説明

コンクリート塊摩砕装置

【課題】コンクリート塊の骨材からセメントモルタル分を効率よく除去でき、かつ常時安定した運転状態が得られるコンクリート塊摩砕装置を提供することである。
【解決手段】コンクリート塊Aの摩砕室6からの排出を規制する排出量規制板7を偏心回転する筒状ロータに取り付けることにより、コンクリート塊Aの流動性を高めて、摩砕室6排出口と排出量規制板7との間を閉塞しにくくするとともに、排出量規制板7の外周縁に設けた堰8の高さを摩砕処理されるコンクリート塊Aの粒度等の運転条件に応じて調節することにより、排出量規制板7上のコンクリート塊A滞留量を調整し、摩砕室6のコンクリート塊A充填密度を十分に高められるようにしたのである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート廃材から得られるコンクリート塊を、圧縮力を加えながら互いに摩擦接触させて、その骨材からセメントモルタル分を除去するコンクリート塊摩砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート廃材は建設廃棄物の中で大きな割合を占めているが、これを破砕して得られるコンクリート塊は、吸水率の高いセメントモルタル分が多く付着しているため、そのままでは高い品質が求められる構造体コンクリート用骨材としては使用できず、再利用の用途が路盤材や埋め戻し材等に限られていた。
【0003】
そこで、コンクリート廃材から得られるコンクリート塊を、構造体コンクリート用骨材に再利用できるように、圧縮力を加えながら互いに摩擦接触させ(以下、この作用を「摩砕」という。)、その骨材からセメントモルタル分を除去するコンクリート塊摩砕装置が種々開発されてきた。例えば、特許文献1には、ケーシングの鉛直筒部内に設けた偏心回転軸に筒状ロータを回転自在に取り付けて、鉛直筒部と筒状ロータとの間に環状の摩砕室を形成し、この摩砕室の下方に摩砕室に充填されたコンクリート塊の排出を規制する排出量規制板を設けて、摩砕室に充填されるコンクリート塊を筒状ロータの偏心回転により摩砕する装置が記載されている。
【特許文献1】特開2003−299973号公報
【0004】
上記特許文献1に記載された摩砕装置では、排出量規制板を筒状ロータに取り付けて、筒状ロータの偏心回転で排出量規制板を常に揺さぶることにより、コンクリート塊の流動性を高め、摩砕室下端の排出口と排出量規制板との間が閉塞しないようにしている。また、この種の摩砕装置においてセメントモルタル分の除去率を高めるには、摩砕室におけるコンクリート塊の充填密度を高めて、コンクリート塊どうしを十分に摩擦接触させることが重要となるため、排出量規制板の外周縁に上方に突出する堰を設けることにより、排出量規制板上に滞留するコンクリート塊の量を増やして、摩砕室におけるコンクリート塊充填密度の向上を図っている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の摩砕装置では、排出量規制板が筒状ロータの偏心回転によって揺さぶられるため、コンクリート塊の流動性が良すぎて、摩砕室排出口と排出量規制板との間が閉塞しにくいかわりに、期待されるように摩砕室のコンクリート塊充填密度を高めることができず、セメントモルタル分の除去率が必ずしも高くならない場合がある。これに対して、鉛直筒部の下端を排出量規制板に接近させたり堰を高いものと交換したりすれば、コンクリート塊の充填密度は高められるが、摩砕室排出口と排出量規制板との間が閉塞しやすくなり、運転状態が不安定になるおそれがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、コンクリート塊の骨材からセメントモルタル分を効率よく除去でき、かつ常時安定した運転状態が得られるコンクリート塊摩砕装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、ケーシングの鉛直筒部内に設けた偏心回転軸に筒状ロータを回転自在に取り付けて、前記鉛直筒部と筒状ロータとの間に環状の摩砕室を形成し、この摩砕室の下方に摩砕室に充填されたコンクリート塊の排出を規制する排出量規制板を設けて、前記摩砕室に充填されるコンクリート塊を、前記筒状ロータの偏心回転により圧縮力を加えながら互いに摩擦接触させ、その骨材からセメントモルタル分を除去するコンクリート塊摩砕装置において、前記排出量規制板を前記筒状ロータに取り付け、この排出量規制板の外周縁に上方に突出する堰を設けて、その堰の高さを調節可能とした構成を採用した。
