説明

コンクリート充填状況検査方法

【課題】コンクリート建造物の建設作業において、簡便で、正確で、信頼性が高く、且つ安価で経済性が高いコンクリート充填状況検査方法を提供する。
【解決手段】コンクリート建造物建設の施工時に、表面に金属鉄を有する資材102を用いてコンクリート充填空間を形成する工程と、金属鉄と自然電位が異なった導電部材からなる電極板114の複数をコンクリート充填空間内に間隔を有して配置する工程と、コンクリート充填空間内にフレッシュコンクリート105を充填した状態で、表面に金属鉄を有する資材102と電極板114との間に発生する電位差を電位差測定手段110を用いて測定することによりフレッシュコンクリート105の充填状況を検査する工程と、を有するコンクリート充填状況検査方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート充填状況検査方法に係り、より詳しくは、コンクリート建造物の建設作業において、簡便で、正確で、信頼性が高く、且つ安価で経済性が高いコンクリート充填状況検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート建造物は、通常、必要に応じて鉄筋や鉄骨等を建設し、コンクリート型枠を用いてコンクリート充填空間を形成し、そこにフレッシュコンクリートを充填し、固化・養生して建造される。しかし、充填するフレッシュコンクリートは流動性が悪いため、フレッシュコンクリートの内部に空隙が発生しやすい。コンクリートの内部に空隙が存在すると、強度不足などの重大な問題が発生する。頑丈なコンクリート型枠の内部に存在するフレッシュコンクリートが正しく充填されているか否かを検出するのは困難である。
【0003】
フレッシュコンクリートが正しく充填されているかどうかを検査する従来の第1の方法として、フレッシュコンクリートの水分を検出する電気抵抗センサーを用いる方法が報告されている(例えば特許文献1参照)。
図10は、フレッシュコンクリートの水分を検出する従来装置を示す。検査装置2は、コンクリートの打設空間に所定の間隔をおいて配置した複数の電気抵抗センサー1と、乾電池8と、検出装置16と、から成る。ここで電気抵抗センサー1は、間隔をおいて設けられた一対のゲージ端子1a、1bと、ゲージ端子1a、1b間に接続された抵抗器7と、からなる。乾電池8は各電気抵抗センサー1のゲージ端子1a、1b間に一定の電圧を印加する。検出装置16は多点切替スイッチ9と、検出器10と、パソコン11と、を有している。
【0004】
この装置では、各電気抵抗センサー1がフレッシュコンクリートに接して湿潤した時のゲージ端子1a、1b間の抵抗値の変化を順次検出し、各電気抵抗センサー1が設置された場所にフレッシュコンクリートが充填されたか否かを検査する。
【0005】
フレッシュコンクリートが正しく充填されているかどうかを検査する従来の第2の方法として、固有振動数の異なる2つの圧電素子を並列接続してなる圧電スピーカーを用いてフレッシュコンクリートに振動を与え、フレッシュコンクリートの固有振動数の周波数変化を利用してフレッシュコンクリートが充填されたか否かを検査する方法が開示されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−197467号公報
【特許文献2】特開2003−194615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フレッシュコンクリートの水分を検出する第1の方法は、正常なフレッシュコンクリートの充填による本来の信号と、岩盤からの漏水及びブリーディング状態のフレッシュコンクリートによるノイズ信号と、の判別ができず信頼性に欠けるという問題点がある。周波数特性の変化を利用する第2の方法は、装置が高価であり、コンクリートを充填する際に用いるバイブレータで圧電素子及び受信装置が破壊されるという問題点がある。
フレッシュコンクリートが正しく充填されているかどうかを作業中もしくは作業終了直後に検査し、空隙を検出した場合にはフレッシュコンクリートが固化し始める前に、再充填やエア抜きなどの作業が行えるような、簡便で信頼性のあるコンクリート充填状況検査方法及の開発が望まれている。
