説明

コンクリ−ト製ますの補修法およびその装置

【課題】既設のブロック組立式丸形コンクリ−ト製公共ますは、ブロック部材の積み重ねによりその継ぎ目に、経年による老朽化が進み、その継ぎ目から植物の根が侵入し、ます機能を阻害するので、インバ−トを残して補修が行われているが、これでは、その立管下端に管継手等を予め付設して内挿しているので立管が小口径化する、という問題があった。
【解決手段】この問題を解決するため、この公共ます1Aの、上下方向同一内径を形成する直壁5に、その下端が直壁5に内接する拡径部6をもつ塩ビ製立管7のみを内挿して、直壁5と立管7との空間を少なくし、これに流動性の高いモルタルを流し込んで補修をすれば、立管7は元の口径と変らない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリ−ト製ますの補修法およびその装置に関し、詳しくは公共ますのそれに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、宅内配管の下流端に設置され、主として公共下水道管理者が維持管理を行う公共ますもコンクリ−ト製の場合、コンクリ−ト製マンホ−ルと同様、組立建造が行われ、当該公共ます全体を工場製品とし、そのブロックを現場で積み上げる構造になっている。
【0003】
すなわち、この公共ます50は、例えば図5に示すようにインバ−トを形成する底板51に、塩ビ製の流入管52および流出管53の管路をそれぞれもつ管取付壁54を積み、これに直壁55を積み、この直壁55に、斜壁56および調整リング57を積み、この調整リング57に、蓋58および受枠59を載置固定している。
【0004】
そして、かかる公共ます50は堅固で耐久性のある構造が要求され、殊に、前記のようにブロック組立てであるため、これらのブロック間の継手部分(継ぎ目)は、地下水浸入防止のため、このモルタル等の施工を入念に行う必要があり、また、地震時における各ブロック間のずれ発生防止のため緊結等の必要があるとされている。
【0005】
ところで、一般のコンクリ−ト製下水設備は、路面荷重等による長期間の土圧によって老朽化が進み、この老朽化した、例えば下水管には、それより小口径の塩ビ管を挿入し、そのド−ナツ状空間にモルタルを流し込んで、当該下水管の補修ないし再生が行われている(例えば特開昭62−127586号公報参照)。
【0006】
そして、前記ブロック組立式コンクリ−ト製公共ます50でも、入念な仕上げをしているとはいえ、長期に亙り使用した場合、管路や側塊等(前記直壁55や斜壁56等)の継手部分に使用したモルタルが剥離し、外部から植物の根や地下水ないし雨水が浸入し管路を閉塞するので、これらの継手部分を補修し再生することが行われている。
【0007】
かかる補修法について次のような提案がなされている。
【特許文献1】特許第2988647号公報の提案では、既設のコンクリ−ト製ます内に、その流出入口と対応する流出入口をもつ塩ビ製ます本体を内装セットする際、該塩ビ製ます本体に、その流出口に接続される接続継手を予め設けている補修法を紹介しており、
【特許文献2】また、特開2001−193147号公報の提案では、既設のコンクリ−ト製ますのインバ−トに、その流出入口側の各インバ−ト部を被覆する弯曲状のカバ−をもち、かつ、これらのカバ−の中間部に上向きの掃除管用受口を設けたカバ−本体で被覆した補修法を紹介している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記のいずれの提案でも、既設のコンクリ−ト製ますの側塊の内径に対し、内装する塩ビ製ますの点検筒ないし掃除管が、その下端に、予め接続継手または弯曲状のカバ−を設けていることから、それだけ小口径化するという問題があった。
【0009】
殊に、既設のコンクリ−ト製ますは、下水道協会制定のコンクリ−ト製小型マンホ−ルと同様、もともと小口径化しているだけに、その内部での作業が困難であるばかりでなく 、点検筒の小口径化は更に悪影響が大きい。
【0010】
