説明

コンクリートの凍害劣化予測装置およびそのプログラム

【課題】凍害劣化に関し、要因別に影響を定量化して劣化予測曲線を作成する。基準地点における、ひび割れ、補修効果を考慮した劣化予測曲線についても予測を可能とする。
【解決手段】凍害劣化予測装置は、自然環境下で基準地点における暴露試験に基づくコンクリートの凍害劣化曲線を基準に、コンクリート構造データに基づく特性値を反映させた予測地点での凍害劣化曲線を予測する。また、骨材、結合材の品質、AE剤の影響、水セメント比およびひび割れについて、コンクリートの凍結融解破壊サイクル数との関係を特性値として定量的に求め、これら特性値を部分係数として劣化予測曲線の算出に反映させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然環境下で凍結融解作用を受けるコンクリート構造物の維持管理に用いて好的な、コンクリートの凍害劣化予測装置およびそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
高度経済成長期以降、我が国では、道路、鉄道、ダム、港湾等に膨大な量のコンクリート構造物が建設されている。現在、これらの構造物は、重要な社会資本として日々維持管理が行われているが、種々の環境条件において用いられているため、今後、益々、補修や補強等の維持管理を必要とするものが増えていくと予想される。
【0003】
こうした中で、近年、コンクリート構造物の維持管理を支援するためのシステムが多く開発されている。この種の装置としては、例えば、気象データ、地形データ、コンクリート配合に関する、地域特性データおよびコンクリート構造物の設計データ等を利用して各劣化要因に対応する劣化指標を導出し、この劣化指標に基づいてコンクリート構造物の劣化状態をランク分けして評価する装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−131216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンクリート構造物の維持管理は、構造物の供用期間にわたり構造物に要求される性能を確保することである。供用期間中にその性能を確保できない場合には補修等の対策を実施することとなるが、適切な補修時期等を設定するためには劣化予測技術が必要不可欠である。
凍害劣化に関しては、水セメント比、凍結融解回数が劣化進度に影響を与えることが定性的には把握されているものの、定量的な評価は困難であった。これらの影響を定量的に評価する手法として基準化凍結融解サイクル法が考案されている。当該手法は、予測地点毎に最低温度別の凍結融解回数の算定や、ダムに用いられるコンクリートの配合による暴露試験結果の知見を活用しているため、任意の地点における一般的なコンクリート構造物に適用するには、多大な手間と時間を要するという問題点があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、凍害劣化要因による影響を、コンクリート自体の内的な要因と、施設の所在場所、周辺環境等による外的な要因とに分け、それぞれの要因別影響の検討が可能なように各影響を定量化して劣化予測曲線を算出可能な、コンクリートの凍害劣化予測装置およびそのプログラムを提供することを目的とする。
また、上記した劣化予測曲線算出後に、ひび割れ、補修効果を考慮した劣化予測曲線についても推定を可能とし、劣化が進んだコンクリートの補修を適切な時期に補修できるようにし、維持管理の確度を高めることのできる、コンクリートの凍害劣化予測装置およびそのプログラムを提供することも目的とする。
更に、上記した劣化予測曲線の算出を、コンクリートの表層部分のみならず深さ方向についても行うことで、補修時におけるハツリ厚の設定や、部材耐荷力の評価を行う際に深さ方向の劣化程度の把握も可能とし、維持管理の確度を一層高めることのできる、コンクリートの凍害劣化予測装置およびそのプログラムを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために本発明は、コンピュータ上に構築され、自然環境下で凍結融解作用を受けるコンクリートの凍害劣化予測装置であって、環境データと、予測対象コンクリートのデータを含む基礎データを取り込む基礎データ入力取込部と、前記基礎データを利用して前記予測対象コンクリートの凍害劣化に関わる特性値を算出する特性値算出部と、自然環境下での基準地点における暴露試験に基づくコンクリートの凍害劣化曲線を基準に、前記特性値算出部によって算出される特性値を反映させた予測地点での凍害劣化曲線を算出する劣化予測演算部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明において、前記特性値算出部は、前記基礎データ入力取込み部によって取り込まれる、前記予測対象コンクリートの、骨材、結合剤、空気連行剤、(以下AE剤という)飽水度、水セメント比の少なくとも一つによる凍害劣化への影響を、それぞれあらかじめ定義された所定の演算式を実行することによって得られる部分係数に変換し、前記劣化予測演算部へ供給することを特徴とする。
【0008】
また、本発明において、前記劣化予測演算部は、前記基準地点における暴露試験における凍結融解サイクル数に、前記特性値算出部によって出力される部分係数を乗じて前記予測地点の基準凍害劣化曲線を求め、当該基準凍害劣化曲線を、1日の最低気温と最高気温を得て時系列的に氷点未満から氷点を超えた回数を計測した最低気温別凍結融解回数と、破壊サイクル数を前記水セメント比と最低気温で示される破壊関数を用いて劣化予測曲線に変換することを特徴とする。
【0009】
また、本発明において、前記劣化予測演算部は、前記破壊関数で定義される前記予測対象コンクリートにひび割れが有るときと無いときの破壊サイクル数比をひび割れの影響を表す部分係数を乗算し、前記基準劣化曲線を補正することを特徴とする。
【0010】
また、本発明において、前記劣化予測演算部は、前記予測対象コンクリートに補修を施した場合の前記破壊サイクル数と施さない場合の破壊サイクル数から得られる補修効果を示す部分係数を乗算し、前記基準劣化曲線を補正することを特徴とする。
【0011】
上記した課題を解決するために本発明は、自然環境下で凍結融解作用を受けるコンクリートの凍害劣化予測装置に用いられるプログラムであって、環境データと、予測対象コンクリートのデータを含む基礎データを取り込む処理と、前記基礎データを利用して前記予測対象コンクリートの凍害劣化に関わる特性値を算出する処理と、自然環境下での水殿暴露試験に基づくコンクリートの凍害劣化曲線を基準に、前記特性値算出部によって算出される特性値を反映させた予測地点での凍害劣化曲線を算出する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0012】
上記した課題を解決するために本発明は、コンピュータ上に構築され、自然環境下で凍結融解作用を受けるコンクリートの凍害劣化予測装置であって、利用者によって入力される、前記コンクリートの解析深度と、熱伝導境界条件を取り込む深さ方向解析条件入力取込み部と、前記熱伝導境界条件に基づき、有限要素法により前記コンクリートの非定常熱伝導解析を行う熱伝導解析処理部と、前記熱伝導解析による内部深度に応じ算出される凍結融解回数を基に、前記コンクリート内部の劣化曲線を算出する劣化予測演算部と、を具備することを特徴とする。
【0013】
また、本発明において、前記熱伝導解析処理部は、外部から取得した基礎データに従い、外気温に基づく年毎の凍結融解回数を算出し、当該算出された凍結融解回数の最も多い年における外気温、ならびに外気と接するコンクリート表面における熱の伝達方向毎あらかじめモデル化された熱伝達境界を用いてコンクリート内部の熱伝導解析を行うことを特徴とする。
【0014】
また、本発明において、前記劣化予測演算部は、自然環境下での基準地点における暴露試験に基づくコンクリートの劣化特性曲線を基準に、前記コンクリートの、骨材、結合剤、空気連行剤、飽水度の少なくとも一つによる凍害劣化特性への影響を、それぞれにあらかじめ定義された所定の演算式を実行することによって得られる部分係数に変換し、前記基準地点における暴露試験の凍結融解サイクル数に、前記部分係数を乗じて前記予測地点の基準劣化曲線を求め、当該基準劣化曲線を、前記熱伝導解析結果から得られるコンクリート内部温度を基に1日の最低温度と最高温度から氷点超えした回数を計測した最低温度別凍結融解回数と、破壊サイクル数を前記水セメント比と最低温度で示される破壊関数を用いて前記コンクリート内部の劣化予測曲線に変換することを特徴とする。
