説明

コルゲートフィン式熱交換器の排水構造

【課題】熱交換チューブとコルゲートフィンとの間の排水性の向上と多量の排出水の排水速度の向上を図れるようにしたコルゲートフィン式熱交換器の排水構造を提供すること。
【解決手段】対峙する一対のヘッダーパイプ2a,2b間に、互いに平行な複数の扁平状熱交換チューブ3を水平方向に配置し、コルゲートフィン4を熱交換チューブ間に接合してなるコルゲートフィン式熱交換器において、各熱交換チューブの幅方向の端部外面に、該熱交換チューブの上下側に隣接するコルゲートフィンとの間に保水される水を吸引する流水路10を熱交換チューブの長手方向に適宜ピッチをおいて複数形成し、上下方向に位置するコルゲートフィンの幅方向の表面に接触して水を下方へ導く線状の導水部材20を水平方向に適宜ピッチをおいて複数配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コルゲートフィン式熱交換器の排水構造に関するもので、更に詳細には、コルゲートフィンと扁平状熱交換チューブとが交互に配置されるパラレルフロー型熱交換器の排水性を向上させる排水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、対峙する一対のヘッダーパイプ間に、互いに平行な複数の扁平状の熱交換チューブを水平方向に配置し、これら熱交換チューブ間にコルゲートフィンを接合してなるコルゲートフィン式熱交換器が広く使用されている。この種のコルゲートフィン式熱交換器を蒸発器として用いた場合、表面に凝縮水(結露水)が付着し、通気抵抗の増大、更には、コルゲートフィン表面に付着する水膜が抵抗となり伝熱を阻害してしまい、熱交換性能の低下を招く問題があった。
【0003】
上記問題を解決するために、発明者は鋭意研究した結果、熱交換チューブの幅方向の端部外面に、該熱交換チューブの上下側に隣接するコルゲートフィンとの間に保水される水を吸引する流水路を熱交換チューブの長手方向(水平方向)に適宜ピッチをおいて複数形成した排水構造を提案した(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載の技術によれば、熱交換チューブを水平配置した場合でも、表面に付着した凝縮水(結露水)の排水が可能となった。
【0005】
また、熱交換器表面に付着した凝縮水(結露水)を下方に排水する構造として、コルゲートフィンと接触するガイド板を水平方向に適宜ピッチをおいて設けた熱交換器が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、熱交換器表面に付着した凝縮水(結露水)を下方に排水する別の構造として、コルゲートフィンと接触する排水ガイドを線形部材で構成し、該排水ガイドを熱交換器に対して傾斜配置した排水構造が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−243147号公報(特許請求の範囲、図1〜図3)
【特許文献2】特開2001−263861号公報(請求項1、図3)
【特許文献3】特開2007−285673号公報(特許請求の範囲、図3,図5〜図12)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、熱交換チューブに形成された流水路によって熱交換チューブとコルゲートフィンとの間の排水性の向上が図れるが、例えば、屋外側熱交換器として用いられ、除霜動作時などの多量の排出水が流れる場合は、熱交換器全体の排水速度が不十分となり、除霜時間が長くなる懸念がある。
【0009】
また、特許文献2,3に記載の技術においては、高い排水性を求める場合には、比較的狭いピッチで多くのガイド板や線形部材からなる排水ガイドを配置する必要があるため、熱交換器を通過する風の流れを阻害し、通気抵抗を増大させる懸念がある。
【0010】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、熱交換チューブとコルゲートフィンとの間の排水性の向上と多量の排出水の排水速度の向上を図れるようにしたコルゲートフィン式熱交換器の排水構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するために、この発明のコルゲートフィン式熱交換器の排水構造は、対峙する一対のヘッダーパイプ間に、互いに平行な複数の扁平状熱交換チューブを水平方向に配置し、コルゲートフィンを上記熱交換チューブ間に接合してなるコルゲートフィン式熱交換器において、 上記各熱交換チューブの幅方向の端部外面に、該熱交換チューブの上下側に隣接する上記コルゲートフィンとの間に保水される水を吸引する流水路を熱交換チューブの長手方向に適宜ピッチをおいて複数形成し、 上下方向に位置する上記コルゲートフィンの幅方向の表面に接触して水を下方へ導く線状の導水部材を水平方向に適宜ピッチをおいて複数配置してなる、ことを特徴とする。
【0012】
