説明

コラムの置換築造方法

【課題】 従来の深層混合処理工法、流動化処理工法、PIP杭工法およびRGパイル工法等における課題を解決し、対象地盤の性状に左右されず、安定した高品質のコラムの置換築造方法を提供する。
【解決手段】 先端に掘削部を有するスクリューオーガを正回転させながら掘進し、コラムの置換底位置に達した後、該スクリューオーガを正回転乃至逆回転させながら掘削径Dの1/4から1倍程度引上げ、再びコラムの置換底位置まで該スクリューオーガを正回転させながら下降させ、土砂や骨材を含まず、かつ練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである填充材を該コラムの置換底位置にて該スクリューオーガ先端部から吐出しつつ、該オーガを正回転またはほぼ無回転で引上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、土木・建築構造物の基礎工法としてのコラムの置換築造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土木・建築構造物の基礎工法として、従来、深層混合処理工法、流動化処理土工法、PIP杭工法およびRGパイル工法等が提案されている。
深層混合処理工法は、地盤中に掘削撹拌混合装置を挿入し、固化材を填充しながら同時に原地盤と撹拌混合することにより、地盤中に円柱状の地盤改良体を築造する工法(例えば、特許文献1参照)であり、掘削撹拌混合装置を地盤中に掘進させる時に固化材を填充する方法と、逆に上方へ引上げるときに固化材を填充する方法がある。また、固化材は水と撹拌混合してスラリー状にして使用する方法と、固化材を粉末状のまま使用する方法とがある。
流動化処理土工法は、連続スパイラルオーガにより掘削排土した土砂を地上のミキサーで固化材と混合し、ソイルセメントとした後、該ソイルセメントを掘削した場所に再び戻すことにより地盤改良を行うものである(例えば、特許文献2および3参照)。
PIP杭工法は、連続したフライトをもつオーガの中空のシャフトの頭部に駆動装置を取り付け、この装置全体を櫓に吊り下げ、地中に回転させながら所定の深さまで掘削し、所定の深さに達したら、シャフト先端部よりモルタルを圧入しながら徐々に引上げることによってモルタル杭を造成し、オーガ引上げ後ただちに鉄筋篭または形鋼をモルタル杭の中に建て込むものである(例えば、特許文献4および非特許文献1参照)。
また、RGパイル工法は、中空軸を有するアースオーガの回転により土砂を上方に排除しながら所定の深さまで掘削し、次にオーガを引上げつつ、中空軸先端オーガヘッドの噴出口からモルタルを圧入して地中に場所打パイルを造成するものである(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−247228号公報(請求項3、0002)
【特許文献2】特開平8−260450号公報(請求項1)
【特許文献3】特許第3280710号公報(請求項1)
【特許文献4】特許第3306460号公報(0002)
【非特許文献1】地下連続壁工法 設計・施工ハンドブック 社団法人日本建設機械化協会編 技報堂出版株式会社発行(第427頁〜第430頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記深層混合処理工法においては、次のような課題がある。
(1)固化材を填充しながら同時に原地盤と撹拌混合することにより、地盤中に地盤改良体を築造する工法であるため、改良対象地盤の土質の物性が一定でないことに起因して、改良土の品質は特に一軸圧縮強度のバラツキが大きいという欠点がある。そのため、改良する目標強度をバラツキに相応する分だけ設計強度よりも大きくしなければならず、固化材添加量が増え、不経済であった。
(2)深層混合処理工法においては、粘着力の大きな粘性土地盤では共回り現象の発生により混合不良が発生し、目標とする品質を確保出来ないことがあった。
(3)有機質土やピート等の有機質分が多量に含まれている土層やロームや赤ボク黒ボク等の火山灰質粘性土では改良土の硬化不良が発生したりして、目標とする品質を確保出来ないことが多かった。
(4)有機質分が多量に含まれている地盤では、固化材添加量を多く必要とするため、不経済であった。
(5)地盤が複数の土層で構成されている場合は、強度発現が最も低い土層に必要な固化材添加量で全深度範囲に填充するため、他の土層部分には必要以上の量の固化材を添加しなければならず、不経済であった。また、その分だけ建設発生土(残土)量が増え、環境に対する負荷が大きかった。
(6)撹拌混合が確実に行われたとしても、ソイルセメントの発現強度は改良対象の土質に依存するため、事前に予想していない土質が出現した場合には改良強度が目標値に達せず不良工事になる恐れがあった。
(7)深層混合処理工法では腐植土や有機質土などのように大量の固化材を添加しても発現強度が小さいことに起因して、同一荷重を支持するのにより広い面積を改良する必要があった。これに伴い、地盤改良に要する改良対象土量が増えるのみならず、基礎のフーチング体積も増えるため、建設コストが増大していた。
【0005】
また、前記流動化処理土工法にも次のような課題がある。
(1)地上のミキサーで現地の土砂と固化材を混合するため、現地発生土砂を使用するので、施工対象地盤の土質の物性や土質のバラツキに起因して、改良後の品質はバラツキが大きいという欠点がある。また、現地の土砂と固化材を混合するため、所要の一軸強さを得るために多量のセメントを必要とし、不経済となる場合がある。
(2)掘削土砂を地上へ排出し、それを地上のミキサーで固化材と混合してスラリー状の流動化処理土とし、再び元の位置へ戻す工程であるため、施工工程が増え、コストが高い。
(3)一時的とはいえ、改良すべき箇所の土砂を掘削し除去するため、それまでの上載荷重による応力バランスが崩れて支持地盤が緩む。そのため、掘削底地盤の支持力が低下する。
(4)土砂を除去した底面の処理を丁寧にしないと、場所打ち杭の先端スライムと同様な初期沈下の問題が発生する。
【0006】
さらに、PIP杭工法およびRGパイル工法にも次のような課題がある。
