説明

コラーゲンを基にした止血スポンジ

【課題】吸収性コラーゲン物質含有の即製圧縮スポンジを提供する。
【解決手段】コラーゲンおよびその中に均質に分散した血液凝固のアクティベータまたはプロアクティベータを基とした止血スポンジ(このスポンジは、乾燥され、少なくとも2%、好ましくは2から25%、さらに好ましくは10から20%の水分を含む)およびこのスポンジを製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲンおよびトロンビンを基にした止血スポンジ、該スポンジを製造する方法、該スポンジを含有する創傷被覆、および創傷被覆をつくるためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトおよび動物起源の凝固因子に基づく膠は、古くから知られている。フィブリノーゲン、第8因子を基にした組織接着剤の製造方法は、特許文献1、2および3に記載されている。組織接着剤は、トロンビン含有の別個の成分と共に常に用いられる。トロンビンは、フィブリノーゲンがフィブリンを形成するのに、および第XIII因子が活性第XIIIa因子を形成するのに酵素的に作用する。第XIIIa因子はフィブリンを架橋し、安定なフィブリン血餅をつくる。
【0003】
広い出血部位に適用されるとき、組織接着剤は、膜で傷口を覆う前にコラーゲン膜上に常に適用される。特許文献4に、フィブリノーゲンおよび第XIII因子と結合したコラーゲンを基にした組織接着剤について記載されている。この物質は凍結乾燥形態で提供されて、使用に供される。コラーゲン性平板物質にフィブリノーゲンおよび第XIII因子含有の溶液をしみ込ませ、この物質を凍結乾燥することによりフィブリノーゲンおよび第XIII因子がコラーゲンに結合する。
【0004】
特許文献5による組織密封コラーゲン性外科的包帯は、コラーゲンおよびフィブリノーゲン、さらに選択的に抗生物質を凍結乾燥で結合することにより同様につくられる。
【0005】
天然のウシコラーゲンからなる止血スポンジは、例えば Colgen (Immuno AG)なる商標名で市販されており、出血個所の創傷被覆として用いられる。これらの製品は、その作用をむしろ遅くする膠の形成なしに、内的および外的止血経路に働く。スポンジの強固な構造はこれらに機械的強度を与える。
【0006】
コラーゲンをフィブリノーゲンおよびトロンビンに結合さすとき、特許文献6に記載のように、少しの水分も含まないように注意深く行われねばならない。少量の水分の存在はフィブリノーゲンをフィブリンに転換して、その物質はもはや組織密封に適さなくなる。従って、該物質は乾燥剤とともに血液学的に包装された凍結乾燥形態で常に提供される。
【0007】
止血スポンジ中のフィブリノーゲンを避けると、トロンビンまたはその前駆体が特許文献7の生物的に吸収可能なコラーゲンの細孔構造上に吸収され得る。この物質は全水分含量が50%w/w以下である。これは、トロンビンまたはその前駆体の水溶液をトロンビン安定剤と共に、いくつかの部位で固形物質中に注入することにより作られる。トロンビン安定剤は、好ましくはアミノ酸、PEGまたはポリサッカライドである。トロンビン溶液のコラーゲンスポンジ注入により比較的高い水分含量が生じる。スポンジは高い温度で乾燥できるが、乾燥はトロンビンおよびコラーゲンが変性する危険性のために中程度である。
【0008】
注射でのトロンビンの適用によっては、スポンジ中のトロンビンの分散が非均等であり、創傷被覆の再製および信頼性を低下せしめる。
【0009】
分散性または溶解性コラーゲンのトロンビンとの均一混合物が特許文献8によりつくられる。この溶液は凍結乾燥されて、水分がなくなり、保存可能な製品となる。乾燥コラーゲン性スポンジは高度の機械的強さを持つが、外科で用いられるときに、かなり固くなり、したがって壊れることがある。しかし、完全に水分のないものにまで乾燥することは、トロンビンの安定性問題をなくすために必須と考えられていた。
