説明

コンクリートポンプ装置における圧送配管の摩耗検知構造

【課題】 直線状の配管ユニットに接続される他の配管ユニットの種類に関係なく、検知部からの生コンクリートの漏れにより、圧送配管の亀裂破損を確実に防止することができる。
【解決手段】 コンクリートポンプにより圧送配管4を通して生コンクリートを圧送するようにしたコンクリートポンプ装置において、圧送配管4は、直線状の配管ユニット4Sを備え、この配管ユニット4Sの一端部外周面には検知部12が設けられ、配管ユニット4S内を生コンクリートが流れるとき、検知部12は、直線状の配管ユニット4Sの残余の部分に先行して摩耗裂破される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生コンクリートを圧送するコンクリートポンプ装置において、生コンクリートの圧送配管の摩耗を検知して、該圧送配管の亀裂破損を防止するようにした、圧送配管の摩耗検知構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートポンプ車両などに搭載されるコンクリートポンプ装置において、生コンクリートを圧送する直線状の圧送配管に弱損部(検知部)を形成し、生コンクリートの圧送により、圧送配管の内面が摩耗すると、弱損部が圧送配管の内外部を貫通した貫通孔となり、この貫通孔から圧送配管内の生コンクリートが外部に漏れ出すことにより、圧送配管の内面摩耗を外部から確認できるようにして、圧送配管の交換時期を判断できるようにしたものは公知である(特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平4−127358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、前記特許文献1に開示されるものは、圧送配管の中間部に弱損部(検知部)を設けているため、たとえば、その直線状の圧送配管の上流側に曲管(エルボ管)が接続されている場合には、その曲管を流れる生コンクリートが、その曲管と直線状の圧送配管との接続部付近に激しく当り、その接続部が早期に摩耗するため、直線状の圧送配管の、前記弱損部のある中間部が摩耗する前に、前記接続部付近が摩耗してしまい、その摩耗により圧送配管が亀裂破損を生起する危険があり、その交換時期を適正に判断することができないという問題がある。
【0004】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、直線状の配管ユニットに接続される他の配管ユニットの形状にかかわりなく、その圧送配管の交換時期を適正に検知できるようにして、前記問題を解決できるようにした新規なコンクリートポンプ装置における圧送配管の摩耗検知構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、コンクリートポンプにより圧送配管を通して生コンクリートを圧送するようにしたコンクリートポンプ装置において、
前記圧送配管は、直線状の配管ユニットを備えており、この配管ユニットの少なくとも一端部外周面には検知部が設けられ、前記直線状の配管ユニット内を生コンクリートが流れるとき、前記検知部は、直線状の配管ユニットの残余の部分に先行して摩耗裂破されるようにしたことを特徴としている。
【0006】
また、上記目的を達成するために、請求項2記載の発明は、前記制御1記載のものにおいて、前記直線状の配管ユニットは、直管本体と、その少なくとも一端部に一体に設けられる接続部よりなり、該接続部は、直管本体よりも肉厚に形成されていて、固定手段を介して他の配管ユニットと接続可能であることを特徴としている。
【0007】
さらに、上記目的を達成するために、請求項3記載の発明は、前記制御1または2記載のものにおいて、前記接続部は、直管本体に溶接され、その溶接部に隣接して前記検知部が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項各項記載の発明によれば、直線状の配管ユニットに接続される他の配管ユニットの種類に関係なく、検知部からの生コンクリートの漏れにより、圧送配管の亀裂破損を確実に防止することができる。