このように構成することにより、熱交換チューブとコルゲートフィンとの間に保水された水は流水路を介して流すことができ、また、流水路から流れずに残留した水は導水部材を介して熱交換器の下部側に流すことができる。
【0013】
この発明において、上記熱交換チューブの幅方向の端部に延設される鍔部を傾斜状に切り起こした切起し片にて上記流水路を形成し、かつ、上記鍔部の基端側に平坦部を残して形成する方が好ましい。
【0014】
このように構成することにより、流水路から流れずに残留した水は平坦部を流れて導水部材を介して熱交換器の下部側に流れる。
【0015】
また、この発明において、上記導水部材を上記複数の熱交換チューブ及びコルゲートフィンよりなる熱交換器コアの最下端より垂下する方がよい。
【0016】
この垂下長さは熱交換器下部のコルゲートフィン間に保水される範囲に依存し、少なくともその保水される範囲の高さ、すなわち熱交換器下端からコルゲートフィン間が保水状態となるフィンまでの長さ(高さ)以上であることが好ましい。また、この保水範囲は、コルゲートフィンのピッチ、幅、高さ、熱交換チューブの厚さ等により異なるため、一定ではない。また、この垂下長さが短いと、熱交換器下部に保水された水を確実に排出することができなくなるからである。
【0017】
また、この発明において、上記熱交換器の下部に排水を受け止めるドレインパンを配置し、上記導水部材の下端を上記ドレインパンに接触させる方が好ましい。
【0018】
このように構成することにより、熱交換器表面に付着した凝縮水(結露水)を下方に配置したドレインパンにて受け止めることができる。
【0019】
この発明において、導水部材はワイヤーで形成してもよく、あるいは、複数の線状素材を縒った形状にし、各線状素材間の隙間に水路を形成するようにしてもよい。
【0020】
導水部材を配置するピッチについては、そのピッチが狭いほど排水速度は良化するが、相反して通気抵抗は増大する。通気抵抗の増大は、例えば定置型の機器において、熱交換器への送風にファンを用いる場合においては、送風動力の増大もしくは送風量の低下につながり、機器のエネルギー消費効率の悪化や熱交換性能の低下が懸念される。このため、ピッチの決定に際しては、熱交換器の熱交換性能、通気抵抗、用いられるファンの特性を考慮することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、上記のように構成されているので、以下のような顕著な効果が得られる。
【0022】
(1)熱交換チューブとコルゲートフィンとの間に保水された水は流水路を介して流すことができ、また、流水路から流れずに残留した水は導水部材を介して熱交換器の下部側に流すことができるので、熱交換チューブとコルゲートフィンとの間の排水性の向上を図ることができると共に、多量の排出水の排水速度の向上を図ることができる。
【0023】
(2)熱交換チューブの幅方向の端部に延設される鍔部を傾斜状に切り起こした切起し片にて上記流水路を形成し、かつ、上記鍔部の基端側に平坦部を残して形成することにより、流水路から流れずに残留した水が平坦部を流れて導水部材を介して熱交換器の下部側に流れるので、上記(1)に加えて更に排水速度を高めることができる。
【0024】
(3)導水部材を上記複数の熱交換チューブ及びコルゲートフィンよりなる熱交換器コアの最下端より適正な垂下長さを確保することにより、熱交換器の下部(具体的には、下部2段程度)に保水された水を確実に排水することができ、上記(1)に加えて更に排水性の向上を図ることができる。
【0025】
(4)熱交換器の下部に排水を受け止めるドレインパンを配置し、導水部材の下端をドレインパンに接触させることにより、熱交換器表面に付着した凝縮水(結露水)を下方に配置したドレインパンにて受け止めることができる。したがって、上記(1),(2)に加えて、更に熱交換器の下部周囲の排水を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明に係るコルゲートフィン式熱交換器の排水構造の第1実施形態を示す正面図(a)及び(a)のI部拡大正面図(b)である。
【図2】第1実施形態に係る排水構造の一部を断面で示す斜視図(a)及びこの発明におけるコルゲートフィンの一部拡大斜視図(b)である。
【図3】第1実施形態における流水路を有する熱交換チューブの別の形状を示す斜視図である。
【図4】この発明に係るコルゲートフィン式熱交換器の排水構造の第2実施形態の一部を断面で示す斜視図である。
【図5】第2実施形態における流水路を有する熱交換チューブを示す斜視図である。
【図6】第2実施形態における流水路と導水部材及びコルゲートフィンの関係を示す要部断面図である。
【図7】第2実施形態における流水路と導水部材及びコルゲートフィンの関係を示す拡大斜視図である。