【0015】
上記した課題を解決するために本発明は、自然環境下で凍結融解作用を受けるコンクリートの凍害劣化予測装置に用いられるプログラムであって、利用者によって入力される、前記コンクリートの解析深度と、熱伝導境界条件を取り込むステップと、前記熱伝導境界条件に基づき、有限要素法により前記コンクリートの非定常熱伝導解析を行うステップと、前記熱伝導解析による内部深度により算出される凍結融解頻度を基に、前記コンクリート内部の劣化曲線を算出するステップと、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、自然環境下での基準地点における暴露試験に基づくコンクリートの凍害劣化曲線を基準に、特性値算出部によって算出される特性値を反映させた予測地点での凍害劣性曲線を算出することで、凍結融解作用を受けるコンクリートの劣化予測システムを構築でき、任意のコンクリート配合、および自然環境下でのコンクリートの劣化予測曲線を正確に算定できる。
【0017】
また、本発明によれば、骨材、結合材の品質と、AE剤の影響、水セメント比およびひび割れについて、破壊サイクル数の比を特性値として定量的に求めることができ、これら特性値を部分係数として劣化予測曲線の算出に反映させることで、凍結融解作用を受けるコンクリートの劣化診断を適切に行うことができる。
更に、予測対象コンクリートの劣化曲線算出後に、ひび割れや補修効果を考慮した劣化予測曲線を推定することにより、コンクリートの性能に応じた補修時期を容易に策定でき、劣化が進んだコンクリートを適切な時期に補修することで維持管理の確度を高めることができる。
【0018】
更に、本発明によれば、コンクリートの表層部分のみならず深度方向の劣化の程度を求めるために、非定常熱伝導解析によりコンクリート内部の温度分布を求め、深度別に凍結融解回数を算出して上記同様劣化深さを推定することで、実際の補修時におけるハツリ厚の設定や、部材耐荷力の評価を行う際に、深さ方向の劣化程度の把握も可能ととなり、上記した維持管理の確度を一層高めることができる。
また、有限要素法により熱伝導解析を行うにあたり、解析対象コンクリートを数種類に大別し、あらかじめモデル化しておくことで利用者がモデル作成を特段意識することなく劣化予測を可能としたため、利用者の負担を軽減することができる。更に、熱伝導解析を実施する際、予測対象の全期間に亘り外気温に基づく年毎の凍結融解回数を求め、当該凍結融解回数が最も多い年を代表年として選定し実施することで、現実的なところで比較的高速に解析結果を取得することができる。また、解析対象期間に制約を設ける他に、上記した代表年として凍結融解回数が最も多い年を選定することで、劣化を評価するにあたって安全側に予測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明に係るコンクリートの凍害劣化予測装置の一実施形態を示す概略構成図である。
本発明の凍害劣化予測装置10は、図1に示すように、CPU11、RAM12、記憶装置13、入力装置14、表示装置15、印刷装置16、通信装置(NW)17等により構成され、これらはシステムバス18を介して共通接続されている。
CPU11は、記憶装置13の記憶領域に格納されている本発明の劣化予測プログラムに従い、入力装置14、あるいは通信装置17を介して得られる各種データを取込み、RAM12を作業領域として後述する一連の処理を実行し、その結果を再びRAM12に一時格納すると共に、表示装置15、あるいは印刷装置16を介して表示、あるいは印刷出力する。
【0020】
CPU11は、本発明の劣化予測プログラムにより、本発明に係る基礎データ入力取込み部111、特性値算出部112、劣化予測演算部113、劣化予測曲線出力部114として機能する。図2に、上記したそれぞれの機能に展開されたブロック構成が示されている。
すなわち、本発明の一実施形態における凍害劣化予測装置10は、機能的に、基礎データ入力取込み部111と、特性値算出部112と、劣化予測演算部113と、劣化予測曲線出力部114と、データベース(DB)115で構成される。
【0021】
基礎データ入力取込み部111は、環境データと、予測対象コンクリートの構造データとを含む基礎データを取り込んでDB115に格納する機能を持ち、特性値算出部112は、DB115に格納された基礎データを利用して予測対象コンクリートの凍害劣化に関わる特性値を算出する機能を持つ。
特性値算出部112はまた、基礎データ入力取込み部111によって取り込まれる、予測対象コンクリートの、骨材、結合剤、AE剤、飽水度、水セメント比の少なくとも一つによる凍害劣化特性への影響を、それぞれにあらかじめ定義された所定の演算式を実行することによって得られる部分係数に変換し、劣化予測演算部113へ供給する機能も持つ。また、劣化予測演算部113は、自然環境下での基準地点での暴露試験に基づくコンクリートの凍害劣化特性曲線を基準に、特性値算出部112によって算出される特性値を反映させた予測地点での凍害劣化曲線を予測する機能を持つ。
【0022】
劣化予測演算部113は、また、基準地点での暴露試験における凍結融解サイクル数に、特性値算出部112によって出力される部分係数を乗じて予測地点の基準凍害劣化曲線を求め、当該基準凍害劣化曲線を、1日の最低気温と最高気温を得て時系列的に氷点未満から氷点を超えた回数を計測した最低気温別凍結融解回数と、破壊サイクル数を前記水セメント比と最低気温で示される破壊関数を用いて劣化予測曲線に変換する機能を持つ。
更に、予測対象コンクリートにひび割れが有るときと無いときの破壊サイクル数比をひび割れの影響を表す部分係数として乗算し、基準劣化特性曲線を補正し、また、予測対象コンクリートに補修を施した場合の破壊サイクル数と施さない場合の破壊サイクル数から得られる補修効果を示す部分係数を乗算し、基準劣化曲線を補正する機能も併せ持つ。
【0023】
ここで説明を図1に戻す。RAM12は、CPU11により実行される上記した凍害劣化予測プログラムをはじめとする各種処理プログラムや、その処理に係るデータを一時的に記憶する作業領域を備えている。
記憶装置13は、上記したプログラムやデータ等が記憶される記憶媒体13aを有し、この記憶媒体13aは、磁気的、光学的記録媒体、あるいは半導体メモリで構成されている。この記録媒体13aは、記憶装置13に固定的に設けたもの、もしくは着脱自在に装着するものであり、CPU11により実行されるプログラムや制御データ等を記憶する記憶領域、予測対象となるコンクリートの環境データや構造データに関する基礎データをDB(図2の115)として格納する記憶領域を備えている。この記録媒体13aに格納された凍害劣化予測プログラムをCPU11が実行することにより、後述する凍害劣化予測曲線を予測する処理が実行されるようになっている。
【0024】
入力装置14は、キーボードやポインティングデバィス等により構成され、入力指示信号をCP11に対して出力する。
表示装置15は、CRTやLCD(Liquid Crystal Device)等により構成され、CPU11により生成出力される表示データに基づき後述する凍害劣化予測曲線他、各種画面データを表示する。また、印刷装置16は、プリンタ等により構成され、CPU11により生成出力される各種文書を含む印刷データを印刷して出力する。
なお、NW装置17は、IP(Internet・Protocol)網等を介して、外部のコンピュータネットワークと接続され、上記した基礎データを取込む際のツールとして用いられる他、システムの利用が許可された外部接続される端末装置(図示せず)に対してCPU11により生成出力される凍害劣化予測曲線等に関するデータを供給する。
【0025】
次に、上記した構成から成る凍害劣化予測装置10によって実行され劣化予測処理について説明する。この劣化予測処理は、図3に示されるように、基礎データ入力処理(S301)、特性値算出処理(S302)、劣化予測処理(S303)、および劣化予測曲線表示処理(S304)の各ステップから成り、これら一連の処理は、記憶装置13の記憶媒体13aに格納された凍害劣化予測処理プログラムに従って順次実行されるようになっている。
