説明

コンクリートケーソン用のケーソンラバーおよびその製造方法

【課題】 コンクリートケーソンの捨石マウンドに対する滑動抵抗を高めるためのケーソンラバーにおいて、ケーソンの大型化に伴う単位底面積あたりの荷重増大に耐え、高い滑動抵抗と耐久力を確保する。
【解決手段】 ケーソンラバーの下面は少なくとも一方向の溝を複数有し、上面は波形の凹凸を有する形状であって、少なくとも下面、好ましくは上下両面の厚さ数ミリの層を練りゴムのシートで形成し、それらの中間の部分は再生ゴム粉末に架橋剤を添加し加熱加圧したもので形成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コンクリートケーソンの滑動防止用のケーソンラバーと、その製造方法に関する。 ここで「ケーソン」の語は、水理重力構造物を総称する意味に用いる。
【0002】
【従来の技術】防波堤、岸壁、護岸などの堤体をケーソンを用いて施工する場合、地盤の上に捨石をして設けたマウンドと、その上に置くケーソンとの間の滑動抵抗を高める手段として、「ケーソンラバー」と呼ばれるゴム製のマットが使用されている。ケーソンラバーは、在来のアスファルトより施工が容易であり、広く採用されつつある。
【0003】ケーソンラバーは、バージンラバーを使用して製造したのではコストが高く実用的でないが、出願人が特公平5−19617号公報において提案したように、使用ずみゴム製品から回収したゴムの粉末に架橋剤を添加し、加熱加圧して板状に成形したものであればコストの低減が可能であり、これが実用されている。
【0004】一方、コンクリートケーソンは、今後大型化する傾向がみられる。 港湾設備の整備の方向が沖合人工島を増加させる方向にあり、そうなると水深が深くなって、ケーソンの高さも20m以上に及ぶものと考えられる。 大水深になれば、台風のときなどケーソン側面に当る波圧も大きくなる。 従って、ケーソン底面の1m2 あたりに加わる重量は大きくならざるを得ない。 捨石マウンドに加わる力の許容限度も、現在は80トン/m2であるが、近い将来に100トン/m2程度まで高める必要が生じるのではないかと思われる。
【0005】このような変化により、当然にケーソンへの負担が大きくなる。 それに伴い、■ケーソンラバー自体の耐荷重性能の向上、■ケーソンラバー下面と捨石マウンドとの滑動抵抗の確保ないし増大、および■ケーソンラバー上面とコンクリートケーソンとの結合の確保、の諸点が要求される。
【0006】前掲の出願人の提案(特公平5−19617号)に当っても述べたように、■のケーソンラバー下面と捨石マウンドとの滑動抵抗に関しては、波力に対して直角の方向にケーソンラバーに溝を設けておくことで、高い抵抗を確保することができる。 また、■のケーソンラバー上面とコンクリートケーソン駆体との結合は、アンカーボルトによる結合に加えて、やはり前掲の提案に付記したように、ケーソンラバー上面を波形に形成し、それを型としてコンクリート打設を行なうことによって、波形の面どうしの組み合わせにより横方向に作用する剪断力に耐える、強固な結合を実現できる。
【0007】これらケーソンラバー形状の変更を行ない、かつ上記■のケーソンラバー自体の耐荷重性能をいっそう高めようと努力した結果、ケーソンラバーとくにその上下両表面の物性を、従来の再生粉末ゴムの架橋一体化製品で実現できるレベルよりも高くするのが望ましいということがわかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記のコンクリートケーソンの大型化に伴って生じる諸問題に対処し、ケーソンラバーの耐荷重性能が向上するとともに、捨石マウンドとの滑動抵抗がいっそう高く、かつコンクリートケーソン駆体との結合も強固なケーソンラバーを提供すること、またそのようなケーソンラバーを、コストを実質上高めることなく製造する方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明のコンクリートケーソン用ケーソンラバーは、コンクリートケーソン用のケーソンラバーであって、図1ないし図3に示すように、捨石マウンド上に置かれる下面に複数の平行な溝(11)を有するとともにコンクリートケーソンに接する上面は波形の凹凸(13)を有し、図8に示すように、下面または下面および上面は練りゴムの層(AまたはAおよびB)であり、それらの中間は使用ずみのゴム製品から回収した粉末ゴムが架橋された層(C)であり、練りゴム層と粉末ゴム架橋層とが一体のマットに成形されていることを特徴とする。 練りゴム層は少なくとも下面にあることを要し、通常はそれで足りるが、好ましくは上下両面に設ける。
【0010】ここで、練りゴムとは、通常のゴム加工技術、代表的にはカレンダリングにより加工処理できる物性をもったゴム、すなわちゴム加工業界で「生ゴム」とよばれているものを、シート状にしたものを指す。 種々のゴムシートないしベルト状のゴム製品の製造に当って発生する端材などが、好都合に使用できる。 この生ゴムには、重量にしてその2倍以内の量であれば、粉末ゴムを混合して使用することができる。 通倍は生ゴムと粉末ゴムとを等量ずつ混合して用いるのが適当である。 適量のカーボンブラックをはじめとし、種々の添加剤を含んでいることが好ましい。
