説明

コンクリートブロックの吊り具

【課題】コンクリートブロックへのロック及びロック解除が簡単な操作で可能なコンクリートブロックの吊り具を提供する。
【解決手段】落ちふた式U形側溝ブロック21の吊り具1であって、中空軸2と、中空軸2の中心孔内を摺動可能で中空軸2の両端から突出する操作軸3と、操作軸3の一方の突出部の外周に配置されるとともに中空軸2の一端面と操作軸3の一端面に取り付けられた座金4とで挟持されたリング状弾性体5と、操作軸3の他方の突出部に連結ピン6で連結された一端側にカム面7aを有するカムハンドル7とを備え、カムハンドル7を連結ピン6を中心として起立させると、カム面7aが中空軸2の他端面を押圧し座金4と操作軸3が軸方向に変位することでリング状弾性体5は軸方向に圧縮されその外径が半径方向に拡張するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側溝ブロック等のコンクリートブロックの吊り具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートブロックの吊り具としてアイボルトを使用し、予めコンクリートブロックに埋設した雌ねじを有するインサートのめねじにアイボルトのねじ部を螺合し、アイボルトの頭部にフックをかけてコンクリートブロックを吊り上げるものが知られていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−67485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1(特開平10−67485号公報)に開示されたアイボルトを使用するものは、インサートにアイボルトを装着するとき、インサートの雌ねじにアイボルトのねじ部を螺合するので、この螺合、すなわちねじ込み作業に手間がかかるという問題があった。
またねじ込む際、砂等が噛み込み易い欠点もある。
更にまた、インサートにアイボルトを単にねじ込んでいるだけであるので、ロック機能がなく、アイボルトが簡単に回転してしまい、アイボルトがインサートから外れるおそれもあるという問題があった。
【0004】
本発明はこのような問題点を解決するものである。
すなわち、本発明は、コンクリートブロックへのロック及びロック解除が簡単な操作で可能なコンクリートブロックの吊り具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、(1)、中空軸と、該中空軸の中心孔内を摺動可能で該中空軸の両端から突出する操作軸と、該操作軸の一方の突出部の外周に配置されるとともに前記中空軸の一端面と前記操作軸の一端面に取り付けられた座金とで挟持されたリング状弾性体と、前記操作軸の他方の突出部に連結ピンで連結された一端側にカム面を有するカムハンドルとを備え、該カムハンドルを前記連結ピンを中心として起立させると、前記カム面が前記中空軸の他端面を押圧し前記座金と前記操作軸が軸方向に変位することで前記リング状弾性体は軸方向に圧縮されその外径が半径方向に拡張するコンクリートブロックの吊り具に存する。
【0006】
また本発明は、(2)、前記座金が前記操作軸の一端面に取り外し自在に取り付けられる上記(1)記載のコンクリートブロックの吊り具に存する。
【0007】
また本発明は、(3)、前記座金がネジにより操作軸に取り付けられ、該ネジを取り外すことで前記リング状弾性体の取り外しが可能となっている上記(2)記載のコンクリートブロックの吊り具に存する。
【0008】
また本発明は、(4)、前記カムハンドル側の前記中空軸の端部外周にエンドリングが取り外し可能にねじ込まれて取り付けられている上記(1)記載のコンクリートブロックの吊り具に存する。
【0009】
また本発明は、(5)、前記中空軸の外周にシャックルが嵌め込まれ、該シャックルは前記エンドリングの側面と前記中空軸の外周に形成された段部とに当接して位置決めされている上記(1)記載のコンクリートブロックの吊り具に存する。
【0010】
また本発明は、(6)、前記リング状弾性体寄りの位置で前記中空軸の外周にフランジが一体的に取り付けられている上記(1)記載のコンクリートブロックの吊り具に存する。
【0011】
また本発明は、(7)、前記カム面から前記連結ピンの中心までの距離が、前記カムハンドルを起立させた状態から解放状態に至る間において、カムハンドルを起立させた状態における距離よりも大きい部分を有する上記(1)記載のコンクリートブロックの吊り具に存する。
【0012】
