説明

コンクリートにおける粘土活性を改善するためのスランプ保持混和剤

【課題】 コンクリートにおける粘土活性を改善するためのスランプ保持混和剤
【解決手段】 本発明は、粘土含有骨材が入っているセメントおよびコンクリートが示すスランプ保持を向上させる目的でポリカチオン性化合物をヒドロキシカルボン酸もしくはこれの塩と組み合わせて用いることに関し、そのようにしないと、前記粘土はポリカルボキシレート系超可塑剤を吸収するか或はそれが示す用量効率を低下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水和性セメント系材料が示す特性の改善、より詳細には、ポリカチオン性化合物、ヒドロキシカルボン酸もしくはこれの塩およびポリカルボキシレート系超可塑剤を用いることで改良を受けさせた化学的混和剤およびこれを用いてセメントモルタルおよびコンクリートを改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オキシアルキレン含有重合体がコンクリートに入れる超可塑剤または減水剤として用いられることは公知である。例えば、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイド基を含有する「EO/PO」型の櫛形重合体が特許文献1に開示されており、それらはセメントモルタルおよびコンクリートが示す「スランプ」(流動性概念に類似した特性)を長時間に渡って保持するための超可塑剤として用いるに有用である。
【0003】
また、特定の膨潤性粘土、例えばスメクタイトおよびモントモリロナイトなどがそのような超可塑剤の用量効率(dosage−efficiency)に対して示す悪影響を抑制する目的でいろいろな作用剤が用いられることも公知である。そのような粘土はモルタルセメントおよびコンクリートを製造する時に用いられる砂骨材に時折入っており、しばしば、新鮮なセメントもしくはコンクリートが示す作業性が劣る原因になっている。
【0004】
そのような粘土が混合用水で最初に湿った時に膨張することで前記粘土がそのように膨張した状態で当該超可塑剤を吸収するか或は捕捉することが理論付けされた。それによって、セメント系組成物を水和させる時に必要なスランプの度合、例えばその混合物をトラックで輸送するか或は前記混合物を建設現場で注ぎ込む時に要求され得るスランプの度合を維持するには超可塑剤がより多い量で必要であることから用量効率が低下する。
【0005】
そのような問題は特定の粘土によって引き起こされることが特許文献2および3の中で初めて認識され、それらには、当該粘土が超可塑剤を吸収しないようにする、従って用量反応を回復させるいろいろな作用剤の使用が開示されている。そのような粘土活性改善剤には、無機カチオン、有機カチオン、粘土を吸収する能力を有する極性有機分子、粘土分散剤、例えばポリホスフェートなどおよびこれらの混合物が含まれていた。
【0006】
特許文献2および3に続いて、本産業では、他の人もセメント中の粘土を不活性にする作用剤に焦点を当て始めた。例えば、カチオン性重合体、例えば第四級アミンなどが特に粘土を不活性にするに適することが特許文献4の中で説明された。そのような方向に沿って、問題になる粘土鉱物を含有する好ましくない微細骨材の存在下でセメント分散剤が示す効率を向上させる目的で第四級アンモニウム基、例えばポリ−ジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどを用いることができることが特許文献5に開示された。
【0007】
本発明者らは、セメントおよびコンクリート産業では高品質の天然砂の供給量が低下していることが理由で粘土含有砂によって引き起こされる問題が大きくなるであろうと考えている。そのような砂骨材はモルタルおよびコンクリートが示す流動学的および物理的特性に対して大きな影響を与えるであろう。セメントモルタルおよびコンクリートが可塑状態の時に示す流動学的特性はそのような砂骨材が示す比重、粒径分布、形状および表面性状の影響を受ける一方、セメントモルタルおよびコンクリートが硬化した状態の時にはそのような骨材が示す鉱物組成、じん性、弾性係数および他の特性が影響を受けるであろう。
【0008】
【特許文献1】Darwin他の米国特許第5,393,343号
【特許文献2】Jardine他(Grace Construcion Products)の米国特許第6,352,952 B1
【特許文献3】Jardine他(Grace Construcion Products)の米国特許第6,670,415 B2
【特許文献4】Alain他のUS 2007/0287794 A1
【特許文献5】特開2006−45010
【発明の開示】
【0009】
発明の要約
