説明

コラーゲン増加作用を呈するジテルペントリペプチドの製造方法

【課題】 副作用が弱く、コラーゲン増加作用を呈するジテルペントリペプチドの製造方法を提供する。
【解決手段】 コラーゲン増加作用を呈するジテルペントリペプチドは(4aR)−5、6−ジヒドロキシ−1−メチル−7−プロパン−2−イル−2、3、4、9、10、10a−ヘキサヒドロキシフェナンスレン−1,4a−ジカルボキシリック アシドとトリペプチドの結合体であり、コラーゲン増加作用を有し、化粧品や健康食品に利用できる安全性の高い新規物質である。コラーゲン増加作用を呈するジテルペントリペプチドの製造方法はローズマリーの粉末、大豆、納豆菌を添加し、発酵させた発酵液をマグネシウムタイプのセラミックビーズにより処理する工程を特徴とする。この発酵の工程によりジテルペンとトリペプチドを結合させ、セラミックビーズにより安定化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炎症改善効果又は予防効果、シワ改善効果を有し、コラーゲン増加作用を呈するジテルペントリペプチドの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは、皮膚、骨、軟骨、血管や種々の組織内の膜組織に存在するたんぱく質であり、その種類は10以上にのぼり、その働きは、実質組織の骨格の構築、骨構築、炎症から組織を防御、癌の浸潤の抑制や転移の防御などである。
【0003】
線維芽細胞がコラーゲンを産生させ、その産生には線維芽細胞の増殖刺激や成長因子が関与し、転写因子の活性化により遺伝子レベルでコラーゲン生成が誘導される。
【0004】
生体はコラーゲンを分解する酵素、コラゲナーゼやマトリックスメタロプロテアーゼにより、分解され、ペプチドまたはアミノ酸となる。このコラゲナーゼは炎症や癌細胞により誘導され、活性化される。
【0005】
また、関節炎によっても、軟骨部位や筋肉周囲で生じた炎症組織や好中球などの炎症細胞によりコラゲナーゼが産生されて、コラーゲンを分解し、消失させ、組織の構築が乱れる。
【0006】
コラーゲンを増加させる方法として線維芽細胞のコラーゲン産生を高める方法及びコラゲナーゼの活性の阻害又は誘導の抑制などがあり、両者の方法を併用することは、好ましく、両者の作用を有する原料や有効成分の抽出方法の研究と開発が行われている。
【0007】
コラーゲンを増加させる方法、薬剤、食品、化粧品は、癌細胞の転移、癌の転移に関わる血管新生の抑制、癌細胞の増殖抑制、関節炎の抑制、炎症の改善、骨粗鬆症の抑制、セルライトの抑制や改善、シワやタルミの改善や予防などに効果を発揮することから、コラーゲンを増加させる方法が研究されている。
【0008】
植物やハーブにはコラーゲンを増加させる有効成分が含有されており、これらの有効成分の単離や精製が進められている。
【0009】
化学合成されたコラゲナーゼ阻害物質としては、フェンブヘン、インドメタシンやイプフロアェンなどの抗炎症剤が知られているものの、それぞれに空咳や消化管障害などの副作用が報告されており、副作用の少ない成分や製剤が望まれている。
【0010】
コラーゲンを増加させる発明としては、ミモザ由来のフェノール化合物を含有する組成物があり、オジギソウより得られる生物学的に活性なフェノール化合物含有抽出物またはその活性画分を含んでなる組成物がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0011】
コラゲナーゼを阻害する物質の発明としてマグノロール、ホオノキオールのうち少なくとも一種を有効成分とするコラゲナーゼ活性抑制剤があり、ここでは、ホオノキの葉、樹皮、幹材、根皮などの部位及びこれらに含まれる成分が利用されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0012】
また、ハーブや植物由来のテルペン類として、真皮表皮接合部中のコラーゲンを増加させるための化粧剤としてサポニン又はサポゲノールの少なくとも1種の使用についての発明がある(例えば、特許文献3参照。)。
【0013】
しかし、いずれの発明もコラーゲン産生の亢進又はコラゲナーゼの阻害のいずれかに起因するものであり、その効果は限定されており、産業上の利用には制限がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第3626727号
【特許文献2】特許第2886523号
【特許文献3】特表2002−516837