【0010】
特許文献9に、トロンビン水溶液を含有する止血コラーゲンペースト組成物の別の使用が記載されている。このペーストは圧搾管またはシリンジに包装される。しかし、ペーストは広範な出血域で止血するのに用いることが困難である。
【0011】
ヒトまたは動物が起源の物質を患者に適用するとき、元の物質由来の病原物質を伝播するおそれがある。トロンビンは、AIDSウイルス、肝炎ウイルスおよびパルボウイルスなどの血中生成ウイルスを伝播する危険性のあるヒトおよび動物の血液からつくられる。従って、トロンビン製剤などの血漿フラクションに存在する可能性のあるウイルスを不活性化する処置がとられる。特許文献10に、ヒト血漿フラクション由来のウイルス安全性トロンビン製剤を製造する方法が記載されている。
【0012】
コラーゲン性材料物質を高濃度のアルカリ液であらかじめ処置することに加え、コラーゲンは通常ベータまたはガンマ照射処理がなされる。これらは、材料物質中に存在するかもしれないウイルスまたはプリオンを不活性化するための普通の手段である。
【0013】
特許文献6の方法により製造される市販品、TachoComb (商標名)は、つくられた膜を包装した後にガンマ処理される。照射処置がフィブリノーゲンの天然性を破壊することが分かる。変性フィブリノーゲンはほとんど血餅を形成しない。従って、この物質は、コラーゲンとフィブリノーゲンを基とした組織接着剤とのその場での製造組み合わせよりも、効果が低い。これらの成分は、個々にウイルス不活性化のために容易に処理されるキットとして提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第4,362,567号明細書
【特許文献2】米国特許第4,298,598号明細書
【特許文献3】米国特許第4,377,572号明細書
【特許文献4】米国特許第4,600,574号明細書
【特許文献5】ヨーロッパ特許第0 049 469号明細書
【特許文献6】ヨーロッパ特許第0 059 265号明細書
【特許文献7】国際公開WO90/13320号パンフレット
【特許文献8】米国特許第4,515,637号明細書
【特許文献9】ヨーロッパ特許第0 372 966号明細書
【特許文献10】ヨーロッパ特許第0 541 507号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
吸収性コラーゲン物質含有の即製圧縮スポンジを提供することが本発明の目的である。このものは、特に物質の柔軟性および機械的強度に関して、上記したような欠点がない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によりコラーゲンおよびその中に均質に分散した血液凝固のアクティベータまたはプロアクティベータを基とした止血スポンジが提供される。このスポンジは、空気乾燥または凍結乾燥でなされる乾燥形態で提供される。しかし、なお水分を少なくとも2%、好ましくは2-25%の範囲で含む。高い温度でのスポンジの安定性を改良するために水分含量が10-20%であるのが特に望ましい。
【0017】
一定の水分含量がスポンジの物理-化学的構造および機械的強度を保持しながらスポンジに柔軟性を与えることが、意外にも判明した。
【0018】
物質の局所的な不安定性または凝血能亢進を防ぐためにトロンビンまたはその前駆体を物質中に均質に分散せしめることも重要である。水分含量にもかかわらず、トロンビン活性は驚くべきことに安定であり、これは均質混合物におけるトロンビンとコラーゲンの密接な接触によると思われる。
【0019】
しかし、ポリオール、ポリサッカライド、ポリアルキレングリコール、アミノ酸またはこれらの混合物よりなる群から選ばれるトロンビン安定剤が本発明で使用され得る。トロンビン活性を安定化し得る例示的使用として、ソルビトール、グリセロール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グルコース、サッカロースまたは他の糖などのモノ-またはジ-サッカライド、スルホン化アミノ酸が好ましい。