そこで本発明は、既設のコンクリ−ト製ますが、例えば丸形3号汚水ますであれば、その側塊の内径が略正確に内径300mmφと決められていることに着目し、前記問題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる問題を解決するため、本発明は、1)既設のブロック組立式コンクリ−ト製ますにおいて、その直壁に略内接する合成樹脂製立管を吊下または立設し、これらの直壁と立管との間に充填剤を流し込んで、該直壁の継ぎ目やクラックを補修することを特徴とするコンクリ−ト製ますの補修法にあり、また、2)既設のブロック組立式丸形コンクリ−ト製ますにおいて、その直壁に略内接する略寸胴状の合成樹脂製立管のみを吊下または立設し、これらの直壁と立管との間に充填剤を流し込んで、該直壁の継ぎ目やクラックを補修することを特徴とするコンクリ−ト製ますの補修装置にあり、また、3)前記立管の下端に拡径部を設け、該拡径部を直壁に摺接して内接させる請求項1または2に各記載のコンクリ−ト製ますの補修法またはその装置にあり、また、4)前記直壁以下を残し、他を取替える請求項1から3に各記載のコンクリ−ト製ますの補修法またはその装置を要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、コンクリ−ト製ますの劣化や老朽化による、クラック等を含めた直壁のみの破損箇所のみを補修するので、健全な箇所をそのまま残し、補修の効率(単に管体を上方から挿入するだけで流出入管路との接続不要等の施工性や、単なる管体のみの挿入使用等によって資材の節約化)を向上させるのは勿論、補修用立管(点検筒または掃除管を指す)を可及的に大口径化でき、ひいては、既設のます口径に近い寸法とし、立管による機能、すなわち点検や掃除具の挿入等の作業が従前と同様となり、これに支障を与えない。
【0013】
殊に、小口径化したコンクリ−ト製ますにとって好都合となり、補修後の耐久性も何ら支障やクラック等がない。もし、継手部分に耐震施工があれば、これを補強しそのまま利用することができる。
【0014】
更に、公共ますが公道近傍に設置されることから、車道の微振動によりブロック継ぎ目の破損が生じやすいこと、つまり発生しやすい側塊のみの損傷に好都合に対応させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を添付図面に示す実施例により詳細に述べる。
【0016】
図1から図4迄に本発明の実施例法の各設置を示し、図1(A)は既設のブロック組立式丸形コンクリ−ト製公共ますの縦断面図、図1(B)は図1(A)の側塊以下を残すための地表を掘削した断面図、図2(C)は図1(B)において補修用立管を内装した状態の断面図、図2(D)は図2(C)においてモルタルを注入器により流し込む状態の断面図、図3(E)は図2(D)において立管に蓋等を被覆した状態の断面図、図3(F)は図3(E)において掘削した部分を埋戻しした状態の断面図、図4は図1〜3に示す立管の一部断面図であり、図5で示す従来例と同一部分はその説明を省略ないし簡略化する。
【0017】
先ず、本発明の実施例(方法および装置)の概要を述べる。
【0018】
既設のブロック組立式丸形コンクリ−ト製公共ます1において、経年により、その継手部分、すなわち、継ぎ目2 2…から例えば植物の根が侵入し、点検等に支障をきたしたり、流出入口3、4を閉塞したりする苦情ないし問題が発生した場合、その製品の取替えをする迄もなく、簡易補修をするに際し、当該コンクリ−ト製公共ます1の、上下方向同一内径を形成する直壁5内面に接するようにその下端を拡径した拡径部6のみ(シ−ルを含むが、全体として寸胴状になっている)をもつ塩ビ製(合成樹脂製)立管7を、該直壁5の内面に摺接しながら吊下し、その拡径部6が当該ますの最下位の継目2a以下になるよう位置決めした後、これらの直壁5と立管7との狭小空間に流動性の高いモルタル8を流し込み、立管7を公共ます1に内装する補修法を行う。
【0019】
そして、この立管7の上端に、塩ビ製小口径ますで汎用されている密閉蓋(20)を直接覆設する簡易施工をする。
【0020】
これを数値的に例示して表現すれば、直壁5の内径が350mmφの場合、そこに使用する立管7の外径は318mmφ、拡径部6の外径は340mmφとし、その拡径部6の外周にシ−ル(リング)9を嵌装し直壁5の内面に摺接させる。そして、この立管7の管長は、この公共ます1の場合750mmのものを使用するとよい。
【0021】
この立管7は汎用の塩ビ製射出成形品に付き、製品精度はきわめて高く、特に心円度は高いので、加工精度の高い工場生産たるブロック組立式ますに好都合となる。
【0022】
次に、この立管7を詳細に述べる。
【0023】
図4において、塩ビ製立管7の下端に下向きラッパ状の拡径部6を形成する。この下向きラッパ状の拡径角度θは約15°とし、その拡径折曲長さL=40mmとして、拡径部6の外周にシ−ル(リング)9を接着して取付ける。このシ−ル9の外周によって流入したモルタル8の流下漏を防いでいる。
【0024】
また、立管7の下方の外周面には、その上下巾約200mmに亙り、合成樹脂系粘着剤を塗布し、これに乾いた珪砂を均一にまぶした砂付け加工部10を設け、塩ビ製立管7と流し込むモルタル8との固着を強固にしている。
【0025】
そして、立管7は塩ビ製押出成形品の一端を熱プレス成形等の後加工により、拡径部6を形成してもよい。