【図8】第3実施形態における流水路と導水部材及びコルゲートフィンの関係を示す要部断面図(a)及び導水部材の拡大断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、この発明を実施するための形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0028】
<第1実施形態>
この発明に係るコルゲートフィン式熱交換器1(以下に熱交換器1という)は、図1に示すように、それぞれアルミニウム(アルミニウム合金を含む)製の左右に対峙する一対のヘッダーパイプ2a,2bと、これらヘッダーパイプ2a,2b間に互いに平行に水平方向に架設(連結)される複数の扁平状の熱交換チューブ3と、隣接する熱交換チューブ3間に介在されるコルゲートフィン4及び上下方向に位置するコルゲートフィン4の幅方向の表面に接触して水を下方へ導く複数の線状の導水部材20をろう付けしてなる。
【0029】
この場合、熱交換チューブ3には複数に区画された熱媒体流路3aが形成され、幅方向の端部には肉厚部3bが形成されている。また、上下端のコルゲートフィン4の上部外方側及び下部開放側には、それぞれアルミニウム製のサイドプレート5がろう付けされている。また、ヘッダーパイプ2a,2bの上下開口端にはアルミニウム製のエンドキャップ6がろう付けされている。
【0030】
また、熱交換器1の下部には、排水を受け止めるドレインパン7が配置されており、ドレインパン7の底面7aには導水部材20の下端が接触されている。
【0031】
上記のように構成される熱交換器1において、コルゲートフィン4は、薄板を所定の高さになるように山−谷折りを交互に繰り返して成形されており、熱交換器正面からの視点では、V字形状の連続として見ることができる。なお、コルゲートフィン4の形状は必ずしもV字形状の連続ではなく、U字形状の連続であってもよい。
【0032】
上記のように構成される熱交換器1において、図1ないし図3に示すように、熱交換チューブ3の幅方向の端部の肉厚部3bの外面には、該熱交換チューブ3の上下側に隣接するコルゲートフィン4との間に保水される水を吸引する流水路10を熱交換チューブ3の長手方向に適宜ピッチP1をおいて複数形成されている。なおこの場合、スリット11は熱交換チューブ3の長手方向に平行な水平線に対して傾斜状に形成されているが、スリット11は必ずしも傾斜状である必要はなく、図3(b)に示すように、熱交換チューブ3の長手方向に平行な水平線に対して直交状(鉛直状)であってもよい。
【0033】
上記のように形成される構造の排水メカニズムとしては、V字形状(谷折り)フィン表面に凝縮した凝縮水(結露水)は、下段への水路がないため、コルゲートフィン4の幅方向に互いに並行に設けられた複数の縦スリットを切り起こして形成されたフィンルーバ4a(図2(b)参照)を介して隣の逆V字形状(山折り)部に移動し、逆V字形状部に集まった凝縮水は、下方の開口部から、熱交換チューブ3に形成された流水路10を介して、下方側のコルゲートフィン4に流れ込むといったメカニズムをスムーズに繰り返すことにより、排水が促進される構造である。
【0034】
なお、コルゲートフィン4にフィンルーバ4aを設けることにより、熱交換能力の向上が図れる、すなわち、空気の通路に所定角度に成形された所定数のルーバーを設けることで、乱流効果等により熱伝達性能の向上が図れる。
【0035】
この排水メカニズムにおいて、熱交換チューブ3に形成される流水路10のピッチP1がコルゲートフィン4のピッチ(山頂点−谷頂点寸法)の4倍以上になると、コルゲートフィン4の保水力に対し、排水路が少なくなるため、排水スピードが極端に遅くなり、実用上有効な排水効果が得られなくなる。そのため、図1(b)に示すように、流水路10すなわちスリット11のピッチP1はコルゲートフィン4のピッチP(山頂点−谷頂点寸法)の4倍以下が好ましい。
【0036】
一方、上記導水部材20は例えばアルミニウム製のワイヤーによって形成されており、例えば熱交換器1における送風の下流側面に配置されている。なお、導水部材20は必ずしも熱交換器1における送風の下流側面に配置する必要はなく、送風の上流側あるいは送風の上流側及び下流側の双方に配置してもよい。
【0037】
この場合、導水部材20は、複数の熱交換チューブ3及びコルゲートフィン4よりなる熱交換器コア9の最上端の熱交換チューブ3から最下端の熱交換チューブ3と、その間に介在されるコルゲートフィン4と、最下端の熱交換チューブ3の下方に配置されるコルゲートフィン4及びサイドプレート5の幅方向の端部にろう付けされると共に、熱交換器コア9の最下端より垂下されて、ドレインパン7の底面7aに接触されている。
【0038】
本実施形態では導水部材20はドレインパン7の底面7aに接触しているが、熱交換器コア9の最下端より適正な長さを垂下されていれば、必ずしもドレインパン7の底面7aに接触させなくてもよい。
【0039】
この垂下長さは熱交換器下部のコルゲートフィン間に保水される範囲に依存し、少なくともその保水される範囲の高さ、すなわち熱交換器下端からコルゲートフィン間が保水状態となるフィンまでの長さ(高さ)以上であることが好ましい。