【0008】
すなわち、偏心回転する筒状ロータにコンクリート塊の摩砕室からの排出を規制する排出量規制板を取り付けることにより、コンクリート塊の流動性を高めて、摩砕室排出口と排出量規制板との間を閉塞しにくくするとともに、排出量規制板の外周縁に設けた堰の高さを摩砕処理されるコンクリート塊の粒度等の運転条件に応じて調節することにより、排出量規制板上のコンクリート塊滞留量を調整し、摩砕室のコンクリート塊充填密度を十分に高められるようにしたのである。
【0009】
また、前記ケーシングの鉛直筒部を昇降可能とすれば、鉛直筒部を堰の高さに応じて昇降させることにより、堰の高さによらずコンクリート塊の排出量規制板からの流出量を安定させて、コンクリート塊充填密度の向上と、摩砕室排出口と排出量規制板との間の閉塞の防止をより確実に両立することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のコンクリート塊摩砕装置は、上述したように、偏心回転する筒状ロータに排出量規制板を取り付け、その外周縁に設けた堰の高さを調節可能としたものであるから、摩砕室排出口と排出量規制板との間が閉塞しにくく常時安定した運転状態が得られ、かつ摩砕室のコンクリート塊充填密度を十分に高めて、コンクリート塊の骨材からセメントモルタル分を効率よく除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。このコンクリート塊摩砕装置は、図1に示すように、ケーシング1の上部が別体の鉛直筒部材2で形成され、ケーシング1の中心に設けられた回転軸3の上部が偏心軸部3aとされて鉛直筒部材2に挿入され、この偏心軸部3aに筒状ロータ4が軸受5で回転自在に取り付けられて、鉛直筒部材2と筒状ロータ4との間に環状の摩砕室6が形成されている。
【0012】
摩砕処理されるコンクリート塊は、鉛直筒部材2の上方から投入され、摩砕室6に充填される。環状の摩砕室6の内周壁を形成する筒状ロータ4は、内ロータ4aとライナを兼ねた外ロータ4bとからなり、内ロータ4aの下端外周側に、摩砕室6に充填されたコンクリート塊の排出を規制する排出量規制板7が取り付けられている。なお、筒状ロータ4の下部に外側への傾斜面を設けたのは、摩砕室6に充填されるコンクリート塊の落下を抑制するためである。
【0013】
図2に示すように、前記排出量規制板7は、内ロータ4a外周に嵌め込まれる内板7aと、内板7aにボルト止めされる外板7bとからなり、外板7bの外周縁に上方に突出する堰8が設けられている。この堰8は、その下端部内周に形成された環状突部8aが筒状のスペーサ9を介して排出量規制板7の外板7bにボルト止めされており、スペーサ9の長さを変えることにより高さを調節して排出量規制板7上のコンクリート塊Aの滞留量を調整できるようになっている。
【0014】
前記回転軸3は、ケーシング1の内側に張り出す支持部10に軸受11で回転自在に支持され、その下端に取り付けられたプーリ12に、Vベルト13を介してモータ14の回転力が伝達されるようになっている。
【0015】
前記鉛直筒部材2は、油圧シリンダ15で昇降可能とされており、図2に示すように、その下端外周縁と堰8の上端内周縁の間の距離(L)、すなわち排出量規制板7から流出するコンクリート塊Aの通路の幅を調節できるようになっている。また、万が一、摩砕室6排出口と排出量規制板7との間が閉塞されても、鉛直筒部材2を上昇させるのみで、摩砕装置の運転を停止することなく閉塞を解消することもできる。
【0016】
次に、この摩砕装置の摩砕作用について説明する。前記筒状ロータ4は回転軸3の回転に伴って偏心回転するので、環状の摩砕室6の半径方向間隙は各周方向位置で連続的に拡縮する。従って、この拡縮する間隙に充填されたコンクリート塊は、圧縮力を受けながら互いに摩擦接触し、その骨材からセメントモルタル分が除去される。なお、このとき、筒状ロータ4はコンクリート塊でその回転を規制されるので、コンクリート塊の流動に伴って回転軸3の回転方向と逆方向に低速で回転する。
【0017】
上記摩砕室6での摩砕により分離された骨材とセメントモルタル分は、排出量規制板7上で一旦滞留した後、堰8を乗り越えて排出コンベヤ16上に落下し、排出コンベヤ16で図示省略した振動篩や風篩に送られて篩い分けられる。