また本発明は、(8)、前記シャックルが中空軸を一定広幅に渡り連続面で支持する連結部を備えている上記(5)記載のコンクリートブロックの吊り具に存する。
【0013】
また本発明は、(9)、前記コンクリートブロックには吊り具を装着する穴部が形成されている上記(1)記載のコンクリートブロックの吊り具に存する。
【0014】
また本発明は、(10)、前記コンクリートブロックには吊り具を装着する穴部を有するインサートが埋設されている上記(1)記載のコンクリートブロックの吊り具に存する。
【0015】
また本発明は、(11)、前記コンクリートブロックは落ちふた式U形側溝ブロックである上記(1)記載のコンクリートブロックの吊り具に存する。
【0016】
なお、本発明の目的に添ったものであれば、上記(1)〜(11)を適宜組み合わせた構成も採用可能である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、中空軸と、該中空軸の中心孔内を摺動可能で該中空軸の両端から突出する操作軸と、該操作軸の一方の突出部の外周に配置されるとともに前記中空軸の一端面と前記操作軸の一端面に取り付けられた座金とで挟持されたリング状弾性体と、前記操作軸の他方の突出部に連結ピンで連結された一端側にカム面を有するカムハンドルとを備え、該カムハンドルを前記連結ピンを中心として起立させると、前記カム面が前記中空軸の他端面を押圧し前記座金と前記操作軸が軸方向に変位することで前記リング状弾性体は軸方向に圧縮されその外径が半径方向に拡張するものであるので、前記吊り具の前記座金側をインサートの孔部内に差し込み、前記カムハンドルを起立させるだけで、前記吊り具をインサートの孔部内に固定すなわちロックすることができる。
また、前記カムハンドルを元に戻すだけで、前記吊り具のインサートの孔部内への固定の解除すなわちロック解除ができる。
このように、前記吊り具は従来のアイボルトを使用するものに比して、装着の操作が簡単で、しかも、ロック機能を有する。
【0018】
請求項2記載の発明によれば前記座金が前記操作軸の一端面に取り外し自在に取り付けられることにより、前記リング状弾性体の取り外しが可能となり、劣化したリング状弾性体の交換が容易にできる。
そして、劣化したリング状弾性体を交換することにより、繰り返し使用可能である。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、前記座金がネジにより操作軸に取り付けられ、該ネジを取り外すことで前記リング状弾性体の取り外しが可能となっているので、座金の取り外しが簡単な構造で可能となる。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、前記カムハンドル側の前記中空軸の端部外周にエンドリングが取り外し可能にねじ込まれて取り付けられているものであるので、前記エンドリングを取り外すことでシャックルを前記中空軸の外周に容易に嵌め込むことができる。
【0021】
請求項5記載の発明によれば、前記中空軸の外周に前記シャックルが嵌め込まれ、前記シャックルは前記エンドリングの側面と前記中空軸の外周に形成された前記段部とに当接して位置決めされているものであるので、前記シャックルの位置が安定する。
【0022】
請求項6記載の発明によれば、前記リング状弾性体寄りの位置で前記中空軸の外周にフランジが一体的に取り付けられているものであるので、前記つり具を前記コンクリートブロックに装着したとき、前記フランジの側面が側壁部の側面に当接するので、前記つり具が安定して装着できる。
【0023】
請求項7の発明によれば、ロック後は、カムハンドルに不用意に戻る力が加わっても、リング状弾性体の復帰力がカムハンドルの回動を阻害するため、カムハンドルが容易には元の位置に戻らなくなる。
【0024】
請求項8の発明によれば、シャックルが中空軸を一定広幅に渡り連続面で支持する連結部を備えているので、吊り上げ時に中空軸に加わる曲げ応力が分散される。
そのため、吊り上げ時に中空軸が極力変形しない。
また砂等の異物の噛み込みが防止される。
【0025】
請求項9記載の発明によれば、前記コンクリートブロックには前記吊り具を装着する孔部が形成されているものであるので、孔部に前記吊り具を装着することで前記コンクリートブロックを吊り上げることができる。
【0026】
請求項10載の発明によれば、前記コンクリートブロックには吊り具を装着する孔部を有するインサートが埋設されているものであるので、インサートの孔部に前記吊り具を装着することで前記コンクリートブロックを吊り上げることができる。