(1)モルタル製造に用いる細骨材の水分管理が必要であり、現実的に品質のバラツキが生ずる。
(2)モルタルは細骨材を含有しているため、モルタルはフロー値が18〜20秒の流動性の高いものを使用せざるを得なく、ブリージングが発生しやすくなるばかりか、モルタルの流動性が高いため、掘削土砂等がモルタル中に落ち込み、モルタル中に土砂等が塊状に混入される。
(3)砂質土層、礫質土層などでは、湧水、地下水圧に起因する孔壁崩壊が起る可能性があるので、掘削に際しベントナイト泥水、またはこれに少量のセメントを混合したものを用いる必要がある。また、ベントナイトは産業廃棄物に指定されている汚泥となるため後の処理に莫大な費用が発生する。
(4)その結果、モルタル柱底面と支持地盤との間にスライム層が形成されるため、スライム処理工程が必要となる。
(5)また、PIP杭工法およびRGパイル工法では、孔壁崩壊を防ぐため、施工時に地表面までモルタルで充填する必要がある。また、モルタル充填後、鉄筋篭等を挿入するため、結果として根切り時の頭部整形が困難となる。
【0007】
このような課題を解決するために本出願人は、先端に掘削部を有するスクリューオーガを正回転させながら掘進し、コラムの置換底位置に達した後、土砂や骨材を含まず、かつ練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである填充材を該コラムの置換底位置から該スクリューオーガ先端部から吐出しつつ、該オーガを正回転で引上げ、コラムの置換予定上端位置に達したら、該填充材の吐出を停止させ、その後該オーガを逆回転させながら引上げることにより、地盤土が填充材で置換されたコラムとするコラムの置換築造方法を特願2005−109463として先に出願している。
【0008】
しかしながら、地盤条件によってはスクリューオーガの引上げ時にどうしても負圧の発生が避けられず、そのため図10(a)に示すように孔壁が崩壊し、崩壊した土砂13が填充材に混ざる危険性があった。盛土等の造成された地盤や地下水位よりもコラムの置換底位置の方が深い場合、特に非常に緩い砂地盤では上記現象が生じる危険性が高くなる。
また、地盤によってはスクリューオーガの引上げ時に図10(b)に示すようにスクリューオーガ1の先端付近に付着した土砂13が落下し、落下した土砂が填充材に混ざる危険性があった。
更に、スクリューオーガ先端に位置するスパイラル翼先端に設けられた掘削爪及びスクリューオーガの先端に突設する掘削爪を有する場合は、スクリューオーガの先端に突設す−る掘削爪を有すために地盤によっては、図10(c)に示すように、掘削底部に土砂13が残留する危険性があった。
以上に示すようにいずれかの原因で、掘削底部で土砂が混入した場合は、造成したコラムは、図11(a)(b)に示すように、先端部が不良個所となり、所望した先端支持力を発揮することができなくなる。なお、図11(b)において符号13は土砂、14は土塊を示す。
この発明の目的は、このような課題を解決することであり、対象地盤の性状に左右されず、安定した品質のコラムの築造方法を提供することであり、安定した品質のコラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、このような課題を解決せんと提案されたものであり、この発明のコラムの置換築造方法は、先端に掘削部を有するスクリューオーガを正回転させながら掘進し、コラムの置換底位置に達した後、該スクリューオーガを正回転乃至逆回転させながら掘削径Dの1/4から1倍程度引上げ、再びコラムの置換底位置まで該スクリューオーガを正回転させながら下降させ、土砂や骨材を含まず、かつ練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである填充材を該コラムの置換底位置にて該スクリューオーガ先端部から吐出しつつ、該オーガを正回転またはほぼ無回転で引上げることにより、地盤土が填充材で置換されたコラムとすることを特徴とする。
【0010】
この発明でスクリューオーガの正回転とは、地盤の掘削土がスクリューオーガで地上側に排土される回転を指す。
また、掘削部は下記のいずれかの部分を指す。スクリューオーガ先端に位置するスパイラル翼先端に掘削爪が付けられてなる掘削翼の他にロッド先端に突設された掘削爪を有する場合は、スクリューオーガ先端に位置するスパイラル翼先端に掘削爪が付けられてなる掘削翼とロッド先端に突設された掘削爪が掘削部であり、ロッド先端に突設された掘削爪が存在しない場合は、スクリューオーガ先端に位置するスパイラル翼先端に掘削爪が付けられてなる掘削翼が掘削部である。なお、掘進してコラムの置換底位置に達した後にスクリューオーガを正回転乃至逆回転させながら掘削径Dの1/4から1倍程度引上げる際における「正回転乃至逆回転」という表現は、この発明では正回転と逆回転の他に回転を停止した場合も含む。即ち、本発明では、コラムの置換底位置に達した後にスクリューオーガを回転させずに掘削径Dの1/4から1倍程度引上げる場合もある。
また、掘削径の1/4から1倍程度引上げ、再びコラムの置換底位置までスクリューオーガを正回転させながら下降させ、填充材をスクリューオーガ先端部から吐出しつつ、該オーガを正回転またはほぼ無回転で引上げる際の「正回転またはほぼ無回転」という表現は、この発明では、ほぼ無回転とは回転させていない状態や実質的に回転しないとみなせる非常に低速な回転数で正回転や逆回転する状態を含む。
【0011】
この置換コラムの置換築造方法によれば、殆ど原地盤と填充材を撹拌混合することがないので地上のミキサーで混練した状態の品質とほぼ同じ品質の硬化体(コラム)を得ることができるし、深層混合処理工法によるコラムに比べて品質のバラツキを非常に小さくすることができるし、また、填充材の配合を調整することで硬化体(コラム)の強度を任意に設定し、それを実現することが容易に出来るし、所定の置換範囲内を置換しその上方の非置換範囲に土砂を排土せずにそのまま残置することも可能となる。
また、填充材をスクリューオーガに供給する際にスクイズ式ポンプやプランジャー式ポンプの他にスネーク式ポンプ(スクリュー式ポンプ)も使用できる。