【0026】
次に、かかる立管7を用いた補修について詳細に述べる。
【0027】
図1〜3において、図1(A)に示す既設のブロック組立式丸形コンクリ−ト製公共ます1は、インバ−ト11を形成し、かつ、塩ビ管が接続する流出入口12を設けた底塊たる底板13に、側塊たる、例えば3つ(複数)のブロックの直壁5a、5a…を接着剤たるモルタル(不図示)を介して積んでおり、これらの直壁5は同一内径の内面を形成している。
【0028】
更に、これらの直壁5に、上塊たる斜壁14を載置し、この斜壁14に蓋部材15を被覆して、この蓋部材15の上面を地表GLと一致させている。
【0029】
かかる既設の公共ます1に前記不具合が発生すると、図1(B)に示すように公共ます1の近傍を、上塊のみを撤去できる程度に掘削16し、蓋部材13や斜壁14を取除く。
【0030】
次いで、図2(C)に示すように前記立管7を直壁5に内装し、その下端の拡径部6が側塊の最下位の継ぎ目2aより下方に位置したとき、仮固定バンド(溝のない箇所に用いるグリップ止め輪をいう)17を巻着して立管7を直壁5に仮固定する。
【0031】
すなわち、この半割の止め輪たる仮固定バンド17のグリップ用ネジ締付部18を直壁5の上端面に係止して立管7を直壁5内に吊下する。
【0032】
したがって、この仮固定バンド17を用いることにより、立管7が直壁5に対し同心状態となる。
【0033】
そこで、図2(D)のように直壁5の内面と立管7の外面との狭小ド−ナツ状空間19にモルタル(充填剤)8を注入器21によって流し込む。このモルタル8は流動性の良い無収縮急結モルタルが好ましい。
【0034】
次いで、図3(E)に示すように立管7上に塩ビ製(小口径塩ビますに汎用されている密閉蓋)もしくは鋳鉄製の蓋部材20をセットし、前記モルタルの養生を行う。勿論、このセットにより養生期間に異物の落下を防止する。
【0035】
公道下に設置される公共ます1Aの場合には、台座付の防護蓋(不図示)でカバ−する。
【0036】
そして、図3(F)に示すように仮固定バンド17を外すか、そのままで埋戻しをして補修ずみの公共ます1Aにする。
【0037】
なお、直壁5と同心性を高くする前記仮固定バンド17を用いない方法を述べると、前記インバ−ト11がストレ−トの場合、立管7の下端にこれらのインバ−トを跨ぐ1対の凹部を形成し、この立管7をインバ−ト上の傾斜最上部に当接させる。
【0038】
そして、立管7における最下位の継ぎ目2a以下の部位に、断面太目のリップ付パッキンを嵌着して注入したモルタルの漏れを防止すると、立管7は直壁5に立設できる。したがって、本明細書の吊下とは立設を含んでいる場合もある。
【0039】
また要するに、コンクリ−ト製公共ます1の内面と塩ビ製立管7を同じ形状に加工して使用すればよいが、円形の立管が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施例の説明断面図である。
【図2】図1の他の説明断面図である。
【図3】図2の更に他の説明断面図である。
【図4】本実施例の要部断面図である。
【図5】従来例である。
【符号の説明】
【0041】
1、1A 公共ます
2、2a 継ぎ目
5 直壁
7 立管
8 モルタル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設のブロック組立式コンクリ−ト製ますにおいて、その直壁に略内接する合成樹脂製立管を吊下または立設し、これらの直壁と立管との間に充填剤を流し込んで、該直壁の継ぎ目やクラックを補修することを特徴とするコンクリ−ト製ますの補修法。
【請求項2】
既設のブロック組立式丸形コンクリ−ト製ますにおいて、その直壁に略内接する略寸胴状の合成樹脂製立管のみを吊下または立設し、これらの直壁と立管との間に充填剤を流し込んで、該直壁の継ぎ目やクラックを補修することを特徴とするコンクリ−ト製ますの補修装置。
【請求項3】
前記立管の下端に拡径部を設け、該拡径部を直壁に摺接して内接させる請求項1または2に各記載のコンクリ−ト製ますの補修法またはその装置。
【請求項4】
前記直壁以下を残し、他を取替える請求項1から3に各記載のコンクリ−ト製ますの補修法またはその装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−2481(P2006−2481A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181430(P2004−181430)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【出願人】(504336825)株式会社 みなと (1)
【Fターム(参考)】