【0027】
請求項11記載の発明によれば、前記コンクリートブロックは落ちふた式U形側溝ブロックであるので、前記落ちふた式U形側溝ブロックの孔部に前記吊り具を装着することで前記落ちふた式U形側溝ブロックを吊り上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(第1の実施形態)
本発明を実施するための最良の形態は、コンクリートブロックとしての落ちふた式U形側溝ブロック21に吊り具1を装着するもので、以下、図1〜7に基づいて説明する。
【0029】
後述するように、吊り具1を装着する落ちふた式U形側溝ブロック21には、インサート22が埋設されている(図5〜7参照)。
すなわち、予め型枠にインサートを取り付けておき、コンクリートを打設することでインサート22が埋設された落ちふた式U形側溝ブロック21が成形される。
【0030】
図1は、本実施形態に係る落ちふた式U形側溝ブロックの吊り具の平面図である。
図2は、図1に示す落ちふた式U形側溝ブロックの吊り具の正面断面図で、(A)はカムハンドルを起立させない状態を示し、(B)はカムハンドルを起立させた状態を示す。
図3は、図1に示す落ちふた式U形側溝ブロックの吊り具の右側面図である。
図4は、図1に示す落ちふた式U形側溝ブロックの吊り具の左側面図である。
これらの図に示すように、吊り具1は、中空軸2と、操作軸3と、座金4と、リング状弾性体5と、連結ピン6と、カムハンドル7と、エンドリング8と、ネジ(ここでは「なべ小ネジ」)9と、フランジ10とを備えている。
【0031】
中空軸2は、中心孔と外周に形成された段部2aを有している。そして、カムハンドル7側の中空軸2の端部外周にエンドリング8が取り外し可能にねじ込まれて取り付けられている。
なお、エンドリング8は一対の工具係合面8bを有し、工具係合面8bにスパナ等の工具を係合させ、回動させることにより中空軸2の端部外周にエンドリング8が取り外し可能にねじ込まれる。
また、リング状弾性体5寄りの位置で中空軸2の外周に円板状のフランジ10が溶接により一体的に取り付けられている。
【0032】
操作軸3は、中空軸2の中心孔内に摺動可能に挿入されており、その両端部は中空軸2の両端から突出している。
【0033】
リング状弾性体5は、操作軸3の一方の先端部である細径突出部の外周に配置されるとともに、中空軸2の一端面と座金4(操作軸3の一端面に取り付けられている)とで挟持されている。
なお、座金4は操作軸3の一端面になべ小ネジ9により取り付けられる。
【0034】
カムハンドル7は、その一端側に二股部7bを有し、二股部7bの端面にはそれぞれカム面7aを有している。
そして、二股部7bの間に操作軸3の他方の突出部を挿入し、この二股部7bと操作軸3の他方の突出部とを連結ピン6で回動可能に連結している。
【0035】
図5〜7に示すように、使用時においては、吊り具1を構成する中空軸2の外周にシャックル11が嵌め込まれる。
中空軸2の外周にシャックル11を嵌め込むには、一旦、エンドリング8をスパナ等の工具を使用して、中空軸2の端部外周から取り外す。
【0036】
そして中空軸2の外周にシャックル11が嵌め込み、再度、中空軸2の端部外周にエンドリング8をねじ込んで取り付ける。
これでシャックル11はエンドリング8の側面8aと中空軸2の段部2aとに当接して位置決めされる。
【0037】
次に、吊り具1の落ちふた式U形側溝ブロック21への装着について図5〜7に基づいて説明する。
【0038】
まず、落ちふた式U形側溝ブロック21に埋設されているインサート22の孔部22aに吊り具1を座金4のある側から差し込み、フランジ10の側面が落ちふた式U形側溝ブロック21の側壁部21aの外側面に当接するまで挿入する。
【0039】
次に、カムハンドル7を解放状態から、連結ピン6を中心として回動させ起立させると、カムハンドル7のカム面7aが中空軸2の他端面を押圧する。
これにより、カム面から前記連結ピンの中心までの距離が大きくなり、操作軸3が軸方向(すなわち図2でいう右方向)に変位し、座金4も同様に変位する。
しかし、リング状弾性体5は、中空軸2の一端面により軸方向の変位が制限されているので、圧縮されてインサート22の孔部22a内でその外径が半径方向に拡張しようとする。
これにより、リング状弾性体5の外周面がインサート22の孔部22aの内周面に密着するので、その押圧力及び摩擦力により吊り具1がインサート22の孔部22a内に固定すなわちロックされる。
【0040】