【0026】
詳細には、図3に示されるように、まず、ステップS301において、入力装置14から、あるいはNW装置17を介して基礎データが入力され、これを取込むための処理が行なわれる。基礎データの取込みは、入力データ取込み部111によって行なわれる。
ここでは、基礎データとして、外部要因である気温、冬場の日射、方位、積雪等の環境データが用意され、それらをアメダス等から取得することによりファイル入力する。また、「構造物名称」、「施工年度」、「予測したい評価年度」、予測地点の緯度、経度、標高等から成る「位置データ」、堅硬か低品質か、または吸水率(%)と安定性損失重量(%)等のデータ等から成る「骨材データ」、セメント種別、混和剤(フライアッシュ、高炉スラグ、用いず)の種類を示す「結合剤データ」、耐凍害性向上をはかるために用いる界面活性剤(AE剤)含有の有無を示す「AE剤データ」、「飽水度」、「水セメント比」等、内部要因となる各種データから成る構造物データ、そして、幅0.3mmm以上のひび割れの有無を示す「ひび割れデータ」、補修実施年度や後述する効果係数を示す「補修効果データ」等が入力され、本発明の凍害劣化予測装置10に取り込まれる。
【0027】
次に、ステップS302で特性値の算出処理が行われる。特性値の算出処理は特性値算出部112で行われる。
ここでは、まず、凍結融解回数算出処理から実行される。詳細は後述するが、コンクリート構造物の位置データから至近のアメダスポイントを探し出し、更に、標高による気温補正を実施し、最低温度別凍結融解回数を算出する。そして、照射、方位の影響、積雪の影響、積雪期間の影響を考慮して特性値を算出する。最低温度別凍結融解回数についてのグラフ表示の一例が表と共に図12に示されている。
続いて、骨材、結合剤、AE剤、飽水度、水セメント比に係るそれぞれの影響についての特性値算出処理を実行し、それぞれ部分係数ψag、ψbi、ψAE、ψas、ψw/cとして劣化予測演算部113へ供給する。
【0028】
具体的に、骨材の場合、部分係数(ψag)は、堅硬で1.0、低品質の場合0.38、吸水率、安定性損失重量が既知の場合はそれぞれの関数で表現される部分係数が算出される。また、結合剤による影響は、セメント、混和剤の組み合わせから部分係数が算出される。更に、AE剤の影響は、AE剤の有無から部分係数を算出し、AE剤無しの場合は水セメント比の関数で表現される部分係数を算出する。
また、飽水度の影響について、部分係数は、湿潤A(常時、水と接する場合)で1.0、湿潤B(雨がかりはあるが、凍結時には継続的に水分供給が無い場合)で2.4とする。更に、水セメント比の日最低気温の平均値をθ、セメント水比をc/wとして後述する所定の演算式を実行することにより部分係数を算出する。いずれの特性値についても詳細は後述する。
【0029】
次に、S303で劣化予測処理が実行される。劣化予測処理は、劣化予測処理部113で実行される。ここでは、まず、基準劣化予測曲線の演算が行われる。具体的には、基準地点での暴露試験における凍結融解サイクル数に、上記した特性値算出処理で得られた各特性値を乗算し、予測地点の基準劣化曲線が算出される。ここで、予測曲線の横軸は、凍結融解サイクル数とする。
続いて、劣化予測曲線の算出処理が実行される。ここでは、基準劣化曲線を、最低温度別凍結融解回数と破壊関数を用いて横軸を経過年数とする劣化予測曲線に変換する。更に、ひび割れの影響を表す部分係数を基準劣化曲線のサイクル数に乗じることでひび割れがある場合の劣化予測曲線を求める。また、補修の影響を考慮した劣化予側曲線の算出処理も行う。すなわち、ここでは、補修の効果を表す部分係数を基準劣化曲線のサイクル数に乗じ、補修した場合の劣化予測曲線を求める。いずれも詳細は後述する。
【0030】
最後にS304で劣化予測曲線表示処理が実行される。劣化予測曲線表示処理は、劣化予測曲線出力部114で実行される。凍害劣化予側曲線の画面表示の一例は図13に、ひび割れの影響を考慮した凍害劣化予測曲線の画面表示の一例は、図14に、補修の影響を考慮した凍害劣化予測曲線の画面表示の一例は図15に示されている。
【0031】
以下、本発明の凍害劣化予測装置の詳細について説明する。図4に、コンクリートの内部構造と水セメント比との関係を概念的に示す。多孔質材料の一つとして位置づけられるコンクリートの凍害は、間隙間の結氷の割合に依存するものと考えられる。
コンクリートの凍結融解抵抗性は、水セメント比(水分が存在する空間量)が低いものほど、材齢が経過したものほど高まることが実験を通じて明らかにされている。その理由はコンクリートの強度が高まるためであると考えられ、凍結融解抵抗性を強度の関数として促える考え方もある。しかしながら、水セメント比が高いことは、図5に水セメント比と細孔中の凍結量の関係をグラフ表示したように、同時に系内の凍結可能水量が増大することを意味しており、コンクリートの凍結融解抵抗性を評価するにあたり、強度ではなく凍結可能水量を評価すべきものと考えられる。
【0032】
コンクリート中の凍結水量は、水分が存在する空間量とその空間サイズに依存する。材齢を一定とした場合、凍結融解による損傷の程度は、水セメント比が多いほど大きい。また、水の擬固点温度は空間サイズに依存し、サイズが小さいほど擬固点温度が低くなるため、0℃で全ての水量が凍結することは無い。換言すれば、温度が低くなるほど小さい空間サイズまでの水が凍り、損傷が大きくなる。
【0033】
図6は、最低温度を変化させた場合のAE剤を使用していないコンクリート(以下、nonAEコンクリートという)の凍結融解試験結果を示すグラフ3例であり、いずれも縦軸に相対動弾性係数(%)、横軸に凍結融解サイクル(数)を目盛ってある。
このグラフから明らかなように、水セメント比が高いほど、また最低温度が低いほど損傷が大きくなることが認められる。このことは、コンクリート中の水分の凍結ポテンシャルが高くなるほど劣化し易いことを示しており、図7に破壊サイクル数と凍結細孔量比の関係がグラフ表示されているように、凍結細孔量化が高くなるほど破壊サイクル数は小さくなる。凍結細孔量比とは、凍結細孔量中に占める凍結量の比率であり、破壊サイクル数は相対動弾性係数が60%を下回るサイクル数である。また図7によれば、水セメント比および最低温度の影響は、「凍結細孔量比」という指標によって統一的に表現できる。
【0034】
ところで、上記した「凍結細孔量化」を対象とするコンクリートで測定することは現実的ではなく、工学的には破壊サイクル数を水セメント比および最低温度で表現することが実務的である。
破壊サイクル数を図8に示す破壊関数で定義できるとした場合、先に図6で説明した最低温度、水セメント比を変化させた試験結果は、図9に示すグラフ(破壊関数による基準化結果)に示すとおりである。
ここでは、横軸はある基準とする水セメント比および最低温度(この場合、w/c=50%、最低温度―5℃)で基準化した状態で示している。図9によれば、破壊関数を用いることによって水セメント比および最低温度が変化した試験結果でも、一つの劣化曲線として表すことができる。
【0035】
ところで、出願人が実施している基準地点の暴露試験結果を図10(a)に示す。ここに示される結果は、フライアッシュを混和したAEコンクリートによるものであり、暴露中の強度増進を排除した結果である。なお、暴露試験環境としては図10(b)に示すとおりである。
なお、AEコンクリートとはAE剤を使用したコンクリートのことであり、以下AEコンクリートと表記する。
【0036】
基準化凍結融解サイクル法は、水セメント比および最低温度履歴に応じて損傷量を評価し、損傷の程度を、見かけ上凍結融解サイクル数を変化させることによって、任意の水セメント比、および任意の単一最低温度下におけるコンクリートの劣化に置き換える手法である。
水セメント比および最低温度の補正は、図8に示した破壊関数から、「重み係数」を算出し、見かけ上サイクル数を変化させることにより実現される。「重み係数」は、ある水セメント比および最低温度に対する破壊サイクル数の比で定義される。具体的な算出方法は、以下の演算式(1)を実行することにより求められる。
【0037】
【数1】