本発明者らは、驚くべきことに、ポリ−カチオン性化合物をポリ−ヒドロキシもしくはヒドロキシルカルボン酸化合物と組み合わせて配合すると各成分が示す粘土不活性化効果(clay−inerting effectiveness)がポリカルボキシレート系分散剤がセメントモルタルもしくはコンクリート中で示す用量効率を維持することに関して劇的に改善されることを見いだした。
【0010】
加うるに、そのような組み合わせを用いると、カチオン性重合体が示す粘土不活性化効果が使用するカチオン性重合体の種類に有意に敏感でなくなる。
【0011】
その上、本発明者らは、そのような組み合わせが相乗効果を有するとも考えている。ポリ−ヒドロキシもしくはヒドロキシルカルボン酸化合物を単独でポリカルボキシレート系分散剤および粘土含有骨材と一緒に用いると、結果としてもたらされるセメントモルタルもコンクリート組成物もスランプ保持の有意な向上を示さないことを観察した。しかしながら、ポリ−カチオン性化合物およびポリ−ヒドロキシもしくはヒドロキシルカルボン酸化合物をポリカルボキシレート系分散剤と一緒に用いると対照に比べてスランプ保持が経時的に向上した。
【0012】
このように、本発明の典型的な方法は、粘土を含有していて前記粘土がポリカルボキシレート系分散剤を吸収するか或は他の様式でそれの用量効率を低下させるように作用する骨材(例えば砂)と一緒に少なくとも1種のカチオン性化合物(より好適にはポリ−カチオン性化合物、例えばポリ−第四級アンモニウム酸もしくはこれの塩)および少なくとも1種のポリ−ヒドロキシルもしくはヒドロキシルカルボン酸もしくはこれの塩を組み合わせることを含んで成る。
【0013】
さらなる典型的な方法では、そのような1種のカチオン性化合物および1種のポリ−ヒドロキシルもしくはヒドロキシルカルボン酸化合物を少なくとも1種のポリカルボキシレート系分散剤およびセメントと一緒にすることで水和性セメント系組成物を生じさせることができるが、新鮮なセメントモルタルもしくはコンクリートを生じさせる目的で前記成分を一緒にする時期は前記セメントおよび水を一緒にする前、一緒にしている間または一緒にした後であってもよい。
【0014】
前記カチオン性化合物、ヒドロキシルもしくはヒドロキシルカルボン酸/塩化合物およびポリカルボキシレート系分散剤を必ずしもではないが好適には混和剤組成物の形態で一緒にセメントに添加する。従って、本発明の典型的な混和剤組成物は、少なくとも1種のカチオン性(好適にはポリ−カチオン性)化合物、少なくとも1種のポリ−ヒドロキシルもしくはヒドロキシルカルボン酸もしくはこれの塩および少なくとも1種のポリカルボキシレート系分散剤を含有して成る。
【0015】
典型的な方法および混和剤組成物における好適なカチオン性化合物は第四級アンモニウム塩(例えばエピハロヒドリンとアルキルアミンの縮合物またはポリ−ジアリルジメチル
アンモニウムクロライド)でありそして好適なポリ−ヒドロキシルもしくはヒドロキシルカルボン酸もしくはこれの塩化合物はアルドヘキソン酸もしくはこれの塩(例えばグルコンナトリウム)、アルドヘプトン酸もしくはこれの塩、アルドペントン酸もしくはこれの塩またはこれらの混合物である。グルコン酸塩が好適である。
【0016】
本発明は、また、上述した方法で製造したセメント系組成物にも関し、これは上述した成分を含有する。
【0017】
米国特許第6,352,952号および米国特許第6,670,415号に極性有機分子をグルコン酸塩と組み合わせてもよいことが開示されてはいるが、前記特許には、カチオン性化合物、例えばポリ−第四級アンモニウム塩などを粘土の影響を軽減することに加えてスランプ保持を向上させる目的でポリヒドロキシもしくはヒドロキシル−カルボキシレートと組み合わせることができることは教示も示唆も成されていなかった。
【0018】
具体的態様の詳細な説明
ある化合物を酸形態(例えば「ポリカルボン酸」、「グルコン酸」など)として特定して記述する場合、状況が許せば、それに塩形態(例えば「ポリカルボン酸塩」、「グルコン酸塩」)を包含させると理解されるべきであり、逆に、ある化合物を塩形態として記述する場合、そのような用語を用いる文脈において許容され得るならば、それに酸形態も包含させると理解されるべきである。
【0019】
本明細書で用いる如き用語「セメント」および「セメント組成物」はペースト、モルタル、グラウト、例えば油井接合用グラウトなどおよびコンクリート組成物を指し、これらは全部水硬性セメント結合剤を含有して成る。用語「ペースト」、「モルタル」および「コンクリート」は技術用語であり、ペーストは水硬性セメント結合剤(通常は、排他的ではないが、ポートランドセメント、メーソンリーセメントまたはモルタルセメントであり、これはまた石灰石粉末、消石灰、フライアッシュ、高炉スラグおよびシリカヒュームまたはそのようなセメントに通常含められる他の材料も含有している可能性がある)と水で構成されている混合物であり、「モルタル」は、追加的に微細骨材、例えば砂なども含有するペーストであり、そして「コンクリート」は、追加的に粗骨材、例えば砕石または砂利なども含有するモルタルである。
