなっていることで不透明度が低くなっているミニゾーンとの交替で構成されることを特徴とする。本発明は、また、このセキュリティ紙によって得られたセキュリティ文書にも関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッシュスクリーンで作られた不透明度の低いゾーンを含んでいるセキュリティ紙に関するものであり、該低不透明度ゾーンは、特に、表/裏両面コピーに対するセキュリティデータ要素として、透過光の下で相補的に観察することのできる表裏両面の印刷による各パターンを受容することに適している。本発明は、また、基材として前記セキュリティ紙を有する、表/裏両面コピーに対して保護されたセキュリティ文書に関するものでもある。
【背景技術】
【0002】
表/裏両面コピーまたはスキャナーやプリンタを用いた銀行券の偽造対策として、所与のゾーンにおける適切な標定によって紙幣の表面のパターンおよび裏面のパターンを製作し、これらのパターンが互いに補完し合って一つの最終的なイメージまたは表示物を形成するようにしたものであり、該イメージまたは表示物はたとえば、線図の集合もしくは英数字または人物像や動物画などである。反射光の下で紙幣を観察すると、観察する面に製作したパターンしか見えないが、透過光の下で紙幣を観察すると、補完し合うすべてのパターンが見えて、最終的な表示物が見えるようになっている。変形例によっては、表面と裏面の両方に同一のパターンを製作することで、透過光の下で、互いに重なり合っているパターンにも一致する一つのイメージが観察されるようになっている。
【0003】
これらのパターンはカラーの平版印刷、または、線描もしくは線またはその他の形状の印刷によって製作される。
【0004】
当業者は、これらの印刷を英語の用語で「シースルー」、変形としては「プリントスルー」と形容している。
【0005】
銀行券の中には、坪量と不透明度が十分に低くなっていることで、これらのパターンを観察できるようになっているものがあるが、これは、印刷が平版で、かつ/または、あまり微細ではない限りにおいてである。
【0006】
これらの印刷を、より高い坪量および/または不透明度を有するセキュリティ文書に適用したいと考えた。そこで、透視による表示物の観察という問題に突き当たった。欧州特許出願公開第0388090号明細書では、該問題を改善するために、これらの印刷を不透明度の低いゾーンで行うことが提案されており、このゾーンは、具体的には従来的な方法で得られる透かしによって製作するのだが、該方法とは、つまり、円網タイプの抄紙機のエンボス加工された透かし用のすき網、または長網抄紙機のエンボス加工された透かし用ローラーを用いるものである。
【0007】
このとき提示された課題は、十分に大きなサイズのパターンを製作できるようにするための、大きな面積の均一な低不透明度ゾーンを得ることだったのだが、従来的な透かしによるゾーンでの方法では、狭い表面積の均一なゾーンしか得られない。
【0008】
そこで、欧州特許出願公開第687324号明細書では、二層式で得られた紙を用いることで、0.4cm2を超える表面積をもった、厚みと不透明度の低いゾーンを作ることが提案されており、該紙の二層のうちの一層は厚みの小さい、ひいてはゼロとなったゾーンを含んでいる。この後者の方法は二層紙に限定されており、そのゾーンはかなり脆弱である。セキュリティ紙、とりわけ銀行券は活発な流通にさらされるものであり、したがって、流通に対する高い耐久性、つまり高い力学的耐久性を有していなければならない。
【0009】
また、コピー機やスキャナーのような、パターンを複製するための手段によって、表/裏両面カラー・コピーが可能になっており、また複製手段が、ますます高い分解能を有してきているため、偽造することがより難しいパターンが研究されている。
【0010】
しかしながら、本出願人は、現状では、平版でなされる印刷がもっともよく用いられていることと、該印刷が、表/裏両面のカラーコピー機またはスキャナーによって比較的複製しやすいことも確認した。たとえば、欧州共同体の新通貨であるユーロの現在の紙幣は、その角の一つに、紙幣の両面で、前記紙幣の主要色の平版印刷を有しており、透視によって観察したとき、該印刷が紙幣の価額を形成するようになっている。これらの印刷は不透明度の低いゾーンではなされておらず、紙幣の不透明度によってそれらの観察が可能となっており、平版はかなり粗く、非常に容易に複製できることになってしまう。
【0011】