【0040】
コルゲートフィン4の山-谷のピッチPが1.3mmで、上下に隣接する熱交換チューブ3間のピッチP2が10mmの場合、熱交換器下部に保水される範囲は熱交換器最下端から2段程度となるため、20mm(=10mm×2段)以上の垂下長さを確保することにより、下部に保水された水を排出することが可能となる。
【0041】
なお、図1では導水部材20は3本の場合について図示しているが、導水部材20の水平方向のピッチPAは、熱交換器の熱交換性能、通気抵抗、用いられるファンの特性を考慮することが好ましく、例えば線径φ2mmのワイヤーを導水部材を配した場合、50mm〜150mm程度の範囲に設定する方がよい。この場合、ヘッダーパイプ2a,2bの内側間の距離Lは400mmに設定されている。導水部材20のピッチが50mmより狭いと通気抵抗の増大に伴い、用いられるファンの特性によっては機器のエネルギー消費効率の悪化や熱交換性能の低下を招くことが懸念される。また導水部材20のピッチが150mmより広いと、流水路から流れずに残留した水の排出が不十分となり、さほど排水速度の改善が見込めなくなる。
【0042】
上記のように形成される導水部材20によって、流水路10から流れずに残留した水は導水部材20を介して熱交換器1の下部側のドレインパン7内に流すことができる。
【0043】
上記第1実施形態の排水構造によれば、熱交換器表面がウェットな状態となると、コルゲートフィン4の表面に凝縮し、水滴となった凝縮水(結露水)が、熱交換チューブ3の上下側に隣接するコルゲートフィン4間に保水された状態で、流水路10のエッジ部が保水に接触することで、流れ落ちる起点となり、水を誘引して下方側のコルゲートフィン4へ排出することができる。以下同様にして、コルゲートフィン4の表面に凝縮し、水滴となった凝縮水(結露水)は、順次下方側のコルゲートフィン4へ排出される。一方、流水路10から流れずに残留した水は導水部材20を介して熱交換器1の下部側のドレインパン7内に流れる。これにより、扁平状熱交換チューブ3を水平配置した場合でも、排水速度を速めることができ、排水性の向上を図ることができる。
【0044】
<第2実施形態>
第2実施形態の熱交換器1Aは、図4ないし図7に示すように、熱交換チューブ3Aの幅方向の端部に水平状に延設される鍔部30に切り込まれるスリット11を介して傾斜状に切り起こした切起し片32にて流水路10を形成し、かつ、鍔部30の基端側に平坦部31を残して形成した場合である。
【0045】
この場合、導水部材20は、第1実施形態と同様に、例えばアルミニウム製のワイヤーによって形成されており、複数の熱交換チューブ3及びコルゲートフィン4よりなる熱交換器コア9の最上端の熱交換チューブ3から最下端の熱交換チューブ3と、その間に介在されるコルゲートフィン4と、最下端の熱交換チューブ3の下方に配置されるコルゲートフィン4及びサイドプレート5の幅方向の端部にろう付けされると共に、熱交換器コア9の最下端より垂下されて、ドレインパン(図示せず)の底面に接触されている。なお、導水部材20は熱交換器コア9の最下端より適正な長さを垂下されていれば、ドレインパン7の底面7aに接触させなくてもよい。
【0046】
なお、第2実施形態において、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0047】
第2実施形態の排水構造によれば、熱交換器表面がウェットな状態となると、コルゲートフィン4の表面に凝縮し、水滴となった凝縮水(結露水)が、熱交換チューブ3の上下側に隣接するコルゲートフィン4間に保水された状態で、流水路10のエッジ部が保水に接触することで、流れ落ちる起点となり、水を誘引して下方側のコルゲートフィン4へ排出することができる。以下同様にして、コルゲートフィン4の表面に凝縮し、水滴となった凝縮水(結露水)は、順次下方側のコルゲートフィン4へ排出される。一方、流水路10から流れずに残留した水は、平坦部31を熱交換チューブ3の長手方向に沿って流れ、導水部材20を介して熱交換器1の下部側のドレインパン7内に流れる。これにより、扁平状熱交換チューブ3を水平配置した場合でも、排水速度を速めることができ、排水性の向上を図ることができる。
【0048】
<第3実施形態>
第3実施形態の熱交換器1Bは、図8に示すように、第1,第2実施形態における導水部材20に代えて、導水部材20Aを複数(例えば3本)の線状素材21を縒った形状にし、各線状素材21間の隙間に水路を形成した場合である。
【0049】
このように形成される導水部材20は、例えば第2実施形態と同様に、複数の熱交換チューブ3及びコルゲートフィン4よりなる熱交換器コア9の最上端の熱交換チューブ3から最下端の熱交換チューブ3と、その間に介在されるコルゲートフィン4と、最下端の熱交換チューブ3の下方に配置されるコルゲートフィン4及びサイドプレート5の幅方向の端部にろう付けされると共に、熱交換器コア9の最下端より垂下されて、ドレインパン(図示せず)の底面に接触されている。なお、導水部材20Aは熱交換器コア9の最下端より適正な長さを垂下されていれば、ドレインパン7の底面7aに接触させなくてもよい。
