説明

コロナ放電装置

【課題】 帯電装置の長手方向における帯電ムラを低減するために帯電装置のたわみを低減する。
【解決手段】 シールド板を上部シールド板と下部シールド板の2つの部材とし、上部シールド板には段曲げを行ない、その段を挟んだ複数箇所を下部シールド板と接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロナ放電を発生させるコロナ帯電器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置の一形態としての複写機では、被帯電体としての静電潜像担持体である感光ドラムの表面を一様に帯電し、該表面に画像光を露光して静電潜像を形成する。ここで、感光ドラム表面の帯電は、コロナ放電を利用したコロナ帯電装置で行われる。コロナ放電を行う帯電幅は感光ドラム面上で決まっており、コロナ帯電装置は条件にあった範囲をコロナ放電しなくてはならない。
【0003】
一般にコロナ帯電装置は、空気中で帯電線に高電圧を印加してコロナ放電を起こさせ、コロナ放電によって発生したイオンを、被帯電体表面に導いて帯電させる装置である。その際に、帯電線と被帯電体との間にグリッド線を設け、このグリッド線にも電圧をかけて帯電線とグリッド線との間の電位差を調節することで、被帯電体面上にあらかじめ設定した電圧で一定のムラのない帯電状態を形成できる。(例えば特許文献1参照)
図11から図14を参照して従来のコロナ帯電装置の基本構成について説明する。
【0004】
図11は、従来のコロナ帯電装置を示す斜視図である。図12は、従来のコロナ帯電装置のシールド板を示した図、図13と図14は図11に示した従来のコロナ帯電装置の詳細図である。
【0005】
コロナ帯電装置114は、絶縁耐圧性をもつ樹脂からなる前ブロック142と後ブロック144を備えている。前ブロック142と後ブロック144は所定距離だけ離れて向き合っており、その間の側面には、側部シールド板54、62が配置されている。
【0006】
また、前ブロック142と後ブロック144と側部シールド板154、162の上部には上部シールド板160が配置されている。上部シールド板160の両端は前ブロック142と後ブロック160の上面にビスで固定されている。更に上部シールド板160は下部シールド板161と複数箇所を溶接により結合されている。
【0007】
前ブロック142と後ブロック144との間に帯電線150が所定の張力で張られている。この帯電線150に所定電圧を印加することによりコロナ放電が発生する。
【0008】
前ブロック142と後ブロック144の下部にグリッド線147を配し、前ブロック142と後ブロック144に設けられた突縁部142a、144aで折り返す事で、折り返したグリッド線147同士が張力を掛けて平行に渡される。このグリッド線147によりムラのない帯電状態を形成する。
【特許文献1】特開2000−122374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら従来のコロナ帯電装置におけるシールド板構成では感光体の周速の増加によってグリッド線の掛け数が増加した。そのため、グリッド線の張力の増大し、コロナ帯電装置のたわみが増大した。そのため、スラスト方向のグリッド線と感光体のギャップにおいて前奥に差が出てしまうため、帯電性にムラが発生し、画像濃度においてもムラが発生した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明のコロナ帯電装置は、2つのブロック間に離間して並列に配置したグリッド線と、グリッド線に張力を加えて張設する張設機構と、前記2つのブロック間に複数本渡した帯電線と、その帯電線に電圧を印加する機構と、前記2つのブロックの上面と結合する上部シールド板と、上部シールド板の下面と結合される下部シールド板を有し、上部シールド板と下部シールド板には複数の結合部を設けてあり、そのうち少なくとも2つの結合部が上部シールド板の前奥に設けた2つの段曲げを夫々挟むように結合する構成を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上、説明したように上部シールド板と下部シールド板との複数の接合部間に段差を設ける事で応力分散を図り、たわみを低減する。更に上部シールド板の段差部を作像領域の外側に曲げを設ける事で帯電性能を落とさずにシールド板の強度を上げることができる。
【0012】
たわみの低減により、スラスト方向に対してグリッド線と感光体のギャップを一定に保てるため、個々の帯電装置間の帯電ムラが発生しない。また、上記の構成により、帯電線とグリッド線の距離もスラスト方向に対して均一にできる。
【0013】
そのため、得られる画像のスラスト方向の濃度ムラが改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明のコロナ帯電器の実施形態を説明する。なお、各図に共通する部材には同一の符号を付す。
【0015】
図1は、本発明のコロナ帯電器の実施形態が組み込まれた複写機を示す模式図である。
【0016】