本発明は、コンクリート建造物の建設作業において、簡便で、正確で、信頼性が高く、且つ安価で経済性が高いコンクリート充填状況検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコンクリート充填状況検査方法は、コンクリート構造物建設の施工時に、金属鉄の表面を有する資材(以下鉄製資材と略記する)を用いてコンクリート充填空間を形成する工程と、金属鉄と自然電位が異なった導電部材からなる電極板の複数を前記コンクリート充填空間内に間隔を有して配置する工程と、コンクリート充填空間内にフレッシュコンクリートを充填した状態で、鉄製資材と電極板との間に発生する電位差を測定することによりフレッシュコンクリートの充填状況を検査する工程と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のコンクリート充填状況検査方法は、コンクリート構造物建設の施工時に、金属鉄の表面を有する資材(以下鉄製資材と略記する)を用いてコンクリート充填空間を形成する工程と、金属鉄と自然電位が異なった導電部材からなる電極板及び圧力変化を電位差によって検出する圧力センサーを併設した状態とし、その複数を前記コンクリート充填空間内に間隔を有して配置する工程と、前記コンクリート充填空間内にフレッシュコンクリートを充填した状態で、前記鉄製資材と前記電極板との間に発生する電位差及びコンクリート充填空間内の圧力変化に基づく電位差を測定することによりフレッシュコンクリートの充填状況を検査する工程と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、電極板の電位差の経時的な変化を計測し、電極板電位差の変化パターンに基づいて鉄製資材と電極板との間のフレッシュコンクリートの充填が正常状態であるかブリーディング状態であるかを判別することができる。
【0011】
更に本発明は、電極板の電位差の経時的な変化及びコンクリート型枠と電極板との間に充填されたフレッシュコンクリートの強度の経時的な変化から、電極板の電位差とコンクリートの強度との相関係数を算出し、相関係数に基づいて、電極板電位差から前記コンクリートの強度を算定することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コンクリート充填空間内にフレッシュコンクリートを充填した時に発生する金属鉄と電極板との間に発生する電位差を測定する金属充填センサーにより電極板の周囲のフレッシュコンクリート充填状態を正確にしかも信頼性が高い状態で検査することができる。
また、電位差の時間的な変化パターンを測定することにより、電極板周囲のフレッシュコンクリートがブリーディング状態であるか否かを判別することができる。
更に、電位差の経時的な変化と、充填されたフレッシュコンクリートの強度の経時的な変化の相関係数を算出し、電位差からコンクリートの強度を算定することができる。
【0013】
また、本発明によれば、金属充填センサー(単位充てんセンサー)160によりコンクリートがシート面まで充填されたことが感知できるのに加え、圧力センサー161を金属充填センサー160と同一面に設置することで、コンクリートが地山まで確実に充填されたことが確認できる。
圧力センサー161を金属充填センサー160と同一面に設置することで、コンクリート圧力管理が要求される場合、当該部分の充填性が二重に確認できる。
また、圧力センサー161は、一般の土圧計と比べサイズが極めて小さく安価であるほか、金属充填センサー160と同じ計測器で同時に監視することができる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明で用いるコンクリート充填状況検査方法の動作原理を示す模式図である。
【図2】電極板を備えた電極部材を示す図である。
【図3】本発明に適用可能な検査装置の一例を示す配線図である。
【図4】コンクリート充填状況を検査するためのモデル試験装置の断面図である。
【図5】モデル試験装置を用いた試験結果を示すグラフである。
【図6】ブリーディング状態を検査するためのモデル実験装置の断面図である。
【図7】モデル試験装置を用いて、ブリーディングを発生させた場合のグラフである。
【図8】電位差の変化とコンクリートの固化状態の関係を示すグラフである。
【図9】本発明のコンクリート充填状況検査方法を用いたトンネル施工における鋼鉄製コンクリート型枠及び電極板の設置場所を示す断面図である。
【図10】従来の検査装置を示す配線図である。
【図11】本発明の圧力センサー161を金属充填センサー160と同一基板に設置した例を示す図である。
【図12】本発明に適用した圧力センサー161の圧力と電位の関係を示す図である。