なお、スネーク式ポンプ(スクリュー式ポンプ)により填充材を該オーガ先端部に供給し、該填充材を該オーガ先端部から吐出するようにすると、練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシー(テーブルフロー値)が低いものでも施工できるので特に好ましい。
【0012】
前記填充材は、セメント単独でもよく、他に混和材や混和剤を含んでいるのでもよく、填充材は特に制限されるものではないが、土砂や骨材を含まない填充材である必要がある。
なお、この発明では、骨材とはコンクリートでいう細骨材や粗骨材を意味し、高炉スラグやフライアッシュ等の粉体は骨材ではない。土砂や骨材を含む填充材を使用すると前記したような欠点が生じる。
また、前記填充材は練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである填充材である必要がある。
また、練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーを、テーブルフロー値で150〜400mm、好ましくは150〜330mmに設定することで、掘削孔内における流動充填性を確保し、また孔壁崩壊を防ぎ、さらに置換範囲上方の土砂が置換されて填充材中に落ち込むことを防ぐことが出来る。
練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーを、テーブルフロー値で150mm〜400mmとするのは、150mm未満では、施工時に填充材をポンプで供給する時間がかかりすぎるか、施工不能になり、400mmを超えると固化体中に土砂が多く混入される可能性が高くなるためである。
【0013】
また、上述したように、スネーク式ポンプ(スクリュー式ポンプ)により填充材を該オーガ先端部に供給し、該填充材を該オーガ先端部から吐出するようにすると、練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜260mmのものでも施工できるので特に好ましい。
なお、テーブルフロー値は、JIS R 5201のセメントの物理試験方法において規定されたフローテーブルの直径300mmの代わりに、この直径300mmのフローテーブルの上に直径500mmの板を固定して測定したテーブルフロー値である。
【0014】
このような填充材は、安価なフライアッシュや高炉スラグ粉体を填充材に使用することにより、填充材のコストを下げることが出来るし、填充材の配合を調整することにより、任意の強度を発現するようにすることが可能になる。
【0015】
また、この発明のコラムの置換築造方法で使用可能なスクリューオーガとして、スパイラル翼が連続スパイラルスクリューであるオーガ、スパイラル翼が断続スパイラルスクリューであるオーガ、オーガが少なくともコラム築造長に相当する長さの円筒形のケーシングに覆われているオーガおよびスパイラル翼が複数の断続スパイラルスクリューからなり、かつ該断続スパイラルスクリューのうち少なくともコラム築造に直接関わる部分には外周に円筒状のリングが固設してあるオーガ、等を挙げることができる。勿論、スパイラル翼が同一高さに2枚設けられたオーガでもよい。
【0016】
スパイラル翼が連続スパイラルスクリューであるオーガによれば、汎用的なスパイラルスクリューオーガを使用することにより、容易に置換作業が出来る。
スパイラル翼が断続スパイラルスクリューであるオーガによれば、砂質地盤や礫質地盤のような崩壊性の地盤では、連続スパイラルスクリューで掘進すると、必要以上に掘削土を排出する可能性があるので、断続スパイラルスクリューオーガを使用することにより、排土量を低下させ、周辺地盛の乱れを少なくすることが出来る。その結果として支持地盤の乱れを少なくすることができる。また、断続スパイラルスクリューの外径は掘削翼径と同一であってもよいが、断続スパイラルスクリューの外径は掘削翼径より小径にすればさらに排土量を低下させることが可能になる。
また、オーガが少なくともコラム築造長に相当する長さの円筒形のケーシングに覆われているオーガによれば、削孔周辺部の土砂をスパイラルスクリューにより過剰に引き込むことを防ぐため、砂質土層や礫質土層などでは、湧水、地下水圧に起因する孔壁崩壊が起り易い地盤でも周辺地盤を緩めることなく、原地盤との置換がより確実になる。それと共に支持地盤が緩められることなく、置換したコラムの支持力が低下することがない。前記円筒形のケーシングは、スクリューオーガと同軸的に、かつ相対的に正逆回転可能に装着されているか、またはケーシングが独立に回動可能に挿着されているか、ケーシングが回転しないように固設されてもよい。
さらに、スパイラル翼が複数の断続スパイラルスクリューからなり、かつ該断続スパイラルスクリューのうち少なくともコラム築造に直接関わる部分には外周に円筒状のリングが固設してあるオーガによれば、孔壁崩壊を防ぐ作用があり、簡便な装置でケーシングを使用するときと同様に確実な原地盤との置換ができる。また、地上に引上げたオーガの土砂落とし作業がケーシングを使用するときに比べて容易に出来る。
なお、スパイラルスクリューに縁板が付いているスクリューオーガの場合は、スクリュー部に沿って排出されつつある掘削土がスクリュー端部からこぼれ落ちる可能性が一番低くなる。
【0017】
また、スクリューオーガの先端に有する掘削部として、スクリューオーガ先端に位置するスパイラル翼先端に設けられた掘削翼及び該掘削翼の先端に設けられた掘削爪を例示できる。この掘削翼の掘削爪およびスパイラル翼先端の掘削爪は、掘削(特に硬質地盤)において威力を発揮するが、この掘削爪は地盤状況等によっては平爪であってもよい。
掘削部の存在で掘削効率が向上する。また、置換コラム築造終了後に掘削爪を突設した掘削翼で填充材置換上端部を整形すると、上端部は爪の形状通りに整形されるため、填充材が固結したときに凹凸ができる。したがって、後工程で置換コラム上端面の再整形作業が必要となる。平爪を用いることにより、置換工程で平面状に仕上げることが出来るので再整形作業が不要となる。
【0018】