【0020】
スポンジは、貯蔵で安定な固形製品として提供され、室温で6ヶ月、さらに好ましくは2年以上の貯蔵後でも使用できるものである。
【0021】
トロンビンおよびその前駆体は、血液に接触したとき、あるいは患者に適用されたときに、夫々トロンビン活性を有するか、トロンビン活性を誘発するタンパク質であると、理解される。この活性は、トロンビン活性(NIH-単位)として、またはNIH-単位を発揮するトロンビン均等活性として発現される。下記においてトロンビン活性は、トロンビン活性とその均等活性の両者を含むと理解される。トロンビン活性を有するタンパク質は、アルファ-トロンビン、メイゾ‐トロンビン、トロンビン誘導体または組換えトロンビンよりなる群から選ばれ得る。適切な前駆体は、プロトロンビン、リン脂質を選択的に有する因子Xa、活性プロトロンビン複合体、FEIBA、内的または外的凝固のアクティベータまたはプロアクティベータ、またはこれらの混合物よりなる群から選ばれ得る。
【0022】
本発明のスポンジは、さらに生理的物質とも一緒に使用され得る。例えば、スポンジは好ましくはさらに生理的活性物質を含む。それには、プラスミノーゲン‐アクティベータ阻害剤またはプラスミン阻害剤またはフィブリノーゲン不活性化剤などの抗フィブリノーゲン分解物質がある。好ましい抗フィブリノーゲン分解物質は、アプロチニンまたはその誘導体、アルファ‐2‐マクログロブリン、タンパク質Cまたは活性化タンパク質Cの阻害剤または不活性化剤、天然基質に競合的に作用するプラスミン結合の基質様物質およびフィブリノーゲン活性阻害抗体よりなる群から選ばれる。
【0023】
さらなる薬理学的活性物質として、抗菌剤または抗真菌剤などの抗生物質が本発明のスポンジと共に用いられ、好ましくはスポンジ中に一成分として均質に分散される。さらに、スポンジの吸収を調節、すなわち促進または阻害する特殊な酵素または酵素阻害剤との組み合わせが好ましい。それにはコラーゲンゲナーゼ、その増進剤または阻害剤がある。また、適当な保存剤がスポンジと一緒に用いられ、またはスポンジ中に含有される。
【0024】
好ましい実施態様は、血液凝固のアクティベータまたはプロアクティベータを唯一の活性成分として含有するコラーゲンスポンジの使用に関するが、さらに、血液凝固速度、止血、および張力強度、内部(粘着)強度および耐久性などの密封性質に影響する物質を含むことができる。内的または外的凝固を増進または改善する凝固促進剤、例えば、血液凝固の因子または共因子、第XIII因子、組織因子、プロトロンビン複合体、活性プロトロビン複合体、これらの複合体の部分、プロトロンビナーゼ複合体、リン脂質およびカルシイムイオンが用いられる。厳密な密封を要する外科処置の場合、止血スポンジが患者に適用された後そして血餅が生じる前の作用期間を長くすることが好ましい。血餅収縮時間は、本発明が適当な量の血液凝固阻害剤を含有していると、確実に長くなる。選択的にヘパリンと一緒のアンチトロンビンIIIまたは他のセリンプロテアーゼ阻害剤などの阻害剤が好ましい。
【0025】
本発明のスポンジのコラーゲンは、好ましくは動物起源、好ましくはウシまたはウマ起源である。しかし、ヒトコラーゲンも異種タンパク質に感受性の高い患者に用いられる。スポンジのさらなる成分はヒト起源が好ましく、ヒトへの適用に特に適したスポンジをつくる。
【0026】
本発明のスポンジの医学的適用範囲はかなり広い。スポンジは、高い血圧での非常に広い出血範囲における止血に使用されるだけでなく、にじみ出るような出血を止めるのにも用いられる。下記の外的または内的外科処置が本発明の止血スポンジを用いて都合よく実施される。例えば、実質的臓器(肝、腎、脾臓など)の全般的外科、心血管系外科、胸部外科、移植外科、整形外科、骨外科、形成外科、耳鼻咽喉科、神経外科、泌尿器科、婦人科および傷処置における止血である。