複写機10は、矢印A方向に回転する感光ドラム12を備えている。感光ドラム12は、一次帯電器(本発明にいうコロナ帯電器の一例である)14によって一様に帯電され、画像情報を担持する光16が照射される。これにより感光体12に静電潜像が形成され、この静電潜像に現像器18からトナー(現像剤)が供給されて現像像が形成される。現像像は、感光ドラム12の回転に伴って転写帯電器(本発明にいうコロナ帯電器の一例である)20に向き合う領域(転写領域)に搬送される。
【0017】
記録媒体が収納されたカセット24からは、ピックアップローラ26によって記録紙22が給紙されてレジストローラ28に挟持される。レジストローラ28によって記録紙22が所定のタイミングで転写領域に搬送され、記録紙22に現像像が転写される。現像像が転写された記録紙22は、搬送部30によって定着器32に搬送される。定着器32では、記録紙22に転写された現像像が加熱されて定着される。現像像が定着された記録紙22は排出口34から排出されて排紙トレイ36上に積載される。なお、転写帯電器20よりも感光ドラム12の回転方向下流側には、転写後に感光ドラム12に残留したトナーを除去するクリーナ38が配置されており、転写後の感光ドラム12が清掃される。
【0018】
図2から図5までを参照して、一次帯電器14として用いられているコロナ帯電器を説明する。
【0019】
図2は、一次帯電器14として用いられているコロナ帯電器の第1実施形態を示す斜視図である。図3は、一次帯電器14に用いられているシールド板を示した図、図4と図5は一次帯電器14の詳細図である。
【0020】
図2から図5を参照して一次帯電器14の基本構成について説明する。
一次帯電器14は、絶縁耐圧性をもつ樹脂からなる前ブロック42と後ブロック44を備えている。前ブロック42と後ブロック44は所定距離だけ離れて向き合っており、その間の側面には、側部シールド板54、62が配置されている。
【0021】
また、前ブロック42と後ブロック44と側部シールド板54、62の上部には上部シールド板60が配置されている。上部シールド板60の両端は前ブロック42と後ブロック60の上面にビスで固定されている。更に上部シールド板60は下部シールド板42と複数箇所を溶接により結合されている。
【0022】
前ブロック42と後ブロック44との間には、帯電線止め金具46とコイルばね48、帯電線位置調整ブロック49を介して帯電線50が所定の張力で張られている。この帯電線50に所定電圧を印加することによりコロナ放電が発生する。
【0023】
後ブロック44には、帯電線止め金具46に接続された転写電極ビス(不図示)が固定されている。この転写電極ビス(不図示)は、複写機10の本体に一次帯電器14として組み込まれた状態で、この本体の高圧電源の接点に接続されるように構成されている。
【0024】
側部シールド板54、62は、一次帯電器14の剛性を高めてその形状を保つと共に感光体への帯電性能を向上させる機能を有する。
【0025】
側部シールド板54は後ブロック44の近傍部分57で、複写機10本体のGND電位に接続されている。このため、シールド板54と上部シールド板60が導通してGND電位になっている。更に下部シールド板61は上部シールド板60と溶接されているため、帯電線の電流が3方向のシールド板側に向けて放電し、帯電効率を高める。
【0026】
また、前ブロック42と後ブロック44の下部にグリッド線47を配し、前ブロック42と後ブロック44に設けられた突縁部42a、44aで折り返す事で、折り返したグリッド線同士が張力を掛けて平行に渡される。更にグリッド線47の一端を上部シールド板に接続し、同電位にする。
【0027】
図4と図5を参照して一次帯電器14を複写機10への装着方法について説明する。
【0028】
一次帯電器14は、帯電線50に沿って複写機10に装着される。そのとき、後ブロック44に設けた位置決めピン44aと44bを複写機10に設けてある位置決め穴に入れる。
【0029】
また、前ブロック42の位置決め部材として位置決め板64が配置されている。位置決め板64は前ブロック42に対して上下方向に移動可能であり、感光体12ギャップを調整した後、ビスで固定される。位置決め板64に設けた位置決め穴64aと64bを複写機10に設けてある位置決めピンへ入れる。それにより一次帯電器14と感光体12の間のギャップを決める。
【0030】
以下、図6を参照して本発明のシールド板構成を採用した上部シールド板60と下部シールド板61について説明する。
【0031】
図6は図4における上部シールド板60の段曲げ部60a近傍の詳細図である。上部シールド板60と下部シールド板61は複数個所で溶接する。そのうち、少なくとも2箇所は段曲げ60aを挟むようにその両側の接合部91、92で溶接されている。また、下部シールド板61の上部には剛性の増加を目的とした曲げ61aを設ける。後ブロック44側(図5の段曲げ60b近傍)も同様の構成とする。上記の構成によって応力分散を図り、上部シールド板60のたわみを低減した。
【0032】
線形構造解析ソフトを用いて従来のシールド板構成と本発明のシールド板構成にグリッド線47を前ブロック42と後ブロック44の間に渡した時のたわみ量を解析した。
【0033】