【0020】
必要なセメント系組成物を製造する目的で適宜特定材料、例えば水和性セメント、水および微細および/または粗骨材などを必要な量で混合することでセメント組成物を生じさせる。
【0021】
本発明で用いる如き用語「粘土」には、砂骨材に入っている可能性がある如き無機材料が含まれ、それは、そのような粘土含有骨材を含有するメーソンリーセメントまたはコンクリートの中に存在する時にポリカルボキシレート系分散剤を吸収するか或は他の様式でそれらの用量効率を低下させる。そのような粘土には特に2:1粘土が含まれ得、それらは典型的に膨潤性で吸収性の粘土であると見なされ、それらはしばしばスメクタイト、モントモリロナイト、イライト、ヘクトライトまたはベントナイト粘土であると識別される。また、火山灰および非晶質粘土も用語「粘土」を本明細書で用いる時の「粘土」の定義の範囲内に入ると見なされるべきである吸収型材料に含まれると考えている。
【0022】
本明細書で用いるかもしれない用語「ポリカルボキシレート系セメント分散剤」、「ポリカルボキシレート系分散剤」などは、本技術分野で公知の如きカルボン酸/塩型の分散剤を指す。この上の背景章で説明したように、それらをまたオキシアルキレン含有減水剤またはEO/PO重合体系超可塑剤と呼ぶこともあり得る。ポリカルボキシレート重合体はオキシアルキレンまたは「EO/PO」成分を有し、それには、EO/PO成分がバッ
クボーンおよび/またはペンダント基の中に存在する「櫛形」重合体が含まれる。EO/PO重合体は、最も頻繁に、米国特許第5,393,343号に教示されている如きアクリル系重合体またはイミド化されたそれの共重合体である。ポリカルボキシレート系分散剤を粘土含有骨材と一緒に用いることは以前に米国特許第6,352,952 B1および6,670,415 B2の中で考察された。
【0023】
従って、本発明の典型的な方法は下記を含んで成る:
粘土を含有していて前記粘土がポリカルボキシレート系分散剤を吸収するか或は他の様式でそれの用量効率および/または分散保持能力を低下させるように作用する骨材(例えば砂)と一緒に、
少なくとも1種のポリ−カチオン性化合物(例えばポリ−第四級アンモニウム酸もしくはこれの塩)[好適には、本セメント系組成物で用いる微細骨材(砂)の総重量を基準にして0.1ppmから1000ppmの量、より好適には1ppmから200ppmの量]、および
少なくとも1種のポリ−ヒドロキシもしくはヒドロキシルカルボン酸もしくはこれの塩[好適には、本セメント系組成物で用いる微細骨材(砂)の総重量を基準にして0.1ppmから1000ppmの量、より好適には1ppmから500ppmの量]を組み合わせる。前記成分の量は使用する微細骨材に存在する有害な粘土の量の度合に応じて調整可能である。
【0024】
さらなる典型的な態様では、少なくとも1種のポリカルボキシレート系分散剤を好適には0.001%−2.5%の量、より好適には0.01−0.5%の量にするが、この量はセメント(本ケースでは、セメント、ポゾラン、石灰石および他のケイ酸塩粉末を含有するであろう)の総重量を基準にしたパーセントに換算して表した量である。水和性セメント系組成物を生じさせる目的でそのようなポリカルボキシレート系分散剤を前記成分と一緒にする時期はセメントを添加する前、添加している間または添加した後であってもよい。
【0025】
前記成分を個別に当該粘土含有骨材と一緒にしてもよく、例えば採石場または骨材生産プラントなどで一緒にしてもよいか、或はセメントもしくはコンクリート組成物を生じさせる目的で骨材、セメントおよび水を一緒に混合する前、混合している間または混合した後に一緒にすることも可能である。
【0026】
1つの典型的な態様では、新鮮なメーソンリーセメントまたはコンクリートを製造する目的で材料を入れておいた混合用ドラムの中に当該ポリカルボキシレート系分散剤を添加する前に前記ポリ−カチオン化合物およびポリ−ヒドロキシもしくはヒドロキシルカルボキシレート化合物を加えておいてもよい。
【0027】
別の典型的な態様では、前記ポリ−カチオン性化合物、ポリ−ヒドロキシもしくはヒドロキシルカルボキシレート化合物およびポリカルボキシレート系分散剤を前以て混合しておいた混和剤組成物として好適にはコンクリートを1回分としてトラックの混合用ドラムの中に入れる生コンクリートプラントの所で添加する。従って、本発明では、また、前記3種類の成分を前以て測定しておいた量で一緒に含有して成る上述した混和剤組成物も提供する。この混和剤組成物に場合によりセメントおよびコンクリート産業で通常用いられる他の混和剤を含有させることも可能である。
【0028】
また、前記成分を個別にか、異なる順でか或は異なる時間または場所で添加する他の変法も許容され得る。
【0029】