現状の紙では、複製に対して効果的に闘うために十分な微細さおよび/または複雑さのあるパターンを得ることはできず、これまでに提案されている不透明度の低いゾーンは、非常に微細な描線を見られるようにするには不透明度が高過ぎ、かつ/または、十分に大きなサイズのパターンを印刷できるようにするには十分に広くなく、かつ/または、流通に耐えるには脆弱過ぎるのである。
【特許文献1】欧州特許出願公開第0388090号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第687324号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本出願人は、したがって、より複雑かつ/またはより微細なパターンを製作し、観察することを可能にするセキュリティ紙を提案することを目的としている。
【0013】
本発明の目的は、したがって、現状よりもより複雑かつ/またはより微細であることで複製が困難な表/裏の各印刷体を観察することを可能にする紙を提案することであり、その使用に必要な紙の力学的な特性は十分なものであり、さらに、これらのパターンの印刷ゾーンは十分に広い表面積をもっている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本出願人は、本発明の目的が、全体的に不透明度の低いゾーンを含むセキュリティ紙を提案することで達成されることを見いだしたのだが、該低不透明度ゾーンはメッシュスクリーンをかけたゾーンであって、厚みの減少によって不透明度が下げられたミニゾーンとベラムミニゾーンとの交替で構成されており、該ベラムミニゾーンは、高密度(単位面積あたりの数)によって、紙の通常使用に相応しい特性を保持するために十分な、前記メッシュスクリーンをかけたゾーンの力学的耐久性を維持している。
【0015】
本発明は、したがって、表裏両面の各印刷体を受容するのに適したゾーンを含んでいる印刷可能なセキュリティ紙を提案するものであり、該各印刷体は反射光の下で観察可能で、表/裏両面コピーに対するセキュリティデータ要素として、透過光の下で観察可能な一つのイメージを形成するものであって、該セキュリティ紙は、前記ゾーンが、紙の残りのベラム部分の不透明度より低い、平均的な全体の不透明度を有しているメッシュスクリーンをかけたゾーンであり、前記メッシュスクリーンをかけたゾーンが、紙の残りのベラム部分の厚みに等しい、ほぼ一定した厚みを有したベラムミニゾーンと、ベラムミニゾーンに対して厚みが小さくなっていることで不透明度が低くなっているミニゾーンとの交替で構成されることを特徴とする。前記メッシュスクリーンをかけたゾーンの力学的耐久性は、紙の通常使用に相応しい特性を保持するために十分なものとなっている。
【0016】
本発明により、有利には、少なくとも一つの不透明度の低いゾーンを備えた紙を提供することが可能になるのだが、該低不透明度ゾーンの全表面積は大きなものとすることができ、サイズは、製作しようとする最終的な文書のサイズとパターンに応じて選択されることとなる。前記メッシュスクリーンをかけたゾーンの全表面積は、たとえば1cm2とすることができるが、より大きくても、より小さくても良い。前記ゾーンの最小寸法は、必要であれば比較的大きくすることができ、特に、少なくとも0.5cmである。たとえば、1〜5cmのより小さなサイズをしたゾーンを容易に製作することができる。
【0017】
前記メッシュスクリーンをかけたゾーンは、任意の形状を有しており、とりわけ、円形、長方形、正方形、星形となっている。
【0018】
特定の一つの場合によると、メッシュスクリーンをかけたゾーンおよび/または前記ゾーンのメッシュスクリーン自体が、場合によっては、本発明による紙から作られることになるセキュリティ文書の発信者に特徴的な文字または文字の集合を形成する、カスタマイズされた図案のような特定の図案、または、表面および裏面に印刷されることになるパターンから生じる、最終的な表示物の図案に対応する図案を表すことができる。
【0019】
前記メッシュスクリーンをかけたゾーンは、とりわけオフセット印刷および銅版印刷によって表/裏両面で印刷可能である。
【0020】
前記メッシュスクリーンをかけたゾーンは、好ましくは、欧州特許出願公開第1122360号明細書に記載されているような、メッシュスクリーンによる透かし入れの方法によって製作される。
【0021】