なお、請求項4の発明に示したように、填充材をオーガ先端部から吐出しつつ、該オーガを正回転またはほぼ無回転で引上げ、コラムの置換予定上端位置に達したら、該填充材の吐出を停止させ、その後該オーガを正回転乃至逆回転させながら引上げるコラムの置換方法によりコラムの上方に土砂が存在している置換コラムとした場合でも、填充材のテーブルフロー値が150〜400mmであれば、置換範囲上方の残置された土砂が填充材に落ち込み混入されることが極めて少ない。それ故に土砂が混入されていない良品質の置換コラムとなる。なお、填充材のテーブルフロー値が150〜330mmであれば、より崩落が生じやすい地盤条件であっても、確実に土塊等が混入しない良品質の置換コラムとすることができる。
【0019】
また、コラムの置換底位置に達した後、該スクリューオーガを正回転乃至逆回転させながら掘削径Dの1/4から1倍程度引上げる際や、その位置から再びコラムの置換底位置まで該スクリューオーガを正回転させながら下降させる際に該スクリューオーガ先端部から填充材を吐出することなく実施しても、掘削底部に落下したり残留したりする土砂をその後のスクリューオーガの引上げ時に排出できる。
【0020】
しかしながら地盤状況によっては掘削底部に落下したり残留したりする土砂を充分に排出できない場合や、コラムの置換底に達した後に該スクリューオーガを正回転乃至逆回転させながら掘削径Dの1/4から1倍程度引上げる際に負圧の発生により孔壁が崩壊する場合がある。このように地盤状況によっては、掘削底の土砂が充分に排出できない場合がある。
【0021】
このような地盤においては、請求項2に記載した発明のように、コラムの置換底位置に達した後、該スクリューオーガを正回転乃至逆回転させながら掘削径Dの1/4から1倍程度引上げる際に、該コラムの置換底位置にて該スクリューオーガ先端部から填充材を吐出することにより、掘削底部に落下したり残留したりする土砂を填充材により上方に浮き上がらせて、その後のスクリューオーガの引上げ時に排出できるようになる。
それと共に該スクリューオーガを正回転乃至逆回転させながら掘削径Dの1/4から1倍程度引上げる際に負圧が発生せずに孔壁が崩壊しない。
【0022】
更に、請求項3に記載した発明のように、再びコラムの置換底位置まで該スクリューオーガを正回転させながら下降させる際にも該スクリューオーガ先端部から填充材を吐出することにより、掘削底部に落下したり残留したりする土砂を填充材により更によく上方に浮き上がらせることができるので、地盤条件が劣悪な場合でも、その後のスクリューオーガの引上げ時の土砂の排出をより完全にすることができる。しかしながら、多くの場合、コラムの置換底位置に達した後、該スクリューオーガを正回転乃至逆回転させながら掘削径Dの1/4から1倍程度引上げる際に、該コラムの置換底位置から該スクリューオーガ先端部から填充材を吐出することのみで対処できる。
【0023】
なお、請求項2に記載した発明のように正回転乃至逆回転させながら掘削径Dの1/4から1倍程度引上げる際に、該コラムの置換底位置から該スクリューオーガ先端部より填充材を吐出する場合や、請求項3に記載した発明のように、スクリューオーガを正回転乃至逆回転させながら掘削径Dの1/4から1倍程度引上げる際、及び再びコラムの置換底位置まで該スクリューオーガを正回転させながら下降させる際にも該スクリューオーガ先端部から填充材を吐出する場合は、排出する最後の土砂部分に填充材が混在されるため、排土の処分として填充材が混在された土砂を区分して処理する必要があるので、これらの工程で填充材を吐出せず、填充材が混在された土砂を排出しないことが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
この発明のコラムの置換築造方法によれば、次のような効果を奏する。
(1)地盤状態によらず、コラムの先端部においても土砂が填充材中に混入されないようにすることができる。その結果、特にコラムの先端部での置換が確実に行えて、ほぼ置換コラム全長に亘って地上のミキサーで混練したときとほぼ同じ状態の品質のコラムの築造ができ、一軸圧縮強度のバラツキの小さい置換コラムの築造ができる。
(2)この発明のコラムの置換築造方法によれば、従来の工法に使用されていた流動性の高いモルタルに比べると、この発明に使用する填充材は極めて流動性を低くすることができるため、置換範囲上方の土砂が置換された填充材中に落ち込むことを防ぐことが出来る。その結果、ほぼ置換コラム全長に亘って地上のミキサーで混練したときとほぼ同じ状態の品質のコラムの築造ができ、一軸圧縮強度のバラツキの小さい置換コラムの築造ができる。
(3)また、この発明は、従来の工法に使用されていた流動性の高いモルタルに比べると、この発明に使用する填充材は極めて流動性を低くすることができるため、置換範囲上方の土砂が置換された填充材中に落ち込むことを防ぐことが出来る。その結果、所定の置換範囲内を置換し、その上方を非置換範囲として掘削土を残した空削部とすることが可能となる。
(4)(2)と同様の理由から、深層混合処理工法によるコラムに比べて品質のバラツキを非常に小さくすることができる。
(5)また、同様の理由から、固化体の強度を任意に設定し、それを実現することが容易に出来る。
【0025】
(6)填充材の配合を調整することにより、任意の強度を発現するようにすることが可能になる。
(7)安価なフライアッシュや高炉スラグ粉体を混和材として填充材に使用した場合は、填充材のコストを下げることが出来る。
(8)掘削部の存在で掘削効率が向上する。また、掘削爪を設けたスパイラル翼先端または掘削爪を突設した掘削翼で填充材置換上端部を整形すると、上端部は爪の形状通りに整形されるため、填充材が固結したときに凹凸ができる。したがって、後工程で置換コラム上端面の再整形作業が必要となる。平爪を用いることにより、置換工程で平面状に仕上げることが出来るので再整形作業が不要となる。