【0009】
また、請求項2記載の発明によれば、直線状の配管ユニットの肉厚部に検知部を設けるので、該検知部の加工が容易になる。
【0010】
さらに、請求項3記載の発明によれば、直管本体と接続部との、摩耗し易い溶接部に隣接して検知部が設けられるので、一層確実に圧送配管の亀裂破損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて以下に具体的に説明する。
【0012】
図1は、コンクリートポンプ装置における圧送配管の摩耗検知構造を備えたコンクリートポンプ車の側面図、図2は、図1の2矢視のコンクリートポンプ車の平面図、図3は、コンクリートポンプ車の生コンクリートの圧送状態を示す側面図、図4は、図3の仮想線囲い部分の拡大断面図、図5は、図4の仮想線囲い部分の拡大図、図6は、図5の6−6線に沿う断面図である。
【0013】
図1〜3において、全体を符号Vで示されるコンクリートポンプ車のシヤシフレームFの前部に架装される基台1には、支持柱2が鉛直軸線L−Lまわりに旋回自在に搭載され、この支持柱2の上端に多段屈伸ブームBが複数の伸縮シリンダ3a〜3dにより上下方向に屈伸自在に連結される。多段屈伸ブームBには、これに沿って生コンクリート圧送用の圧送配管4が支持されており、この圧送配管4は多段屈伸ブームBの屈伸に応じて屈曲可能である。
【0014】
また、シヤシフレームFには往復動式のコンクリートポンプPが搭載されている。このコンクリートポンプPは、ホッパ6を備えており、ホッパ6内に投入された生コンクリートを、コンクリートポンプPの先端の吐出口7より外部に圧送できるように構成される。
【0015】
コンクリートポンプPの吐出口7には前記圧送配管4が接続され、この圧送配管4は多段屈伸ブームBに支持されてコンクリートポンプPからの加圧生コンクリートを外部に圧送する。
【0016】
シャシフレームFを前後方向の延長されたのち、多段屈伸ブームBに沿設され、さらにその多段伸縮ブームBよりも外方に延長される圧送配管4は、複数本の、直線状の配管ユニット(以下、直管ユニットという)4S,4S同士、あるいは直管ユニット4Sと曲線状の配管ユニット(以下、曲管ユニットという)4BとをそれぞれジョイントJを介して一体に接続して構成され、多段屈伸ブームBの関節部のところでは、そこを貫通する回動管5により連結されている。
【0017】
圧送配管4の一部を構成する複数の直管ユニット4Sは、いずれも同じ構造を有しており、以下に、図4〜6を参照して、直管ユニット4Sの構造を詳細に説明すると、この直管ユニット4Sは、両端を開口した直状の直管本体4Saと、その直管本体4Saの開口端にそれぞれ一体に接続される接続部4Sbとより構成されている。接続部4Sbは直管本体4Saよりも肉厚に形成されており、その内端面(直管本体4Saへの接続側端面)の外縁には面取り10が施されている。直管本体4Saの一端面と、接続部4Sbの内端面とは相互に衝合され、その衝合部は、その外周面の全周にわたり溶接wされて直管本体4Saと接続部4Sbとが一体に結合される。
【0018】
図5,6に示すように、接続部4Sbには、溶接w部に隣接して検知部12が形成されている。この検知部12は、この実施例では、接続部4Sbの外周面に周方向に等間隔をあけて形成される複数(4つの)の行き止まりの有底孔よりなる。しかして、この検知部12は、接続部4Sbの残余の部分および直管本体4Saよりも脆弱であって、直管ユニット4S内を流れる生コンクリートにより、先んじて摩耗裂破するようにされている。また、前記接続部4Sbの外周面の軸方向に中間部には、環状の係合溝13が形成されており、この係合溝13には、後述する固定手段としてのジョイントJの係合突部31が係合するようにされている。
【0019】
一方、圧送配管4の他の一部を構成する曲管ユニット(エルボ管ユニット)4Bは、図4,5に示すように、両端を開口した湾曲状の曲管本体4Baと、その両端に溶接wされる接続部4Bbとより構成されており、この接続部4Bbは、前記直管ユニット4Sの接続部4Sbと同一構造に形成されるが、前記検知部12を有しない。