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前記したように化学合成されたコラゲナーゼ阻害作用を呈する抗炎症剤には、空咳や消化管障害などの副作用が生じるという問題がある。さらに、コラーゲンをそのまま摂食しても自身の皮膚や関節のコラーゲンに変換されないという問題点がある。
【0016】
一方、天然由来の物質についてその安全性は高いものの、その効果が軽度であるという問題がある。そこで、副作用が弱く、抗炎症効果の優れたコラーゲン増加作用を呈する天然物由来物質が望まれている。
【0017】
この発明は上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、副作用が弱く、優れたコラーゲン増加作用を呈するジテルペントリペプチドの効率的な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、下記の式(1)で示されるコラーゲン増加作用を呈するジテルペントリペプチドの製造方法に関するものである。
【0019】
【化1】

【発明の効果】
【0020】
この発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。請求項1に記載のコラーゲン増加作用を呈するジテルペントリペプチドの製造方法によれば、効率良くジテルペントリペプチドを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0022】
まず、本実施形態のコラーゲン増加作用を呈するジテルペントリペプチドは、下記の式(1)で示されるものである。
【0023】
【化2】

【0024】
コラーゲン増加作用を呈するジテルペントリペプチドの基本的な構造は、ジテルペンとトリペプチドの結合体である。ジテルペン部分の構造は、(4aR)−5、6−ジヒドロキシ−1−メチル−7−プロパン−2−イル−2、3、4、9、10、10a−ヘキサヒドロキシフェナンスレン−1、4a−ジカルボキシリック アシドである。
【0025】
この元素の組成は、炭素原子20個、水素原子26個及び酸素原子6個であり、推定される分子量は362である。
【0026】
このジテルペンは反応性に富んだ2個のカルボン酸を有している。
【0027】
ジテルペントリペプチドの中のトリペプチドは、N末からグリシン、フェニルアラニン、セリンの構造を呈し、これらのアミノ酸は、すべてL型である。
【0028】
これらのアミノ酸はペプチド結合により結合している。
【0029】
ジテルペントリペプチドではジテルペンのカルボン酸とN末端のグリシンのアミノ基がペプチド結合により結合している。
【0030】
このペプチド結合によりジテルペンとトリペプチドの立体構造が維持される。このジテルペンの遊離カルボン酸とトリペプチドのセリンの水酸基がコラーゲン生成酵素と反応してコラーゲン生成酵素を活性化することにより、コラーゲン合成が促進される。
【0031】
さらに、このトリペプチドのフェニルアラニンがコラーゲンの基質であるプロリンまたはプロリンを含有するペプチドを電気的に吸引し、コラーゲン生成酵素の活性中心に誘導する。その後、ジテルペン部分がコラゲナーゼを阻害することにより、結果としてコラーゲンを維持する。
【0032】
また、このジテルペントリペプチドは線維芽細胞のFGF受容体を活性化して線維芽細胞を増殖させてコラーゲン合成酵素を誘導し、コラーゲンの生成をさらに促進する。このジテルペントリペプチドは皮膚、爪、頭皮、肝臓、肺などの臓器の間質に存在する線維芽細胞に作用する。
【0033】
このジテルペントリペプチドは医薬品として経口剤又は非経口剤として利用され、医薬部外品としては、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、石鹸、歯磨き粉等に配合されて利用される。コラーゲン合成を目的とした抗炎症剤、抗アトピー性皮膚炎剤、抗アレルギー剤、絆創膏として利用される。
【0034】
経口剤としては、錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、ドリンク剤等が挙げられる。前記の錠剤及びカプセル剤に混和される場合には、結合剤、賦形剤、膨化剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤とともに用いることができる。
【0035】
前記の錠剤は、シェラック又は砂糖で被覆することもできる。また、前記のカプセル剤の場合には、上記の材料にさらに油脂等の液体担体を含有させることができる。前記のシロップ剤及びドリンク剤の場合には、甘味剤、防腐剤、色素香味剤等を含有させることができる。
【0036】
このジテルペントリペプチドを含有する食品としては、肌コラーゲン産生を目的とした美容ドリンク、美容用健康食品などとして利用できる。