また、吊り具1をインサート22の孔部22a内から、引き出すには、起立しているカムハンドル7の連結ピン6を中心として元の方向に回動させ、操作軸3の軸線上に位置させ解放状態にする。
これにより、リング状弾性体5が圧縮されない状態に戻り、インサート22の孔部22a内での密着力がなくなる。この状態で吊り具1のインサート22の孔部22a内での固定(すなわちロック)が解除されていることとなる。
したがって、吊り具1をインサート22の孔部22a内から容易に引き出すことができる。
【0041】
次に、落ちふた式U形側溝ブロック21に吊り具1を装着して吊り上げる場合について説明する。
【0042】
図5は、落ちふた式U形側溝ブロック21を図示しない型枠から脱枠するときの状態を示している。
図5に示すように、落ちふた式U形側溝ブロック21にはその一対の側壁部21aにそれぞれインサート22が埋設されており、インサート22の孔部22aに吊り具1が装着されて前述したようにロックされている。
そして、吊り具1のシャックル11にワイヤ32に連結されたフック31を掛け、上方に吊り上げることにより脱枠することができる。
この脱枠時には、落ちふた式U形側溝ブロック21は底部が上方に位置する向きになっている。
そして、底部が上方に位置する向きのまま置き場(ヤード)まで搬送され、保管放置される。
【0043】
図6は、落ちふた式U形側溝ブロック21が180度上下反転したときの、図5と同様の説明図である。
図7は、図5における一部を拡大して示す説明図であって、(A)はカムハンドルを起立させない状態を示し、(B)はカムハンドルを起立させた状態を示す。
施工に際しては、底部が上方に位置する向きのままで置き場(ヤード)に保管放置されている落ちふた式U形側溝ブロック21を吊り上げて、図6に示すように、底部が下方に位置する向きに180度上下反転させる。
そして、底部が下方に位置する向きの状態で施工場所に移し施工する。
【0044】
上述のように構成される、本発明の一実施形態に係る落ちふた式U形側溝ブロック21の吊り具1によれば、以下のような効果を有する。
【0045】
吊り具1の座金4側をインサート22の孔部22a内に差し込み、単にカムハンドル7を起立させるだけで、吊り具1をインサート22の孔部22a内に固定すなわちロックすることができる。
また、カムハンドル7を元に戻すだけで、吊り具1のインサート22の孔部22a内への固定の解除すなわちロック解除ができる。
このように、従来のアイボルトを使用するものに比して、ねじ込みのような回動操作は全く不必要で、いわばワンタッチで装着を簡単に行うことができ、しかも、ロック機能を確実に発揮できる。
【0046】
リング状弾性体5を押さえる座金4を操作軸3の一端面になべ小ネジ9で取り付けているので、座金4の取り外しが容易である。
【0047】
座金4を取り外すことでリング状弾性体5も簡単に取り外しが可能であるので、劣化したリング状弾性体5の交換が容易にできる。
そして、劣化したリング状弾性体5を交換することにより、吊り具の繰り返し使用可能である。
【0048】
カムハンドル7側の中空軸2の端部外周にエンドリング8が取り外し可能にねじ込まれて取り付けられているので、エンドリング8を取り外すことでシャックル11を中空軸2の外周に容易に嵌め込むことができる。
【0049】
中空軸2の外周にシャックル11が嵌め込まれ、シャックル11はエンドリング8の側面と中空軸2の外周に形成された段部2aとに当接して位置決めされているので、シャックル11の位置が安定する。
【0050】
リング状弾性体5寄りの位置で中空軸2の外周にフランジ10が一体的に取り付けられているので、つり具1を落ちふた式U形側溝ブロック21に装着したとき、フランジ10の側面が側壁部21aの側面に当接するので、つり具1が安定して装着できる。
また施工時に該ブロックを上下反転する場合にも、このフランジ10により案内されるためガタ付かない。
【0051】
落ちふた式U形側溝ブロック21には吊り具1を装着する穴部22aを有するインサート22が埋設されているので、この穴部22aに吊り具1を装着することができる。
また、吊り具1は従来のめねじを有するインサートにも装着することができる。
【0052】
なお、上述したように、本発明の一実施形態として、吊り具1をインサート22の孔部22aに装着するものについて説明しているが、本発明の吊り具は、インサートを埋設していないコンクリートブロックに形成された孔部に直接に装着する場合にも当然、使用可能である。
【0053】