【0027】
スポンジは圧縮形態で提供され得る。止血スポンジの水分含量にかかわらず、傷に用いられたとき多量の血液を吸収することができる。自己または他人の血液、フィブリノーゲンまたは血液誘導体の導入で、血液凝固が始まり、フィブリンが形成し、出血を止め、そして傷を密封する。
【0028】
さらに、本発明のスポンジはフィブリノーゲン製剤と共に傷に適用することができる。従って、傷に適用する前に、またはその際に直接的に、スポンジまたは創傷被覆をつくるための、キットも提供される。キットは、スポンジのほかに少なくともフィブリノーゲン成分を好ましくは貯蔵安定形態で含有する。フィブリノゲンは、フィブリン密封性形態、例えばフィブリノーゲンを基にした組織接着剤の市販品、TISSEEL(商標名、IMMUNO)である。また、上記したような薬理学的活性物質をキットの1以上の成分としてまたは別個の成分としてキットに組み入れることができる。
【0029】
スポンジは適応に応じて好ましくは少なくとも3mm、少なくとも5−20mmの厚さを特徴とすることが分かる。比較的厚い柔らかいスポンジを傷に適用するとき、更なる傷分泌の吸収の障壁となり得るフィブリンが形成する前に、血液またはフィブリノーゲンがスポンジを通して吸収され得ることが重要である。従って、本発明のスポンジは、スポンジを通しての体液の吸収および迅速に作用する効果的な傷の密封の両方を確実になす一定のトロンビン活性を好ましく含む。効果的な止血および傷の処置に、1,000‐10,000、好ましくは5,000‐8,000単位/gが必要であることが証明された。
【0030】
本発明のスポンジの好ましいpHは6から8の範囲である。コラーゲン性溶液またはゲルのpHを中性にすると、コラーゲン沈降の問題があり、コラーゲン線維形成をもたらす。コラーゲン線維が形成した懸濁液においては、コラーゲン物質中のトロンビンの絶対的な均質分布を達成することはもはや不可能である。従って、血液凝固のアクティベータおよびプロアクティベータの均質分布を得るために、線維形成の問題を克服しなければならなかった。均質混合物は、コラーゲンがなお可溶性またはゲル状態にあるときにのみ提供され、ゲル状態で選択的に凍結乾燥または空気乾燥される。
【0031】
本発明のスポンジを製造する発明方法は、コラーゲン・ゲルを得るためのコラーゲン性原料物質の酸性化を含み、コラーゲンが溶解状態で提供される。酸性化された物質はpH1.5‐4、好ましくは2‐2.5を有する。酸性化には、クエン酸などの弱酸を用いることが好ましい。驚くべきことに、ゲル状態は、1‐8℃、好ましくは2‐5℃の厳密な温度調整がなされるとき、中性化された後も線維形成なしに維持されることが分かった。この低温度は、コラーゲンの沈降を防ぎ、乾燥または凍結乾燥の前、スポンジを製造するすべての段階を通して維持されなければならない。スポンジの更なる成分は、中性化の前後のいずれかに加えられて均質化される。中性化は、好ましくはNaOHまたはCa(OH)などのアルカリ溶液を加えることによりなされる。
【0032】
最後に一定の水分含量を必要とするので、重要な処置は製品の乾燥または凍結乾燥である。好ましくは、スポンジは比較的短期間で空気乾燥または凍結乾燥され、上記範囲の残水分含量となる。別法では、凍結乾燥で乾燥スポンジを得、次いで水を加えるか、80‐100%の比較湿度の培養基中で長くインキュベートすることにより湿気を与える。乾燥または凍結乾燥工程を容易にするために、注意深く凍結乾燥した後または湿気を吸収さした後、特別の水分含量を保持できる親水性物質を合体せしめることが望ましい。好ましい物質はポリオールまたはポリサッカライドであり、不安定な成分に対し保護的に作用する。
【0033】