【0037】
このジテルペントリペプチドを含有する化粧料としては、アトピー対策のための化粧料、シャンプー、クリームなどに用いることができ、さらに、毛髪の育毛剤や爪の保護剤としても利用することができる。
【0038】
このジテルペントリペプチドの製造方法は、ローズマリーの粉末、大豆、納豆菌を添加し、発酵させた発酵液をマグネシウムタイプのセラミックビーズにより処理する工程を特徴とする。
【0039】
この製造方法の特徴は主として発酵工程及びマグネシウムタイプのセラミックビーズによる処理工程から構成される。
【0040】
原料となるローズマリーは、学名Rosmarinus officinalisであり、日本産、中国産、スペインなどのヨーロッパ産、アメリカ産のいずれでも用いることができる。無農薬、または、減農薬で栽培されたローズマリーが好ましい。
【0041】
ローズマリーにはテルペノイド類が含有されており、特に、ジテルペンの含有量が高く、目的とするジテルペントリペプチドの原料として好ましい。この製造工程では、ローズマリーの葉を水洗後、乾燥した後、粉砕機により粉砕して用いる。その後、雑菌の繁殖を防止する目的でオートクレーブ滅菌される。
【0042】
原料となる大豆は、日本産、中国産、アメリカ産、ロシア産などいずれの産地の大豆でも利用できる。無農薬、または、減農薬で栽培された非遺伝子組換型の大豆が好ましい。この大豆は中山技術研究所製DM−6などの粉砕機で粉砕される。その後、雑菌の繁殖を防止する目的で、オートクレーブ滅菌される。
【0043】
原料となる納豆菌とは、納豆や食品の加工用に用いられる枯草菌の一種である。納豆素本舗製の納豆菌は品質が安定し、発酵に適していることから、好ましい。
【0044】
前記の発酵に供する原料の添加量は、ローズマリー粉末1重量に対し、大豆粉末は0.5〜3重量が好ましく、納豆菌は0.001〜0.02重量が好ましい。
【0045】
前記の発酵は清浄な培養用タンクで実施され、水道水により前記の材料を混合することは好ましい。
【0046】
また、この発酵は、30〜42℃に加温され、発酵は、24〜92時間行われる。発酵後に、効率良く抽出するために、水道水で希釈される。
【0047】
この発酵の工程によって、ローズマリー中のテルペン類が遊離する。また、大豆由来のタンパク質がプロテアーゼにより分解され、ペプチドを生成する。さらに、テルペン類とペプチドは、発酵工程で生じるエステル交換酵素により結合し、エステル体を形成する。
【0048】
この発酵工程により目的とするジテルペンとトリペプチドがペプチド結合して結合体を形成する。
【0049】
前記の発酵により生成された発酵物は30〜60℃の温水で抽出されることは、生成物を効率良く回収でき、次の工程が実施しやすいことから、好ましい。
【0050】
得られた発酵物は凍結乾燥などにより、濃縮することは、好ましい。
【0051】
得られた発酵物はマグネシウムタイプのセラミックビーズにより処理される。マグネシウムタイプのセラミックビーズは、日本製、アメリカ製などいずれの製造でも良い。例えば、株式会社サイトカイン製のマグネシウムタイプのセラミックビーズが好ましい。
【0052】
前記の発酵物がマグネシウムタイプのセラミックビーズで処理されることにより、マグネシウムが電子を供与し、セラミック表面を介して前記のジテルペンとトリペプチドの結合体に電子が供与されて、ジテルペンとトリペプチドの形成を安定化させ、かつ、ジテルペンとトリペプチド結合体を活性化させる。
【0053】
前記の発酵物の1重量に対してマグネシウムタイプのセラミックビーズの添加量は0.01〜0.1重量が好ましい。
【0054】
マグネシウムタイプのセラミックビーズは、脱イオン水により洗浄後、オートクレーブにより121℃で20分間滅菌された後、冷却したものを用いることは、雑菌の繁殖を防御できることから好ましい。
【0055】
前記の発酵物を清浄なタンクに入れてマグネシウムタイプのセラミックビーズを添加し、35℃〜40℃に加温し、1分間あたり2〜10回の回転により攪拌して反応させることは、反応を効率良くできることから好ましい。
【0056】
得られた反応液は清浄な濾紙によりろ過され、滅菌されて目的とするジテルペントリペプチドが液体として得られる。
【0057】
この液体をエバポレートや真空乾燥機により乾燥させ、水分を除去して粉末として得られる。
【0058】
前記の還元反応物から、目的とするジテルペントリペプチドを分離し、精製することは純度の高い物質として摂取量を減少させることができる点から好ましい。この精製の方法として分離用の樹脂などの精製操作を利用することが好ましい。
【0059】