また、上述したように、本発明の一実施形態として、落ちふた式U形側溝ブロック21の吊り具1について説明しているが、本発明の吊り具は、落ちふた式U形側溝ブロック以外の比較的重量のある物に対しても、吊り具として十分使用することができる。
【0054】
(第2の実施形態)
第2の実施形態においては、起立したカムハンドル7に何らかの力が上向きに加わっても、不用意に解放状態にならない特有の機能を備えたものである。
そのため、本実施形態の吊り具1においては、連結ピン6からカム面7aまでの距離に工夫を加えている。
【0055】
以下、本実施形態のコンクリートブロックの吊り具に関して説明する。
図8は、第2の実施形態に係る落ちふた式U字側溝ブロックの吊り具の平面図である。
また、図9は、図8に示す落ちふた式U字側溝ブロックの吊り具の正面断面図で、(A)はカムハンドルを起立させない状態を示し、(B)カムハンドルを起立させた状態を示す。
図10は、図9(B)の囲み部分の拡大図である。
図11は、図8に示す落ちふた式U字側溝ブロックの吊り具の右側面図である。
図12は、図8に示す落ちふた式U字側溝ブロックの吊り具の左側面図である。
【0056】
図8及び図9に示すように、本実施形態の吊り具1は第1の実施形態と同様に、中空軸2と、操作軸3と、座金4と、リング状弾性体5と、連結ピン6と、カムハンドル7と、エンドリング8と、ナット9aと、フランジ10とを備えている。
操作軸3の先端にはネジ部3Nが形成されており、ここにナット9aを螺合してリング状弾性体5を固定する。
本実施形態においては、フランジ10は中空軸2を切削加工することにより形成されている。
【0057】
本実施形態のカムハンドル7のカム面7aは、カム面から連結ピン6の中心までの距離が、前記カムハンドル7を起立させた状態から解放状態に至る間において、カムハンドル7を起立させた状態における距離よりも大きい部分(距離L2)を有するという特徴がある。
図10に示すように、カムハンドル7が起立した状態にあるときにおけるカム面7a(エンドリング8と接触している)から連結ピン6の中心までの距離L1に比べて、解放状態におけるカム面7a(エンドリング8と接触している)から連結ピン6の中心までの距離L3は小さい。
そして、起立させた状態から解放状態に至る間において、カムハンドル7を起立させた状態におけるカム面7aから連結ピン6の中心までの距離L1よりも大きい部分(距離L2)を有する。
そして、距離L1のカム面7aから距離L2のカム面7aに至るまでの間、カム面7aと連結ピンの中心までの距離は連続的に大きくなるように変化している。
カムハンドル7を上に押し上げようとすると、リング状弾性体5の復帰力に抗しながら中空軸2を移動させる必要がある。
そのため、カムハンドル7を上に押し上げる場合、距離L1のカム面より、距離L2のカム面の方がよりモーメント力を必要とすることになる。
すなわち、カム面7aをこのような形状に設計することで、一旦、起立した状態にしたカムハンドル7を元に戻す場合(すなわち解放位置に戻す場合)は、距離L2のカム面を通り越さなければならず、そのため更に大きな力を必要とする。
従って、起立した状態が安定して維持され、作業中、不用意にカムハンドル7を元に戻そうとする力が加わっても、その回動は阻止されるのである。
【0058】
また本実施形態の吊り具1では、第1の実施形態のシャックルとは異なる変形型のシャックル11を備えている。
このシャックル11は、中空軸2を一定広幅に渡り連続面で支持する連結部11aを備えている。
シャックル11が、このような連結部11aを備えることで、吊り上げ時に中空軸2の一部に応力が集中することがなく、操作軸3に加わる曲げ応力が分散され、変形し難くなる。
また、連結部11aと中空軸2との間に、砂等の異物が噛み込み難い。
【0059】
シャックル11を中空軸2に嵌め込む際は、連結部11aの端部を段部2aに当接させる。
このことにより、段部2aはシャックル11が一方の軸方向への移動(図面左方向)を妨げるストッパーの役割を果たす。
そして、シャックル11の他方の軸方向(図面右方向)への移動を防止するストッパーの役割は、エンドリング8が果たす。
【0060】
次に、吊り具1の落ちふた式U形側溝ブロック21への装着について図13〜図15に基づいて説明する。
ただし、基本的な部分での装着手順は第1の実施形態と変わらない。
【0061】
図15は、図12における一部を拡大して示す説明図であって、(A)はカムハンドルを起立させない状態を示し、(B)はカムハンドルを起立させた状態を示す。