特殊な実施態様は、混成創傷被覆を得るために異なる構造および/または組成の1以上の追加止血層と一緒になったスポンジに関する。この追加層は創傷被覆の機械的強度を高めるために基本的にコラーゲンからなる。好ましくは、組み合わせのための追加物質は、修飾または架橋コラーゲン、オキシセルロースなどの修飾セルロース、ヒト組織およびビクリル(Company Ethnor) よりなる群から選ばれる。得られた創傷被覆は好ましくは完全に再吸収性であるが、高い機械的強度を有する。他方、フィブリノーゲンも含まれ得るが、トロンビンとは直接的に接触しないようにされる。本発明の混成創傷被覆にトロンビンとフィブリノーゲンを用いるときは、コラーゲンの追加層はトロンビン層とフィブリノーゲン層の間に置かれることが好ましい。
【0034】
本発明のスポンジおよび1以上の追加層からなる創傷被覆は、スポンジに付け加えることにより好ましくは得られる。コラーゲン性物質のいくつかの止血層が作られ、その後に結合される。共凍結または共凍結乾燥としても知られている連続的または同時の凍結または乾燥による付着が好ましい。別の結合方法は、架橋または膠による。本発明のスポンジを0℃以下、好ましくは -10 から -1 ℃に冷やし、追加の凍結および/または凍結乾燥で附加または並置の層を形成する液体を含む液体を噴霧または流動せしめることにより種々の層をつくることができる。
【0035】
凍結乾燥のためにコラーゲンと追加の成分は、膜の特別の大きさが得られるように一定の形にされる。例示的な形は、パット、パッチ、シート、立方体、管、円錐形および繊維であり、望ましい構造に圧縮または成型される。構造は無傷であり、または空気透過でもあり得る。
【0036】
タイプI、II、III、IV、VIIおよびXよりなる群から選ばれる特殊なコラーゲンのタイプを用いることがさらに好ましい。ヒトコラーゲンを用いるとき、タイプIVは特に好ましい。天然のコラーゲン以外にフラグメント化または酵素処理コラーゲン、例えばペプシンまたはペクチン処理コラーゲンを使用できる。
【0037】
コラーゲン層の構造および機械的強度は、その濃度によってさらに特性化される。コラーゲン濃度 1-15mg/cm でスポンジをつくるのが好ましい。
【0038】
濃度 1-2mg/cmとなる少量のコラーゲンの存在下にコラーゲンと血液凝固因子の結合を作るのが好ましい。凍結乾燥の間、この結合は純粋の凍結乾燥コラーゲンゲンに類似の支持構造および外観を要する。
【0039】
本発明の凍結乾燥スポンジは、好ましくは綿ウールのような淡白色で、柔軟かつ強い。
【0040】
空気乾燥スポンジは多くの場合まったく透明である。
【0041】
滅菌目的のために、本発明のスポンジは、放射線照射により好ましくは乾燥後に適当なエネルギーおよび波長のβ-またはγ-線によって好ましくは滅菌される。スポンジ以外に固体状のコラーゲン性フラクションである元の物質に照射することもできる。従って、コラーゲン性原料物質は照射による滅菌がすぐにできるコラーゲン末として提供され得る。
【0042】
特殊な実施態様では、スポンジの成分は、存在する可能性のある病原体を不活化するために、別個に処理される。それは、好ましくは化学的および/または物理的処理、または EP 0 159 311 によるような熱処理である。とにかく、作られたスポンジを通常の手段により追加的に滅菌することが好ましい。
【実施例】
【0043】
本発明は、下記の実施例によりさらに説明されるが、それらに限定されるものでない。
【0044】
実施例1:コラーゲンゲルの製造
乾燥コラーゲン1g等量(液状、ペースト状、繊維状または粉状のコラーゲン物質から)を0.01Mのクエン酸100mlに溶解した。均一の液状ゲルができるまで混合物を振った。4℃で攪拌を続けながら、NaOH溶液を加えてpHを7.2に調節した。このゲルは1%コラーゲンを含んでいた。同様に0.25%コラーゲンゲルを製造した。
【0045】
実施例2:トロンビンを含有するコラーゲンゲルの製造および凍結乾燥
実施例1で得た1%コラーゲンゲル60ml を1000 IU/ml トロンビン溶液 ( HUMAN THROMBIN IMMUNO AG ) 5ml と4℃で混合した。均質の混合物を4℃に予め冷やした10X10cmのトレイ上に注いだ。トレイを4℃に予め冷やした凍結乾燥機の凍結室に移した。次いで凍結機を動かして-20℃まで下げ、15%の水分含量になるまで産物を凍結乾燥した。