図7から図10を参照して従来のシールド板構成のコロナ帯電装置と本発明のシールド板構成のコロナ帯電装置に発生するたわみの解析について説明する。
【0034】
図7は従来のコロナ帯電装置におけるたわみの発生した状態のイメージ図である。図8は従来のコロナ帯電装置における解析で求められたたわみ量を大きさによって幾つかの領域に分けた図である。
【0035】
図9は本発明のコロナ帯電装置におけるたわみの発生した状態のイメージ図である。図10は本発明のコロナ帯電装置における解析で求められたたわみ量を大きさによって幾つかの領域に分けた図である。
【0036】
前記2つの解析において前ブロック42と後ブロック44の突縁部42a、44a(図4、5参照)にグリッド線47方向(コロナ帯電装置内側方向)に各5Nの力を掛けた時のたわみ量を解析した。そのとき、前ブロックの位置決め穴64aをX・Y・Z方向の固定点とし、前ブロックの長穴64bをY・Z方向の固定点とする。また、後ブロックの位置決めピン44aをX・Z方向の固定点とし、後ブロックの位置決めピン45aをZ方向の固定点として解析を行った。以下に図7、図8(従来のコロナ帯電装置)の前記条件における各領域の矢印Z方向の平均たわみ量と最大たわみ量を示す。
【0037】
領域G:0.25mm、領域H:0.2mm、領域I:0.15mm、領域J:0.1mm、領域K:0.05mm最大たわみ量:0.27mm
次に図9、図10(本発明のコロナ帯電装置)の前記条件における各領域の矢印Z方向の平均たわみ量と最大たわみ量を示す。
【0038】
領域L:0.15mm、領域M:0.1mm、領域N:0.5mm、領域O:0mm
最大たわみ量:0.197mm
上記のことより従来のシールド板構成に対して本発明のシールド板構成にすることによりたわみを27%削減する事に成功した。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】コロナ帯電装置の実施形態が組み込まれた複写機を示す模式図である。
【図2】転写帯電装置として用いられているコロナ帯電装置の実施形態を示す斜視図である。
【図3】図2に示したコロナ帯電装置のシールド板構成である。
【図4】図2に示したコロナ帯電装置の前ブロック42側の詳細図である。(右シールド板54を外した状態)
【図5】図2に示したコロナ帯電装置の後ブロック44側の詳細図である。(右シールド板54を外した状態)
【図6】図4に示したコロナ帯電装置の前ブロック42側詳細図における上部シールド板60の段曲げ部60a近傍の詳細図である。
【図7】従来のコロナ帯電装置におけるたわみの発生している状態のイメージ図である。(実際よりもたわみを強調した図)
【図8】従来のコロナ帯電装置におけるたわみのシミュレーションを行なった結果を示す図である。
【図9】本発明のコロナ帯電装置におけるたわみの発生している状態のイメージ図である。(実際よりもたわみを強調した図)
【図10】本発明のコロナ帯電装置におけるたわみのシミュレーションを行なった結果を示す図である。
【図11】従来のコロナ帯電装置の斜視図である。
【図12】図11に示した従来のコロナ帯電装置の中央シールド板構成(右シールド板154、左シールド板162の無い構成)である。
【図13】図11に示した従来のコロナ帯電装置の前ブロック142側の詳細図である。(右シールド板154を外した状態)
【図14】図11に示した従来のコロナ帯電装置の後ブロック144側の詳細図である。(右シールド板154を外した状態)
【符号の説明】
【0040】
10 複写機
12 感光体
14 本発明の一次帯電器
42、142 前ブロック
44、144 後ブロック
47、147 グリッド線
50、150 帯電線
54、62、154、162 側部シールド板
60、160 上部シールド板
61、161 下部シールド板
64 位置決め板
141 従来のコロナ帯電装置
F〜N たわみ量領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのブロック間に離間して並列に配置したグリッド線と、グリッド線に張力を加えて張設する張設機構と、前記2つのブロック間に複数本渡した帯電線と、その帯電線に電圧を印加する機構と、前記2つのブロックの上面と結合する上部シールド板と、上部シールド板の下面と結合される下部シールド板を有し、上部シールド板と下部シールド板には複数の結合部を設けてあり、そのうち少なくとも2つの結合部が上部シールド板の前奥に設けた2つの段曲げを夫々挟むように結合する構成を有するコロナ帯電装置。
【請求項2】
前記上部シールド板の段曲げ位置を感光体の帯電領域の外側に配置した事を特徴とする請求項1に記載のコロナ帯電装置。
【請求項3】
前記下部シールド板の作像領域内とその近傍部分に曲げを設けた事を特徴とする請求項1に記載のコロナ帯電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−145848(P2009−145848A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326060(P2007−326060)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】