【0011】図3において、符号(2)は、ケーソンラバーをコンクリートケーソン駆体に結合するためのアンカー部材を通す孔である。 アンカーは、前掲特公平5−19617号にも示したように、頭部をもつ部材を使用し、ケーソンラバーに上記のような貫通孔を設けて、その下面から上面へ向けて通した構造とすることが推奨される。 このほか、出願人が別に提案した実公平7−8587号、実開平5−22635号、特開平7−71041号などのアンカーも、本発明に好都合に利用できるし、頭部がケーソンラバー中に埋設されていて、尾部がコンクリート中に入る形状のアンカーも、使用可能である。
【0012】下面の溝は、波形の凹凸に平行な一方向の複数の溝(11)であってもよいが、それに加えて、図2にみるように、それらと直交する複数の溝(12)をも有することが好ましい。
【0013】本発明のケーソンラバーで、「溝」といい「波形」といい、ともにその形状はさまざまであって、図3にみる台形断面の溝はサインカーブ状の波形に限らず、図4にみるような、円弧の一部が平面上に突出した断面をもつ波形も可能であるし、それらを上下入れ換えた、図5にみるような形状も可能である。 上面の波形と下面の溝とは、図示の例のように対応する位置に置かれていることが、通常は製造および使用上好都合であるが、ずれていてもかまわないし、その数も同じである必要はない。
【0014】代表的な態様においては、ケーソンラバーの下面および上面の練りゴム層の厚さが2〜8mm、中間のゴム粉末架橋層の厚さが25〜45mmであって、マット全体の厚さ(下面から波形の最高部分まで)が35〜60mmである。
【0015】上記のコンクリートケーソン用のケーソンラバーを製造する本発明の方法は、図6に示すような、底面が波形の凹凸を有する浅い箱の形をした下型(4)と、この波形に平行な複数の突条または波形に平行な複数の突条に加えてそれらに直交する複数の突条を有し、下型の内部に進入する板の形をした上型(5)との組からなる金型を使用し、図7に示すように、下型の底面に練りゴムのシート(b)を敷いてその上に、または練りゴムのシートを敷かず直接に、使用ずみゴム製品から回収したゴムの粉末(c)に架橋剤を添加したものを充填し、さらにその上に練りゴムのシート(a)を敷き、上型をのせて加熱加圧することにより、上下または上の練りゴムのシートと粉末ゴムとを一体化し、一方の面に波形の凹凸を有し他方の面に平行な複数の溝を有し、またはそれに加えて、それらに直交する複数の溝を有するマットを得ることからなる。 図6および7においては、ケーソンラバー上面が下、下面が上に位置している。
【0016】図8は、このようにして製造されたケーソンラバーの拡大断面図であって、上型(5)の下型(4)内への進入により練りゴムシート(a)の端が曲って、成形品の側縁の一部を覆っている。 また、製品ケーソンラバーの型抜きに好都合なよう、両側縁および両側縁には若干のテーパを設けてある。 このような態様は有利なものであるが、本発明のケーソンラバーにとって、必須のことではない。
【0017】
【作用】このケーソンラバーを使用すればケーソンの滑動抵抗が高く、かつコンクリート駆体との結合も強固となる主な理由は、すでに前掲の提案に関して述べたとおりである。 下面の溝を縦横に設けることは、個々の部分で凹凸のある捨石マウンドの石に接触したとき、その形状に応じてケーソンラバー下面部分が変形してなじむことを容易にする点で、好ましい。
【0018】本発明に従ってケーソンラバーの下面または上下両面を練りゴムのシートで形成することは、再生ゴム粉末の一体化した層より物性的にすぐれた層が表面に存在することを可能にし、ケーソンラバー自体の耐荷重性能が高まると同時に、ケーソンラバーに大きな力が加わることがひきおこす苛酷な変形、とくにケーソンラバー下面の捨石との接触における変形に耐える力を与える。
【0019】
【実施例1】古タイヤから回収したゴム粉末を分級し、20メッシュ通過分を分けとった。その100重量部に、架橋剤としてイオウ粉末1.2重量部、また加硫促進剤0.05重量部を混合した。
【0020】図1ないし図3に示した形状に対してポジとネガの関係にある、突条および波形を有する上下の金型を用意した。 内寸が、短辺の長さ1m、長片の長さ2mである。 下型の底に、厚さ5mm、幅50cm×長さ110cmの練りゴム(カーボンブラック30重量%を含有)のシートを4枚、相接するように敷き並べた。その上へ上記の架橋剤入りゴム粉末を充填し、さらにその上に、底に敷いたものと同じ練りゴムのシートを4枚敷き並べ、上型をのせた。
【0021】金型を加硫プレスに入れ、上型と下型とを200kgf/cm2 の圧力でプレスした状態で、圧力6.7kgのスチーム(155℃)で40分間、加熱した。 上下両表面に5mm厚の練りゴムシートの層を有する、全体の厚さ40mmのケーソンラバーを得た。
【0022】得られたケーソンラバーに対して70℃×96時間の老化試験を行ない、その前後におけるゴム物性を、練りゴムの層および粉末ゴムの層について、それぞれ測定した。 結果はつぎのとおりである。