(9)この発明によって得られた置換コラムは高い品質のものとすることができるので、従来の地盤改良コラムに比して同一荷重を支持するために少ない面積のコラムで充分となる。そのため基礎のフーチング体積も少なくなり、フーチングのコンクリート量の低減のみならず、フーチング構築に伴う建設発生土の減少を図ることが可能となり、建設コストを大幅に縮減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、スクリューオーガとしてスパイラル翼が連続する連続スクリューオーガを使用した場合の例を用いて、この発明の実施の形態を図面と共に詳細に説明する。図1は、この発明の第1の実施の形態を施工工程順(a)(b)(c)(d)(e)(f)(g)に示す正面説明図である。
このコラムの置換築造方法は、先ず、図1(a)に示すように、築造する置換コラムの中心位置にスクリューオーガ1をセットし、次に図1(b)に示すようにスクリューオーガ1を正回転しながらコラムの置換底位置となる所定深度まで掘進する。スクリューオーガ1が所定深度に到達したら図1(c)に示すようにスクリューオーガ1を正回転乃至逆回転させながら掘削径Dの1/4から1倍程度(図中にhで示す長さ)引上げる。その位置から再びコラムの置換底位置まで図1(d)に示すようにスクリユーオーガ1を正回転させながら下降させる。このコラムの置換底位置でスクリューオーガ1の先端部から土砂や骨材を含まず、かつ練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである填充材を吐出しつつ、図1(e)に示すようにスクリューオーガ1を正回転で引上げる。この場合、正回転する代わりにほぼ無回転で引上げてもよい。図1(f)に示すようにコラム11の置換予定上端位置11aに達したら、該填充材の吐出を停止させ、その後、図1(g)に示すようにスクリューオーガ1を逆回転させながら引上げることにより、地盤土が填充材で置換されたコラム11が築造される。なお、この図1に示す例では地上側に置換コラムが存在していない空掘部12を存在させている。また、填充材の吐出を停止させ、その後、スクリューオーガ1を引上げる際に逆回転させる代わりにほぼ無回転とさせたり正回転させることも可能であるが、ほぼ無回転または正回転よりも逆回転させた方が、空掘部12に掘削土を残置させることができるので好ましい。
【0027】
図2は、この発明の第2の実施の形態を施工工程順(a)(b)(c)(d)(e)(f)(g)に示す正面説明図である。
この図2に示すコラムの置換築造方法は、スクリューオーガ1が所定深度(コラムの置換底位置)に到達したら、正回転乃至逆回転させながら掘削径Dの1/4から1倍程度(図中にhで示す長さ)引上げる際、又は、掘削径Dの1/4から1倍程度(図中にhで示す長さ)引上げる際とその位置から再びコラムの置換底位置まで正回転させながら下降させる際とも填充材を吐出させるものである。
【0028】
即ち、先ず、図2(a)に示すように、築造する置換コラムの中心位置にスクリューオーガ1をセットし、次に図2(b)に示すようにスクリューオーガ1を正回転しながらコラムの置換底位置(所定深度)まで掘進する。スクリューオーガ1が所定深度に達したらスクリューオーガ1の先端部から土砂や骨材を含まず、かつ練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである填充材を吐出しつつ図2(c)に示すようにスクリューオーガ1を正回転乃至逆回転させながら掘削径Dの1/4から1倍程度(図中にhで示す長さ)引上げる。その位置から填充材の吐出を停止し再びコラムの置換底位置まで図2(d)に示すようにスクリューオーガ1を正回転させながら下降させる。次にこのコラムの置換底位置でスクリューオーガ1の先端から前記と同じ填充材を吐出しつつ図2(e)に示すようにスクリューオーガ1を正回転で引上げる。この場合、正回転する代わりにほぼ無回転で引上げてもよい。図2(f)に示すようにコラム11の置換予定上端位置11aに達したら、該填充材の吐出を停止させ、その後、図2(g)に示すようにスクリューオーガ1を逆回転させながら引上げることにより、地盤土が填充材で置換されたコラム11が築造される。この図2に示す例では、地上側に置換コラムが存在しない空掘部12を存在させている。
なお、コラムの置換予定上端位置11aに達したら填充材の吐出を停止させ、その後、スクリューオーガ1を引上げる際に逆回転させる代わりに正回転させることも可能であるが、正回転よりも逆回転させた方が、空掘部12に掘削土を残置させることができるので好ましい。
【0029】
また、上記工程において所定深度から正回転乃至逆回転させながら掘削径Dの1/4から1倍程度(図中にhで示す長さ)引上げた位置から再びコラムの置換底位置まで正回転させながら下降させる際にもスクリューオーガ1の先端から填充材を吐出してもよい。即ち、図2(c)に示したスクリューオーガ1を正回転乃至逆回転させながら掘削径Dの1/4から1倍程度(図中にhで示す長さ)引上げる際にも、掘削径Dの1/4から1倍程度(図中でhで示す長さ)引上げた後、その位置から再びコラムの置換底位置まで図2(d)に示すようにスクリューオーガ1を正回転させながら下降させる際にも填充材を吐出させることも可能である。
なお、いずれの場合でもスクリューオーガ1の引上げ時の填充材の吐出量は、スクリューオーガ1の引上量(速度)に見合う(相当する)量にすることが特に好ましい。
【0030】
図3は、縦軸を深度とし、横軸を時間軸として示した施工工程図であり、図3(a)は図1を用いて説明した施工工程を示し、図3(b)は図2を用いて最初に説明した施工工程を示し、図3(c)は図2を用いて2番目に説明した施工工程を示している。これによればスクリューオーガ1の掘進(下降)、引上げおよび填充材の吐出がどの工程で行なわれ、填充材の吐出区間はどこであるかがよく理解できる。
【0031】
なお、スクリューオーガ1を正回転乃至逆回転させながら掘削径Dの1/4から1倍程度(図中にhで示す長さ)引上げる際に、図3(b)や(c)のように填充材を吐出する場合においては、スクリューオーガ1を正回転させた方が置換コラム先端部内に残置される土塊量が逆回転させた場合よりも少なくなる傾向がある。これは正回転引上げの方が逆回転引上げよりも先端部分の土砂を掻き上げる効果がより高いためと思われる。しかし、図3(a)に示す方法のように、掘削径Dの1/4から1倍程度(図中にhで示す長さ)の引上げ工程を行う際には填充材を吐出せずにスクリューオーガ1を正回転で引上げると、非常に緩い地盤など崩壊しやすい地盤では先端地盤を緩める虞があるため、そのようなときは逆回転で引上げる方がよい。