典型的なポリ−カチオン性化合物はポリ−第四級アンモニウムである。とりわけエピク
ロロヒドリン−ジメチルアミンの縮合重合体およびポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドが好適である。
【0030】
本発明では幅広く多様なカチオン性化合物を用いることができると考えており、粘土不活性化特性の効果が相対的に低いカチオン性化合物であっても本発明で有効に使用可能であると考えている。低分子量のカチオン性重合体(例えば<10,000mw)を用いるとより良好な初期スランプを得ることができる一方、分子量がより高いカチオン性重合体(高い>10,000mw)を用いるとスランプをある期間に渡って維持することが可能になる。
【0031】
典型的なポリ−ヒドロキシルもしくはヒドロキシルカルボキシレート成分は、アルドン酸およびこれらの塩、例えばグルコン酸塩など、他の糖酸およびこれらの塩、例えば糖酸およびウロン酸など、他の有機酸およびこれらの塩、例えばクエン酸、乳酸、酒石酸など、およびポリオール、例えばソルビトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトールおよびグリセロールなどまたはこれらの混合物から成る群より選択可能である。グルコン酸塩が好適であり、それには特にグルコン酸ナトリウムが含まれる。
【0032】
本明細書では本発明を限られた数の態様を用いて説明してきたが、そのような具体的な態様で本明細書に他の様式で記述しかつ請求する如き本発明の範囲を限定することを意図するものでない。その記述した態様の修飾形および変形も存在する。より具体的には、以下の実施例を請求する発明の態様の具体的な例として示す。本発明を本実施例に示す特定の詳細に限定するものでないと理解されるべきである。本実施例ばかりでなく本明細書の残りの部分に示す部およびパーセントは全部特に明記しない限り重量パーセントである。
【0033】
その上、本明細書または請求項に示す数の範囲、例えば特定の組の特性、測定単位、条件、物理的状態またはパーセントなどを表す数の範囲はいずれも文字通りそのような範囲内に入る数のいずれも言及または他の様式でその中に明らかに入ることを意図し、それには、その示したいずれかの範囲内に入る如何なるサブセットの数も含まれる。例えば、下限RLと上限RUを伴う数値的範囲を開示する場合にはいつでもその範囲内に入る如何なる数Rも具体的に開示するものである。特に、その範囲内に入る下記の数Rを具体的に開示する:R=RL+k*(RU−RL)[ここで、kは、1%の増分で1%から100%の範囲の変数であり、例えばkは1%、2%、3%、4%、5%....50%、51%、52%、.....95%、96%、97%、98%、99%または100%などである]。その上、また、この上で計算した如きRの中のいずれか二つの値によって表される数値的範囲のいずれも具体的に開示するものである。
【実施例】
【0034】
A.試験実施例1−3(カチオン剤+グルコン酸塩+ポリカルボキシレート)
モルタル流動試験をJIS A 5201に従って実施した。通常のポートランドセメント(3種類の日本セメントの混合物)を用いた。問題になる砂骨材を模擬する目的で大井川砂にナトリウムモントモリロナイト粘土を0.20重量パーセント添加した。この混合物のデザインをグラム重量で測定してセメント/砂/水/粘土が700/1750/287/3.5の比率で構成させた。モルタルが示すスランプおよび流動性の両方を測定し、そして作業性の計算を式:[作業性]=[スランプ]+[流動性]−100を用いて実施した。
【0035】
この試験に、各々が市販のポリカルボキシレート(「PC」)系セメント分散剤[日本触媒株式会社(Nippon Shokubai Co.Ltd.、日本)から入手可能なAQUALOC(商標)重合体]、グルコン酸ナトリウム(「GLU」)および/または市販のカチオン性重合体(「CAT」)を含有する3種類の対照標準(「REF」)を
作成することを含めた。この場合のカチオン性重合体は、四日市合成(日本)からCatioMaster(商標)PD−7として入手可能な製品であり、これはジメチルアミンとエピクロロヒドリンの重縮合生成物(EPI−DMA)であると考えている。
【0036】
前記3種類の標準対照(REF)では、前記ポリカルボキシレート系分散剤を単独(REF1)でか、前記グルコン酸塩と一緒に(REF2)か或は前記カチオン性重合体と一緒に(REF3)用いたが、前記標準対照のいずれも前記グルコン酸塩を前記カチオン性重合体と一緒にはしなかった。
【0037】
しかしながら、3種類の試験実施例(EX)では、前記ポリカルボキシレート系分散剤を前記グルコン酸塩およびカチオン性重合体の両方といろいろな重量パーセント量(以下のEX1、EX2およびEX3に示す如き)で一緒にした。
【0038】
表1では成分の量を重量パーセントで表す。
【0039】
【表1】