【0038】
基準化凍結融解サイクル法を用いて、基準地点の供試体の暴露試験結果を水セメント比49%、最低温度−6℃に置き換えれば、図11(基準化凍結融解サイクル法による自然環境下の劣化曲線)に示すグラフ表示のとおりであり、複数の劣化曲線から任意の水セメント比および最低温度下の劣化曲線に置き換えられる。
【0039】
図11から、自然環境下の凍結融解作用を受けるコンクリートの劣化曲線は、以下の演算式(2)のように表現される。
【0040】
【数2】

【0041】
但し、この劣化曲線は基準地点に暴露された中庸熱ポルトランドセメントを用いフライアッシュを混和したAEコンクリートの劣化曲線であり、水セメント比および気象(最低温度)が変化しても基準化凍結融解サイクル法によって補正できるが、セメントの種類、骨材の品質、AE剤の使用の有無が相違した場合、この演算式(2)を直接用いることはできない。
そこで、これら基準地点の暴露試験と相違する条件は、次のように部分係数を用いて補正するものとし、本発明においては以下の表1に示す部分係数を導入し、以下の演算式(3)を実行することにより劣化曲線の一般化を図ることとした。
【0042】
【数3】

【0043】
【表1】

【0044】
以下に、特性値の項目説明を行う。まず、外的要因から説明する。基準化凍結融解サイクル法を用いる場合、外的要因の影響は、日最高気温および日最低気温に等価的に変換する必要がある。ここでは、外気温以外の要因として日射および積雪の影響を考える。
外気温に関する情報としては、凍結融解回数を算出する上で、日最高、最低気温が必要となる。これを直接の入力項目とする必要がある。但し、参照する気象データ記録点と予測地点との標高に差が生じることから、標高補正を行う必要がある。その補正は、一般的に用いられる以下の演算式(4)に従うものとする。
【0045】
【数4】

【0046】
日射がコンクリート温度に与える影響は、日射による熱量を等価的に外気温に置き換える方法が採られる。等価外気温への変換は以下の演算式(5)に従う。
【0047】
【数5】

【0048】
さらに、上記した演算式(5)に方位の影響を加味することとする。方位の影響については、基準地点の暴露試験箇所で冬季に測定された方位別の日射量から方位別の重みによって評価することとする。その重みとしては、南面を1とした場合、上面0.84、西面0.58、東面0.25、北面0.23である。これらはいずれも実験から求めた数値である。
そこで、日照を考慮した等価外気温を以下の演算式(6)のように変形させることとする。
【0049】
【数6】

但し、通常気象観測所で計測される日射量は、上面のそれであるため、演算式(6)の方位による重み係数は、上面1.00、南面1.19、西面0.69、東面0.30、北面0.27である。
【0050】
一方、上記した演算式(6)を用いるのであれば、アメダスデータの風速、気温を参照することによって融雪量の推定は可能であり、対象構造物が建設されてから以降のデータを用いて計算を行えば良い。ただし、その精度に関しての検証が問題となる。
従って、ここでは、積雪量に関する直接情報を取り込むこととする。この場合、アメダスには積雪データが無いことから、管区気象台において観測されたデータを参照することとする。なお、積雪が有る間は、融解しないものとする。
【0051】
次に、構造物データによる影響について説明する。まず、骨材の品質の影響を表す部分係数から説明する。
骨材の品質を表す指標としては、吸水率と安定性損失重量を採りあげている。基準化凍結融解サイクル法において用いる骨材の品質に関わる部材係数ψagは、以下の演算式(7)(8)によって表される。但し、これは実験式である。
(吸水率・安定性損失重量が既知のとき)
【0052】
【数7】

【0053】
(吸水率・安定性損失重量が未知のとき)
堅硬である骨材を用いた時、ψη=1.0、低品質な骨材を用いた時、ψη=0.38、ψη=0.58、小さい方の部材係数を採用することとし、ψη=0.38とした。
【0054】
次に、結合材の種類の影響を表す部分係数について説明する。結合材の部分係数ψbiをまとめれば、次のとおりである。ここで、注意を要するのは、基準としているのは、基準地点の暴露供試体であり、セメントには中庸熱を、混和材としてはフライアッシュを用いていることである。従って、これを基準に部分係数を設定すれば、以下に示す表2(結合剤の部分係数(AEコンクリート))、表3(結合剤の部分係数(nonAEコンクリート))のとおりである。
【0055】
【表2】

【0056】
【表3】

【0057】
次に、AE剤の使用の有無を表す部分係数について説明する。この試験結果をもとに、AEコンクリートとnonAEコンクリートの耐久性指数比および相対動弾性係数が60%となるサイクル(破壊サイクル数の比:部分係数)、すなわち、AE剤の影響を表す部分係数ψAEは、以下の演算式(9)を実行することにより求められる。
【0058】
【数8】