この透かし入れの製紙方法は、すき網を用い、該すき網は、紙の製造の湿潤な段階で利用されるものでマスクアッセンブリを備えており、該マスクアッセンブリは、紙の形成時にマスクの正面にある紙のゾーンに、厚みの小さい、したがって不透明度の低いミニゾーンの集合を創出するものであり、該ミニゾーンは紙の厚みの中に形成され、これらミニゾーンの間のゾーンがベラムミニゾーンを形成する。
【0022】
すき網上にあるマスクは、場合によっては含まれている、セルロース系繊維、綿繊維、ポリオレフィン繊維またはポリエステル繊維のような合成繊維、鉱物繊維といった、紙を製造するための水性懸濁液の構成要素の堆積を制限して、厚みの小さなミニゾーンを形成する。
【0023】
ベラムミニゾーンは、ネットのマスクから生じた、厚みの小さなミニゾーンの間に形成され、紙の残りのベラム部分の厚みと、つまり、メッシュスクリーンをかけたゾーンの範囲外かつその他のセキュリティ要素または印刷体の範囲外のベラム部分の厚みと、ほぼ等しい厚みを有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の第一の実施態様では、対象となるすき網は、紙の形成用のすき網を構成するものである。
【0025】
第二の実施態様では、対象となるすき網は、形成されたシートの引き上げに利用されるものである。
【0026】
第三の実施態様では、対象となるすき網は、引き上げ後に湿ったままとなっているシートに作用する、ウェットプレスに固定されている。
【0027】
第四の実施態様では、対象となるすき網は、透かしローラーに固定されている。
【0028】
本発明の第五の実施態様では、対象となるすき網は、シートの形成ゾーンの外に位置している砂目立て要素に固定されている。
【0029】
すき網は、たとえば、円網抄紙機または長網抄紙機にあってもよい。
【0030】
上述した各実施態様において、マスクアッセンブリを、すき網の厚みにおいて、その内面またはすき網の外面に位置づけることができ、複数のすき網を結合させることができる。
【0031】
好ましくは、マスクのネットは、すき網の厚みの中というよりも、すき網の片面に面して位置している。
【0032】
当然、上述した実施態様のあらゆる組み合わせも可能である。
【0033】
ここから、マスクアッセンブリのさまざまな実施について説明することとする。
【0034】
第一の実施態様では、マスクアッセンブリはモノブロックのグリッドによって構成され、このグリッドは厚みの小さいプレートから作られたものであり、該グリッドの中には、たとえば円形である、すかし窓が製作されており、該すかし窓は、求められる視覚効果に応じて、規則的または不規則的なネットに沿って配置されている。すかし窓の間にあるグリッドの部分がネットのマスクを構成している。
【0035】
すかし窓の数密度(単位面積あたりの数)およびすかし窓のサイズは、当業者によって、紙の坪量、紙の組成、および、前記メッシュスクリーンをかけたゾーンと紙の残りのベラム部分との間で求められる不透明度の変化、ならびに、所望の視覚効果に応じて決定される。実験は、すかし窓の密度とすかし窓のサイズの組み合わせが、前記メッシュスクリーンをかけたゾーンの全体の不透明度に対する決定要素となることを示している。
【0036】
好ましくは、可能な限り多くのすかし窓を備えたマスクのネットが選択されることとなり、これらのすかし窓は小さなサイズをしている。実際、本出願人によって行われた多くの実験によると、そのようなネットによって、コピー防止用の非常に微細なパターンを製作し、かつ観察するためにより良好な、全体的に低い不透明度を有する、メッシュスクリーンをかけたゾーンを備えた紙を得ることが可能になると考えられる。以下に続く不透明度の測定は、ISO2471規格に従ってELREPHO2000スペクトル光度計で行われた。
【0037】
特定の一つの例としては、直径が1.5cmの円形金属プレートにおける、直径が0.8mmである円形のすかし窓であって、かつcm2あたり55の割合の密度を有するものにより、セルロース紙において、前記ゾーンの平均的な全体の不透明度と紙の残りのベラム部分の不透明度との間に、ポイント9.4の不透明度の差を有するメッシュスクリーンをかけたゾーンを得た。
【0038】
特定のもう一つの例によると、直径が1.5cmの円形金属プレートにおける、直径が0.39mmである円形のすかし窓であって、かつcm2あたり115の割合の密度を有するものにより、セルロース紙において、前記ゾーンの平均的な全体の不透明度と紙の残りのベラム部分の不透明度との間に、ポイント21の不透明度の差を有するメッシュスクリーンをかけたゾーンを得た。