図に示すように、落ちふた式U形側溝ブロック21に埋設されているインサート22の孔部22aに吊り具1を座金4のある側から差し込み、フランジ10の側面が落ちふた式U形側溝ブロック21の側壁部21aの外側面に当接するまで挿入する。
【0062】
次にカムハンドル7を回動させて起立させると、カムハンドル7のカム面7aが中空軸2の他端面を押圧する。
これにより、座金4と操作軸3とが軸方向(すなわち図9でいう右方向)に変位する。
このときリング状弾性体5は、中空軸2の一端面により軸方向の変位が制限されているので、操作軸3に圧縮されてインサート22の孔部22a内でその外径が半径方向に拡張する。
これにより、リング状弾性体5の外周面がインサート22の孔部22aの内周面に密着するので、その押圧力及び摩擦力により吊り具1がインサート22の孔部22a内に固定、すなわちロックされる。
このような作業中にカムハンドル7に何らかの力が加わったとしても、カム面7aが上述したような形状であるため解放状態になり難い。
【0063】
また、吊り具1をインサート22の孔部22a内から、引き出すには、起立しているカムハンドル7を、連結ピン6を中心として元の方向に回動させ、解放状態にする。
これにより、リング状弾性体5が圧縮されない状態に戻り、インサート22の孔部22a内での密着力がなくなる。
この状態はロックが解除されている状態であるので、吊り具1をインサート22の孔部22a内から容易に引き出すことができる。
【0064】
次に、落ちふた式U形側溝ブロック21に吊り具1を装着して吊り上げる場合について説明する。
図13は、落ちふた式U形側溝ブロック21を図示しない型枠から脱枠するときの状態を示している。
図13に示すように、落ちふた式U形側溝ブロック21にはその一対の側壁部21aにそれぞれインサート22が埋設されており、インサート22の孔部22aに吊り具1が装着されて前述したようにロックされている。
そして、吊り具1のシャックル11にワイヤ32に連結されたフック31を掛け、上方に吊り上げることにより脱枠することができる。
この脱枠時には、落ちふた式U形側溝ブロック21は底部が上方に位置する向きになっている。
そして、底部が上方に位置する向きのまま置き場(ヤード)まで搬送され、保管放置される。
また、シャックル11が中空軸2を広幅に渡り連続面で支持するので、中空軸2に加わる応力が分散され、吊り上げ時に中空軸2が変形しにくい。
また砂等の異物の噛み込みが防止される。
【0065】
図14は、落ちふた式U形側溝ブロック21が180度上下反転したときの、図13と同様の説明図である。
施工に際しては、底部が上方に位置する向きのままで置き場(ヤード)に保管放置されている落ちふた式U形側溝ブロック21を吊り上げて、図13に示すように、底部が下方に位置する向きに180度上下反転させる。
そして、底部が下方に位置する向きの状態で施工場所に移し施工する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る落ちふた式U形側溝ブロックの吊り具の平面図である。
【図2】図2は、図1に示す落ちふた式U形側溝ブロックの吊り具の正面断面図で、(A)はカムハンドルを起立させない状態を示し、(B)はカムハンドルを起立させた状態を示す。
【図3】図3は、図1に示す落ちふた式U形側溝ブロックの吊り具の右側面図である。
【図4】図4は、図1に示す落ちふた式U形側溝ブロックの吊り具の左側面図である。
【図5】図5は、図1に示す落ちふた式U形側溝ブロックの吊り具を、落ちふた式U形側溝ブロックに装着して脱枠するときの説明図である。
【図6】図6は、落ちふた式U形側溝ブロックが180度上下反転したときの、図5と同様の説明図である。
【図7】図7は、図5における一部を拡大して示す説明図であって、(A)はカムハンドルを起立させない状態を示し、(B)はカムハンドルを起立させた状態を示す。
【図8】図8は、第2の実施形態に係る落ちふた式U形側溝ブロックの吊り具の平面図である。
【図9】図9は、図8に示す落ちふた式U形側溝ブロックの吊り具の正面断面図で、(A)はカムハンドルを起立させない状態を示し、(B)はカムハンドルを起立させた状態を示す。
【図10】図10は、図9(B)の囲み部分の拡大図であり、(A)はカムハンドルが起立状態のときを示し、(B)はカムハンドルの最も大きい部分が中空軸に接触した状態を示し、(C)はカムハンドルが解放状態のときを示す。
【図11】図11は、図8に示す落ちふた式U形側溝ブロックの吊り具の右側面図である。
【図12】図12は、図8に示す落ちふた式U形側溝ブロックの吊り具の左側面図である。