【0020】
なお、この実施例では、曲管ユニット4Bの接続部4Bbには、検出部12を設けていないが、この接続部4Bbにも前記検出部12と同じ構造の検出部を設けてもよい。
【0021】
直管本体4Sと、曲管本体4Bあるいは他の直管本体4Sは、ジョイントJを介して一体に接続される。このジョイントJは枢支軸20をもって開閉自在に枢支連結される、一対の半円状のジョイント半体21,22を備えており、一方のジョイント半体21の自由端には、ナット24を螺合した連結ボルト23が回動自在に連結され、また、他方のジョイント半体22には、連結ボルト23を外側から係合可能なU字溝25が形成されている。また、一対のジョイント半体21,22の内周面にそれぞれ形成した半円状のパッキン溝27,28内には、半円状のゴムパッキン29,30が嵌め込まれ、さらに一対のジョイント半体21,22の内周面の両側には、前記接続部4Sb(4Bb)の係合溝13に係合可能な半円状の係合突部31が一体に形成されている。
【0022】
直管ユニット4Sと他の直管ユニット4S同士、あるいは直管ユニット4Sと曲管ユニット4B同士の前記ジョイントJによる接続構造はいずれも同じであるので、以下に、図5,6を参照して、直管ユニット4Sと曲管ユニット4Bとの接続構造を説明するに、直管ユニット4Sの接続部4Sbの外端面と、曲管ユニット4Bの接続部4Bbの外端面同士を、僅かな間隙をあけて対向させる。つぎに、それらの接続部4Sb,4Bbの外周面をジョイントJにより囲んで、このジョイントJを連結ボルト23により閉じ位置に締結すれば、前記両接続部4Sb,4BbはジョイントJにより一体に連結される。そして、この連結状態ではジョイントJの係合突部31は、両接続部4Sb,4Bbの係合溝13に係合すると共にゴムパッキン29,30は、両接続部4Sb,4Bbの対向端面間を液密に封緘して、直管ユニット4Sと曲管ユニット4Bとは液密に一体化される。しかして、直管ユニット4Sの肉厚の接続部4Sbに形成される、複数の有底孔よりなる検知部12は、ジョイントJの一側面に近づけて設けられており、曲管ユニット4Bから直管ユニット4Sへと生コンクリートが流れるとき、前記検知部12は、残余の部分に先立って摩耗裂破される。
【0023】
また、図4に示すように、直管ユニット4S、4S同士をジョイントJにより連結する場合も、前述の直管ユニット4Sと曲管ユニット4Bとの連結要領と同じである。
【0024】
以上、図3〜6を参照して多段伸縮ブームBより延出する圧送配管4の直管ユニット4Sと曲管ユニット4Bについて具体的に説明したが、シャシフレームFあるいは多段伸縮ブームBに支持されて、相互に接続される各直管ユニット4Sまた曲管ユニット4Bに接続される直管ユニット4Sにも、同様の検出部12が設けられる。
【0025】
つぎに、この実施例の作用について説明する。
【0026】
いま、コンクリートポンプPの運転により、ホッパ6内に投入された生コンクリートは吐出口7を通って圧送配管4へと圧送される。
【0027】
ところで、圧送配管4内の生コンクリートが、図2,3に示すように、上流側に位置する曲管ユニット4BからジョイントJを介して下流側に位置する直管ユニット4S内を流れるときに、その生コンクリートは、遠心力をうけて白線矢印Aに示すように、曲管ユニット4B内をその外側に加圧されながら直管ユニット4Sへと流れるため、該直管ユニット4S側の、曲管ユニット4Bとの接続部付近が最も摩耗しやすくなるが、この実施例のものでは、最も摩耗しやすい直管ユニット4Sの接続部4Sb付近に検知部12を設けているため、図3,4に二点鎖線で示すように、この検知部12の摩耗裂破による生コンクリートの外部への漏れにより、圧送配管4の交換時期を確実に検知することができ、圧送配管4の摩耗破損事故を確実に防止することができる。
【0028】
なお、検知部12の摩耗裂破による生コンクリートの外部への漏れはきわめて微量であるので、その漏れにより危険は全くなく、安全である。
【0029】