【0059】
AE剤を用いていれば、ψAE=1.0である。
【0060】
なお、演算式(9)中、DFは耐久性指数(Durability Factor)のことをいい、P・N/Mにより算出される。ここで、Pは、凍結融解試験のNサイクルにおける相対動弾性係数(%)、Nは、Pが60%になったときの凍結融解試験のサイクル数またはPが試験終了サイクル(一般には300、200、100サイクル)で相対動弾性係数が60%に満たない場合のサイクル数、Mは、予め定められている凍結融解サイクル数(一般には300、200、100サイクル)をいう。また、ここで、永倉の研究とあるのは、永倉正、コンクリートの凍結融解抵抗性に関する研究、電力中央研究所技術研究報告(土木・61012)、1961.9をいう。
【0061】
次に、飽水の影響を表す部分係数について説明する。以上により飽水の影響を表す部分係数ψsaは、以下の演算式(10)を実行することにより算出される。
【0062】
【数9】

【0063】
常時、水と接する場合は、ψsa=1.0、雨がかりはあるが、凍結時には継続的に水分供給が無い場合、ψsa=2.4となる。
【0064】
以下に内的要因の影響を考慮した基準結果曲線の算出方法について説明する。
ここでは、基準地点の暴露試験における自然環境下の劣化曲線を基準とし、予測地点での基準劣化曲線を求める。
基準地点での劣化曲線は、以下の演算式(11)により示される。
REd=100exp(−6.02×10−3×N0.42) …(11)
ここで、REd=相対動弾性係数(%)、N:凍結融解サイクル数(回)であり、Nに、部分係数を掛け合わせたものを予測地点の基準劣化曲線とする。
REd=100exp(−6.02×10−3×(N・ψmod0.42) …(12)
ここで、ψmod=ψag・ψbin・ψAE・ψsa・ψw/c …(13)
但し、ψag:骨材の影響を表す部分係数、ψbin:結合材の影響を表す部分係数、ψAE:AE剤の影響を表す部分係数、ψsa:飽水度の影響を表す部分係数、ψw/c:水セメントの影響を表す部分係数、ψmod:部分係数である。
【0065】
ところで、予測地点の凍結融解回数を、Nとすると、基準劣化曲線は、
REd=100exp{−6.02×10−3×(NO.42}…(14)
但し、N=N・ψmodであり、Nは、予測地点の基準気温θstおよび予測対象コンクリートのw/c(水セメント化)を、固定した時の凍結融解サイクル数である。
【0066】
自然環境下では、最低気温が常に変動することから、最低温度別の凍結融解回数、Nij(i:年、j:最低温度)に上記した演算式(15)から求められる重み係数ψθjを乗じ、以下に示す演算式(16)に従い、各年の凍結融解数を求める(基準化凍結融解サイクル法)。
【0067】
【数10】

【0068】
【数11】

【0069】
このことにより、凍結融解回数Nを求めることができ、Nによるサイクル数表示からNによる年数表示とすることができる。これにより、時間軸上での劣化予測が可能になる。図13にその画面構成の一例が示されている。
【0070】
また、ひび割れの影響を考慮した劣化予測曲線は、上記した演算式(14)において、N=N・ψmod×ψcrと補正することで劣化予測が可能になる。但し、ψcrは、ひび割れの影響を表す部分係数である。このことにより、基準劣化曲線に対し、ひび割れの影響を考慮した劣化曲線の予測を行うことができる。
ひび割れの影響を表す部分係数は、室内試験等の結果からひび割れの無い場合、ψcc=1.0、ひび割れのある場合、ψcr=0.19となる。いずれも実験から得られる数値である。
【0071】
本発明の凍害劣化予測装置において、ひび割れを考慮した劣化曲線を算定・表示するには、以下の手順で操作が行なわれる。基準劣化曲線の算定には、基準劣化曲線の算定が終了していることが前提条件である。図14にその画面構成の一例が示されているように、まず、劣化予測曲線ウインドウ内のひび割れの影響ボタンを押すことにより、上記したひび割れの影響を考慮した処理が実行され、当該施設における劣化予測曲線とひび割れ部の劣化曲線グラフが自動的に表示される。
【0072】
更に、補修効果を考慮した劣化予測曲線は、上記した演算式(14)において、N=N・ψmod×ψreと補正することで劣化予測が可能になる。但し、ψreは補修効果の部分係数である。このことにより、基準劣化曲線に対し、補修効果の影響を考慮した劣化曲線の予測を行うことができる。
なお、補修の効果を表す部分係数は、補修試験結果に基づく場合、以下の演算式(17)により、また、補修材単体の試験に基づく場合、以下の演算式(18)(19)により算出される。なお、後者は、実験により求めた演算式である。
【0073】
【数12】