【0040】
表1は、グルコン酸塩をカチオン性重合体と組み合わせるとセメント組成物が経時的に示す作業性を向上させる予想外な相乗的結果が得られることを示している。
【0041】
B.試験実施例4−10(いろいろなカチオン性重合体とグルコン酸塩)
カチオン性重合体の選択の点で配合に驚くべきほどの柔軟性があることを実証する目的でいろいろなカチオン性重合体を用いた。以下のカチオン性重合体を配合で用いた:エピクロロヒドリンとジメチルアミンの縮合重合体(「EPI−DMA」);ポリ−ジアリルジメチルアンモニウムクロライド(「DADMAC」)およびグアニジンとシアノアンモニウムクロライドとホルムアルデヒドの縮合生成物(「DICY」)。この配合の成分およびセメント重量を基準にした重量パーセントを表2に要約する。
【0042】
【表2】

【0043】
これらの実施例の配合が示したモルタル作業性の結果を表3に要約する。
【0044】
【表3】

【0045】
表3に見られるように、低分子量のカチオン性重合体をグルコン酸塩と組み合わせるとセメント重量を基準にして0.02%の如き低い用量でもモルタル作業性が有効に回復し得る。分子量が高い方のカチオン性重合体は初期作業性を向上させはしないが、用量率を低くすると作業性を実質的に向上させることが分かった。
【0046】
C.比較試験実施例1−3
比較の目的で、第四級アンモニウム重合体(EPI−DMA、FL2250)を含有させたがグルコン酸塩は含有させていないモルタルの試験を実施した。成分の量を重量パーセントで表して表4に示す。
【0047】
【表4】

【0048】
表4に見られるように、第四級アンモニウム重合体を単独で用いてポリカルボキシレート系分散剤の作業性を回復させるにはそれの用量を0.06%以上にする必要があったが、本発明の配合物を用いると、試験実施例1から7(EX1−EX7)に示すように、それをほんの0.02%用いることで作業性を回復させることができる。
【0049】
D.試験実施例11−12
JIS A 5201標準を基にしたさらなるモルタル流動試験を実施した。通常のポートランドセメント(シンガポールの現地で入手可能)を用いた。シンガポールで生産された砂2500グラムにナトリウムモントモリロナイト粘土を5グラム添加した。この混合デザインはグラム重量に換算してセメント/砂/水/粘土=1000/2500/410/5の比率であった。モルタルが示す流動値を2時間に渡って測定した。混合物中の空気含有量を制御する目的で全ての混合物に消泡剤を少量添加した。これらの配合の成分およびそれらの個々の量をグラム重量で表して表5に要約する。
【0050】
【表5】

【0051】
前記試験実施例に示すように、グルコン酸塩(GLU)とカチオン性重合体(CAT)を組み合わせるとモルタルが示すスランプ寿命が劇的に向上した。REF10が示した結果は、カチオン性重合体を過剰量で用いることは必ずしも初期作業性改良にとって好ましくない可能性があることを示唆している。
【0052】
E.試験実施例13−14
JIS A 5201標準を基にしたモルタル流動試験を実施した。通常のポートランドセメント(シンガポールの現地で入手可能)を用いた。シンガポールで生産された砂2500グラムにナトリウムモントモリロナイト粘土を5グラム添加した。この混合デザインは[セメント/砂/水/粘土]=[1000/2500/410/5(グラム)]である。モルタルが示す流動値を30分間に渡って測定した。空気を制御する目的で全ての混合物に消泡剤を少量添加した。これらの配合の成分およびそれらの個々の量をグラム重量で表して表6に要約する。
【0053】
【表6】