また、図4に示すように、上流側の直管ユニット4S(u)と下流側直管ユニット4S(l)とがジョイントJを介して一体に接続されている圧送配管4の部分に、生コンクリートが流れたときには、図4に白線矢印A′に示すように、生コンクリートは両直管ユニット4S(u),4S(l)内を軸線方向に均等に流れるため、それら両直管ユニット4S(u),4S(l)の内面は、生コンクリートの流動により均等に摩耗して、検知部12が他の部分に先行して摩耗することになり、前述の場合ど同様に圧送配管4の摩耗破損事故を確実に防止することができる。
【0030】
なお、圧送配管4の接続態様によって、直管ユニット4Sには、その両端部あるいは一端部に検知部が設けられる。
【0031】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はその実施例に限定されることなく、本発明の範囲内で種々の実施例が可能である。
【0032】
たとえば、前記実施例では、圧送配管の摩耗検知構造をコンクリートポンプ車に搭載したコンクリートポンプ装置に実施した場合を説明したが、これを定置式などの他のコンクリートポンプ装置にも実施できるのは勿論であり、また、直管本体と接続部とを溶接する代わりにそれらをボルトなどの他の固定手段により固定してもよく、また、検知部は、接続部に形成する代わりに直管本体の端部に形成してもよく、さらに、検知部は4箇所に形成する代わりに3箇所あるいは5箇所以上に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】コンクリートポンプ装置における圧送配管の摩耗検知構造を備えたコンクリートポンプ車の側面図
【図2】図1の2矢視のコンクリートポンプ車の平面図
【図3】コンクリートポンプ車の生コンクリートの圧送状態を示す側面図
【図4】図3の仮想線囲い部分の拡大断面図
【図5】図4の仮想線囲い部分の拡大図
【図6】図5の6−6線に沿う断面図
【符号の説明】
【0034】
4・・・・・・・・・・圧送配管
4S・・・・・・・・・直線状の配管ユニット(直管ユニット)
4Sa・・・・・・・・直管本体
4Sb・・・・・・・・接続部
12・・・・・・・・・検知部
J・・・・・・・・・・固定手段(ジョイント)
P・・・・・・・・・・コンクリートポンプ
w・・・・・・・・・・溶接

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートポンプ(P)により圧送配管(4)を通して生コンクリートを圧送するようにしたコンクリートポンプ装置において、
前記圧送配管(4)は、直線状の配管ユニット(4S)を備えており、この配管ユニット(4S)の少なくとも一端部外周面には検知部(12)が設けられ、前記直線状の配管ユニット(4S)内を生コンクリートが流れるとき、前記検知部(12)は、直線状の配管ユニット(4S)の残余の部分に先行して摩耗裂破されるようにしたことを特徴とする、コンクリートポンプ装置における圧送配管の摩耗検知構造。
【請求項2】
前記直線状の配管ユニット(4S)は、直管本体(4Sa)と、その少なくとも一端部に一体に設けられる接続部(4Sb)よりなり、該接続部(4Sb)は、直管本体(4Sa)よりも肉厚に形成されていて、固定手段(J)を介して他の配管ユニットと接続可能であることを特徴とする、前記請求項1記載のコンクリートポンプ装置における圧送配管の摩耗検知構造。
【請求項3】
前記接続部(4Sb)は、直管本体(4Sa)に溶接(w)され、その溶接(w)部に隣接して前記検知部(12)が設けられていることを特徴とする、前記請求項1または2記載のコンクリートポンプ装置における圧送配管の摩耗検知構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−146530(P2007−146530A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−343585(P2005−343585)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(000163095)極東開発工業株式会社 (215)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】