【0050】
第3実施形態において、その他の部分は第1,第2実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0051】
第3実施形態の排水構造によれば、熱交換器表面がウェットな状態となると、コルゲートフィン4の表面に凝縮し、水滴となった凝縮水(結露水)が、熱交換チューブ3の上下側に隣接するコルゲートフィン4間に保水された状態で、流水路10のエッジ部が保水に接触することで、流れ落ちる起点となり、水を誘引して下方側のコルゲートフィン4へ排出することができる。以下同様にして、コルゲートフィン4の表面に凝縮し、水滴となった凝縮水(結露水)は、順次下方側のコルゲートフィン4へ排出される。一方、流水路10から流れずに残留した水は、平坦部31を熱交換チューブ3の長手方向に沿って流れ、導水部材20Aを形成する各線状素材21間の隙間を介して熱交換器1の下部側のドレインパン7内に流れる。これにより、扁平状熱交換チューブ3を水平配置した場合でも、排水速度を速めることができ、排水性の向上を図ることができる。
【0052】
<その他の実施形態>
上記実施形態では、この発明に係る排水構造を蒸発器に適用した場合について説明したが、この発明は、蒸発器以外のパラレルフロー型コルゲートフィン式熱交換器において、熱交換チューブを水平配置した場合でも、表面に付着した水滴の排水性を十分に有し、通気抵抗及び熱交換効率に与える悪影響を抑制することができる。
【符号の説明】
【0053】
1,1A,1B 熱交換器
2a,2b ヘッダーパイプ
3 熱交換チューブ
4 コルゲートフィン
7 ドレインパン
7a 底面
9 熱交換器コア
10 流水路
11 スリット
20,20A 導水部材
21 線状素材
30 鍔部
31 平坦部
32 切起し片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対峙する一対のヘッダーパイプ間に、互いに平行な複数の扁平状熱交換チューブを水平方向に配置し、コルゲートフィンを上記熱交換チューブ間に接合してなるコルゲートフィン式熱交換器において、
上記各熱交換チューブの幅方向の端部外面に、該熱交換チューブの上下側に隣接する上記コルゲートフィンとの間に保水される水を吸引する流水路を熱交換チューブの長手方向に適宜ピッチをおいて複数形成し、
上下方向に位置する上記コルゲートフィンの幅方向の表面に接触して水を下方へ導く線状の導水部材を水平方向に適宜ピッチをおいて複数配置してなる、ことを特徴とするコルゲートフィン式熱交換器の排水構造。
【請求項2】
請求項1記載のコルゲートフィン式熱交換器の排水構造において、
上記熱交換チューブの幅方向の端部に延設される鍔部を傾斜状に切り起こした切起し片にて上記流水路を形成し、かつ、上記鍔部の基端側に平坦部を残して形成してなる、ことを特徴とするコルゲートフィン式熱交換器の排水構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコルゲートフィン式熱交換器の排水構造において、
上記導水部材を上記複数の熱交換チューブ及びコルゲートフィンよりなる熱交換器コアの最下端より垂下してなる、ことを特徴とするコルゲートフィン式熱交換器の排水構造。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のコルゲートフィン式熱交換器の排水構造において、
上記熱交換器の下部に排水を受け止めるドレインパンを配置し、上記導水部材の下端を上記ドレインパンに接触してなる、ことを特徴とするコルゲートフィン式熱交換器の排水構造。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のコルゲートフィン式熱交換器の排水構造において、
上記導水部材がワイヤーである、ことを特徴とするコルゲートフィン式熱交換器の排水構造。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかに記載のコルゲートフィン式熱交換器の排水構造において、
上記導水部材が、複数の線状素材を縒った形状であり、各線状素材間の隙間に水路を形成してなる、ことを特徴とするコルゲートフィン式熱交換器の排水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−251719(P2012−251719A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124726(P2011−124726)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)