【図13】本発明の同一基板に設置した圧力センサー161と金属充填センサー160を山岳トンネルの防水シートに貼り付けた状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付した図面を参照して本発明について説明する。
まず、鉄製資材と電極板との間に発生する電位差を測定することによりフレッシュコンクリートの充填状況を検査する方法について説明する。
本発明のコンクリート充填状況検査方法は、金属鉄の表面を有する資材を用いたコンクリート充填空間を形成する工程を有する。鉄製資材は、少なくとも表面の一部にリード線を連結可能な金属鉄が露出している資材であって、鉄筋、鉄骨、埋め込みボルト又は鉄製コンクリート型枠を例示することができる。本発明では1種以上の鉄製資材を用いることができる。
【0016】
次いで本発明は、金属鉄と自然電位が異なった導電電部材からなる電極板の複数を前記コンクリート充填空間内に間隔を有して配置する工程と、コンクリート充填空間内にフレッシュコンクリートを充填した状態で、鉄製資材と前記電極板との間に発生する電位差を測定することによりフレッシュコンクリートの充填状況を検査する工程と、を有する。
【0017】
図1は、本願発明で用いるコンクリート充填状況検査方法の動作原理を示す模式図である。図1に示すように、本発明のコンクリート充填状況検査方法は、自然電位が高い導電部材によって形成された電極22及び自然電位が低い導電部材によって形成された電極24がフレッシュコンクリート26に浸漬され、2個の電極22、24の間に好ましくは電圧計20が接続される。ここで、フレッシュコンクリート26が電解質として作用するため、2個の電極22、24の間に電位差が生じ、電流が電極22から電極24に流れる。電圧計20は、この電位差を測定するものである。電位差が生じない場合は、電極22と電極24との間の電気回路に断点(空隙)があることを示す。これによって充填されたフレッシュコンクリート26に空隙が生じているか否かを検出することができる。
【0018】
本発明においては、一方の電極として鉄を含む金属(以下単に鉄と略記する)からなる資材の1以上を用い、他方の電極として鉄と自然電位が異なった導電部材を用いる。電極板は、鉄よりも自然電位が高い導電部材又と自然電位の低い導電部材とのいずれをも用いることができる。
【0019】
電極板の導電部材は、鉄との自然電位の差が大きい導電部材を用いることが好ましい。鉄を自然電位の低い導電部材24として用いる場合は、自然電位の高い導電部材22として金、銀、白金、銅などの金属、ステンレス鋼などの合金、及び炭素を選択できる。鉄を自然電位が高い導電部材22として用いる場合は、自然電位が低い導電部材24としてアルミニウム、亜鉛、などの金属を選択できる。
【0020】
導電部材としての物性、加工性、価格などの観点から、好ましい導電部材の例として銅、アルミニウム、ステンレス鋼、及び炭素を選択することができ、更に好ましくはアルミニウム及び炭素を選択できる。
【0021】
図2は、電極板を備えた電極部材を示す図である。電極部材106は、電位差測定手段110に接続されるリード線112と、リード線112に接続された電極板114と、測定部位に貼付可能な接着部116と、を備えることが好ましい。電極板114は、金属箔または導電部材の薄片からなり、リード線112は電位差を測定するために設けるのであるから電流量は微少であり、抵抗が少ない材質であれば極細な電線を用いることができる。なお、図2において引き出し線を点線で示したように、接着部116は裏側にある。
【0022】
図3は、本発明に適用可能な検査装置の一例を示す配線図である。検査装置100は、鉄製資材102と複数の電極板114とが対向してフレッシュコンクリート105に浸漬されて配置される。鉄製資材に接続されたリード線112a及び電極板に接続されたリード線112bは電位差測定手段110に接続される。複数の電極板114夫々を、制御端末118によって制御される多点切り替えスイッチ120に連結し、夫々の電極板114の電位差を順次、且つ経時的に繰り返し計測できるように配備することが好ましい。
【0023】