このように逆回転で引上げると、スクリューオーガ1先端から土砂が落下するが、落下する土砂量は非常に緩い地盤においては正回転で引上げたときの残留土砂量よりも少なく、かつ図1(e)に示し図3(a)に示した填充材を吐出しながら正回転でスクリューオーガ1を引上げる際に、先に落下した土砂も上方へ掻き上げることができる。
なお、掘削径Dの1/4から1倍程度引上げる際に填充材を吐出しない場合でも、崩壊の虞がない地盤、例えば硬質地盤では正回転か無回転で引上げる方が好ましい。即ち、このような地盤先端地盤を緩める虞がないため、無回転で引上げることにより土を落下させずにスクリューオーガを引上げることができ、また正回転で引上げると土砂を掻き上げた状態で引上げることができ、崩壊の虞がない地盤(例えば硬質地盤)において逆回転する場合にも生じる虞がある土砂の落下を防ぐことができるので、より好ましい。
掘削径の1/4から1倍程度引上げ、再びコラムの置換底位置までスクリューオーガを正回転させながら下降させ、填充材をコラムの置換位置にてスクリューオーガ先端部から吐出しつつ、該オーガを引上げる際に、スクリューオーガは正回転させてもほぼ無回転であっても置換コラムの品質には変わりがないが、非常に緩い地盤などの崩壊しやすい地盤では無回転またはほぼ無回転で引上げる方が地盤を緩める虞がなく、好ましい条件である。
【0032】
図4(a)〜(g)は、この発明のコラムの置換築造方法に採用可能なスクリューオーガ1を例示したものであり、同一構成要素には同一符号を付して重複する説明は省略する。
図4(a)は、連続スクリューオーガの正面図で、オーガ軸3に連続するスパイラル翼4が設けられたスクリューオーガ1であり、先端部には複数の掘削爪5が突設され、掘削部2となっており、オーガ軸3の先端乃至先端近傍には填充材の吐出口6が設けられている。この連続スクリューオーガ1は、スパイラル翼4が連続しているので、掘削の際の掘削土の排出の能力は高くなる。
図4(b)は、断続スクリューオーガの正面図で、オーガ軸3に1枚羽根4aのスパイラル翼4が断続(間欠的)して設けられたスクリューオーガ1であり、図4(c)は別の断続スクリューオーガの正面図で、オーガ軸3に2枚羽根4b、4bのスパイラル翼4が断続(間欠的)して設けられたスクリューオーガ1である。この図4(b)(c)に示す断続スクリューオーガ1は、掘削の際の掘削土の排土量を低下させることができ、周辺地盤の乱れを少なくすることができる。それ故に、支持地盤も乱れの少ないものとすることができる。
【0033】
図4(d)(e)は、リング付き断続スクリューオーガの半断面正面図であり、円筒状リングの1/4周を切断した状態で示しているが、実際には、図4(b)および(c)に示す断続(間欠的)して設けられたスパイラル翼4の外周に円筒状のリング7が固設されたリング付き断続スクリューオーガ1である。このリング7は、断続して設けられた全てのスパイラル翼4の外周に固設する必要はなく、少なくともコラム築造に直接関わる部分のスパイラル翼4の外周に固設されていればよい。このリング付き断続スクリューオーガ1では、少なくともコラム築造に直接関わる部分のスパイラル翼4の外周に円筒状のリング7が固設されているので、掘削土の排土量を低下させ周辺地盤の乱れを少なくし、填充材への周辺地盤からの地盤土の混入も抑えられるので、原地盤との置換が確実となり、品質のよい置換コラムが築造できる。なお、図示は省略したが円筒状のリング7の下端周縁に掘削爪を設けてもよい。この場合、全てのリング7に設けてもよいし、適宜のリング7に設ける構成でもよいが、少なくとも最下端部のリング7に設けると掘削効率が向上するし、硬質地盤でも威力を発揮する。
【0034】
図4(f)は、縁板付き断続スクリューオーガの正面図であり、オーガ軸3に断続(間欠的)して設けられたスパイラル翼4に縁板8が設けられた縁板付き断続スクリューオーガ1である。この縁板付断続スクリューオーガ1は、スクリューに沿って排出されつつある掘削土がスクリュー端部からこぼれ落ちるのを低下させることができる。図では断続スクリューオーガに縁板を取り付けた例を示したが、連続スクリューオーガに縁板を付けても良い。
図4(g)は、ケーシングオーガの半断面正面図であり、オーガ軸3に設けられたスパイラル翼4が、少なくともコラム築造長に相当する長さのケーシング9で覆われているケーシングオーガ1である。このケーシング9の先端周縁に掘削爪10を設けると、掘削効率が向上するので好ましい。このケーシングオーガ1によればケーシング9を備えているので、原地盤の掘削土の排出が確実となる。また、周辺地盤が崩壊して削孔内へ落ち込むこともなく、従って、周辺地盤の緩みによる鉛直支持力や水平支持力の低下もない。また、置換された填充材に周辺地盤からの地盤上の混入も防止される。それにより原地盤との置換がより確実となり、より品質のよい置換コラムが築造できる。
【0035】
なお、スクリューオーガ1の先端に設けられた掘削爪を図5に示すように平爪5aとして、置換コラム築造終了後に該平爪5aで填充材で置換されたコラムの上端部を整形すると、置換工程でコラム上端を平面状に仕上げることが出来る。図5において(a)はスクリューオーガの正面図であり、(b)は側面図である。
【0036】
前記填充材は、セメント単独でもよく、他に混和材や混和剤を含んでいるのでもよく、填充材は特に制限されるものではないが、土砂や骨材を含まない填充材である必要がある。
例えば、水硬性を有する粉体とポゾラン性を有する粉体と水を主成分とする混合物とからなり、練り上がり時乃至施工時のコンシステンシー(軟らかさの程度、粘性)を、テーブルフロー値で150mm〜400mm、好ましくは150〜330mmに設定したものを示すことができる。水硬性を有する粉体とポゾラン性を有する粉体と水を主成分とする混合物としては、例えば、(1)ポルトランドセメントに石炭灰を配合し、これを水で混練しスラリー化したもの、(2)ポルトランドセメントに粉末のスラグを配合し、これを水で混練しスラリー化したもの、等を例示できる。安価なフライアッシュや高炉スラグ粉体を使用することによってコストを下げることができる。なお、填充材には、増粘材(例えば、塩基性炭酸マグネシウム、ベントナイト、メチルセルロースやカルボキシメチルセルロースなど)、減水剤および流動化剤などを添加してもよい。