分離用担体または樹脂により分離され、分取されることにより目的とするジテルペントリペプチドが得られる。分離用担体または樹脂としては、表面が後述のようにコーティングされた多孔性の多糖類、酸化珪素化合物、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン−ビニルベンゼン共重合体等が用いられる。0.1〜300μmの粒度を有するものが好ましく、粒度が細かい程、精度の高い分離が行なわれる。
【0060】
例えば、逆相担体または樹脂として表面が疎水性化合物でコーティングされたものは、疎水性の高い物質の分離に利用される。陽イオン物質でコーティングされたものは陰イオン性に荷電した物質の分離に適している。また、陰イオン物質でコーティングされたものは陽イオン性に荷電した物質の分離に適している。特異的な抗体をコーティングした場合には、特異的な物質のみを分離するアフィニティ担体または樹脂が利用される。
【0061】
アフィニティ担体または樹脂は、抗原抗体反応を利用して抗原の特異的な調製に利用される。分配性担体または樹脂は、シリカゲル(メルク社製)等のように、物質と分離用溶媒の間の分配係数に差異を利用して物質の単離に利用される。
【0062】
これらのうち、製造コストを低減することができる点から、吸着性担体または樹脂、分配性担体または樹脂、分子篩用担体または樹脂及びイオン交換担体または樹脂が好ましい。さらに、分離用溶媒に対して分配係数の差異が大きい点から、逆相担体または樹脂及び分配性担体または樹脂はより好ましい。
【0063】
分離用溶媒として有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒に耐性を有する担体または樹脂が用いられる。また、医薬品製造または食品製造に利用される担体または樹脂は好ましい。
【0064】
これらの点から吸着性担体としてダイヤイオン(三菱化学(株)社製)及びXAD−2またはXAD−4(ロームアンドハース社製)、分子篩用担体としてセファデックスLH−20(アマシャムファルマシア社製)、分配用担体としてシリカゲル、イオン交換担体としてIRA−410(ロームアンドハース社製)、逆相担体としてDM1020T(富士シリシア社製)がより好ましい。これらのうち、ダイヤイオン、セファデックスLH−20及びDM1020Tはさらに好ましい。
【0065】
得られた抽出物は、分離前に分離用担体または樹脂を膨潤化させるための溶媒に溶解される。その量は、分離効率の点から抽出物の重量に対して1〜50倍量が好ましく、3〜30倍量がより好ましい。分離の温度としては物質の安定性の点から10〜31℃が好ましく、13〜24℃がより好ましい。
【0066】
分離用溶媒には、水、または、水を含有する低級アルコール、親水性溶媒、親油性溶媒が用いられる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが用いられるが、食用として利用されている発酵エタノールが好ましい。
【0067】
セファデックスLH−20を用いる場合、分離用溶媒には低級アルコールが好ましい。シリカゲルを用いる場合、分離用溶媒にはクロロホルム、メタノール、酢酸またはそれらの混合液が好ましい。
【0068】
ダイヤイオン及びDM1020Tを用いる場合、分離用溶媒はメタノール、エタノール等の低級アルコールまたは低級アルコールと水の混合液が好ましい。
【0069】
ジテルペントリペプチドを含む画分を採取して乾燥または真空乾燥により溶媒を除去し、目的とするジテルペントリペプチドを粉末または濃縮液として得ることは溶媒による影響を除外できることから好ましい。さらに、乾燥させて粉末化できる。
【0070】
このようにして得られたジテルペントリペプチドの精製物は液体または粉末として得られる。
【0071】
以下、前記実施形態を実施例及び試験例を用いて具体的に説明する。
【実施例1】
【0072】
北海道で栽培されたローズマリーの葉を収穫し、水洗後、天日乾燥させた。これを粉砕機(高速粉砕機、日本リーイング製)により粉砕した。
【0073】
このローズマリーの葉の粉砕物1kgを清浄な50リットル容量の発酵用タンクに添加し、精製水5kgを添加した。
【0074】
北海道産の大豆の粉砕物を金剛薬品株式会社より購入し、この大豆の粉砕物1kgを上記の発酵用タンクに添加し、攪拌した。
【0075】
これを95℃に加熱し、冷却して滅菌した。
【0076】
これに納豆本舗株式会社の納豆菌10gを添加し、発酵させた。この発酵は40℃で72時間行った。
【0077】
得られた発酵物を布でろ過し、さらに、清浄な濾紙によりろ過して発酵液を採取した。これを10リットル容量の清浄なステンレスタンクに入れた。
【0078】