図3に示すように、検査装置100は、一種の電池構造となっている。従って電位差測定手段110は、鉄製資材102と電極板114の間に電位差が生じた電流を検出できる手段であれば何れでも良く、電圧計、電位差計、電流計、電球、電磁石等を選択できる。検査装置100は全体が内部抵抗の大きい電池なので、電流計、電球、電磁石等のように内部抵抗が小さな測定装置は測定時に電流が生じて電圧が降下し、測定値が不正確になることがある。従って、電位差測定手段110としては、電圧計や電位差測定計のように内部抵抗の高い測定機器が好ましい。またこれらの測定機器はデジタル化された装置が好ましい。
【0024】
また本発明によれば、前記電位差の経時的な変化を計測し、電位差の変化パターンに基づいて鉄製資材と前記電極板との間のフレッシュコンクリートの充填が正常状態であるかブリーディング状態であるかを判別するができる。
【0025】
即ち、検査装置100は電池構造となっているので、鉄製資材102と電極板114の間の電位差は電解液であるフレッシュコンクリート105の性状に影響を受ける。フレッシュコンクリート105はpH11の電解質溶液を含む。
鉄製資材102と電極板114の間に岩盤から漏れた水が存在する場合の電位差は、フレッシュコンクリートが存在する場合と大きく異なり、容易に判別することができる。
【0026】
鉄製資材102と電極板114の間の電位差の経時的なパターンを解析することによって、より詳細なフレッシュコンクリートの状態を測定することができる。ブリーディング状態のフレッシュコンクリートの、鉄製資材102と電極板114との間で発生する電位差は、充填直後から15分前後までの間に、正常なフレッシュコンクリートより電位差が小さく且つ不安定なパターンを示し、正常状態のフレッシュコンクリートと容易に判別することができる。
【0027】
更に本発明によれば、電位差の経時的な変化及び前記コンクリート型枠と前記電極板との間に充填されたフレッシュコンクリートの強度の経時的な変化から、前記電位差とコンクリートの強度と相関係数を算出し、前記相関係数に基づいて、前記電位差から前記コンクリートの強度を算定することができる。
【0028】
正常なフレッシュコンクリートの鉄製資材102と電極板114の間の電位差は、時間が経過すると徐々に低下するが、電位差の低下とコンクリートの強度の増大とは相関関係があることが判明した。この関係を利用して前記電位差から充填したコンクリートの硬度を算定し、コンクリート型枠を取り外す時期を判断することができる。
【0029】
次に、鉄製資材と電極板との間に発生する電位差及びコンクリート充填空間内の圧力変化に基づく電位差を測定することによりフレッシュコンクリートの充填状況を検査する方法について説明する。
山岳トンネルの防水シート面には、通常「たるみ」が生ずる。
図13は、本発明の同一基板に設置した圧力センサー161と金属充填センサー160からなる圧力・金属充填センサー170を山岳トンネルの防水シートに貼り付けた状況を示す図であり、防水シートが垂れている状況が分かる。
防水シートが垂れている状態で金属充填センサー160がコンクリートと接触(充填感知)すると、金属充填センサー160は充填完了の信号を出して充填を感知することになるが、トンネル地山までフレッシュコンクリートが押しつけられない段階では充填が完了したことにはならない。
このように、山岳トンネルの二次覆工の防水シート面が重力により湾曲(垂れ下がって)している場合のコンクリート充填確認を行うために、金属充填センサー160を用いたコンクリート充填状況検査方法に加え、圧力センサー161を設置することでコンクリート充填状況確認の信頼性が大幅に向上する。
【0030】
山岳トンネル二次覆でコンクリート充填圧力を検知することは土圧計を型枠妻部やセントルスキンプレートに設置することで可能であった。しかし、この場合の検知圧力はコンクリートが地山面を押す圧力を正確には表示していなかった。また、従来技術では、コンクリート充填確認センサーと同一面で充填圧力を確認できる方法はなかった。
金属充填センサー160部に土圧計を設置すればコンクリート充填圧力の計測は理論的には可能であるが、サイズが非常に大きく同一面での計測は不可能であった。更に土圧計は高価で使い捨てとなり、土圧計を繰返作業の多い施工現場で採用することはできなかった。
また、小型の歪ゲージ等を使い圧力を測定する場合、アンプ等が必要となりゲージ費用の他に計測器も高価となる欠点があった。
【0031】
本発明は、金属充填センサー160と共通基盤162上に超小型で安価な圧力センサー161を設置してコンクリート充填状況を確認できるようにしたものである。
金属充填センサー160によりコンクリートがシート面まで充填されたことを感知するのに加え、圧力センサー161を金属充填センサー160と同一面である共通基盤162に設置することで、コンクリートが地山まで確実に充填されたことが確認できる。