【0018】
このコンクリート塊摩砕装置は、上記の構成であり、前述の従来装置と同様、偏心回転する筒状ロータ4に排出量規制板7を取り付けており、排出量規制板7の揺さぶりで摩砕室6に充填されたコンクリート塊の流動性が高められるので、摩砕室6排出口と排出量規制板7との間が閉塞しにくい。しかも、排出量規制板7の外周縁に設けた堰8の高さが調節可能となっているので、堰8の高さをコンクリート塊の粒度等の運転条件に応じて調節することにより、排出量規制板7上のコンクリート塊の滞留量を調整し、摩砕室6のコンクリート塊充填密度を高めて、コンクリート塊の骨材からセメントモルタル分を効率よく除去することができる。
【0019】
さらに、鉛直筒部材2が昇降可能となっているので、運転状態によって堰8の高さを変えたときも、これに応じて鉛直筒部材2を昇降させることにより、コンクリート塊の排出量規制板7からの流出量が大きく変化しないようにして、摩砕室6排出口と排出量規制板7との間の閉塞の防止とコンクリート塊充填密度の向上を両立することができる。
【0020】
すなわち、図3に示すように、図2の状態から堰8を高くしてコンクリート塊の充填密度をさらに高めようとするときは、堰8の高さ変更分とほぼ同じ高さだけ鉛直筒部材2を上昇させる。このようにすれば、鉛直筒部材2下端外周縁と堰8上端内周縁の間の距離(L’)が図2の場合(L)とほぼ同じになるので、堰8を高くしてもコンクリート塊の排出量規制板7からの流出量が大きく減少することはなく、摩砕室6排出口と排出量規制板7との間が閉塞しにくい状態を保持することができる。一方、図4に示すように、堰8を低くして図2の状態よりもスムーズにコンクリート塊を流動させようとするときには、堰8の高さ変更分とほぼ同じ高さだけ鉛直筒部材2を下降させればよい。これにより、鉛直筒部材2下端外周縁と堰8上端内周縁の間の距離(L”)が図2の場合(L)とほぼ同じになり、堰8を低くしてもコンクリート塊の排出量規制板7からの流出量の増加を抑えられるので、摩砕室6のコンクリート塊充填密度が高い状態を保持することができる。
【0021】
なお、上述した実施形態では、堰8の環状突部8aと排出量規制板7の外板7bとの間に挟まれるスペーサ9の長さを変えて堰8の高さを調節するようにしたが、スペーサ9に代えて油圧シリンダやエアシリンダ等を用いて堰を昇降させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態のコンクリート塊摩砕装置の正面断面図
【図2】図1の摩砕装置の使用状態を説明する要部の正面断面図
【図3】図2の堰の高さを高くした状態を示す正面断面図
【図4】図2の堰の高さを低くした状態を示す正面断面図
【符号の説明】
【0023】
1 ケーシング
2 鉛直筒部材
3 回転軸
3a 偏心軸部
4 筒状ロータ
6 摩砕室
7 排出量規制板
7a 内板
7b 外板
8 堰
8a 環状突部
9 スペーサ
15 油圧シリンダ
A コンクリート塊

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングの鉛直筒部内に設けた偏心回転軸に筒状ロータを回転自在に取り付けて、前記鉛直筒部と筒状ロータとの間に環状の摩砕室を形成し、この摩砕室の下方に摩砕室に充填されたコンクリート塊の排出を規制する排出量規制板を設けて、前記摩砕室に充填されるコンクリート塊を、前記筒状ロータの偏心回転により圧縮力を加えながら互いに摩擦接触させ、その骨材からセメントモルタル分を除去するコンクリート塊摩砕装置において、前記排出量規制板を前記筒状ロータに取り付け、この排出量規制板の外周縁に上方に突出する堰を設けて、その堰の高さを調節可能としたことを特徴とするコンクリート塊摩砕装置。
【請求項2】
前記ケーシングの鉛直筒部を昇降可能としたことを特徴とする請求項1に記載のコンクリート塊摩砕装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−234891(P2009−234891A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86259(P2008−86259)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(506059861)クリモトメック株式会社 (34)
【Fターム(参考)】