【0074】
【数13】

【0075】
【数14】

【0076】
本発明の凍害劣化予測装置において、補修効果を考慮した劣化曲線を算定・表示するには、以下の手順で操作が行なわれる。補修効果を考慮した基準劣化曲線の算定には、基準劣化曲線の算定が終了している事が前提条件である。図15にその画面構成の一例が示されているように、劣化予測曲線ウインドウ内の開始年度、効果係数を指定し、次に、補修の効果ボタンを押す。このことにより、補修の影響を考慮した処理が実行され、当該施設の劣化予測曲線と補修後の劣化曲線グラフが自動的に表示される。
【0077】
以上説明のように上記した本発明実施形態は、自然環境下での基準地点の暴露試験に基づくコンクリートの凍害劣化曲線を基準に、コンクリート構造データに基づく特性値を反映させた予測地点での凍害劣化曲線を予測することで、凍結融解作用を受けるコンクリートの劣化予測システムを構築でき、任意のコンクリート配合、および自然環境下でのコンクリートの劣化曲線を正確に算定するものである。
また、骨材、結合材の品質、AE剤の影響、水セメント比およびひび割れについて、コンクリートの凍結融解破壊サイクル数との関係を特性値として定量的に求め、これら特性値を部分係数として劣化予測曲線の算出に反映させることで、凍結融解作用を受けるコンクリートの劣化診断を適切に行うことができる。更に、基準となる劣化曲線算出後に、ひび割れや補修効果を考慮した劣化予測曲線を推定することにより、コンクリートの性能に応じた補修時期を容易に策定するものである。
【0078】
ところで、上記した本発明の一実施形態による劣化予測は、コンクリートの表層部分を対象としたものであるが、実際の補修時におけるハツリ厚さの設定や、部材耐荷力の評価を行う際には深さ方向の劣化程度を把握することが必要になる。このため、本発明の他の実施形態においては、非定常熱伝導解析によりコンクリート内部の温度分布を求め、深度別に凍結融解回数を算出して上記と同様の手順で劣化深さを推定することにした。
【0079】
外気から気温データを読み込めば、部材内部までの温度推定は可能であり、特に解析対象期間に制約はない。しかしながら、解析対象期間に制約を設けずに劣化予測にこの機能を実装する場合、コンピュータの処理時間に悪影響を及ぼす。
すなわち、非定常解析、特に2次元モデルを想定した場合、解析に要する時間が長時間に亘る。例えば、部材サイズ30cm×30cmを解析時間刻み1時間で1年間を解析対象期間とした場合、計算時間は約2分程度要する。従って、竣工後40年に亘って熱伝導解析を行おうとした場合、80分程度の計算時間を要し、非現実的である。また、上記のモデルで将来に亘って熱伝導解析を実施しようとした場合、例えば、100年後の状態を予測しようとした場合、竣工後から現在までの期間(仮に40年)および将来の期間に亘って計算しようとすれば4時間以上を要することになる。このことにより、劣化予測の対象年の全期間に亘って熱伝導解析を実施することは非現実的であり、何らかの対応が必要になる。
【0080】
このため、本発明では代表年を選定して熱伝導解析を実施することとし、選定に際しては外気温に基づく凍結融解回数の多い年とした。
これは、単に気温に着目した場合、氷点を境とする気温の日較差の影響が考慮できないこと、コンクリート内部の温度分布と凍結融解回数が線形的で無いためである。
【0081】
図16、および図17は、外気が最低気温を記録した時のコンクリート内部の温度分布および年間の凍結融解回数を示したグラフである。これらによれば,温度分布は表面から内部へと滑らかな曲線分布を示すが、凍結融解回数については、ある深さまでは直線的に変化するものの、それ以深では深度による回数の変化が少なく、温度分布と凍結融解回数は相似的でないことが認められる。従って、気温を基準に代表年を設定することは合理的ではなく、凍結融解回数に着目した選定が必要と考えられる。
そこで、予測対象地点の過去の外気温から年毎の凍結融解回数を求め、この回数が最も多い年を代表年として選定し、劣化予測にあたってはこの代表年が繰り返されるものとした。これは劣化を評価するにあたり、安全側に予測することを考慮したためである。図18に本発明明の他の実施形態における機能ブロック図を、図19、図20にその手順をフローチャートで示す。
【0082】
すなわち、本発明の他の実施形態における凍害劣化予測装置10は、図2に示す基本構成に、深さ方向解析条件入力取込み部116と、熱伝導解析処理部117が付加され、構成される。他は、図2に示す一実施形態と同様である。
深さ方向解析条件入力取込み部116は、利用者によって入力される、コンクリートの解析深度と、熱伝導境界条件を取り込む機能を持ち、ここで入力され取込まれたパラメータは、熱伝導解析処理部117へ供給される。熱伝導解析処理部117へは他にDB115から環境、構造物等の基礎データが入力されており、先に取り込まれた熱伝導境界条件に基づき、有限要素法を用いてコンクリートの非定常熱伝導解析を行う。熱伝導解析処理部116は、基礎データに従い、外気温に基づく年毎の融解凍結回数を算出し、当該算出された凍結融解回数の最も多い年における外気温、ならびに外気と接するコンクリート表面における熱の伝達方向毎あらかじめモデル化された熱伝達境界を用いてコンクリート内部の熱伝導解析を行う。
【0083】
また、劣化予測演算部113は、熱伝導解析による内部温度に応じ算出される凍結融解回数を基に、コンクリート内部の劣化曲線を算出する。
具体的には、自然環境下での基準地点における暴露試験に基づくコンクリートの劣化特性曲線を基準に、コンクリートの、骨材、結合材、空気連行剤、飽水度の少なくとも一つによる凍害劣化特性への影響を、それぞれにあらかじめ定義された所定の演算式を実行することによって得られる部分係数に変換する。そして、基準地点における暴露試験の凍結融解サイクル数に、部分係数を乗じて予測地点の基準劣化曲線を求め、当該基準劣化曲線を,先の熱伝導解析結果から得られるコンクリート内部温度を基に1日の最低温度と最高温度から氷点超えした回数を計測した最低温度別凍結融解回数と、破壊サイクル数を水セメント比と最低温度で示される破壊関数を用いてコンクリート内部の劣化曲線を予測する。
【0084】
以下、図19、図20に示すフローチャートを参照しながら、図18に示す本発明の他の実施形態の処理手順について詳細に説明する。
図中、S171〜A179に示す処理は、コンクリートの表層部分を対象とする劣化予測であり、図2に示す実施形態と同様であるため、重複を回避する意味でその説明を省略する。本発明のコンクリートの凍害劣化予測装置10は、まず、S180で劣化深度の計算を行うか否かの判定を行う。ここで、利用者から劣化深度の計算要と指定された場合、深さ方向解析条件入力取込み部116は、利用者から熱伝達境界および深度についての指定を受け、これを取込んで熱伝導解析処理部117を起動する。
熱伝導解析処理部117は、利用者によって指定された熱伝導境界条件に基づき、有限要素法を用いてコンクリートの非定常熱伝導解析を行い、劣化予測演算部113へその解析結果を渡す(S182)。劣化予測演算部113は、熱伝導解析に基づく内部深度によって算出される凍結融解頻度を基に、深度別劣化曲線の同定を行い(S183〜S186)、劣化予測曲線出力部114を起動して後述する劣化等の等高線、あるいは任意深度における劣化曲線を表示する(S187、S188)。
【0085】
以下にその詳細を説明する。熱伝導解析を実行するにあたり、ここでは、コンクリートの熱伝導率、熱伝達率、比熱、単位体積重量について利用者が任意の値を入力できるようにしてある。
熱伝導率とは、コンクリート内部の熱の伝わりやすさを表す係数であり、熱伝達率とは、外気と接するコンクリート表面における熱の出入りやすさを表す係数である。境界条件は、図21に示されるように、熱伝達境界を1方向としたモデル(a)と、2方向としたモデル(b)と、4方向としたモデル(c)の3種類扱えることとした。
図21(a)に示すモデルは、X方向に比べY方向の1方向からの外気の影響が卓越する(露出している)場合であり、ダム、擁壁等の構造物に適用される。また、図21(b)に示すモデルは、X方向に比べ、Y方向の2方向からの外気の影響が卓越する(露出している)場合であり、梁やスラブのような部材、例えば、床板、桁、壁等の構造物に適用される。更に、図21(c)に示すモデルは、XY両方向から外気の影響を受ける場合であり、柱部材、例えばピア等に適用される。
【0086】