【0032】
圧力センサー161は、金属充填センサー160と同一面で圧力を計測するために、共通基盤162上に設置できるものを使用する。
図11は、金属充填センサー160と圧力センサー161を共通基盤162上に設置した状況を示す図である。図11に示す通り、共通基盤162の上に圧力センサー161と金属充填センサー160を並べ、これをリード線163で共有監視装置に連結する。
本発明の実施例で使用した圧力センサー161は、圧力の増加に伴って、電気的抵抗値が減少する特性を利用するもので、高分子厚膜フィルムからなっている。超小型、安価であるため使い捨てセンサーとして活用が可能である。
当該圧力センサー161は圧力素子としての挙動を示すが、歪ゲージのような回路・アンプを必要とせず、サイズが小さいため金属センサーと共通基盤162上にて圧力が計測可能なものである。
圧力センサー161は荷重が加わると抵抗が減少する。圧力センサー161に例えば5Vの直流電圧を印加すると、荷重の変化により出力電位(mV)が変化する。コンクリート充填圧を同定するために、予め荷重と出力電位の検定曲線を作製しておく。
図12は、圧力センサー161の検定曲線を示す。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明を説明する。
(実施例1)
図4は、コンクリート充填状況を検査するためのモデル試験装置の断面図である。図4に示すように、モデル試験装置150は(長さ)1800×(高さ)400×(奥行き)100(mm)の直方体の箱であって、底面に鉄板104を有し、その他の面はコンクリート型枠108によって形成され、長尺方向の一端にフレッシュコンクリートの投入口を有し、長尺方向の他端から900、500、100(mm)の位置の上面に、表面がアルミニウム箔で形成された3個の電極板154を設けた。それぞれの電極板154を第1電極板、第2電極板、及び第3電極板とする。鉄板104及び各電極板154から延引したリード線を図3に示した電位差測定手段110及び多点切り替えスイッチ120に連結した。この装置を用いて鉄板104と各電極板154の電位差を1秒毎に測定した。
【0034】
図5は、モデル試験装置を用いた試験結果を示すグラフである。図5に示すように、フレッシュコンクリートが充填されるに従って、第1電極板から第3電極板へ、順次約0.5Vの電位差が発生し、フレッシュコンクリートが第1電極板の位置から第3電極板の位置へ正常に充填されていく状況が示された。
【0035】
(実施例2)
図6は、ブリーディング状態を検査するためのモデル実験装置の断面図である。図6に示すように、モデル実験装置153は、3個の、直立した(内径)100×(高さ)200(mm)のプラスチック製円筒の容器151であって、各々の容器151は、底面に鉄板152を有し、内壁に表面がアルミニウム箔で形成された電極板154を有し、鉄板152と電極板154との間の電位差を測定する電位差測定手段110を連結した。
【0036】
図7は、モデル試験装置を用いてブリーディングを発生させた場合のグラフである。
図6に示す3個の容器151の内、第1及び第2容器には正常なフレッシュコンクリートを投入し、第3容器にはブリーディングが発生する条件のフレッシュコンクリートを投入した。図7に示すように、第3容器の電位差の変化のパターンは他の2個の容器(第1容器及び第2容器)の電位差の変化のパターンと比べて明らかに異なり、容易に見分けることができた。
【0037】
図8は、電位差の変化とコンクリートの固化状態の関係を示すグラフである。左側の縦軸はコンクリート強度を示し、右側の縦軸は鉄板152と電極板154の電位差を示し、横軸は経過時間(日)を示す。
図6に示すモデル試験装置153を用い、上記実施例2で用いたのと同じ正常なフレッシュコンクリートを投入してフレッシュコンクリートの充填試験を行い、電位差の変化及びコンクリートの強度の変化を7日間測定した。コンクリートの強度はアムスラー試験機を用いて測定した。
図8に示すように、電位差の変化とコンクリートの強度の変化とは相関関係があることが見出された。この関係を利用して、充填したコンクリートの硬度を算定し、コンクリート型枠を取り外す時期を判断することができた。
【0038】
(実施例3)
図9は、本発明のコンクリート充填状況検査方法を用いたトンネル施工における鋼鉄製コンクリート型枠及び電極板の設置場所を示す断面図である。