【0039】
しかしながら、メッシュスクリーンをかけたゾーンでの良好な力学的耐久性を維持するように気をつけるべきである。これらの多くの実験の結果、本出願人は、不透明度をISO2471規格に従って測定したところ、前記ゾーンの平均的な全体の不透明度と紙の残りのベラム部分の不透明度との間における、ポイント5と12の間に含まれる不透明度の差、好ましくは6と10の間に含まれる不透明度の差によって、流通に関連するさまざまな応力に耐え得るのに適し、とりわけ銀行券に適した力学的耐久性を維持することが可能になると判断した。
【0040】
第二の実施態様では、マスクアッセンブリは、個別にすき網に固定されている小さな部材を並列することで構成される。
【0041】
特定の一つの実施態様では、マスクは、少なくとも部分的に、紙のシートをカスタマイズすることを目的とする特定のパターンと一致しており、該シートの厚みにおいて、マスクのパターンを再現するミニゾーンを創出させる。たとえば、各パターンは、場合によっては、本発明による紙から作られたセキュリティ文書の発信者に特徴的な文字または文字の集合を形成することができる。
【0042】
グリッドは、イメージに基づくフォトエッチングによって容易に製作することができ、このグリッドのすかし窓は、紙のメッシュスクリーンをかけたゾーンのベラムミニゾーンに対応することになる。
【0043】
グリッドは、基本マスクのネットで作ることができ、基本マスクは、幅の小さなブリッジによって互いに結合されている。
【0044】
ネットは、また、たとえば金属製またはプラスチック材料製の薄いプレートを裁断またはエッチングすることで、モノブロックの形で製作することもできる。このネットは、また、たとえばすき網に堆積された、感光交差結合可能なポリマーのような感光性化合物から製作することもでき、すかし窓を形成する部分は光線から保護され、溶剤による溶解によって除去される。
【0045】
ネットは、好ましくは、平らな金属製グリッドによって構成され、該グリッドは、すき網の外面、つまり、紙の繊維質組成の懸濁液と接触している面に固定されている。
【0046】
紙の形成段階で、各基本マスクは、すき網の部位における組成の構成要素の堆積、とりわけ懸濁状繊維の堆積を制限し、この基本マスクの正面に位置する紙のゾーンにおいて、厚みの小さい、つまり不透明度の低いミニゾーンを創出する。
【0047】
ブリッジは、結合部分を創出し、該結合部分もまた、シート上に厚みの小さいミニゾーンを形成する。
【0048】
基本マスクおよび結合点がモノブロックの形で製作されるとき、他の部分から切り離されているような厚みの小さい部分は存在しない。
【0049】
また、すき網の孔を局所的に塞ぐことで、すき網の厚みにおいてマスクのネットを製作することもできる。とりわけ、先に開示した方法に従って、感光性化合物を用いることができる。
【0050】
マスクのネットは、一つの変形実施例では、すかし窓を有するプレートに置き換えられ、このグリッドは、コンピュータによって生成された、メッシュスクリーンをかけたイメージから得られるものである。
【0051】
本発明は、また、コピー機またはスキャナーによる表/裏両面複製に対して保護されているセキュリティ文書を提案することも目的としている。
【0052】
本発明は、したがって、表面および裏面にある各印刷体によって、表/裏両面複製に対して保護されているセキュリティ文書を提案するものであり、これらの印刷体は反射光の下で観察可能なパターンを形成し、前記パターンは透過光の下で観察可能な一つの最終的な表示物を構成するように配置されているものであって、該文書は、基材として前述したようなメッシュスクリーンをかけたゾーンを備えた紙を含むことと、各印刷体が前記メッシュスクリーンをかけたゾーンの表面および裏面にあることとを特徴とする。
【0053】
この不透明度の低いメッシュスクリーンをかけたゾーンによって、該ゾーンに作られる各印刷体の表−裏両面の標定を容易に行うことができ、複雑かつ/または微細なパターンを得ることができるのであり、そして該パターンを容易に透視して観察できることになる。
【0054】
好ましくは、前記印刷体は、前記メッシュスクリーンをかけたゾーンの表面および裏面に実現された各微細線を含んでいることで、反射光の下で観察可能なパターンを形成するようになっており、前記パターンは、互いに重なり合い、または、透過光の下で観察可能な一つの最終的な表示物を構成するように配置されている。このような印刷体の実現は、仏国特許出願02/09221号という番号のもと、2002年7月19日に出願された仏国特許出願公開明細書に記載されている。