【図13】図13は、図8に示す落ちふた式U形側溝ブロックの吊り具を、落ちふた式U形側溝ブロックに装着して脱枠するときの説明図である。
【図14】図14は、落ちふた式U形側溝ブロックが180度上下反転したときの、図13と同様の説明図である。
【図15】図15は、図13における一部を拡大して示す説明図であって、(A)はカムハンドルを起立させない状態を示し、(B)はカムハンドルを起立させた状態を示す。
【符号の説明】
【0067】
1 吊り具
2 中空軸
2a 段部
3 操作軸
3N ネジ部
4 座金
5 リング状弾性体
6 連結ピン
7 カムハンドル
7a カム面
7b 二股部
8 エンドリング
8a 側面
8b 工具係合面
9 ネジ(なべ小ネジ)
9a ナット
10 フランジ
11 シャックル
11a 連結部
21 落ちふた式U形側溝ブロック
21a 側壁部
22 インサート
22a 孔部
31 フック
32 ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空軸と、該中空軸の中心孔内を摺動可能で該中空軸の両端から突出する操作軸と、該操作軸の一方の突出部の外周に配置されるとともに前記中空軸の一端面と前記操作軸の一端面に取り付けられた座金とで挟持されたリング状弾性体と、前記操作軸の他方の突出部に連結ピンで連結された一端側にカム面を有するカムハンドルとを備え、
該カムハンドルを前記連結ピンを中心として起立させると、前記カム面が前記中空軸の他端面を押圧し前記座金と前記操作軸が軸方向に変位することで前記リング状弾性体は軸方向に圧縮されその外径が半径方向に拡張することを特徴とするコンクリートブロックの吊り具。
【請求項2】
前記座金が前記操作軸の一端面に取り外し自在に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載のコンクリートブロックの吊り具。
【請求項3】
前記座金がネジにより操作軸に取り付けられ、該ネジを取り外すことで前記リング状弾性体の取り外しが可能となっていることを特徴とする請求項2に記載のコンクリートブロックの吊り具。
【請求項4】
前記カムハンドル側の前記中空軸の端部外周にエンドリングが取り外し可能にねじ込まれて取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリートブロックの吊り具。
【請求項5】
前記中空軸の外周にシャックルが嵌め込まれ、該シャックルは前記エンドリングの側面と前記中空軸の外周に形成された段部とに当接して位置決めされていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリートブロックの吊り具。
【請求項6】
前記リング状弾性体寄りの位置で前記中空軸の外周にフランジが一体的に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリートブロックの吊り具。
【請求項7】
前記カム面から前記連結ピンの中心までの距離が、前記カムハンドルを起立させた状態から解放状態に至る間において、カムハンドルを起立させた状態における距離よりも大きい部分を有することを特徴とする請求項1記載のコンクリートブロックの吊り具。
【請求項8】
前記シャックルが中空軸を一定広幅に渡り連続面で支持する連結部を備えていることを特徴とする請求項5記載のコンクリートブロックの吊り具。
【請求項9】
前記コンクリートブロックには吊り具を装着する穴部が形成されていることを特徴とする請求項1記載のコンクリートブロックの吊り具。
【請求項10】
前記コンクリートブロックには吊り具を装着する穴部を有するインサートが埋設されていることを特徴とする請求項1記載のコンクリートブロックの吊り具。
【請求項11】
前記コンクリートブロックは落ちふた式U形側溝ブロックであることを特徴とする請求項1に記載のコンクリートブロックの吊り具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−256093(P2009−256093A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167825(P2008−167825)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000176512)三谷セキサン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】