トンネル坑121を掘削し、掘削面122に支保作業を施した後、鋼鉄製コンクリート型枠(以下セントル123と記す)を設置してコンクリート充填空間127を形成した。
【0039】
コンクリート充填空間127を形成後、フレッシュコンクリートを充填する前に、電極面がアルミニウムで形成された複数の電極板128を掘削面122に配置した。フレッシュコンクリートの空隙を見逃がさないためには、電極板128は密に配置することが好ましい半面、経済性及び作業性の見地からは電極板128の数は少ない方が好ましい。本実施例では、トンネル坑121の中央最上部に当たる天端部124と、天端部124から左右に30〜60°回転させた左右の肩部125と、の3か所に電極板128を設けた。また、トンネル坑121の長軸方向においては電極板128を0.5〜10mの間隔で設置した。
【0040】
トンネル坑121の一つの断面に設置する電極板128の位置及びトンネル坑121の長軸方向に設置する電極板128の個数は上記の範囲で適宜変更が可能であった。
複数の電極板128から延伸した多数のリード線129を纏めて束にし、例えば排水溝などを通じて延伸し、電位差測定手段130に連結した。
【0041】
次いでセントル123と掘削面122との間のコンクリート充填空間127にフレッシュコンクリートを充填した。充填作業中にセントル123と各電極板128との間の電位差の変化を測定し、各電極板128間の周囲にフレッシュコンクリートが正常に充填されたか否かを検査した。データの解析はリアルタイムで行うことができ、測定値に異常が認められた場合は直ちにフレッシュコンクリートを追加充填すると共に、バイブレータを用いてフレッシュコンクリートの再充填を行った。ブリーディングは観察されなかった。
【0042】
コンクリートを7日間かけて養生したのち、セントル123を脱型した。脱型後のコンクリートには充填不良個所は検出されなかった。
なお、単位作業工程当たり所定の距離を移動しながらセントル123を設置し、後にセントル123を脱型する長大なセントル台車を設けて作業を連続化することができた。
【0043】
(実施例4)
図11に本実施例で使用した圧力・金属充填センサー170を示す。
圧力・金属充填センサー170は、金属充填センサー160と同一面で圧力を計測するために、共通基盤162上に設置し、金属充填センサー計測線(1芯)と圧力センサー計測線(2芯)を3芯のリード線163の1本にまとめた。
センサー裏面には両面テープを設置することで、センサーを山岳トンネルシート面に貼付ける際、施工が容易になるようにした。
【0044】
以下、コンクリート充填確認の手順を説明する。
(1)トンネル掘削終了後、圧力・金属充填センサー170を防水シート面に貼付る。
(2)コンクリート打設に伴い、コンクリートと金属充填センサー160が反応して、当該部までのコンクリート到達が確認できる。
(3)さらに充填が進み、覆工コンクリートが防水シートを押上げ、地山面まで達すると圧力センサー161が反応し確実に充填されたことが分かる。
(4)圧力センサー161の計測器は金属充填センサー160の計測器回路が兼用できるので金属充填センサー計測器と同一装置内にコンパクトに収納可能である。
(5)図12に圧力センサー161の検定曲線を示す。覆工コンクリートが防水シートを押上げ、地山面まで達すると、当該検定曲線で検知できる。
【0045】
実施例4で、圧力センサー161は、金属充填センサー160と同一面で圧力を計測するために、共通基盤162上に設置したが、要求仕様等に依っては分離して個別に設置するようにしてもよい。
圧力センサー161を金属充填ンセンサー160と共通基盤162に設置するとともに、金属センサー計測線(1芯)と圧力センサー161計測線(2芯)を3芯のリード線163の1本にまとめ、樹脂系接着剤にて防水処理を施すとともにセンサー裏面に両面テープを貼り付けることで、センサーを山岳トンネルシート面に貼付の際のセンサー配線作業の軽減を図った。
【0046】
通常、センシング部からの計測線は切羽側セントル妻部を通して配線される。 コンクリート打設に当たって、作業員は充填状況を確認するためにしばしば妻部をハンマー等で打撃し、打撃音により妻部の充填性を確認している。
作業員による妻部のハンマ−打撃の際、しばしば計測線が断線する事例が発生していたが、計測線を太径の電線にして強度を上げればこの問題は解消できるものの、施工性が悪くなり計測線価格上昇等の問題もあって採用できなかった。