【0037】
この填充材の練り上がり時乃至施工時のコンシステンシー(軟らかさの程度、粘性)を、テーブルフロー値で150mm〜400mm、好ましくは150〜330mmに設定すると、填充材で置換された未硬化の固化体(コラム)中に置換範囲上方の土砂が落ち込むことを防ぐことができる。150mm未満では粘度が高すぎてポンプで供給することが困難となり、今のところ施工不可であり、400mmを超えると粘度が低すぎて土砂の落ち込みを防ぐのに不充分であるからである。また、ポルトランドセメントに代えて高炉セメントやフライアッシュセメントを使用してもよい。
【0038】
次に実施例を挙げて説明する。この実施例では、図5(a)(b)に示すスクリューオーガの先端掘削爪が平爪5aのスクリューオーガ1を用いて、図1および図2に示す施工工程で実施した。
また、この実施例で使用した填充材は、JIS A 6201にて規定されているフライアッシュII種の品質のフライアッシュ6質量部に対し普通ポルトランドセメント1質量部の割合で、前記フライアッシュと普通ポルトランドセメント合計質量に対する水の質量を32.5%とした配合比のものであり、これらの材量をミキサーで撹拌混合したものであり、練り上がり時、即ち施工時のコンシステンシーがテーブルフロー値で220mmであるものを使用した。
また、この施工を行った地盤は、非常に緩い砂地盤であり、直径700mm、長さ1.5mの置換コラムを築造した。なお、この置換コラムの上部には1mの空掘部を有するように施工した。
【実施例1】
【0039】
この実施例1では、図1および図3(a)に示す工程で施工した。先ず、図1(a)に示すように築造する置換コラムの中心位置にスクリューオーガ1をセットし、次に図1(b)に示すようにスクリューオーガ1を正回転させながら掘進速度を毎分2mとして所定深度である地表から2.5mの位置まで掘進した。スクリューオーガ1が所定深度である地表から2.5mの位置に到達したら、図1(c)に示すようにスクリューオーガ1を逆回転させながら毎分0.25mの引上げ速度で掘削径Dの1/2である350mm引上げ、その位置から再びコラムの置換底位置まで図1(d)に示すようにスクリューオーガ1を正回転させながら毎分0.25mの速度で下降させ、このコラムの置換底位置でスクリューオーガ1先端部から前記した填充材を吐出しつつ、図1(e)に示すようにスクリューオーガ1を毎分0.25mの速度で正回転で引上げ、図1(f)に示すようにコラムの置換予定上端位置11aである地表から1mの位置に達したら、該填充材の吐出を停止させ、その後、図1(g)に示すようにスクリューオーガ1を逆回転させながら引上げることにより、地盤土が填充材で置換されたコラム11を築造した。
【実施例2】
【0040】
この実施例2では、図2および図3(c)に示す工程で施工した。即ち、先ず、図2(a)に示すように築造する置換コラムの中心位置にスクリューオーガ1をセットし、次に図2(b)に示すようにスクリューオーガ1を正回転させながら掘進速度を毎分2mとして所定深度である地表から2.5mの位置まで掘進した。スクリューオーガ1が所定深度である地表から2.5mの位置に到達したら、スクリューオーガ1先端部から前記した填充材を吐出しつつ、図2(c)に示すように、スクリューオーガ1を正回転させながら毎分0.25mの引上げ速度で掘削径Dの1/2である350mm引上げ、その位置にてスクリューオーガ1先端部から前記した填充材を吐出しつつ再びコラムの置換底位置まで図2(d)に示すようにスクリューオーガを正回転させながら毎分0.25mの速度で下降させ、コラムの置換底位置に到達したらスクリューオーガ1先端部から前記した填充材を吐出しつつ、図2(e)に示すようにスクリューオーガ1を毎分0.25mの速度で正回転で引上げ、図2(f)に示すようにコラムの置換予定上端位置11aである地表から1mの位置に達したら、該填充材の吐出を停止させ、その後、図2(g)に示すようにスクリューオーガ1を逆回転させながら引上げることにより、地盤土が填充材で置換されたコラム11を築造した。
【0041】
なお、前記した実施例1の場合も実施例2の場合も、スクリューオーガ1の回転数は、全工程で毎分17回転と一定の回転数にした。また、スクリューオーガ1先端から吐出する場合の填充材の量は、引上げ時も下降時も毎分97リットルとした。
【比較例】
【0042】
図8は、この比較例を施工工程順(a)(b)(c)(d)(e)に示す正面説明図であり、この発明の実施の形態と同一構成要素には同一符号が付してある。
先ず、図8(a)に示すように、築造する置換コラムの中心位置にスクリューオーガ1をセットし、次に図8(b)に示すようにスクリューオーガ1を正回転させながら掘進速度を毎分2mとして所定深度である地表から2.5mの位置まで掘進した。スクリューオーガ1が所定深度である地表から2.5mの位置に到達したら、図8(c)に示すように、このコラムの置換底位置でスクリューオーガ1先端部から前記した填充材を吐出しつつ、スクリューオーガ1を毎分0.25mの速度で正回転で引上げ、図8(d)に示すようにコラムの置換予定上端位置11aである地表から1mの位置に達したら、該填充材の吐出を停止させ、その後、図8(e)に示すようにスクリューオーガ1を逆回転させながら引上げることにより、地盤土が填充材で置換されたコラム11を築造した。
【0043】
図9は、前記比較例の工程を、縦軸を深度とし、横軸を時間軸として示した施工工程図であり、スクリューオーガ1の掘進、引上げおよび填充材の吐出がどの工程で行なわれ、填充材の吐出区間はどこであるかがよく理解でき、また、この図9と図3(a)(b)(c)とを比較すると、本発明とどの工程が違うのかがよく理解できる。
【0044】