【0055】
より特定的には、表面および裏面の前記各微細線の少なくとも一部は、110μm以下の幅、好ましくは100μm以下の幅を有している。
【0056】
好ましくは、透過光の下で観察可能な最終的な表示物は、各微細線の密度の変化および太さの変化によって得られた、隆起的効果および容積的効果(3D効果)を呈する。
【0057】
各微細線を実現する一つの方法として、イメージの二つの隣接する微細線が常に、一方の線が片面に、そしてその次の線が反対面にくるように微細線を印刷することができる。
【0058】
より一般的には、もう一つの方法として、アルゴリズムを用いて、一連の微細線を片面に、それらの線の相補的な微細線を反対面に印刷することができる。
【0059】
微細線の表と裏の集合は、暗号化などの数学的手段によって決定することができる。
【0060】
透視で観察すべきイメージは、一つのイメージそのものであってよいが、より大きな、特にすでに文書上に存在するイメージまたは肖像の一部であることもできる。
【0061】
より特定的には、印刷体は黒色の描線、および/または、グレー・スケールによる描線および/またはカラーの描線、および/または、観察する角度に応じて、もしくは光線のような励起源の作用の下で状態が変化する描線、とりわけ蛍光剤、サーモクロミックまたはフォトクロミックの描線であり、かつ/または、該印刷体は、電磁的特性、とりわけ導電性、磁性または磁気共鳴性を有している。
【0062】
文書は、また、カラーの平版印刷を含むこともできる。
【0063】
より特定的には、本発明は、前述したようなセキュリティ紙またはセキュリティ文書で得られる銀行券を対象としている。
【0064】
当然、セキュリティ文書はその他のセキュリティデータ要素、とりわけセキュリティ・スレッド、フレーク、玉虫色の印刷、透かしなどを含むことができる。
【0065】
ここで、このようなセキュリティ文書の実現の例を説明することとする。
【0066】
第一の実施例によると、前述したように得られた紙のメッシュスクリーンをかけたゾーンにおいて、口髭のある人物の肖像を製作するのだが、該肖像は、顔の中心部、すなわち、口、鼻、または口髭の一部に限定されている。
【0067】
このようなイメージが微細線で構成され、線の一方の集合が表面に、相補的な集合が裏面に印刷されることで、透視で観察可能な肖像を構成するようになっている。
【0068】
イメージは、多少なりとも幅があり、多少なりとも密度の高い線で構成され、微細線の一部は100μmの幅を有している。隆起的効果および容積的効果は、微細線の密度の変化および太さの変化によって得られる。
【0069】
これらの微細線を、紙幣および有価証券を印刷するために用いられる印刷機によって印刷する。これらの機械は、互いに完全に標定された紙の両面を印刷することができるのだが、オフィス用のコピー機またはプリンタ(スキャニング後)はこれを制限された精度でしか行えない。
【0070】
肖像の表/裏両面の印刷体の標定によって、透視の下で観察可能であり、鮮明で質の高いイメージを得ることが可能になる。
【0071】
偽造者が、このイメージを表/裏両面コピーしようとしても、コピーの両面を精確に標定するには至らず、したがって、イメージが鮮明に現れず、各微細線の堆積が生じて、イメージを透視によって見られなくなることになる。
【0072】
一般の人は、したがって、容易かつ即座に、文書または紙幣が偽造されたものであることを判別することができる。
【0073】
第二の実施例によると、前述したように得られた紙のメッシュスクリーンをかけたゾーンにおいて、一つのグリッドを該ゾーンの一方の面に、そして同一のグリッドをその裏面に印刷することで、微細な一つのグリッドを製作する。表/裏両面の印刷体は、紙幣およびセキュリティ文書の印刷に専用の機械で、極度の精度で標定されており、表と裏のグリッドは互いに重なり合っているので、透視の下で観察したときにも、また反射光の下で観察したときにも、単一のグリッドのイメージが現れる。
【0074】
偽造者が、これらのグリッドをコピー機またはプリンタ(スキャニング後)を用いて複製しても、グリッド柄またはグリッド柄の一部にずれが生じることとなり、したがって、反射光の下での観察で表面および裏面のグリッドを見ても、表と裏の二つのグリッドの重なりから生じたグリッドは黒い堆積となり、ひいては黒い正方形となることになる。
【0075】