金属充填センサー160及び圧力センサー161は出力を電位(mV)で計測するため、必ずしも銅電線を使う必要がないため、本実施例では、小径で強度のある鋼線(例えばナイロン被覆ステンレスワイヤーロープ)を計測線であるリード線163として使用することにより破断の問題を解決した。
また、金属充填センサー160および圧力センサー161は出力として電位(mV)を計測するため、計測回路を共有し、表示を切替えによりコンパクトな監視装置1台にすることができた。
【0047】
本発明では、金属充填センサー160と圧力センサー161を同一面に設置することで、コンクリートの充填性が二重に確認できるようになり、コンクリート圧力管理の信頼性を高めることが出来るとともに、一般の土圧計と比べ、サイズが極めて小さく、安価であること、金属充填センサー160の監視盤(装置)と同じ計測器で同時に監視可能とすることで、経費節減が可能になるとともに作業性が大幅に向上した。
【符号の説明】
【0048】
20 電圧計
22 自然電位の高い導電部材、電極
24 自然電位の低い導電部材、電極
26 フレッシュコンクリート
100 検査装置
102 鉄製資材(金属鉄の表面を有する資材)
104 鉄板
105 フレッシュコンクリート
106 電極部材
108 コンクリート型枠
110 電位差測定手段
112 リード線
112a 鉄製資材に接続されたリード線
112b 電極板に接続されたリード線
114 電極板
116 接着部
118 制御端末
120 多点切り替えスイッチ
121 トンネル坑
122 掘削面
123 セントル(鋼鉄製コンクリート型枠)
124 天端部
125 肩部
126 中点
127 コンクリート充填空間
128 電極板
129 リード線
130 電位差測定手段
150 モデル試験装置
151 容器
152 鉄板
153 モデル実験装置
154 電極板
160 金属充填センサー
161 圧力センサー
162 共通基盤
163 リード線
170 圧力・金属充填センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物建設の施工時に、金属鉄の表面を有する資材(以下鉄製資材と略記する)を用いてコンクリート充填空間を形成する工程と、
金属鉄と自然電位が異なった導電部材からなる電極板の複数を前記コンクリート充填空間内に間隔を有して配置する工程と、
前記コンクリート充填空間内にフレッシュコンクリートを充填した状態で、前記鉄製資材と前記電極板との間に発生する電位差を測定することによりフレッシュコンクリートの充填状況を検査する工程と、を備えていることを特徴とするコンクリート充填状況検査方法。
【請求項2】
コンクリート構造物建設の施工時に、金属鉄の表面を有する資材(以下鉄製資材と略記する)を用いてコンクリート充填空間を形成する工程と、
金属鉄と自然電位が異なった導電部材からなる電極板及び圧力変化を電位差によって検出する圧力センサーを併設した状態とし、その複数を前記コンクリート充填空間内に間隔を有して配置する工程と、
前記コンクリート充填空間内にフレッシュコンクリートを充填した状態で、前記鉄製資材と前記電極板との間に発生する電位差及びコンクリート充填空間内の圧力変化に基づく電位差を測定することによりフレッシュコンクリートの充填状況を検査する工程と、を備えていることを特徴とするコンクリート充填状況検査方法。
【請求項3】
前記電極板の電位差の経時的な変化を計測し、前記電極板電位差の変化パターンに基づいて前記鉄製資材と前記電極板との間のフレッシュコンクリートの充填が正常状態であるかブリーディング状態であるかを判別することを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート充填状況検査方法。
【請求項4】
前記電極板の電位差の経時的な変化及び前記コンクリート型枠と前記電極板との間に充填されたフレッシュコンクリートの強度の経時的な変化から、前記電極板の電位差とコンクリートの強度と相関係数を算出し、前記相関係数に基づいて、前記電極板電位差から前記コンクリートの強度を算定することを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート充填状況検査方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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