上記した本発明実施形態においては、コントリートの劣化要因として、コンクリート自体の性質による内的要因と、施設の所在場所、周辺環境等による外的要因とに分け、要因別影響の検討が可能なように、外的要因と内的要因別に影響を算定するシステムを構築した。ここで検討した外的要因の影響は、コンクリート表面に限られ、コンクリート内部では、異なった温度分布、凍結融解頻度となっていることも考えられる。そこで、外的要因とコンクリート自体の性質による内的要因を基に、コンクリート内部における熱伝導解析を行い、その結果から、コンクリート内部の劣化状況を予測するものである。
図22に、劣化予測のための処理手順が、図23に劣化深度予測画面の一例が示されている。図23に示される劣化深度予測画面は、本発明装置が起動されることによって表示され、ここでは、基本設定ウインドウ、劣化予測計算条件ウインドウに画面分割されている。
【0087】
本発明の凍害劣化予測装置10は、まず、外的要因としての外気温、日射量といった環境データを読み込み(S201)、また、利用者により設定された基本データを取り込み(S202)、代表年を選定した上で(S203)、熱伝導解析の入力データを作成する。
外気温等の気象に関して、対応している入力データは、アメダスデータ、気象庁年報(日射量)である。アメダスデータ、気象庁年報はCSV形式とする。凍結融解は主に冬期間に発生することから、年データ、もしくは年度データを、当年7月から、翌年6月の気象年度データの形式に変換して使用する。欠測期間は、前後の値で線形補間した値を使用するもものとする。
外的要因による影響算出時にユーザが指定するデータは、施設名称、対象年度(竣工年度、評価年度)、地域指定(北緯、東経、標高)、冬期の日照、積雪の影響(積雪期間)等である。また、施設所在地は、緯度・経度・標高で指定し、入力データの中最寄りの観測地点データを使用する。なお、内的要因については、基準劣化曲線算定に使用する。
【0088】
また、コンクリート内部の熱伝導解析を行うに際し、該当期間の外気温時間値を使用する。アメダスデータ等の気温データは1976年以降順次、観測場所、項目が整備されており、施設の竣工時期、地域によっては、気温時間値データが得られない場合がある。そのため、ここでは、施設竣工年度から評価年度までの期間内で、データがある程度整備されている一年度を代表年度とし、代表年度の気温が毎年繰り返されるものとして劣化予測を行う。また、施設竣工年度から評価年度までの期間内で、外気温時間値が得られる年度のうち凍結融解回数が最も多い年を代表年度とすることは上記したとおりである。
【0089】
熱伝導解析実行時(S204)に利用者が指定するデータは、解析深度、熱伝導率、比熱、単位体積重量、熱伝達率である。また、代表年度の外気温時間値、日射量時間値については、代表年選定時に入力した施設所在地情報から自動的に作成し、熱伝導解析実行に使用する。
外気温時間値作成において、観測箇所と施設一では気象条件が異なることと、積雪による影響を考慮し、標高差補正、積雪補正を行う。前者において、標高による気温低減率は−0.6℃/100m、後者において、積雪で覆われている部材はその間融解しない。
そして、0℃を凍結融解の基準とし、補正後の気温から年度毎に最低温度別凍結融解回数を計算する。年度毎の最低温度別凍結融解回数は表ならびにグラフ表示される。
【0090】
また、熱伝導解析は、1時間ステップで非定常計算を行う。計算結果は、所定の形式でファイル出力し、内部の劣化予測に使用される。解析深度によっては、熱伝導解析計算に多くの時間を要することが考えられるため、熱伝導解析結果を保存し、読み込めるファイル構造としている。
【0091】
凍結融解回数は、施設表面と深度によっても異なるため、内部の劣化予測を行うにあたり、まず、基本設定で指定した内的要因の値に従って、対象施設コンクリートの基準劣化曲線を算出する(S205)。
次に、熱伝導解析結果の内部温度により算出された凍結融解回数を基に、コンクリート内部の劣化曲線を予測する(S206)。以下の(1)式で示した水殿調整池暴露試験の劣化曲線におけるサイクル数に、当該施設内部の破壊サイクル数比を乗算することで、当該施設の基準劣化曲線を決定することができる。
REd=100exp(−6.02×10−3×cycle0.42
【0092】
内部の劣化予測により出力される内容としては、例えば、図24に示す劣化分布図、図27に示す劣化経年変化図、図28に示す劣化断面図である。図24〜図26はともに、図23に示す劣化深度予測画面においてそれぞれの図に対応する劣化分布ボタン、劣化経年変化図、劣化断面図ボタンをクリックすることでそれぞれの指定画面が表示できる。
劣化深度予測画面においては、初期状態が劣化分布図ボタンを、指定した状態である。初期状態において、劣化分布図を算定・表示するためには、表示したい係数を選定し、実行ボタンをクリックすることにより実行される。また、表示する係数は、相対動弾性係数(%)、相対静弾性係数(%)、相対圧縮強度(%)、相対引張強度(%)の4項目を選択できる。
【0093】
また、劣化経年変化図を算定・表示するためには、劣化深度予測画面において、劣化経年変化図ボタンをクリックし、劣化経年変化図指定用の画面に切り替える。
図23に示す劣化深度予測画面において、評価したい点をクリックし、□にチェックマークを付す(MAX5点)。このとき右側に表示される評価店位置座標を確認し、正しければ実行ボタンをクリックし、図27に示す劣化経年変化図画面を表示することができる。ここでは、表示したい係数を選択し、描画ボタンをクリックすることで条件に合致した劣化経年変化図(相対動弾性係数)が表示される。
【0094】
劣化断面図を算定・表示するには、劣化深度予測画面において、劣化断面図ボタンをクリックし、劣化断面図指定用の画面に切り替える。劣化断面図指定用の画面は、解析モデル形状が1次元と2次元で異なる。
1次元モデルの場合、劣化深度予測画面において、評価したい年度(Max3箇年度)を入力する。ここで、右側に表示される評価年度を確認し、正しければ実行ボタンをクリックし、図26に示す劣化断面図ウインドウを表示する。その後は、表示したい係数を選択肢、描画ボタンをクリックすることで図28に示す劣化断面図(相対動弾性係数1次元)を表示することができる。
なお、二次元の場合についても同様、劣化深度予測画面を用い、評価したい年度と、評価したい断面位置を入力する。そして、同じく右側に表示される評価年度と評価断面位置とを確認し、正しければ実行ボタンをクリックして劣化断面図ウインドウを表示する。その後は上記と同様の手順を実行して劣化断面図(相対動弾性係数2次元)を表示することができる。
【0095】
図29、図30は、本発明の検証結果を説明するために引用した図であり、本発明の一実施形態に係わる表層部における検証結果と、本発明の他の実施形態に係わる劣化深さの検証結果のそれぞれを示す。
図29に示されるように、構造物A、B、Cとも、評価結果は実測値と比較的対応しているものと思われる。また、図30によれば、実測値について、粗骨材等の影響によりバラツキが大きいものの表面部へ向かうにしたがい劣化が進行していることが認められる。
また、解析値についても実測値と概略一致していることがわかる。
【0096】
以上説明のように本発明は、第一に、自然環境下での基準地点における暴露試験に基づくコンクリートの凍害劣化曲線を基準に、特性値算出部によって算出される特性値を反映させた予測地点での凍害劣性曲線を算出することで、凍結融解作用を受けるコンクリートの劣化予測システムを構築でき、任意のコンクリート配合、および自然環境下でのコンクリートの劣化予測曲線を正確に算定するものである。
また、本発明は、骨材、結合材の品質と、AE剤の影響、水セメント比およびひび割れについて、破壊サイクル数の比を特性値として定量的に求めることができ、これら特性値を部分係数として劣化予測曲線の算出に反映させることで、凍結融解作用を受けるコンクリートの劣化診断を適切に行うことができる。更に、予測対象コンクリートの劣化曲線算出後に、ひび割れや補修効果を考慮した劣化予測曲線を推定することにより、コンクリートの性能に応じた補修時期を容易に策定でき、劣化が進んだコンクリートを適切な時期に補修することで維持管理の確度を高めることができる。
【0097】
また、本発明は、第二に、コンクリートの表層部分のみならず深度方向の劣化の程度を求めるために、非定常熱伝導解析によりコンクリート内部の温度分布を求め、深度別に凍結融解回数を算出して上記同様劣化深さを推定することで、実際の補修時におけるハツリ厚の設定や、部材耐荷力の評価を行う際に、深さ方向の劣化程度の把握も可能ととなり、上記した維持管理の確度を一層高めるものである。