一般の人は、したがって、容易かつ即座に、文書または紙幣が偽造されたものであることを判別することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表/裏両面複製に対するセキュリティ要素として、透過光の下で観察可能な一つのイメージを形成するような、反射光の下で観察可能な表裏両面の各印刷体を受容するのに適したゾーンを含んでいる印刷可能なセキュリティ紙であって、前記ゾーンが、紙の残りのベラム部分の不透明度より低い、平均的な全体の不透明度を有するメッシュスクリーンをかけたゾーンであり、前記メッシュスクリーンをかけたゾーンが、紙の残りのベラム部分の厚みと等しい、ほぼ一定した厚みを有するベラムミニゾーンと、ベラムミニゾーンに対して厚みが小さくなっていることで不透明度が低くなっているミニゾーンとの交替で構成されることを特徴とするセキュリティ紙。
【請求項2】
前記メッシュスクリーンをかけたゾーンの最小寸法が、少なくとも0.5cmであることを特徴とする、請求項1に記載のセキュリティ紙。
【請求項3】
前記メッシュスクリーンをかけたゾーンの平均的な全体の不透明度と、紙の残りのベラム部分の不透明度との間の不透明度の差が、ISO2471規格に従って測定したところ、ポイント5と12の間に含まれ、好ましくはポイント6と10の間に含まれることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のセキュリティ紙。
【請求項4】
表面および裏面にある各印刷体によって表/裏両面複製に対して保護されたセキュリティ文書であり、これらの各印刷体は反射光の下で観察可能なパターンを形成し、前記パターンは透過光の下で観察可能な一つの最終的な表示物を構成するように配置されたものであって、請求項1〜3のいずれか一つに記載のメッシュスクリーンをかけたゾーンを備えた紙を基材として含むことと、各印刷体が前記メッシュスクリーンをかけたゾーンの表面および裏面にあることとを特徴とするセキュリティ文書。
【請求項5】
各印刷体が、前記メッシュスクリーンをかけたゾーンの表面および裏面にもある各微細線を含んでいることを特徴とする、請求項4に記載のセキュリティ文書。
【請求項6】
表面および裏面の各微細線の少なくとも一部が、110μm以下の幅、好ましくは100μm以下の幅を有することを特徴とする、請求項5に記載のセキュリティ文書。
【請求項7】
各微細線が可変の密度と太さであることで、透過光の下で観察可能な最終的な表示物が隆起的効果および容積的効果を呈するようになっていることを特徴とする、請求項5または請求項6に記載のセキュリティ文書。
【請求項8】
各印刷体、特に各微細線が、黒および/またはグレー・スケールによるもの、および/またはカラーのもの、および/または、観察する角度に応じて、もしくは光線のような励起源の作用の下で状態が変化するもの、とりわけ蛍光剤、サーモクロムまたはフォトクロムのものであり、かつ/または、該印刷体が、電磁特性、とりわけ導電性、磁性または磁気共鳴性を有していることを特徴とする、請求項4〜7のいずれか一つに記載のセキュリティ文書。
【請求項9】
メッシュスクリーンをかけたゾーンおよび/または前記ゾーンのメッシュスクリーンが、特定の図案、とりわけカスタマイズされた図案、または、表面および裏面に印刷したパターンから生じる、最終的な表示物の図案に対応する図案を形成することを特徴とする、請求項4〜8のいずれか一つに記載のセキュリティ文書。
【請求項10】
頻繁な流通に対する耐久性を有することを特徴とする、請求項4〜9のいずれか一つに記載のセキュリティ文書。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一つに記載のセキュリティ紙またはセキュリティ文書で得られた銀行券。


【公表番号】特表2006−512239(P2006−512239A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−566140(P2004−566140)
【出願日】平成15年12月23日(2003.12.23)
【国際出願番号】PCT/FR2003/003874
【国際公開番号】WO2004/062941
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(505252274)アルジョウィギンス セキュリティー (2)
【氏名又は名称原語表記】ARJO WIGGINS SECURITY
【Fターム(参考)】