【0046】
産物は柔らかい綿様の毛であり、望む寸法に切断できる。この毛は次の特性を有した。
【0047】
産物I:
【表1】

【0048】
実施例3:いくつかの層を含有する創傷被覆の製造
実施例1で得た1%コラーゲンゲル60ml を4℃に予め冷やした10X10cmのトレイ上に注いだ。トレイを4℃に予め冷やした凍結乾燥機の凍結室に移した。次いで凍結機を動かして-5℃まで下げ、産物を-5℃で凍結した。
【0049】
実施例1で得た0.25%コラーゲンゲル20ml を1000 IU/ml トロンビン溶液 ( HUMAN THROMBIN IMMUNO AG ) 5ml と混合し、4℃で攪拌して均質の混合物を得た。トレイ中に置き、5℃に予め冷やした凍結コラーゲンシート上に、この混合物を注いだ。トレイを凍結乾燥機にすばやく戻し、次いで凍結機を動かして-20℃まで下げた。最終脱離温度が25℃から30℃になるまで凍結乾燥を行った。得た産物は2つの強く接着した層からなり、切断および包装が容易であった。産物は次の特性を有していた。
【0050】
産物II:
【表2】

【0051】
低濃度のコラーゲンと合わせたフィブリノーゲンの追加層は次のように製造した。実施例1で得た0.25%コラーゲンゲル20ml を80mg/ml フィブリノーゲン溶液 ( HUMAN FIBRINOGON、IMMUNO AG ) 6.5ml と4℃で混合した。トレイ中に置き、5℃に予め冷やした凍結コラーゲン-トロンビンシート上に、この混合物を均等に注いだ。トレイを凍結乾燥機の凍結室に戻し、次いで凍結機を動かして-20℃まで下げた。最終脱離温度は20℃から30℃であり、最終水分含量は約15%であった。得た産物は3つの強く接着した層からなり、切断および包装が容易であった。産物は次の特性を有していた。
【0052】
産物III:
【表3】

【0053】
この製造方法は、種々のコラーゲン性層を形成する圧縮スポンジの製造に用いられ、層の順序は期待する効果の程度により変えることができる。この方法を用いて、次の特性の産物が得られた。
【0054】
0.25%コラーゲンゲル20ml、1000 IU/mlトロンビン5mlおよび40M塩化カルシウム1mlの混合物を4℃で攪拌し、上記のように凍結コラーゲン層をつくった。凍結機を-5℃で1時間動かした。0.25%コラーゲンゲル20mlを用いて、上記のように次の層を製造し、-5℃に凍結を維持した。0.25%コラーゲンゲル20mlと80mg/mlフィブリノーゲン溶液6.5mlの混合物を用いて、更なる層を製造した。凍結-乾燥の間、最終脱離温度を20から30℃に保持した。産物は次の特性を有していた。
【0055】
産物IV:
【表4】

【0056】
実施例4:モデルのブタにおけるスポンジの適用および市販製品(TachoComb)との比較
ヘパリン処理ブタにおける肝切除モデルを用いて、実施例2で得た産物I、トロンビンを含有しないコラーゲン製品およびTachoComb(商標名、Nycomed)を比較した。
【0057】
コラーゲン製品を用いたとき、止血はなく出血から死に至った。TachoCombを用いたときも、止血は見られなかった。切除面の切れ目を観察すると、再出血が起こり、ブタは出血で死んだ。
【0058】
産物Iの使用で止血は5分以内で完全であった。ブタは処置後3日間観察し、次いで殺した。剖検において腹腔内に血液を認めなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラーゲンおよびその中に均質に分散した血液凝固のアクティベータまたはプロアクティベータを基とした止血スポンジ(このスポンジは、乾燥され、少なくとも2%、好ましくは2から25%、さらに好ましくは10から20%の水分を含む)。
【請求項2】