【0023】
練りゴムの層 粉末ゴムの層 老化前 老化後 老化前 老化後 硬度(JIS 度) 65 67 63 64 引張強さ (kgf/cm2) 190 185 78 76 伸び率 (%) 420 400 230 210 引裂き強さ(kg/cm) − − 24 −
【0024】
【実施例2】練りゴムシートとして、実施例1で中間の層に使用した粉末ゴムを生ゴムに等量混合してシートにしたものを使用した。 性能上、ほとんど差のないケーソンラバーを製造することができた。
【0025】
【発明の効果】本発明のケーソンラバーは、まずその形状により、すなわち下面には一方向または直交する二方向の溝があり上面には波形の凹凸があることから、ケーソンを設置したとき、下面は捨石マウンドの凹凸に応じて変形してなじみ、その結果として滑動抵抗が高まり、上面はケーソンのコンクリート駆体への結合が強固になるという効果が得られる。
【0026】この効果は、さきに提案した発明に関してすでに前掲明細書で明らかにしたところであるが、マットの下面または上面および下面を練りゴムのシートで形成したことにより、その部分の物性が向上し、とくに下面においては捨石マウンドの凹凸に応じてケーソンラバーが著しく変形したときにも、再生ゴム粉末だけ使用した製品においては生じることのあった部分的な剥離や崩れが、効果的に防止され、その結果として、耐久力の高いケーソンラバーが提供できる。 上面の波形の凹凸をも練りゴムで形成した好ましい態様においては、コンクリート駆体とケーソンラバーとに対し剪断的に作用する波力に対して、抵抗する力がいっそう強い。 ケーソンの大型化に伴う重量増加は、波形形状の効果をむしろ高めるもので、その際に、練りゴムシートの使用が有意義である。
【0027】練りゴムシートは再生ゴム粉末より多少高価であるから、その使用が本発明のケーソンラバーのコストを押し上げる要因となることは否定できないが、練りゴムシートが材料の中に占める比重は小さく、とくに通常は生ゴムにかなりの量の粉末ゴムを混合して使用できるから、全体として製造費はさして高くならないで済む。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のケーソンラバーの一例を示す斜視図。
【図2】 図1のケーソンラバーの底面図。
【図3】 図1のケーソンラバーの横断面図。
【図4】 本発明のケーソンラバーの別の例を示す、図3に対応する、輪郭だけ示した断面図。
【図5】 本発明のケーソンラバーのさらに別の例を示す、図4と同様の断面図。
【図6】 本発明のケーソンラバーの製造方法の説明図であって、金型に材料を充填した段階を示す断面図。
【図7】 図4に続いて金型で材料を加熱加圧している段階を示す図。
【図8】 製造されたケーソンラバーの構造を示す、一部分の拡大断面図。
【符号の説明】
1 ケーソンラバー
11 溝(縦方向) 12 溝(横方向)
13 波形の凹凸
A 下面の練りゴム層 a,b 練りゴムシート
B 上面の練りゴム層
C 中間の架橋粉末ゴム層 c 粉末ゴム
2 アンカー部材を通す孔
4 下型
5 上型

【特許請求の範囲】
【請求項1】 コンクリートケーソン用のケーソンラバーであって、捨石マウンド上に置かれる下面に複数の平行な溝を有するとともにコンクリートケーソンに接する上面は波形の凹凸を有し、下面または下面および上面が練りゴムの層で形成され、中間は使用ずみのゴム製品から回収した粉末ゴムが架橋された層であり、練りゴム層と粉末ゴム架橋層とが一体のマットに成形されていることを特徴とするケーソンラバー。
【請求項2】 下面に、前記複数の平行な溝に加えて、それらに直交する複数の溝をも有する請求項1のケーソンラバー。
【請求項3】 下面および上面の練りゴム層の厚さが2〜8mm、中間のゴム粉末架橋層の厚さが25〜45mmであって、マット全体の厚さ(下面から波形の最高部分まで)が35〜60mmである請求項1のケーソンラバー。
【請求項4】 練りゴムとして、生ゴムに重量でその2倍以内の粉末ゴムを混合したものを使用して成形した請求項1のケーソンラバー。
【請求項5】 底面が波形の凹凸を有する浅い箱の形をした下型と、この波形に平行な複数の突条または波形に平行な複数の突条に加えてそれらに直交する複数の突条を有し、下型の内部に進入する板の形をした上型との組からなる金型を使用し、下型の底面に練りゴムのシートを敷き、その上に、または練りゴムのシートを敷かず直接に、使用ずみゴム製品から回収したゴムの粉末に架橋剤を添加したものを充填し、さらにその上に練りゴムのシートを敷き、上型をのせて加熱加圧することにより、上下または上の練りゴムのシートと粉末ゴムとを一体化し、一方の面に波形の凹凸を有し他方の面に平行な複数の溝を有し、またはそれに加えて、それらに直交する複数の溝を有するマットを得ることからなるコンクリートケーソン用のケーソンラバーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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