【0054】
前記実施例に示すように、グルコン酸塩とカチオン性重合体を組み合わせるとモルタルが示すスランプ寿命が有意に向上した。
【0055】
F.試験実施例15−16
SS 320標準を基にしたコンクリート流動試験を実施した。このコンクリートを50%のスラグと50%の通常ポートランドセメント混合物(シンガポールの現地で入手可能)で構成させた。シンガポールで生産された砂および5〜25mmの花崗岩を用いた。この混合デザインは[セメント/砂/石/水]=[360/869/941/195(kg)]であった。モルタルが示す流動値を2時間に渡って測定した。
【0056】
【表7】

【0057】
これらの実施例に示すように、ポリカルボキシレート系分散剤を存在させなくてもグルコン酸塩とカチオン性重合体を組み合わせるとコンクリートが示すスランプ寿命が有意に向上した。
【0058】
G.試験実施例17−19
JIS A 5201標準を修飾した方法を基にしたモルタル流動試験を実施した。通常のポートランドセメント(シンガポールの現地で入手可能)を用いた。そのシンガポールで生産された砂(2500グラム)にモントモリロナイト粘土を砂の0.72重量%を構成する量である18グラム添加した。この混合デザインは[セメント/砂/水/粘土]=[1000/2500/650/18(グラム)]である。モルタルが示す流動値を2時間に渡って測定した。
【0059】
【表8】

【0060】
要約として、これらの実施例に示すように、グルコン酸塩とカチオン性重合体を組み合わせるとモルタルのスランプ寿命が有意に向上した。
【0061】
この上に示した態様および実施例は単に例示の目的で示したものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものでない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘土含有骨材を含有する水和性セメント系組成物が示す粘土活性およびスランプ保持を改善する方法であって、粘土を含有していて前記粘土がポリカルボキシレート系分散剤を吸収するか或は他の様式でそれの用量効率を低下させるように作用する骨材と一緒に少なくとも1種のカチオン性化合物および少なくとも1種のポリ−ヒドロキシルもしくはヒドロキシルカルボン酸もしくはこれの塩を組み合わせることを含んで成る方法。
【請求項2】
更に前記粘土含有骨材をセメントと一緒にして水和性セメント系組成物を生じさせる前、生じさせている間または生じさせた後にそれを少なくとも1種のポリカルボキシレート系分散剤と一緒にすることも含んで成る請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1種のポリ−カチオン性化合物がポリ−第四級アンモニウム酸もしくはこれの塩でありそして前記少なくとも1種のポリ−ヒドロキシルもしくはヒドロキシルカルボン酸もしくはこれの塩がアルドン酸もしくはこれの塩(例えばグルコン酸もしくはグルコン酸ナトリウム)、有機酸もしくはこれの塩(例えばクエン酸もしくはクエン酸ナトリウム)またはポリオール(例えばソルビトールもしくはグリセロール)またはこれらの混合物である請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ポリ−第四級アンモニウム化合物がエピハロヒドリンとアルキルアミンの縮合物(例えばエピクロロヒドリンとジメチルアミンの縮合物)またはポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドである請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1種のポリ−ヒドロキシルもしくはヒドロキシルカルボン酸もしくはこれの塩がグルコン酸もしくはこれの塩である請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1種のポリ−カチオン性化合物と少なくとも1種のポリ−ヒドロキシルもしくはヒドロキシルカルボン酸もしくはこれの塩と少なくとも1種のポリカルボキシレート系分散剤を予備混合組成物として一緒にする請求項1記載の方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法で作られたセメント組成物。
【請求項8】
混和剤組成物であって、少なくとも1種のポリ−カチオン性化合物、少なくとも1種のポリ−ヒドロキシもしくはヒドロキシルカルボン酸もしくはこれの塩を含有して成る混和剤組成物。
【請求項9】
更に少なくとも1種のポリカルボキシレート系分散剤も含有して成る請求項8記載の混和剤組成物。

【公開番号】特開2011−136844(P2011−136844A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−181296(P2008−181296)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(399016927)ダブリュー・アール・グレイス・アンド・カンパニー−コネチカット (63)
【Fターム(参考)】