スポンジが凍結乾燥または空気乾燥されている、請求項1のスポンジ。
【請求項3】
pHが6から8の範囲にあることを特徴とする、請求項1または2のスポンジ。
【請求項4】
血液凝固のアクティベータまたはプロアクティベータがトロンビン、プロトロンビン、活性化因子X、活性化プロトロンビン複合体、FEIBA,カルシウムイオンおよびこれらの混合物よりなる群から選ばれる、請求項1−3のスポンジ。
【請求項5】
厚さが少なくとも3mm、好ましくは少なくとも5mmから10mmまでであることを特徴とする、請求項1−4のスポンジ。
【請求項6】
アクティベータまたはプロアクティベータの含量が1,000 - 10,000、好ましくはg当たり5,000 - 8,000 U/トロンビン均等であることを特徴とする、請求項1−5のスポンジ。
【請求項7】
ポリオール、ポリサッカライド、ポリアルキレングリコール、アミノ酸またはその混合物よりなる群から好ましくは選ばれるトロンビン安定剤をさらに含有する、請求項1−6のスポンジ。
【請求項8】
水分含量を安定化する物質、好ましくはポリサッカライドまたはポリオールなどをさらに含有する、請求項1−7のスポンジ。
【請求項9】
薬理的活性物質、保存剤など、抗フィブリノーゲン分解物質、抗生物質、抗菌剤または抗真菌剤など、成長因子、酵素または酵素阻害剤をさらに含有する、請求項1−8のスポンジ。
【請求項10】
請求項1−9のスポンジ、および好ましくは止血性であり、該スポンジに粘着の追加層を含む創傷被覆。
【請求項11】
追加層が基本的にコラーゲンからなる、請求項10の創傷被覆。
【請求項12】
追加層がフィブリノーゲンを好ましくはコラーゲンとの混合物として含有する、請求項10の創傷被覆。
【請求項13】
創傷被覆をつくるためのキットで、
a)請求項1−9のスポンジ、および
b)フィブリノーゲン、好ましくは貯蔵安定形態で、および選択的に
c)薬理的活性物質
を含むキット。
【請求項14】
コラーゲン性原料物質を酸性化してコラーゲンゲルを得、ゲルを血液凝固のアクティベータまたはプロアクティベータと混合して、均質の混合物を得、該混合物を少なくとも2%、好ましくは2から25%、さらに好ましくは10から20%の水分含量まで、好ましくは凍結乾燥または空気乾燥で乾燥することによる請求項1―9のスポンジを製造する方法。
【請求項15】
NaOHまたはCa(OH)2 などのアルキル溶液を加えることによりゲルまたは混合物を中性にする、請求項14の方法。
【請求項16】
混合物を凍結乾燥して、乾燥スポンジ(なお湿気を有する)を得る、請求項14または15の方法。
【請求項17】
水分含量を保持する物質の存在下に混合物を凍結乾燥する、請求項14−16の方法。
【請求項18】
混合物を一定の形で凍結乾燥する、請求項14‐17の方法。
【請求項19】
トロンビン安定剤または生理的活性物質などの追加物質を混合物に加える、請求項14−18の方法。
【請求項20】
コラーゲン末などのコラーゲン性原料物質、固形のゲルおよび/またはスポンジを照射により滅菌する、請求項14−19の方法。
【請求項21】
追加層が連続的または同時の乾燥、凍結乾燥、架橋および膠付けによりスポンジに結合される、請求項14−20の方法。

【公開番号】特開2010−46516(P2010−46516A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248693(P2009−248693)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【分割の表示】特願平9−535819の分割
【原出願日】平成9年4月2日(1997.4.2)
【出願人】(591154762)バクスター・イノベイションズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (4)
【氏名又は名称原語表記】Baxter Innovations GmbH
【Fターム(参考)】