上記の発酵液5kgに株式会社サイトカイン製のマグネシウムタイプのセラミックビーズ250gをオートクレーブ滅菌し、添加した。
【0079】
このタンクを37℃に加温して1分間あたり5回の回転で攪拌しつつ反応させた。得られた反応液を清浄な濾紙によりろ過した。
【0080】
得られたろ液をオートクレーブ滅菌して目的とするジテルペントリペプチドの溶液とした。これを検体1とした。
【0081】
以下に、ジテルペントリペプチドの同定試験について説明する。
(試験例1)
【0082】
上記の実施例1の検体を質量分析器付き高速液体クロマトグラフィ(HPLC/MS、島津製作所)で分析し、さらに、ペプチダ―ゼ(アマノ製薬製)により分解してHPLC/MS及びアミノ酸分析装置(日本電子JLC−300)で解析した。
【0083】
まず、実施例1の検体をペプチダーゼで分解し、HPLC/MSにより解析した結果、保持時間約12分の位置にピークを認め、このMSスペクトルから(4aR)−5、6−ジヒドロキシ−1−メチル−7−プロパン−2−イル−2、3、4、9、10、10a−ヘキサヒドロキシフェナンスレン−1、4a−ジカルボキシリック アシドが同定された。
【0084】
なお、標準とした(4aR)−5,6−ジヒドロキシ−1−メチル−7−プロパン−2−イル−2、3、4、9、10、10a−ヘキサヒドロキシフェナンスレン−1、4a−ジカルボキシリック アシドはシグマアルドリッチ社から購入した。
【0085】
また、ペプチド部分のアミノ酸分析により、グリシン、フェニルアラニン、セリンが同定され、HPLC/MS分析の結果からグリシン、フェニルアラニン、セリンの順で結合していることが判明した。なお、標準としたグリシン、フェニルアラニン、セリンのトリペプチドはタカラバイオより購入した。
【0086】
さらに、HPLC/MSの解析の結果、実施例1の検体からは目的とするジテルペントリペプチドが同定され、その含有率は8.1%であった。
【0087】
以下に、ヒト皮膚由来線維芽細胞を用いた実験について説明する。これはヒト皮膚由来の線維芽細胞を用いてその活性化作用を評価する試験方法であり、皮膚に対する評価法として確立されている。
(試験例2)
【0088】
正常ヒト成人由来皮膚線維芽細胞(Fibrocell NHDF(AD)、クラボウ株式会社製)を専用培養液にて培養し、実施例1で得られた検体を培養液に溶解し、0.1mg/mLの濃度になるように添加し、37℃で48時間培養した。
【0089】
溶媒対照として生理食塩液を用いた。なお、陽性対照としてフィブロブラスト成長因子(FGF、コスモバイオ製)を精製水に溶解して0.1mg/mLの濃度で添加した。細胞数を計数し、さらに、コラーゲンタイプ1量を抗体法(コンドレックス社製)により観察した。
【0090】
その結果、溶媒対照の値に対して実施例1の検体0.1mg/mLの添加による細胞数は、122%であり、実施例1の検体は線維芽細胞の増殖性を示した。
【0091】
陽性対照のFGFの0.1mg/mLの添加では溶媒対照の値に対して、110%であったことから、実施例1の検体は、FGFよりも線維芽細胞の著しい増殖性を示すことが判明した。
【0092】
溶媒対照の値に対して実施例1の検体0.1mg/mLのコラーゲン量は156%でありコラーゲンの増加作用を示した。
【0093】
陽性対照のFGFの0.1mg/mLの添加のコラーゲン量は、溶媒対照の値に対して134%であったことから、実施例1の検体は、FGFよりも強いコラーゲン増加作用を示すことが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明のコラーゲン増加作用を呈するジテルペントリペプチドは化粧品や健康食品の原料として利用することにより、国民の健康と美容に貢献する。また、美容産業の育成に貢献するものである。
【0095】
本発明は、発酵技術を利用しており、発酵産業の技術向上に寄与するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローズマリーの粉末、大豆、納豆菌を添加し、発酵させた発酵液をマグネシウムタイプのセラミックビーズにより処理する工程を特徴とする下記の式(1)で示されるコラーゲン増加作用を呈するジテルペントリペプチドの製造方法。
【化1】


【公開番号】特開2011−155952(P2011−155952A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22649(P2010−22649)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(309041890)株式会社重田発酵化学研究所 (2)
【Fターム(参考)】