なお、この比較例で使用したスクリューオーガ1および填充材は、前記実施例と同じものを使用し、施工した地盤も同じ地盤で実施した。築造した置換コラムは直径700mm、長さ1.5mであり、置換コラム11の上部には1mの空掘部12を有するものとし、実施例と同様とした。また、スクリューオーガの回転数は、全工程で毎分17回転と一定の回転数にし、スクリューオーガ先端から吐出する填充材の量は、毎分97リットルとし、実施例と同様とした。
【0045】
次に、前記実施例1および2で築造した置換コラムと、比較例で築造した置換コラムを、施工後5日経過後に、周辺地盤を掘削して置換コラムを引き揚げ、その先端形状および先端部を切断した断面を観察した結果は、次の通りであった。
(1)図6は、実施例1で築造した置換コラムを示し、(a)は写真による斜視図、(b)は先端の断面図である。この図6(a)(b)に示すように実施例1で築造した置換コラムは、置換コラムの下端のみに僅かの土砂13の混入が認められたが、土塊の混入は認められず、置換コラムは所期の強度が発揮されていた。
(2)図7は、実施例2で築造した置換コラムを示し、(a)は写真による斜視図、(b)は先端の断面図である。この図7(a)(b)に示すように実施例2で築造した置換コラムは、置換コラムの下端においても殆ど土砂の混入は認められず、置換コラムは所期の強度が発揮されていた。
(3)図11は、比較例で築造した置換コラムを示し、(a)は写真による斜視図、(b)は先端の断面図である。この図11(a)(b)に示すように比較例で築造した置換コラムは、対象地盤が緩い砂地盤であったために、置換コラムの下端に土塊14の混入および土砂13の混入が認められ、置換コラムは先端部で所期の強度が発揮されなかった。
このように実施例1および2で築造した置換コラムと比較例で築造した置換コラムとを比較すると、実施例1および2で築造した置換コラムの方が、土砂や土塊の混入が殆どなく、所期の強度を発揮し、この発明の優れていることが理解できる。
【0046】
なお、前記実施の形態および実施例は、この発明を制限するものではなく、この発明は要旨を逸脱しない範囲おいて種々の変形が許容される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明の第1の実施の形態を施工工程順(a)(b)(c)(d)(e)(f)(g)に示す正面説明図である。
【図2】この発明の第2の実施の形態を施工工程順(a)(b)(c)(d)(e)(f)(g)に示す正面説明図である。
【図3】縦軸を深度とし、横軸を時間軸として示した実施の形態における施工工程図(a)(b)(c)である。
【図4】この発明のコラムの置換築造方法に採用可能なスクリューオーガを例示(a)(b)(c)(d)(e)(f)(g)した正面図である。
【図5】スパイラル翼の先端に平爪を設けたスクリューオーガを示す正面図(a)および側面図(b)である。
【図6】実施例1で築造した置換コラムを示す写真による斜視図(a)および先端の断面図(b)である。
【図7】実施例2で築造した置換コラムを示す写真による斜視図(a)および先端の断面図(b)である。
【図8】比較例を施工工程順(a)(b)(c)(d)(e)に示す正面説明図である。
【図9】縦軸を深度とし、横軸を時間軸として示した比較例における施工工程図である。
【図10】掘削孔底部に土砂が残留する様子を態様別(a)(b)(c)に示す正面説明図である。
【図11】比較例で築造した置換コラムを示す写真による斜視図(a)および先端の断面図(b)である。
【符号の説明】
【0048】
1 スクリューオーガ
2 掘削部
3 オーガ軸
4 スパイラル翼
4a 1枚羽根のスパイラル翼
4b 2枚羽根のスパイラル翼
5 掘削爪
5a 平爪
6 吐出口
7 リング
8 縁板
9 ケーシング
11 置換コラム
11a コラムの置換予定上端位置
12 空掘部
13 土砂
14 土塊
D 掘削径
h コラムの置換底位置より一旦引上げる距離
(Dの1/4から1倍程度の距離)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に掘削部を有するスクリューオーガを正回転させながら掘進し、コラムの置換底位置に達した後、該スクリューオーガを正回転乃至逆回転させながら掘削径Dの1/4から1倍程度引上げ、再びコラムの置換底位置まで該スクリューオーガを正回転させながら下降させ、土砂や骨材を含まず、かつ練り上がり時乃至施工時の填充材のコンシステンシーがテーブルフロー値で150〜400mmである填充材を該コラムの置換底位置にて該スクリューオーガ先端部から吐出しつつ、該オーガを正回転またはほぼ無回転で引上げることにより、地盤土が填充材で置換されたコラムとすることを特徴とするコラムの置換築造方法。
【請求項2】
コラムの置換底位置に達した後、該スクリューオーガを正回転乃至逆回転させながら掘削径Dの1/4から1倍程度引上げる際にも、該コラムの置換底位置から該スクリューオーガ先端部から填充材を吐出することを特徴とする請求項1記載のコラムの置換築造方法。
【請求項3】
コラムの置換底位置に達した後、該スクリューオーガを正回転乃至逆回転させながら掘削径Dの1/4から1倍程度引上げる際、及び再びコラムの置換底位置まで該スクリューオーガを正回転させながら下降させる際にも該スクリューオーガ先端部から填充材を吐出することを特徴とする請求項1記載のコラムの置換築造方法。
【請求項4】
填充材をオーガ先端部から吐出しつつ、該オーガを正回転またはほぼ無回転で引上げ、コラムの置換予定上端位置に達したら、該填充材の吐出を停止させ、その後該オーガを正回転乃至逆回転させながら引上げることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のコラムの置換築造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−191857(P2007−191857A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−8309(P2006−8309)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【出願人】(000133881)株式会社テノックス (62)
【Fターム(参考)】