更に、有限要素法により熱伝導解析を行うにあたり、解析対象コンクリートを数種類に大別し、あらかじめモデル化しておくことで利用者がモデル作成を特段意識することなく劣化予測を可能としたため、利用者の負担を軽減することができる。また、熱伝導解析を実施する際、予測対象の全期間に亘り外気温に基づく年毎の凍結融解回数を求め、当該凍結融解回数が最も多い年を代表年として選定し実施することで、現実的なところで比較的高速に解析結果を取得することができる。また、解析対象期間に制約を設ける他に、上記した代表年として凍結融解回数が最も多い年を選定することで、劣化を評価するにあたって安全側に予測することができる。
【0098】
なお、図2、図6に示す、基礎データ入力取込部111と、特性値算出部112と、劣化予測演算部113と、劣化予測曲線出力部114、そして、深さ方向解析条件入力取込み部116と、熱伝導解析処理部117のそれぞれで実行される手順をコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによっても本発明を実現することができる。ここでいうコンピュータシステムとは、OSや周辺機器等のハードウェアを含む。
【0099】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。
さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0100】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明における凍害劣化予測装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係わる凍害劣化予測装置の内部構成を機能展開して示したブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係わる凍害劣化予測プログラムの処理手順を示すフローチャートである。
【図4】コンクリート構造と水セメント比との関係を説明するために引用した概念図である。
【図5】水セメント比と細孔中の凍結量の関係をグラフ表示して示した図である。
【図6】最低温度を変化させた凍結融解試験結果を3例グラフ表示した図である。
【図7】破壊サイクル数と凍結細孔量比との関係を説明するために引用したグラフである。
【図8】破壊サイクル数を破壊関数で定義したときの関係を説明するために引用した図である。
【図9】破壊関数による基準化処理を説明するために引用したグラフである。
【図10】水殿供試体の暴露試験結果と、水殿調整池の最低温度別凍結融解頻度を説明するために引用した図である。
【図11】基準化凍結融解サイクル法による自然環境下における劣化曲線を示す図である。
【図12】最低温度別凍結融解回数(表とグラフ)を画面表示したときの一例を示す図である。
【図13】本発明により、劣化予測曲線(グラフ)を画面表示したときの一例を示す図である。
【図14】本発明により、ひび割れを考慮した劣化予測曲線(グラフ)を画面表示したときの一例を示す図である。
【図15】本発明により、補修を考慮した劣化予測曲線(グラフ)を画面表示したときの一例を示す図である。
【図16】最低気温を記録した時点における部材内部の温度分布を示す図である。
【図17】部材内部の凍結融解回数を示す図である。
【図18】本発明の他の実施形態に係わる凍害劣化予測装置の内部構成を機能展開して示したブロック図である。
【図19】本発明の凍害劣化予測プログラムの処理手順を示すフローチャートである。
【図20】本発明の凍害劣化予測プログラムの処理手順を示すフローチャートである。
【図21】本発明の他の実施形態において使用される境界条件を説明するために引用した図である。
【図22】本発明の他の実施形態に係わる凍害劣化予測プログラムの処理手順を示すフローチャートである。
【図23】本発明の他の実施形態において使用される画面構成の一例を示す図である。
【図24】本発明の他の実施形態において使用される画面構成の一例を示す図である。
【図25】本発明の他の実施形態において使用される画面構成の一例を示す図である。
【図26】本発明の他の実施形態において使用される画面構成の一例を示す図である。
【図27】本発明の他の実施形態において使用される画面構成の一例を示す図である。
【図28】本発明の他の実施形態において使用される画面構成の一例を示す図である。
【図29】本発明の一実施形態に係わる検証結果を説明するために引用した図である。
【図30】本発明の他の実施形態に係わる検証結果を説明するために引用した図である。
【符号の説明】
【0102】
10…凍害劣化予測装置、11…CPU、12…RAM、13…記憶装置(13a:記憶媒体)、14…入力装置、15…表示装置、111…基礎データ入力取込み部、112…特性値算出部、113…劣化予測演算部、114…劣化予測曲線出力部、116…深さ方向解析条件入力取込み部、117…熱伝導解析処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ上に構築され、自然環境下で凍結融解作用を受けるコンクリートの凍害劣化予測装置であって、
利用者によって入力される、前記コンクリートの解析深度と、熱伝導境界条件を取り込む深さ方向解析条件入力取込み部と、
前記熱伝導境界条件に基づき、有限要素法により前記コンクリートの非定常熱伝導解析を行う熱伝導解析処理部と、
前記熱伝導解析による内部深度に応じ算出される凍結融解回数を基に、前記コンクリート内部の劣化曲線を算出する劣化予測演算部と、
を具備することを特徴とするコンクリートの凍害劣化予測装置。
【請求項2】
前記熱伝導解析処理部は、
外部から取得した基礎データに従い、外気温に基づく年毎の凍結融解回数を算出し、当該算出された凍結融解回数の最も多い年における外気温、ならびに外気と接するコンクリート表面における熱の伝達方向毎あらかじめモデル化された熱伝達境界を用いてコンクリート内部の熱伝導解析を行うことを特徴とする請求項1に記載のコンクリートの凍害劣化予測装置。
【請求項3】
前記劣化予測演算部は、
自然環境下での基準地点における暴露試験に基づくコンクリートの劣化特性曲線を基準に、前記コンクリートの、骨材、結合剤、空気連行剤、飽水度の少なくとも一つによる凍害劣化特性への影響を、それぞれにあらかじめ定義された所定の演算式を実行することによって得られる部分係数に変換し、前記基準地点における暴露試験の凍結融解サイクル数に、前記部分係数を乗じて前記予測地点の基準劣化曲線を求め、当該基準劣化曲線を、前記熱伝導解析結果から得られるコンクリート内部温度を基に1日の最低温度と最高温度から氷点超えした回数を計測した最低温度別凍結融解回数と、破壊サイクル数を前記水セメント比と最低温度で示される破壊関数を用いて前記コンクリート内部の劣化予測曲線に変換することを特徴とする請求項1に記載のコンクリートの凍害劣化予測装置。
【請求項4】
自然環境下で凍結融解作用を受けるコンクリートの凍害劣化予測装置に用いられるプログラムであって、
利用者によって入力される、前記コンクリートの解析深度と、熱伝導境界条件を取り込むステップと、
前記熱伝導境界条件に基づき、有限要素法により前記コンクリートの非定常熱伝導解析を行うステップと、
前記熱伝導解析による内部深度により算出される凍結融解頻度を基に、前記コンクリート内部の劣化曲線を算出するステップと、
をコンピュータに実行させるコンクリートの凍害劣化予測プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2008−249733(P2008−249733A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183213(P2008−183213)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【分割の表示】特願2004−310996(P2004−310996)の分割
【原出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年10月8日社団法人日本コンクリート工学協会発行の「コンクリート構造物の長期性能照査支援モデルに関するシンポジウム委員会報告書・論文集」に発表
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】